(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098025
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220624BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220624BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220624BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211337
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
(72)【発明者】
【氏名】▲黒▼田 康義
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】120℃程度の高温で使用する場合であっても、フォギング現象を抑制し、かつ粘着力に優れる粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】120℃での180°ピール粘着力が1.0N/cm以上であり、120℃でのフォギング試験反射率が80%以上である粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
120℃での180°ピール粘着力が1.0N/cm以上であり、120℃でのフォギング試験反射率が80%以上である粘着テープ。
(120℃でのフォギング試験反射率)
粘着テープを直径80mmの円形状に切断し、一つの粘着面が露出している状態で120℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底面に、露出した粘着面が上側となる形態で静置する。さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置する。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出し、ガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(%)を測定し、これを「試験後のガラス板の60°入射反射率」とし、以下の式(1)により120℃でのフォギング試験反射率を求める。
式(1) 120℃でのフォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)/試験前のガラス板の60°入射反射率(%)]×100
【請求項2】
アクリル系重合体、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとを含むモノマー成分の重合体である、請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有モノマーがアクリル酸である、請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂がロジン系粘着付与樹脂である、請求項2~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着付与樹脂が、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下である、請求項2~5のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。より具体的には、高温で使用する場合であってもフォギング現象を抑制し、かつ粘着力に優れる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れることから、養生、梱包、補修等を目的として、広く使用されている。例えば、アクリル系の粘着剤層を有する粘着テープは、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等の各種物性に優れているため、車両、住宅、電子機器内部等において部材を固定するために広く利用されている。
【0003】
粘着テープは、例えば車両の内装材として長期間使用した場合には、粘着テープ中の揮発成分がフロントガラス等に付着し曇りを生じさせる、いわゆるフォギング現象が問題となっている。
このようなフォギング現象を低減する観点から、特許文献1では、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体、及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物であって、上記粘着付与剤が安定化ロジンエステル樹脂であることを特徴とする自動車内装材用粘着剤組成物に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、粘着テープが使用される温度は高くても60℃~80℃程度が一般的であった。しかしながら、例えばIT分野ではセンサーの小型化や処理能力の向上、工程の改善により、120℃程度まで加熱されて使用される状況がみられるようになってきた。また、車両分野でも自動運転によるセンサーの増加により、センサーの曇りなどを抑制する必要性が増してきている。これまでの粘着テープでは100℃未満でのフォギング現象を抑制できるものはあったが、120℃程度の高温では通常では揮発しない成分や分解物などが発生し、フォギング現象を抑制することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、120℃程度の高温で使用する場合であっても、フォギング現象を抑制し、かつ粘着力に優れる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、120℃での180°ピール粘着力が1.0N/cm以上であり、120℃でのフォギング試験反射率が80%以上である粘着テープにより前記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[6]に関する。
[1]120℃での180°ピール粘着力が1.0N/cm以上であり、120℃でのフォギング試験反射率が80%以上である粘着テープ。
(120℃でのフォギング試験反射率)
粘着テープを直径80mmの円形状に切断し、一つの粘着面が露出している状態で120℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底面に、露出した粘着面が上側となる形態で静置する。さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置する。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出し、ガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(%)を測定し、これを「試験後のガラス板の60°入射反射率」とし、以下の式(1)により120℃でのフォギング試験反射率を求める。
式(1) 120℃でのフォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)/試験前のガラス板の60°入射反射率(%)]×100
