(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098000
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】トルク変動吸収装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20220624BHJP
F16F 15/30 20060101ALI20220624BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F16F15/134 Z
F16F15/134 A
F16F15/30 Z
F16D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211305
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】興梠 友樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅紀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】径方向の寸法をコンパクトとしつつ、安定したリミッタ性能を有するトルク変動吸収装置を提供する。
【解決手段】駆動源からの動力が伝達されるフライホイール10と、変速機の入力軸5に接続されトルク変動を吸収するダンパ機構部20と、動力伝達経路上の軸方向においてフライホイールとダンパ機構部との間に配置されるリミッタ機構部30とを具備し、リミッタ機構部は、フライホイールに締結される第1プレート310と、ダンパ機構部に締結される第2プレート320と、第1プレート又は第2プレートに締結される第3プレート330とを有し、第1プレート、第2プレート、及び第3プレートのうちの少なくともいずれか1つの直接又は間接の摩擦摺動によりすべりを生じさせ、摩擦摺動が生じる第1位置は、軸方向に直交する径方向において、第1プレートがフライホイールに締結される第2位置よりも内径側に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転し、駆動源からの動力が伝達されるフライホイールと、
変速機の入力軸に接続され、前記駆動源と前記変速機との間のトルク変動を吸収するダンパ機構部と、
動力伝達経路上において、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間に配され、前記入力軸が延びる軸方向において、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間に配置されるリミッタ機構部と、
を具備し、
前記リミッタ機構部は、
前記フライホイールに締結される第1プレートと、前記ダンパ機構部に締結される第2プレートと、前記第1プレート又は前記第2プレートに締結される第3プレートと、を有し、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間のトルク変動が所定値以上となる場合に、前記第1プレート、前記第2プレート、及び前記第3プレートのうちの少なくともいずれか1つの直接又は間接の摩擦摺動によりすべりを生じさせ、
前記摩擦摺動が生じる第1位置は、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1プレートが前記フライホイールに締結される第2位置よりも内径側に配置される、
トルク変動吸収装置。
【請求項2】
前記ダンパ機構部は、
前記回転軸周りに回転する第1入力プレートと、前記第1入力プレートに対向して配置され前記回転軸周りに前記第1入力プレートと一体回転する第2入力プレートと、を少なくとも有する第1回転体と、
前記回転軸周りに前記第1回転体に対し相対回転し、前記入力軸に接続されて前記入力軸に動力を伝達する第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構体と、
を含み、
前記第2プレートは、前記第1入力プレート及び前記第2入力プレートを一体化する締結部材によって、前記ダンパ機構部に締結される、請求項1に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項3】
前記第3プレートが前記第1プレート又は前記第2プレートに締結される第3位置は、前記径方向において前記第1位置よりも内径側に配置され、
前記第2プレートが前記ダンパ機構部に締結される第4位置は、前記径方向において前記第1位置よりも外径側に配置される、請求項1又は請求項2に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項4】
前記第3プレートは、前記第1プレートに締結される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項5】
前記第2プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第1プレートと前記第3プレートとの間に配置され、且つ、前記第3プレート、又は前記第1プレート若しくは前記第3プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる、請求項4に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項6】
前記第3プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、且つ、前記第2プレート、又は前記第1プレート若しくは前記第2プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる、請求項4に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項7】
前記第3プレートは、前記第2プレートに締結され、
前記第1プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第3プレートと前記第2プレートとの間に配置され、且つ、前記第2プレート、又は前記第2プレート若しくは前記第3プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項8】
