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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097982
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】中留及び時計
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/18 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A44C5/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211282
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】徳山 茂
(57)【要約】
【課題】時計の位置を利用者が容易に調整することを可能とする。
【解決手段】中留は、中留ケースの一端から中留ケースに摺動可能に挿入され、時計の一対のバンドのうちの一方のバンドを接続するための接続部を有する第1のスライド板と、中留ケースの他端から中留ケースに摺動可能に挿入され、一対のバンドのうちの他方のバンドを接続するための接続部を有する第2のスライド板と、中留ケースの内部において、第1のスライド板及び第2のスライド板とそれぞれ係合してスライド板の摺動を規制する第1の係合部及び第2の係合部と、第1の係合部と連動するように接続され、押下された場合に第1の係合部を第1のスライド板と離間させて第1のスライド板との係合を解除する第1のボタンと、第2の係合部と連動するように接続され、押下された場合に第2の係合部を第2のスライド板と離間させて第1のスライド板との係合を解除する第2のボタンと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中留ケースと、
前記中留ケースの一端から前記中留ケースに摺動可能に挿入され、時計の一対のバンドのうちの一方のバンドを接続するための接続部を有する第1のスライド板と、
前記中留ケースの他端から前記中留ケースに摺動可能に挿入され、前記一対のバンドのうちの他方のバンドを接続するための接続部を有する第2のスライド板と、
前記中留ケースの内部において、前記第1のスライド板及び前記第2のスライド板とそれぞれ係合して当該スライド板の摺動を規制する第1の係合部及び第2の係合部と、
前記第1の係合部と連動するように接続され、押下された場合に前記第1の係合部を前記第1のスライド板と離間させて前記第1のスライド板との係合を解除する第1のボタンと、
前記第2の係合部と連動するように接続され、押下された場合に前記第2の係合部を前記第2のスライド板と離間させて前記第1のスライド板との係合を解除する第2のボタンと、
を有することを特徴とする中留。
【請求項2】
前記第1のスライド板及び前記第2のスライド板は、前記第1の係合部及び前記第2の係合部とそれぞれ係合可能なラチェット状の係合歯を有し、
前記第1の係合部及び前記第2の係合部は、前記第1のスライド板の係合歯及び前記第2のスライド板の係合歯とそれぞれ係合した状態で、当該スライド板が中留ケースから引き出される方向への摺動を規制し、中留ケースに挿入される方向への摺動を許容する、
請求項1に記載の中留。
【請求項3】
前記第1のスライド板及び前記第2のスライド板には、各スライド板の摺動方向に延伸する嵌合部がそれぞれ設けられ、
前記中留ケースは、前記第1のスライド板及び前記第2のスライド板の嵌合部にそれぞれ嵌合して当該スライド板の摺動可能範囲を画定する複数の突起部を有する、
請求項1又は2に記載の中留。
【請求項4】
前記第2のスライド板は、前記中留ケースの内部において前記第1のスライド板に重なるように、前記第1のスライド板の上側に配置され、
前記第1のスライド板の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて上面が下面に接近して薄くなるように斜面が形成され、
前記第2のスライド板の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて下面が上面に接近して薄くなるように斜面が形成される、
請求項1-3の何れか一項に記載の中留。
【請求項5】
