(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098039
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】低浸食性洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/30 20060101AFI20220624BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20220624BHJP
C23G 5/024 20060101ALI20220624BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C11D7/30
C11D7/50
C23G5/024
B08B3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211352
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昇悟
(72)【発明者】
【氏名】桐野 学
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛明
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
4K053
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201BB21
3B201BB95
4H003BA12
4H003BA20
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB02
4H003EB02
4H003ED03
4H003ED26
4H003FA04
4K053PA01
4K053RA38
4K053SA04
(57)【要約】
【課題】
洗浄性に優れ、ポリカーボネートやポリスチレンなど溶剤に耐性がないプラスチック基材を侵すことがない洗浄剤組成物に関する。
【解決手段】
以下の(A)~(C)を含み、(A)と(B)の質量比が11:89~99:1である洗浄剤組成物。
(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン
(B)塩素原子を含まないハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される1以上の化合物
(C)炭化水素系溶剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(C)を含み、(A)と(B)の質量比が11:89~99:1である洗浄剤組成物。
(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン
(B)塩素原子を含まないハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される1以上の化合物
(C)炭化水素系溶剤
【請求項2】
前記(C)の配合量が(A)と(B)の合計量100質量部に対して、0.1~70質量部である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)が塩素原子を含まないハイドロフルオロオレフィンである請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(C)の炭素数が5~20である請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(C)の沸点が50℃~200℃である請求項1~4のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(A)~(C)のみからなる請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物と噴射剤を充填してなる洗浄用エアゾール。
【請求項8】
請求項7に記載の洗浄用エアゾールを汚染部に噴射することにより汚染物を除去する洗浄方法。
【請求項9】
請求項8に記載の汚染部がプラスチック部材を含む汚染部の洗浄方法。
【請求項10】
請求項8に記載の汚染物がオイルもしくはグリースである汚染部の洗浄方法。
【請求項11】
請求項9に記載のプラスチック部材がポリカーボネートおよび/またはポリスチレンを含む汚染部の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートやポリスチレンなどのプラスチック基材への浸食性を低減し、グリースやオイルへの洗浄性を向上させた洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工業部品洗浄用の洗浄剤は、産業機械や輸送機、電気電子機器、建材などの表面に付着した油脂を洗浄するために使用されている。特に自動車、電車、トラクター、船舶、航空機、フォークリフトなどの輸送機は、駆動部や摺動部の各所に潤滑、冷却などのための油脂が付着しており、駆動によりこれらが飛散したり、あるいは駆動時に周辺環境に存在している汚染物が付着するなどして、その表面が汚染されてしまう。このような汚染を除去する際に石油系炭化水素やアルコールを含有した洗浄剤が使用されてきたが、これらの溶剤は引火性が高いため、消防法上の危険物に該当してしまう。危険物に該当してしまうと、危険物倉庫の設置や管理が必要になり、導入や維持にコストがかかってしまうため、非危険物の洗浄剤が求められていた。このような汚れを洗浄するために非危険物であるフッ素系溶剤を含む洗浄剤組成物が用いられている。さらに従来洗浄対象とする部材は金属であったが、部材の多様化によりプラスチック部品と金属部品の複合体においても洗浄剤が求められるようになった。しかしながら従来の洗浄剤に使用されているフッ素系溶剤を使用した洗浄剤はプラスチック基材を侵してしまうという問題があった。特にポリカーボネートやポリスチレンは耐溶剤性が低いため、従来の洗浄剤組成物では浸食されてしまう。このような背景から、近年ではプラスチック基材を侵さない洗浄剤組成物の開発が求められている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラスチック基材を侵さない洗浄剤組成物はグリースやオイルなどの汚れに対する洗浄性が従来の洗浄剤よりも低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、ポリカーボネートやポリスチレンなどの耐溶剤性に低いプラスチック基材を含む部材に使用した場合おいても浸食することがなく、グリースやオイルなどに対して優れた洗浄性を兼ね備えた洗浄剤組成物に関する手法を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1]以下の(A)~(C)を含み、(A)と(B)の質量比が11:89~99:1である洗浄剤組成物。
