(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097892
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】脱脂米糠、及び脱脂米糠の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220624BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211129
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 淳
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LE08
4B023LP07
4B023LP20
(57)【要約】
【課題】脱脂米糠の流動性を良好にする。
【解決手段】脱脂米糠は、油分を6~19質量%含み、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分を6~19質量%含み、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下であることを特徴とする脱脂米糠。
【請求項2】
前記油分が10~15質量%である請求項1に記載の脱脂米糠。
【請求項3】
前記粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下である請求項1又は2に記載の脱脂米糠。
【請求項4】
油分が6~19質量%となるように米糠を圧搾する圧搾工程と、
前記圧搾工程を経た米糠を粉砕して、粒径50μm以上の粒子の割合を5%以下にする粉砕工程とを有することを特徴とする脱脂米糠の製造方法。
【請求項5】
前記圧搾工程において、油分が10~15質量%となるように米糠を圧搾する請求項4に記載の脱脂米糠の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕工程において、粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下になるように米糠を粉砕する請求項4又は5に記載の脱脂米糠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂米糠、及び脱脂米糠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、脱脂米糠を配合した食品組成物が知られている。
特許文献1には、油分としての脂質の含量が5~15質量%となるまで脱脂した米糠が開示されている。この米糠を平均粒径30μm以下となるまで粉砕処理を行って得られた微粒化脱脂米糠と、豆乳と、精製した米油とを含有する飲料組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により製造した米糠錠剤が開示されている。脱脂米糠における油分としての脂肪分は4%以下であり、粒子径50μm以上の粒子を全体の5%以下含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-64561号公報
【特許文献2】特開2008-86206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油分を6~19質量%程度含む脱脂米糠は、流動性が低いため、例えば食品組成物の原料である食品加工用原料として用いた際に、作業効率が低下しやすい傾向がある。具体的には、脱脂米糠を、タンク等の調合槽に投入する際に、脱脂米糠を収容した容器を傾けても容器から脱脂米糠が落ちにくい場合があり、調合槽への投入に手間がかかるという課題を有している。
【0006】
一般に、粒径が相対的に大きい粉体と、粒径が相対的に小さい粉体とでは、粒径が相対的に小さい粉体の方が粒子同士の摩擦が大きいため、流動性が低下する傾向がある。本発明は、上記傾向に反して、所定の油分を含む脱脂米糠では、粒径が相対的に小さく所定の粒度分布を有する粉体の方が、流動性が良好になることを見出したことによってなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための脱脂米糠は、油分を6~19質量%含み、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下であることを要旨とする。
上記脱脂米糠について、前記油分が10~15質量%であることが好ましい。
【0008】
上記脱脂米糠について、前記粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下であることが好ましい。
上記課題を解決するための脱脂米糠の製造方法は、油分が6~19質量%となるように米糠を圧搾する圧搾工程と、前記圧搾工程を経た米糠を粉砕して、粒径50μm以上の粒子の割合を5%以下にする粉砕工程とを有することを要旨とする。
【0009】
上記脱脂米糠の製造方法について、前記圧搾工程において、油分が10~15質量%となるように米糠を圧搾することが好ましい。
上記脱脂米糠の製造方法について、前記粉砕工程において、粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下になるように米糠を粉砕することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、脱脂米糠の流動性が良好になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る脱脂米糠を具体化した実施形態について説明する。
