IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図1
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図2
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図3
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図4
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図5
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図6
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図7
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図8
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図9
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図10
  • 特開-ミラーデバイスの製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097939
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ミラーデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20220624BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220624BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211201
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹人
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB38
2H045AB72
2H045AB73
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC05
2H141MC06
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD23
2H141MD24
2H141MF17
2H141MF25
2H141MZ16
2H141MZ26
2H141MZ30
3C081AA17
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA53
3C081BA54
3C081BA55
3C081CA02
3C081CA19
3C081CA27
3C081CA40
3C081DA04
3C081DA24
3C081DA27
3C081DA29
3C081EA07
(57)【要約】
【課題】可動部を有するミラーデバイスを良好に製造することができるミラーデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】ミラーデバイスの製造方法は、支持部2、第1可動部3及び第1連結部5を有する構造体50と、第1可動部3上に設けられたミラー層7と、を備えるミラーデバイスの製造方法である。ミラーデバイスの製造方法は、各々が構造体50に対応する複数の部分SをSOIウェハ80に形成する第1形成工程と、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分上にミラー層7を形成する第2形成工程と、第1形成工程及び第2形成工程の後に、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分を加熱する加熱工程と、加熱工程の後に、複数の部分Sが互いに分離されるようにSOIウェハ80を切断する切断工程と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部、可動部、及び前記可動部が揺動又は移動可能となるように前記可動部を前記支持部に連結する連結部を有する構造体と、前記可動部上に設けられたミラー層と、を備えるミラーデバイスの製造方法であって、
各々が前記構造体に対応する複数の部分をウェハに形成する第1形成工程と、
前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する部分上に前記ミラー層を形成する第2形成工程と、
前記第1形成工程及び前記第2形成工程の後に、前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する前記部分を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に、前記複数の部分が互いに分離されるように前記ウェハを切断する切断工程と、を含む、ミラーデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程と前記切断工程との間に、前記ミラー層の反り量を測定する測定工程を更に含む、請求項1に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記切断工程では、レーザ光の照射によって前記ウェハの内部に改質領域を形成し、前記改質領域から前記ウェハの厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、前記ウェハを切断する、請求項1又は2に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1形成工程の後に前記第2形成工程が実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する前記部分を加熱することにより、前記ミラー層の反り量を減少させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する前記部分を加熱することにより、前記ミラー層の反り量を増加させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第2形成工程では、スパッタリングにより前記ミラー層を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記ミラーデバイスは、前記可動部に駆動力を作用させるためのコイル又は圧電素子を更に備えている、請求項1~7のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程では、前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する前記部分を60℃以上300℃以下に加熱する、請求項1~8のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記ミラー層の最大幅は、0.5mm以上30mm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記ミラー層は、前記可動部上にこの順に形成された密着層、拡散防止層及び反射層を含んでいる、請求項1~9のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記ミラー層は、反射層を含む複数の層を含み、
前記複数の層は、前記第2形成工程の完了時点において圧縮応力が残留する層と、前記第2形成工程の完了時点において引張応力が残留する層と、を含んでいる、請求項1~11のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記加熱工程では、前記ウェハの全体を加熱する、請求項1~12のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項14】
