IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図1
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図2
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図3
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図4
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図5
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図6
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図7
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図8
  • 特開-融雪システム及び融雪動作制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097865
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】融雪システム及び融雪動作制御方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 19/00 20060101AFI20220624BHJP
   E01H 11/00 20060101ALI20220624BHJP
   E01H 8/10 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
E01B19/00 A
E01H11/00 B
E01H8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211093
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕基
【テーマコード(参考)】
2D026
2D056
【Fターム(参考)】
2D026BB04
2D056BA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より柔軟かつ適切に融雪動作が可能な融雪システム及び融雪動作制御方法を提供する。
【解決手段】融雪システムは、流体を射出するノズルを有する射出部10と、射出部10からの流体の射出方向及び射出位置のうち少なくとも一方を含む射出設定を変更する動作部30と、射出部10により射出された流体の到達位置に係る情報を取得する検出部60と、動作部30の動作を制御する制御部40と、を備える。制御部40は、到達位置が鉄道の線路Rに係る目標位置から外れていた場合に、到達位置と目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、動作部30により射出設定を変更させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を射出するノズルを有する射出部と、
前記射出部からの流体の射出方向及び射出位置のうち少なくとも一方を含む射出設定を変更する調整動作部と、
前記射出部により射出された流体の到達位置に係る情報を取得する情報取得部と、
前記調整動作部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記到達位置が鉄道線路に係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と前記目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、前記調整動作部により前記射出設定を変更させる
ことを特徴とする融雪システム。
【請求項2】
前記目標位置に対する前記到達位置のずれ量と前記変更量との対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記位置関係と前記対応関係とに基づいて前記調整動作部による前記射出設定の前記変更量を定める
ことを特徴とする請求項1記載の融雪システム。
【請求項3】
前記流体は温水であり、
前記情報取得部は、前記目標位置を含む範囲の温度分布情報を取得し、
前記制御部は、前記温度分布情報に基づいて流体の前記到達位置を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の融雪システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報取得部による異なる2回の計測結果の差分を取得し、当該差分における温度上昇の分布に係る所定の代表位置を前記到達位置として特定する
ことを特徴とする請求項3記載の融雪システム。
【請求項5】
流体を射出するノズルを有する射出部と、前記射出部からの流体の射出方向を変更させる調整動作部と、を備える融雪システムの融雪動作制御方法であって、
前記射出部により射出された流体の到達位置に係る情報を取得する情報取得ステップ、
前記到達位置が鉄道線路に係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と前記目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、前記調整動作部により前記射出方向を変更させる調整ステップ、
