(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098002
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】抽出用包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/808 20060101AFI20220624BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B65D85/808
B65D65/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211307
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC32
3E086AD01
3E086BA02
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB44
3E086CA40
(57)【要約】
【課題】ティーバッグなどに用いられる抽出用包装体が、それを構成する透水性袋体、摘み糸、タグのすべての部品が生分解性を有し、かつ、延伸性や柔軟性などの指標となる引張弾性率がポリエステル、ナイロン並みの値を有し、破れにくい抽出用包装体を提供することを目的とする。
【解決手段】透水性シートによって形成される透水性袋体と、前記透水性袋体に一端部が連結された摘み糸と、前記摘み糸の他端部に固定されたタグとを備えた抽出用包装体であって、
前記透水性袋体と摘み糸が生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)からなり、
前記タグは、表層から、紙層、接着層、シーラント層とをこの順で積層し、
前記シーラント層が、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(C)と生分解性を有する脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)とを混合して得られる生分解性樹脂(B)からなることを特徴とする抽出用包装体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性シートによって形成される透水性袋体と、前記透水性袋体に一端部が連結された摘み糸と、前記摘み糸の他端部に固定されたタグとを備えた抽出用包装体であって、
前記透水性袋体と摘み糸が生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)からなり、
前記タグは、表層から、紙層、接着層、シーラント層とをこの順で積層し、
前記シーラント層が、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(C)と生分解性を有する脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)とを混合して得られる生分解性樹脂(B)からなることを特徴とする抽出用包装体。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)が、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の抽出用包装体。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(C)が、ポリ乳酸であり、前記脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)がポリブチレンアジペートテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の抽出用包装体。
【請求項4】
前記生分解性樹脂(B)が、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとを5質量%/95質量%~95質量%/5質量%の質量割合で含有することを特徴とする請求項3に記載の抽出用包装体。
【請求項5】
前記生分解性樹脂(B)の引張弾性率が、樹脂の流れ方向で1000~1500MPa、幅方向で700~1200MPaであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抽出用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティーバッグで代表される抽出用包装体の改良に関する。さらに詳しくは、生分解性を有する合成樹脂からなる抽出用包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティーバッグで代表される抽出用包装体は、透水性シートによって形成された包装体本体と、この包装体本体に一端が接続された糸および糸の他端に固定されたタグとから成る。タグは包装体本体に超音波溶着装置等を用いた熱溶着によって弱く連結されているので、タグを摘んで引っ張ることにより包装体本体から剥がすことができる。抽出用包装体使用時には、タグを包装体本体から剥がして、このタグを持って包装体本体を吊り下げた状態でカップなどに入れる。そして、カップに湯を注いで包装体本体内の紅茶等の抽出を行う。
【0003】
透水性シートに用いる材料は、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルや、6ナイロン、66ナイロンに代表されるポリアミドなどの合成樹脂が主流である(特許文献1参照)。しかし、合成樹脂は大量に安価に製造できるというメリットがある反面、使用後の廃棄に関しては問題があり、上記合成樹脂からなるシートは自然環境中では殆ど分解せず、焼却にて処分しなくてはならないが、焼却に際しては高い燃焼熱を発生する。
【0004】