[2]アクリル系重合体、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える、上記[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとを含むモノマー成分の重合体である、上記[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記カルボキシル基含有モノマーがアクリル酸である、上記[3]に記載の粘着テープ。
[5]前記粘着付与樹脂がロジン系粘着付与樹脂である、上記[2]~[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
[6]前記粘着付与樹脂が、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下である、上記[2]~[5]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、120℃程度の高温で使用する場合であっても、フォギング現象を抑制し、かつ粘着力に優れる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、120℃での180°ピール粘着力が1.0N/cm以上であり、120℃でのフォギング試験反射率が80%以上である粘着テープである。
【0010】
(フォギング試験反射率)
本発明の粘着テープの120℃でのフォギング試験反射率は80%以上である。フォギング試験反射率が80%未満であると、高温使用時において、粘着テープ中の揮発物、分解物の影響などによる、使用対象物の曇り、いわゆるフォギング現象が生じやすくなる。高温におけるフォギング現象を抑制する観点から、フォギング試験反射率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
フォギング試験反射率は、粘着テープにおける粘着剤層の組成などにより調整することができる。
【0011】
120℃でのフォギング試験反射率は、ドイツ工業規格DIN75201-Rに準拠して、以下のとおり測定する。なお、測定には、フォギング測定器:装置名「N8-FOG」HAAKE社製を用いることができ、該装置は、オイルバスによりビーカーやフラスコ等を120℃に加熱し、上面を21℃に冷却することが可能な装置である。
【0012】
粘着テープを直径80mmの円形状に切断し、一つの粘着面が露出している状態で120℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底面に、露出した粘着面が上側となる形態で静置する。上記ビーカーは、外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mmのサイズのビーカーであり、高さが130mmの所まで、120℃のオイルバスに浸っている。
【0013】
一つの粘着面が露出している状態とは、片面粘着テープの場合は、該片面粘着テープの粘着面が露出している状態であり、例えば粘着面に剥離ライナーなどが貼付されて粘着面が露出していない場合は、該剥離ライナーを剥離して粘着面を露出させた状態である。また、両面粘着テープの場合は、二つの粘着面のうち、一つの粘着面が露出している状態を意味し、二つの粘着面にそれぞれ剥離ライナーなどが貼付されている場合は、一方の剥離ライナーを剥がして、一つの粘着面を露出させることを意味する。
【0014】
さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置する。より詳細には、ガラス板は、ビーカーの上面に接するように配置され、ビーカーの開口部に蓋をするように配置される。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出す。
取り出したガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率%を測定し、これを「試験後のガラス板の60°入射反射率」とし、以下の式(1)により120℃でのフォギング試験反射率を求める。
【0015】
式(1) 120℃でのフォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)/試験前のガラス板の60°入射反射率(%)]×100
なお、式(1)における試験後のガラス板の60°入射反射率(%)および、試験前のガラス板の60°入射反射率は以下の式(2)及び(3)により求められる。
式(2) 試験後のガラス板の60°入射反射率(%)=[試験後のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度/試験後のガラス板への入射光の強度]×100
式(3) 試験前のガラス板の60°入射反射率(%)=[試験前のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度/試験前のガラス板への入射光の強度]×100
なお、上記反射率は、反射率計により測定され、例えばPRLANGE社製、商品名「REFO 60 REFLEKTOMETER」により測定される。
【0016】
(120℃での180℃ピール粘着力)
本発明の粘着テープの120℃での180°ピール粘着力は1.0N/cm以上である。該ピール粘着力が1.0N/cm未満であると、高温時において必要とされる粘着力が確保されず、被着体から剥がれやすくなるなどの不具合が生じる場合がある。粘着テープの120℃での180°ピール粘着力は、好ましくは1.5N/cm以上であり、より好ましくは2.0N/cm以上であり、さらに好ましくは3.0N/cm以上である。粘着テープの120℃での180°ピール粘着力は、高ければ高いほどよいが、実用的には50N/cm以下である。
なお、ピール粘着力は、120℃における対SUS180°ピール粘着力であり、以下の方法で測定される。粘着テープを幅10mm×長さ150mmに切断し、その後、粘着テープの一方の表面(粘着面)をSUS板に貼り合わせ2kgの圧着ローラーを2往復させて接合し、120℃で10分間放置する。その後、120℃の環境下、引張速度300mm/minで180°方向に引っ張ることで対SUS180°ピール粘着力として測定する。なお、ピール粘着力は、同様の測定を3回行い3点平均で求める。また、粘着テープが、両面粘着テープを構成するときには、粘着テープの他方の表面に予めPETフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせて、上記ピール粘着力を測定するとよい。
【0017】
(120℃せん断力)
本発明の粘着テープの120℃でのせん断力は、好ましくは0.5N/cm2以上であり、より好ましくは1.0N/cm2以上であり、さらに好ましくは1.5N/cm2以上である。120℃におけるせん断力がこれら下限値以上であると、振動や横方向の変形による不具合が生じ難くなる。
粘着テープの120℃でのせん断力は、高ければ高いほどよいが、実用的には50N/cm以下である。
120℃でのせん断力は以下のとおり測定する。
幅25mm×25mmの粘着テープを2枚のSUS板に挟み、5kgの錘で10秒間圧着して貼り合わせた後、23℃、50%湿度で24時間養生する。その後、120℃の環境下で、引張速度50mm/minの条件で2枚のSUS板を引っ張り、粘着テープが剥離したときの剥離力(N)を測定する。せん断力(N/cm2)は次の計算により求められる。
せん断力(N/cm2)=剥離力(N)÷テープ面積(cm2)