前記加熱工程では、前記ウェハの全体を加熱することなく、前記複数の部分の各々における前記可動部に対応する前記部分を加熱する、請求項1~12のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部を有するミラーデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動部を有するミラーデバイスの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法では、可動構造体を有するマイクロメカニカル構造体を半導体基板に複数形成した後に、ダイシングを行って複数のマイクロメカニカル構造体を互いに分離させる。この時点では可動構造体は湾曲している。続いて、ミラーとして機能する金属層を可動構造体上に形成した後に、マイクロメカニカル構造体の全体を加熱する。この加熱処理により、可動構造体が平坦化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-168819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなミラーデバイスの製造方法には、ミラーデバイスをより良好に製造することが求められる。そこで、本発明は、可動部を有するミラーデバイスを良好に製造することができるミラーデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のミラーデバイスの製造方法は、支持部、可動部、及び可動部が揺動又は移動可能となるように可動部を支持部に連結する連結部を有する構造体と、可動部上に設けられたミラー層と、を備えるミラーデバイスの製造方法であって、各々が構造体に対応する複数の部分をウェハに形成する第1形成工程と、複数の部分の各々における可動部に対応する部分上にミラー層を形成する第2形成工程と、第1形成工程及び第2形成工程の後に、複数の部分の各々における可動部に対応する部分を加熱する加熱工程と、加熱工程の後に、複数の部分が互いに分離されるようにウェハを切断する切断工程と、を含む。
【0006】
ミラー層の形成時にはミラー層に残留応力が発生する場合があり、当該残留応力によりミラー層に反りが発生する場合がある。その状態でミラーデバイスが出荷されると、使用時に環境温度や自己発熱により残留応力が緩和されることでミラー層の反り量が変化してしまうことが懸念される。これに対し、このミラーデバイスの製造方法では、各々が構造体に対応する複数の部分がウェハに形成されると共に、複数の部分の各々における可動部に対応する部分上にミラー層が形成された後に、複数の部分の各々における可動部に対応する部分が加熱される。これにより、ミラー層内に存在する残留応力を緩和することができ、ミラーデバイスの使用時にミラー層の反り量が変化することを抑制することができる。また、このミラーデバイスの製造方法では、当該加熱後にウェハが切断される。これにより、ウェハの切断後に加熱処理を行う場合と比べて、加熱時におけるミラー層の温度を複数の部分の間で均一化することができる。その結果、ミラーデバイスの品質のばらつきを抑制することができる。また、ウェハ状態で加熱することで、例えば加熱に用いられる恒温槽内に多くのミラーデバイスを配置することができる。その結果、ミラーデバイスの製造効率を向上することができる。更に、例えば加熱後にミラー層の反り量を測定する場合に、ウェハ状態で反り量を測定することができる。この場合、ミラー層の位置を正確に把握し易いため、測定の効率化を図ることができる。更に、例えば加熱後にミラー層を洗浄する場合に、ウェハ状態で洗浄することができ、洗浄の作業性を向上することができる。更に、ウェハの切断後に加熱処理を行う場合、切断時に発生したウェハの破片がミラー層に付着することがあり、この場合、加熱処理時に破片が加熱されることで、破片を構成する半導体材料がミラー層内に拡散し、ミラー層の反射率が低下してしまうことが懸念される。これに対し、このミラーデバイスの製造方法では、ウェハ状態で加熱した後にウェハを切断するため、そのような事態を抑制することができる。その結果、ミラーデバイスの品質を確保することができる。以上のとおり、このミラーデバイスの製造方法によれば、可動部を有するミラーデバイスを良好に製造することができる。
【0007】
本発明のミラーデバイスの製造方法は、加熱工程と切断工程との間に、ミラー層の反り量を測定する測定工程を更に含んでいてもよい。この場合、ウェハ状態でミラー層の反り量を測定することができ、測定の効率化を図ることができる。
【0008】
切断工程では、レーザ光の照射によってウェハの内部に改質領域を形成し、改質領域からウェハの厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、ウェハを切断してもよい。この場合、切断時にウェハに作用する応力を低減することができ、当該応力によりミラー層及び可動部が変形することを抑制することができる。また、切断時にミラー層の反り量が変化することを抑制することができる。
【0009】
第1形成工程の後に第2形成工程が実施されてもよい。この場合、複数の部分を形成する際の熱によりミラー層の品質が低下する事態を抑制することができる。
【0010】
加熱工程では、複数の部分の各々における可動部に対応する部分を加熱することにより、ミラー層の反り量を減少させてもよい。或いは、複数の部分の各々における可動部に対応する部分を加熱することにより、ミラー層の反り量を増加させてもよい。いずれの場合にも、ミラー層内に存在する残留応力を緩和することができ、ミラーデバイスの使用時にミラー層の反り量が変化することを抑制することができる。
【0011】
第2形成工程では、スパッタリングによりミラー層を形成してもよい。この場合、ミラー層を良好に形成することができる。
【0012】
ミラーデバイスは、可動部に駆動力を作用させるためのコイル又は圧電素子を更に備えていてもよい。この場合、ミラーデバイスの使用時に熱が発生し易いが、このミラーデバイスの製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイスの使用時にミラー層の反り量が変化することを抑制することができる。
【0013】
加熱工程では、複数の部分の各々における可動部に対応する部分を60℃以上300℃以下に加熱してもよい。この場合、ミラー層内に存在する残留応力を効果的に緩和することができる。
【0014】
ミラー層の最大幅は、0.5mm以上30mm以下であってもよい。この場合、ミラーデバイスの使用時にミラー層の反り量が変化し易いが、このミラーデバイスの製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイスの使用時にミラー層の反り量が変化することを抑制することができる。
【0015】
ミラー層は、可動部上にこの順に形成された密着層、拡散防止層及び反射層を含んでいてもよい。この場合、密着層を含むことで、ミラー層を可動部上に安定的に形成することができる。また、拡散防止層を含むことで、加熱時に反射層と密着層との間で金属拡散が発生することを抑制することができる。
【0016】
ミラー層は、反射層を含む複数の層を含み、複数の層は、第2形成工程の完了時点において圧縮応力が残留する層と、第2形成工程の完了時点において引張応力が残留する層と、を含んでいてもよい。この場合、加熱工程前におけるミラー層の反り量を小さくすることができる。また、加熱工程におけるミラー層の反り量の変化を小さくすることができ、その結果、加熱時間を短縮することができると共に、ミラー層の反り量を容易にコントロールすることができる。
【0017】
加熱工程では、ウェハの全体を加熱してもよい。この場合、加熱時におけるミラー層の温度を複数の部分の間で均一化することができる。