そこで、最近では生分解性を有する合成樹脂であるポリ乳酸樹脂が用いられている。すなわち、自然環境下で微生物により分解され最終的には炭酸ガスと水になる完全循環型生分解性ポリマ-として、ポリ乳酸樹脂が注目されている。ポリ乳酸樹脂は、比較的安価にポリマーが得られ、実用的な強度と耐熱性の成型物を製造することが可能な生分解性樹脂である。
【0005】
しかしながら、一般的に、生分解性樹脂フィルムは、従来の塩化ビニル系樹脂フィルムやオレフィン系樹脂フィルムのような非生分解性合成樹脂と比較して、接着強度などの物性面で劣ることがある。その結果、前述したように、抽出用包装体を使用する為に前記タグを取外す際には透水性シートを破壊してしまうことが多く、破れやすく取扱いが困難となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、生分解性樹脂フィルムを用いた抽出用包装体には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題は、
ティーバッグなどに用いられる抽出用包装体が、それを構成する透水性袋体、摘み糸、タグのすべての部品が生分解性を有し、かつ、延伸性や柔軟性などの指標となる引張弾性率がポリエステル、ナイロン並みの値を有し、破れにくい抽出用包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に於いて上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
透水性シートによって形成される透水性袋体と、前記透水性袋体に一端部が連結された摘み糸と、前記摘み糸の他端部に固定されたタグとを備えた抽出用包装体であって、
前記透水性袋体と摘み糸が生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)からなり、
前記タグは、表層から、紙層、接着層、シーラント層とをこの順で積層し、
前記シーラント層が、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(C)と生分解性を有する脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)とを混合して得られる生分解性樹脂(B)からなることを特徴とする抽出用包装体である。本発明の抽出用包装体は、構成部品である透水性袋体、摘み糸、タグのすべてが生分解性の樹脂組成物からなる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)が、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の抽出用包装体である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(C)が、ポリ乳酸であり、前記脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)がポリブチレンアジペートテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の抽出用包装体である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、
前記生分解性樹脂(B)が、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとを5質量%/95質量%~95質量%/5質量%の質量割合で含有することを特徴とする請求項3に記載の抽出用包装体である。
【0012】
生分解性の脂肪族ポリエステル系樹脂として、ポリ乳酸樹脂が好適に用いられるが、ポリ乳酸樹脂はバイオマス由来であること、生分解性を有することなど環境対応性において優れているが、その一方で硬く脆い性質がある。そのため、タグと透水性袋体を同一のポリ乳酸樹脂単一で成形した場合、熱融着時タグと透水性袋体の接着力が強くなりすぎて、適正な接着強度が得られない。しかし、ポリ乳酸樹脂に対し、脂肪族芳香族共重合体樹脂を混合することで、接着力を低下させることができ、混合の質量割合を調整することによって適正な接着強度が得られる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、
前記生分解性樹脂(B)の引張弾性率が、樹脂の流れ方向(MD方向)で1000~1500MPa、幅方向(TD方向)で700~1200MPaであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抽出用包装体である。生分解性樹脂(B)を含むタグは、接着性の指標となる引張弾性率が上記の範囲にある時、適正な接着強度が得られる。つまり、このような引張弾性率を有するタグは、抽出用包装体の未使用時においては透水性袋体から剥がれることがなく、使用時においては透水性袋体から簡単に剥がすことができ、そしてその時透水性袋体を破損することがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、抽出用包装体が、それを構成する透水性袋体、摘み糸、タグのすべての部品が生分解性を有し、かつ、延伸性や柔軟性などの指標となる引張弾性率がポリエステル、ナイロン並みの値を有し、破れにくい抽出用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る(a)未使用時の抽出用包装体の斜視図である。(b)使用時の抽出用包装体の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタグの層構成を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態に係る抽出用包装体1を
図1を参照して説明する。
抽出用包装体1は、抽出用包装体の本体である透水性袋体3と、この透水性袋体3に一端が止着された摘み糸5と摘み糸5の他端に固定されたタグ7とから成る。
図1(a)では、抽出用包装体として、本体である透水性袋体3は、三角錐状(四面体)に形成されているが、扁平な形状に形成されていてもよい。透水性袋体3の中には、被抽出物としての紅茶が収容されている。
