(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097933
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】温水タンク装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/20 20220101AFI20220624BHJP
【FI】
F24H1/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211192
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正人
(72)【発明者】
【氏名】原 沙也加
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA33
3L122AB30
3L122AB59
3L122AB66
(57)【要約】
【課題】タンクの底部に整流板を設置するものとしても、タンクの底部に貯水されている水を効率よく加温する。
【解決手段】温水タンク装置は、タンクと、タンク内に貯水された水を加温するヒータと、タンクの底部に横方向に延在するように設置され上下に貫通する貫通孔を有する整流板と、整流板とタンクの底面との間の空間に水を流入させる流入部と、整流板の上面における貫通孔の開口周縁部から貫通孔を覆うようにヒータに対して離間する方向に延出されたひさし部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯水するタンクと、
前記タンク内に貯水された水を加温するヒータと、
前記タンクの底部に横方向に延在するように設置され、上下に貫通する貫通孔を有する整流板と、
前記整流板と前記タンクの底面との間の空間に水を流入させる流入部と、
前記タンクの上部に設けられ、前記流入部からの水の流入により前記タンク内に貯水されている水を流出させる流出部と、
前記整流板の上面における前記貫通孔の開口周縁部から該貫通孔を覆うように前記ヒータに対して離間する方向に延出されたひさし部と、
を備える温水タンク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水タンク装置であって、
前記流出部は、前記ヒータの上方に形成され、
前記ひさし部は、前記ヒータおよび前記流出部に対して離間する方向に延出される、
温水タンク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水タンク装置であって、
前記ヒータは、前記整流板と略同一平面上に設置される、
温水タンク装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温水タンク装置であって、
前記整流板は、前記タンクの1つの内側面に対して所定の隙間を有するように設置され、
前記ヒータは、前記隙間に前記1つの内側面に沿うように設置される、
温水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温水タンク装置としては、給水源からの水を貯えるタンクと、タンク内の底部にタンクの底面と略平行に配置された整流板と、整流板とタンクの底面との間の空間(拡散室)内に水を流入させる給水口と、タンクの上部に設けられた吐出口と、整流板の上方に配置されタンク内の水を加温するヒータと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、タンクの底部に整流板を設置することで、タンクに貯留されている温水と流入する冷水とが混ざり合うのを抑制し、タンク内の温水の温度低下を抑制することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した温水タンク装置では、流入水によるタンク内の温水の撹拌を少なくすることができるものの、タンクの底部は整流板によってヒータと隔てられるため、タンクの底部に貯えられる水は温まり難くなる。
【0005】
本発明の温水タンク装置は、タンクの底部に整流板を設置するものとしても、タンクの底面と整流板との間の空間内の水を効率よく加温することができる温水タンク装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温水タンク装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の温水タンク装置は、
水を貯水するタンクと、
前記タンク内に貯水された水を加温するヒータと、
前記タンクの底部に横方向に延在するように設置され、上下に貫通する貫通孔を有する整流板と、
前記整流板と前記タンクの底面との間の空間に水を流入させる流入部と、
前記タンクの上部に設けられ、前記流入部からの水の流入により前記タンク内に貯水されている水を流出させる流出部と、
