(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098103
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20220624BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220624BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20220624BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220624BHJP
C08J 9/30 20060101ALI20220624BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
C08G18/38 014
C08G18/00 G
C08J9/30 CFF
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211459
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】今野 智之
(72)【発明者】
【氏名】清水 紳司
【テーマコード(参考)】
3C158
4F074
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5F057
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】本発明は、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にするとともに、ポア径を均一に制御することが可能な研磨パッドを提供する。
【解決手段】本発明に係る研磨パッドは、多数のポアが形成されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、下記(1)及び(2)の要件を満たす。
(1)前記ポアへの純水の充填率が80%以上である。
(2)前記ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のポアが形成されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂発泡体が、下記(1)及び(2)の要件を満たす、研磨パッド。
(1)前記ポアへの純水の充填率が80%以上である。
(2)前記ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下である。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、前記ポアの累積体積50%径が150μm以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、空隙率が45~75%である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)を含むポリウレタン樹脂組成物を硬化した硬化物であり、
前記ポリウレタン樹脂組成物が、さらに、非相溶的に分散した整泡剤を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板として用いられるシリコンウェーハ等の被研磨物の鏡面研磨処理では、ポリウレタン樹脂発泡体によって形成された発泡ウレタン系の研磨パッドが広く用いられている。近年、半導体チップ製品の歩留まり向上を目的として、被研磨物の平坦化特性への要求が益々高くなってきている。
【0003】
発泡ウレタン系の研磨パッドは、多数の略球状の空隙(以下、「ポア」ともいう)を有している。特に、表面で開口するポアは、スラリーの保持、被研磨物への微小な接触点の形成等の機能を担っている。ポアの構造は、大きさ及びその個数分布、独立気泡及び連続気泡(以下、「連通ポア」ともいう)の割合等によって特徴づけられ、これらの制御に関しては種々の研磨パッドが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、連通ポアの割合を調整することで、スラリー保持性と研磨層の剛性とのバランスを良好にした研磨パッドが開示されている。また、特許文献2では、連通ポアの割合を高くすることにより、被研磨物の平坦性を改善するとともに、端面だれを抑制した研磨パッドが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、粗大なポアを含まず、均一なポア径となるように未発泡の加熱膨張性微小球状体を用いることで、端面だれを抑制した研磨パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-193057号公報
【特許文献2】特開2011-020234号公報
【特許文献3】特開2010-274361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2の研磨パッドでは、ポアの大きさが制御されておらず、均一なポア径とならないため、ポア周辺の樹脂量にばらつきが生じる。その結果、研磨中の変形量、ひいては被研磨物への応力も局所的にばらつきが生じるため、被研磨物のサイト平坦性悪化の要因となり得る。
【0008】
一方で、均一なポア径となるように未発泡の加熱膨張性微小球状体を用いた特許文献3の研磨パッドは、加熱膨張性微小球状体の殻によって、発泡体は内部に少量のスラリーしか保持することができない。これにより、研磨中にスラリーがパッド表面に供給されても、被研磨物の摺動により多くが排出されてしまう。その結果、被研磨物の中央部ほどスラリーが枯渇して研磨速度が低下し、中央部が凸な形状になりやすいため、被研磨物のグローバル平坦性が悪化するという問題がある。
【0009】
このように、被研磨物のサイト平坦性及びグローバル平坦性の両方を改善するために、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にするとともに、ポア径を均一に制御することは困難であった。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にするとともに、ポア径を均一に制御することが可能な研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る研磨パッドは、多数のポアが形成されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、下記(1)及び(2)の要件を満たす。