【0017】
未使用時の抽出用包装体1は、
図1(a)に示すように、摘み糸5の一端部が、透水性袋体3の左右方向のほぼ中心の位置5bに超音波溶着装置等を用いた熱溶着によって熱溶着されており、タグ7とはタグ7の上辺近傍に位置する溶着部5aにおいて強固に固定されていてもよい。このタグ7は、
図2に示すような紙、接着剤、生分解性樹脂を積層した正方形の紙片によって構成されている。
【0018】
また、摘み糸5の他端部は、タグ7とともに、透水性袋体3に溶着部5cにおいて弱く連結されている。そして、使用時には、タグ7を摘んで引っ張ることにより、
図1(b)に示すように、タグ7を透水性袋体3から剥がし使用する。
【0019】
上記のような抽出用包装体1においては、タグ7の透水性袋体3に対する接着強度が大きすぎると、タグ7を剥がした際に透水性袋体3が破れて穴が開いてしまうおそれがあり、接着強度が小さすぎると抽出用包装体1の搬送中の振動などによって、タグ7が透水性袋体3から剥がれてしまうおそれがある。すなわち、タグ7には、抽出用包装体1の未使用時においては透水性袋体3から剥がれることなく、使用時においては透水性袋体3から簡単に剥がすことができ、そしてその時透水性袋体3を破損することがないことが要求される。そのためにはタグ7と透水性袋体3間に適正な接着強度を有することが必要である。接着強度が高すぎる状態だと、透水性袋体3が破損し、接着強度が弱すぎる状態だと、未使用時において透水性袋体3から剥がれやすくなる。
【0020】
透水性袋体3と摘み糸5は、生分解性付与のため、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)からなる素材によって形成される。生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、様々な種類が知られている。例えば、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などがあげられるが、なかでもポリ乳酸樹脂(PLA)が好適に用いられる。
【0021】
タグ7は、
図2に示すように表層から、紙層11、接着層12、シーラント層13とを備え、シーラント層13は生分解性樹脂(B)からなる。生分解性樹脂(B)は、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂(C)と生分解性を有する脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)との混合樹脂からなる。
【0022】
前述したように、生分解性の脂肪族ポリエステル樹脂(C)として、ポリ乳酸樹脂が好適に用いられるが、ポリ乳酸樹脂は従来の塩化ビニル系樹脂フィルムやオレフィン系樹脂フィルムのような非生分解性合成樹脂と比較して、硬く脆い性質があり、タグと透水性袋体を同一のポリ乳酸樹脂単一で成形した場合、タグと透水性袋体の接着力が強くなりすぎて、剥がしたとき破け易くなるので好ましくない。
【0023】
本発明では、タグのシーラント層をポリ乳酸樹脂と脂肪族芳香族共重合体樹脂を特定の質量比で混合した混合樹脂にすることで、タグと透水性袋体を熱融着した時の接着性を改善でき、それによって適正な接着強度が得られ、破けにくくなることを見出した。
【0024】
前述の脂肪族芳香族共重合体樹脂(D)として、より具体的には、ポリブチレンアジペ
ートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、またはポリテトラメチレンアジペートテレフタレート等が挙げられ、なかでもポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が好適に選択される。
【0025】
そして、生分解性樹脂(B)として、ポリ乳酸樹脂(PLA)とポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の混合における質量割合が、ポリ乳酸樹脂(PLA)/ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が5質量%/95質量%~95質量%/5質量%の範囲にあると良好な延伸性や柔軟性が得られるので好ましい。尚、本発明の効果を損なわない程度であれば、必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、滑剤、光分解促進剤、生分解促進剤、生分解抑制剤、充填剤、顔料などが挙げられる。
【0026】
また、上記質量割合で混合して得られた生分解性樹脂(B)の、接着強度の指標となる引張弾性率が、MD方向で1000~1500MPa、TD方向で700~1200MPaであることが好ましい。引張弾性率が下限値より小さいと、タグを透水性袋体3から剥がす際に、透水性袋体3に破れが発生しやすくなり、引張弾性率が上限値より大きいと、腰が強くなりすぎて透水性袋体3から取り外しにくくなるので好ましくない。
【0027】
なお、引張弾性率の評価については、JIS K 6251に従い、引張試験機を用い、23±2℃の環境で引張速度300mm/分にて測定し、生分解性樹脂(B)のMD方向及びTD方向の引張弾性率(MPa)を求めた。
【0028】
以上から、タグをポリ乳酸単一樹脂からポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートを上記質量割合の混合樹脂にすることで適正な接着強度を得ることが可能になった。
【0029】
したがって、本発明によって、生分解性を有し、かつ、引張弾性率がポリエステル、ナイロン並みの値を有し、破けにくい抽出用包装体を提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0030】
1・・・抽出用包装体
3・・・透水性袋体
5・・・摘み糸
5a・・・摘み糸とタグの溶着部
5b・・・摘み糸と透水性袋体の溶着部
5c・・・タグと透水性袋体の溶着部
7・・・タグ
11・・・紙層
12・・・接着層
13・・・シーラント層