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特開2022-97864ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置
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  • 特開-ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置 図1
  • 特開-ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置 図2
  • 特開-ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置 図3
  • 特開-ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097864
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20220624BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20220624BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B64G1/64
H02K7/06 A
H02P5/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211092
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】宇宿 功史郎
(72)【発明者】
【氏名】諌山 道雄
(72)【発明者】
【氏名】持木 明
(72)【発明者】
【氏名】長濱 謙太
(72)【発明者】
【氏名】升岡 正
(72)【発明者】
【氏名】河津 要
【テーマコード(参考)】
5H572
5H607
【Fターム(参考)】
5H572BB02
5H572DD01
5H572EE03
5H572GG02
5H572GG04
5H572GG08
5H572HB09
5H572HB15
5H572HC07
5H572JJ24
5H572LL07
5H572LL22
5H572LL32
5H572MM02
5H607BB01
5H607BB05
5H607CC01
5H607DD03
5H607EE52
5H607HH01
5H607HH03
(57)【要約】
【課題】従来のドッキング装置は、宇宙機の電源容量が小さい場合、リニアアクチュエータに充分な電力供給ができず、電源容量を増すための改修が必要であった。
【解決手段】6軸のパラレルリンク機構5を備えたドッキング装置1におけるリニアアクチュエータ10の電力制御装置であって、リンク4に生じた荷重に基づいてリニアアクチュエータ10のモータMの回転速度を制御するモータドライバ11が、電流指令を出力する速度制御部31と、電流指令を電圧指令に変換する電流制御部32と、リニアアクチュエータ10の1本あたりの消費電力がモータ動力用の電源容量の1/6以下となるように速度制御部31の電流指令を制限する電流指令制限器33とを備え、電源容量が小さい宇宙機に対しても、電源容量の改修を必要とせずにドッキング装置1を搭載可能にした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアアクチュエータにより伸縮駆動される6本のリンクを構成要素とする6軸のパラレルリンク機構を備えたドッキング装置において、
各リンクのリニアアクチュエータに供給する電力を制御する装置であって、
ドッキング時にリンクの軸線方向に生じた荷重に基づいてリニアアクチュエータの駆動源であるモータの回転速度を制御するモータドライバを有し、
モータドライバが、モータの速度指令に基づいてモータに電流指令を出力する速度制御部と、速度制御部からの電流指令を電圧指令に変換する電流制御部とを備えると共に、速度制御部と電流制御部との間に、電流指令制限器を備え、
電流指令制限器が、リニアアクチュエータ1本あたりの消費電力がモータ動力用の電源容量の1/6以下となるように電流指令を制限することを特徴とするドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置。
【請求項2】
モータドライバが、速度制御部における出力飽和を防止するアンチワインドアップ制御器を備えていることを特徴とする請求項1に記載のドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置。
【請求項3】
電流指令制限器が、モータの回転速度をω、モータのトルク定数をkt、モータ抵抗とドライバ抵抗の和をR、及びモータの力行時のドライバ1個の入力電圧をPdとしたときに、モータの力行時の電流iを次式、
i={-ω×kt+√((ω×kt)+4×R×Pd)}/(2×R)、
で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置。
【請求項4】
電流指令制限器が、モータの回転速度に対する電流の制限値のテーブルを有し、モータを回転駆動する力行領域と、外部荷重によりモータが回転する回生領域とで、電流の制限値を変えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置。