前記第1プレート及び前記第3プレートの少なくともいずれか一方は、前記回転軸上に位置決めされる、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項9】
前記第2回転体は、前記回転軸上に前記軸方向に延びる円筒部を有し、
前記円筒部の表面には、前記フライホイールと前記第1プレート又は前記第3プレートとで包囲される空間に接続する切欠きが形成される、請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載のトルク変動吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、トルク変動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等において、エンジン等の駆動源と変速機との間の動力伝達経路上には、当該駆動源から当該変速機に向けて伝達されるトルク変動を吸収するトルク変動吸収装置が設けられており、トルク変動吸収装置は例えばクラッチ装置に組み込まれている。
【0003】
従来のトルク変動吸収装置、駆動源と変速機との間のトルク変動を吸収するダンパ機構部と、フライホイールとダンパ機構部との間に配され、駆動源と変速機との間のトルク変動が所定値以上となるとフライホイールから変速機の入力軸への動力伝達を遮断するリミッタ機構部と、を有する。
【0004】
具体的なトルク変動吸収装置の構成として、例えば特許文献1には、ダンパ機構部(特許文献1においては、ダンパ機構20)と、リミッタ機構部(特許文献1においては、リミッタ部30)とを、径方向に隣接させるトルク変動吸収装置が開示されている。また、特許文献2には、ダンパ機構部とリミッタ機構部とを、軸方向に隣接させるトルク変動吸収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5120386号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/012192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のトルク変動吸収装置においては、ダンパ機構部とリミッタ機構部とが、径方向に隣接して配置されるため、装置全体として軸方向の寸法はコンパクトとされる一方で径方向の寸法が大きくなってしまう。エンジンのダウンサイジングが求められる昨今の環境において、車載されるトルク変動吸収装置として径方向の寸法をコンパクトにすることが求められることが多く、この点、特許文献1に開示のトルク変動吸収装置は、搭載の観点で課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のトルク変動吸収装置においては、フライホイールがリミッタ機構部の一部を兼ねているため、リミッタ機構部がフライホイールの振動等の影響を直接受ける可能性が高く、リミッタ機構部のリミッタ性能の安定性等に課題がある。
【0008】
そこで、様々な実施形態により、径方向の寸法をコンパクトなものとしつつ、安定したリミッタ性能を有するトルク変動吸収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係るトルク変動吸収装置は、回転軸周りに回転し、駆動源からの動力が伝達されるフライホイールと、変速機の入力軸に接続され、前記駆動源と前記変速機との間のトルク変動を吸収するダンパ機構部と、動力伝達経路上において、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間に配され、前記入力軸が延びる軸方向において、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間に配置されるリミッタ機構部と、を具備し、前記リミッタ機構部は、前記フライホイールに締結される第1プレートと、前記ダンパ機構部に締結される第2プレートと、前記第1プレート又は前記第2プレートに締結される第3プレートと、を有し、前記フライホイールと前記ダンパ機構部との間のトルク変動が所定値以上となる場合に、前記第1プレート、前記第2プレート、及び前記第3プレートのうちの少なくともいずれか1つの直接又は間接の摩擦摺動によりすべりを生じさせ、前記摩擦摺動が生じる第1位置は、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1プレートが前記フライホイールに締結される第2位置よりも内径側に配置される。
【0010】
この構成のトルク変動吸収装置によれば、ダンパ機構部とリミッタ機構部とを軸方向に隣接させることで径方向の寸法をコンパクトなものとすることができる。さらに、この構成のトルク変動吸収装置のリミッタ機構部は、フライホイールを構成要素とせず、第1プレート、第2プレート、及び第3プレートで構成されることにより、安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0011】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記ダンパ機構部は、前記回転軸周りに回転する第1入力プレートと、前記第1入力プレートに対向して配置され前記回転軸周りに前記第1入力プレートと一体回転する第2入力プレートと、を少なくとも有する第1回転体と、前記回転軸周りに前記第1回転体に対し相対回転し、前記入力軸に接続されて前記入力軸に動力を伝達する第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構体と、を含み、前記第2プレートは、前記第1入力プレート及び前記第2入力プレートを一体化する締結部材によって、前記ダンパ機構部に締結される。
【0012】
この構成とすることによって、リミッタ機構部とダンパ機構部とを確実に連結させることが可能となり、且つ、部品点数を最小限とすることができる。
【0013】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第3プレートが前記第1プレート又は前記第2プレートに締結される第3位置は、前記径方向において前記第1位置よりも内径側に配置され、前記第2プレートが前記ダンパ機構部に締結される第4位置は、前記径方向において前記第1位置よりも外径側に配置される。
【0014】
この構成とすることによって、ダンパ機構部とリミッタ機構部とを軸方向に確実に隣接して配置させ、且つ、両部の機能を担保させることが可能となる。