【0018】
加熱工程では、ウェハの全体を加熱することなく、複数の部分の各々における可動部に対応する部分を加熱してもよい。この場合にも、加熱工程で用いられる熱源の位置や出力にばらつきがあったとしても、熱がウェハ内を伝導することで、ミラー層の温度を複数の部分の間で均一化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可動部を有するミラーデバイスを良好に製造することができるミラーデバイスの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ミラーデバイスの平面図である。
図2図1のII-IIに沿っての模式的な断面図である。
図3】(a)及び(b)は、ミラーデバイスの製造方法を説明するための図である。
図4】(a)及び(b)は、ミラーデバイスの製造方法を説明するための図である。
図5】(a)及び(b)は、ミラー層が形成される工程を説明するための図である。
図6】加熱工程におけるミラー層の反り量の変化の例を示すグラフである。
図7】切断工程を説明するための図である。
図8】パッケージに収容されたミラーデバイスの断面図である。
図9】(a)及び(b)は、変形例に係るミラーデバイスの製造方法を説明するための図である。
図10】変形例の加熱工程におけるミラー層の反り量の変化の例を示すグラフである。
図11】信頼性試験におけるミラー層の反り量の変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[ミラーデバイス]
【0022】
図1及び図2に示されるように、ミラーデバイス1は、支持部2と、可動ミラー部10と、を有している。可動ミラー部10は、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1連結部5と、一対の第2連結部6と、ミラー層7と、を有している。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6は、構造体50を構成している。換言すれば、ミラーデバイス1は、構造体50と、ミラー層7と、を備えている。
【0023】
構造体50は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板8により一体的に形成されている。すなわち、ミラーデバイス1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして構成されている。SOI基板8は、支持層81、デバイス層82及び中間層83を有している。支持層81及びデバイス層82は、例えばシリコンからなる半導体層である。中間層83は、例えば酸化シリコンからなる絶縁層であり、支持層81とデバイス層82との間に配置されている。
【0024】
第1可動部3は、例えば矩形板状に形成されている。第2可動部4は、例えば矩形環状に形成されており、光軸方向Aから見た場合に第1可動部3を囲んでいる。支持部2は、例えば矩形枠状に形成されており、光軸方向Aから見た場合に第2可動部4を囲んでいる。すなわち、支持部2は、光軸方向Aから見た場合に第1可動部3及び第2可動部4を囲んでいる。光軸方向Aは、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6が配置される平面に垂直な方向であり、ミラー層7と交差する方向である。
【0025】
第1可動部3は、第1部分31と、第2部分32と、を有している。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に例えば円形状に形成されている。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に例えば矩形環状に形成されている。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に第1部分31を囲んでおり、一対の接続部分33を介して第1部分31に接続されている。この例では、一対の接続部分33は、第1部分31を挟むように、後述する第2軸線X2上に配置されている。図2では、第2部分32及び接続部分33等の図示が省略されている。第1可動部3は、第2部分32及び接続部分33を有していなくてもよい。
【0026】
一対の第1連結部5は、第1可動部3の第2部分32と第2可動部4との間の隙間において、第1可動部3を挟むように第1軸線X1上に配置されている。各第1連結部5は、トーションバーとして機能する。各第1連結部5は、第1可動部3が第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1可動部3を第2可動部4に連結している。各第1連結部5は、第1可動部3が第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1可動部3を第2可動部4及び第2連結部6を介して支持部2に連結しているとみなすこともできる。
【0027】
一対の第2連結部6は、第2可動部4の支持部2との間の隙間において、第2可動部4を挟むように第2軸線X2上に配置されている。各第2連結部6は、トーションバーとして機能する。各第2連結部6は、第2可動部4が第2軸線X2周りに揺動可能となるように、第2可動部4を支持部2に連結している。第2可動部4が第2軸線X2周りに揺動すると、第1可動部3も第2可動部4と共に第2軸線X2周りに揺動する。このように、第1可動部3は、第1軸線X1及び第2軸線X2の各々の周りに揺動可能となっている。第1軸線X1及び第2軸線X2は、光軸方向Aに垂直であり、互いに交差している(この例では互いに直交している)。
【0028】
支持部2、第1可動部3及び第2可動部4は、支持層81、デバイス層82及び中間層83によって構成されている。第1連結部5及び第2連結部6は、デバイス層82によって構成されている。第1可動部3及び第2可動部4を構成する支持層81の厚さ(光軸方向Aに沿っての厚さ)は、支持部2を構成する支持層81の厚さよりも薄い。第1可動部3を構成する支持層81は、第1可動部3及びミラー層7の反りを抑制する梁部として機能する。第1可動部3及び第2可動部4は、デバイス層82のみによって構成されていてもよい。
【0029】
ミラー層7は、第1可動部3における第1部分31の表面31a上に円形状に形成されている。表面31aは、デバイス層82における中間層83とは反対側の表面によって構成されており、光軸方向Aと交差するように延在している。ミラー層7は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を含む領域に形成されている。光軸方向Aから見た場合におけるミラー層7の中心(幾何中心)は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点に一致している。ミラー層7の外縁は、第1部分31の外縁から一定の間隔を空けて延在している。ミラー層7の直径(光軸方向Aから見た場合の最大幅)は、0.5mm以上30mm以下である。この例では、ミラー層7の直径は2mm程度である。ミラー層7は、楕円形、矩形又は多角形状等の任意の形状に形成されてよい。同様に、第1部分31は、楕円形、矩形又は多角形状等の任意の形状に形成されてよい。第1可動部3の第2部分32及び第2可動部4は、円環状、楕円環状又は多角形環状等の任意の形状に形成されてよい。
【0030】