請求項1-4の何れか一項に記載の中留を有することを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中留及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計は、時計本体、時計の12時側及び6時側にそれぞれ接続される一対のバンド及び一対のバンドを接続する中留から構成される。利用者は、通常、自身の手首の周長に合わせてバンドの長さを調整して腕時計を着用する。
【0003】
特許文献1には、それぞれに伝動歯が設けられた第1のベルト及び第2のベルトと、第1のベルト及び第2のベルトの伝動歯とそれぞれ係合し、回動可能なギアを備えたウェアラブル製品のベルト接続構造が記載されている。特許文献1に記載されたベルト接続構造では、ギアを回動させることにより第1のベルト及び第2のベルトが相互に接近又は離間するように動く。このベルト接続構造によれば、利用者は簡易な操作でベルトの長さを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-516486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、腕時計は、通常は利用者の手首の内側又は外側の中心に中留の中心が位置するように着用される。このとき、時計の見やすさや着用感の観点から、時計本体が中留とは反対側の手首の中心に位置することが好ましい。しかしながら、利用者の手首の形状や12時側バンドと6時側バンドとの長さの関係によっては、時計本体が手首の外側又は内側の中心からずれてしまうことがあった。
【0006】
特許文献1に記載されたベルト接続構造においては、ギアの回動に伴い第1のベルトと第2のベルトとの両方の長さが同時に調整されるため、時計本体の位置を調整することはできなかった。そこで、時計本体の位置を容易に調整可能とすることが求められていた。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、時計の位置を利用者が容易に調整することを可能とする中留及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中留は、中留ケースと、中留ケースの一端から中留ケースに摺動可能に挿入され、時計の一対のバンドのうちの一方のバンドを接続するための接続部を有する第1のスライド板と、中留ケースの他端から中留ケースに摺動可能に挿入され、一対のバンドのうちの他方のバンドを接続するための接続部を有する第2のスライド板と、中留ケースの内部において、第1のスライド板及び第2のスライド板とそれぞれ係合してスライド板の摺動を規制する第1の係合部及び第2の係合部と、第1の係合部と連動するように接続され、押下された場合に第1の係合部を第1のスライド板と離間させて第1のスライド板との係合を解除する第1のボタンと、第2の係合部と連動するように接続され、押下された場合に第2の係合部を第2のスライド板と離間させて第1のスライド板との係合を解除する第2のボタンと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る中留において、第1のスライド板及び第2のスライド板は、第1の係合部及び第2の係合部とそれぞれ係合可能なラチェット状の係合歯を有し、第1の係合部及び第2の係合部は、第1のスライド板の係合歯及び第2のスライド板の係合歯とそれぞれ係合した状態で、スライド板が中留ケースから引き出される方向への摺動を規制し、中留ケースに挿入される方向への摺動を許容する、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る中留において、第1のスライド板及び第2のスライド板には、スライド板の摺動方向に延伸する嵌合部がそれぞれ設けられ、中留ケースは、第1のスライド板及び第2のスライド板の嵌合部にそれぞれ嵌合してスライド板の摺動可能範囲を画定する複数の突起部を有する、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る中留において、第2のスライド板は、中留ケースの内部において第1のスライド板に重なるように、第1のスライド板の上側に配置され、第1のスライド板の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて上面が下面に接近して薄くなるように斜面が形成され、第2のスライド板の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて下面が上面に接近して薄くなるように斜面が形成される、ことが好ましい。
