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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098050
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】レトルト用ソース及びレトルトソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20220624BHJP
【FI】
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211368
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】稲村 尚美
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LE05
4B036LF03
4B036LH28
4B036LP18
4B036LP19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】調理時の作業及び調理後の容器へのソースの充填が容易であり、かつレトルト処理後にはソースの粘度を高めて喫食時における米飯や麺への絡みが良好である、レトルト用ソース及びそれをレトルト処理してなるレトルトソースを提供する。
【解決手段】固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%の粉末状の種実類を含む、レトルト用ソース。種実類が、アーモンド、くるみ及びヘーゼルナッツからなる群から選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトルト用ソースであって、
固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%の粉末状の種実類を含む、レトルト用ソース。
【請求項2】
前記種実類が、アーモンド、くるみ及びヘーゼルナッツからなる群から選択される、請求項1に記載のレトルト用ソース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレトルト用ソースをレトルト処理してなる、レトルトソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の種実類を含むレトルト用ソース及びそれをレトルト処理してなるレトルトソースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カレーやパスタ用のソースに粘性を付与して米飯や麺との絡みを良好にする検討が行われている。しかしながら、ソースの調理時に粘度が高いと、均一な撹拌混合が困難となったり、またパウチ等の容器に分注する際に支障を来したりして作業性が低下することがある。例えば、デポジッター等を用いて分注する場合に、粘度の高いソースが配管に詰まって均等な分注量とならないことがある。一方で、粘度が低いソースでは、調理作業や充填作業が容易になるものの、喫食時においてはソースが舌に残りにくく風味を感じにくくなったり、米飯や麺へソースが絡みにくくなったりする。よって、調理時や分注時には粘度が比較的低く、喫食時には粘度が比較的高いソースが望まれている。
【0003】
このような課題を達成するために、例えば特許文献1には、充填時よりも粘性が増大した、ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するレトルト食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-42473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ひよこ豆に水を含ませてペースト状に加工する必要があり、工程の簡便さが求められている。
【0006】
本発明の目的は、簡便な手法によって、調理時の作業及び調理後の容器へのソースの充填が容易であり、かつレトルト処理後にはソースの粘度を高めて喫食時における米飯や麺への絡みが良好であるレトルト用ソース及びそれをレトルト処理してなるレトルトソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、レトルト用ソースが、固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%となる量の粉末状の種実類を含むことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]レトルト用ソースであって、
固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%の粉末状の種実類を含む、レトルト用ソース。
[2]前記種実類が、アーモンド、くるみ及びヘーゼルナッツからなる群から選択される、[1]に記載のレトルト用ソース。
[3][1]又は[2]に記載のレトルト用ソースをレトルト処理してなる、レトルトソース。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な手法によって、調理時の作業及び調理後の容器へのソースの充填が容易であり、かつレトルト処理後にはソースの粘度を高めて喫食時における米飯や麺への絡みが良好であるレトルト用ソース及びそれをレトルト処理してなるレトルトソースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