ミラー層7は、密着層71と、拡散防止層(中間層)72と、反射層73と、を含んでいる。密着層71、拡散防止層72及び反射層73は、第1部分31の表面31a上にこの順に積層されている。密着層71は、拡散防止層72及び反射層73と比べて第1部分31(シリコン)に対して高い密着性を有している。拡散防止層72は、加熱時に密着層71と反射層73との間で金属拡散が発生することを抑制する。反射層73における第1部分31とは反対側の表面は、光軸方向Aと交差するように延在するミラー面73aを構成している。密着層71、拡散防止層72及び反射層73の各々は、金属材料により形成されている。例えば、密着層71はチタンからなり、拡散防止層72はプラチナからなり、反射層73は金からなる。密着層71及び拡散防止層72の各々の厚さは、例えば50nm~300nm程度であり、好ましくは100nm程度である。反射層73の厚さは、例えば50nm~300nm程度であり、好ましくは200nm程度である。密着層71又は拡散防止層72の厚さが50nm以上である場合、密着層71の密着機能又は拡散防止層72の拡散防止機能を有効に発揮させることができる。反射層73の厚さが50nm以上である場合、反射層73の反射率を高めることができる。密着層71、拡散防止層72又は反射層73の厚さが300nm以下である場合、密着層71、拡散防止層72又は反射層73に発生する応力を小さくすることができ、後述する加熱工程前のミラー層7の反り量を小さくすることができると共に、加熱工程におけるミラー層7の反り量の変化を小さくすることができる。拡散防止層72は、タングステンにより形成されてもよい。反射層73は、アルミニウムにより形成されてもよい。反射層73が金からなる場合、アルミニウムからなる場合と比べて、近赤外域の光に対する反射率を高めることができる。
【0031】
ミラー層7を構成する密着層71、拡散防止層72及び反射層73の各層には、後述するように、残留応力として圧縮応力(凸状に反る方向の力)又は引張応力(凹状に反る方向の力)が発生する。応力の種類(圧縮又は引張)や大きさは、各層の材料、厚さ、面積、成膜温度等の製造条件によって決定される。材料、厚さ、面積、成膜温度等を調整することにより、後述する加熱工程前の状態における応力の種類及び大きさ、並びに加熱工程時における反りの変化量を調整することができる。一例として、本実施形態では、密着層71及び拡散防止層72は、加熱工程前の状態において(後述する第2形成工程の完了時点において)圧縮応力が残留するように形成されており、反射層73は、加熱工程前の状態において(第2形成工程の完了時点において)引張応力が残留するように形成されている。圧縮応力を有する層と引張応力を有する層とを組み合わせることで、加熱工程前におけるミラー層7及び第1可動部3の反り量を小さくすることができる。また、同一材料により形成されている場合、層厚が厚いほど大きな応力が発生する。そのため、加熱工程前における反り量や加熱工程における反り量の変化を小さくする観点からは、各層の厚さが薄いことが好ましい。
【0032】
更に、ミラーデバイス1は、第1駆動用コイル11と、第2駆動用コイル12と、配線15a,15bと、配線16a,16bと、電極パッド21a,21bと、電極パッド22a,22bと、を有している。図1では、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12が一点鎖線で示され、配線15a,15b及び配線16a,16bが実線で示されている。第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12等は、実際には後述する絶縁層42によって覆われている。
【0033】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の第2部分32に設けられている。第1駆動用コイル11は、スパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第1駆動用コイル11には、磁界発生部(図示省略)により発生させられる磁界が作用する。磁界発生部は、例えば、ハルバッハ配列がとられた永久磁石を含んで構成されている。
【0034】
第1駆動用コイル11は、第2部分32の表面に形成された溝内に配置されている。すなわち、第1駆動用コイル11は、第1可動部3に埋め込まれている。第1駆動用コイル11は、絶縁層41を介して溝内に配置されている。絶縁層41は、例えば窒化シリコン膜である。絶縁層41は、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6の表面上にわたって形成されているが、第1可動部3の第1部分31には形成されていない。絶縁層41上には、例えば窒化シリコンからなる絶縁層42が形成されている。
【0035】
第1駆動用コイル11の一端は、配線15aを介して電極パッド21aに接続されている。配線15aは、第1可動部3から、一方の第1連結部5、第2可動部4及び一方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15a及び電極パッド21aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。配線15aは、一方の第1連結部5、第2可動部4及び一方の第2連結部6の表面上に、表面配線として設けられている。後述する配線15b,16a,16bは、配線15aと同様に表面配線として設けられている。
【0036】
第1駆動用コイル11の他端は、配線15bを介して電極パッド21bに接続されている。配線15bは、第1可動部3から、他方の第1連結部5、第2可動部4及び他方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15b及び電極パッド21bは、配線15aと同一の金属材料により一体的に形成されている。
【0037】
第2駆動用コイル12は、第2可動部4に設けられている。第2駆動用コイル12は、第2可動部4においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第2駆動用コイル12には、磁界発生部により発生させられる磁界が作用する。第2駆動用コイル12は、第2可動部4の表面4aに形成された溝4b内に配置されている。すなわち、第2駆動用コイル12は、第2可動部4に埋め込まれている。第2駆動用コイル12は、絶縁層41を介して溝内に配置されている。
【0038】
第2駆動用コイル12の一端は、配線16aを介して電極パッド22aに接続されている。配線16aは、第2可動部4から一方の第2連結部6を介して支持部2に延在している。配線16a及び電極パッド22aは、配線15aと同一の金属材料により一体的に形成されている。
【0039】
第2駆動用コイル12の他端は、配線16bを介して電極パッド22bに接続されている。配線16bは、第2可動部4から、他方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16b及び電極パッド22bは、配線15aと同一の金属材料により一体的に形成されている。
【0040】
以下、ミラーデバイス1における可動ミラー部10の動作の例として、第1例~第5例を説明する。第1例では、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加される。このとき、第1駆動用コイル11には、磁界発生部により発生させられた磁界が作用しているため、第1駆動用コイル11にローレンツ力が発生する。このローレンツ力が駆動力として作用することにより、第1可動部3は、例えば共振周波数レベルで第1軸線X1周りに揺動させられる。
【0041】
また、第2駆動用コイル12には、一定の大きさの駆動電流が印加される。このとき、第2駆動用コイル12には、磁界発生部により発生させられた磁界が作用しているため、第2駆動用コイル12にローレンツ力が発生する。このローレンツ力が駆動力として作用することにより、第2可動部4は、例えば駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りに回転させられ、その状態で停止させられる。これにより、ミラーデバイス1によれば、光軸方向Aに沿って入射する光源からの光をミラー面73aにより反射させて走査することができる。第1例では、第1可動部3が共振周波数で揺動されると共に第2可動部4が静的に用いられる。