を含むことを特徴とする融雪動作制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪システム及び融雪動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路の特にポイント部分(分岐器)では、積雪によってポイントの動作が妨げられて正常に切り替えがなされなくなる場合がある。これに対し、ポイント部分の雪を融解(融雪)させてポイントの切り替え動作を可能とする融雪装置がある。融雪装置の中には、温水といった流体をポイント部分に対して射出させることで融雪させる方式のものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-346436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、レールの間などポイントの至近から温水といった流体を射出させる場合、この射出に係る部位のメンテナンスを鉄道車両の走行中に行うことができず、積雪状況や動作不良などに応じた柔軟な対処が難しいという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、より柔軟かつ適切に融雪動作が可能な融雪システム及び融雪動作制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の融雪システムは、
流体を射出するノズルを有する射出部と、
前記射出部からの流体の射出方向及び射出位置のうち少なくとも一方を含む射出設定を変更する調整動作部と、
前記射出部により射出された流体の到達位置に係る情報を取得する情報取得部と、
前記調整動作部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記到達位置が鉄道線路に係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と前記目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、前記調整動作部により前記射出設定を変更させることとした。
射出方向を風などの外部条件に応じて変更して目標位置への流体の到達を維持することができるので、この融雪システムでは、線路から離隔した位置で流体の射出動作を行わせることが可能になる。これにより、鉄道車両の走行を中断させることなくメンテナンスを行うことができる。したがって、この融雪システムでは、容易、より柔軟かつ適切に融雪動作を行うことができる。
【0007】
また、望ましくは、
前記目標位置に対する前記到達位置のずれ量と前記変更量との対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記位置関係と前記対応関係とに基づいて前記調整動作部による前記射出設定の前記変更量を定める。
対応関係を予め定めて保持しておくことで、短時間かつ不規則で変化し得る風向や風速などに応じて速やかに目標位置に流体を到達させるように射出部からの流体射出設定を定めることができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記流体は温水であり、
前記情報取得部は、前記目標位置を含む範囲の温度分布情報を取得し、
前記制御部は、前記温度分布情報に基づいて流体の前記到達位置を特定する。
すなわち、温水による温度上昇を検出することで、適切に温水の到達位置を得ることができる。
【0009】
また、望ましくは、
前記制御部は、前記情報取得部による異なる2回の計測結果の差分を取得し、
当該差分における温度上昇の分布に係る所定の代表位置を前記到達位置として特定する。
温度変化は他のパラメータと比較して変動が緩やかなので、取得タイミングの制御が細かく制御される必要はない。一方で、直近の射出時の到達位置より前の射出時の到達位置の影響が残ることがあるので、温水射出の前後の温度変化(昇温)を特定することで、直近の射出タイミングで温水が到達した位置であるか否かを適切に判別することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の融雪動作制御方法は、
流体を射出するノズルを有する射出部と、前記射出部からの流体の射出方向を変更させる調整動作部と、を備える融雪システムの融雪動作制御方法であって、
前記射出部により射出された流体の到達位置に係る情報を取得する情報取得ステップ、
前記到達位置が鉄道線路に係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と前記目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、前記調整動作部により前記射出方向を変更させる調整ステップ、
を含むこととした。
このような制御により分岐器から離隔した位置から流体を射出しても、風などの外的要因による流体の到達位置のずれを速やかに解消して適切に目標位置における融雪を行うことができる。したがって、線路内に融雪用の構成を配置する必要がなくなり、メンテナンスや調整の際に鉄道の運行を中断させたり、深夜帯に集中してメンテナンス作業を行ったりするといった負担をかけずに容易かつ適切に融雪動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従うと、より柔軟かつ適切に融雪動作が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の融雪システムを説明する図である。