前記整流板の上面における前記貫通孔の開口周縁部から該貫通孔を覆うように前記ヒータに対して離間する方向に延出されたひさし部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の温水タンク装置では、整流板の上面における貫通孔の開口周縁部から貫通孔を覆うようにヒータに対して離間する方向に延出されたひさし部を備えるため、ヒータにより加温された温水は、対流によってひさし部の開口側へ回り込み、貫通孔から整流板とタンクの底面との間の空間へと流れ込むこととなる。これにより、整流板とタンクの底面との間の空間内の水を効率よく加温することができる。この結果、限られた容量のタンクで温水を長時間出湯することが可能となる。
【0009】
こうした本発明の温水タンク装置において、前記流出部は、前記ヒータの上方に形成され、前記ひさし部は、前記ヒータおよび前記流出部に対して離間する方向に延出されるものとしてもよい。こうすれば、流入部から流入し整流板の貫通孔から上方へ流れる冷水をひさし部によって流出部から離間する方向に導くことができる。このため、流入部から流入した冷水が流出部へ向かって流れ、低温の温水が供給されてしまうのを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の温水タンク装置において、前記ヒータは、前記整流板と略同一平面上に設置されるものとしてもよい。この場合、前記整流板は、前記タンクの1つの内側面に対して所定の隙間を有するように設置され、前記ヒータは、前記隙間に前記1つの内側面に沿うように設置されるものとしてもよい。こうすれば、タンク内で温度差による対流を発生させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の温水タンク装置を含む衛生洗浄装置の概略構成図である。
【
図4】待機時のタンク内部の様子を示す説明図である。
【
図5】出湯時のタンク内部の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の温水タンク装置を含む衛生洗浄装置の概略構成図であり、
図2は、温水タンク装置の分解斜視図であり、
図3は、温水タンク装置の断面図である。なお、
図3は、温水ヒータ30の長手方向と交差する方向に切断した断面を示す。
【0014】
衛生洗浄装置1は、洋式便器に設置され、便座に着座している使用者の局部に洗浄水を噴出して局部洗浄を行なうものであり、
図1に示すように、給水管から洗浄水配管2への水(水道水)の供給を司る止水弁3と、洗浄水配管2に接続された温水タンク装置10と、温水タンク装置10からの温水を噴出するノズルユニット5と、を備える。ノズルユニット5は、洗浄強さを調整する脈動ポンプ6と、複数のノズル7a,7bと、温水タンク装置10からの温水を複数のノズル7a,7bのうちいずれのノズルから噴出させるのかを切り替える切替バルブ8と、を有する。なお、複数のノズル7a,7bとしては、例えば、おしり洗浄用のノズルやビデ洗浄用のノズルなどを挙げることができる。
【0015】
本実施形態の温水タンク装置10は、貯湯式の温水タンク装置として構成されており、
図2および
図3に示すように、水を流入させる流入口22を底部に有すると共に水を流出させる流出口26を頂部に有するタンク本体20と、タンク本体20内に貯水されている水を加温する温水ヒータ30と、タンク本体20内の水温を検出するサーミスタ31と、温水ヒータ30の過昇温を防止するための温度ヒューズ32と、を備える。
【0016】
タンク本体20は、下ハウジング21と、下ハウジング21に嵌合される上ハウジング25と、を有し、タンク本体20に貯水された水は、流入口22からの流入水によって押し上げられることにより流出口26から流出される。タンク本体20の底面には、内部の水を排出するためのドレン孔23が設けられ、当該ドレン孔23には、ドレンプラグ24が取り付けられる。
【0017】
温水ヒータ30は、容量が200W~300W程度のヒータにより構成される。この温水ヒータ30は、長尺状に形成され、下ハウジング21における短手側の一方の側壁21cから短手側の他方の側壁21d付近まで、長手側の一方の側壁21aに近接かつ沿うように設置される。下ハウジング21における短手側の他方の側壁21dには、長手側の他方の側壁21bに近接するように、上述した流入口22が設けられる。また、流出口26は、上ハウジング25の頂部における、温水ヒータ30の上方に設けられる。
【0018】
整流板40は、
図3に示すように、タンク本体20の底面に対して所定間隔を隔てて略水平方向(横方向)に延在し、タンク本体20における長手側の他方の側壁21bとこれと直交する短手側の両側壁21c,21dの3面に接触すると共に長手側の一方の側壁21aと所定の隙間を有するように設置される。整流板40と長手側の一方の側壁21aとの間の隙間には、上述した長尺状の温水ヒータ30が設置される。温水ヒータ30の長手方向と交差する方向において、温水ヒータ30と整流板40との間と、温水ヒータ30と長手側の一方の側壁21aとの間には、
図3に示すように、所定の隙間が設けられている。
【0019】
また、整流板40は、
図3に示すように、上下に貫通する多数の貫通孔42が所定の間隔をおいて形成され、各貫通孔42の開口周縁部には、貫通孔42を覆うように延在するひさし部44が形成されている。各ひさし部44は、温水ヒータ30から離間する方向に延出されている。上述したように、流出口26は、温水ヒータ30の上方に設けられているため、各ひさし部44は、流出口26とも離間する方向に延出されている。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の温水タンク装置10における待機時および出湯時の動作について説明する。