(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン
(B)塩素原子を含まないハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される1以上の化合物
(C)炭化水素系溶剤
【0007】
[2]前記(C)の配合量が(A)と(B)の合計量100質量部に対して、0.1~70質量部である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【0008】
[3]前記(B)が塩素原子を含まないハイドロフルオロオレフィンである[1]または[2]に記載の洗浄剤組成物。
【0009】
[4]前記(C)の炭素数が5~20である[1]~[3]のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【0010】
[5]前記(C)の沸点が50℃~200℃である[1]~[4]のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【0011】
[6]前記(A)~(C)のみからなる[1]~[5]のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【0012】
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物と噴射剤を充填してなる洗浄用エアゾール。
【0013】
[8][7]に記載の洗浄用エアゾールを汚染部に噴射することにより汚染物を除去する洗浄方法。
【0014】
[9][8]に記載の汚染部がプラスチック部材を含む汚染部の洗浄方法。
【0015】
[10][8]に記載の汚染物がオイルもしくはグリースである汚染部の洗浄方法。
【0016】
[11][9]に記載のプラスチック部材がポリカーボネートおよび/またはポリスチレンを含む染部の洗浄方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗浄剤組成物は、オイルやグリースなどの油脂に対する洗浄性に優れており、さらにはプラスチックを侵す恐れがないため、より幅広い部材や用途に使用することができ、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細を以下に説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。
【0019】
本発明で使用される前記(A)は、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであり、油脂に対する洗浄作用を発揮する主要な成分である。(A)は(B)および(C)と混合することで、プラスチック基材を侵さず、油脂をきれいに洗浄することができる。(A)成分は、油脂に対する洗浄性の観点からカウリブタノール(KB)値が10以上であることが好ましい。より好ましくは20以上であり、最も好ましくは30以上である。カウリブタノール値とは、試料の油脂飽和力を示す指標である。数値が大きいほどその試料が多くの油脂を溶解できる。測定方法は、カウリ樹脂ブタノール溶液を一定量フラスコに入れ、活字用紙の上に置き、試料を滴下していく、濁りが生じて活字が読めなくなった時の試料のml数を表す。本発明においてはKB値が10以上であることで、油脂に対して優れた洗浄性能を発揮することができる。
【0020】
本発明で使用することができる(B)は、塩素原子を有さないハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される1以上の化合物である。(B)は(A)と混合することで、プラスチック基材に対する浸食性を低減させ、乾燥性を調節することができるため、作業性を向上させることができる。(B)は単独で用いてもよく、2以上を混合しても良い。
【0021】
前記塩素原子を有さないハイドロフルオロレフィンとは、二重結合を有する炭素鎖に水素もしくはフッ素が結合した化合物のことである。具体的には、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、メトキシトリデカフルオロヘプテン、メトキシパーフルオロヘプテンなどが挙げられる。
【0022】
前記ハイドロフルオロカーボンとは、二重結合を有さない炭素鎖に水素もしくはフッ素が結合した化合物のことである。具体的には、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンなどが挙げられる。
【0023】
前記ハイドロフルオロエーテルとは、二重結合を有さない炭素鎖に水素もしくはフッ素が結合し、炭素鎖中にエーテル結合を有する化合物のことである。具体的には、メチルパーフルオロプロピルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、デカフルオロブチルエチルエーテル、1,1,1、2,3、4,4,5,5,6,6,6-トリデカフルオロ-3メトキシヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ノナフルオロ-n-ブチルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
前記(B)のなかでも油脂に対する洗浄性に優れ、プラスチック基材への低浸食性の観点から塩素原子を有さないハイドロフルオロオレフィンを用いることが好ましく、洗浄性の観点から分子中にエーテル結合を有さないものが好ましい。