【0015】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第3プレートは、前記第1プレートに締結される。
【0016】
この構成とすることによって、リミッタ機構部のリミッタ性能を安定化させることが可能となる。
【0017】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第2プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第1プレートと前記第3プレートとの間に配置され、且つ、前記第3プレート、又は前記第1プレート若しくは前記第3プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる。
【0018】
この構成とすることによって、リミッタ機構部は、安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0019】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第3プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、且つ、前記第2プレート、又は前記第1プレート若しくは前記第2プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる。
【0020】
この構成とすることによって、リミッタ機構部は、安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0021】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第3プレートは、前記第2プレートに締結され、前記第1プレートの少なくとも一部は、前記軸方向において前記第3プレートと前記第2プレートとの間に配置され、且つ、前記第2プレート、又は前記第2プレート若しくは前記第3プレートに支持されるプレッシャープレートとの間で前記摩擦摺動を生じさせる。
【0022】
この構成とすることによって、リミッタ機構部は、安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0023】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第1プレート及び前記第3プレートの少なくともいずれか一方は、前記回転軸上に位置決めされる。
【0024】
この構成とすることによって、リミッタ機構部は、さらに安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0025】
また、一態様に係る前記トルク変動吸収装置において、前記第2回転体は、前記回転軸上に前記軸方向に延びる円筒部を有し、前記円筒部の表面には、前記フライホイールと前記第1プレート又は前記第3プレートとで包囲される空間に接続する切欠きが形成される。
【0026】
この構成とすることによって、変速機の入力軸と第2回転体の円筒部との間に提供される油剤が円筒部の表面に漏れ出てきたとしても、漏れ出てきた油剤は円筒部の表面に形成される切欠きを経由して前述の空間へと排出することができる。この際、摩擦摺動が生じる第1位置が存在する空間と、前述の空間とは、第1プレート又は第3プレートによって分離(遮蔽)されているため、第1位置が存在する空間に油剤が排出されることが抑制される。これにより、リミッタ機構部は、さらに安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
様々な実施形態によれば、径方向の寸法をコンパクトなものとしつつ、安定したリミッタ性能を有するトルク変動吸収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係るトルク変動吸収装置に含まれるダンパ機構部の構成を模式的に示す概略上面図である。
【
図3】一実施形態に係るトルク変動吸収装置に含まれるダンパ機構部及びリミッタ機構部の一部を示す概略上面図である。
【
図4】第2実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成のうち、第1位置付近を拡大して示す概略断面図である
【
図5】第3実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】第4実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成のうち、第1位置付近を拡大して示す概略断面図である。
【
図7】第5実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】第6実施形態に係るトルク変動吸収装置の構成のうち、第1位置付近を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要件には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0030】
1.トルク変動吸収装置の構成
一実施形態に係るトルク変動吸収装置の全体構成の概要について、
図1乃至
図3を参照しつつ説明する。
図1は、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。
図2は、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1に含まれるダンパ機構部20の構成を模式的に示す概略上面図である。
図3は、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1に含まれるダンパ機構部20及びリミッタ機構部30の一部を示す概略上面図である。
【0031】
一実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、エンジンやモータ等の駆動源(図示せず)と変速機(図示せず)等の動力伝達経路上に設けられ、当該駆動源からの動力がフライホイール10を介して伝達されて、当該動力を変速機等へと伝達(出力)しつつ、駆動源と変速機との間のトルク変動が所定値以上となると変速機への動力伝達を遮断するものである。
【0032】
一実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、