【0042】
第2例では、第1例の第1可動部3の動作と同様に、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることによって第1可動部3が共振周波数に応じて揺動されると共に、第2駆動用コイル12に高周波数の駆動電流が印加されることによって第2可動部4が共振周波数に応じて揺動される。このように、第2例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、共振周波数で揺動される。
【0043】
第3例では、第1例の第2可動部4の動作と同様に、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りに回転させられて停止させられると共に、第2駆動用コイル12に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第2可動部4が駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りに回転させられて停止させられる。このように、第3例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、静的に用いられる。
【0044】
第4例及び第5例では、第1可動部3のみが駆動される。第4例では、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることにより、第1可動部3が共振周波数に応じて揺動される。第5例では、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りに回転させられて停止させられる。第4例及び第5例は、例えば第2可動部4が設けられていない場合等に用いられ得る。
[ミラーデバイスの製造方法]
【0045】
図3図8を参照しつつ、ミラーデバイス1の製造方法を説明する。まず、加工前のSOIウェハ80を用意する(用意工程、図3(a))。SOIウェハ80は、支持層81、デバイス層82及び中間層83を有している。SOIウェハ80は、複数の領域Rを有している。複数の領域Rの各々は、後述する切断工程の後にミラーデバイス1のSOI基板8となる。複数の領域Rは、例えば格子状に並ぶように設定されており、隣り合う領域Rの境界にダイシングラインLが設定されている。SOIウェハ80は、切断工程においてダイシングラインLに沿って切断される。
【0046】
続いて、各々が構造体50に対応する複数の部分SをSOIウェハ80に形成する(第1形成工程、図3(b))。「構造体50に対応する部分」とは、切断工程の後に構造体50になる部分との意味である。第1形成工程では、複数の領域Rの各々に構造体50が形成される。構造体50は、上述したとおり、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6により構成される。構造体50(部分S)は、MEMS技術(パターニング、エッチング等)を用いて形成される。また、第1形成工程では、複数の領域Rの各々に、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12等が形成される。第1形成工程において、第1可動部3は第2可動部4に対して第1軸線X1周りに揺動可能となると共に支持部2に対して第1軸線X1及び第2軸線X2周りに揺動可能となり、第2可動部4は支持部2に対して第2軸線X2周りに揺動可能となる。
【0047】
第1形成工程では、例えば、まず、第1駆動用コイル11、第2駆動用コイル12、配線15a,15b,16a,16b、電極パッド21a,21b,22a,22bを各領域Rに形成する(配線形成工程)。続いて、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6を各領域Rに形成する(構造体形成工程)。構造体形成工程は、配線形成工程の前に実施されてもよい。
【0048】
続いて、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分上にミラー層7を形成する(第2形成工程、図4(a))。より具体的には、第1可動部3における第1部分31の表面31a上に、密着層71、拡散防止層72及び反射層73からなるミラー層7を形成する。この例ではスパッタリング(スパッタ法)によりミラー層7が形成されるが、蒸着(蒸着法)によりミラー層7が形成されてもよい。
【0049】
図5(a)及び図5(b)は、第2形成工程を説明するための図である。図5(a)に示されるように、まず、シリコンからなるシャドーマスク91が複数の部分S上に配置される。シャドーマスク91には、ミラー層7の形成予定領域を露出させる開口91aが形成されている。続いて、図5(b)に示されるように、スパッタリングによりミラー層7が形成される。ミラー層7の形成後にシャドーマスク91は除去される。図5(b)に示されるように、スパッタリングにより形成されたミラー層7においては中央部が縁部よりも厚くなる。なお、シャドーマスク91の開口91aはミラー層7よりも大きくてもよい。この場合、均一な厚さを有するミラー層7を形成することができる。
【0050】
このようにスパッタリング又は蒸着によりミラー層7を形成する場合、加工時にSOIウェハ80の温度は例えば100℃近くまで上昇する。この状態からSOIウェハ80の温度が低下すると、ミラー層7とSOIウェハ80との間の熱膨張率の差等によりミラー層7に残留応力が発生することがある。この場合、当該残留応力によってミラー層7及び第1可動部3に反りが発生することがある。
【0051】
より具体的には、以下の3つの理由によりミラー層7に残留応力が発生すると考えられる。
(1)ミラー層7とSOIウェハ80との間の熱膨張率の違い
(2)ミラー層7とSOIウェハ80との間の格子定数の違い
(3)スパッタリングによるSOIウェハ80及びミラー層7でのアルゴン原子トラップ
【0052】
(1)について、ミラー層7の形成中には、SOIウェハ80の温度が高められることがある。当該状態から室温に戻る際にミラー層7及びSOIウェハ80は収縮する。収縮の程度は熱膨張率により異なる。ミラー層7の熱膨張率がSOIウェハ80の熱膨張率よりも小さい場合、ミラー層7が凸状に反るようにミラー層7に圧縮応力が発生する。ミラー層7の熱膨張率がSOIウェハ80の熱膨張率よりも大きい場合、ミラー層7が凹状に反るようにミラー層7に引張応力が発生する。また、ミラー層7とSOIウェハ80との間の熱膨張率の違いだけでなく、ミラー層7を構成する複数の層(密着層71、拡散防止層72及び反射層73)の間の熱膨張率の違いによっても、ミラー層7に残留応力が発生する。
【0053】
(2)について、ミラー層7の格子定数はSOIウェハ80の格子定数と異なる。ミラー層7とSOIウェハ80との間の境界面の近傍では、ミラー層7の格子定数がSOIウェハ80の格子定数に近づく傾向がある。一方、境界面から離れるに従って、ミラー層7の格子定数は物質固有の値に近づく。そのため、境界面の近傍ではミラー層7に歪みが生じ、それに伴って応力が発生する。また、ミラー層7とSOIウェハ80との間の格子定数の違いだけでなく、ミラー層7を構成する複数の層(密着層71、拡散防止層72及び反射層73)の間の格子定数の違いによっても、ミラー層7に残留応力が発生する。
【0054】
(3)について、スパッタリングではターゲットから放出されたスパッタ原子がSOIウェハ80に入射して薄膜を形成する。これと同時に、ターゲットに衝突したアルゴン陽イオンが一定の割合で中性化され、高い運動エネルギーを持ってSOIウェハ80及び形成中のミラー層7に入射する。アルゴン原子がミラー層7内において結晶格子間に侵入して格子間隔を押し広げることで、ミラー層7が凸状に反るようにミラー層7に圧縮応力が発生する。
【0055】
