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特開2022-98099細菌、IL10遺伝子発現亢進剤、免疫応答制御亢進剤、及び製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098099
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】細菌、IL10遺伝子発現亢進剤、免疫応答制御亢進剤、及び製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220624BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220624BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220624BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/747
A61K35/74 G
A61K35/74 A
A61P43/00 111
A61P37/02
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211452
(22)【出願日】2020-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】504095173
【氏名又は名称】株式会社バイオジェノミクス
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】本多 英俊
(72)【発明者】
【氏名】河津 良子
(72)【発明者】
【氏名】渕上 太郎
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
4B065AC20
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087BC56
4C087CA09
4C087CA10
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB21
4C087ZC01
(57)【要約】
【課題】産道内菌叢から有益な細菌を見出し提供すること。
【解決手段】IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE P-03295として寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株である細菌である。この菌株及び菌株から得られる上清は、IL10遺伝子発現を亢進し、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、腫瘍等による疾患を予防し、又は治療することができる。さらに、抗感染と抗アレルギー双方の効果を高める免疫応答制御亢進剤(免疫賦活化剤)とすることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL10遺伝子発現を亢進させるデーデルライン桿菌である細菌。
【請求項2】
前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE P-03295として寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株である請求項1記載の細菌。
【請求項3】
IL10遺伝子発現を亢進させるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の組合せからなる請求項1記載の細菌。
【請求項4】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌の培養上清を主成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項5】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌を有効成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項6】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌又は請求項4若しくは請求項5記載のIL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項7】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌の培養上清を主成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項8】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌を有効成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項9】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌又は請求項7若しくは請求項8記載の免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項10】
皮膚外用剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。
【請求項11】
経口剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・コレオホミニスに属する細菌並びにその細菌を用いたインターロイキン10(以下「IL10」ともいう)遺伝子発現亢進剤並びにその細菌を用いた皮膚外用剤及び経口剤等の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦による出産は自然の理であり病気ではなく、出産の際に産道が傷つくことがあっても直ぐに修復される。このように妊婦の産道には出産時に特異な機能を備えていると考えられるが、産道の疾患に関する研究及び情報はあるものの健常人、とりわけ妊婦の産道に着目した研究及び情報はなかなか見つけることができなかった。目に付くのは、産道炎症に関する商品、又は産道にも適用できる粘膜の治療薬である。例えば、膣等の粘膜へも適用可能な治療薬に関する技術は特表2014-510090号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-510090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように妊婦の産道には傷を直ぐに修復できるような治癒力があり、これは妊婦における産道内菌叢によってもたらされるものではないかと本発明者らは推測し、産道内菌叢の研究を行った。本発明はこうした研究の成果として生まれたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、IL10遺伝子発現を亢進させるデーデルライン桿菌である細菌である。本発明の一態様が、IL10遺伝子発現を亢進させるデーデルライン桿菌である細菌であるため、IL10遺伝子の発現を亢進させることができるヒトの産道から取得できる細菌である。
【0006】