図2】第1実施形態の融雪システムを説明する図である。
図3】融雪システムの機能構成を示すブロック図である。
図4】射出部による温水の射出範囲を説明する図である。
図5】検出部による検出画像の画素配列について説明する図である。
図6】検出部による検出位置と融雪の対象範囲の位置との対応付けについて説明する図である。
図7】融雪システムにおける射出方向の設定に係る射出方向設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図8】融雪動作制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の融雪システムについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1及び図2は、第1実施形態の融雪システム1を説明する図である。
融雪システム1は、線路Rの分岐器P(ポイント)に対して温水(流体)を射出して融雪を行う。融雪システム1は、射出部10と、温水供給部20と、動作部30(調整動作部)と、制御部40と、記憶部50と、検出部60(情報取得部)などを備える。
【0014】
射出部10は、ノズル11を有し、線路Rの外側に位置して、分岐器Pから離隔した位置から温水を分岐器Pに対して到達させるように射出する。射出部10は、ここでは、柱状の支持部Cに支持されて、線路面よりも高い位置から温水を射出する。射出部10は、制御部40の制御に基づいて温水の射出有無を切り替え可能であってよい。すなわち、射出動作は、間欠的などであってもよく、また、積雪がない(融雪した)場合には、温水供給部20からの温水供給有無にかかわらず射出動作を停止可能である。温水は、温水供給部20からの供給に係る水圧だけで射出されてもよいし、別途ポンプ(送液部)により圧力付与がなされてより高速で射出されてもよい。射出部10から射出される温水は、目標地点にのみ到達すればよいが、ノズル11の開口端と目標地点とを結ぶ線上などに一部が落下してもよい。
【0015】
温水供給部20は、図示略の給湯部により適宜な温度に加熱された水(温水)を射出部10に供給する。温水供給部20は、断熱性の配管により射出部10へ温水を送ることとしてもよい。ここでは、配管は、最終的に支持部Cの内部を通って射出部10に温水を供給するが、これに限られなくてもよい。温水供給部20は、射出部10の直近で水の保温又は加熱が可能であってもよい。給湯部の動作は、降雪の可能性などに基づいて別途判断されて、温水供給部20は、給湯部の動作中は随時射出部10へ温水を供給可能である。給湯部は、複数の射出部10に対して共通のものであってもよいし、射出部10ごとに個々のものであってもよい。なお、ここでいう温水とは、具体的な温度を規定するものではなく、融雪に効果のある温度に適切に加熱されていればよい。すなわち、温水とは、給湯部など(他の設備の排熱などを利用したものであってもよい)での加熱を経て射出部10に送られた水や、温泉などから取得される常温よりも高い水であることを意味する。また、この水は、通常の水ではなく、当初から、又は融雪若しくはその他の目的で人為的に、何らかの成分が混入しているものであってもよい。
【0016】
動作部30は、図2に示すように、支持部Cに支持されている射出部10を水平方向についての角度φ(垂直なZ軸回り)及び垂直方向についての角度θ(線路Rに平行なX軸回り)をそれぞれ所定の角度範囲で変更させる。これにより、動作部30は、射出部10からの温水の射出方向を変更させる。回転動作は、例えば、それぞれの軸回りごとにモータなどにより行われる。この場合、Z軸回りの回転動作は、支持部Cの一部ごとなされてもよい。
【0017】
制御部40は、特には限られないが、射出部10(支持部C)の周囲に位置する制御箱Bの内部などに位置する。制御部40は、検出部60の検出結果に基づいて射出部10及び動作部30の動作を制御する。
【0018】
記憶部50は、制御部40の制御動作に係るプログラムや設定データなどを記憶保持する。
【0019】
検出部60は、線路R(鉄道線路)に係る融雪の対象範囲(目標位置)である分岐器Pを含む所定の範囲の積雪状況及び射出部10から射出された温水の到達位置に係る情報を取得して制御部40に出力する。検出部60は、例えば、温度検出部として、上記所定の範囲に対して非接触かつ遠隔でその温度分布情報を検出(計測して取得)するサーモグラフィ(赤外線画像撮影装置)を有する。検出部60(サーモグラフィ)は、特には限られないが、平面視で射出部10と同一の位置にあってもよい。射出部10は、例えば、図2に示すように支持部Cに取り付けられていてもよい。また、検出部60は、射出部10よりも高い位置で検出動作を行うことで、平面位置の解像度を向上させてもよい。ここでは、検出部60の視線方向(視野の中心方向)は、X軸方向に垂直、すなわち、YZ面内にある。
【0020】
図3は、融雪システム1の機能構成を示すブロック図である。
上記のように、融雪システム1は、動作部30と、制御部40と、記憶部50と、検出部60と、通信部70などを備える。また、融雪システム1は、射出部10による温水の射出に係る駆動動作や射出可否の切り替え動作などを行う射出駆動部12を備える。
【0021】
制御部40は、ハードウェアプロセッサとしてCPU(Central Processing Unit)を備えていてもよいし、専用のマイコンなどを有していてもよい。また、制御部40は、ハードウェアプロセッサに作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)を有する。
【0022】