【請求項5】
電流指令制限器は、モータ及びモータドライバの保護を目的とした制限値、又は荷重制限を目的とした制限値が、モータの回転速度が0であるときのテーブルにより求められる制限値よりも大きい場合、力行領域の制限曲線を力行動作とは逆向きの回生領域まで延長して電流の制限値を設定することを特徴とする請求項4に記載のドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルリンク機構を備えた宇宙機のドッキング装置において、パラレルリンク機構のリニアアクチュエータに供給する電力を制御するのに用いられる電力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、ドッキング装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1に記載のドッキング装置は、宇宙機に搭載され、6軸のパラレルリンク機構を構成する6本のリニアアクチュエータの伸縮速度を制御することにより、他の宇宙機とのドッキング時において、宇宙機同士のミスアライメントの補正と慣性力の減衰を実現する。各リニアアクチュエータには、ナット及びリードねじで構成されたボールねじをモータで駆動する方式が用いられ、宇宙機に搭載した電源からドライバを介してモータに電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US6354540B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来のドッキング装置は、宇宙機の電源容量が小さい場合、各リニアアクチュエータのモータに充分な電力を供給できないので、宇宙機への搭載が不可になる。このため、ドッキング装置は、宇宙機への搭載を可能にするには、電源容量を増すための改修が不可欠になり、その結果、宇宙機の製造コストが嵩むという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、電源容量が小さい宇宙機に対しても、電源容量を増すための改修を必要とせずにドッキング装置を搭載することができるドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置は、リニアアクチュエータにより伸縮駆動される6本のリンクを構成要素とする6軸のパラレルリンク機構を備えたドッキング装置において、各リンクのリニアアクチュエータに供給する電力を制御する装置である。この電力制御装置は、ドッキング時にリンクの軸線方向に生じた荷重に基づいてリニアアクチュエータの駆動源であるモータの回転速度を制御するモータドライバを有し、モータドライバが、モータの速度指令に基づいてモータに電流指令を出力する速度制御部と、速度制御部からの電流指令を電圧指令に変換する電流制御部とを備えると共に、速度制御部と電流制御部との間に、電流指令制限器を備え、電流指令制限器が、リニアアクチュエータ1本あたりの消費電力がモータ動力用の電源容量の1/6以下となるように電流指令を制限することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わるドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置は、上記構成を採用したことにより、電源容量が小さい宇宙機に対しても、電源容量を増すための改修を必要とせずにドッキング装置を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ドッキング装置の一例を説明する斜視図である。
図2】制御系全体を示すブロック図である。
図3】モータドライバを説明するブロック図である。
図4】電流指令制限器の特性テーブルを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明に係わるリニアアクチュエータの電力制御装置が適用可能なドッキング装置の一例を説明する図である。図示のドッキング装置1は、宇宙空間を慣性飛行する一方の宇宙機Aに搭載され、同じく宇宙空間を慣性飛行する他方の宇宙機Bとの結合に用いられる。
【0010】
上記のドッキング装置1は、一方の宇宙機Aの結合部に配置したベースリング2と、他方の宇宙機Bに対してドッキング時に接触する捕獲リング3と、リニアアクチュエータ10により伸縮する6本のリンク4により構成されて6自由度をもってベースリング2及び捕獲リング3を連結するパラレルリンク機構5と、各リンク4のリニアアクチュエータ10を制御するための制御部6とを備えている。本発明に係わる電力制御装置は、制御部6の少なくとも一部である。
【0011】
また、ドッキング装置1は、捕獲リング3上に、120度間隔で配置したガイド20を備えている。これに対して、他方の宇宙機Bの結合部には、一方の宇宙機Aと同様の捕獲リング3及びガイド20が配置してある。
【0012】
リニアアクチュエータ10は、図示を省略するが、ナット及びリードねじで構成されたボールねじをモータで駆動する方式が用いられ、リンク4の軸線方向に生じた荷重を測定するためのロードセルや、モータの回転速度を測定するためのパルスエンコーダなどのセンサ類を備えている。
【0013】