図1に示すように、主に、駆動源から動力が伝達されるフライホイール10、変速機の入力軸5に接続され、駆動源と変速機との間のトルク変動を吸収するダンパ機構部20、及び動力伝達経路上においてフライホイール10とダンパ機構部20との間に配されるリミッタ機構部30を含む。フライホイール10は、駆動源の駆動軸に固定されるものであって、公知のものを用いることができる。
【0033】
以下、ダンパ機構部20及びリミッタ機構部30の詳細について説明する。なお、本開示において「軸方向」とは、変速機の入力軸5(又は回転軸O)が延びる方向(例えば、
図1においては紙面左右方向)を意味し、「径方向」とは、軸方向に直交する方向(例えば、
図1においては紙面上下方向)を意味するものとする。
【0034】
1-1.ダンパ機構部20
ダンパ機構部20は、
図2に示すように、後述するリミッタ機構部30から動力が伝達され回転軸Oの周りを回転する第1回転体としてのディスクプレート200、回転軸O周りにディスクプレート200に対し相対回転し、変速機の入力軸5に接続されて入力軸5に動力を伝達(出力)する第2回転体としてのハブ220、ディスクプレート200とハブ220とを回転方向に弾性連結させる弾性機構体240、を主に含むものであって公知のものを用いることができる。
【0035】
1-1-1.ディスクプレート200
ダンパ機構部20における動力入力側の第1回転体としてのディスクプレート200は、
図1に示すように、フライホイール10及び後述するリミッタ機構部30を介して、駆動源からの動力が伝達(入力)される。ディスクプレート200は、金属材料により形成され、後述するハブ220を挟んで、回転軸Oの周りにおいて回転可能に設けられている。ディスクプレート200は、ハブ220の軸方向両側に設けられ、回転軸O周りに回転する一対の板部材としての第1入力プレート201及び第2入力プレート202を含む。
【0036】
第1入力プレート201及び第2入力プレート202は、後述のとおり、リミッタ機構部30の構成要素である第2プレート320を介して動力が伝達される。第2入力プレート202は、軸方向において第1入力プレート201に対向するように配置されて回転軸O周りに第1入力プレート201と一体回転する。第1入力プレート201と第2入力プレート202は、
図1に示すように、締結部材としてのリベット250によって一体に固定されている。また、第1入力プレート201及び第2入力プレート202は、径方向内側端部付近において、ブッシュ260によって支持されている。これにより、軸方向へのずれが規制されている。
【0037】
第1入力プレート201及び第2入力プレート202は、相互に協働して、
図2に示すように、領域I~IVのそれぞれに対応付けて、弾性機構部240を収容する収容領域(
図1に示す例では、一例として4つの収容領域が示されているが、収容領域の数は4に限定されない)を形成するように、軸方向に膨らんだ形状を有する(
図1参照)。各収容領域は、ディスクプレート200の周方向に沿って延びる弾性体241を収容するために、ディスクプレート200の周方向に沿って略直線状又は略円弧状に延びている。なお、領域I~IVとは、ダンパ機構部20を上面からみて、
図2に示すように、各々が略90度の扇形を有する4つの各領域を指すものとする。
【0038】
図2を参照して説明すると、第1入力プレート201及び第2入力プレート202には、領域I~IVに対応付けて、それぞれ、周方向に沿って延びる第1収容領域203a、第2収容領域203b、第3収容領域203c、及び第4収容領域203dが形成されている。なお、後述するハブ220には、これら第1収容領域203a、第2収容領域203b、第3収容領域203c、及び第4収容領域203dに対応するように窓孔(図示せず)が設けられている。
【0039】
第1入力プレート201及び第2入力プレート202は、その間の間隙Gにハブ220を収容させることで、ハブ220がディスクプレート200に対して相対回転することを可能ならしめている。なお、第1入力プレート201又は第2入力プレート202には、ハブ220の相対回転を案内しつつ、ハブ220の過剰な相対回転(ディスクプレート200に対するハブ220の相対回転)を規制する切欠き205が形成されている。なお、
図1に示すように、第1入力プレート201及び第2入力プレート202を一体化するに際して、別途のスペーサプレート202xが用いられる場合においては、当該スペーサプレート202xに切欠き205が形成されてもよい。
【0040】
その他、ディスクプレート200(第1入力プレート201、第2入力プレート202、及びスペーサプレート202x)には、従来から公知の構造を適宜に組み合わせることで、ダンパ機構部20としての機能を発揮させればよい。
【0041】
1-1-2.ハブ220
第2回転体としてのハブ220は、ダンパ機構部20の出力部材として機能し、例えば、金属材料により形成され、全体として略環状に延びる形状を有し、第1入力プレート201及び第2入力プレート202に挟まれて、回転軸Oの周りにディスクプレート200(第1プレート201及び第2プレート202)に対して相対回転可能に設けられる。また、ハブ220は、
図1に示すように、回転軸O上に軸方向に延びる略円筒状の円筒部221を有し、円筒部221に形成された貫通孔に変速機の入力軸5を挿通させて当該入力軸5とスプライン結合することができる。また、ハブ220は、円筒部221から径方向外側に向かって延びる円板部222を有する。
【0042】
円板部222には、前述のとおり、ディスクプレート200に設けられる第1収容領域203a、第2収容領域203b、第3収容領域203c、及び第4収容領域203dに対応する窓孔が等間隔に設けられている。ハブ220に設けられるこれらの窓孔は、後述する弾性機構体240の構成、より詳細には、弾性体241の数に対応して設けられる。つまり、窓孔には、後述する弾性機構体240が収容される。
【0043】
円板部222の径方向端部には、領域I~IVに対応付けて、突起部222a、222b、222c、及び222dが設けられている。突起部222a、222b、222c、及び222dは、ハブ220がディスクプレート200に対して相対回転することができるよう、第1入力プレート201又は第2入力プレート202(或いはスペーサプレート202x)に設けられる切欠き205内に収容される。また、突起部222a、222b、222c、及び222dは、ハブ220が所定捩り角相対回転すると、当該切欠き205の外縁部に当接しするように構成されている。これにより、ディスクプレート200に対するハブ220の当該捩り角以上の相対回転が確実に規制されるように構成されている。