【0012】
本発明に係る時計は、本発明に係る中留を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る中留及び時計は、時計の位置を利用者が容易に調整することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】中留1の斜視図である。
図2】中留1の正面図である。
図3】中留1の分解斜視図である。
図4】基部23及び蓋部24の斜視図である。
図5】第1のボタン51及び第2のボタン52の斜視図である。
図6】第1のボタン51、第2のボタン52及び枠体6の斜視図である。
図7】第1のスライド板3の斜視図である。
図8】第2のスライド板4の斜視図である。
図9】(a)は係合部512と係合歯322との関係を説明するための模式図であり、(b)は係合部522と係合歯432との関係を説明するための模式図である。
図10】中留1の断面図である。
図11】中留1aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に留意されたい。
【0016】
図1は、本発明に係る中留1の斜視図であり、図2は中留1の正面図である。中留1は、概略、中留ケース2、第1のスライド板3、第2のスライド板4、第1のボタン51及び第2のボタン52を有する。これらの部材は、チタン等の金属又は樹脂により形成される。第1のスライド板3は、中留ケース2の一端の側面に設けられた第1の開口部21から中留ケース2に挿入される。第2のスライド板4は、中留ケース2の他端に設けられた第2の開口部22から中留ケース2に挿入される。
【0017】
第1のスライド板3及び第2のスライド板4は、中留ケース2に挿入される挿入端とは異なる側の端部に、時計の一対のバンドをそれぞれ接続するための接続部31及び41を有する。図1及び図2に示す例では、接続部31及び41は、ピンを挿通するための挿通孔311及び411をそれぞれ有し、挿通されたピンの両端部を保持するバンドとの接続を可能とする。接続部31及び41は、このような構造に限られず、例えば、ピンの両端部を保持する構造や、バンドを直接に接続可能な構造等の任意の構造を有してよい。
【0018】
第1のボタン51及び第2のボタン52は、中留ケース2の、第1の開口部21又は第2の開口部22が設けられていない、相互に対向する側面にそれぞれ設けられる。第1のボタン51が押下されていない状態では、第1のスライド板3は、中留ケース2から引き出される方向D1への摺動が規制され、中留ケース2に挿入される方向への摺動が許容される。第1のボタン51が押下された状態では、第1のスライド板3は、方向D1及びD2の何れにも摺動可能である。
【0019】
同様に、第2のボタン52が押下されていない状態では、第2のスライド板4は、中留ケース2から引き出される方向D2への摺動が規制され、中留ケース2に挿入される方向D1への摺動が許容される。第2のボタン52が押下されている状態では、第2のスライド板4は、方向D2及びD1の何れにも摺動可能である。
【0020】
図3は、中留1の分解斜視図である。中留1は、枠体6、第1の調整部材7及び第2の調整部材8をさらに有する。これらの部材は、第1のボタン51及び第2のボタン52、枠体6、第1のスライド板3及び第1の調整部材7、第2のスライド板4及び第2の調整部材8の順に、中留ケース2の基部23上の所定の位置に配置される。そして、基部23上に中留ケース2の蓋部24が載置されることにより、これらの部材が中留ケース2の内部に収容される。
【0021】
図4は、基部23及び蓋部24の斜視図である。基部23は、第1のスライド板3及び第2のスライド板4の摺動方向(以下、X方向と称することがある。)に沿って上に凸の円弧状に湾曲した底板25と、摺動方向に沿って底板25の両側面に設けられた壁部26及び27とを有する。
【0022】
底板25は、中央部からX方向に沿って外側に向かうにつれて3段階に厚くなるように形成される。以降では、底板25の上面のうち、底板25が最も薄く形成されている領域を第1領域251と称する。また、底板25の上面のうち、第1領域251を挟み且つ底板25が第1領域251よりも厚く形成されている一対の領域を第2領域252と称する。また、第2領域252を挟み且つ底板25が第2領域252よりも厚く形成されている一対の領域を第3領域253と称する。底板25のX方向における一方の端部の近傍には一対の第1の突起部28が設けられ、他方の端部の近傍には一対の第2の突起部29が設けられる。