【0018】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープは、アクリル系重合体、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることが好ましい。
【0019】
(アクリル系重合体)
本発明における粘着剤組成物は、アクリル系重合体を含有する。また、該アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとを含むモノマー成分の重合体であることが好ましい。
本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを示す。
【0020】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー>
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0021】
<カルボキシル基含有モノマー>
カルボキシル基含有モノマーは、分子内にカルボキシル基を含有し重合可能なモノマーであり、好ましくはカルボキシル基を含有したビニル系モノマーである。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。カルボキシル基含有モノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体を得るためのモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー100質量部に対して、カルボキシル基含有モノマーを3質量部以上含有することが好ましく、5質量部以上含有することがより好ましく、8質量部以上含有することがさらに好ましく、そして実用的には20質量部以下である。カルボキシル基含有モノマーの含有量がこれら下限値以上であると、粘着テープの120℃における粘着力及びせん断力を高めやすくなる。
【0022】
アクリル系重合体を得るためのモノマー成分は、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、カルボキシル基含有モノマー以外にも水酸基含有モノマーを含んでもよい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有モノマーを使用する場合は、その含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部である。
【0023】
モノマー成分には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー以外のその他のモノマーを含有してもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、カルボキシル基及び水酸基以外の極性基を含有するモノマー、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等のスチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0024】
(アクリル系重合体の重量平均分子量)
本発明における粘着剤組成物に用いるアクリル系重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、粘着力を高める観点などから、好ましくは50万~100万、より好ましくは60万~80万であり、さらに好ましくは65~75万である。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算によって求めることができる。
【0025】
(アクリル系重合体の製造方法)
アクリル系重合体の製造方法に特に制限はないが、例えば、モノマー成分を重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法が挙げられる。ラジカル重合の方式は特に限定されず、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。
重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合、エマルジョン重合、懸濁重合、活性エネルギー線硬化重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。溶液重合は、沸点重合であってもよいし定温重合であってもよいが、粘着テープの高温使用時の耐熱性を向上させる観点から、定温重合が好ましい。すなわち、アクリル系重合体は、定温重合により得られたものであることが好ましい。
なお、定温重合とは、重合時に使用する溶媒の沸点未満の一定の温度で重合する重合方法である。
【0026】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
有機過酸化物系重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0027】
アゾ系重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
また、重合開始剤は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の量は、特に制限されないが、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0028】
(粘着付与樹脂)
本発明における粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有する。粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープの粘着力が向上する。
粘着付与樹脂の軟化点は、120℃でのフォギング試験反射率を高めて、高温時のフォギング現象を抑制する観点から、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。軟化点はJIS K2207に準拠して測定することができる。
粘着付与樹脂の種類としては、例えば、石油樹脂系粘着付与樹脂、水添石油樹脂系粘着付与樹脂、ロジンジオール系粘着付与樹脂、ロジンエステル系粘着付与樹脂等のロジン系粘着付与樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、及びこれらの変性樹脂、並びにアクリル系オリゴマー等が挙げられる。これらの中では、被着体への粘着力を高める観点、高温におけるフォギング現象を抑制する観点から、ロジン系粘着付与樹脂、アクリル系オリゴマーなどが好ましく、ロジン系粘着付与樹脂がより好ましい。また、後述するように分子量600以下の成分を除去することができ、それにより高温でのフォギング現象を抑制する観点から、ロジン系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、水添石油樹脂系粘着付与樹脂などが好ましく、中でもロジンエステル系粘着付与樹脂が好ましい。
ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジンフェノール系等が挙げられる。
【0029】
アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーなどを重合して得られ、上記したアクリル系重合体よりも重量平均分子量が低い成分である。アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1000~30000であり、より好ましくは3000~15000である。
【0030】
粘着付与樹脂は、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下であることが好ましい。このような粘着付与樹脂を用いれば、フォギング試験反射率を高めやすくなり、高温でのフォギング現象を抑制しやすくなる。上記粘着付与樹脂の分子量及びその含有量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値及び面積比により算出できる。
粘着付与樹脂から分子量600以下の成分を除去する方法としては、例えば、粘着付与樹脂を軟化点以上に加熱溶融する方法、水蒸気を吹き込む方法等が挙げられる。
【0031】
粘着付与樹脂を加熱溶融する場合には、空気中の酸素との酸化反応を防ぐために、窒素、ヘリウム等の不活性ガス中で加熱することが好ましい。また、加熱時間は、加熱による粘着付与樹脂の分解を避けるために1~5時間程度が好ましい。水蒸気を吹き込む場合には、粘着付与樹脂を加熱溶融後に1~50kPa程度に減圧してから水蒸気を吹き込む。これにより、揮発性成分の低減、臭気の低減が達成される。水蒸気を吹き込む時間としては、1~5時間程度が好ましい。1時間以上であると、大きな揮発性ガスの低減と、それに伴う臭気の低減を行うことができ、5時間以下であると、時間に応じた処理効果が得られる。
【0032】
粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、そして好ましくは35質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは8質量部以下である。粘着付与樹脂の含有量がこれら下限値以上であると、粘着テープの粘着力が高まりやすい。粘着付与樹脂の含有量がこれら上限値以下であると、120℃でのフォギング試験反射率を高め、高温時のフォギング現象を抑制することができる。
【0033】
(架橋剤)
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることで、形成される粘着剤層の凝集力が高まり、粘着テープとしての物性が向上する。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられるが、これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及び金属キレート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5-ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられ、市販品としては、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートLなどが挙げられる。金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物があげられるが、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、川研ファインケミカル株式会社製のアルミキレートA、アルミキレートMなどが挙げられる。
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は特に制限されないが、アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.3~3質量部である。
【0034】
<その他の成分>
本発明におけるの粘着剤組成物には、アクリル系重合体、粘着付与樹脂、架橋剤以外にも、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等の溶剤を含んでもよい。本発明の粘着剤組成物には、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0035】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、上記した粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えるものである。粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、粘着性や加工性などの観点から、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは10~50μmである。ここでいう粘着剤層の厚みは、粘着剤層1層あたりの厚みをいう。
粘着テープは、粘着剤層のみからなるノンサポートタイプの粘着テープであっても、基材を備える粘着テープであってもよい。基材を備える粘着テープとしては、基材の片面に粘着剤層が積層された片面粘着テープであってもよいし、基材の両面に粘着剤層が積層された両面粘着テープであってもよい。
粘着テープの製造方法は特に限定されないが、例えば、基材等に上記したアクリル系重合体、粘着剤付与樹脂、架橋剤及び溶剤等必要に応じてその他の成分を含有した粘着剤組成物を塗布し、乾燥することで基材上に粘着剤層を形成させ、製造することができる。乾燥方法としては、例えば、IRヒータやオーブンなどの乾燥炉に入れて乾燥させる方法が挙げられる。
【0036】
基材としては特に限定されず、例えば、和紙、不織布、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン等のプラスチックフィルム、金属箔、多孔質体等を用いることができる。
本発明の粘着テープの厚みは、特に限定されないが、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは10~50μmである。
【0037】
(用途)
本発明の粘着テープは、上記したように120℃における粘着力に優れ、かつフォギング現象を抑制できるため、高温環境下で使用すること可能となる。本発明の粘着テープの具体的用途は特に限定されるものではないが、例えば、車両、住宅、電子機器内部等において使用することができる。
【実施例0038】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
<アクリル系重合体の製造>
反応容器の内に、n-ブチルアクリレート90質量部及びアクリル酸10質量部を導入しモノマー成分を得た。該モノマー成分を酢酸エチルに溶解した。そして、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1質量部を添加し、還流下にて10時間重合を行う沸点重合で重合して、アクリル系重合体を得た。
<粘着剤組成物及び粘着テープの製造>
得られたアクリル系重合体溶液に、アクリル系重合体溶液の不揮発分であるアクリル系重合体100質量部に対して、分子量600以下の成分の含有量が13質量%である重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(樹脂A、軟化点140℃)を5質量部、及び架橋剤を2質量部となるように加えた。その後、均一に混合して粘着剤組成物を得た。
