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特開2022-97977プレミックスモルタルの製造方法及びプレミックスモルタル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097977
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】プレミックスモルタルの製造方法及びプレミックスモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220624BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20220624BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20220624BHJP
   C04B 14/34 20060101ALI20220624BHJP
   B28C 5/00 20060101ALI20220624BHJP
   B28C 7/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B20/00 Z
C04B16/06 A
C04B14/34
B28C5/00
B28C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211275
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA08
4G056AA18
4G056CA01
4G056CB01
4G056CB19
4G112PA13
4G112PA24
(57)【要約】
【課題】プレミックス混合しにくい材料、すなわち、現場において外添加で投入されている大径骨材、繊維類、比重差の大きい重量骨材等をプレミックスし、品質的に安定したプレミックスモルタル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】セメント組成物を混合する工程と、風袋にセメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を投入する工程と、を備え、セメント組成物及び前記混合材料が、風袋中で分離した状態となるように梱包する、プレミックスモルタルの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント組成物を混合する工程と、
風袋に前記セメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を投入する工程と、を備え、
前記セメント組成物及び前記混合材料が、前記風袋中で分離した状態となるように梱包する、プレミックスモルタルの製造方法。
【請求項2】
前記セメント組成物が、セメント、減水剤及び粒径3mm未満の骨材を含む、請求項1に記載のプレミックスモルタルの製造方法。
【請求項3】
プレミックスモルタルの質量が、5~30kgとなるように梱包する、請求項1又は2に記載のプレミックスモルタルの製造方法。
【請求項4】
前記風袋が開封面と、前記開封面に対抗する位置に存在する底面とを有し、
前記開封面に最も近い位置となるように前記セメント組成物を投入する工程を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のプレミックスモルタルの製造方法。
【請求項5】
風袋と、
前記風袋中に、セメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を含むモルタル組成物と、から構成され、
前記セメント組成物及び前記混合材料が、前記風袋中で分離した状態で存在する、プレミックスモルタル。
【請求項6】
前記風袋が開封面と、前記開封面に対抗する位置に存在する底面とを有し、
前記開封面に最も近い位置となるように前記セメント組成物が存在する請求項5に記載のプレミックスモルタル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレミックスモルタルの製造方法及びプレミックスモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系プレミックスモルタルは、施工現場で各種モルタルの原材料を調合することなく、プレミックス材をハンドミキサやグラウトミキサ等で水と練混ぜるだけで、容易に均一のモルタルを調製することができる(例えば、特許文献1参照)。そのためプレミックスモルタルは、土木・建築分野で様々な用途に使用されており、用途に応じた材料が各種開発されている。プレミックスモルタルの特徴として、プレミックス材の容器は、主に安価で且つ容易に開封でき得る紙袋が一般的で、例えば、左官モルタル等の少量使用の用途では5kg/袋、無収縮モルタル等の比較的モルタルのボリュームが多い用途では25kg袋等となっており、5~25kg/袋程度の量目が一般的に数多く使用されている。