【0023】
壁部26のX方向における中央付近には第1のボタン51を配置するための溝261が設けられ、壁部27のX方向における中央付近には第2のボタン52を配置するための溝271が設けられる。底板25の側面のうち、壁部26の溝261から露出している部分にはピン254が設けられる。ピン254は、底板25の側面に設けられ且つコイルバネが内部に配置されたピン孔に、軸方向に摺動可能に挿入される。同様に、底板25の側面のうち、壁部27の溝271から露出している部分にはピン255が設けられる。ピン255は、底板25の側面に設けられ且つコイルバネが内部に配置されたピン孔に、軸方向に摺動可能に挿入される。ピン254及び255は、コイルバネによってピン孔から排出される方向へそれぞれ押圧される。
【0024】
壁部26及び27の上面には、壁部26及び27に蓋部24をねじ止めにより接合するための複数のねじ穴262及び272がそれぞれ設けられる。蓋部24には、ねじ穴262及び272に対応する位置に表裏を貫通する複数のねじ穴241が設けられる。壁部26及び27と蓋部24とが接合されることにより、壁部26及び27、蓋部24並びに底板25の第3領域253に囲まれた、第1の開口部21及び第2の開口部22がそれぞれ形成される。なお、基部23と蓋部24とを接合する方法はねじ止めに限られず、ピンを圧入する方法や接着剤を用いる方法等、任意の方法が用いられてよい。
【0025】
図5は、第1のボタン51及び第2のボタン52の斜視図である。なお、見やすさのため、図5においては第1のボタン51について、隠れ線が破線により図示されている。第1のボタン51は、接続部511を介して係合部512と連動するように接続される。第1のボタン51は、溝261に配置可能となるように、X方向において溝261と略同一の幅を有する。第1のボタン51の係合部512に対向する面には、ピン254を挿入可能な凹部513が形成される。
【0026】
係合部512は、後述するように第1のスライド板3と係合して第1のスライド板3の摺動を規制する柱状の部材である。接続部511は、第1のボタン51から係合部512の下側まで延伸して第1のボタン51と係合部512とを接続する扁平な部材である。
【0027】
第2のボタン52は、接続部521を介して係合部522と連動するように接続される。第2のボタン52及び接続部521は、第1のボタン51及び接続部511とそれぞれ同様に構成される。すなわち、第2のボタン52は、溝271に配置可能となるように、X方向において溝271と略同一の幅を有する。第2のボタン52の係合部522に対向する面には、ピン275を挿入可能な凹部523が形成される。
【0028】
係合部522は、後述するように第2のスライド板4と係合して第2のスライド板4の摺動を規制する柱状の部材である。接続部521は、第2のボタン52から係合部522の下側まで延伸して第2のボタン52と係合部522とを接続する扁平な部材である。
【0029】
図6は、基部23上に配置された第1のボタン51、第2のボタン52及び枠体6の斜視図である。第1のボタン51は、凹部513にピン254が挿入され且つ係合部512が第1領域251に位置するように基部23上に配置される。第2のボタン52は、凹部523にピン255が挿入され且つ係合部522が第1領域251に位置するように基部23上に配置される。
【0030】
枠体6は、中央に表裏を貫通する開口部61が設けられた平板状の部材である。枠体6は、開口部61に係合部512及び522が挿通されるように基部23上に配置される。第1のボタン51及び第2のボタン52は、コイルバネの弾性力を受けたピン254及び255にそれぞれ中留ケース2の外側に押圧される。したがって、第1のボタン51が押下されていない状態では、第1のボタン51と連動する係合部512は中留ケース2の外側に引き出される力を受け、開口部61に接している。同様に、第2のボタン52が押下されていない状態では、第2のボタン52と連動する係合部522は中留ケース2の外側に引き出される力を受け、開口部61に接している。
【0031】