記憶部50は、マスクROM(Read Only Memory)を有していてもよいし、これに加えて又は代えて更新書き込みが可能な不揮発性メモリなどを有していてもよい。設定データには、射出部10から目標位置への温水の射出方向設定51、及び射出方向にずれが生じた場合の当該ずれを補正して射出方向を調整するための補正対応情報52などが含まれる。これらの内容については後述する。
【0023】
検出部60は、上記のようにサーモグラフィを有し、赤外線撮像により遠隔で二次元的に所定の視野角及び解像度で温度分布をまとめて計測する。
【0024】
通信部70は、ケーブル又は無線通信によりサーバ装置などとの間で行われるデータの送受信を所定の通信規格に従って制御する。通信規格としては、例えば、LAN(Local Area Network)や無線LANに係るもの(TCP/IPなど)であってよい。
【0025】
融雪システム1は、その他、所定の報知動作などを行う報知動作部や、制御部40の動作有無の切り替えや初期化動作を行わせるための操作受付部を有していてもよい。報知動作部は、例えば、LEDランプなどを有し、電力供給状態や動作状態などを示すことができる。LEDランプは、制御箱Bの内部にあって、制御箱Bが開放された場合にのみ視認可能であってもよいし、制御箱Bの外側に位置して、第三者なども視認可能であってもよい。操作受付部は、例えば、押しボタンスイッチやロッカースイッチなどを有している。
【0026】
次に、融雪システム1の動作について説明する。
制御部40は、検出部60から取得した検出データに基づいて分岐器Pへの積雪を検出して、射出部10により分岐器Pへの温水の射出を行わせる。
【0027】
図4は、射出部10による温水の射出範囲を説明する図である。
温水は、分岐器Pにおいて可動のトングレールRt及び当該トングレールRtと固定された基本レールRfとの接触部分に対して射出されることで、トングレールRtが雪で凍結して動かなくなったり、トングレールRtと基本レールRfとの間に雪が挟まって切り替えが困難になったりするのを防ぐ。射出対象位置T1、T2は、一度の射出でカバーできる範囲よりも広いので、動作部30の動作により射出方向を変更させながら順番に温水を射出させていく。なお、ノーズレールRnやウイングレールRwも移動可能な場合には、これらが位置する範囲も温水の射出対象位置に加えてよい。
【0028】
射出対象位置と射出方向との対応を示すデータは、予め無風条件下で計測されて、記憶部50に射出方向設定51として記憶される。例えば、図4に点線で示したマトリクス状のエリア配列を仮想的に設定し、射出方向をZ方向回り及びY方向回りに順番に変更させながら温水を射出させ、到達位置が属するエリアを検出して記憶する。実際の射出時には、射出対象位置T1、T2の各エリアに対応する射出方向へ順番に変更させていけばよい。各エリアのサイズは、特には限られないが、例えば、実際の面積がエリア間で同程度になるように、複数画素ごとに定められる。
【0029】
図5は、検出部60による赤外線画像データの画素配列について説明する図である。
【0030】
例えば、赤外線画像データは、融雪対象を含む上記所定の範囲について、二次元座標[xn、ym](1≦n≦N、1≦m≦M)で示される画素の配列(画素数N×M)で表される。実際には、上記のように検出部60は、上方から線路面(ここでは、高さZ=0と仮定)を斜めに見下ろしているので、赤外線画像内で上方(yの大きい)画素ほど検出部60の位置からY方向について離れた地面となり、これに応じて各画素(サイズが均一)に対応する地面の面積は広くなる。
【0031】
図6は、赤外線画像データの各画素位置と融雪の対象範囲における実際の位置との対応付けについて説明する図である。
図6(a)に示すように、各画素のy成分の座標y1~yMは、高さL(Z座標がL)から見下ろした場合に視野角中心方向(視線方向)に対して直交する投影面P上へ投影された地面の点のY方向についての位置に対応する。座標yが大きいほど視野の下向き角度が小さくなり、検出部60からの距離が大きくなる。検出部60の高さ(俯角)方向についての視野が最低角度θ1及び視野角θBにより規定される場合、画像内で最も下側(下向き)の位置の座標y1に対応する上記対象範囲内の位置の座標Y1は、Y1=L・tan(θ1)で表される。したがって、最低角度θ1=atan(Y1/L)となる。視野角θBがあまり大きくなければ、投影面P内においてy方向についての座標間距離(ym-y1)と俯角方向についての角度差θmとは概ね比例するので、θm=(m-1)/(M-1)・θBとなる。したがって、投影面Pにおける座標ymに対応する所定の範囲内の位置の座標Ymは、Ym=L・tan(θ1+θm)、すなわち、
Ym=L・tan(θ1+(m-1)/(M-1)・θB) … (式1)
として表される。
【0032】
図6(b)に示すように、検出部60の+Z方向から見た平面視位置(検出面の大きさは微小である)を原点Oとすると、線路Rに沿ったX方向(方位角方向)についての検出部60の視野角φAに応じた撮影範囲のX方向についての幅Wmは、地面の位置Ym、すなわち、Y方向についての検出部60からの距離に応じた値となり、Wm=2・Ym・tan(φA/2)で表される。すなわち、幅Wmは、座標Y(座標y)が大きくなるほど(検出部60から離れるほど)大きくなる。したがって、画素位置[xn、ym]に対応する所定の範囲内の位置の座標Xnは、Xn=(n-1)/(N-1)・Wm-Wm/2=2・(n-1)/(N-1)・Ym・tan(φA/2)、すなわち、