【0025】
前記(B)の沸点は30~200℃が好ましく、40~150℃がより好ましく、50~130℃が最も好ましい。30℃以上であれば乾燥性が速すぎることがなく、作業性が良好であり、200℃以下であれば、乾燥性が遅くなりすぎることがない。本発明での沸点はJIS K 0066に準じて測定された値である。
【0026】
前記(B)の含有量は(A)と(B)の質量比で11:89~99:1である。洗浄性と低浸食性の観点から好ましくは11:89~90:10であり、より好ましくは20:80~80:20であり、最も好ましくは75:25~25:75である。上記範囲内であれば、油脂に対する洗浄性とプラスチック基材の低浸食性を維持することができる。
【0027】
前記(B)の市販品としては、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製のオプテオンSF01、オプテオンSF05、オプテオンSF10、オプテオンSF33、オプテオンSF79、CFX70、バートレルXF、バートレルXF-UP、バートレルXF-Select、バートレルXE、バートレルX-E10、スリーエムジャパン株式会社製のNovec7000、Novec7100、Novec7200、Novec7300、アサヒクリンAE-3000、アサヒクリンAC-6000などが挙げられる。
【0028】
本発明で使用することができる(C)成分としては、炭化水素系溶剤である。(C)は(A)および(B)に混合することで、油脂への洗浄性を向上させることができる。なかでもプラスチックに対する低浸食性の観点から、飽和炭化水素系溶剤が好ましい。洗浄性と洗浄剤組成物としての乾燥性の観点から炭素数が5~20のものが好ましく、より好ましくは5~15であり、最も好ましくは5~10である。具体例としては、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカンなどが挙げられるが、(A)および(B)との相溶性とプラスチック基材への低浸食性、洗浄剤組成物としての洗浄性の観点からシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンが好ましく、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンがより好ましく、最も好ましくはメチルシクロヘキサン、イソオクタンである。(C)は単独で用いてもよく、2以上混合して用いてもよい。
【0029】
前記(C)の沸点は洗浄剤組成物としての乾燥性の観点から50~200℃が好ましく、55~150℃がより好ましく、60~120℃が最も好ましい。
【0030】
前記(C)の配合量は(A)と(B)の合計100質量部に対して0.1~70質量部が好ましく、より好ましくは1~100質量部がより好ましく、5~50質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であれば、洗浄剤組成物として洗浄性を低下させることがなく、70質量部以下であれば、プラスチック基材を侵食させる恐れがない。
【0031】
前記(C)の配合量は(A)100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましく、10~100質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であれば洗浄剤組成物として洗浄性を低下させることがなく、100質量部以下であれば、プラスチック基材を侵食させる恐れがない。
【0032】
前記(C)の配合量は(B)100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましく、5~100質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であれば洗浄剤組成物として洗浄性を低下させることがなく、100質量部以下であれば、プラスチック基材を侵食させる恐れがない。
【0033】
<任意成分>
本発明の洗浄剤組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において、任意成分を加えることができる。当該成分として例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤、防錆剤、香料などが挙げられ、(A)~(C)に均等に溶解、分散するものであれば適宜選択することができる。
【0034】
<洗浄方法>
本発明の洗浄剤組成物の洗浄方法は、布ウエスなどを使用した払拭や浸漬、超音波洗浄、エアゾールやエアガンを使用した吹き付けなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明でいうエアゾールには耐圧容器中に噴射剤と共に充填することで、エアゾールとして梱包されるものや、耐圧容器中にパウチを設けて洗浄剤組成物と噴射剤を分離した二重構造噴霧容器が挙げられるが、缶の繰り返し使用が可能であり、使用後の廃棄物が低減できることから、二重構造噴霧容器を用いることが好ましい。噴射剤としては公知の物質を用いることができる。当該噴射剤としては、ジメチルエーテル(DME)、二酸化炭素、液化石油ガス(LPG)、窒素、亜酸化窒素、イソブタン、ハロアルキル、ハイドロフルオロオレフィン、圧縮空気などから選択することができるが、入手容易性、安全性、環境負荷等の観点から、ハイドロフルオロオレフィン、二酸化炭素、窒素が特に好適であり、最も好ましくは窒素である。
【0035】
<乾燥方法>
本発明の洗浄剤組成物は乾燥性に優れているため低温環境下でも使用することができる。乾燥可能な温度範囲としては、-10℃~50℃の温度が好ましく、より好ましくは、-5℃~40℃である。
【0036】
<基材>