枠体6は、上方から見たときの形状が、第1領域251と第2領域252とを合わせた形状と略同一となるように形成される。また、枠体6は、底板25の第2領域252における厚さと第3領域253における厚さとの差と略同一の厚さを有し且つ上面が第3領域253と略同一の曲率でX方向に沿って上に凸の円弧状に湾曲するように形成される。これにより、枠体6を基部23の第2領域252上に配置したときに、枠体6の上面と第3領域273とが、X方向に沿って湾曲する滑らかな湾曲面を形成する。
【0032】
図7は、第1のスライド板3の斜視図である。第1のスライド板3は、X方向に沿って円弧状に湾曲する平板状の部材である。第1のスライド板3の挿入端側は、第1のボタン51側の分岐32と第2のボタン52側の分岐33とに分かれる。また、第1のスライド板3の挿入端に対向する端部には接続部31が形成される。分岐32の、分岐33に対向する対向面321には、係合部512と係合可能な係合歯322が形成される。分岐32及び33のそれぞれの挿入端側には、挿入端に近づくにつれて上面が下面に接近して薄くなるように、斜面34が形成される。
【0033】
第1のスライド板3には、表裏を貫通し且つX方向に延伸する一対の貫通孔35が設けられる。貫通孔35には、第1のスライド板3を基部23上に配置したときに第1の突起部28が挿通されて嵌合する。これにより、第1のスライド板3の摺動可能範囲が貫通孔35の長さによって画定される。
【0034】
図8は、第2のスライド板4の斜視図である。第2のスライド板4は、X方向に沿って円弧状に湾曲する平板状の部材である。第2のスライド板4の挿入端側は、第1のボタン51側の分岐42と第2のボタン52側の分岐43とに分かれる。また、第2のスライド板4の挿入端に対向する端部には接続部41が形成される。分岐43の、分岐42に対向する対向面431には、係合部522と係合可能な係合歯432が形成される。分岐42及び43のそれぞれの挿入端側には、挿入端に近づくにつれて下面が上面に接近して薄くなるように、斜面44が形成される。
【0035】
第2のスライド板4には、表裏を貫通し且つX方向に延伸する一対の貫通孔45が設けられる。貫通孔45には、第2のスライド板4を基部23上に配置したときに第2の突起部29が挿通されて嵌合する。これにより、第2のスライド板4のX方向における摺動可能範囲が貫通孔45のX方向における長さによって画定される。
【0036】
なお、図7に示す例では貫通孔35は接続部31の近傍から第1のスライド板3の中央付近まで延伸し、図8に示す例では貫通孔45は接続部41の近傍から第2のスライド板4の中央付近まで延伸するものとしたが、このような例に限られない。貫通孔35及び45はそれぞれ、第1のスライド板3及び第2のスライド板4の挿入端側まで延伸してもよい。これにより、各スライド板の摺動可能範囲が大きくなり、中留1は、利用者が時計の位置をより柔軟に調整することを可能とする。
【0037】
図9(a)は、係合部512と第1のスライド板3の係合歯322との関係を説明するための模式図である。図9(a)においては、第1のボタン51が押下されていない状態における係合部512及び係合歯322の正面図が示されている。
【0038】
係合歯322は、複数の歯から構成され、各歯の頂部V1に接する2辺E1及びE2のうち、方向D1側の辺E1とX方向とがなす角が、方向D2側の辺D2とX方向とがなす角よりも大きくなるように形成されたラチェット状の係合歯である。係合部512は、係合歯322と係合可能な三角柱状の形状を有する。
【0039】
図9(a)に示すように、第1のボタン51が押下されていない状態で、係合部512は、係合歯322と係合する。これにより、第1のスライド板3を方向D1に沿って中留ケース2から引き出すために必要な力が、第1のスライド板3を方向D2に沿って中留ケース2に挿入するために必要な力よりも大きくなる。すなわち、係合部512は、第1のスライド板3が中留ケース2から引き出される方向D1への摺動を規制し、中留ケース2に挿入される方向D2への摺動を許容する。
【0040】
第1のボタン51が押下された状態では、係合部512が第1のボタン51と連動して方向P1に移動し、係合歯322と離間する。これにより、第1のスライド板3の係合歯322と係合部512との係合が解除され、第1のスライド板3は方向D1及びD2に摺動可能となる。
【0041】
図9(b)は、係合部522と第2のスライド板4の係合歯432との関係を説明するための模式図である。係合歯432は、複数の歯から構成され、各歯の頂部V2に接する2辺E3及びE4のうち、方向D2側の辺E3とX方向とがなす角が、方向D1側の辺E4とX方向とがなす角よりも大きくなるように形成されたラチェット状の係合歯である。係合部522は、係合歯432と係合可能な三角柱状の形状を有する。