【0003】
この持ち運びが手軽な紙袋のプレミックス材は、主には製造工場にて各種原材料を配合設計通りに計量し、計量した各種原材料を専用の混合ミキサー(例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、パドルミキサーなど)にて均一に分散混合し、アジテータ等を介して包装機でパッキングされ、最終的に品質確認がなされる製造工程となっている。そのため、プレミックスモルタルは施工現場で安定した品質を確保できるという特長を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-056730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、様々な用途に対応すべく、施工現場ではプレミックスされていない粒度の粗い骨材やボリューム量のある繊維等を、水と練混ぜるタイミングでプレミックス材と混和して、コンクリートに近い低発熱性のグラウトモルタルや高じん性を有する靱性モルタル等の付加価値を付けたモルタルが施工されることがある。
【0006】
プレミックス材の製造工程において、一般的なモルタルに使用されない5mm以上の粒度の粗い大径骨材を混和した場合、セメントモルタル混合用の混合ミキサーではミキサーの側壁とパドル(撹拌羽根)との隙間が小さいため、大径骨材が引っかかり均斉化混合が困難であること、混合時における大径骨材の影響による撹拌羽根を主とする設備の摩耗・損傷や異音の発生すること、混合からパッキングされるまでの製造ラインで大径骨材が小径骨材やセメントパウダーとの分離が発生し、安定した品質が確保しにくいこと等の課題があった。
また、繊維長が長い、又は、繊維混和量が顕著に多い繊維を混和しプレミックス混合した場合、混合ミキサーや包装工程前に異物除去のために設置されている製品篩に繊維が引っかかり凝集粒が発生する、繊維混和量が過度に多いと混合ミキサーでは物理的に均斉化混合できない等の課題があった。
【0007】
したがって、本発明では、プレミックス混合しにくい材料、すなわち、現場において外添加で投入されている大径骨材、繊維類、比重差の大きい重量骨材等をプレミックスし、品質的に安定したプレミックスモルタル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題について鋭意検討した結果、プレミックスしたセメント組成物と、セメント組成物との混和性に優れない材料とをあらかじめ分離した状態で風袋に梱包することで、製造時のバラツキを解消し、品質が安定したプレミックスモルタルが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメント組成物を混合する工程と、風袋にセメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を投入する工程と、を備え、セメント組成物及び混合材料が、風袋中で分離した状態となるように梱包する、プレミックスモルタルの製造方法。
[2]セメント組成物が、セメント、減水剤及び粒径3mm未満の骨材を含む、[1]に記載のプレミックスモルタルの製造方法。
[3]プレミックスモルタルの質量が、5~30kgとなるように梱包する、[1]又は[2]に記載のプレミックスモルタルの製造方法。
[4]風袋が開封面と、開封面に対抗する位置に存在する底面とを有し、開封面に最も近い位置となるようにセメント組成物を投入する工程を備える、[1]~[3]のいずれかに記載のプレミックスモルタルの製造方法。
[5]風袋と、風袋中に、セメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を含むモルタル組成物と、から構成され、セメント組成物及び混合材料が、風袋中で分離した状態で存在する、プレミックスモルタル。