本実施形態の脱脂米糠は、油分を6~19質量%含み、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下である。
【0012】
脱脂米糠が、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下であることにより、油分を6~19質量%含んでいても流動性を良好にすることができる。そのため、食品加工用原料として用いた際に、作業効率の低下を抑制することができる。
【0013】
また、脱脂米糠が、油分を6~19質量%含むことにより、油分を食品組成物の栄養成分として好適に利用することが可能になる。
なお、後述のように、脱脂米糠の流動性は、脱脂米糠の安息角を測定することによって評価することができる。脱脂米糠の流動性の評価において、安息角は90°以下であることが好ましい。
【0014】
上記脱脂米糠の油分は、10~15質量%であることが好ましい。
上記脱脂米糠は、粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下であることが好ましい。
また、上記脱脂米糠は、粒径0.01~100μmの範囲に全体の99.5%が入るものであることが好ましい。粒径が100μmを超えるものの割合を小さくすることにより、流動性をより良好にすることができる。
【0015】
粒径50μm以上の粒子の割合や、粒径0.01~100μmの範囲に入る粒子の割合の測定方法は、特に制限されず、公知の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。公知の粒度分布測定装置としては、例えばレーザ回折・散乱式粒度分布計((株)セイシン企業社製、LMS-3000)が挙げられる。
【0016】
脱脂米糠に使用する米糠は、特に制限されず、公知の米糠を使用することができる。公知の米糠としては、例えば玄米の果皮、種皮、外胚乳、澱粉層等、玄米を精白して白米を製造する際に副生するものを使用することができる。
【0017】
脱脂米糠に使用される米糠は、一般に油分を20質量%程度含有しているため、リパーゼによる油の酸化が急速に進む虞がある。そのため、精白後のできるだけ早い時期にリパーゼ失活処理を施すことが好ましい。リパーゼ失活処理は、特に制限されないが、例えば米糠を70~130℃で加熱処理することにより行われる。加熱処理には、例えばクッキング装置、乾式エクストルーダー、湿式エクストルーダー、水蒸気処理装置等を用いることができる。
【0018】
リパーゼ失活処理を行うことに代えて、予めリパーゼ失活処理が施された市販の米糠を用いてもよい。
脱脂米糠の製造方法について説明する。
【0019】
本実施形態の脱脂米糠の製造方法は、油分が6~19質量%となるように米糠を圧搾する圧搾工程と、圧搾工程を経た米糠を粉砕して、粒径50μm以上の粒子の割合を5%以下にする粉砕工程とを有する。
【0020】
圧搾工程について説明する。
圧搾工程における米糠の圧搾方法としては、特に制限されず、公知の圧搾方法を採用することができる。公知の圧搾方法としては、例えば100~120℃に加熱された米糠を低温連続圧搾機(例えば(株)テクノシグマ社より販売されているミラクルチャンバー)によって機械的に圧搾する方法が挙げられる。圧搾工程における圧力や時間を調整することにより、脱脂米糠の油分の量を制御することができる。言い換えれば、米糠の脱脂状態を制御することができる。
【0021】
ここで、米糠を脱脂する方法としては、圧搾方法以外に、有機溶媒抽出法や、超臨界脱脂法等が知られている。しかし、有機溶媒抽出法や超臨界脱脂法は、残留させる油分の量を制御することが難しい。また、有機溶媒抽出法は、有機溶媒が残留する虞がある。上記の圧搾方法によれば、油分の量を制御することが容易であるとともに、有機溶媒が残留する虞がない。そのため、食品加工原料となる脱脂米糠の製造に適している。
【0022】
圧搾工程を経た米糠の油分の量の測定方法としては、特に制限されない。例えば、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に準拠した油分測定法によって測定することができる。
【0023】
粉砕工程について説明する。
粉砕工程における米糠の粉砕方法としては、特に制限されず、公知の粉砕方法を採用することができる。公知の粉砕方法としては、例えば公知の粉砕機を用いて行うことができる。公知の粉砕機としては、例えばサイクロンミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ローラーミル、石臼、デスクミル等が挙げられる。
【0024】
上記粉砕機を用いて粉砕を行った後に、公知の分級機を用いて分級を行ってもよい。さらに、分級を行った後に、脱脂米糠が所定の粒度分布となるように、粒子同士を配合してもよい。すなわち、粉砕工程は、分級処理や配合処理を含んでいてもよい。
【0025】
公知の分級機としては、例えば乾式分級機が挙げられる。また、乾式分級機としては、さらに重力分級機、慣性分級機、遠心分級機等が挙げられる。
以上の各工程を経ることにより、本実施形態の脱脂米糠を製造することができる。
【0026】
本実施形態の脱脂米糠は、複数の角部を有する粒子状となる。具体的には、脱脂米糠の形状は球形ではなく、表面に複数の凹凸を備える小片状に形成される。
本実施形態の脱脂米糠の用途としては、特に制限されず、食品組成物の原料である食品加工用原料として用いることが好ましい。食品組成物の分類としては、特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保険機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。
