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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098076
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】固体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/66 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/66
A61K8/19
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/34
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211409
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】友松 公樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB292
4C083AB322
4C083AC122
4C083AC792
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD211
4C083AD261
4C083AD352
4C083AD471
4C083AD472
4C083BB01
4C083CC41
4C083DD15
4C083DD17
4C083EE36
(57)【要約】
【課題】酵素の安定性に優れると共に、製剤安定性に優れており、粉剤とした場合には凝集や固化が生じにくい固体口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:酵素と、(B)成分:無機粉末と、(C)成分:水溶性高分子と、(D)成分:水酸基数6以下の多価アルコールとを含有することを特徴とする、固体口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:酵素と、
(B)成分:無機粉末と、
(C)成分:水溶性高分子と、
(D)成分:水酸基数6以下の多価アルコールと
を含有することを特徴とする、固体口腔用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、グルカナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の固体口腔用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、シリカ及び2価又は3価の金属化合物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の固体口腔用組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、多糖類、水溶性セルロース誘導体、及びアクリル酸系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【請求項5】
前記(D)成分が、2価又は3価アルコールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【請求項6】
前記固体口腔用組成物の総質量に対して、
前記(A)成分の含有量が、0.05質量%~3質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、70質量%~90質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.1質量%~2質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、5質量%~20質量%であり、
水の含有量が0.5質量%~15質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【請求項8】
錠剤又は粉剤として製剤されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、う蝕予防の有効成分として歯垢の形成を防止するためにデキストラナーゼ等の酵素を配合した練歯磨剤、洗口剤が知られている。しかし、酵素は口腔用組成物中の水分やアニオン活性剤等の影響で失活しやすい問題があり、水分含有率が比較的低い粉末状の歯磨剤においても酵素活性が経時で低下する問題がある。
そこで特許文献1では、特定のデキストラナーゼとアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを組み合わせることにより、デキストラナーゼの安定性を保持することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-118509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明は、酵素として、特定のデキストラナーゼを使用する場合にしか適用できない。
さらに、酵素を配合した固体口腔用組成物は、粉剤の形態を取ると凝集や固化が発生しやすく、安定な粉剤形態を維持することが困難であるという問題もあるが、特許文献1では、粉剤とした場合の凝集や固化について考慮されていない。
そこで、本発明は、酵素の安定性に優れると共に、製剤安定性に優れており、粉剤とした場合には凝集や固化が生じにくい固体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1](A)成分:酵素と、
(B)成分:無機粉末と、
(C)成分:水溶性高分子と、
(D)成分:水酸基数6以下の多価アルコールと
を含有することを特徴とする、固体口腔用組成物。
[2]前記(A)成分が、グルカナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選ばれる1種以上である、[1]に記載の固体口腔用組成物。
[3]前記(B)成分が、シリカ及び2価又は3価の金属化合物からなる群から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の固体口腔用組成物。
[4]前記(C)成分が、多糖類、水溶性セルロース誘導体、及びアクリル酸系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