本発明の一態様は、前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE P-03295として寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株(細菌)である。
【0007】
本発明の一態様は、前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE P-03295として寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株(細菌)であるため、ヒトの産道から取得できるラクトバチルス・コレオホミニス種に属する細菌が、IL10遺伝子の発現を亢進させることができる。
【0008】
本発明の一態様は、IL10遺伝子発現を亢進させるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の組合せからなる細菌である。
本発明の一態様を、IL10遺伝子発現を亢進させるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の組合せからなる細菌としたため、ヒトの産道から取得できるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の少なくとも何れかの種に属する菌株の組合せからなる細菌群が、IL10遺伝子の発現を10倍以上亢進させることができる。
【0009】
本発明の一態様は、上記細菌の培養上清を主成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤である。
本発明の一態様を、上記細菌の培養上清を主成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤としたため、IL10遺伝子発現により、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、腫瘍等による疾患を予防し、又は治療することができる。
【0010】
本発明の一態様は、上記細菌を有効成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤である。
本発明の一態様を、上記細菌を有効成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤としたため、IL10遺伝子発現により、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、腫瘍等による疾患を予防し、又は治療することができる。
【0011】
本発明の一態様は、上記細菌の培養上清を主成分として含有する免疫応答制御亢進剤である。
本発明の一態様を、上記細菌の培養上清を主成分として含有する免疫応答制御亢進剤としたため、自然免疫と抗炎症作用をともに亢進させることができる。即ち、感染に抵抗する免疫力と、過剰免疫で生じる炎症を抑える免疫力の双方を高めることができる。
【0012】
本発明の一態様は、上記細菌を有効成分として含有する免疫応答制御亢進剤である。
本発明の一態様を、上記細菌を有効成分として含有する免疫応答制御亢進剤としたため、自然免疫と抗炎症作用をともに亢進させることができる。即ち、感染に抵抗する免疫力と、過剰免疫で生じる炎症を抑える免疫力の双方を高めることができる。
【0013】
本発明の一態様は、上記何れかの細菌又は上記何れかのIL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する製剤である。
本発明の一態様を、上記何れかの細菌又は上記何れかのIL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する製剤としたため、抗炎症作用剤として利用することができる。例えば医薬製剤、化粧品、食品、飲料等に利用できる。
【0014】
本発明の一態様は、上記何れかの細菌又は上記何れかの免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する製剤である。
本発明の一態様を、上記何れかの細菌又は上記何れかの免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する製剤としたため、免疫応答制御をより賦活化させる用途に利用することができる。例えば医薬製剤、食品、飲料等に利用できる。
【0015】
本発明の一態様は、上記細菌又は上記IL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する皮膚外用剤である。
本発明の一態様を、上記細菌又は上記IL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する皮膚外用剤としたため、抗炎症作用剤として利用することができ、より具体的にはデリケートゾーンのケア製品、産後のケア製品、又はスキンケア製品等のジェル製品、クリーム製品、化粧液等として利用することができる。
【0016】
本発明の一態様は、上記細菌又は上記免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する皮膚外用剤である。
本発明の一態様を、上記細菌又は上記免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する皮膚外用剤としたため、免疫応答制御をより賦活化させる用途に利用することができ、より具体的には炎症を生じた箇所へ塗布するジェル製品、クリーム製品、液状製品等として利用することができる。
【0017】
本発明の一態様は、上記細菌又は上記IL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する経口剤である。
本発明の一態様を、上記細菌又は上記IL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する経口剤としたため、抗炎症作用剤として利用することができ、より具体的には医薬品、食品、飲料等となる錠剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤等として利用することができる。
【0018】
本発明の一態様は、上記細菌又は上記免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する経口剤である。
本発明の一態様を、上記細菌又は上記免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する経口剤としたため、免疫応答制御をより賦活化させる用途に利用することができ、より具体的には医薬品、食品、飲料等となる錠剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤等として利用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、IL10遺伝子の発現を亢進させることができる。また、本発明によれば免疫応答制御を亢進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】各菌種の菌株ごとにIL10遺伝子発現量を比較して示す図である。
図2】各菌種の菌株ごとにTNFalpha遺伝子発現量を比較して示す図である。
図3】DL菌のTNFalpha遺伝子発現量とIL10遺伝子発現量の相関を示す図である。
図4】DL菌の菌株ごとにIL10遺伝子発現量を比較して示す図である。
図5】DL菌16菌株に基づくOD600値とIL10遺伝子発現量の相関を示す図である。
