(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098001
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】医療支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220624BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211306
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 明宏
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】医療現場と異なる場所において、医療従事者を円滑に支援可能な医療支援システムを提供する。
【解決手段】医療現場において医療対象者と対面する医療従事者が用いるための医療従事者側端末2と、医療従事者側端末2と通信ネットワークNを介して接続され、前記医療現場とは異なる場所に設置された、医療支援者が用いるための医療支援側端末3と、を備える医療支援システム1であって、医療支援側端末3は、医療支援情報を医療従事者側端末2に送信する医療支援情報提供手段376を備え、医療従事者側端末2は、前記医療従事者に装着するための眼鏡型ディスプレイ21と、前記医療支援情報を眼鏡型ディスプレイ21に投影する投影手段281と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療現場において医療対象者と対面する医療従事者が用いるための医療従事者側端末と、
前記医療従事者側端末と通信ネットワークを介して接続され、前記医療現場とは異なる場所に設置された、医療支援者が用いるための医療支援側端末と、
を備える医療支援システムであって、
前記医療支援側端末は、
前記医療従事者を支援するための医療支援情報を前記医療従事者側端末に送信する医療支援情報提供手段を備え、
前記医療従事者側端末は、
前記医療従事者に装着するための眼鏡型ディスプレイと、
前記医療支援情報を前記眼鏡型ディスプレイに投影する投影手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
【請求項2】
前記医療従事者側端末は、
前記医療従事者が前記眼鏡型ディスプレイを介して視認する方向を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を取得して、前記医療支援側端末に送信する画像取得手段を備え、
前記画像には、前記医療対象者および医療対象部位が含まれ、
前記医療支援側端末は、
ディスプレイと、
前記画像を取得して前記ディスプレイに表示する画像表示手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
【請求項3】
前記医療支援情報はポインタを含み、
前記医療支援側端末は、
前記ディスプレイに表示された前記画像に対する前記医療支援者の操作に応じて、前記ポインタを生成するポインタ生成手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の医療支援システム。
【請求項4】
前記医療支援情報は文字情報を含み、
前記医療支援側端末は、
前記医療支援者の操作に応じて、前記文字情報を生成する文字情報生成手段を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の医療支援システム。
【請求項5】
前記カメラの撮影範囲を変更する撮影範囲変更手段を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項6】
前記医療支援者が前記画像を介して視認する視認対象部位の状態を変更する視認対象部位変更手段を備えることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項7】
前記医療従事者側端末は、
前記医療対象者の生体情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する生体情報取得手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項8】
前記医療従事者側端末は、
前記医療対象者への生体処置情報を、前記医療支援側端末から受信する生体処置手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項9】
前記医療支援側端末は、医療支援マニュアルを含む資料データが記憶されたデータベースを備え、
前記医療支援情報提供手段は、前記データベースから前記資料データを読み出して前記医療従事者側端末に送信することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項10】
前記医療支援側端末および前記医療従事者側端末の少なくとも一方は、前記医療対象者の診察情報を記録する診察情報記録手段を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項11】
前記医療従事者側端末は、前記医療従事者から音声情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する音声取得手段を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項12】
前記医療従事者側端末は、前記医療現場の環境情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する環境情報取得手段を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項13】
前記環境情報は、温度、湿度、照度および音量の少なくともいずれかに関する情報であることを特徴とする請求項12に記載の医療支援システム。