Xn=2・(n-1)/(N-1)・L・tan(θ1+(m-1)/(M-1)・θB)・tan(φA/2) … (式2)
と表される。視野角φA、θB、画素数M、N、及び検出部60の高さLが予め記憶部50に記憶保持されていることで(最低角度θ1も予め求められていてもよい)、上記の式1及び式2により画素位置[xn、ym]と所定の範囲内の実際の位置[Xn、Ym]とが対応付けられる。対応関係は、逐次計算されてもよいし、予めテーブルデータとして記憶部50に記憶保持されていてもよい。高さLが変更された場合には、テーブルデータは再設定がなされる。
【0033】
図7は、融雪システム1における射出方向の設定に係る射出方向設定処理の制御手順を示すフローチャートである。この射出方向設定処理は、制御部40により行われてもよいが、位置関係、水圧(射出速度)やノズル特性などの条件が同一とみなせる範囲内(同一の射出部10に対して同一設定で温水を供給するなど)であれば、室内の試験場など、実際の設置場所とは異なる場所で制御部40とは異なる試験装置の制御部などにより行われてもよい。ここでは、制御部40により行われるものとして説明する。この処理は、上記のように無風の条件下で行われる必要があるので、別途風速風向情報などが取得されながら行われてもよく、処理途中で基準以上の風速の風が生じた場合には処理が中断されてよい。
【0034】
射出方向設定処理が開始されると、制御部40は、動作部30を動作させて射出方向を初期方向に向ける(ステップS101)。制御部40は、射出部10の射出駆動部12に駆動信号を出力してノズル11からの射出動作を行わせる(ステップS102)。
【0035】
制御部40は、射出された水の到達位置(上記の位置[Xn、Ym])を特定する(ステップS103)。なお、この場合は、必ずしも検出部60により到達位置が特定されなくてもよく、検出方法が異なっていてもよい。例えば、到達位置での圧力変化(増加)を検出するなどであってもよい。また、サーモグラフィなどを利用した温度変化による到達位置の検出を行わない場合には、ステップS103の処理において温水を射出させなくてもよい。すなわち、加熱されていない通常の水が射出されてもよい。制御部40は、射出方向と到達位置とを対応付けて記憶部50に記憶させる(ステップS104)。
【0036】
制御部40は、動作部30により設定可能な全射出方向に向けての水の射出が終了したか否かを判別する(ステップS105)。全射出方向に向けての射出が終わっていないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部40は、動作部30により未射出の方向へ射出方向を変更させる(ステップS106)。それから、制御部40の処理は、ステップS102へ戻る。
【0037】
全射出方向に向けての射出が終了したと判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部40は、各エリアに到達位置が重なる射出方向をそれぞれ特定する。制御部40は、エリアと特定された射出方向とを対応付けて記憶部50に記憶させる(ステップS107)。そして、制御部40は、射出方向設定処理を終了する。
【0038】
通常の融雪動作時において、温水が到達した位置は、検出部60によって検出される。温水が到達した範囲では、一時的に雪面温度よりも温度が上昇する。温水の射出前と射出後の2回(異なる2回)、検出部60により温度分布の計測(温度分布情報の取得)を行い、2回の計測結果の差分をとることで、温度上昇が検出される。この検出を続けて行うと、以前の射出で温水が到達した位置の温度は、上昇した状態から再び低下していくので、直近の到達位置との識別が可能になる。なお、融雪したエリアでは、雪面の代わりにレール、枕木や道床などの温度が計測されるので、この検出部60では、別途積雪があるか否かについての判別が可能である。
【0039】
実際には、温水の到達位置は、点ではなく、ある程度の面積範囲に広がる。広がり方は、ノズル11の形状や射出時の圧力パターンなどに応じて異なる。ここでは、検出部60の各画素範囲ごとに温度上昇幅を特定し、温度上昇の分布に基づいて代表位置を定める。具体的には、当該温度上昇幅による重み付け平均(温度上昇幅に係る重心位置)が示す画素を代表位置として定める。すなわち、各画素の座標を[xi、yi]、温度上昇幅をdTiとすると、適宜に定められる範囲内のk個の画素データに基づいて、代表位置の座標[xp、yp]=(Σ(i=1~k)(xi・dTi)/Σ(i=1~k)dTi、Σ(i=1~k)(yi・dTi)/Σ(i=1~k)dTi)として求められる。代表位置の座標[xp、yp]に対応する位置を含むエリアが到達位置として特定される。なお、代表位置は、画素位置[xi、yi]について算出されるのではなく、実際の位置[Xi、Yi]について算出されてもよい。
【0040】
また、温度上昇幅dTiが負である、すなわち、温度が低下している場合、直近の温水の射出とは無関係であることが明らかであり、負の値を重みに含めると、余計なバイアスになり得る。したがって、重み付け平均の算出では、負の温度上昇幅dTiを全て「0」に置き換えてもよい。
【0041】
融雪動作は、屋外で行われるので、実際の降雪、積雪時には、主に風の影響を受けて、上記射出方向設定処理により射出方向設定51に記憶された対応関係の通りの位置に温水が到達しない場合がある。本実施形態の融雪システム1では、射出方向設定51に基づいて温水が射出される前後にサーモグラフィにより温度検出を行って到達位置を特定し、温水が目標位置に到達(命中)しているか否かを判別する。そして、命中していない、すなわち、到達位置が目標位置から外れている場合には、目標位置と到達位置との位置関係に基づいて射出方向を変更調整する。