図6】DL菌16菌株に基づくIL1beta遺伝子発現量とIL10遺伝子発現量の相関を示す図である。
図7】DL菌16菌株に基づくTNFalpha遺伝子発現量とIL10遺伝子発現量の相関を示す図である。
図8】DL81の培養時間とIL10遺伝子発現量との関係を示す図である。
図9】DL81の培養時間とTNFalpha遺伝子発現量との関係を示す図である。
図10】DL81と他の菌株のIL10遺伝子発現量の相対値を示す図である。
図11】DL81と他の菌株のIL10遺伝子発現量を示す図である。
図12】DL81のIL10産生量の倍率変化(Fold-change)を示す図である。
図13】DL81上清による遺伝子発現量を示し、分図(A)は、CCR7遺伝子発現量を、分図(B)はCXCL2遺伝子発現量をそれぞれ示す。
図14】DL81上清によるBatf遺伝子発現量を示す。
図15】DL81上清による遺伝子発現量を示し、分図(A)は、CXCR4遺伝子発現量を、分図(B)はCCL22遺伝子発現量をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
抗炎症サイトカインであるインターロイキン10(以下「IL10」という)の遺伝子発現を亢進する発明の実施形態について詳しく説明する。より具体的にはIL10の遺伝子発現を亢進する細菌と、この細菌から得られる上清と、この細菌を含む混合液と、これらを用いたIL10遺伝子発現亢進剤と、これらを用いた皮膚外用剤及び経口剤等の製剤である。
【0022】
好適な実施形態において、IL10遺伝子発現を亢進する細菌にはラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属する細菌が挙げられ、特にDL81株がより好適に挙げられる。このDL81株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号:NITE P-03295、受託日:2020年9月30日として寄託されている。また、この菌株の16S rRNA塩基配列を配列番号1として配列表に示す。
【0023】
DL81株については、その16S rRNA遺伝子の塩基配列をデータベース上の配列と相同性検索を行って種を同定したところ、相同値が98%以上であったラクトバチルス・コレオホミニス種に属する菌株であることがわかった。なお、DL81株の菌学的特徴は、ラクトバチルス・コレオホミニスの菌学的特徴と同じである。
【0024】
DL81株の菌体は、通常の乳酸菌培養の手法によって培養することができ、培養物からの遠心分離等の手段によって分離、精製した菌体及び上清を利用することができる。
DL81株の菌体、又は菌体から調製した上清は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、安定化剤、湿潤剤等と適宜混合して、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、溶液剤、乳剤、クリーム等として、皮膚外用剤や経口剤等の製剤として調製することができる。
【0025】
そしてこれらの製剤は、抗炎症作用剤として、IL10の産生不足による場合のみならず、そうした場合に該当しない炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、腫瘍等による疾患を予防し、又は治療に用いることができる。
【実施例0026】
実験1:<産道内に特有の細菌の取得>
健常妊婦の産道内から採取した採取液をBL寒天培地にて嫌気培養(37℃、2日間)し、形成された代表的なコロニーを乳酸桿菌用のMRS液体培地に移してさらに嫌気培養(37℃、2日間)した後、-80℃下でグリセロールストックした。このようにしてストックした細菌からDNAを抽出し、シーケンス解析に供した。
【0027】
より具体的には、ストックしていた各菌株から形成されるコロニーをピペットチップで掻き取り、dHO 50μLに懸濁し、100mMのNaOHを50μL添加して、混合後、95℃で15分間処理を行なった。その後、1MTris-HCl(pH7.0)を11μL添加し、遠心後、上清を回収してDNA液とした。得られたDNA液をテンプレートに、Bacterial 16S rDNA PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて、メーカーのプロトコールに従って、シーケンス解析に供するPCR増幅産物を得た。
【0028】
PCR増幅産物の一部をアガロースゲル電気泳動(100V、30分間)に供し、目的とする増幅産物が得られているのかを確認した後、QIAquick PCR Purificatiuon Kit(QIAGEN社製)によってメーカーのプロトコール従って、PCR反応液からPCR増幅産物の精製を行なった。
【0029】
PCR増幅産物のシーケンス解析から得られた塩基配列を、配列編集ソフトのAqEを用いて編集を行い、各コロニーの16S rRNA遺伝子の塩基配列をデータベース上の配列と相同性検索を行って種を同定した。データベースとしては、NCBI BLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)とDDBJ(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.hyml)の2つのデータベースを用いた。結果として、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・ヴァギナリス(Lactobacillus vaginalis)、ラクトバチルス・フェカリス(Lactobacillus faecalis)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・プランタラム (Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)、その他未同定のラクトバチルス属に属する細菌が認められた。
【0030】
PCRによる菌株の同定や以下の実験で言及するリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析に用いたプライマーの配列情報を以下の表に示す。なお表中、参考文献aは、Hepatitis B Virus Surface Antigen Selectively Inhibits TLR2 Ligand-Induced IL-12 Production in Monocytes/ Macrophages by Interfering with JNK Activationであり、参考文献b~dは、OriGene社で公開している配列である。また、各プライマーの特異性はNCBI Primer-BLAST (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/index.cgi?LINK_LOC=BlastHome)によって解析して確認した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実験2:<IL10遺伝子発現>
産道内に特有な細菌の代謝産物における抗炎症サイトカインIL10遺伝子の発現に対する作用を検討した。