【0044】
円筒部221の表面には、フライホイール10と、後述するリミッタ機構部30の第1プレート310又は第3プレート330とで包囲される空間に接続する切欠き221xが形成される。
図1には、一例として、フライホイール10と第1プレート310とで包囲される空間Zに接続する切欠き221xが、円筒部221の表面の円周上(若しくは全周)に渡って形成されている。この切欠き221xを設けることにより、変速機の入力軸5とハブ220の円筒部221との間の空間Wに提供されるグリス等の油剤が、円筒部221の表面に漏れ出てきたとしても、漏れ出てきた油剤は円筒部221の表面に形成される切欠き221xを経由して空間Zへと排出される。この際、リミッタ機構部30において摩擦摺動が生じる第1位置P1が存在する空間Vと空間Zとは、第1プレート310によって分離(遮蔽)されているため、第1位置P1に油剤が付着されることが抑制される。これにより、リミッタ機構部30のリミッタ性能を安定なものとすることが可能となる。
【0045】
1-1-3.弾性機構体240
第1弾性機構体240は、
図2に示すように、各領域I~IVにおいて、コイルスプリングが主に用いられる弾性体241、及び弾性体241を支持する一対のシート部材242(第1シート部材242x並びに第2シート部材242y)から主に構成される。なお、
図2においては、各領域I乃至IVにおいて、1つのコイルスプリングが用いられる一例が示されているが、これに限定されず、例えば、2つのコイルスプリングを直列に配置してもよい。
【0046】
そして、
図2に示される実施形態では、一例として、ディスクプレート200には、4つの収容領域、すなわち、第1収容領域203a、第2収容領域203b、第3収容領域203c、及び第4収容領域203d(これらに対応して、ハブ220にも前述のとおり窓孔が設けられている)が形成されるので、これら4つの収容領域の各々に、つまり各領域I~IVに対応付けて、1つの弾性体241が収容される。また、各領域I~IVにおいて、弾性体241は、各収容領域において、その両端を一対のシート部材242(第1シート部材242x及び第2シート部材242y)に支持される。なお、第1シート部材242x及び第2シート部材242yは、各々、ディスクプレート200(第1入力プレート201及び第2入力プレート202)及びハブ220に係合している。
【0047】
以上の構成により、弾性体241は、シート部材242を介して、ディスクプレート200とハブ220とを、回転方向に弾性連結させることが可能となっている。つまり、エンジンやモータ等の駆動源からの動力が、ディスクプレート200、第1シート部材242x、弾性体241、第2シート部材242y、及びハブ220の順に伝達された上で、ディスクプレート200とハブ220とが互いに相対回転すると、弾性体241が圧縮変形させられることでトルク変動を吸収することができる。
【0048】
ダンパ機構部20は、上記のとおり説明した構成に加えて、従来から公知の構造を適宜に組合せること、又は公知の構造に置換することが可能である。例えば、ハブ220に対して相対回転することでヒステリシストルクを発生させるヒステリシス発生部材がダンパ機構部20に組み込まれてもよい。ヒステリシス発生部材は、
図1に示すように、皿ばね270と、皿ばね270によって押圧される不図示の別プレートと、を含むことができる。
【0049】
1-2.リミッタ機構部30
リミッタ機構部30は、
図1に示すように、フライホイール10に締結される第1プレート310、ダンパ機構部20に締結される第2プレート320、第1プレート310又は第2プレート320に締結される第3プレート330と、を主に有し、フライホイール10とダンパ機構部20との間のトルク変動が所定値以上となる場合に、第1プレート310、第2プレート320、及び第3プレート330のうちの少なくともいずれか1つの直接又は間接の摩擦摺動によりすべりを生じさせて、フライホイール10から変速機の入力軸5への動力伝達を遮断するものである。
【0050】
第1プレート310は、
図1に示すように、締結ピン311によってフライホイール10に締結される。これにより、第1プレート310は、フライホイール10と一体的に回転可能とされるとともに、駆動源からの動力がフライホイール10を介して伝達される。
【0051】
第2プレート320は、
図1に示すように、第1入力プレート201と第2入力プレート202とを一体化するリベット250にて、ダンパ機構部20のディスクプレート200(第1入力プレート201及び第2入力プレート202)に締結される。これにより、第2プレート320は、フライホイール10から入力される駆動源由来の動力を、ダンパ機構部20へと伝達することができる。
【0052】
第3プレート330は、一実施形態においては、
図1に示すように、締結ピン331によって第1プレート310に締結される。これにより、
図1に示される一実施形態においては、第2プレート320の少なくとも一部を、軸方向において、第1プレート310と第3プレート330とで挟むように配置したうえで、第2プレート320と第3プレート330とが摩擦摺動することが可能な構成とされる。
【0053】
ここで、第2プレート320と第3プレート330との摩擦摺動に関し、第2プレート320として、所定の弾性率を有する金属板(例えば皿ばね)を用いて、その弾性率に基づいて第2プレート320を第3プレート330に押圧する構成として、第2プレート320と第3プレート330とを直接的に摩擦摺動させることができる。
【0054】
他方、第2プレート320と第3プレート330との摩擦摺動に関し、第2プレート320と第1プレート310との間に、皿ばね321及びプレッシャープレート322をさらに配することが好ましい。これにより、第2プレート320を第3プレート330に効率的に押し付けることが可能となり、第2プレート320と第3プレート330との直接的な摩擦摺動(第2プレート320から第3プレート330への動力伝達)の効率を向上させることができる(又は、第2プレート320とプレッシャープレート322との間で効率的に摩擦摺動させることができる)。この構成に際し、第1プレート310は、皿ばね321を支持することができ、第3プレート330は、プレッシャープレート322を支持することができる(プレッシャープレート322は、例えば、第3プレート330に嵌入又は嵌合されることにより、プレッシャープレート322と第3プレート330とは一体的に回転することができる)。なお、プレッシャープレート322は、第3プレート330ではなく第1プレート310に支持されるようにしてもよい。また、皿ばね321及びプレッシャープレート322は、第2プレート320と第1プレート310との間ではなく、第3プレート330を第2プレート320に押し付けるように、第3プレート330に隣接するように第2プレート320と反対側に配するようにしてもよい。