本発明のレトルト用ソースは、粉末状の種実類を含む。
本発明において、レトルト用ソースとは、レトルト処理前のソースをいい、レトルトソースとは、レトルト用ソースをレトルト処理したものをいう。レトルトソースは特に限定されず、カレーライスソース、ハヤシライスソース、パスタソース等が挙げられる。
使用することができる種実類としては、固い殻や皮に包まれた食用の果実や種子であれば特に限定されず、例えばアーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ココナッツ、銀杏、ペカンナッツ、ブラジルナッツ、松の実、ヒマワリの種、カボチャの種、スイカの種、ゴマ等が挙げられる。中でも、上記種実類は、アーモンド、くるみ及びヘーゼルナッツからなる群から選択されることが好ましい。
【0012】
上記種実類を粉末状にする手法は特に限定されず、例えば衝撃式粉砕法、気流式粉砕法、摩砕粉砕法、剪断粉砕法、切断粉砕法、圧縮粉砕法、凍結粉砕法等の手法が挙げられる。粉砕条件は、例えば粉末の粒度(粒子径)が0.7mm以下となるように粉砕できれば特に限定されない。上記粉末状の種実類は、例えば種実類を乾燥させ、粉砕機で粗く粉砕した後に、3段の縦型ロールで圧縮粉砕及び切断粉砕し、次いで目開き0.7mmの篩(例えばステンレス篩)に通すことで得ることができる。
上記粉末状の種実類は、市販のものを使用してもよい。
【0013】
上記粉末状の種実類の含有量は、固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%である。上記粉末状の種実類の含有量が5質量%未満であると、レトルト用ソースをレトルト処理しても粘度が上昇せず、喫食時における米飯や麺への絡みが良好とならない。また上記含有量が15質量%を超えると、レトルト用ソースの粘度が高くなりすぎて充填時に支障が生じたり、種実類の風味が強くなってソース本来の味が損なわれたりする。上記粉末状の種実類の含有量は、固形具材を除くソース全量に対して6~14質量%であることが好ましく、7~13質量%であることがより好ましい。
なお本発明において固形具材とは、例えば目開き5mmの篩を通過しない具材を意味する。
【0014】
上記レトルト用ソースは、粉末状の種実類以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常レトルト用ソースに使用されるその他の原料を含むことができる。
そのような原料としては、例えば肉や野菜等の固形具材;野菜加工品(ピューレ、ペースト等);穀粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、コーンフラワー等);澱粉(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、これらを物理的、化学的及び/又は酵素的に処理した加工澱粉等);植物性油脂(サラダ油、パーム油、菜種油、綿実油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、ゴマ油、コーン油、米油、シソ油、オリーブ油、アマニ油、エゴマ油等)、動物性油脂(牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等)、加工油脂(硬化油、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等)等の油脂類;砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖等の糖類;甘味料;調味料(例えば、食塩、グルタミン酸ナトリウム、カツオパウダー等の粉末調味料;ソース、エキス、醤油、みりん、ケチャップ、食酢、だし汁、蜂蜜等の液体調味料)、香辛料、香料、色素等が挙げられる。上記野菜加工品としては、トマトピューレ及びトマトペースト等を例示することができる。
【0015】
本発明のレトルトソースは、上記レトルト用ソースをレトルト処理することで得ることができる。具体的には例えば、粉末状の種実類を除くソース原料に、粉末状の種実類を、固形具材を除くソース全量に対して5~15質量%となるように添加してレトルト用ソースを調製し、次いで得られたレトルト用ソースを容器に密閉し、レトルト処理を行うことで製造することができる。
【0016】
上記レトルト処理は、慣用手法に従って行うことができる。例えば、レトルト用ソースを所定分量に取り分けてレトルト処理に耐えることができるパウチに充填及び密閉した後、レトルト処理(例えばパウチ内の製品において殺菌中に最も温度が上がりにくい中心部のF値が4以上となるように100~135℃で加熱及び加圧して殺菌処理)する方法が挙げられる。
【0017】
本発明において、レトルト用ソース(レトルト処理前)の粘度は、ボストウィック粘度計による測定温度(ソースの中心温度)60℃±2℃、測定時間30秒の粘度が4.5cm以上であることが好ましく、6cm以上であることがより好ましく、7.5cm以上であることが更に好ましい。本発明のレトルトソース(レトルト処理後)の粘度は、14cm以下であることが好ましく、11cm以下であることがより好ましく、8cm以下であることが更に好ましい。
【実施例0018】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
製造例:パスタ用トマトソースの製造