【請求項14】
前記環境情報は、トイレの構造、トイレの位置、風呂場の構造、風呂場の位置、および、手すりの有無の少なくともいずれかに関する住環境情報であることを特徴とする請求項12または13に記載の医療支援システム。
【請求項15】
前記医療対象者は、呼吸器疾患、脳疾患、心疾患、耳鼻咽喉疾患、眼疾患、胃腸疾患、腹部疾患、関節部疾患、整形外科疾患、泌尿器疾患、産婦人科疾患、腫瘍疾患、歯科疾患、褥瘡、外傷および精神疾患の少なくともいずれかに罹患している、または罹患している可能性のある者であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項16】
前記医療対象者は、咽頭部、脈拍、瞳孔、眼球移動、瞼の裏面、関節、歯周部、動作、および言語の少なくともいずれかに障害または異常のある者、もしくはその可能性のある者、または、しこり、体表の腫れ、および体表の炎症の少なくともいずれかを有する者、もしくはその可能性のある者であることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の医療支援システム。
【請求項17】
前記医療支援者は、前記医療対象者が罹患している、または罹患している可能性の高い疾患の専門医師あることを特徴とする請求項15または16に記載の医療支援システム。
【請求項18】
前記医療従事者は、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、臨床検査技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士および介護士の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1から17に記載の医療支援システム。
【請求項19】
前記医療従事者は、看護師、救急救命士および介護士の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項18に記載の医療支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場において医療対象者と対面する医療従事者を、医療現場とは異なる場所にいる医療支援者が支援する医療支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療を施行する場が、各家庭における在宅医療、災害現場における災害医療など、専門の医療機関以外に広がってきている。在宅医療においては、訪問看護師や医師などにより医療が行われているが、専門的な知識が必要な医療は困難な場合が多い。また、災害医療において緊急の場合は、ヘリコプターや救急車で駆けつけることのできる少数の医療従事者で医療を行わざるを得ない。この場合でも、専門的な判断や医療的措置が必要である場合が多いと考えられる。
【0003】
これに対し、特許文献1には、携帯電話と電子聴診器とを用いて、リアルタイムでの遠隔医療を実現する技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、医療現場の医療従事者が電子聴診器を用いて患者の心音、肺音などの聴診データを取得し、携帯電話端末を介して、医療現場から離れた医師が有する携帯電話端末に聴診データに送信し、医師の診断結果を医療従事者の携帯電話端末に送信する遠隔診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術では、医療従事者が医師とのデータ送受信を行うために、携帯電話端末を操作しなければならず、当該操作のために患者に対する医療的措置に支障を来たすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、医療現場と異なる場所において、医療従事者を円滑に支援可能な医療支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を含む。
項1.
医療現場において医療対象者と対面する医療従事者が用いるための医療従事者側端末と、
前記医療従事者側端末と通信ネットワークを介して接続され、前記医療現場とは異なる場所に設置された、医療支援者が用いるための医療支援側端末と、
を備える医療支援システムであって、
前記医療支援側端末は、
前記医療従事者を支援するための医療支援情報を前記医療従事者側端末に送信する医療支援情報提供手段を備え、
前記医療従事者側端末は、
前記医療従事者に装着するための眼鏡型ディスプレイと、
前記医療支援情報を前記眼鏡型ディスプレイに投影する投影手段と、
を備えることを特徴とする医療支援システム。
項2.
前記医療従事者側端末は、
前記医療従事者が前記眼鏡型ディスプレイを介して視認する方向を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を取得して、前記医療支援側端末に送信する画像取得手段を備え、
前記画像には、前記医療対象者および医療対象部位が含まれ、
前記医療支援側端末は、
ディスプレイと、
前記画像を取得して前記ディスプレイに表示する画像表示手段と、
を備えることを特徴とする項1に記載の医療支援システム。
項3.
前記医療支援情報はポインタを含み、
前記医療支援側端末は、
前記ディスプレイに表示された前記画像に対する前記医療支援者の操作に応じて、前記ポインタを生成するポインタ生成手段を備えることを特徴とする項2に記載の医療支援システム。
項4.
前記医療支援情報は文字情報を含み、
前記医療支援側端末は、
前記医療支援者の操作に応じて、前記文字情報を生成する文字情報生成手段を備えることを特徴とする項2または3に記載の医療支援システム。
項5.
前記カメラの撮影範囲を変更する撮影範囲変更手段を備えることを特徴とする項2から4のいずれかに記載の医療支援システム。
項6.
前記医療支援者が前記画像を介して視認する視認対象部位の状態を変更する視認対象部位変更手段を備えることを特徴とする項2から5のいずれかに記載の医療支援システム。
項7.