[6]風袋が開封面と、開封面に対抗する位置に存在する底面とを有し、開封面に最も近い位置となるようにセメント組成物が存在する[5]に記載のプレミックスモルタル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレミックス混合しにくい材料、すなわち、現場において外添加で投入されている大径骨材、繊維類、比重差の大きい重量骨材等をプレミックスし、品質的に安定したプレミックスモルタル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態のプレミックスモルタルは、風袋と、風袋中に、セメント組成物、並びに、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を含むモルタル組成物と、から構成され、セメント組成物及び混合材料が、風袋中で分離した状態で存在するものである。
【0013】
セメント組成物は、セメントを主成分とするものであり、その他、細骨材、各種混和材を含むことができる。細骨材は、例えば、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂であり、その粒径は3mm未満である。混和材としては、例えば、減水剤、凝結遅延剤、膨張剤、発泡剤、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤が挙げられる。
【0014】
本実施形態のプレミックスモルタルは、セメント組成物と混合材料を含む。混合材料は、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、及び真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
大径骨材とは、粒径3mm以上20mm以下の粗め粒度の骨材、砂利等である。大径骨材の種類は特に限定されず、例えば豆砂利、珪砂、石灰石砂、スラグ骨材、ステンレス粗粉末等が挙げられる。大径骨材としては、流動性や材料分離抵抗性が一層優れるという観点から天然の丸みを帯びた豆砂利等が好ましい。大径骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。大型骨材の粒径は施工性の観点から3mm以上15mm以下が好ましく、4mm以上10mm以下であることがより好ましい。大型骨材の粒径が上記粒径の範囲であれば、骨材の材料分離が発生しにくく、高流動で良好な施工性が得られやすい。
大径骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、25~100質量部であることが好ましく、30~90質量部であることがより好ましく、35~85質量部であることが更に好ましい。大径骨材の含有量が上記範囲内であれば、モルタルの水和熱抑制及び乾燥収縮抑制に優れ、骨材の材料分離が発生しにくく、また、プレミクスモルタルをミキサーで混合する際、セメント組成物と大型骨材との混合性が更に向上し、品質安定性が向上しやすい。
【0016】
繊維類は、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の有機繊維;鋼繊維;ガラス繊維等の無機繊維が挙げられる。繊維類は、分散性がより良好であるという観点から、有機繊維であることが好ましく、ナイロン繊維、ビニロン繊維、 ポリプロピレン繊維がより好ましい。繊維類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0017】
繊維類の長さは、10~30mmであることが好ましく、12~25mmであることがより好ましく、14~20mmであることが更に好ましい。
【0018】
繊維類の含有量は、セメント100質量部に対し、0.2~5質量部であることが好ましく、0.4~4質量部であることがより好ましく、0.5~3質量部であることが更に好ましい。繊維類の含有量が上記範囲内であれば、曲げ強度、引張強度、せん断強度、曲げタフネス、靭性等の品質特性に一層優れたものとなり、また、プレミクスモルタルをミキサーで混合する際、セメント組成物と繊維類との混合性が更に向上し、品質安定性が向上しやすい。
【0019】
重量骨材は、例えば、ステンレス等の金属微粉、鋳物砂、柘榴石、重晶石、針鉄鉱、褐鉄鉱、バリウム方解石、銅スラグ、フェロクロムスラグ、クロマイト、電気炉酸化スラグ骨材が挙げられる。重量骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。重量骨材の真比重は、原子力施設等に使用される遮蔽効果が一層優れたモルタルになるという観点から、3.5g/cm以上であり、骨材分離を抑制した流動モルタルにする観点から3.5~6.5g/cmが好ましく、より遮蔽効果を向上させる観点から6.5~8.5g/cmであってもよい。
【0020】