(1)食塩1質量部と砂糖1質量部とを混合した。
(2)トマトペースト20質量部、粉末状の種実類0~20質量部及び上記(1)で得られた混合粉末を調理器に投入し、ソース全体の質量が100質量部となるように水を加え、十分に攪拌しながら85℃達温まで加熱した。
(3)蒸発した水分を補填して全体が100質量部となるように水を加えて混合することでレトルト用ソースを得て、アルミニウムを表面に蒸着したレトルト用パウチに上記レトルト用ソースを100gずつ充填して密封した。
(4)F値が4以上となるようにレトルト用ソースを加圧加熱殺菌(100~135℃、10~30分間)して、レトルトソースを得た。
【0020】
試験1:粉末状の種実類の添加量によるソースの粘度の変化
粉末状の種実類を下記表1に記載の量で使用した以外は、上記製造例に従ってトマトソースを製造した。
レトルト用パウチに充填する直前のトマトソースの粘度を、ボストウィック型粘度計(CSC Scientific社製、Bostwick Consistometer)を用いて、60℃±2℃の温度で100gのソースを30秒間流して移動した長さ(cm)を測定することによって評価し、レトルト用ソースのレトルト用パウチへの充填適正を評価した。7.5cm以上を「良い」、4.5cm以上7.5cm未満を「普通」、4.5cm未満を「悪い」と評価した。
また、レトルト処理後のトマトソースの粘度を同様にして測定し、レトルトソースの麺への絡み(ソースの付着性)を以下のようにして評価した。まず、100gの茹で麺(パスタ)にレトルト処理後のソースを50gかけて30秒間和え、笊に移して10秒間静置して余分なソースを除去してから別の容器に移し、和え麺の質量を測定した。和え麺の質量からパスタの質量100gを差し引くことによって、和え麺の質量に対する付着したソースの質量割合を算出した。「麺や米飯への絡み」の評価として、50質量%未満を「悪い」、50質量%以上65質量%未満を「普通」、65質量%以上を「良い」とした。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
比較例1及び実施例1~3は、レトルト処理前の粘度が比較的低く、充填適正が良好であった。実施例4は、レトルト処理前の粘度がやや高いが、許容範囲であった。比較例2はレトルト処理前の粘度が非常に高く、レトルト用パウチへの充填が困難であった。
レトルト処理後の粘度は比較例1を除きいずれの場合でもレトルト処理前よりも高くなった。比較例1は粘度が上昇せず、パスタに絡めたトマトソースがあまり保持されなかった。実施例2~4及び比較例2は、レトルト処理後の粘度が高くパスタへの絡みが良好であったが、比較例2のレトルトソースはアーモンドの風味が強かった。実施例1はレトルト処理後の粘度がやや低いが、許容範囲であった。
【0023】
試験2:小麦粉、加工澱粉又は増粘剤を用いた場合との比較
粉末状の種実類の代わりに小麦粉、加工澱粉又は増粘剤を下記表2に記載の通りに配合した以外は上記製造例と同様にしてトマトソースを製造し、ソースの粘度及びパスタへの付着性を同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
対照例1~3では、レトルト処理前のソースの粘度はある程度低いものの、いずれもレトルト処理後の粘度が更に低くなったため本発明の効果が得られなかった。また対照例3では、増粘剤をソースに均一に溶解させることが困難であり、作業性が悪かった。
【0026】
試験3:粉末状の種実類の種類の検討
粉末状の種実類として、アーモンドプードルの代わりにくるみパウダー又はヘーゼルナッツパウダーを下記表3に記載の通りに配合した以外は上記製造例と同様にしてトマトソースを製造し、ソースの粘度及びパスタへの付着性を同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
実施例5及び6は、レトルト処理前の粘度が低く、レトルト用パウチへの充填適正が良好であり、実施例3と同様にレトルト処理後の粘度が上昇したため、ソースの付着性も良好であった。
【0029】
試験4:ひよこ豆を用いた場合との比較
従来技術との比較として、粉末状の種実類を配合する代わりに、種実類ではないひよこ豆の粉末又はひよこ豆ペーストを配合したこと以外は製造例と同様にしてトマトソースを製造し、ソースの粘度及びパスタへの付着性を同様にして評価した。なおひよこ豆粉末をペースト状に加工する際に、ひよこ豆粉末の質量に対して同量の吸水があったため、ひよこ豆ペーストの配合量をひよこ豆粉末の2倍とした(但しソースの水分含量は同一である)。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
種実類ではないひよこ豆粉末を配合したソース(比較例3)は、レトルト処理前の粘度が非常に高くなり、充填適正が悪かった。これはひよこ豆が種実類と比較して吸水性が高いことに起因していると考えられる。従来のひよこ豆ペーストを配合した場合(対照例4)は、ひよこ豆粉末よりも吸水が抑えられたために比較例3よりも優れた充填適正を有していたものの、事前にひよこ豆を水に浸漬する手間が生じるため生産性に劣っており、また同量の種実類粉末(アーモンドプードル)を配合した実施例2よりもソースの付着性が劣っていた。このように、本発明によれば、レトルト用パウチ等の容器への充填性が容易であり、かつレトルト処理後の粘度が高められ米飯や麺への絡みを良好にすることができるレトルト用ソースを簡便な手法によって得ることができる。