[5]前記(D)成分が、2価又は3価アルコールからなる群から選ばれる1種以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
[6]前記固体口腔用組成物の総質量に対して、
前記(A)成分の含有量が、0.05質量%~3質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、70質量%~90質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.1質量%~2質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、5質量%~20質量%であり、
水の含有量が0.5質量%~15質量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
[7]さらに界面活性剤を含有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
[8]錠剤又は粉剤として製剤されている、[1]~[8]のいずれか一項に記載の固体口腔用組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固体口腔用組成物によれば、酵素の安定性に優れると共に、製剤安定性に優れており、粉剤とした場合には凝集や固化が生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の固体口腔用組成物は、後述する(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する。本発明の固体口腔用組成物は、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。
以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0008】
<(A)成分>
(A)成分は酵素であり、プラーク除去効果を高めるために配合される。(A)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分としては、例えば、グルカナーゼ、プロテアーゼが挙げられる。(A)成分は、グルカナーゼを含むことが好ましい。
【0009】
グルカナーゼは、グルコースで構成される多糖であるグルカンを加水分解してグルコオリゴ糖またはグルコースを生成する酵素であり、α-1,6グルコシド結合を切るデキストラナーゼ、α-1,3グルコシド結合を切るムタナーゼ、α-1,4グルコシド結合を切るアミラーゼ、塩化リゾチーム等が挙げられる。中でもデキストラナーゼが好ましい。
【0010】
デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼを好適に使用できるが、他の微生物より生産されたデキストラナーゼも使用することができる。市販品としては、第一三共プロファーマ(株)製デキストラナーゼなどを用いることができる。
デキストラナーゼの配合量は、固体口腔用組成物1g当たり0.1~10,000単位、特に1~2,000単位とすることが好ましい。なお、上記1単位とは、デキストランを基質として酵素反応した場合、1分間当たりにブドウ糖1μmol相当量の還元糖を生成させるデキストラナーゼの活性である。
【0011】
プロテアーゼは、ペプチド結合を加水分解する酵素で、パパイン、アクチニジン、ブロメライン、ナットウキナーゼ等が挙げられる。中でもパパインが好ましい。
プロテアーゼの配合量は、固体口腔用組成物1g当たり80~40,000単位とすることが好ましく、400~40,000単位とすることが好ましく、400~20,000単位とすることが特に好ましい。なお、上記1単位とは、カゼインを基質として酵素反応した場合、1分間当たりに1μmol相当量のL-チロシンを生成させるプロテアーゼの活性である。
【0012】
(A)成分の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.05~3.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。0.05質量%以上とすることで充分なプラーク除去効果を得やすくなる。3.0質量%以下とすることで製剤安定性が向上する。なお、(A)成分の含有量は酵素製剤としての含有量である。
【0013】
<(B)成分>
(B)成分は無機粉末である。(B)成分は賦形剤として機能し、固体口腔用組成物を錠剤又は粉剤として製剤した際の製剤安定性に寄与する。また、研磨剤として機能し、プラークを物理的に除去する役割を担う。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(B)成分は、シリカ及び2価又は3価の金属化合物からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。2価又は3価の金属としては、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の金属が好ましい、また、化合物の形態は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、及びリン酸塩からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
中でも、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、ヒドロキシアパタイト(塩基性リン酸カルシウム)、酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0015】
(B)成分の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、70~90質量%が好ましく、75~85質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が70質量%以上であるとプラーク除去効果、製剤の安定性、及び(A)成分の安定性を高めやすい。また、(B)成分の含有量が90質量%以下であると、固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが向上しやすい。
なお、(B)成分が結晶水を含む場合、(B)成分の含有量は結晶水の質量を除いた含有量である。