産道内から取得した上記菌株のうち、産道内に特有の細菌であるデーデルライン桿菌(DL菌)64菌株と、比較対象としてプロバイオティクスで有用とされるビフィドバクテリウム属5菌株、及びラクトバチルス属の11菌株について、マクロファージ様細胞を標的にIL10遺伝子発現量への影響を調べた。なお、ヒト単球由来の細胞株であるTHP-1細胞は広く免疫分野の研究で用いられている細胞株であり、薬剤処理によってマクロファージ様に分化誘導することが知られている。THP-1細胞から分化誘導させたマクロファージ様細胞は、M1型とM2型の特徴を併せ持った形質を示すことから、ここでもTHP-1細胞を用い、PMA濃度を200nM、処理時間を3日間とした条件で分化誘導させたマクロファージ様細胞を用いた。
【0034】
比較対象に用いたビフィドバクテリウム属の5菌株はそれぞれ、Bifidobacterium longum JCM 1217Bifidobacterium bifidum JCM 1255Bifidobacterium adolescentis JCM 1275Bifidobacterium breve JCM 1192Bifidobacterium longum subsp. infantis JCM1210である。
また、比較対象のラクトバチルス属の11菌株は、Lactobacillus acidophilus JCM 2124Lactobacillus casei JCM 1134Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM 20398Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130Lactobacillus delbrueckii JCM 1012Lactobacillus gasseri JCM 5344Lactobacillus brevis JCM 1059Lactobacillus helveticus JCM 1120Lactobacillus plantarum JCM 11125Lactobacillus salivarius JCM 1040Lactobacillus rhamnosus JCM 1136である。
【0035】
上記菌株について、それぞれMRS液体培地にて嫌気培養(37℃、2日間)し、得られた培養液を遠心(10、000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化させた。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮させ、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。
【0036】
上清濃縮液を処理したマクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求め、図1で示すグラフに表した。
【0037】
図1において、縦軸に各菌株の遺伝子発現量の相対値を示す。横軸については、「MRS」が培地のみのコントロールであり、「Bifidobacterium」がビフィドバクテリウム属であり、「Lactobacillus」がラクトバチルス属であり、「DL」が産道内に特有の細菌(上記64菌株)であって、グラフ中のドットが各菌株の遺伝子発現量の相対値を示し、また、グラフ中のバーは各種ごとの菌株の遺伝子発現量の相対値の平均値を示した。その結果、産道内から採取した上記64菌株の産道内特有の細菌の平均値は、比較のためのビフィドバクテリウム属5菌株の平均値、及びラクトバチルス属11菌株の平均値と比較してIL10遺伝子の発現を有意に上昇させることが見出された。また、64菌株の中にはIL10遺伝子発現量を10倍以上に上昇させる菌株が多く存在していることもわかった。こうしたことから、産道内に特有の細菌のいくつかは、マクロファージからのIL10産生を亢進させる。
【0038】
実験3:<TNFalpha遺伝子発現>
産道内に特有な細菌の代謝産物におけるTNFalpha遺伝子の発現に対する作用を検討した。
IL10遺伝子の発現に対する実験と同様に、上記産道内に特有の64菌株と、比較対象としてプロバイオティクスで有用とされるビフィドバクテリウム属5菌株、及びラクトバチルス属の11菌株を用い、マクロファージ様細胞を標的に炎症性サイトカインであるTNFalphaの遺伝子発現量への影響を上記と同様にして調べた。その結果を図2で示すグラフに表した。
【0039】
図2の表示の仕方も図1と同様であり、グラフ中のドットは、各菌株のTNFalpha遺伝子発現量の相対値を示す。また、各種ごとの菌株のTNFalpha遺伝子発現量の平均値をバーで示した。
炎症性サイトカインであるTNFalphaの遺伝子発現については、ビフィドバクテリウム属5菌株、及びラクトバチルス属11菌株と比較して、産道内特有の細菌64種について、有意な差異は見られなかった。しかしながら、前記64種のうちのいくつかの菌株については、コントロールと比較してTNFalphaの遺伝子発現を10倍程度上昇させる菌株も認められたことから、TNFalphaの遺伝子発現上昇によってパラクライン的にIL10遺伝子発現が引き起こされた可能性も考えられた。
【0040】
実験4:<IL10遺伝子発現とTNFalpha遺伝子発現の相関>
産道内から取得した64菌株によるIL10遺伝子発現量とTNFalpha遺伝子発現量との相関を調べた。縦軸にTNFalpha遺伝子発現量を、横軸にIL10遺伝子発現量に設定して、各菌株の両遺伝子発現量をプロットして近似曲線を描写し、R値を算出した。その結果を図3で示す。R値は0.011と非常に低く、両遺伝子発現量に相関関係は認められなかった。従って上記64菌株に関するIL10遺伝子発現亢進作用について、TNFalpha遺伝子発現量上昇によってパラクライン的にIL10遺伝子発現量が上昇したものではなく、上記64菌株の上清処理によってマクロファージによるIL10遺伝子発現が亢進したものと考えられる。
【0041】
実験5:<IL10遺伝子の発現を上昇させる菌株の探索>
上記実験2において、産道内特有の64菌株の中には、その上清処理において10倍以上にIL10遺伝子発現を上昇させた菌株もみつかったことから、その10倍以上にIL10遺伝子発現を上昇させた15株を対象にして、菌個体レベルでIL10遺伝子発現を亢進させる代謝産物を菌数に依存せずにより多く産生する有用な菌株の探索を行った。
【0042】
各菌株をそれぞれMRS液体培地にて嫌気培養(37℃、2日間)し、OD600による菌数定量を行った。また、得られた培養液を遠心(10、000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化させた。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮し、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。上清濃縮液を処理したマクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求め、図4で示すグラフに表した。なお、図4の縦軸には各菌株の遺伝子発現量の相対値を示す。また、横軸には産道から単離した株を示すが、「Ctrl」は未処理の条件であり、「MRS」は、MRS培地で処理した条件でのものを示す。
【0043】
図4で示すように、DL72とDL81として示した菌株においては、IL10遺伝子発現に対する優れた亢進性が認められた。上記シーケンス解析及びPCRによれば、相同値が98%以上となり、DL72は、ラクトバチルス・クリスパタスであり、DL72と名付けたものである。また、DL81は、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)であり、DL81と名付けたものである。
