(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097866
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】オートチョーク装置
(51)【国際特許分類】
F02M 1/10 20060101AFI20220624BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F02M1/10 A
F02D41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211097
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】三菱重工メイキエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石山 明洋
(72)【発明者】
【氏名】成田 紘之
(72)【発明者】
【氏名】牧田 健太朗
【テーマコード(参考)】
3G006
3G301
【Fターム(参考)】
3G006BA01
3G006BB02
3G006BC04
3G006BC07
3G301JA03
3G301KA01
3G301LA03
3G301PA10Z
3G301PE08Z
(57)【要約】
【課題】エンジンの始動の失敗リスクを低減可能なオートチョーク装置を提供する。
【解決手段】オートチョーク装置は、エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するためのオートチョーク装置であって、第1温度センサが計測するエンジン温度と、第2温度センサが計測する外気温度とを取得するように構成された取得部と、エンジン温度及び外気温度に基づいて、チョークバルブの開度を制御するように構成された開度制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するためのオートチョーク装置であって、
第1温度センサが計測するエンジン温度と、第2温度センサが計測する外気温度とを取得するように構成された取得部と、
前記外気温度または前記外気温度と前記エンジン温度との比較結果に基づいて、前記チョークバルブの開度を制御するように構成された開度制御部と、
を備えるオートチョーク装置。
【請求項2】
前記外気温度が第1基準値以上である場合、前記開度制御部は前記開度を全開状態に制御するように構成された
請求項1に記載のオートチョーク装置。
【請求項3】
前記エンジン温度と前記開度との関係性を示す複数の関係情報を記憶するための記憶部をさらに備え、
前記開度制御部は、前記エンジン温度と前記外気温度との比較結果に基づいて前記複数の関係情報から一つの前記関係情報を選択し、選択した前記関係情報に基づいて前記開度を制御する
請求項1又は2に記載のオートチョーク装置。
【請求項4】
前記複数の関係情報は、第1関係情報と、前記第1関係情報に比べて前記エンジン温度が同じ温度である場合における前記開度が大きい関係情報である第2関係情報と、を含む
請求項3に記載のオートチョーク装置。
【請求項5】
前記複数の関係情報は、前記チョークバルブの最低開度が全閉状態の開度である第1関係情報と、前記チョークバルブの最低開度が前記全閉状態の開度ではない第2関係情報と、を含む
請求項3又は4に記載のオートチョーク装置。
【請求項6】
前記開度制御部は、前記エンジン温度が前記外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度ではない場合には、前記第1関係情報を使用して前記開度を制御する
請求項4又は5に記載のオートチョーク装置。
【請求項7】
前記開度制御部は、前記エンジン温度が前記外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度であって、且つ、前記エンジン温度が第3基準値よりも高い温度である場合には、前記第2関係情報を使用して前記開度を制御する
請求項4乃至6の何れか一項に記載のオートチョーク装置。
【請求項8】
前記第1関係情報及び/又は前記第2関係情報は、
前記エンジン温度の変化に対して前記開度が最低開度で一定である第1温度領域と、
前記エンジン温度の変化に対して前記開度が最高開度で一定である第2温度領域と、
前記エンジン温度に応じて前記開度が変化する第3温度領域と、
を含む
請求項4乃至7の何れか一項に記載のオートチョーク装置。
【請求項9】
前記エンジン温度は、前記エンジンに点火するための点火コイルの温度である