【0055】
一実施形態において、第1プレート310、第2プレート320、及び第3プレート330は、例えば金属材料の板状部材を用いることができる。また、
図1に示される一例において、摩擦摺動は、第2プレート320と第3プレート330との間において実行されるが、金属材料同士の第2プレート320と第3プレート330とが直接的に摺動してもよいし、第2プレート320及び第3プレート330の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0056】
一実施形態において、第1プレート310は、前述のブッシュ260に支持されて、回転軸O上に位置決めされている。これにより、第1プレート310の軸方向における位置ずれが抑制されるため、リミッタ機構部30はさらに安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0057】
また、一実施形態において、第1プレート310は、
図1に示すように、ブッシュ260に支持されることにより、フライホイール10に締結される第2位置P2から回転軸Oまで径方向に延在することができる。この場合において第1プレート310は、フライホイール10を駆動源の駆動軸に締結するための締結ボルト15と干渉しないよう、締結ボルト15に対向する位置において、締結ボルト15から離隔(退避)するように蛇行(湾曲)した形状を有することが好ましい。
【0058】
さらに、第1プレート310には、ハブ220の円筒部221に設けられる切欠き221xを介して排出される油剤を、トルク変動吸収装置1の外部へと排出する孔(又は切欠き)が別途設けられることが好ましい。
【0059】
一実施形態において、第2プレート320と第3プレート330とが摩擦摺動する第1位置P1は、径方向において、第1プレート310がフライホイール10に締結される第2位置P2よりも内径側に配置されている。これにより、ダンパ機構部20とリミッタ機構部30とを軸方向に隣接して配置させることができ、且つ、リミッタ機構部30に何らかの問題が生じた場合に第2位置P2において第1プレート310を(リミッタ機構部30を)フライホイール10から容易に取り外す又は締結させることが可能となる。
【0060】
なお、第2位置P2において第1プレート310をフライホイール10から取り外し又はフライホイール10に締結させるに際し、ディスクプレート200及びリベット250が当該取り外し又は締結に係る作業を阻害しないよう、ディスクプレート200(第1入力プレート201、第2入力プレート202、及びスペーサプレート202x)には、
図3に示すように、第2位置P2に対向する場所に切欠き206が形成されている。これにより、第2位置P2において、軸方向において所定の治具を利用して第1プレート310をフライホイール10から容易に取り外し、又はフライホイール10に容易に締結することが可能となる。
【0061】
また、一実施形態において、第3プレート330が締結ピン331によって第1プレートに締結される第3位置P3は、前述の第1位置P1よりも内径側に配置される。また、第2プレート320がダンパ機構部20に締結される第4位置P4は、第1位置P1よりも外径側に配置される。第3位置P3及び第4位置P4をこのような位置に配置させることにより、ダンパ機構部20とリミッタ機構部30とを軸方向に確実に隣接して配置させ、且つ、両部の機能を担保させることが可能となる。
【0062】
以上のとおりの構成の一実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、ダンパ機構部20とリミッタ機構部30とを軸方向に隣接させることで、径方向の寸法をコンパクトなものとすることができる。さらに、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1のリミッタ機構部30は、フライホイール10を構成要素とせず、第1プレート310、第2プレート320、及び第3プレート330で構成されることにより、安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0063】
2.変形例
2-1.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るトルク変動吸収装置1に構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、第2実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成のうち、第1位置P1付近を拡大して示す概略断面図である。
【0064】
第2実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、前述した一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と概ね同様の構成であるが、第1位置P1付近において、各プレートの隣接状況が、一実施形態とは異なるように配置される。したがって、第2実施形態に係るトルク変動吸収装置1において、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と同一の構成となる部分(構成要素)については、その詳細な説明を省略する。
【0065】
第2実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、具体的には、第2プレート320の少なくとも一部を、軸方向において、第1プレート310と第3プレート330とで挟む位置に配置したうえで、皿ばね321及びプレッシャープレート322が第2プレート320と第3プレート330との間に配置される。これにより、皿ばね321のばね力に基づいてプレッシャープレート322を第2プレート320に押し付けることにより、第2プレート320とプレッシャープレート322との間、及び/又は、第1プレート310と第2プレート320との間で、効率的に摩擦摺動させることが可能となる。なお、第2プレート320及びプレッシャープレート322の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。また、第1プレート310及び第2プレート320の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0066】