【0044】
また、全15菌株のうち、DL72とDL81以外の図4で示す13菌株は、次のとおりである。DL62、DL70、DL73、DL74、DL102、DL104及びDL106は、ラクトバチルス・クリスパタスであり、DL61、DL66、DL76、DL83及びDL154は、ラクトバチルス・ジェンセニイであり、DL77は、同定できなかった。
【0045】
実験6:<IL10遺伝子発現を亢進する産道内特有15菌株に基づくIL10遺伝子発現と他の因子との相関>
IL10遺伝子発現の程度を10倍以上に上昇させた上記15株において、IL10遺伝子発現上昇が細菌数に依存したものか、また他の遺伝子発現(TNFalpha又はIL1beta)に依存したものかを確認するために、これらの相関について検討した。
【0046】
図5には、縦軸をIL10遺伝子発現量、横軸をOD600値としたグラフを示す。図6には、縦軸をIL10遺伝子発現量、横軸をIL1beta遺伝子発現量としたグラフを示す。そして、図7には、縦軸をIL10遺伝子発現量、横軸をTNFalpha遺伝子発現量としたグラフを示す。これらのグラフにおいて、各値をプロットして近似曲線を描写し、R値を求めた。その結果、OD600値とのR値は0.37、IL1beta遺伝子発現量とのR値は0.63、TNFalpha遺伝子発現量とのR値は0.44であり、どの因子もIL10遺伝子発現量との相関性は低いことがわかった。なお、図6及び図7では、2遺伝子間の発現での相関性を比べているため、コントロールとMRS培地のみとした条件も加えたグラフとしている。これらの結果から、菌数ではなく各菌株の代謝産生量の違いによってIL10遺伝子発現量への作用が異なること、そして、IL1betaやTNFalphaといったIL10産生を誘導する炎症性サイトカインとの相関も見られないことから、産道内特有の菌株の上清には、マクロファージからのIL10産生を亢進させる代謝産物が含まれていることがわかった。
【0047】
実験7:<DL81の培養時間とIL10遺伝子発現との関係>
DL81の培養上清処理によってマクロファージ様細胞におけるIL10遺伝子発現が亢進されることから、より亢進作用を示す上清を得るために、DL81菌株の培養時間とIL10遺伝子の発現変動を検討した。
【0048】
MRS液体培地にて嫌気培養(37℃)で24、48、72時間培養し、得られた培養液を遠心(10、000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化させた。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮させ、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。上清濃縮液を処理したマクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求めた。そして、図8にはDL81菌株の培養時間(24時間、48時間、72時間)とIL10遺伝子発現量との関係を、図9にはDL81菌株の培養時間(24時間、48時間、72時間)とTNFalpha遺伝子発現量との関係をそれぞれ示した。
【0049】
その結果、図8で示すように、培養時間に依存的にIL10遺伝子発現量は有意に増加したのに対し、図9で示すように、TNFalphaについては培養時間に対して大きな差異は認められなかった。これらの結果から、IL10遺伝子発現上昇をさせる代謝産物は培養時間によって依存することが示唆された。
【0050】
実験8:<DL81の菌体からのIL10遺伝子発現>
DL81の培養上清処理によってマクロファージ様細胞におけるIL10遺伝子発現が亢進されることから、DL81菌体そのものにもIL10遺伝子発現亢進作用を有するのかについて検討を行なった。DL81が属する種は、基礎的な知見や報告が豊富にあり、詳細な性状が明確であるため、効果が確認できれば菌体自体での使用も有効であるからである。比較対象としてLactobacillus brevis JCM 1059Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130を用いて、DL81の菌体によるIL10遺伝子発現亢進作用の検討を実施した。
【0051】
MRS液体培地にて72時間、嫌気培養(37℃)し、得られた培養液を遠心(10000g、5分間、室温)後、上清を廃棄し、PBSを加えて遠心して上清を除去することで菌体ペレットを得た。得られた菌体ペレットをPBSで懸濁して菌体液を作製した。この菌体液の一部を測り取り、OD600値が0.9~1.2の各菌体ペレットを準備し、細胞用培養液(RPMI 1640、2mM Glutamine、10% Foetal Bovine Serum)で懸濁し、これを基準とした3段階の10倍希釈系列を調製してマクロファージ様細胞に添加処理を行なった。24時間後、マクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。
【0052】
これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求め、その値を対数変換し比較検討を行なった。
【0053】
これらの結果を図10に示す。図10では縦軸にIL10遺伝子発現量の相対値を、横軸にはLactobacillus brevis JCM 1059 を「LB」で、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130 を「LPP」で、DL72を「DL72」で、DL81を「DL81」で示している。これらの結果から、DL81、DL72、Lactobacillus brevis JCM 1059、及びLactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130の何れの菌株もIL10遺伝子発現を強く亢進させたが、Lactobacillus brevis JCM 1059Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130については、100倍に希釈した条件からIL10遺伝子発現亢進の作用がなくなるのに対し、DL81やDL72では、100倍希釈された条件でもIL10遺伝子発現亢進の作用を維持していることが認められた。このことから、DL81やDL72の菌体にもIL10遺伝子発現を亢進させる作用を有しており、その作用は他の乳酸菌よりも高いことが認められた。さらにDL81では、1000倍希釈された条件でもIL10遺伝子発現亢進作用を維持していることが認められ、低濃度でも有意にIL10遺伝子発現亢進作用を維持する結果となった。
【0054】
実験9:<DL81とラクトバチルス2株の培養上清によるIL10遺伝子発現亢進の比較>
DL81の培養上清処理によってマクロファージ様細胞におけるIL10遺伝子発現が亢進されたことから、抗炎症作用が知られているLactobacillus brevisLactobacillus paracasei subsp. paracaseiを比較対象にDL81によるIL10遺伝子発現亢進の優位性を検討した。
【0055】