請求項1乃至8の何れか一項に記載のオートチョーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するためのオートチョーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの始動に失敗するリスクを低減するためにエンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するオートチョーク装置が提案されている。例えば、特許文献1には、エンジン始動時のエンジン温度を代表する温度情報に基づいて、チョークバルブの開度を決定するオートチョーク装置が開示されている。エンジン温度には、潤滑油温度、シリンダヘッド温度、冷却水温度等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにエンジン温度のみに基づいてチョークバルブの開度を制御する構成では、エンジン温度が低い場合には外気温度が高くてもチョークバルブの開度を通常よりも閉鎖気味にするチョーク動作が作動する。本願発明者らの知見によれば、このような作動は空燃比を始動に適した適正値よりも低下させる虞がある。その結果、点火プラグのかぶりが発生してエンジンの始動に失敗する虞がある。また、エンジン運転履歴があるためにエンジン温度が既に高くなっている場合、適切なチョークバルブの開度に設定できないことにより、エンジンの始動に失敗する虞がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示は、エンジンの始動の失敗リスクを低減可能なオートチョーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るオートチョーク装置は、
エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するためのオートチョーク装置であって、
第1温度センサが計測するエンジン温度と、第2温度センサが計測する外気温度とを取得するように構成された取得部と、
前記外気温度または前記外気温度と前記エンジン温度との比較結果に基づいて、前記チョークバルブの開度を制御するように構成された開度制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エンジンの始動の失敗リスクを低減可能なオートチョーク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るオートチョーク装置を備えるエンジンの全体構成を例示する概略図である。
【
図2】一実施形態に係るオートチョーク装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係るオートチョーク装置が使用する関係情報を説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係るオートチョーク装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
(エンジンの全体構成)
図1は、一実施形態に係るオートチョーク装置100を備えるエンジン1の全体構成を例示する概略図である。エンジン1は、小型農機具、草刈り機、田植え機、耕運機等の作業機械のエンジンであってもよいし、車両のエンジンであってもよい。
【0011】
図1に示すように、エンジン1のシリンダヘッドには、エンジン1に点火するための点火プラグ3と、吸気量及び排気量を調整するための吸気弁4及び排気弁5とが設けられる。エンジン1は、エンジン温度を計測するための第1温度センサ2と、外気温度を計測するための第2温度センサ10とを備える。例えば、第1温度センサ2は、点火コイル13の温度をエンジン温度として計測するように設けられる。なお、エンジン温度は、エンジン1の代表温度であれば良く、潤滑油温度、シリンダヘッド温度、点火プラグ3の温度等であってもよい。
【0012】
吸気弁4が設けられた吸気管6には、気化器(キャブレター)7が接続される。気化器7は下流側に配置されたスロットルバルブ8と、その上流に配置されたチョークバルブ9とを備える。気化器7には空気と燃料(不図示)が供給される。エンジン1の吸気通路に設けられたチョークバルブ9は、ステッピングモータ11によって開閉駆動される。
【0013】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン1で駆動されることによって交流を発生するように構成された発電機12に連結されていてもよい。エンジン1のクランク軸には手動始動のためのリコイルスタータ(図示せず)を連結されてもよい。
【0014】
オートチョーク装置100は、エンジン1の吸気通路に設けられたチョークバルブ9の開度を制御するための装置である。オートチョーク装置100は、ステッピングモータ11を駆動して、チョークバルブ9の開度を制御して、エンジン1への空気の流入量を調整する。例えば、オートチョーク装置100は、エンジン温度と外気温度の計測値に基づいてチョークバルブ9の開度を制御して、適度な空燃比が得られるように空気の流入量を調整する。
【0015】
(オートチョーク装置の構成)
以下、オートチョーク装置100の構成について説明する。オートチョーク装置100は、例えば、プロセッサを含む中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、及びI/Oインターフェイス等を備え、マイクロコンピュータとして構成される。
【0016】
図2は、一実施形態に係るオートチョーク装置100の構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、オートチョーク装置100は、温度計測値を取得するように構成された取得部110と、チョークバルブ9の開度を制御するように構成された開度制御部120と、複数の関係情報を記憶するための記憶部130と、を備える。