重量骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、350~550質量部であることが好ましく、380~520質量部であることがより好ましく、400~500質量部であることが更に好ましい。重量骨材の含有量が上記範囲内であれば、モルタルの遮蔽効果が一層向上し、材料分離が発生しにくく、また、プレミクスモルタルをミキサーで混合する際、セメント組成物と重量骨材との混合性が更に向上し、品質安定性が向上しやすい。
【0021】
本実施形態のプレミックスモルタルは、セメント組成物及び混合材料を含むモルタル材料が分離した状態で風袋に存在するものである。本明細書において、「分離した状態で存在する」とは、セメント組成物及び混合材料が、プレミックス混合(一体化)されずに、各々風袋(プレミックス袋)に投入され、分離した状態にあることを指す。この際、それぞれ計量されたセメント組成物及び混合材料が風袋内で区別できる程度に存在していればよく、運搬等の要因により、原材料投入後に風袋内でセメント組成物と混和材料が多少入り混じり、界面が明確でなくなっていてもよい。
【0022】
風袋はプレミックスモルタルが梱包できるものであれば特に限定されない。風袋は、例えば、クラフト紙単体で構成された袋、外装にクラフト紙、内装にポリエチレン等のプラスチックフィルムにより構成された多層袋、ポリエチレン等のプラスティックを押出しラミネート加工した包装袋が使用できる。風袋は、セメント組成物の風化による品質劣化を抑制するという観点から、多層袋が好ましく、多層袋の内装に使用するポリエチレン等のプラスチックフィルムの厚みは、50μm以上が好ましい。風袋は、施工現場で梱包容器の開封が手軽にでき得る様にイージーオープン機能付きの梱包容器が好ましい。
【0023】
風袋の形状は特に限定されず、積みやすいという観点から略直方体が好ましい。風袋は、開封面と、開封面と対抗する位置に底面とを有する。本明細書において「開封面」とは、風袋を開封し、現場においてミキサーにモルタル材料を投入する側の面である。
【0024】
風袋において、セメント組成物と混合材料が分離された状態で存在すればよく、その順番は限定されるものではない。風袋における各種材料の順番は、例えば、開封面に最も近い位置から順にセメント組成物、混合材料であってもよく、開封面に最も近い位置から順に混合材料、セメント組成物であってもよく、開封面に最も近い位置から順にセメント組成物、混合材料、セメント組成物であってもよい。風袋における各種材料の順番は、ミキサーにモルタル材料を投入する際に、開封面側にあるセメント組成物がミキサー内の水と先に混合され、より均一な混合となり、骨材沈下や凝集粒などの発生がより抑制され、品質安定性が一層向上するという観点から、開封面に最も近い位置にセメント組成物が存在することが好ましい。セメント組成物を風袋内で複数の層に分けて梱包する場合、開封面に最も近い位置に存在するセメント組成物の割合は、セメント組成物全質量を基準として30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。開封面に最も近い位置に存在するセメント組成物の割合が上記範囲内であれば、十分な量の開封面側にあるセメント組成物がミキサー内の水と先に混合されるため、より均一な混合となり、品質が一層安定する傾向にある。
【0025】
プレミックスモルタルの質量は、5~30kgであることが好ましく、5~25kgであることがより好ましく、5~18kgであることが更に好ましい。プレミックスモルタルの質量が上記範囲内であれば、作業員への負担がより小さく、作業性に一層優れる。
【0026】
本実施形態のプレミックスモルタルの製造方法は、セメント組成物を混合する工程と、風袋にセメント組成物、及び、粒径3mm以上20mm以下の大径骨材、繊維類、真比重3.5g/L以上の重量骨材からなる群から選択される少なくとも一種の混合材料を投入する工程と、を備え、セメント組成物及び混合材料が、風袋中で分離した状態となるように梱包する。
【0027】
セメント組成物を混合する工程では、使用用途に合わせたセメントと各種混和材料や混和剤、細骨材等を配合し、混合ミキサーで均一分散させる。
【0028】
混合ミキサーは特に限定されず、例えば、比較的せん断作用が小さく、パドルや羽根等による掻き落としによる分散作用や拡散作用を主として混合するリボンミキサー、パドルミキサー、高速混合でき得るヘンシェルミキサーや噴射型ミキサーが挙げられる。混合量や混合時間は、混合機の仕様や混合するセメント組成物の粒度や密度等を考慮して決定することが好ましい。
【0029】