【0027】
食品組成物の形態としては特に制限されず、例えば、液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状、打錠状等が挙げられる。上記液状としては、飲料、スープ、カレー等が挙げられる。上記粉末状としては、粉末飲料、粉末スープ等が挙げられる。
【0028】
食品組成物の形態としては、より具体的には、調味料(甘味料、食塩代替組成物、醤油、酢、味噌、ソース、ケチャップ、ドレッシング、スパイス、ハーブ等、フレーク(ふりかけ、炊飯添加剤等)、焼き肉のたれ、ルーペースト(カレールーペースト等))、食材プレミックス品等が挙げられる。
【0029】
さらに、食品組成物の形態としては、タブレット菓子、ゼリー類、スナック類、焼き菓子、揚げ菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、グミ等の菓子類、麺類、ハム・ソーセージ、アイスクリーム、豆腐、チーズ、ヨーグルト等も挙げられる。
【0030】
なお、上記打錠状は、一般に油分の含量が小さい、例えば油分が4質量%以下程度の脱脂米糠を用いて製造される。そのため、本実施形態の脱脂米糠が用いられる食品組成物の形態として、打錠状は含まないことが好ましい。
【0031】
食品組成物は、本実施形態の脱脂米糠以外に、食品に許容される添加物を含有していてもよい。食品に許容される添加物としては、特に制限はないが、例えば溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、pH調整剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤等が挙げられる。これら添加物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に及ぼす影響として許容される範囲内において含有させることができる。
【0032】
本実施形態の脱脂米糠の効果について説明する。
(1)油分を6~19質量%含み、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下である。油分を6~19質量%含んでいても脱脂米糠の流動性を良好にすることができる。したがって、食品加工用原料として用いた際に、作業効率の低下を抑制することができる。
【0033】
(2)油分が10~15質量%である。脱脂米糠を食品加工用原料に用いるうえで、油分の含有量が好適なものとなる。したがって、食品加工用原料に好適な脱脂米糠において、流動性を良好にすることができる。
【0034】
(3)粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下である。したがって、脱脂米糠の流動性をより良好にすることができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0035】
・本実施形態の脱脂米糠の用途は、食品加工用原料に限定されない。例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品としても使用することができる。
【実施例0036】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
精米直後の米糠を95℃に加熱してリパーゼ失活処理を行った。さらに、108℃に加熱して、低温連続圧搾機((株)テクノシグマ社より販売されているミラクルチャンバー)を用いて圧搾した。圧搾した米糠の油分は、13.1質量%であった。次に、(株)静岡プラント社製の粉砕機(サイクロンミル400S)を用いて、米糠を粉砕した。
【0037】
以上の手順により、表1に示す実施例1の脱脂米糠を製造した。
実施例2、比較例1~3の脱脂米糠は、粉砕の条件を変更したり、適宜分級処理や配合処理を行ったりしたことを除いて、実施例1と同様に脱脂米糠を製造した。
【0038】
【表1】
(評価試験)
実施例1、2、比較例1~3の脱脂米糠について、粒度分布、流動性を評価した。粒度分布の測定方法、流動性の評価基準について以下に示す。
【0039】
(粒度分布)
脱脂米糠の粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布計((株)セイシン企業社製、LMS-3000)を用いて、分散媒としてイソプロピルアルコールを使用し、レーザー回折・散乱法により測定した。測定結果を表1に示す。なお、表1において、平均粒子径は、メジアン径である。また、実施例1、2の脱脂米糠は、粒径0.01~100μmの範囲に全体の99.5%が入っていた。比較例1~3では、それぞれ、100%、91.9%、100%であった。
【0040】
(流動性)
流動性の評価は、フルード工業株式会社製の「かさ密度・安息角計」を用いて傾斜法によって行った。各例の脱脂米糠を、かさ密度・安息角計の本体における約半分まで入れて蓋を閉めた。角度計の針が0°を指す位置で軽くタッピングをしたり、揺すったりして、脱脂米糠の上端に位置する表層をなるべく水平にならした。
【0041】
かさ密度・安息角計を手でゆっくりと転がし、脱脂米糠の表層にある粒子が滑り始めた時点で角度計が示す角度(安息角)を目視で読み取った。以下の基準で流動性を評価した。
【0042】
・流動性の評価基準
○:安息角が90°以下である場合
×:安息角が90°を超える場合
表1の結果から、本発明によれば、脱脂米糠の流動性が良好であった。したがって、食品加工用原料として用いた際に、作業効率の低下を抑制することができる。