この場合において、
図4に示すように、皿ばね321及びプレッシャープレート322は第3プレート330によって支持されうるがこれに限定されず、プレッシャープレート322は、第1プレート310に支持されるように構成してもよい。
【0067】
2-2.第3実施形態
次に、第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0068】
第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、前述した一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と概ね同様の構成であるが、リミッタ機構部30の構成が一実施形態と異なる。したがって、第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1において、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と同一の構成となる部分(構成要素)については、その詳細な説明を省略する。
【0069】
第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1において、第3プレート330は、一実施形態と同様、
図5に示すように、締結ピン331によって第1プレート310に締結される。これにより、
図5に示される第3実施形態においては、一実施形態とは異なり、第3プレート330の少なくとも一部を、軸方向において、第1プレート310と第2プレート320との間に配置したうえで、第3プレート330と第2プレート320とが摩擦摺動することが可能な構成とされる。
【0070】
ここで、第3プレート330と第2プレート320との摩擦摺動に関し、第3プレート330として、所定の弾性率を有する金属板(例えば皿ばね)を用いて、その弾性率に基づいて第3プレート320を第2プレート320に押圧する構成としてもよい。
【0071】
他方、第3プレート330と第2プレート320との摩擦摺動に関し、第3プレート330と第1プレート310との間に、皿ばね323及びプレッシャープレート324をさらに配することが好ましい。これにより、第3プレート330を第2プレート320に効率的に押し付けることが可能となり、第3プレート330と第2プレート320との摩擦摺動(第3プレート330から第2プレート320への動力伝達)の効率を向上させることができる。この構成に際し、第1プレート310が、皿ばね323を支持してもよいし、皿ばね323を支持するために、
図5に示すように、別途の補助プレート313を設けてもよい。補助プレート313の一端は、第2プレート320とともに、前述のリベット250にてディスクプレート200に締結されることで位置決めすることが可能となる。
【0072】
図5に示される一例において、摩擦摺動は、第3プレート330と第2プレート320との間において実行されるが、第3プレート330と第2プレート320とは、金属材料同士の金属間摺動としてもよいし、第3プレート330及び第2プレート320の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0073】
以上のとおり説明した第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1も、一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
2-3.第4実施形態
次に、第4実施形態に係るトルク変動吸収装置1に構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、第4実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成のうち、第1位置P1付近を拡大して示す概略断面図である。
【0075】
第4実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、前述した第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1と概ね同様の構成であるが、第1位置P1付近において、各プレートの隣接状況が、第3実施形態とは異なるように配置される。
【0076】
第4実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、具体的には、第3プレート330の少なくとも一部を、軸方向において、補助プレート313と第2プレート320とで挟む位置に配置したうえで、皿ばね323及びプレッシャープレート324が第2プレート320と第3プレート330との間に配置される。これにより、皿ばね323のばね力に基づいてプレッシャープレート324を第3プレート330に押し付けることにより、第3プレート330とプレッシャープレート324との間、及び/又は、第3プレート330と補助プレート313との間で、効率的に摩擦摺動させることが可能となる。なお、第3プレート330及びプレッシャープレート324の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。また、第3プレート330及び補助プレート313の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0077】
この場合において、
図6に示すように、皿ばね323及びプレッシャープレート324は第2プレート320によって支持されうるがこれに限定されず、プレッシャープレート324は、補助プレート313に支持されるように構成してもよい。
【0078】
2-4.第5実施形態
次に、第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成について、
図7を参照して説明する。
図7は、第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0079】