前記医療従事者側端末は、
前記医療対象者の生体情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する生体情報取得手段を備えることを特徴とする項1から6のいずれかに記載の医療支援システム。
項8.
前記医療従事者側端末は、
前記医療対象者への生体処置情報を、前記医療支援側端末から受信する生体処置手段を備えることを特徴とする項1から7のいずれかに記載の医療支援システム。
項9.
前記医療支援側端末は、医療支援マニュアルを含む資料データが記憶されたデータベースを備え、
前記医療支援情報提供手段は、前記データベースから前記資料データを読み出して前記医療従事者側端末に送信することを特徴とする項1から8のいずれかに記載の医療支援システム。
項10.
前記医療支援側端末および前記医療従事者側端末の少なくとも一方は、前記医療対象者の診察情報を記録する診察情報記録手段を有することを特徴とする項1から9のいずれかに記載の医療支援システム。
項11.
前記医療従事者側端末は、前記医療従事者から音声情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する音声取得手段を備えることを特徴とする項1から10のいずれかに記載の医療支援システム。
項12.
前記医療従事者側端末は、前記医療現場の環境情報を取得して、前記医療支援側端末に送信する環境情報取得手段を備えることを特徴とする項1から11のいずれかに記載の医療支援システム。
項13.
前記環境情報は、温度、湿度、照度および音量の少なくともいずれかに関する情報であることを特徴とする項12に記載の医療支援システム。
項14.
前記環境情報は、トイレの構造、トイレの位置、風呂場の構造、風呂場の位置、および、手すりの有無の少なくともいずれかに関する住環境情報であることを特徴とする項12または13に記載の医療支援システム。
項15.
前記医療対象者は、呼吸器疾患、脳疾患、心疾患、耳鼻咽喉疾患、眼疾患、胃腸疾患、腹部疾患、関節部疾患、整形外科疾患、泌尿器疾患、産婦人科疾患、腫瘍疾患、歯科疾患、褥瘡、外傷および精神疾患の少なくともいずれかに罹患している、または罹患している可能性のある者であることを特徴とする項1から14のいずれかに記載の医療支援システム。
項16.
前記医療対象者は、咽頭部、脈拍、瞳孔、眼球移動、瞼の裏面、関節、歯周部、動作、および言語の少なくともいずれかに障害または異常のある者、もしくはその可能性のある者、または、しこり、体表の腫れ、および体表の炎症の少なくともいずれかを有する者、もしくはその可能性のある者であることを特徴とする項1から15のいずれかに記載の医療支援システム。
項17.
前記医療支援者は、前記医療対象者が罹患している、または罹患している可能性の高い疾患の専門医師あることを特徴とする項15または16に記載の医療支援システム。
項18.
前記医療従事者は、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、臨床検査技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士および介護士の少なくともいずれかであることを特徴とする項1から17に記載の医療支援システム。
項19.