風袋にセメント組成物及び混合材料を投入する工程では、投入方法は特に限定されず自動梱包機等の機械的作業又は人的による計量スコップ等による手作業で実施しても良い。この際、セメント組成物と混合材料は、上述したとおり分離した状態で風袋に投入し梱包される。
【0030】
本実施形態のプレミックスモルタル及びその製造方法は、製造時のバラツキが小さく、品質安定性に優れたものとなる。このようなプレミックスモルタル及びその製造方法によれば、従来プレミックス混合しにくかった大型骨材、繊維類、重量骨材等をプレミックスモルタルとすることができ、常に安定した品質の製品を提供することができる。
【実施例0031】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:普通ポルトランドセメント
膨張材:生石灰系膨張材
ポゾラン微粉末:シリカフューム
急硬材:アルミナセメント
石膏:無水石膏(粉末度:7000cm/g)
発泡剤:アルミ粉末
増粘剤:メチルセルロース
消泡剤:シリコーン系
減水剤:ナフタレンスルホン酸系減水剤
促進剤:炭酸ナトリウム
遅延剤:クエン酸
細骨材1:珪砂調整品
細骨材2:橄欖岩砕砂
混合材料1:豆砂利(大径骨材:粒径4~10mm)
混合材料2:ナイロン繊維(繊維長15mm)
混合材料3:重量骨材(ステンレス微粉:真比重7.8g/cm
混合材料4:重量骨材(鋳物砂::真比重7.8g/cm
【0033】
[実験例1]
<プレミックスモルタルの製造方法>
表1に示す配合でセメント組成物を合計200kg計量し、ヘンシェルミキサーにて6分間混合し、その後フレキシブルコンテナバックへ一次保管した。次に表1に示す配合でセメント組成物及び混合材料1(大径骨材)を手詰めにてNET25kgのイージーオープン密封紙袋の風袋の開封面側から順にセメント組成物、大径骨材となるように分離した状態で梱包し、各プレミックスモルタルを24袋、本発明品(1~3)を作製した。
比較参考品1として表1に示す配合で大径骨材を分離混和せずにセメント組成物の各原材料と同様にリボン型混合ミキサーにてプレミックス混合を行い、アジテータを介し自動包装する混合設備で1t混合を行いプレミックス包装し、包装直後と最終の各2袋を除き、36袋を作製した。
作製した各本発明品の12袋、比較参考品は梱包3袋毎の12袋をプレミックスモルタルとして評価を行った。
【0034】
【表1】
【0035】
<プレミックスモルタルの評価方法>
梱包した本発明品及び比較参考品について、所定の水/プレミックス材比(本発明品1:10.8質量%、本発明品2:10.0質量%、本発明品3:10.4質量%、参考品1:10.4質量%)とした水を練混ぜ容器(ペール缶)へ投入し、高速ハンドミキサー(1000rpm)を用いて90秒間撹拌してモルタルを作製し、各プレミックスモルタルの品質安定性をテーブルフロー試験及び単位容積質量試験により評価を行った。本発明品(1及び2)の5袋目については、硬化モルタルの物性として、無収縮性及び乾燥収縮特性を評価した。
【0036】
・テーブルフロー試験
JIS R 5201:1997「セメントの物理試験方法」のセメントペースト容器(フローコーン)にモルタルを充填し、容器引き上げ後のテーブルフロー値(0打フロー値)を測定した。
・単位容積質量試験
JIS A 1171:2016「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.3単位容積質量試験に準拠して、単位容積質量を測定した。
・膨張収縮率試験
土木学会基準 JSCE-F 542-1999「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に準じて、材齢1日の初期膨張率を測定した。
・乾燥収縮率試験
JIS A 1129:2010「モルタルおよびコンクリートの長さ変化験方法」に準じ、充填モルタル成型24時間後に脱型した後、20℃、湿度60%の条件下で気中養生を行い、材齢28日の乾燥収縮率を測定した。
【0037】
表2及び表3に評価結果を示す。実施例のモルタルは、何れもフロー値の標準偏差が5以内、変動係数が2%、単位容積質量の標準偏差が0.03以内、変動係数が1%と各梱包袋における品質のバラツキが少なく、プレミックスモルタルとして品質が安定していることが確認された。一方、大径骨材含む全混合材料を一度にプレミックス混合した比較参考品は、フロー値の標準偏差が32.3、変動係数が15%、単位容積質量の標準偏差が0.12、変動係数が5%と各梱包袋によるばらつきが顕著に大きく、プレミックスモルタルとして品質安定性に欠けた。また、本発明品1及び2は、膨張収縮率が0.24~0.44%、材齢28日の乾燥収縮率は500×10-6以下であり、無収縮性を付与した低収縮モルタルであることが確認された。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