【0016】
<(C)成分>
(C)成分は水溶性高分子である。なお、(C)成分は水酸基数6以下の多価アルコールを含まない。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(C)成分は、多糖類、水溶性セルロース誘導体、及びアクリル酸系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
多糖類としては、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸塩等が挙げられる。
また、水溶性セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0018】
アクリル酸系ポリマーは、アクリル酸モノマー及びメタクリル酸モノマーの少なくとも一方に由来する構成単位を含む高分子である。アクリル酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸/アクリル酸コポリマー等、及びこれらの塩が挙げられる。
(C)成分は、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、キサンタンガムであることが特に好ましい。
(C)成分の重量平均分子量は、20,000を超えるものである。重量平均分子量は、ポリエチレングリコール(PEG)を標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0019】
(C)成分の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.1~2質量%が好ましく、0.3~1質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が0.1質量%以上であると(A)成分の安定性を高めやすくなると共に、固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが向上しやすい。また、(C)成分の含有量が2質量%以下であると、製剤安定性が向上しやすい。
なお、(C)成分が酸の形態と塩の形態を取り得る場合、(C)成分の含有量は酸の形態としての含有量である。
【0020】
<(D)成分>
(D)成分は、水酸基数6以下の多価アルコールである。(D)成分を配合することにより、(A)成分の安定性と製剤安定性が高まる。また、固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが得られる。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(D)成分は、2価又は3価アルコールからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、炭素数3~6のアルキル基を有する2価又は3価アルコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0022】
ポリエチレングリコールとしては、(D1)成分:平均分子量が100~2000未満、特に200~1500のポリエチレングリコールが好ましい。
また、(D1)成分に加えて、(D2)成分:平均分子量2000~20000、特に2000~10000のポリエチレングリコールを併用すると、固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが得られるので好ましい。
【0023】
(D1)成分と(D2)成分の質量比である(D1):(D2)は、1:0.01~1:0.5が好ましく、1:0.05~1:0.3がより好ましい。
ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格2006(薬事日報社)に記載の平均分子量試験に従って測定することができる。
【0024】
医薬部外品表示名称では、(D1)成分としては、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600.PEG1000が挙げられる。(D2)成分としては、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG11000、PEG20000等が挙げられる。
【0025】
炭素数3~6のアルキル基を有する2価又は3価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
4価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトールやキシリトール、エリスリトール、アラビトール等の単糖の糖アルコール、ジグリセリンが挙げられる。
【0026】
(D)成分の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、5~20質量%が好ましく、7~15質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が5質量%以上であると、(A)成分の安定性と製剤安定性が向上しやすくなると共に、固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが向上しやすい。(D)成分の含有量が20質量%以下であると、(A)成分の安定性と製剤安定性が向上しやすい。
【0027】
<水>
固体口腔用組成物は、製剤のしやすさ及び固体口腔用組成物が界面活性剤を含む場合の泡立ちの観点から水を含有することが好ましい。
水の含有量は、特に限定されないが、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.5~15質量%が好ましく、1~12質量%がより好ましい。
水の含有量が0.5質量%以上であると、口腔用組成物が界面活性剤を含む場合に、泡の濃密さが向上しやすい。水の含有量が15質量%以下であると、(A)成分の安定性と製剤安定性が向上しやすい。
【0028】
<界面活性剤>
本発明の固体口腔用組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を配合することにより、使用時に泡立ちが得られる。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用できる。良好な泡立ちが得られる点で、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0029】
アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、セチル硫酸塩などのアルキル硫酸塩、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル塩等が挙げられ、塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
【0030】
両性界面活性剤としては、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤が挙げられ、脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウロイルアミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0031】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これらのうち、汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に用いられる。
【0032】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル鎖の炭素鎖長が、炭素数で14~30であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、エチレンオキサイド平均付加モル数が3~30であることが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、エチレンオキサイド平均付加モル数(平均付加EO)が10~100であることが好ましい。アルキロールアミドは、アルキル鎖の炭素鎖長が炭素数12~14であることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12~18であることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が16~18であることが好ましい。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、エチレンオキサイド平均付加モル数が10~40であることが好ましい。
【0033】
界面活性剤を用いる場合の配合量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.1~2質量%が好ましく、1.0~1.8質量%がより好ましい。
界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であると、泡の濃密さが向上しやすい。界面活性剤の含有量が2質量%以下であると、製剤安定性が向上しやすい。
【0034】
<その他の任意成分>
本発明の固体口腔用組成物は、必要に応じて、上記(A)~(D)成分、水及び界面活性剤以外に、通常、固体口腔用組成物に使用され得るその他の任意成分を含有することができる。このような任意成分としては、例えば、有効成分、フッ化物などの有効成分、防腐剤、甘味剤、着色料、香料、等が挙げられる。
【0035】
有効成分としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤;トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム、β-グリチルレチン酸、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、オウバクエキス、アズレンスルホン酸塩等の抗炎症剤;ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤・ステイン除去剤;フッ素化合物(フッ化物)、ピロリドンカルボン酸塩等のう蝕予防剤;アスコルビン酸塩、塩化ナトリウム等の収斂剤;硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等の知覚過敏抑制剤;酢酸トコフェロール等の血流促進剤などが挙げられる。化合物の塩は、薬理学的に許容される水溶性塩であればよく、特段限定されない。
【0036】
フッ化物としては、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化スズ等が挙げられる。フッ化物を用いる場合、配合量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、フッ素量として50~5000質量ppmとなる量である。
【0037】
有効成分は、一種類を単独で用いてもよいし、所望の作用に応じて複数を組み合わせて使用してもよい。
有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で各成分の有効配合量とすることができる。
【0038】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸塩等が挙げられる。防腐剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。防腐剤を用いる場合、配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0039】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p-メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、パラチノース、マルチトール等が挙げられる。甘味剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。甘味剤を用いる場合、配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0040】
着色料としては、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素等の天然色素や、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素、リボフラビン、銅クロロフィンナトリウム、二酸化チタン等が挙げられる。着色剤を配合する場合、その配合量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.00001~3質量%であることが好ましい。