前記医療従事者は、看護師、救急救命士および介護士の少なくともいずれかであることを特徴とする項18に記載の医療支援システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、医療支援者が医療現場と異なる場所において、医療従事者を円滑に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療支援システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る医療支援システムのブロック図である。
【
図3】(A)は、医療支援側端末において、ディスプレイに表示された画像にポインタを追加した状態を示す図であり、(B)は、医療従事者側端末において、眼鏡型ディスプレイにポインタが投影された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
(システムの全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る医療支援システム1の概略図であり、
図2は、医療支援システム1のブロック図である。
【0012】
医療支援システム1は、医療現場において医療対象者と対面する医療従事者を、医療現場とは異なる場所において医療支援者が支援するシステムであり、医療従事者が用いるための医療従事者側端末2と、医療支援者が用いるための医療支援側端末3とを備えている。医療支援側端末3は、医療従事者側端末2とWifi(登録商標)機器4やインターネットなどの通信ネットワークNを介して接続され、前記医療現場とは異なる場所に設置されている。
【0013】
(適用対象)
医療現場は、例えば、被介護者の自宅、在宅療養患者の自宅、事故や災害の現場などである。医療支援側端末3が設置されている場所は、医療現場から離れた場所であれば特に限定されないが、例えば、医師が駐在する医療機関である。
【0014】
医療対象者は、医療現場において、医療的措置を必要とする者、またはその可能性のある者である。医療対象者は、何らかの疾患に罹患している、または罹患している可能性のある者である。具体的には、医療対象者は、例えば、呼吸器疾患、脳疾患、心疾患、耳鼻咽喉疾患、眼疾患、胃腸疾患、腹部疾患、関節部疾患、整形外科疾患、泌尿器疾患、産婦人科疾患、腫瘍疾患、歯科疾患、褥瘡、外傷および精神疾患の少なくともいずれかに罹患している、または罹患している可能性のある者である。また、医療対象者は、心身に何らかの障害または異常のある者、またはその可能性があるものである。具体的には、医療対象者は、例えば、咽頭部、脈拍、瞳孔、眼球移動、瞼の裏面、関節、歯周部、動作、および言語の少なくともいずれかに障害または異常のある者、もしくはその可能性のある者、または、しこり、体表の腫れ、および体表の炎症の少なくともいずれかを有する者、もしくはその可能性のある者である。
【0015】
医療従事者は、医療現場において医療に携わる者であれば特に限定されず、医師であっても医師でなくてもよい。医療従事者は、例えば、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、臨床検査技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士および介護士の少なくともいずれかである。本実施形態では、医療従事者として、特に、看護師、救急救命士および介護士を想定している。
【0016】
医療支援者は、医療従事者を支援する能力を有する者であれば特に限定されないが、医療対象者が罹患している、または罹患している可能性の高い疾患の専門医師または専門家であることが好ましい。専門家とは、例えば、経験の豊富な看護師、救急救命士および介護士などである。
【0017】
(医療従事者側端末の構成)
図1および
図2に示すように、医療従事者側端末2は、眼鏡型ディスプレイ21と、カメラ22と、イヤホン23と、マイク24と、医療機器25と、センサ26と、通信部27と、制御部28とを主に備えている。
【0018】
眼鏡型ディスプレイ21は、医療従事者が装着するものであり、スマートグラスとも称される。眼鏡型ディスプレイ21では、フレーム211に保持された透過グラス212の一部の領域に、画像や文字情報などを投影することができる。なお、画像や文字情報などを網膜に直接画像を投影してもよい。これにより、医療従事者は、透過グラス212を介して医療対象者、医療対象部位、周囲環境などを視認できるとともに、透過グラス212に投影された画像や文字情報なども同時に視認できる。なお、眼鏡型ディスプレイ21は、AR(拡張現実)用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)であってもよい。
【0019】