ミラー層7及び第1可動部3に発生する反りの方向及び大きさは、ミラー層7の材料、厚さ、面積及び形成方法等により変化する。例えば、本実施形態では、図4(a)に示されるようにミラー層7が凸状に湾曲するが、後述する図9(a)に示されるようにミラー層7が凹状に湾曲する場合もある。ミラー層7の面積(直径)が大きくなるほど、ミラー層7の反り量は大きくなる。上述したとおり、第2形成工程の完了時点において、密着層71及び拡散防止層72には圧縮応力が残留しており、反射層73には引張応力が残留している。これらの応力は、加熱工程後においても残留していてもよい。すなわち、少なくとも第2形成工程の完了時点において、密着層71及び拡散防止層72に圧縮応力が残留すると共に反射層73に引張応力が残留していればよい。
【0056】
続いて、SOIウェハ80を加熱する(加熱工程、図4(b))。この例では、SOIウェハ80の全体を加熱する。SOIウェハ80を加熱することにより、ミラー層7内に存在する残留応力が緩和される(アニール処理)。本実施形態では、残留応力が緩和されることでミラー層7の反り量が減少し、ミラー層7が平坦化される。加熱工程の後には、SOIウェハ80を洗浄する洗浄工程が実施される。洗浄工程は、加熱工程においてミラー層7に異物が付着した場合に実施されてもよいし、必ず実施されてもよいし、省略されてもよい。
【0057】
加熱工程では、次の理由により残留応力が緩和されると考えられる。まず、ミラー層7とSOIウェハ80との間での応力緩和層(合金層)の形成が挙げられる。加熱工程では、ミラー層7を構成する原子の一部が拡散する。この原子の拡散により、ミラー層7とSOIウェハ80との間に、又はミラー層7を構成する密着層71、拡散防止層72及び反射層73の間に、格子定数の差を低減するように応力緩和層(合金層)が形成され、その結果、残留応力が緩和されると考えられる。別の理由として、加熱工程において、上記(3)で述べたようにミラー層7内の結晶格子間にトラップされていたアルゴン原子が大気中へリリースされ、その結果、残留応力が緩和されると考えられる。
【0058】
図6は、加熱工程におけるミラー層7の反り量の変化の例を示すグラフである。横軸は加熱開始からの経過時間(単位:時間)を表しており、縦軸はミラー層7の反り量(単位:nm)を表している。この例では、SOIウェハ80を150℃で30時間、加熱した。図6に示されるように、加熱開始時の反り量は約300nmであったが、加熱工程によりミラー層7が略平坦になり、また時間の経過と共に反り量の変化が小さくなったことが分かる。ミラー層7の反り量は、後述する測定工程と同一の手法により測定した値である。
【0059】
加熱工程においてSOIウェハ80を加熱する加熱温度は、例えば60℃以上300℃以下に設定される。加熱温度が高いほど加熱時間を短くすることができるが、加熱温度が高過ぎるとクラック、金属拡散等の不具合が発生し得るためである。実施形態における加熱温度の150℃は、ミラーデバイス1の環境温度の最大値として仮定される70℃に、自己発熱温度として仮定される70℃及びマージン温度の10℃を加えた値である。加熱時間は、事前に取得された時間と反り量との間の関係に基づき、反り量の変化が飽和して小さくなるまでの時間以上に設定される。例えば、図6の場合、5時間程度で反り量の変化が飽和に達しているため、加熱時間は5時間以上であればよい。加熱時間を反り量の変化が飽和に達するまでの時間程度に設定することで、加熱のためのエネルギーを低減することができる。加熱温度は、客先での反り量の変化を確実に抑制するために、少なくともミラーデバイス1の自己発熱温度(駆動時におけるミラーデバイス1の温度)よりも高く設定されることが好ましい。
【0060】
加熱時には、恒温槽(オーブン)内にSOIウェハ80が配置される。これにより、SOIウェハ80の全体が加熱され、ひいては複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分が同時に加熱される。恒温槽内には1枚のSOIウェハ80が配置されてもよいが、複数枚(例えば2枚、6枚又は12枚)のSOIウェハ80が配置されてもよい。恒温槽内にはSOIウェハ80が水平に配置されてもよいし、垂直に(鉛直方向に沿って)配置されてもよい。オーブンは、ミラー層7への異物の付着を防止する観点から、クリーンオーブンであることが好ましい。
【0061】
ミラー層7の反り量は、本実施形態のように加熱工程により減少する場合もあるし、加熱工程により増加する場合もある。反り量が増加するか又は減少するかは、ミラー層7の材料、厚さ、面積及び形成方法等に依存する。本実施形態ではミラー層7が加熱前に凸状に湾曲しており、ミラー層7の反り量が加熱工程により減少したが、ミラー層7が加熱前に凸状に湾曲しており、加熱工程によりミラー層7の反り量が増加する場合もある。また、後述する変形例のように、ミラー層7が加熱前に凹状に湾曲しており、ミラー層7の反り量が加熱工程により増加する場合もある。或いは、ミラー層7が加熱前に凹状に湾曲しており、ミラー層7の反り量が加熱工程により減少する場合もある。また、加熱前に凸状に湾曲していたミラー層7が、加熱工程により凹状に湾曲する場合もあるし、加熱前に凹状に湾曲していたミラー層7が、加熱工程により凸状に湾曲する場合もある。なお、反り量が増加するとは、反り量の絶対値が増加することを意味する。例えば、反り量が200nmから300nmに変化する場合や、-200nmから-300nmに変化する場合である。反り量が減少するとは、反り量の絶対値が減少することを意味する。例えば、反り量が200nmから100nmに変化する場合や、-200nmから-100nmに変化する場合である。また、反り量が正の値であることはミラー層7の中央部の高さが周縁部よりも高い(凸状である)ことを意味し、反り量が負の値であることはミラー層7の中央部の高さが周縁部よりも低い(凹状である)ことを意味する。
【0062】
続いて、複数の部分Sの各々について、ミラー層7の反り量を測定する(測定工程)。例えば、レーザ干渉計を用いてミラー層7のPV値及び形状データ(3Dデータ)が測定される。上述したとおり、本実施形態のミラー層7の直径は2mmである。本実施形態では、ミラー層7と同心の直径1.9mmの領域のPV値及び形状データが測定される。PV値は、測定範囲においてミラー層7(ミラー面73a)の高さが最も高い点と最も低い点との間の高さの差を表す。PV値は絶対値で表されるため、ミラー層7が凸状か凹状であるか(反り量が正の値であるか負の値であるか)を判定するために、形状データが併せて測定される。ミラー層7の反り量が所定値よりも大きい構造体50には、所定の印が付される(マーキング)。印が付された構造体50(ミラーデバイス1)は、例えば切断工程の後に取り除かれる。なお、ミラー層7の反り量は、ミラー層7の曲率を測定することにより測定されてもよい。
【0063】
続いて、複数の部分Sが互いに分離されるように、ダイシングラインLにおいてSOIウェハ80を切断する(切断工程、図7)。例えば、レーザ光の照射によって、ダイシングラインLに沿ってSOIウェハ80の内部に改質領域を形成し、テープエキスパンド等によって改質領域からSOIウェハ80の厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、SOIウェハ80を切断する。切断工程では、ブレードダイシング等の他の切断方法によりSOIウェハ80が切断されてもよい。以上の工程により、複数のミラーデバイス1が得られる。
【0064】
その後、図8に示されるように、各ミラーデバイス1をパッケージ60に収容する。パッケージ60は、ミラーデバイス1を収容する本体部61と、本体部61の開口61aを塞ぐように配置された透明な窓部材62と、を有している。ミラーデバイス1で反射される光は、窓部材62を透過してミラー層7に入射する。
[作用及び効果]
【0065】