DL72、DL81、Lactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)のそれぞれを、MRS液体培地にて72時間、嫌気培養(37℃)し、得られた培養液を遠心(10000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化させた。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮させ、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。
【0056】
上清濃縮液を処理したマクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求め、その値を対数変換し比較検討を行なった。また、MRS培地処理条件との有意差検定はt検定によって行い、p値が0.05以下の場合を有意差があるとして判定した。
【0057】
その結果、Lactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)及びLactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)のどちらの培養上清もIL10遺伝子発現を亢進させる傾向は見られたものの、MRS培地処理条件との間に有意差は認められなかったのに対し、DL72やDL81では、MRS培地処理条件に対して有意差が認められ、IL10遺伝子発現の亢進作用がLactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)及びLactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)よりも高いことが示された。その結果を図11に示す。なお、図11では縦軸には各菌株の遺伝子発現量の相対値を示す。また、横軸には実験対象株であるLactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)、Lactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)、DL72、及びDL81を示すが、「Ctrl」は未処理の条件であり、「MRS」は、MRS培地で処理した条件でのものを示す。このことから、DL72やDL81は、他の乳酸菌よりも優位にIL10遺伝子発現を亢進させ、高い抗炎症作用を有するものと考えられ、特にDL81はDL72よりもさらに高いIL10遺伝子発現亢進作用を有していると考えられる。
【0058】
実験10:<DL81培養上清によるタンパク質レベルでのIL10遺伝子発現亢進>
DL81の培養上清処理におけるIL10遺伝子発現に関して、タンパク質レベルでの評価も行った。
【0059】
Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)、Lactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)、DL72そして、DL81をMRS液体培地にて嫌気培養(37℃、72時間)し、得られた培養液を遠心(10000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化した。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮させ、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。なお、ネガティブコントロールとしてMRS液体培地のみの条件を設定し、同様にマクロファージ様細胞へ添加した(「MRS」)。24時間後、マクロファージ様細胞の培養液を回収し、培養液中に分泌されたIL10量を定量した。IL10の定量は、Human ProQuantum IL10 Immunoassay Kit(invitrogen社製)によって、メーカーのプロトコールに従って定量解析を行った。未処理条件のIL10量を基準として相対値を求め、それをグラフ(図12)に表して比較検討した。その結果、qPCRによる遺伝子発現解析による結果と同様に、DL81の上清処理によって細胞外に分泌されたIL10の量が最も有意に増加していることが観察され、タンパク質レベルでもDL81によってIL10が増加していることが認められ、DL81によるIL10発現亢進を強く支持した。なお図12では縦軸には未処理条件のIL10の量を基準とした相対値を示し、横軸には実験対象株であるLactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM 8130(「LPP」)、Lactobacillus brevis JCM 1059(「LB」)、DL72、DL81を示すが、「MRS」は、MRS培地で処理した条件でのものを示す。
【0060】
実験11:<DL81培養上清による免疫応答制御の亢進>
DL72培養上清やDL81培養上清が抗炎症作用だけでなく自然免疫に対しても作用するかを検証するために、生体防御を司るM1マクロファージのマーカー遺伝子であるCCR7とCXCL2、自然免疫において重要な役割を持つIL12の発現を促進する転写因子のBatf2、そして、抗炎症的に働くM2マクロファージのマーカー遺伝子であるCXCR4、CCL22の遺伝子発現解析を行なった。
【0061】
DL72、DL81のそれぞれをMRS液体培地にて72時間、嫌気培養(37℃)し、得られた培養液を遠心(10000g、5分間、室温)し、上清を回収後、0.22μmシリンジフィルターで菌体や交雑物の除去を行い清澄化させた。次に、清澄化した上清はAmicon-Ultra 0.5 3K(Millipore社製)によって限外濾過して5倍濃縮させ、その濃縮液が25倍希釈される濃度になる様にマクロファージ様細胞の培養液へ添加して24時間処理した。
【0062】
上清濃縮液を処理したマクロファージ様細胞から、ISOGEN II(日本ジーン社製)によってRNAを抽出し、AccuRT GenomicDNA Removal Kit(abm社製)でゲノムDNAを除去した後、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO社製)で逆転写を行い、cDNAを合成した。これをテンプレートにTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)を用いて、CFX ConnectTM Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社製)でリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの反応条件は、98℃・1分間で初期変性させた後、95℃・15秒、60℃・30秒を40サイクル反応させた。遺伝子発現の定量は、リファレンス遺伝子としてbeta-actinを用いて遺伝子発現量を補正し、ΔΔCt法によってコントロールの遺伝子発現量から算出した相対値を求め、その値を対数変換し比較検討を行なった。
【0063】
上記リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析に用いたプライマーの配列情報を以下の表3に示す。なお表3中の備考eは、CCR7又はCXCR4のそれぞれのプライマー配列がOriGene社の公開配列であることを示し、備考fは、Batf2のプライマー配列が、Decrease in invasion of HTR-8/SVneo trophoblastic cells by interferon gamma involves cross-communication of STAT1 and BATF2 that regulates the expression of JUN. (S.Verma et al., Cell Adhesion & Migration, 2018)からの引用であることを示す。また、CXCL2とCCL22は、タカラバイオ社のPrimerArray Cytokine-cytokine receptor interaction (Human)に搭載さているプライマーを用いたが、その配列情報は未公開である。