カメラ22は、医療従事者が眼鏡型ディスプレイ21を介して視認する方向を撮影できる位置に設けられている。カメラ22によって撮影された画像は、医療従事者が眼鏡型ディスプレイ21を介して視認している像と略一致していることが好ましい。
図1では省略されているが、カメラ22は、フレーム211のブリッジ213、またはブリッジ213の上方に設けられることが好ましい。また、カメラ22は、医療従事者の視界を極力遮らないように、小型であることが好ましい。
【0020】
イヤホン23およびマイク24は、医療従事者と音声を介した情報伝達を行う装置である。イヤホン23は、骨伝導型イヤホンでもよい。また、イヤホン23の代わりにヘッドホンを用いることができる。マイク24は、ヘッドセットマイクであることが好ましい。
【0021】
医療機器25は、医療従事者が医療対象者の状態を把握したり、医療対象者に何らかの措置を行うための機器である。医療機器25としては、聴診器、血圧計、注射器、歯科用ミラー、超音波診断機器、尿道カテーテル、AEDなどが挙げられる。
【0022】
センサ26は、医療現場の環境を検知する機器である。センサ26としては、温度計、湿度計、照度計、騒音計などが挙げられる。
【0023】
通信部27は、医療従事者側端末2が外部機器と通信するためのインターフェースである。通信方式は特に限定されないが、本実施形態では、通信部27は、Wifiを介して外部機器と通信することができる。
【0024】
制御部28は、医療従事者側端末2を構成する各機器を制御するものであり、ハードウェア構成としては、例えば、マイコンで構成することができる。制御部28は、眼鏡型ディスプレイ21に内蔵してもよいし、眼鏡型ディスプレイ21とは別体の装置としてもよい。マイコンは、一体的な装置である必要はなく、複数の部材から構成されてもよい。
【0025】
制御部28は、機能ブロックとして、投影手段281と、画像取得手段282と、撮影範囲変更手段283と、音声出力手段284と、音声情報取得手段285と、生体情報取得手段286と、生体処置手段287と、環境情報取得手段288とを備えている。これらの各手段は、マイコンの図示しないCPUやMPUが所定のプログラムを図示しないメモリに読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現してもよいし、集積回路上に形成された論理回路によって、ハードウェア的に実現してもよい。これらの各手段の機能は後述する。
【0026】
(医療支援側端末の構成)
医療支援側端末3は、ディスプレイ31と、入力装置32と、マイク33と、スピーカ34と、記憶部35と、通信部36と、制御部37とを主に備えている。医療支援側端末3は、ハードウェア構成として、汎用のコンピュータを用いることができる。
【0027】
ディスプレイ31としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いることができる。
【0028】
入力装置32は、医療支援者が入力操作を行うための装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを用いることができる。
【0029】
マイク33およびスピーカ34は、医療支援者と音声を介した情報伝達を行う装置である。
図1では、マイク24はスタンドマイクであるが、ヘッドセットマイクであってもよい。スピーカ34の代わりに、イヤホンまたはヘッドホンを用いてもよい。
【0030】
記憶部35は、医療支援側端末3を動作させるための各種プログラムや医療支援側端末3によって処理される各種データを記憶する装置であり、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)で構成することができる。記憶部35には、医療支援マニュアルを含む資料データが記憶されたデータベースD1や、医療対象者の診察情報D2が記憶されている。
【0031】
通信部36は、医療支援側端末3が外部機器と通信するためのインターフェースである。通信方式は特に限定されないが、本実施形態では、通信部36は、Wifiを介して外部機器と通信することができる。
【0032】
制御部37は、医療支援側端末3を制御するものである。制御部37は、機能ブロックとして、画像表示手段371と、音声情報取得手段372と、音声出力手段373と、ポインタ生成手段374と、文字情報生成手段375と、医療支援情報提供手段376と、診察情報記録手段377とを備えている。制御部37は、医療支援側端末3の図示しないCPUやGPUなどの演算処理装置が、記憶部35に記憶されている所定のプログラムを図示しないメモリに読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現してもよいし、集積回路上に形成された論理回路によって、ハードウェア的に実現してもよい。これらの各手段の機能は後述する。