上述したとおり、ミラー層7の形成時にはミラー層7に残留応力が発生する場合があり、当該残留応力によりミラー層7に反りが発生する場合がある。その状態でミラーデバイス1が出荷されると、使用時に環境温度や自己発熱により残留応力が緩和されることでミラー層7の反り量が変化してしまうことが懸念される。これに対し、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法では、各々が構造体50に対応する複数の部分SがSOIウェハ80に形成されると共に、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分上にミラー層7が形成された後に、SOIウェハ80(複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分)が加熱される。これにより、ミラー層7内に存在する残留応力を緩和(解放)することができ、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。その結果、ミラーデバイス1の使用中にミラー層7によって反射されたレーザ光のスポットのサイズや焦点位置が変化してしまうことを抑制することができる。また、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法では、加熱工程の後にSOIウェハ80が切断される。これにより、ウェハの切断後に加熱処理を行う場合と比べて、加熱時におけるミラー層7の温度を複数の部分Sの間で均一化することができる。すなわち、上述したとおり加熱処理は例えば恒温槽内で実施されるが、空気の対流や熱源及び加熱対象物の位置等の影響により、恒温槽内の位置によって温度にばらつきが存在する場合がある。ウェハの切断後(チップ化後)にチップ毎に加熱処理を行う場合、チップが配置される場所によっては、設定温度とは異なる温度でチップが加熱されてしまうことが懸念される。これに対し、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法では、熱伝導性が高いSOIウェハ80の状態で加熱処理が実施され、SOIウェハ80内を熱が伝導し易いため、ミラー層7の温度を複数の部分Sの間で均一化することができる。その結果、ミラーデバイス1の品質のばらつきを抑制することができる。また、ウェハ状態で加熱することで、恒温槽内に多くのミラーデバイス1を配置することができる。その結果、ミラーデバイス1の製造効率を向上することができる。更に、測定工程においてウェハ状態でミラー層7の反り量を測定することができる。これにより、ミラー層7の位置を正確に把握し易いため、測定の効率化を図ることができる。更に、加熱後にミラー層7を洗浄する洗浄工程を実施する場合に、ウェハ状態で洗浄することができ、洗浄の作業性を向上することができる。更に、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法では、加熱工程の後にSOIウェハ80を切断するため、切断時に発生してミラー層7に付着したSOIウェハ80の破片が加熱されることで破片を構成する半導体材料がミラー層7内に拡散する事態を抑制することができ、ミラーデバイス1の品質を確保することができる。また、当該破片のミラー層7への付着を防止するための保護膜をミラー層7上に形成する必要がない。また、ミラーデバイス1がパッケージ60内に収容された後に加熱工程を実施する場合、パッケージ60に使用される封止樹脂等が加熱により劣化する可能性があるため、加熱温度の上限が制限される。これに対し、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法では、ウェハ状態で加熱するため、封止樹脂の劣化開始温度に依らずに加熱温度を設定することができ、製造効率を向上させることができる。以上のとおり、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法によれば、可動部を有するミラーデバイス1を良好に製造することができる。
【0066】
加熱工程と切断工程との間に、ミラー層7の反り量を測定する測定工程が実施される。これにより、ウェハ状態でミラー層7の反り量を測定することができ、測定の効率化を図ることができる。
【0067】
切断工程において、レーザ光の照射によってSOIウェハ80の内部に改質領域を形成し、改質領域からSOIウェハ80の厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、SOIウェハ80が切断される(ステルスダイシング)。これにより、切断時にSOIウェハ80に作用する応力を低減することができ、当該応力によりミラー層7及び第1可動部3が変形することを抑制することができる。また、切断時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。また、上記実施形態では、切断工程の前に第1可動部3が揺動可能となっていることに加えて、切断工程の前にミラー層7を加熱していることから、第1可動部3の破損と反り量の変化を抑制可能なステルスダイシングを用いることが特に有効である。
【0068】
第1形成工程の後に第2形成工程が実施される。これにより、複数の部分Sを形成する際の熱によりミラー層7の品質が低下する事態を抑制することができる。すなわち、上記実施形態とは逆に、第1可動部3に対応する部分上にミラー層7を形成した後に複数の部分SをSOIウェハ80に形成すると、複数の部分Sを形成する際の熱によりミラー層7を構成する密着層71(チタン)と反射層73(金)との間で金属の拡散が発生し、ミラー層7の反射率が低下する場合がある。これに対し、上記実施形態のように複数の部分Sを形成した後にミラー層7を形成することで、そのような事態を抑制することができ、ミラー層7の品質を確保することができる。なお、拡散防止層72をタングステンにより形成すると、拡散防止層72がプラチナにより形成される場合と比べて、密着層71と反射層73との間での金属拡散を効果的に抑制することができる。一方、拡散防止層72をプラチナにより形成すると、拡散防止層72がタングステンにより形成される場合と比べて、拡散防止層72により発生する応力を低下させることができ、取り扱いを容易化することができる。
【0069】
加熱工程において、SOIウェハ80を加熱することにより、ミラー層7の反り量が減少させられる。これにより、ミラー層7内に存在する残留応力を緩和することができ、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。また、上述したとおり、加熱工程では、SOIウェハ80を加熱することにより、ミラー層7の反り量が増加させられてもよい。この場合にも、ミラー層7内に存在する残留応力を緩和することができ、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。
【0070】
第2形成工程において、スパッタリングによりミラー層7が形成される。これにより、ミラー層7を良好に形成することができる。すなわち、スパッタリングによりミラー層7を形成する場合、蒸着の場合のようにウェハを回転させる必要がないため、中空構造を含む構造体50に破損等が発生し難い。また、スパッタリングでは指向性が高く、ミラー層7以外の箇所に金属が付き難い。指向性が低い蒸着では支持部2と可動ミラー部10との間のスリット(隙間)を金属が通過して可動ミラー部10の裏面側に回り込んだり、支持部2に付着したりするおそれがある。これに対し、指向性の高いスパッタリングを用いることで、そのような事態を抑制することができる。また、スパッタリングでは、蒸着では使用が困難な高融点材料を使用することができる。また、ミラー層7の厚さを容易に制御することができる。一方、蒸着によりミラー層7を形成する場合、一度に20枚程度のウェハを処理することができるため、製造効率を向上することができる。上述したとおり、スパッタリングを用いる場合、成膜時のアルゴン原子トラップによりミラー層7の反り量が増加し易く、また加熱工程においてトラップされたアルゴンが大気中にリリースされるため反り量が大きく変化する。実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを効果的に抑制することができる。