第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、前述した一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と概ね同様の構成であるが、リミッタ機構部30の構成が一実施形態と異なる。したがって、第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1において、一実施形態に係るトルク変動吸収装置1と同一の構成となる部分(構成要素)については、その詳細な説明を省略する。
【0080】
第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1において、第3プレート330は、一実施形態と異なり、
図7に示すように、締結ピン331によって第2プレート320に締結される。これにより、
図7に示される第5実施形態においては、第1プレート310の少なくとも一部を、軸方向において、第3プレート330と第2プレート320との間に配置したうえで、第1プレート310と第2プレート320とが摩擦摺動することが可能な構成とされる。
【0081】
ここで、第1プレート310と第2プレート320との摩擦摺動に関し、第1プレート310として、所定の弾性率を有する金属板(例えば皿ばね)を用いて、その弾性率に基づいて第1プレート310を第2プレート320に押圧する構成としてもよい。
【0082】
他方、第1プレート310と第2プレート320との摩擦摺動に関し、第1プレート310と第3プレート330との間に、皿ばね325及びプレッシャープレート326をさらに配することが好ましい。これにより、第1プレート310を第2プレート320に効率的に押し付けることが可能となり、第1プレート310と第2プレート320との摩擦摺動(第1プレート310から第2プレート320への動力伝達)の効率を向上させることができる。この構成に際し、第3プレート330が、皿ばね325を支持することができ、第2プレート320は、プレッシャープレート326を支持することができる(プレッシャープレート326は、例えば第2プレート320に嵌入又は嵌合されることにより、プレッシャープレート326と第2プレート320とは一体的に回転することができる)。
【0083】
図7に示される一例において、摩擦摺動は、第1プレート310と第2プレート320との間において実行されるが、第1プレート310と第2プレート320とは、金属材料同士の直接的な金属間摺動としてもよいし、第1プレート310及び第2プレート320の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0084】
第5実施形態において、第3プレート330は、
図7に示すように、ブッシュ260に支持されて、回転軸O上に位置決めされている。これにより、第3プレート330の軸方向における位置ずれが抑制されるため、リミッタ機構部30はさらに安定したリミッタ性能を発揮することが可能となる。
【0085】
第5実施形態においては、フライホイール10と第3プレート330とで包囲される空間Zを画定させるともに、当該空間Zと空間Vとを分離(遮蔽)している。これにより、第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、一実施形態と同様に、油剤の排出に関する機能を発揮することができる。
【0086】
また、第5実施形態において、第3プレート330は、締結ボルト15と干渉しないよう、締結ボルト15に対向する位置において、締結ボルト15から離隔(退避)するように蛇行(湾曲)した形状を有することが好ましい。
【0087】
2-5.第6実施形態
次に、第6実施形態に係るトルク変動吸収装置1に構成について、
図8を参照して説明する。
図8は、第6実施形態に係るトルク変動吸収装置1の構成のうち、第1位置P1付近を拡大して示す概略断面図である。
【0088】
第6実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、前述した第5実施形態に係るトルク変動吸収装置1と概ね同様の構成であるが、第1位置P1付近において、各プレートの隣接状況が、第5実施形態とは異なるように配置される。
【0089】
第6実施形態に係るトルク変動吸収装置1は、具体的には、第1プレート310の少なくとも一部を、軸方向において、第3プレート330と第2プレート320とで挟む位置に配置したうえで、皿ばね325及びプレッシャープレート326が第1プレート310と第2プレート320との間に配置される。これにより、皿ばね325のばね力に基づいてプレッシャープレート326を第1プレート310に押し付けることにより、第1プレート310とプレッシャープレート326との間、及び/又は、第1プレート310と第3プレート330との間で、で効率的に摩擦摺動させることが可能となる。なお、第1プレート310及びプレッシャープレート326の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。また、第1プレート310及び第3プレート330の少なくともいずれか一方に、公知の方法及び構成にて摩擦部材を挿入させて、両者を間接的に摺動させてもよい。
【0090】
この場合において、
図8に示すように、皿ばね325及びプレッシャープレート326は第2プレート320によって支持されうるがこれに限定されず、プレッシャープレート326は、第3プレート330に支持されるように構成してもよい。
【0091】
以上のとおり説明した第3実施形態に係るトルク変動吸収装置1も、一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
以上、前述の通り、様々な実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 トルク変動吸収装置
5 変速機の入力軸
10 フライホイール
20 ダンパ機構部
30 リミッタ機構部
200 ディスクプレート(第1回転体)
201 第1入力プレート
202 第2入力プレート
220 ハブ(第2回転体)
221 円筒部
221x 切欠き
240 弾性機構体
250 リベット(締結部材)
310 第1プレート
320 第2プレート
330 第3プレート
O 回転軸
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置