【0041】
香料としては、口腔用製剤に使用可能な通常の香料成分を、単独で、または複数組み合わせた香料組成物として、使用することができる。香料の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.00001質量%~3質量%であることが好ましい。
固体口腔用組成物が錠剤や造粒粒子として製剤される場合は、さらに、光沢剤やコーティング剤等を本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0042】
固体口腔用組成物が水と界面活性剤、有効成分以外のその他の任意成分を含有する場合、水と界面活性剤、有効成分以外の任意成分の含有量は、固体口腔用組成物の総質量に対して、0.1~7.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。
なお、その他の任意成分が結晶水を含む場合、当該成分の含有量は結晶水の質量を除いた含有量である。
【0043】
<pH>
固体口腔用組成物の水分散液のpHは、pH7.0~10.0に調整されることが好ましい。
なお、水分散液のpHは、固体口腔用組成物5gを精製水45mL中に加えて、ガラス棒でよく撹拌し均一化し、25℃に調温後、ガラス電極pHメーターを用いて測定した値である。
【0044】
<固体口腔用組成物の製造方法と製剤>
本発明の固体口腔用組成物の製造方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(B)成分を混合しながら(A)成分、(C)成分及び界面活性剤をそれぞれ投入し、数分間混合する。その後、事前混合しておいた(D)成分その他と精製水を、スプレー噴霧により添加し、数分間の混合とかきとりを数回繰り返す。
更に、スポイトで香料その他を添加後、数分間の混合およびかきとりを数回繰り返すことにより、本発明の固体口腔用組成物を得ることができる。
混合には、例えば、リボンミキサーなどを使用できる。
【0045】
粉剤として製剤する場合は、混合後の固体口腔用組成物を、適宜の目開きの篩に通すことにより、所望の粒径の粉剤とした固体口腔用組成物を得ることができる。粉剤とする場合の平均粒子径は特に制限はないが、通常1~800μm程度が好ましく、5~500μm、さらに10~100μmであることがより好ましい。
篩に通し粉状とした後、造粒して造粒粒子としてすることもできる。また、粉状とした後、打錠物として、錠剤として製剤することもできる。
【実施例0046】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。本実施例において「%」は特に断りがない限り、純分の「質量%」を示す。各例の固体口腔用組成物の組成を表1~5に示した。各例において使用した原料は下記の通りである。
【0047】
<使用原料>
[(A)成分]
デキストラナーゼ:三菱ケミカルズフーズ社製デキストラナーゼ、13,000U/g。
パパイン:三菱ケミカルズフーズ社製精製パパイン、800,000U/g。
塩化リゾチーム:キユーピー社製塩化リゾチーム、1.0mg単位/mg。
ムタナーゼ:天野エンザイム社製ムタナーゼ、13,000U/g。
【0048】
[(B)成分]
炭酸カルシウム:三共製粉社製カルシーF。
リン酸カルシウム:東ソー・アクゾ社製第二リン酸カルシウム・2水和物。
シリカ:DSLジャパン製CARPLEX AS-16Q。
ヒドロキシアパタイト:太平化学産業社製ハイドロキシアパタイトHAP-200。
酸化アルミニウム:日本軽金属社製酸化アルミニウム。
【0049】
[(C)成分]
キサンタンガム:DSP五協フード&ケミカル社製モナートガム。
カルボキシビニルポリマー:ルーブリゾール社製カーボポール980。
ポリアクリル酸ナトリウム:東亜合成社製レオジック260H。
【0050】
[(D)成分]
ポリエチレングリコール400:三洋化成工業社製ポリエチレングリコール400。
ポリエチレングリコール4000:日油社製PEG#4000。
プロピレングリコール:ADEKA社製プロピレングリコール。
グリセリン:阪本薬品工業社製グリセリン。
1,3-ブチレングリコール:高級アルコール工業社製ハイシュガーケインBG。
【0051】
[共通成分]
モノフルオロリン酸ナトリウム:ICLJAPAN社製Phoskadent・Na211。
ラウリル硫酸ナトリウム:BASF社製Texapon。
サッカリンナトリウム:愛三化学工業社製サッカリンナトリウム。
【0052】
<実施例1~32、比較例1~3>
表1~5に示す組成に従い、(B)成分を混合しながら(A)成分、(C)成分及び界面活性剤をそれぞれ投入し、リボンミキサーで3分間混合した。その後、事前に(D)成分とモノフルオロリン酸ナトリウムとサッカリンナトリウムを精製水に加えて溶解しておいたものを、スプレー噴霧により添加し、3分間のリボンミキサーによる混合とかきとりを3回繰り返した。
更に、スポイトで香料を添加後、3分間のリボンミキサーによる混合およびかきとりを3回繰り返した後、篩(24Mesh)に通して各例の固体口腔用組成物(粉剤)を得た。
【0053】
得られた各例の固体口腔用組成物の組成(配合成分、含有量(質量%))を表に示す。尚、特に断りがない限り質量%は純分を示す。表の組成において、「-」と記載した配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。
【0054】
<評価方法>
各例の固体口腔用組成物について、プラーク除去効果、酵素の安定性、製剤の安定性、及び泡質を以下のように評価した。結果を表1~5に示す。表の評価結果において、「-」と記載した部分については、その評価を行っていない。
【0055】
[プラーク除去効果]
各例の固体口腔用組成物を人工唾液(最終濃度が50mMのKCl、1mMのKH2PO4、1mMのCaCl2、0.1mMのMgCl2となるようにし、KOHでpHを7.0に調整し、蒸留水で1Lにしたもの。)に添加して撹拌し、分散・溶解させ、分散・溶解液(分散・溶解液に占める人口唾液の割合は、10質量%)を得た。
得られた分散・溶解液を、20℃において2,000Gで10分間遠心分離し、遠心上清を各例の試料液Aとした。
また、固体口腔用組成物を加えない上記人工唾液をブランク液Aとした。
【0056】