【0017】
取得部110は、第1温度センサ2が計測するエンジン温度と、第2温度センサ10が計測する外気温度とを取得する。開度制御部120は、エンジン1の始動時において、取得部110が取得したエンジン温度及び外気温度に基づいて、チョークバルブ9の開度を制御する。開度制御部120は、例えば、ステッピングモータ11への入力パルス数を制御することによってチョークバルブ9の開度を制御する。
【0018】
記憶部130が記憶する関係情報は、エンジン温度とチョークバルブ9の開度との関係性を示す情報である。関係情報は、マップであってもよいし、テーブルであってもよいし、関数であってもよい。
【0019】
記憶部130は、オートチョーク装置100が備えるROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリや、RAMなどの揮発性メモリであっても良いし、オートチョーク装置100に接続された外部記憶装置であっても良い。また、記憶部130は、後述する制御処理を実行するためのプログラムを記憶していてもよい。
【0020】
図3は、一実施形態に係るオートチョーク装置100が使用する関係情報を説明するための図である。幾つかの実施形態では、関係情報は、例えば
図3に示すように、エンジン温度とチョークバルブ9の開度との関係性を示す情報である。幾つかの実施形態では、関係情報のエンジン温度は点火コイル13の温度である。
【0021】
例えば、
図3に示す例では、記憶部130には、第1関係情報と第2関係情報を含む2種類の関係情報が記憶される。破線31は、第1関係情報を示し、実線32は、第2関係情報を示している。第2関係情報は、第1関係情報に比べてエンジン温度が同じ温度である場合におけるチョークバルブ9の開度が大きい関係情報である。また、
図3に示すように、第1関係情報では、チョークバルブ9の最低開度が全閉状態の開度(例えば全閉又は10%以内の全閉に近い開度)であるのに対し、第2関係情報では、チョークバルブ9の最低開度が全閉状態の開度ではない。
【0022】
図3に示すように、第1関係情報及び第2関係情報は、エンジン温度が低い場合には開度が小さく、エンジン温度が高い場合には開度が大きくなり、全開に近づく関係性を示している。第1関係情報及び第2関係情報における最高開度は、全開状態の開度であってもよい。全開状態は、例えば、開度90%~100%の範囲内の開度であり、開度が全開又は全開近傍である状態を意味する。全開状態における開度は、最高開度又はチョーク動作無しの開度と解釈されてもよい。
【0023】
図3に示すように、第1関係情報及び/又は第2関係情報は、エンジン温度の変化に対してチョークバルブ9の開度が最低開度で一定である第1温度領域31A、32Aと、エンジン温度の変化に対してチョークバルブ9の開度が最高開度で一定である第2温度領域31B、32Bと、エンジン温度に応じてチョークバルブ9の開度が変化する第3温度領域31C、32Cと、を含んでいてもよい。
【0024】
なお、
図3には、2種類の関係情報のみが示されている。しかし、3種類以上の関係情報が使用されてもよい。3種類以上の関係情報を使用する構成では、例えば、外気温度、エンジン温度、回転数等の状態量等に応じて、関係情報が使い分けられてもよい。
【0025】
開度制御部120は、取得部110が取得した外気温度及びエンジン温度との比較結果に基づいて複数の関係情報のうち一つの関係情報を選択し、選択した関係情報に基づいてチョークバルブ9の開度を制御してもよい。例えば、開度制御部120は、比較結果においてエンジン温度が外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度ではない場合には、第1関係情報を使用してチョークバルブ9の開度を制御してもよい。第2基準値は、0.5℃以上5℃以下の範囲内の値に設定されることが好ましく、例えば、5℃である。
【0026】
開度制御部120は、比較結果においてエンジン温度が外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度であって、且つ、エンジン温度が第3基準値よりも高い温度である場合には、第2関係情報を使用してチョークバルブ9の開度を制御してもよい。第3基準値は、40℃以上80℃以下の範囲内の値に設定されることが好ましく、例えば、60℃である。
【0027】
オートチョーク装置100が使用する関係情報は、一つの関数であってもよく、オートチョーク装置100は、その関数に含まれる係数を適宜変更してもよい。オートチョーク装置100は、このような係数の変更により、複数の関係情報を使用する構成と実質的に同一の機能を実現してもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、開度制御部120は、取得部110が取得した外気温度が第1基準値以上である場合、チョークバルブ9の開度を全開状態に制御するように構成される。開度制御部120は、取得部110が取得した外気温度が第1基準値以上である場合には、エンジン温度と外気温度の比較結果に依らず、チョーク動作を実行せず、チョークバルブ9の開度を通常の開度(例えば、全開又は最高開度)に制御してもよい。第1基準値は、例えば気温の中でも高い温度(例えば30℃)に設定される。