上記のドッキング装置1は、宇宙機同士の結合過程において、他方の宇宙機Bに捕獲リング3が接触した時点で、パラレルリンク機構5の各リンク4における荷重データ及び軸方向データを測定し、これらのデータに基づいて捕獲リング3の中心における荷重ベクトル及びトルクベクトルを算出し、これらのベクトルに基づいて各リニアアクチュエータ10による各リンク4の伸縮動作を制御する。これにより、ドッキング装置1は、宇宙機間のミスアライメントを補正するように捕獲リング3の挙動をコントロールすると共に、各リンク4に生じる荷重が徐々に減少するようにリニアアクチュエータ10の伸縮速度を調整して、他方の宇宙機Bが有する慣性力を減衰させる。
【0014】
上記のドッキング装置におけるリニアアクチュエータ10の電力制御装置は、各リンク4のリニアアクチュエータ10に供給する電力を制御する装置であって、リニアアクチュエータ10の制御系を、仮想コンプライアンス制御で構成する。仮想コンプライアンス制御は、周知のコンプライアンス制御と同様に、パラレルリンク機構5に作用する力・モーメントをロードセル等から検出して、仮想のばねマスダンパ系になるように、各リニアアクチュエータの動作速度を制御するものであり、衝撃がほとんど無いドッキングを実現し得る。
【0015】
上記のリニアアクチュエータ10の電力制御装置は、図2に示すように、各リンク4毎に設けたモータドライバ11、モータM及びエンコーダ12に対して、電源E、逆流防止用ダイオード13、回生電力吸収回路14、及び仮想コンプライアンス制御を行うための上位コントローラ15を備えている。上位コントローラ15は、ドッキング時にリンク4の軸線方向に生じた荷重を入力し、その荷重に基づいてモータドライバ11に速度指令を出力する。そして、各リンク4におけるモータMの回転速度を制御することにより、先述したミスアライメントの補正及び慣性力の減衰を実施するべく、リンク4の伸縮動作並びに捕獲リング3の挙動をコントロールする。
【0016】
上記のモータドライバ11は、図3に示すように、仮想コンプライアンス制御により得られたモータMの速度指令に基づいて電流指令を出力する速度制御部31と、速度制御部31からの電流指令を電圧指令に変換する電流制御部32とを備えると共に、速度制御部31と電流制御部32との間に、リニアアクチュエータ10の1本あたりの消費電力が、モータMの動力用に分配される電源容量の1/6以下となるように電流指令を制限する電流指令制限器33を備えている。
【0017】
なお、モータドライバ11の上流電源は、モータMの動力以外に、上位コントローラ15や各モータドライバ11の制御電源にも使用する。このため、電流指令制限器33で制限の対象とする電源容量とは、上流電源からモータMの動力用に分配される電源容量のことであり、宇宙機に搭載する主電源の総容量(宇宙機の電源容量)ではない。
【0018】
速度制御部31は、比例制御器31Aと、積分制御器31Bと、入力側の第1及び第2の加減算器31C,31Dと、出力側の第3加減算器31Eとを備えている。電流制御部32は、電流制御器32Aと、入力側加減算器32Bとを備えている。電流指令制限器33は、速度制御部31の第3加減算器31Eから制限前電流指令を入力し、電流制御部32の入力側加減算器32Bに制限後電流指令を出力する。
【0019】
また、モータドライバ11は、電流制御部32からモータMに至る間に、電圧指令が入力されるPWM制御器34、及びHブリッジ回路35を直列に備えている。さらに、モータドライバ11は、モータMの電流を検出するための電流検出器36、モータMの回転を検出するためのエンコーダ12、エンコーダ12の検出値からモータMの回転速度を算出する速度演算器37、及びアンチワインドアップ制御器38を備えている。
【0020】
電流検出器36は、Hブリッジ回路35とモータMとの間に配置され、検出した電流値を電流制御部32の入力側加減算器32Bに入力する。速度演算器37が算出したモータMの回転速度は、速度制御部31の第1加減算器31C、及び電流指令制限器33に入力される。
【0021】
上記構成により、モータドライバ11は、電流制御部32の電流制御器32Aにおいて、制限後電流指令とモータMの電流の差分をPI演算等することで操作量を生成する。PWM制御器34は、電流制御器32Aから入力した操作量に基づいて、Hブリッジ回路35に与える制御用PWM 信号のデューティ比を決定し、モータMに印加する電圧を制御する。
【0022】
アンチワインドアップ制御器38は、加減算器38Aを介して、上述した制限前電流指令及び制限後電流指令を入力し、制限前電流指令と制限後電流指令との差分値に比例ゲインを乗じて積分制御器31Bの入力から減算する。これにより、アンチワインドアップ制御器38は、積分制御器31Bの積分値を適切に制限して、速度制御部31の出力飽和によるアンチワインドアップ現象を抑制する。
【0023】
ここで、電流指令制限器33における電流指令の制限の仕方は、「電源Eの供給先であるモータドライバ11の1個あたりの消費電力は、モータドライバ11により駆動されるモータMの動力(回転速度ω×トルクτ)と、損失(モータ抵抗とドライバ抵抗の和R×モータ電流i^2)の和である」という関係に基づいている。
【0024】
ここで、力行時のモータドライバ11の1個の入力電圧をPdとし、モータMの回転速度をω、トルクをτ、電流をi、トルク定数をktとし、ドライバFETのオン抵抗とモータMの巻線抵抗との合成抵抗をRとすると、力行時には、以下の式1の関係がある。