【0033】
(医療支援システムの機能)
医療従事者側端末2の投影手段281は、医療支援側端末3から送信され、通信部27によって受信された医療支援情報を、眼鏡型ディスプレイ21に投影する機能を有している。医療支援情報は、医療従事者が医療対象者に対して医療的措置を行うための手助けとなる各種情報である。後述するように、医療支援情報は、画像に重畳されたポインタや、医療支援者が作成した文字情報を含む。医療支援情報が眼鏡型ディスプレイ21に投影されることにより、医療従事者は、医療支援情報を確認するための操作等を行うことなく、眼鏡型ディスプレイ21を介して医療対象者や医療対象部位を視認しながら、医療支援情報を確認できるので、スムーズに医療的措置を行うことができる。
【0034】
医療従事者側端末2の画像取得手段282は、カメラ22によって撮影された画像を取得して、医療支援側端末3に送信する機能を有している。カメラによって撮影された画像には、医療対象者および医療対象部位(診察部位、治療部位)が含まれている。医療支援側端末3に送信された画像は、医療支援側端末3の通信部36によって受信され、画像表示手段371が、画像を取得してディスプレイ31に表示する。これにより、医療支援者は、医療対象者および医療対象部位を、医療支援者と略同様の感覚で確認することができる。
【0035】
医療支援側端末3の音声情報取得手段372は、マイク33が収集した音声情報を取得して、医療従事者側端末2に送信する機能を有している。医療従事者側端末2に送信された音声情報は、医療従事者側端末2の通信部27によって受信され、音声出力手段284がイヤホン23に音声情報を出力する。同様に、医療従事者側端末2の音声情報取得手段285は、マイク24が収集した音声情報を取得して、医療支援側端末3に送信する機能を有している。医療支援側端末3に送信された音声情報は、医療支援側端末3の通信部36によって受信され、音声出力手段373がスピーカ34に音声情報を出力する。これにより、医療支援者と医療従事者とは、音声を通じて意思疎通を図ることができる。また、医療対象者から発せられる音声(声、呼吸音、咳、関節音など)を医療支援者に伝えることができる。
【0036】
医療従事者側端末2の撮影範囲変更手段283は、カメラ22の撮影範囲を変更する機能を有している。本実施形態では、撮影範囲変更手段283は、医療支援側端末3から送信される指示信号に応じて、カメラ22のレンズの指向方向および/または焦点を変更することにより、カメラ22の撮影範囲を変更する。
【0037】
なお、撮影範囲変更手段283が撮影範囲を変更する態様として、医療支援者が医療従事者に対し、マイク33を通じて音声でカメラ22の指向方向を変更するように指示する態様を含んでもよい。また、医療支援者が、ディスプレイ31に表示された画像を見ながら、医療従事者に対し、医療対象者の瞼をめくったり、口を開けさせることを指示することにより、視認対象部位の状態を変更してもよい。この場合、マイク33および音声情報取得手段372は、特許請求の範囲に記載の視認対象部位変更手段として機能する。
【0038】
ポインタ生成手段374は、ディスプレイ31に表示された画像に対する医療支援者の操作に応じて、ポインタを生成する機能を有している。具体的には、
図3(A)に示すように、ディスプレイ31に表示された画像に対し、医療支援者がマウスパッドなどを操作することにより、医療従事者に注目してもらいたい箇所にポインタP1を付加することができる。これに応じて、ポインタ生成手段374は、ポインタP1を上述の医療支援情報として生成し、医療支援情報提供手段376に入力する。医療支援情報提供手段376は、ポインタP1のデータを医療支援情報として医療従事者側端末2に送信する。医療従事者側端末2では、投影手段281が、
図3(B)に示すように、眼鏡型ディスプレイ21にポインタP2を投影する。これにより、医療従事者は、ポインタP2によって医療支援者が注目してもらいたい箇所を把握することができる。
【0039】
なお、ディスプレイ31に表示された画像におけるポインタP1の位置と、医療従事者が視認しているポインタP2の位置とが異なる場合、ポインタP1の位置とポインタP2の位置とが互いに一致するように、あらかじめキャリブレーションを行うことが好ましい。また、ポインタP1,P2の形状は特に限定されず、例えば枠状のマーカーであってもよい。
【0040】
医療支援側端末3の文字情報生成手段375は、医療支援者の操作に応じて、文字情報を生成する機能を有している。医療支援者は、キーボードやタッチパネルを操作することにより、医療従事者に対する指示や助言などの文字情報を入力することができ、文字情報生成手段375は、文字情報を医療支援情報として生成し、医療支援情報提供手段376に入力する。医療支援情報提供手段376は、文字情報を医療支援情報として医療従事者側端末2に送信する。医療従事者側端末2では、投影手段281が、文字情報を眼鏡型ディスプレイ21の所定位置に投影する。これにより、医療従事者は、医療支援者からの指示や助言を確認することができる。