【0029】
(処理の流れ)
以下、オートチョーク装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図4は、一実施形態に係るオートチョーク装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
この処理は、エンジン1の始動時に実行される。エンジン1の始動制御開始時には、チョークバルブ9は、運転状態の開度すなわち全開状態となるように制御され、その開度から以降の処理において温度計測値に応じた開度に制御される。なお、この例では、第1関係情報と第2関係情報の2種類の関係情報を用いた制御について説明するが、オートチョーク装置100が実行する処理は、このような制御に限られない。また、エンジン1の始動は、リコイルスタータ(不図示)による始動であってもよい。
【0031】
図4に示すように、オートチョーク装置100の取得部110は、第1温度センサ2と第2温度センサ10からエンジン温度Teと外気温度Toの計測値を取得する(ステップS1)。オートチョーク装置100は、取得した外気温度Toが第1基準値以上であるか否かを判別する(ステップS2)。
【0032】
外気温度Toが第1基準値以上であると判別した場合(ステップS2;Yes)、オートチョーク装置100の開度制御部120は、チョークバルブ9を全開状態に開度制御する(ステップS3)。一方、外気温度Toが第1基準値以上ではないと判別した場合(ステップS2;No)、オートチョーク装置100は、取得したエンジン温度Teが外気温度Toに対して第2基準値以上だけ高い温度(すなわちTe≧To+第2基準値)であるか否かを判別する(ステップS4)。
【0033】
エンジン温度Teが外気温度Toに対して第2基準値以上だけ高い温度ではないと判別した場合(ステップS4;No)、オートチョーク装置100の開度制御部120は、第1関係情報に基づいてチョークバルブ9を開度制御する(ステップS7)。一方、エンジン温度Teが外気温度Toに対して第2基準値以上だけ高い温度であると判別した場合(ステップS4;Yes)、オートチョーク装置100は、取得したエンジン温度Teが第3基準値以上であるか否かを判別する(ステップS5)。
【0034】
エンジン温度Teが第3基準値以上ではないと判別した場合(ステップS5;No)、オートチョーク装置100の開度制御部120は、第1関係情報に基づいてチョークバルブ9を開度制御する(ステップS7)。一方、エンジン温度Teが第3基準値以上であると判別した場合(ステップS5;Yes)、オートチョーク装置100は、第2関係情報に基づいてチョークバルブ9を開度制御する(ステップS6)。なお、ステップS3、6、7において、始動が成功した後は、開度制御部120は、チョークバルブ9の開度を大きくして通常のエンジン1の運転状態の開度に制御する。
【0035】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、複数の実施形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0036】
(まとめ)
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)本開示に係るオートチョーク装置(100)は、
エンジン(1)の吸気通路に設けられたチョークバルブ(9)の開度を制御するためのオートチョーク装置(100)であって、
第1温度センサ(2)が計測するエンジン温度と、第2温度センサ(10)が計測する外気温度とを取得するように構成された取得部(110)と、
前記外気温度または前記外気温度と前記エンジン温度との比較結果に基づいて、前記チョークバルブ(9)の開度を制御するように構成された開度制御部(120)と、
を備える。
【0038】
上記構成では、エンジン温度だけでなく外気温度もチョークバルブ(9)の開度の制御に使用している。そのため、エンジン温度が低くても外気温度が高ければチョーク動作を作動させないようにチョークバルブ(9)の開度を制御することが可能となる。また、外気温度とエンジン温度の比較により、エンジン運転履歴の有無も踏まえてチョークバルブ(9)の開度を設定することが可能となる。このようなチョークバルブ(9)の開度制御により、エンジン(1)の始動の失敗リスクを低減することができる。
【0039】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記外気温度が第1基準値以上である場合、前記開度制御部(120)は前記開度を全開状態に制御するように構成される。
【0040】
例えば、特許文献1のようにエンジン温度のみに着目してチョークバルブ(9)の開度を制御する構成であればチョークバルブ(9)の開度を閉鎖気味に制御するような低いエンジン温度であっても、上記構成では、外気温度が第1基準値以上である場合には、チョークバルブ(9)の開度を全開状態に制御する。そのため、点火プラグ(3)のかぶりの発生を抑制することができ、エンジン(1)の始動に失敗する虞を低減することができる。