【0064】
【表3】
【0065】
これらの結果を図13図15に示す。これらの図から明らかなように、DL81培養上清は、M1及びM2マーカー遺伝子がともに有意に発現上昇することが認められ、その程度はDL72培養上清よりも大きく、DL81培養上清は自然免疫と抗炎症作用をともに亢進させることが示された。よって、DL81培養上清は、マクロファージを介した免疫応答制御を亢進させる作用を有することがわかった。従って、ウイルスや細菌への感染に抵抗する免疫力と、炎症が過剰に起こりアレルギーや自己免疫疾患を発症することを防ぐ免疫力の双方を亢進する免疫応答制御亢進剤(又は「免疫賦活化剤」ともいう)として利用できる。
【0066】
実験12:<DL81培養上清原液の製造>
凍結保管したDL81菌を解凍して得た菌液を植菌重量が培地重量の0.1wt%となるように豆乳様培地(グルコース0.6%、酵母エキス0.5%、脱脂粉乳2.8%、大豆粉7.7%、消泡剤0.01%、残部水(各重量%))に加えて72時間培養し、pH4.5~5.5とした。そして得られた培養液を遠心し、上清を回収後、清澄化し、さらに限外濾過して5倍濃縮液を製造し、その後の各種製剤を製造するためのDL81培養上清原液とした。
【0067】
実験13:<DL81培養上清原液からの各種製剤の製造>
1-1.液状製剤又はローション状製剤の製造(1)
80wt%の蒸留水、10wt%のアルコール、数wt%のグリセリンに香料、乳化剤、防腐剤を配合した希釈液に、上記DL81培養上清原液を加えて、その合計量のうちDL81培養上清原液が4wt%となるようにしてローション状製剤を得た。また、グリセリンの含量を蒸留水で代替して液状製剤を得た。
このローション状製剤又は液状製剤は、そのままローション又は化粧水として用いることで、肌用、デリケートゾーン周辺用のケア製剤として適用できる。
【0068】
1-2.液状製剤又はローション状製剤の製造(2)
95wt%の豆乳に、甘味料、砂糖等を配合した希釈液に、上記DL81培養上清原液を加えて、その合計量のうちDL81培養上清原液が4wt%となるようにしてドリンク剤を得た。
このドリンク剤を飲料として、身体の免疫を活発にし、外敵や異物の侵入から身を守る作用を向上させる免疫賦活化剤として適用できる。
【0069】
2.クリーム製剤の製造
ワセリン、オリーブオイル、エタノール、顔料に香料、乳化剤、防腐剤を配合したクリームに、上記DL81培養上清原液を加えて、その合計量のうちDL81培養上清原液が4wt%となるようにしてクリーム状製剤を得た。このクリーム状製剤は、そのままクリーム製品として、肌用、デリケートゾーン周辺用のケア製剤として適用できる。また、炎症部位に塗布する抗炎症剤として適用できる。
【0070】
3.錠剤の製造
デンプン及びデンプン糊に上記DL81培養上清原液を加えて、その合計量のうちDL81培養上清原液が4wt%となるようにし成形し錠剤を得た。この錠剤は経口剤として、アトピー等の皮膚病に対するケア製剤、外傷や消化器官内等に対する抗炎症製剤として、また抗感染と抗アレルギーの両方の免疫力を高める免疫賦活化剤として適用できる。
【0071】
4.カプセル剤の製造
上記液状製剤、ローション状製剤、クリーム製剤は、カプセルに詰めてカプセル化することで、膣内への挿入剤として産後の膣ケア製剤として適用できる。また、経口剤として、アトピー等の皮膚病に対するケア製剤、外傷や消化器内等に対する抗炎症製剤として、また抗感染と抗アレルギーの両方の免疫力を高める免疫賦活化剤として適用できる。
【0072】
実験14:<DL81菌体含有液の製造>
凍結保管したDL81菌を解凍して得た菌液を植菌重量が培地重量の0.1wt%となるようにMRS液体培地に加えて72時間培養し、OD600を4.5~5.0とした。
そして得られた培養液を遠心し、上清を廃棄し、菌体ペレットを得た。そして、この菌体ペレットをPBSで希釈して、その後の各種製剤を製造するためのDL81菌体含有液とした。このDL81菌体含有液中には、DL81の生菌が含まれる。
【0073】
実験15:<DL81菌体含有液からの各種製剤の製造>
1-1.液状製剤又はローション状製剤の製造(1)
80wt%の蒸留水、10wt%のアルコール、数wt%のグリセリンに香料、乳化剤、防腐剤を配合した希釈液に、上記DL81菌体含有液を加えて、その合計量1gのうちDL81の菌体が1×10~5×10個含まれるようにしてローション状製剤を得た。また、グリセリンの含量を蒸留水で代替して液状製剤を得た。
このローション状製剤又は液状製剤は、そのままローション又は化粧水として用いることで、肌用、デリケートゾーン周辺用のケア製剤として適用できる。
【0074】
1-2.液状製剤又はローション状製剤の製造(2)
95wt%の豆乳に、甘味料、砂糖等を配合した希釈液に、上記DL81培養上清原液を加えて、その合計量のうちDL81培養上清原液が4wt%となるようにしてドリンク剤を得た。
このドリンク剤を飲料として、身体の免疫を活発にし、外敵や異物の侵入から身を守る作用を向上させる免疫賦活化剤として適用できる。
【0075】
2.クリーム製剤の製造
ワセリン、オリーブオイル、エタノール、顔料に香料、乳化剤、防腐剤を配合したクリームに、上記DL81菌体含有液を加えて、その合計量1gのうちDL81の菌体が1×10~5×10個含まれるようにしてクリーム状製剤を得た。このクリーム状製剤は、そのままクリーム製品として、肌用、デリケートゾーン周辺用のケア製剤として適用できる。また、炎症部位に塗布する抗炎症剤として適用できる。
【0076】
3.錠剤の製造
デンプン及びデンプン糊に上記DL81菌体含有液を加えて、その合計量1gのうちDL81の菌体が1×10~5×10個含まれるようにして成形し錠剤を得た。この錠剤は経口剤として、アトピー等の皮膚病に対するケア製剤、外傷や消化器官内等に対する抗炎症製剤として、また抗感染と抗アレルギーの両方の免疫力を高める免疫賦活化剤として適用できる。
【0077】
4.カプセル剤の製造
上記液状製剤、ローション状製剤、クリーム製剤は、カプセルに詰めてカプセル化することで、膣内への挿入剤として産後の膣ケア製剤として適用できる。また、経口剤として、アトピー等の皮膚病に対するケア製剤、外傷や消化器官内等に対する抗炎症製剤として、また抗感染と抗アレルギーの両方の免疫力を高める免疫賦活化剤として適用できる。
【0078】
実験16:<DL81培養上清原液及びDL81菌体含有液からの各種製剤の製造>
上記DL81培養上清原液及び上記DL81菌体含有液を適当量混合し、上記有効量を含むようにした以外は、上記各種製剤の製造方法と同様にして、液状製剤、ローション状製剤、錠剤、カプセル剤を製造した。より具体的には、DL81培養上清原液と上記DL81菌体含有液の寄与割合を決定し、その寄与割合に応じてそれぞれの有効成分量を決定して配合するように調製した。
【0079】
実験17:<DL81以外の菌株からの各種製剤の製造>