【0041】
また、医療支援情報提供手段376は、記憶部35に記憶されているデータベースD1から医療支援マニュアルを含む資料データを読み出して、読み出したデータを医療支援情報として医療従事者側端末2に送信する機能も有している。送信された医療支援情報は、投影手段281によって眼鏡型ディスプレイ21の所定位置に投影される。これにより、医療従事者は、医療支援マニュアルの情報を確認することができる。
【0042】
医療従事者側端末2の生体情報取得手段286は、医療機器25から医療対象者の生体情報を取得して、医療支援側端末3に送信する機能を有している。生体情報は、体温、脈拍、心拍音、血圧などである。医療支援側端末3に送信された生体情報は、ディスプレイ31に表示され、医療支援者は医療対象者の生体情報を把握することができる。なお、医療機器25が生体情報取得手段286の機能を有していてもよい。その場合、医療機器25から直接、医療支援側端末3に生体情報を送信してもよい。
【0043】
生体処置手段287は、医療対象者への生体処置情報を、医療支援側端末3から受信する機能を有している。生体処置情報は、例えば、尿道カテーテルやAEDなどの医療器具25を操作するための情報である。生体処置手段287から生体処置情報が医療器具25に入力されることにより、医療支援者は、遠隔で医療器具25を操作することができる。
【0044】
医療従事者側端末2の環境情報取得手段288は、センサ26から医療現場の環境情報を取得して、医療支援側端末3に送信する機能を有している。環境情報は、温度、湿度、照度(明暗)、音量などである。医療支援側端末3に送信された環境情報は、ディスプレイ31に表示され、医療支援者は医療現場の環境を把握することができる。なお、センサ26が環境情報取得手段288の機能を有していてもよい。その場合、センサ26から直接、医療支援側端末3に環境情報を送信してもよい。また、環境情報は、医療対象者の居宅の住環境(トイレや風呂場の構造および位置、手すりの有無など)であってもよい。これらの情報は、排尿系の疾患、脳や循環器系における疾患、足腰や膝の疾患の診断や改善指導に有用である。その場合、環境情報取得手段288が環境情報を取得する態様として、カメラ22およびマイク24から、住環境を示す画像や医療従事者の音声(説明)を取得する態様も含まれる。
【0045】
医療支援側端末3の診察情報記録手段377は、医療対象者の診察情報D2を記憶部35に記録する機能を有している。診察情報D2には、医療従事者側端末2と医療支援側端末3との間で送受信された情報の少なくとも一部が含まれている。具体的には、診察情報D2には、医療従事者側端末2から送信された画像、音声情報、生体情報および環境情報、ならびに、医療支援側端末3に記録された医療支援情報が含まれている。なお、診察情報記録手段377と同様の機能を、医療従事者側端末2に持たせてもよい。
【0046】
(総括)
以上のように、本実施形態では、医療支援側端末3から医療従事者側端末2に、ポインタや文字情報などの医療支援情報が送信されると、医療従事者側端末2では、医療支援情報が眼鏡型ディスプレイ21に投影される。これにより医療従事者は、医療支援情報を確認するための操作等を行うことなく、眼鏡型ディスプレイ21を介して医療対象者や医療対象部位を視認しながら、医療支援情報を確認できるので、スムーズに医療的措置を行うことができる。よって、医療支援者は、医療現場と異なる場所において、医療従事者を円滑に支援することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 医療支援システム
2 医療従事者側端末
3 医療支援側端末
21 眼鏡型ディスプレイ
211 フレーム
212 透過グラス
213 ブリッジ
22 カメラ
23 イヤホン
24 マイク
25 医療機器
26 センサ
27 通信部
28 制御部
281 投影手段
282 画像取得手段
283 撮影範囲変更手段
284 音声出力手段
285 音声情報取得手段
286 生体情報取得手段
287 生体処置手段
288 環境情報取得手段
31 ディスプレイ
32 入力装置
33 マイク
34 スピーカ
35 記憶部
36 通信部
37 制御部
371 画像表示手段
372 音声情報取得手段
373 音声出力手段
374 ポインタ生成手段
375 文字情報生成手段
376 医療支援情報提供手段
377 診察情報記録手段
D1 データベース
D2 診察情報
N 通信ネットワーク
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