【0042】
目標位置と到達位置とのずれ量が小さい場合には、ずれ量に対応する分だけ当初の射出方向から反対側に射出方向を変更させてもよい。一度の変更で目標位置と到達位置を一致させることができない場合でも、途中で風などの状況が変化しなければ、この補正により到達位置を目標位置へ漸近させていくことができる。あるいは、ずれ量に応じた補正射出方向又は射出方向の補正量(変更量)を示す補正対応情報52(ずれ量と射出方向の変更量との対応関係)を記憶部50に記憶させておき、制御部40がこれを参照することで、速やかに適切な射出方向に調整される。風向や風速の変化は短時間で生じ得るので、射出方向の調整のために複数回の変更動作が行われると、温水の無駄が増えるだけでなく、風の変化に温水の射出方向が追従しきれなくなる場合もあり得る。補正射出方向のデータを参照して射出方向の変更を行うことで、このような状況が生じるのを抑制しやすくなる。
【0043】
図8は、本実施形態の融雪システム1において実行される融雪動作制御処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。この融雪動作制御処理は、例えば、サーバ装置から温水の供給を開始する旨の通知があった場合に起動される。
【0044】
融雪動作制御処理が開始されると、制御部40は、記憶部50の射出方向設定51を参照して射出部10のノズル11の向きに係る設定データを取得する(ステップS201)。制御部40は、動作部30に制御信号を出力して、射出方向を設定データに示された方向へ変更させる(ステップS202)。
【0045】
制御部40は、検出部60により目標位置(エリア)を含む範囲の温度分布を取得させる(ステップS203)。なお、前回の射出後にステップS205の処理で取得した温度分布をそのまま流用可能な場合には(同一範囲での検出など)、制御部40は、このステップS203の処理で検出部60による新たな検出結果を取得しなくてもよい。制御部40は、射出部10の射出駆動部12に駆動信号を出力して、設定されている方向へ温水を射出させる(ステップS204)。射出時間は適宜定められてよい。制御部40は、再度検出部60により目標位置を含む範囲の温度分布を取得させる(ステップS205)。
ステップS205の処理など(ステップS203の処理を含み得る)が本実施形態の融雪動作制御方法における情報取得ステップを構成する。
【0046】
制御部40は、2回取得した温度分布の各画素における温度差の分布を算出する(ステップS206)。制御部40は、温度差分布に基づいて、温水の到達位置(エリア)を特定する(ステップS207)。制御部40は、上述のように、温度差分布の代表位置、例えば、温度差の重み付け平均位置を求め、この平均位置が含まれるエリアを到達位置として特定する。
【0047】
制御部40は、温水が目標位置に命中したか否か、すなわち、目標位置と到達位置とが等しいか否かを判別する(ステップS208)。命中していない(目標位置と到達位置とが等しくない)と判別された場合には(ステップS208で“NO”)、制御部40は、目標位置と到達位置のずれ量を算出する(ステップS209)。制御部40は、射出方向の変更量を取得する(ステップS210)。変更量は、ずれ量のみに基づいて定められてもよいし、ずれ量と目標位置又は到達位置とに応じて定められてもよい。また、制御部40は、射出方向設定51を参照して目標位置とずれ量とに応じた変更量を取得してもよい。それから、制御部40の処理は、ステップS202に戻る。
ステップS210及びこれを受けたステップS202の処理が本実施形態の融雪動作制御方法における調整ステップを構成する。
【0048】
温水が目標位置に命中したと判別された場合には(ステップS208で“YES”)、制御部40は、目標位置に残雪があるか否か、すなわち、エリアが融雪しているか否かを判別する(ステップS211)。残雪があると判別された場合には(ステップS211で“YES”)、制御部40の処理は、ステップS203へ戻る。残雪がないと判別された場合には(ステップS211で“NO”)、制御部40は、射出対象位置T1、T2のどこかに積雪があるか否かを判別する(ステップS212)。これは、射出対象位置T1、T2内で温水の射出がなされていないエリアが残っている場合に加え、各エリアの融雪を行っている間に、一度融雪したエリアに新たに積雪が生じている場合を含む。積雪があると判別された場合には(ステップS212で“YES”)、制御部40の処理は、ステップS201に戻る。積雪がないと判別された場合には(ステップS212で“NO”)、制御部40は、融雪動作制御処理を終了する。
【0049】
以上のように、第1実施形態の融雪システム1は、温水を射出するノズル11を有する射出部10と、射出部10からの温水の射出方向(射出方向及び射出位置のうち少なくとも一方を含む射出設定)を変更する動作部30と、射出部10により射出された温水の到達位置に係る情報を取得する検出部60と、動作部30の動作を制御する制御部40と、を備える。制御部40は、到達位置が線路Rのポイントに係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、動作部30により射出方向を変更させる。