上記実験5で示す15株のうち、種が特定されなかった1株と、DL81株を除く13菌株についても、上記DL81培養上清原液の製造方法や、上記DL81菌体含有液の製造方法と同様にして、これらの何れか一株、及びDL81菌株を含めた何れかの複数株の培養上清原液や、菌体含有液を製造した。また、上記製剤の製造方法と同様にして、これらの培養上清原液や、菌体含有液を含む製剤を製造した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022098099000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL10遺伝子発現を亢進させるデーデルライン桿菌であり、
前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE BP-03295として国際寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株である細菌。
【請求項2】
前記DL81菌株がIL10遺伝子発現亢進作用及び免疫応答制御亢進作用を有する請求項1記載の細菌。
【請求項3】
IL10遺伝子発現を亢進させるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の組合せからなる請求項1記載の細菌。
【請求項4】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌の培養上清を主成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項5】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌を有効成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項6】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌又は請求項4若しくは請求項5記載のIL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項7】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌の培養上清を主成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項8】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌を有効成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項9】
請求項1~請求項3何れか1項記載の細菌又は請求項7若しくは請求項8記載の免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項10】
皮膚外用剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。
【請求項11】
経口剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様は、前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE BP-03295として国際寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株(細菌)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様によれば、前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE BP-03295として国際寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株(細菌)であるため、ヒトの産道から取得できるラクトバチルス・コレオホミニス種に属する細菌が、IL10遺伝子の発現を亢進させることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
好適な実施形態において、IL10遺伝子発現を亢進する細菌にはラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属する細菌が挙げられ、特にDL81株がより好適に挙げられる。このDL81株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号:NITE BP-03295(国内受託日:2020年9月30日、ブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求の受領日:2021年3月25日)として国際寄託されている。また、この菌株の16S rRNA塩基配列を配列番号1として配列表に示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL10遺伝子発現を亢進させるデーデルライン桿菌であり、
前記デーデルライン桿菌が、IL10遺伝子発現を亢進させる受託番号:NITE BP-03295として国際寄託されたラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)種に属するDL81菌株である細菌。
【請求項2】
前記DL81菌株がIL10遺伝子発現亢進作用及び免疫応答制御亢進作用を有する請求項1記載の細菌。
【請求項3】
IL10遺伝子発現を亢進させるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、請求項1記載のラクトバチルス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)の組合せからなる細菌群。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌又は請求項3記載の細菌群の培養上清を主成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項5】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌又は請求項3記載の細菌群を有効成分として含有するIL10遺伝子発現亢進剤。
【請求項6】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌、請求項3記載の細菌群、又は請求項4若しくは請求項5記載のIL10遺伝子発現亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項7】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌又は請求項3記載の細菌群の培養上清を主成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項8】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌又は請求項3記載の細菌群を有効成分として含有する免疫応答制御亢進剤。
【請求項9】
請求項1若しくは請求項2記載の細菌、請求項3記載の細菌群、又は請求項7若しくは請求項8記載の免疫応答制御亢進剤を有効成分として含有する製剤。
【請求項10】
皮膚外用剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。
【請求項11】
経口剤である請求項6又は請求項9記載の製剤。