本発明の洗浄剤組成物はプラスチック基材への浸食性が低いため、プラスチック基材もしくはプラスチック基材と金属基材からなる複合部材への洗浄用途に好適である。プラスチックとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリプロピレン、6-ナイロン、6,6-ナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、FRP(繊維強化プラスチック)、PMMA(アクリル樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられ、金属としては、鉄、ステンレス、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、金、銀などが挙げられる。
【0037】
<用途>
本発明の洗浄剤組成物はオイルやグリースなどの油脂の汚れに対する洗浄性に優れる。オイルとしてはエンジンオイル、ギアオイル、タービンオイル、シリコンオイル、フッ素オイル、ブレーキオイルなどが挙げられるが特に限定されない。本発明の洗浄剤組成物は自動車、電車および航空機などの輸送機器に使用される部品に特に適しているが、他の機械類の洗浄にも適する。また、プラスチック基材への浸食性が低いため、プラスチック基材と金属基材からなる複合部材への洗浄に好適に使用することができる。さらに、洗浄以外の用途においても、汚染物である油脂類や固形物を除去することが求められる用途、例えば粘着剤や接着剤の除去などに応用することも可能である。
【実施例0038】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に指定がない限り、試験は25℃,55%RHの環境下で実施した。
【0039】
[実施例1~9、比較例1~6]
組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0040】
(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン 沸点39℃ KB値34 商品名:1233zd(Z)ハネウェルジャパン株式会社製
(A’)1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン 沸点54℃ KB値44 商品名:1233yd AGC株式会社製
(B-1)塩素原子およびエーテル結合を含まないハイドロフルオロオレフィン 沸点 71℃ 商品名:CFX70 三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製
(B-2)メトキシパーフルオロヘプテン 沸点110℃ 商品名:オプテオンSF10 三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製
(B-3)ハイドロフルオロエーテル C4F9OC2H5 沸点76℃ 商品名:Novec7200 スリーエムジャパン株式会社製
(B-4)ハイドロフルオロエーテル C2F5CF(OCH3)C3F7 沸点98℃ KB値:5 商品名:Novec7300 スリーエム株式会社製
(B-5)ハイドロフルオロカーボン CF3(CFH)2CF2CF3 沸点55℃ 商品名:バートレルXF 三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製
(B’-1)パーフルオロポリエーテル 沸点80℃ 商品名:ガルデンSV80 ソルベイ社製
(B’-2)パーフルオロポリエーテル 沸点135℃ 商品名:ガルデンSV135 ソルベイ社製
(C-1)メチルシクロヘキサン 沸点100.9℃ 商品名:スワクリーンMCH 丸善石油化学株式会社製
(C-2)イソオクタン 沸点62℃ 商品名:キョーワゾールC800 KHネオケム株式会社製
【0041】
前記(A)と(B)を撹拌容器に秤量し、(C)を添加して、30分間ミキサーで撹拌した。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0042】
[洗浄性]
A4サイズの鉄板の上に汚染物1(タービンオイル/商品名ダフニースーパータービンオイル)もしくは汚染物2(グリース/商品名アルバニヤグリースEP2)をそれぞれ2g滴下し、直径40mmの円になるように塗布する。鉄板を垂直に立て、二重構造噴霧容器を用いて洗浄剤を15cmの距離から5秒間0.5MPaで噴射し、汚染物を洗い流せるか否かを目視で確認する。噴射剤は窒素を用いた。5秒間の噴霧で汚染物を洗い流せていない場合は5秒間噴霧を追加し、再度目視で確認する。
<合格基準>
◎:5秒間の噴霧で鉄板上のオイルもしくはグリースを洗い流すことができる。
○:10秒間の噴霧で鉄板状のオイルもしくはグリースを洗い流すことができる。
×:10秒間の噴霧でもオイルもしくはグリースが鉄板上に残る。
[浸食性]
幅25mm×長さ100mm×厚み2mmのポリカーボネート板(帝人株式会社製L-1225Y)もしくはポリスチレン板(DIC株式会社製HIPS)の中央に直径6mmの穴を電動ドリルで開けた後、M6のボルトを穴に通し、ナットを用いて締め付けトルク6Nで締結させ試験片とする。100ml容量のガラス瓶に各洗浄剤組成物を90ml入れてテストピースを25℃×55%RHの環境下で15秒間浸漬させる。取り出し洗浄剤組成物を25℃×55%RHの環境下で10分間静置し乾燥させ、樹脂板の状態を目視で確認する。
<合格基準>
○:プラスチック板に溶解やクラックの発生がない。
×:プラスチック板に溶解やクラックの発生がみられる。
【0043】
【0044】
【0045】
表1に示すように(A)~(C)を含有し、(A)と(B)を特定の割合で含有する実施例1~9の組成物はポリカーボネートやポリスチレンなどのプラスチック基材を侵すことがなくタービンオイルやグリースに対して優れた洗浄性を有している。一方で、表2の比較例1のように(A)が少ない場合や比較例4のように(C)を含まない場合にはタービンオイルやグリースの洗浄性に劣り、(A)が異なる比較例2や(B)を含まない比較例3はポリカーボネートやポリスチレンを侵してしまう。さらに(B’)を用いた場合もタービンオイルやグリースの洗浄性が劣ることがわかる。以上のことから(A)~(C)を特定の割合で配合することでプラスチック基材への浸食性と洗浄性を両立できることがわかる。
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性に優れ、ポリカーボネートやポリスチレンなど耐溶剤性がないプラスチック基材を侵すことがないため、幅広い洗浄用途に展開でき、非常に有用である。