【0041】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、
前記エンジン温度と前記開度との関係性を示す複数の関係情報を記憶するための記憶部(130)をさらに備え、
前記開度制御部(120)は、前記エンジン温度と前記外気温度との比較結果に基づいて前記複数の関係情報から一つの前記関係情報を選択し、選択した前記関係情報に基づいて前記開度を制御する。
【0042】
上記構成によれば、エンジン温度と外気温度との比較結果に応じた関係情報を使用してチョークバルブ(9)の開度を制御するため、始動に適した空燃比となるようにチョークバルブ(9)の開度を制御して始動することが可能となる。
【0043】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、
前記複数の関係情報は、第1関係情報と、前記第1関係情報に比べて前記エンジン温度が同じ温度である場合における前記開度が大きい関係情報である第2関係情報と、を含む。
【0044】
上記構成によれば、エンジン温度と外気温度との比較結果に応じて第1関係情報と第2関係情報とを使い分けてチョークバルブ(9)の開度を制御する。そのため、チョークバルブ(9)の開度を容易に適正値に制御することが可能となる。
【0045】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載の構成において、
前記複数の関係情報は、前記チョークバルブ(9)の最低開度が全閉状態の開度である第1関係情報と、前記チョークバルブ(9)の最低開度が前記全閉状態の開度ではない第2関係情報と、を含む。
【0046】
上記構成によれば、通常のチョーク動作で空燃比が適切な場合には、第1関係情報を使用し、通常のチョーク動作では空燃比が適切でない場合には、第2関係情報を使用することができる。これにより、不必要なチョーク動作を抑えることが可能となり、例えば点火プラグ(3)のかぶり発生を抑制することができる。
【0047】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の構成において、
前記開度制御部(120)は、前記エンジン温度が前記外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度ではない場合には、前記第1関係情報を使用して前記開度を制御する。
【0048】
上記構成では、エンジン(1)の運転履歴によってエンジン温度が外気温度に対して第2基準値以上だけ高くなっていない場合は、第1関係情報を使用してチョークバルブ(9)の開度が比較的小さくなるように制御される。そのため、エンジン(1)の運転履歴によってエンジン温度が高くなっていない場合においても適切なチョークバルブ(9)の開度に制御することが可能となる。
【0049】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れか一つに記載の構成において、
前記開度制御部(120)は、前記エンジン温度が前記外気温度に対して第2基準値以上だけ高い温度であって、且つ、前記エンジン温度が第3基準値よりも高い温度である場合には、前記第2関係情報を使用して前記開度を制御する。
【0050】
上記構成では、エンジン(1)の運転履歴によってエンジン温度が外気温度に対して第2基準値以上だけ高く、且つ、エンジン温度が第3基準値よりも高い温度である場合には、第2関係情報を使用してチョークバルブ(9)の開度が比較的大きくなるように制御される。そのため、温度状態にエンジン(1)の運転履歴の影響がある場合においても適切なチョークバルブ(9)の開度に制御することが可能となる。
【0051】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記第1関係情報及び/又は前記第2関係情報は、
前記エンジン温度の変化に対して前記開度が最低開度で一定である第1温度領域と、
前記エンジン温度の変化に対して前記開度が最高開度で一定である第2温度領域と、
前記エンジン温度に応じて前記開度が変化する第3温度領域と、
を含む。
【0052】
上記構成によれば、エンジン温度に適したチョークバルブ(9)の開度に制御することが可能となる。
【0053】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れか一つに記載の構成において、
前記エンジン温度は、前記エンジン(1)に点火するための点火コイル(13)の温度である。
【0054】
上記構成によれば、チョークバルブ(9)の開度を高精度に制御することが可能となる。また、点火コイル(13)の温度に基づく他の制御と組み合わせることも可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 エンジン
2 第1温度センサ
3 点火プラグ
4 吸気弁
5 排気弁
6 吸気管
7 気化器
8 スロットルバルブ
9 チョークバルブ
10 第2温度センサ
11 ステッピングモータ
12 発電機
13 点火コイル
31 破線
32 実線
100 オートチョーク装置
110 取得部
120 開度制御部
130 記憶部