[実験例2]
<プレミックスモルタルの製造方法>
表4に示す配合でセメント組成物を300kg計量し、ヘンシェルミキサーにて6分間混合し、セメント組成物を作製しフレキシブルコンテナバッグへ一次保管した。次に表4に示す配合でセメント組成物及び混合材料1、2(繊維、大径骨材)を手詰めにてNET25kgのイージーオープン密封紙袋の風袋の開封面側から順に、1/2量のセメント組成物、繊維、大径骨材、1/2量のセメント組成物となるように分離した状態で梱包し、各プレミックスモルタルを24袋、本発明品(3、4)を作製した。
比較参考品2として、セメント組成物、混合材料(繊維及び大径骨材)を表4に示す配合でリボン型混合ミキサーよりアジテータを介し、自動包装する混合設備で1t混合を行いプレミックス包装し、包装直後と最終の各2袋を除き、60袋を作製した。
作製した各本発明品の12袋、比較参考品は梱包5袋毎の12袋をプレミックスモルタルとしての品質安定性の評価を行った。
【0041】
【表4】
【0042】
<プレミックスモルタルの評価方法>
梱包した本発明品及び比較参考品について、高速ハンドミキサー(1000rpm)を用い、所定の水/プレミックス材比(本発明品3:11.0質量%、本発明品4:10.6質量%、比較参考品3:11.0質量%)とした水を練混ぜ容器(ペール缶)へ投入し、材料を投入後90秒間撹拌してモルタルを作製し、実施例1と同様に各プレミックスモルタルの品質安定性をテーブルフロー試験及び繊維分散性により評価を行った。繊維分散性の評価は以下の評価試験で行った。
・繊維分散性
練混ぜ直後のモルタルの風合いを目視及び手触り感により確認し、評価指標として、繊維が分散されず繊維の凝集粒が顕著に確認されるものを×、殆ど確認されないものを○とした。
【0043】
表5に評価結果を示す。実施例のモルタルは、バラツキの少ない安定したフロー値及び繊維分散性が確認され、各梱包袋におけるプレミックスモルタルとしての品質が安定していることを確認した。一方で繊維含む全混合材料を一度にプレミックス混合した比較参考品は、フロー値、単位容積質量ともに各梱包袋によるばらつきが顕著に大きく、プレミックスモルタルとして品質安定性に欠けた。
【0044】
【表5】
【0045】
[実験例3]
<プレミックスモルタルの製造>
表6に示す配合でセメント組成物を200kg計量し、ヘンシェルミキサーにて6分間混合し、フレキシブルコンテナバックへ一次保管した。次に表6に示す配合でセメント組成物及び混合材料3、4(重量骨材)を手詰めにてNET25kgのイージーオープン密封紙袋の風袋に風袋の開封面側から順に1/2量のセメント組成物、大径骨材、1/2量のセメント組成物となるように分離した状態(本発明品6)、風袋の開封面側にから順にセメント組成物、大型骨材となるように分離した状態(本発明品7)、又は風袋の開封面側にから順に大型骨材、セメント組成物となるように分離した状態(本発明品8)で梱包し、各プレミックスモルタルを8袋作製した。
作製した本発明品についてモルタルとしての品質安定性の評価を行った。
【0046】
<プレミックスモルタルの評価方法>
梱包した本発明品について、高速ハンドミキサー(1000rpm)を用い、水/プレミックス材比(本発明品6:6.8質量%、本発明品7:7.1質量%、本発明品8:6.8質量%)とした水を練混ぜ容器(ペール缶)へ投入し、材料を投入後60秒間撹拌してモルタルを作製し、実施例1と同様に各プレミックスモルタルの品質安定性をテーブルフロー試験及び単位容積質量試験を行った。
また、材料分離抵抗性を以下の評価試験で行った。
・材料分離抵抗性
練混ぜ直後のモルタルの風合いを目視、手触り感により確認し、評価指標として、重量骨材が沈降しているものを×、重量骨材がやや沈降しているものを△、重量骨材が沈降せず材料分離していないものを○とした。
【0047】
【表6】
【0048】
表7に評価結果を示す。実施例のモルタルは、各梱包袋における品質のバラツキが少なく、フロー値の標準偏差が5以内、変動係数が2%以内、単位容積質量の標準偏差が0.04以内、変動係数が1%以内と各梱包袋における品質のバラツキが少なく、プレミックスモルタルとして品質が安定していることが確認された。特に、開封面に最も近い位置にセメント組成物がある本発明品6及び7では、品質のバラツキが更に小さいことが確認された。
【0049】
【表7】