Pd=τ×ω+R×i …式1
また、トルクτと電流iとの間には、τ=kt×iの関係があるので、式1は以下の式2のように表すことができる。
Pd=ω×kt×i+R×i …式2
そこで、電流指令制限器33では、モータドライバ11の入力電圧Pdを電源Eの供給可能電力(電源容量)の1/6に設定し、実際にはモータMの動力用に分配される電源容量の1/6以下になるように設定する。
【0025】
上記の式2において、トルク定数kt及び合成抵抗Rは定数であり、上記入力電圧Pdも一定値に設定されるので、回転速度ωが与えられると力行時の電流iが以下の式3により求められる。
i={-ω×kt+√((ω×kt)+4×R×Pd)}/(2×R) …式3
【0026】
よって、電流指令制限器33では、図4に特性を示すテーブル、すなわちモータMの回転速度ωに対する電流iの制限値のテーブルを予め用意しておき、そのテーブルから現在のモータMの回転速度ωに対する電流iの制限値を参照して電流制限をする。
【0027】
図4において、力行は、リニアアクチュエータ10が伸展又は収縮する方向にモータMが回転駆動されている状態である。また、回生は、リニアアクチュエータ10の伸展方向又は収縮方向に生じた荷重によりモータMに回転が付与されている状態である。図4中の第一象限は、リニアアクチュエータ10が伸展状態で力行の領域、第二象限は、リニアアクチュエータ10が収縮状態で回生の領域である。また、図4中の第三象限は、リニアアクチュエータ10が収縮状態で力行の領域、第四象限は、リニアアクチュエータ10が伸展状態で回生の領域である。
【0028】
上記の電流指令制限器33において、力行領域の制限値は、モータドライバ11の入力電力を一定とする制限値を示し、回生領域の制限値は、モータドライバ11の保護又は荷重制限を目的とした制限値である。つまり、この実施形態の電流指令制限器33は、モータMを回転駆動する力行領域と、外部荷重によりモータMが回転する回生領域とで、電流制限を変えている。なお、回生時は、宇宙機の電源からの電力供給が行われないので、電流制限を実施しなくて構わない。また、回生時の電流については、電源Eへの逆流を防止すると共に、図2に示す回生電力吸収回路14に吸収させることが可能である。
【0029】
上記の電流指令制限器33は、モータMの回転速度と速度制御部31の出力である制限前電流指令とを入力し、その制限前電流指令が、モータMの回転数において図4に示すテーブルで定めた制限後電流指令よりも大きいときに、制限前電流指令を制限後電流指令に制限して出力する。また、制限前電流指令が制限後電流指令よりも小さいときは、制限前電流指令をそのまま制限後電流指令として出力する。
【0030】
また、電流指令制限器33は、モータM及びモータドライバ11の保護を目的とした制限値、又は荷重制限を目的とした制限値が、ω=0であるときの式3により求められる制限値よりも大きい場合には、図4中に点線で示すように、力行領域の制限曲線を力行動作とは逆向きの回生領域まで延長して電流iの制限値を設定する。
【0031】
より具体的には、リニアアクチュエータ10が伸展方向に力行している場合(第一象限)には、その制限曲線を力行動作(伸展動作)とは逆向きである収縮方向の回生領域(第二象限)まで延長する。また、リニアアクチュエータ10が収縮方向に力行している場合(第三象限)には、その制限曲線を力行動作(収縮動作)とは逆向きである伸展方向の回生領域(第四象限)まで延長する。これにより、電流iの制限値が段階的に大きく変化することによるトルク変動を防止することができる。
【0032】
上記のドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置は、電流指令制限器33において、リニアアクチュエータ10の1本あたりの消費電力が、モータMの動力用に分配される電源容量の1/6以下となるように電流指令を制限することにより、全てのリンク4のリニアアクチュエータ10が力行動作をしても、それらの消費電力がモータ動力用の電源容量を超えることがない。
【0033】
これにより、上記の電力制御装置は、電源容量が小さい宇宙機に対しても、電源容量を増すための改修を必要とせずにドッキング装置1を搭載することができ、宇宙機の製造コストの低減にも貢献することができる。
【0034】
また、上記の電力制御装置は、アンチワインドアップ制御器39を備えているので、速度制御部31の出力飽和により発生するワインドアップ現象を防止することができ、さらに、電流指令制限器33において、力行領域でのみ消費電力制限に基づいた電流制限を行い、回生領域では消費電力制限に基づいた電流制限を行わない場合には、回生領域では電流制限前におけるリニアアクチュエータ10の特性を維持することができ、ドッキング装置として電流制限前と同等のミスアライメントの補正と慣性力の減衰を行うことができる。
【0035】
本発明に係わるドッキング装置におけるリニアアクチュエータの電力制御装置は、その構成の細部が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 ドッキング装置
4 リンク
5 パラレルリンク機構
10 リニアアクチュエータ
11 モータドライバ
31 速度制御部
32 電流制御部
33 電流指令制限器
38 アンチワインドアップ制御器
E 電源
M モータ
図1
図2
図3
図4