【0042】
図9(b)に示すように、第2のボタン52が押下されていない状態で、係合部522は、係合歯432と係合する。これにより、第2のスライド板4を方向D2に沿って中留ケース2から引き出すために必要な力が、第2のスライド板4を方向D1に沿って中留ケース2に挿入するために必要な力よりも大きくなる。すなわち、係合部512は、第2のスライド板4が中留ケース2から引き出される方向D2への摺動を規制し、中留ケース2に挿入される方向D1への摺動を許容する。
【0043】
第2のボタン52が押下された状態では、係合部522が第2のボタン52と連動して方向P2に移動する。これにより、第2のスライド板4の係合歯432と係合部522との係合が解除され、第2のスライド板4は方向D1及びD2に摺動可能となる。
【0044】
第1のボタン51及び第2のボタン52のうちの何れか一方のみが押下された場合は、押下されたボタンに対応するスライド板のみが方向D1及びD2に摺動可能となる。
【0045】
なお、図9(a)及び図9(b)においては、係合歯322及び432の頂部V1及びV2に接する各辺は直線であるものとしたが、曲線であってもよい。また、係合部512及び522の断面の三角形は鋭角三角形であるものとしたが、直角三角形又は鈍角三角形であってもよい。これにより、係合部512及び522が係合歯322及び432と係合している状態で各スライド板が中留ケース2から引き出されることがなくなるため、中留1は、時計を着用している間に時計の位置がずれることを防ぐことを可能とする。
【0046】
図10は、中留1を構成する各部材の位置関係を説明するための、中留1の断面図である。図10は、図2のX-X断面における断面図である。図10に示すように、枠体6の上面と第3領域253とによって形成される湾曲面に、第1のスライド板3及び第1の調整部材7が配置される。また、第1のスライド板3及び第1の調整部材7の上側に、第2のスライド板4及び第2の調整部材8が配置される。このとき、第2のスライド板4は、第1のスライド板3に重なるように配置される。
【0047】
第1の調整部材7は、第2の突起部29が挿通される貫通孔を有し且つ第1のスライド板3と略同一の厚さを有するように形成された板状の部材である(図3参照)。第2の調整部材8は、第1の突起部28が挿通される貫通孔を有し且つ第2のスライド板4と略同一の厚さを有するように形成された板状の部材である(図3参照)。第1の調整部材7及び第2の調整部材8により、中留ケース2の内部において第2のスライド板4が上側に、第1のスライド板3が下側にそれぞれ位置するようになり、中留ケース2の内部において第1のスライド板3と第2のスライド板4とが接触する可能性が低減する。これにより、各スライド板が中留ケース2に円滑に挿入される。
【0048】
また、第1のスライド板3の先端部には、先端に近づくにつれて上面が下面に接近して薄くなるように斜面34が形成され、第2のスライド板4の先端部には、先端に近づくにつれて下面が上面に接近して薄くなるように斜面44が形成される。これにより、中留ケース2にスライド板を挿入する際に第1のスライド板3と第2のスライド板4とが干渉したとしても、斜面34と斜面44とが接触することにより第1のスライド板3は下方に押し下げられ、第2のスライド板4は上方に持ち上げられるため、各スライド板が中留ケース2に円滑に挿入される。
【0049】
以上説明したように、中留1は、第1のスライド板3及び第2のスライド板4と、第1のスライド板3及び第2のスライド板4とそれぞれ係合してスライド板の摺動を規制する係合部512及び522と、係合部512及び係合部522とそれぞれ連動する第1のボタン51及び第2のボタン52と、を有する。第1のボタン51は、押下された場合に係合部512を第1のスライド板3と離間させて第1のスライド板3との係合を解除し、第2のボタン52は、押下された場合に係合部522を第2のスライド板4と離間させて第2のスライド板4との係合を解除する。これにより、中留1は、第1のスライド板3と第2のスライド板4とをそれぞれ独立に摺動可能とし、時計の位置を利用者が容易に調整することを可能とする。
【0050】