このように、射出方向を風などの外部条件に応じて変更して目標位置への温水の到達を維持することができるので、融雪システム1では、線路Rから離隔した位置から温水の射出が可能になる。これにより、鉄道車両の走行を中断させたりすることなく、容易、柔軟かつ確実に融雪システム1の調整やメンテナンスなどを行うことができる。また、他の位置の積雪と関係なく目標位置の積雪に対して直接適切に温水を到達させることができるので、効率よく融雪を行うことができる。
【0050】
また、融雪システム1は、目標位置に対する到達位置のずれ量と変更量との対応関係を補正対応情報52として記憶する記憶部50を備える。制御部40は、目標位置と到達位置との位置関係と、当該位置関係と射出方向の補正量との対応関係とに基づいて、動作部30による射出方向の変更量を定める。
このような補正対応情報52を保持しておくことで、短時間かつ不規則で変化し得る風向や風速などに応じて速やかに目標位置に温水を到達させるように射出部10からの温水射出設定をより正確に行うことができる。
【0051】
また、検出部60は、目標位置を含む範囲の温度分布情報を取得し、制御部40は、温度分布情報に基づいて温水の到達位置を特定する。温水による温度上昇を検出することで、温水の射出後に適切に温水の到達位置を得ることができる。すなわち、射出中に高時間分解能の撮像を行う必要がなく、撮像能力や処理能力が必ずしも高くなくても融雪動作を行うことができる。
【0052】
また、制御部40は、検出部60による異なる2回の計測結果の差分を取得し、当該差分における温度上昇の分布に係る所定の代表位置を到達位置として特定する。温度変化は他のパラメータと比較して変動が緩やかなので、取得タイミングの制御が細かく制御される必要はない。一方で、直近の到達位置より前の到達位置の影響が残ることがあるので、温水射出の前後の温度変化を特定することで、直近の射出タイミングで温水が到達した位置であるか否かを適切に判別することができる。
【0053】
また、本実施形態の融雪動作制御方法では、射出部10により射出された温水の到達位置に係る情報を取得する情報取得ステップ、到達位置が線路(ポイント)に係る目標位置から外れていた場合に、当該到達位置と目標位置との位置関係に基づいて定められる変更量で、動作部30により射出方向を変更させる調整ステップ、を含む。
このような制御により分岐器から離隔した位置から温水を射出しても、風などの外的要因による温水の到達位置のずれを速やかに解消して適切に目標位置における融雪を行うことができる。したがって、線路内に融雪用の構成を配置する必要がなくなり、メンテナンスや調整の際に鉄道の運行を中断させたり、深夜帯に集中してメンテナンス作業を行ったりするといった負担をかけずに容易かつ適切に融雪動作を行うことができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の融雪システム1aについて説明する。
図9は、融雪システム1aについて説明する図である。
この融雪システム1aでは、動作部30は、射出部10をZ軸の周りに角度φ回転動作させ、またZ軸に沿って(すなわち、支持部Cの延在方向に)移動させる第1動作部301と、Y軸に沿って、すなわち、線路R(基本レールRf)の延在方向に平行な方向に移動させる第2動作部302とを有する。
【0055】
Y軸方向についての位置hの移動は、例えば、所定の高さの脚部Dにより支持されてY方向に延びるリニアガイドEに沿って行われる。第2動作部302は、例えば、電動シリンダなどを有し、射出部10をトングレールRtの可動部分、特に、基本レールRfとの接触部分/近接部分に応じた両端位置hmax、hminの間で往復移動させるものであってもよい。所定の高さは、線路面と同程度の高さ(地面上)であってもよいし、これより高くてもよい。なお、支持部Cは、脚部Dの代わりに基台などにより支持されていてもよいし、直立又は傾斜している壁面などに対して相対移動可能に支持されていてもよい。
【0056】
Z方向についての位置vの移動については、上記のように支持部Cを伸縮させるのに加えて又は代えて、Y方向と同様にレールに沿った移動がなされるものであってもよく、この場合、歯車とラックレールなどを用いて射出部10を上下動させてもよい。あるいは、エアシリンダ又は油圧シリンダなどによる昇降機構を有していてもよい。Z方向への移動に係る構成は、支持部Cや動作部30の内部に設けられていてもよい。
【0057】
この第2実施形態の融雪システム1aでは、検出部60は、Y方向に平行移動する支持部Cの代わりに固定された脚部Dなどに固定されていてもよい。Y方向について基準位置h0に固定されて両端位置hmax、hminの間の温度分布を安定して検出することができる。
【0058】
トングレールRtの長さを考慮すると、第1実施形態の融雪システム1では、射出部10のノズル11から目標位置までの距離、すなわち、温水の飛翔距離が大きく変化し得る。融雪システム1aのように、Y方向に平行移動可能とすることで、温水の飛翔距離の変化を小さくすることができる。
【0059】
射出方向設定51は、目標位置に各々応じて、射出方向のうち水平方向の角度φに加えて垂直方向についての位置v及び水平方向についての位置hが記憶される。位置hは、基準位置h0などに対する相対位置であってよい。
【0060】
この融雪システム1aにおける射出方向及び射出位置の設定動作は、上記射出方向設定処理において行われる射出方向の変更を射出方向及び射出位置の変更に変更しただけであり、実質上の動作は同一である。
【0061】
また、融雪システム1aにおける融雪動作制御処理は、上記第1実施形態の融雪システム1における融雪動作制御処理において、射出方向設定51などに基づいて設定、変更される射出方向が射出方向及び射出位置の設定となる点を除き同一である。
【0062】