次いで、支持体である剥離ライナー(住化加工紙社製「SLB-80WD」)に粘着剤組成物溶液を塗布し、110℃で2分間加熱乾燥し、片面に剥離ライナーを備える両面粘着テープを得た。該剥離ライナーを適宜剥離して、後述する各種評価を行った。
【0040】
(実施例2~3、比較例1)
モノマー組成を表1のとおりに変更し、かつ重合方法を沸点重合に代えて、重合温度70℃、反応時間6時間で行う定温重合とした以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体を得た。次いで、粘着付与樹脂の種類及び配合量、並びに架橋剤の配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0041】
(比較例2)
モノマー組成を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体を得た。次いで、粘着付与樹脂の種類及び配合量、並びに架橋剤の配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
なお、表1において使用した各成分は以下のとおりである。
【0042】
<モノマー成分>
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)
n-ブチルアクリレート(BA)
酢酸ビニル(VAc)
アクリル酸(Acc)
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
【0043】
<粘着剤付与樹脂>
樹脂A・・重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製「ペンテルD130」、軟化点130℃)を軟化点以上に加熱溶融する方法により、低分子量成分を除去し、樹脂Aを得た。樹脂Aの分子量600以下の成分の含有量は13質量%であり、軟化点は140℃であった。
重合ロジンエステル系粘着付与樹脂・・荒川化学工業社製「D160」、軟化点160℃
水添ロジンエステル系粘着付与樹脂・・荒川化学工業社製「エステルガムH」、軟化点68℃
重合ロジンエステル系粘着付与樹脂・・ハリマ化成社製「ハリタックPCJ」、軟化点118℃~128℃
アクリル系オリゴマー・・東亜合成社製「UC-3000」、重量平均分子量10,000、軟化点65℃
<架橋剤>
イソシアネート系架橋剤・・日本ポリウレタン社製「コロネートL-45E」
【0044】
[測定法、評価方法]
<(メタ)アクリル系重合体の分子量>
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、架橋前の(メタ)アクリル系重合体を測定試料とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算値として算出した。GPC測定は、東ソー株式会社製GPC装置、HLC-8220GPCにより測定した。
<粘着付与樹脂の軟化点>
JIS K2207に準拠して測定した。
【0045】
<120℃粘着力>
(120℃粘着力)
粘着テープを幅10mm×長さ150mmに切断し、その後、粘着テープの一方の表面(粘着面)をSUS板に貼り合わせ2kgの圧着ローラーを2往復させて接合し、120℃で10分間放置した。その後、120℃の環境下、引張速度300mm/minで180°方向に引っ張ることで対SUS180°ピール粘着力(N/cm)として測定した。なお、ピール粘着力は、同様の測定を3回行い3点平均で求めた。
【0046】
<120℃せん断力>
剥離ライナーを剥離して、幅25mm×25mmのサイズに切断した粘着テープを2枚のSUS板に挟み、5kgの錘で10秒間圧着して貼り合わせた後、23℃、50%湿度で24時間養生した。その後、120℃の環境下で、引張速度50mm/minの条件で2枚のSUS板を引っ張り、テープが剥離したときの剥離力(N)を測定した。せん断力(N/cm2)は次の計算により求められた。
せん断力(N/cm2)=剥離力(N)÷テープ面積(cm2)
【0047】
<120℃におけるフォギング試験反射率>
120℃でのフォギング試験反射率は、ドイツ工業規格DIN75201-Rに準拠して、以下のとおり測定した。また、フォギング測定器:装置名「N8-FOG」HAAKE社製を用いた。
粘着テープを直径80mmの円形状に切断し、一つの粘着面が露出している状態で120℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底面に、露出した粘着面が上側となる形態で静置した。上記ビーカーは、外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mmのサイズのビーカーであり、高さが130mmの所まで、120℃のオイルバスに浸漬された状態とした。
さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置した。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出した。
取り出したガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率%を測定し、これを「試験後のガラス板の60°入射反射率」とし、以下の式(1)により120℃でのフォギング試験反射率を求めた。
【0048】
式(1) 120℃でのフォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率/試験前のガラス板の60°入射反射率]×100
なお、試験後のガラス板の60°入射反射率(%)および、試験前のガラス板の60°入射反射率は以下の式(2)及び(3)により求めた。
式(2) 試験後のガラス板の60°入射反射率(%)=[試験後のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度/試験後のガラス板への入射光の強度]×100
式(3) 試験前のガラス板の60°入射反射率(%)=[試験前のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度/試験前のガラス板への入射光の強度]×100
【0049】
<ガラス霞実用評価>
ガラス製のペトリ―シャーレ(サイズφ45)の底面に20mmx20mmサイズにカットした粘着テープを空気が入らないように貼付け、剥離ライナーを剥がした。
シャーレの上面にスライドグラス(76mm×52mm、松浪硝子工業社製)を載せて、スライドグラスの外側は、保冷剤を用いて20℃以下になるように冷却した。
次いで、シャーレの底面をホットプレートで120℃で1時間加熱した。加熱終了後、ガラス板を取り、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH 4000)を用いて、Haze値を測定し、また目視で曇りが発生しているかを観察した。なお、ガラス霞実用評価におけるHaze値は10%以下であることが、実用上好ましい。
【0050】
【0051】
本発明の所定の要件を満足する各実施例の粘着テープは、120℃における粘着力に優れ、またガラス霞実用評価においても良好な結果を示しており、高温でのフォギング現象を抑制できることがわかった。
一方、本発明の所定の要件を満足しない各比較例の粘着テープは、120℃における粘着力に劣り、またガラス霞実用評価の結果が悪く、高温でのフォギング現象の抑制が困難であることがわかった。