また、中留1において、第1のスライド板3及び第2のスライド板4は、係合部512及び522とそれぞれ係合可能なラチェット状の係合歯322及び432をそれぞれ有する。係合部512及び522は、係合歯322及び432とそれぞれ係合した状態で、スライド板が中留ケース2から引き出される方向への摺動を規制し、中留ケース2に挿入される方向への摺動を許容する。これにより、ボタンを押下することなくバンド全体の長さを短くすることが可能となるため、中留1は、時計の位置を利用者がより容易に調整することを可能とする。
【0051】
また、第1のスライド板3及び第2のスライド板4には、表裏を貫通し且つバンドの延伸方向に延伸する貫通孔35及び45がそれぞれ設けられ、中留ケース2は、貫通孔35及び45に挿通される第1の突起部28及び第2の突起部29を有する。これにより、第1のスライド板3及び第2のスライド板4が中留ケース2から完全に引き出されてしまうことがなくなるため、中留1は、利用者の利便性を向上させることを可能とする。
【0052】
また、第2のスライド板4は、中留ケース2の内部において第1のスライド板3に部分的に重なるように、第1のスライド板3の上側に配置される。また、第1のスライド板3の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて上面が下面に近づくように斜面34が形成され、第2のスライド板の挿入端側には、挿入端に近づくにつれて下面が上面に近づくように斜面44が形成される。これにより、各スライド板が中留ケース2に円滑に挿入されるため、中留1は、時計の位置を利用者が円滑に調整することを可能とする。
【0053】
上述した説明では、第1の突起部28及び第2の突起部29は基部23に設けられるものとしたが、蓋部24に設けられてもよい。また、第1の突起部28及び第2の突起部29は、基部23及び蓋部24とは別体として形成され、基部23又は蓋部24に接合されてもよい。
【0054】
上述した説明では、係合部512及び522はそれぞれ三角柱状の形状を有するものとしたが、このような例に限られない。例えば、係合部512及び522は、複数の三角柱をX方向に連結したような形状を有してもよい。これにより、係合部512及び522のX方向の剛性が向上するため、中留1は、時計の位置の調整に伴い係合部512及び522が破損するおそれを低減させることを可能とする。
【0055】
上述した説明では、第1のスライド板3及び第2のスライド板4には、貫通孔35及び45がそれぞれ設けられるものとしたが、このような例に限られない。第1のスライド板3は、貫通孔35に代えて、上面にX方向に延伸する凹部36を有してもよい。また、第2のスライド板4は、貫通孔45に代えて、下面にX方向に延伸する凹部46を有してもよい。
【0056】
図11は、貫通孔35及び45に代えて凹部36及び46を有する場合の中留1aの断面図である。なお、中留1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。中留1aにおいて、第1の突起部28aは、中留1の場合とは異なり蓋部24の下面に設けられ、第2の調整部材8を貫通して第1のスライド板3の上面の凹部36に嵌合する。また、第2の突起部29aは、中留1の場合と同様に基部23に設けられ、第1の調整部材7を貫通して第2のスライド板4の下面の凹部46に嵌合する。
【0057】
このようにしても、第1のスライド板3及び第2のスライド板4のX方向における摺動可能範囲が凹部36及び46のX方向における長さによってそれぞれ画定される。したがって、中留1aにおいて、第1のスライド板3及び第2のスライド板4が中留ケース2から完全に引き出されてしまうことがなくなる。また、第1のスライド板3及び第2のスライド板4がX方向に延伸する凹部36及び46を有することにより、各スライド板の曲げ剛性が向上するため、中留1は、時計の位置の調整に伴い各スライド板が破損するおそれを低減させることを可能とする。なお、中留1の貫通孔35及び45並びに中留1aの凹部36及び46は、嵌合部の一例である。
【0058】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 中留
2 中留ケース
21 第1の開口部
22 第2の開口部
23 基部
24 蓋部
28 第1の突起部
29 第2の突起部
3 第1のスライド板
322 係合歯
34 斜面
35 貫通孔
4 第2のスライド板
432 係合歯
44 斜面
45 貫通孔
51 第1のボタン
512 係合部
52 第2のボタン
522 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11