【0071】
ミラーデバイス1が、可動ミラー部10に駆動力を作用させるための第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12を備えている。この場合、ミラーデバイス1の使用時に熱が発生し易いが、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。
【0072】
加熱工程において、SOIウェハ80が60℃以上300℃以下に加熱される。これにより、ミラー層7内に存在する残留応力を効果的に緩和することができる。
【0073】
ミラー層7の最大幅が0.5mm以上30mm以下である。この場合、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化し易いが、実施形態に係るミラーデバイス1の製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。
【0074】
ミラー層7が、第1可動部3上にこの順に形成された密着層71、拡散防止層72及び反射層73を含んでいる。これにより、密着層71を含むことで、ミラー層7を第1可動部3上に安定的に形成することができる。また、拡散防止層72を含むことで、加熱時に反射層73と密着層71との間で金属拡散が発生することを抑制することができる。
【0075】
ミラー層7が、第2形成工程の完了時点において圧縮応力が残留する密着層71及び拡散防止層72と、第2形成工程の完了時点において引張応力が残留する反射層73と、を含んでいる。これにより、加熱工程前におけるミラー層7の反り量を小さくすることができる。また、加熱工程におけるミラー層7の反り量の変化を小さくすることができ、その結果、加熱時間を短縮することができると共に、ミラー層7の反り量を容易にコントロールすることができる。
【0076】
加熱工程において、SOIウェハ80の全体が加熱される。これにより、加熱時におけるミラー層7の温度を複数の部分Sの間で均一化することができる。
[変形例]
【0077】
図9(a)及び図9(b)は、変形例に係るミラーデバイス1の製造方法を説明するための図である。この変形例では、図9(a)に示されるように、ミラー層7が加熱工程の前に凹状に湾曲している。そして、図9(b)に示されるように、加熱工程においてSOIウェハ80を加熱することによりミラー層7の反り量が増加する。
【0078】
図10は、変形例の加熱工程におけるミラー層7の反り量の変化の例を示すグラフである。この例では、SOIウェハ80を150℃で30時間、加熱した。図10には、5つのサンプルについての反り量の変化が異なる線種で示されている。図10に示されるように、いずれのサンプルについても、加熱開始時の反り量は100nm程度であったが、加熱工程により反り量は250~350nm程度に増加し、また時間の経過と共に反り量の変化が小さくなったことが分かる。図10の場合、2時間程度で反り量の変化が飽和に達しているため、加熱時間は2時間以上であればよい。加熱時間を反り量の変化が飽和に達するまでの時間程度に設定することで、加熱のためのエネルギーを低減することができる。
【0079】
図11は、信頼性試験におけるミラー層7の反り量の変化の例を示すグラフである。この信頼性試験では、変形例に係るミラーデバイス1の製造方法により得られたミラーデバイス1を動作させ、動作中におけるミラー層7の反り量を測定した。具体的には、初期状態(0時間)のミラー層7の反り量を0nmとし、ミラー層7の反り量の変化を250時間ごとに1000時間まで測定した。第1可動部3を第1軸線X1周りに10°の光学的振れ角で、第2軸線X2周りに10°の光学的振れ角で連続動作させた。図11に示されるように、動作中のミラー層7の反り量の変化が±50nm以下に抑制されていたことが分かる。
【0080】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。上記実施形態ではミラーデバイス1が電磁駆動式に構成されていたが、ミラーデバイス1は、圧電駆動式又は静電駆動式に構成されてもよい。圧電駆動式又の場合、例えば、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12に代えて圧電膜(圧電素子)が設けられてもよい。
【0081】
第1駆動用コイル11は、第2可動部4に設けられてもよい。この場合でも、第1可動部3を第1軸線X1周りに共振周波数で揺動させることができる。具体的には、第1軸線X1周りにおける第1可動部3の共振周波数に等しい周波数の駆動電流が第1駆動用コイル11に入力されると、第2可動部4が第1軸線X1周りに当該周波数で僅かに振動する。この振動が第1連結部5を介して第1可動部3に伝わることにより、第1可動部3を第1軸線X1周りに当該周波数で揺動させることができる。第1駆動用コイル11又は圧電素子が第1可動部3に設けられている場合、発熱源がミラー層7に近接するためミラー層7に熱が伝わり易いが、上述したミラーデバイス1の製造方法によれば、そのような場合でも、ミラーデバイス1の使用時にミラー層7の反り量が変化することを抑制することができる。
【0082】
第1形成工程の前に第2形成工程が実施されてもよい。例えば、上述した配線形成工程が実施された後に、SOIウェハ80における第1可動部3に対応する部分上にミラー層7が形成され、その後に構造体形成工程が実施されてもよい。測定工程は省略されてもよい。第1連結部5は、第1可動部3が所定方向に沿って移動可能となるように第1可動部3を支持部2に連結していてもよい。例えば、第1可動部3は、光軸方向A(ミラー層7に垂直な方向)に沿って移動可能であってもよい。
【0083】
ミラー層7は、密着層71を含んでいなくてもよい。例えば、動作中にミラーデバイス1が高温にならない場合、密着層71は省略されてもよい。ミラー層7は、拡散防止層72を含んでいなくてもよい。例えば、ミラー層7に高い反射率が求められない場合や、ミラー層7の外観の良否が問われない場合等には、拡散防止層72は省略されてもよい。密着層71及び拡散防止層72の少なくとも一方を省略することで、ミラー層7の厚さを薄くすることができ、その結果、加熱工程前のミラー層7の反り量を小さくすることができると共に、加熱工程におけるミラー層7の反り量の変化を小さくすることができる。
【0084】
上記実施形態の加熱工程では恒温槽を用いてSOIウェハ80の全体を加熱したが、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分が加熱されればよく、加熱手段は限定されない。例えば、SOIウェハ80の全体を加熱することなく、レーザ光等のスポット光を照射することにより、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分のみが同時に加熱されてもよい。この場合でも、SOIウェハ80内を熱が伝導することで、複数の部分Sの各々における第1可動部3に対応する部分を均一に加熱することができる。また、照射されるレーザ光の出力にばらつきがあったとしても、均一な加熱を実現することができる。加熱工程では、ミラーデバイス1の駆動により発生する自己発熱ではなく、ミラーデバイス1の外部に位置する熱源を用いて加熱が実施される。
【符号の説明】
【0085】
1…ミラーデバイス、2…支持部、3…第1可動部、4…第2可動部、5…第1連結部、6…第2連結部、7…ミラー層、11…第1駆動用コイル、12…第2駆動用コイル、50…構造体、80…SOIウェハ、S…部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11