一方、ストレプトコッカス ソブリヌス(S.Sobrinus NIDR6715)を、試験管(KIMBLE社製、内径13mm×長さ100mm、材質:ホウケイ酸ガラス)に入れた1%スクロース含有のTSB培地液(Becton、Dickinson company社製)で傾斜培養し(嫌気,37℃)、試験管の内壁に付着させた。
【0057】
プラークを付着させた試験管から培地液をデカンテーションで取り除いた後、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)の5mLを、培地液を取り除いた後の試験管に入れて廃棄することを2回繰り返すことにより、試験管に付着していないプラークを除去した。
その後、試験管に、各例の試料液A又はブランク液Aの4mLを入れ、37℃で、3分間、付着させたプラークを、各例の試料液A又はブランク液Aに浸漬した。そして、各例の試料液A又はブランク液Aを試験管から廃棄後、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)の5mLを、試験管に入れて廃棄することを3回繰り返すことにより、各例の試料液A又はブランク液Aに浸漬後のプラークを洗浄した。
次いで、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)4mLを試験管に入れ、37℃で60分間静置(浸漬)し、60分経過後に0.1Mリン酸緩衝液を廃棄した。そして、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)の5mLを、試験管に入れて廃棄することを2回繰り返すことにより、分解剥離したプラークを除去した。
【0058】
その後、試験管に0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)4mLを加えてから、試験管を超音波ホモジナイザー(BRANSON社製 250)に5分間かけることにより、試験管の内壁に残存したプラークを、0.1Mリン酸緩衝液内に分散し、各例の試料液B又はブランク液Bとした。
各例の試料液B又はブランク液B内に分散した残存プラーク量を各例の試料液B又はブランク液Bの濁度として測定した。濁度はOD550nmで測定した。
【0059】
各例のプラーク除去率を下記式により求めた。
プラーク除去率(%)=100-(試料液Bの濁度/ブランク液Bの濁度)×100
各例の試料液Aについて、上記試験を3回繰り返し、3回の試験で得られたプラーク除去率の平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎及び○の結果となった例を、プラーク除去効果が高い固体口腔用組成物であると判断した。
【0060】
評価基準
◎:プラーク除去率80%以上。
○:プラーク除去率70%以上80%未満。
△:プラーク除去率50%以上70%未満。
×:プラーク除去率50%未満。
【0061】
[酵素の安定性]
内容量40mLのポリプロピレン製クリームジャー容器に各例の固体口腔用組成物30mLを充てんし、スクリュー式のフタを閉め密封し、40℃恒温槽で1ヶ月間保存した。保存前後の酵素量を以下の方法により測定し、下記式により残存率を算出し、以下の基準で評価した。
残存率(%)=(保存後の酵素量/保存前の酵素量)×100
◎及び○の結果となった例を、酵素の安定性が高い固体口腔用組成物であると判断した。
【0062】
酵素量の測定
保存前後の各例の固体口腔用組成物0.6gをpH7.0リン酸塩緩衝液15mLで懸濁し、その遠心上清を試料溶液として、各試料溶液1mLを1質量%デキストラン溶液2mLに加え、40℃の恒温槽で反応させた。正確に10分後に1mol/L硫酸溶液0.5mLを素早く加え、反応を停止した。次に、生じた還元糖量を衛生試験法・注解2000年版に記載のソモギ法に従い測定した。
すなわち、酵素反応停止後の試料溶液を水酸化ナトリウム試液で中和し、銅溶液5mLを加え、次いで水浴中で15分間加熱した後、直ちに流水中で冷却した。その後、ヨウ化カリウム溶液2mLを静かに加え、直ちに1.0mol硫酸溶液1.5mLを素早く加えた後、デンプン試液0.5mLを加え、0.005mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で溶液が無色になるまで滴定した。
ソモギ法に従い求めた保存前後の還元糖量を、各例の固体口腔用組成物の保存前後の酵素量とした。
【0063】
評価基準
◎:残存率が80%以上。
○:残存率が60%以上80%未満。
△:残存率が40%以上60%未満。
×:残存率が40%未満。
【0064】
[製剤の安定性]
内容量40mLのポリプロピレン製クリームジャー容器に各例の固体口腔用組成物30mLを充てんし、スクリュー式のフタを閉め密封し、40℃恒温槽で1ヶ月間保存した。保存後の固体口腔用組成物を白色紙上に平面状に静かに広げ、固化及び凝集の有無を目視観察し、凝集粒子が見られる場合は指先で潰して凝集状態を確認し、以下の基準で評価した。
◎及び○の結果となった例を、製剤の安定性が高い固体口腔用組成物であると判断した。
【0065】
評価基準
◎:凝集粒子のない状態。
〇:凝集粒子がわずかに見られるが、指先で押すと容易に崩れて粉状に戻る状態。
△:凝集粒子が多く見られ、指先で押し潰すと崩れて粉状に戻る状態。
×:凝集粒子が全体的に見られ、指先で押しても崩れにくく粉状に戻らない状態。
【0066】
[泡質]
被験者10名の各々が、各例の固体口腔用組成物1gを歯ブラシにのせ、3分間ブラッシングした。各被験者は、ブラッシング後、口腔内にきめ細かくクリーミーな泡が存在しているか否かで、泡が濃密か否かを回答した。回答結果を以下の基準で評価した。
◎及び○の結果となった例を、泡質が良好な固体口腔用組成物であると判断した。
【0067】
評価基準
◎:被験者10名中9名以上が、泡が濃密であると回答。
○:被験者10名中6名以上8名以下が、泡が濃密であると回答。
△:被験者10名中3名以上5名以下が、泡が濃密であると回答。
×:被験者10名中2名以下が、泡が濃密であると回答、又は全員が濃密でないと回答。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
表1~4に示すように、例1~32は、いずれもプラーク除去効果、酵素の安定性、製剤の安定性、及び泡質の総てにおいて優れていた。
これに対して、表5に示すように、(C)成分又は(D)成分を配合しない比較例1、2は酵素の安定性と製剤の安定性が不充分であった。
また、(A)成分を配合しない比較例3は、プラークの除去効果が低かった。