図4は、待機時のタンク内部の様子を示す説明図である。待機時において、温水タンク装置10では、サーミスタ31により検出される水温が使用者による図示しない操作パネルやリモートコントローラ等の操作に基づいて設定される目標水温と一致するように温水ヒータ30のスイッチが制御され、温水ヒータ30の熱により周辺の水が加温される。温水ヒータ30周辺の加温された温水は、その上方の水との温度差によって対流し、温水ヒータ30の設置位置である下ハウジング21の短手側の一方の側壁21c近傍から、上ハウジング25の頂部(内面)、短手側の他方の側壁21dを伝って、ひさし部44の開口側へと回り込み、ひさし部44に導かれて貫通孔42を通り、整流板40の下方へと流れ込むこととなる。これにより、整流板40とタンク本体20の底面との間の空間に温水を供給することができ、タンク内部の全域を効率よく加温することができる。
【0021】
図5は、出湯時のタンク内部の様子を示す説明図である。出湯時において、温水タンク装置10では、止水弁3の開弁により底部の流入口22から水が流入し、流入水によりタンク本体20の内部に貯水されている温水が上部の流出口26から押し出される。このとき、タンク本体20には、底面に略平行に延在して上下の空間を仕切る整流板40が設置されており、流入口22は、整流板40とタンク本体20の底面との間の空間と連通するように設けられているため、流入口22に流入された冷水が、温水と混ざり合うのを抑制することができる。さらに、整流板40には、多数の貫通孔42が形成されているため、流入水の一部は、整流板40の貫通孔42を通って上方に流れるが、貫通孔42を通過した水は、ひさし部44によって、流出口26とは離間する方向へ導かれる。これにより、流入した冷水が流出口26へ向かって流れ、低温の温水が供給されてしまうのを抑制することができる。
【0022】
以上説明した本実施形態の温水タンク装置10では、整流板40の上面における貫通孔42の開口周縁部から貫通孔42を覆うように温水ヒータ30に対して離間する方向に延出されたひさし部44を備える。これにより、温水ヒータ30により加温された温水は、対流によってひさし部44の開口側へ回り込み、貫通孔42から整流板40とタンク本体20の底面との間の空間へと流れ込むこととなる。これにより、整流板40とタンク本体20の底面との間の空間も含むタンク内全域で水を効率よく加温することができ、限られた容量のタンクで温水を長時間出湯することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態の温水タンク装置10では、流出口26は、温水ヒータ30の上方に形成され、ひさし部44は、温水ヒータ30および流出口26に対して離間する方向に延出される。これにより、流入口22から流入して整流板40の貫通孔42から上方へ流れる冷水をひさし部44によって流出口26から離間する方向に導くことができる。このため、流入した冷水が流出口26へ向かって流れ、低温の温水が供給されてしまうのを抑制することができる。
【0024】
さらに、本実施形態の温水タンク装置10では、整流板40は、タンク本体20(下ハウジング21)の3面(側壁21b,21c,21d)に当接すると共に1面(側壁21a)と隙間をおいて略水平方向に延在し、温水ヒータ30は、当該隙間に設置される。これにより、タンク内部で温度差による対流を発生させやすくすることができる。
【0025】
上述した実施形態では、温水ヒータ30は、下ハウジング21の長手側の一方の側壁21aに近接させて設置されたが、長手側の一方の側壁21aと他方の側壁21bとの間の中間部に設置されてもよい。また、流出口26は、温水ヒータ30の上方に設けられたが、温水ヒータ30に対して水平方向にずれた位置に設けられてもよい。いずれの構成であっても、ひさし部44は、温水ヒータ30に対して離間する方向に延出するように形成すればよい。
【0026】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、タンク本体20が「タンク」に相当し、温水ヒータ30が「ヒータ」に相当し、整流板40が「整流板」に相当し、流入口22が「流入部」に相当し、流出口26が「流出部」に相当し、貫通孔42が「貫通孔」に相当し、ひさし部44が「ひさし部」に相当する。
【0027】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、温水タンク装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 衛生洗浄装置、2 洗浄水配管、3 止水弁、5 ノズルユニット、6 脈動ポンプ、7a,7b ノズル、8 切替バルブ、10 温水タンク装置、20 タンク本体、21 下ハウジング、21a~21d 側壁、22 流入口、23 ドレン孔、24 ドレンプラグ、25 上ハウジング、25a 頂部、26 流出口、30 温水ヒータ、31 サーミスタ、32 温度ヒューズ、40 整流板、42 貫通孔、44 ひさし部。