以上のように、第2実施形態の融雪システム1aでは、射出部10からの温水の射出方向に加えて(又は代えて)射出位置も変更することができる。特に、水平方向に大きく移動可能とすることで、温水の到達距離を大きく変化させなくても複数の目標位置に適切に温水を到達させることができる。
【0063】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、各目標位置に対する温水の射出により当該目標位置で融雪してから、次の目標位置に温水を射出するように射出方向を変更するものとして説明したが、これに限られない。各目標位置に一度温水が到達するごとに射出方向を変更していき、周期的に各目標位置に温水を射出するものであってもよい。この場合、変更後射出前の温度計測に基づいて変更後の目標位置に積雪があるか否かを判別し、積雪がない場合には、この周期での目標位置への温水の射出を省略(スキップ)することができる。あるいは、降雪の有無を判断して、降雪時には一部のエリア(目標位置)が融雪していても全エリア(目標位置)が融雪しない限り各目標位置への温水の射出をスキップさせないこととしてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、単純に現在の目標位置と到達位置とのずれを判別したが、実際にはずれた結果として他の目標位置に到達位置が重なる場合がある。このような場合、当該到達位置に対応する目標位置への温水の射出をそのまま先に行うこととしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、垂直に起立する柱状の支持部Cに取り付けられた射出部10から温水を射出することとしたが、支持部Cは柱状に限られない。たとえば支持部Cは、箱状であってもよい。また、板状の支持部Cが既存の壁面などに直接取り付けられてもよいし、支持部Cが壁面から横向きに突出していてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、射出設定として、射出方向及び/又は射出位置を変更可能に定めるものとして説明したが、これらに加えて/いずれかに代えて、射出速度(圧力)が変更可能であってもよい。同一位置で同一方向に射出した場合でもより高速で射出させることで、温水をより遠くに到達させることができる。また、上記第1実施形態及び第2実施形態のいずれでも水平方向の角度φについては変更可能とされたが、射出方向の変更を必須とするものではない。射出位置及び射出速度の変更で到達位置が調整(補正)されてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、サーモグラフィにより赤外線画像により温度分布を取得するものとして説明したが、赤外線温度計を走査して2次元温度分布を取得してもよい。また、非接触での温度計測ではなく、複数の接触型温度センサ(サーミスタなど)が各エリアの道床や枕木などにそれぞれ位置していてもよい。あるいは、温水の射出時における可視光画像を撮像して、温水の到達位置を特定するものであってもよい。また、各エリアの積雪が残っているかあるいは融雪しているかについても、可視光画像の画像認識や、より単純に色(輝度値)などの分布に基づいて判別が行われてもよい。
【0068】
また、温水の到達位置の代表位置は、上記で示した重み付け平均以外の方法で定められてもよい。例えば、単純に温度(又は温度上昇)が最大の点を特定して代表位置としてもよいし、重み付けをせずに、基準以上の温度変化のあった点の平均位置を求めてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、射出対象の流体が温水であるものとして説明したが、温度計測以外の検出方法で到達位置を特定可能な場合には、融雪が可能な温度範囲であれば、加熱していない水であってもよい。また、融雪に有効であれば、水以外の流体であってもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、直接風向風速などを計測せずに、目標位置と到達位置とのずれ量にのみ基づいて射出方向の変更を行うこととしたが、風向や風速を計測し、変更中に計測結果が基準以上変化した場合などには、変更をリセットして最初から射出方向の調整をやり直してもよい。また、風向風速の変化量を考慮した射出方向の調整を行ってもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、風の影響のみを考慮して説明したが、これに限るものではない。状況や設置場所などに応じて他の影響、例えば、気圧などが考慮されてもよい。また、外的要因のみならず、ノズルの凍結や着雪などで当初正確に射出できない場合などについても同様の処理で到達位置を調整することとしてもよい。
【0072】
また、以上の説明では、融雪動作制御処理は、プログラムとして、記憶部50のマスクROMや不揮発性メモリなどに記憶させることができるが、記憶対象は、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0073】
1、1a 融雪システム
10 射出部
11 ノズル
12 射出駆動部
20 温水供給部
30 動作部
40 制御部
50 記憶部
51 射出方向設定
52 補正対応情報
60 検出部
70 通信部
B 制御箱
C 支持部
P 分岐器
R 線路
Rf 基本レール
Rt トングレール
T1、T2 射出対象位置
dTi 温度上昇幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9