(1)前記ポアへの純水の充填率が80%以上である。
(2)前記ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下である。
【0012】
斯かる研磨パッドは、ポアへの純水の充填率が80%以上であるため、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にすることができる。これにより、研磨中の被研磨物の中央部にも十分にスラリーを供給することができ、研磨速度の低下を抑制することができるため、被研磨物のグローバル平坦性を高めることができると言える。
【0013】
また、斯かる研磨パッドは、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下であるため、ポア径を均一に制御することができる。これにより、被研磨物への局所的な応力のばらつきを抑制して、被研磨物のサイト平坦性を高めることができると言える。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にするとともに、ポア径を均一に制御することが可能な研磨パッドを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態に係る研磨パッドは、多数のポアが形成されたポリウレタン樹脂発泡体を備える。前記ポリウレタン樹脂発泡体は、下記(1)及び(2)の要件を満たす。
(1)前記ポアへの純水の充填率が80%以上である。
(2)前記ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下である。
【0017】
ポアへの純水の充填率は、ポアの全体積における、浸水下においてポアに侵入した水体積の割合であり、研磨中のスラリー保持力を示す。連通ポアの割合が高いほど、ポアへの純水の充填率が大きくなり、スラリーの保持性を良好にする。
【0018】
前記ポリウレタン樹脂発泡体において、ポアへの純水の充填率は、80%以上であり、90%以上であることが好ましい。
【0019】
ポアへの純水の充填率は、パッドみかけ密度(以下、通常密度ρa)、及び、液中パッドみかけ密度(以下、液中密度ρb)を用いて算出することができる。ここで、通常密度ρaは、パッド重量をパッド体積で除することで得られる。また、液中密度ρbは、純水に浸漬したときの液中重量W’から、アルキメデスの原理を用いて、下記(i)式により得られる。このとき、パッドを純水に浸漬しただけでは、表面張力によってポアを十分濡らすために長い時間を要してしまう。そこで、純水への浸漬は、-0.1MPaの減圧下で10min行う。
【0020】
【数1】
なお、(i)式中、Wは乾燥重量、W’は液中重量、ρ
lqは溶液密度を意味する。
【0021】
連通ポアや厚み方向に貫通するような粗大ポアが多く、パッド内部に独立した発泡がない場合、液中密度は樹脂真密度と同等となる。一方、パッド内部に独立した発泡ばかりある場合、内包する気泡由来の浮力により液中密度が小さくなる。この違いから、充填率を算出することができる。具体的には、充填率は、下記(ii)式により得られる。
【0022】
【数2】
なお、(ii)式中、aは充填率、φは空隙率(ポア体積率)を意味する。
【0023】
前記ポリウレタン樹脂発泡体において、空隙率は、連通ポアの割合を高くするとともに、パッドの剛性を向上させて平坦性を良好にする観点から、45~75%であることが好ましく、50~70%であることがより好ましい。なお、空隙率は、パッド体積に対する樹脂等を除いたポア体積の割合であり、X線CTスキャン装置を用いて測定することができる。すなわち、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-I)を用いて、研磨面に垂直な方向のポリウレタン樹脂発泡体の断面画像(測定対象範囲としては、例えば、1.6mm×1.6mm×0.7mm)を撮影する。そして、画像処理ソフトウェア(例えば、VOLUME GRAPHICS株式会社製のVGStudioMAX 2.1)で前記断面画像を2値化処理し、ポア部分とマトリクス部分(ポア部分以外の部分)とを明確に分ける。次に、各ポアの体積を総和することで得たポア部分の体積を測定対象範囲の体積で除することで空隙率を得ることができる。
【0024】
ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差は、ポア体積に基づいた分布の幅を示す。累積体積84%径及び累積体積16%径は、ポアを小さい順に並べて体積を累積したときに、ポア全体積のそれぞれ84%、16%となるときの径を意味する。この差が小さい方が体積基準で分布幅が狭いと言え、すなわち、ポア径を均一に制御することができる。なお、ポアの累積体積84%径及び累積体積16%径は、X線CTスキャン装置を用いて各ポア体積を測定することにより算出することができる。すなわち、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-I)を用いて、研磨面に垂直な方向のポリウレタン樹脂発泡体の断面画像(測定対象範囲としては、例えば、1.6mm×1.6mm×0.7mm)を撮影する。そして、画像処理ソフトウェア(例えば、VOLUME GRAPHICS株式会社製のVGStudioMAX 2.1)で前記断面画像を2値化処理し、ポア部分とマトリクス部分(ポア部分以外の部分)とを明確に分ける。次に、各ポアの体積を測定し、小さい順に並べて体積を累積し、全ポア部分の体積で除したときに、それぞれ84%、16%に到達するポア体積を特定する。このポア体積と同じ体積の真球の直径を累積体積84%径及び累積体積16%径とする。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂発泡体において、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差は、120μm以下であり、110μm以下であることが好ましい。一方で、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差は、20μm以上であることが好ましい。
【0026】
前記ポリウレタン樹脂発泡体において、ポアの累積体積50%径は、150μm以下であることが好ましい。斯かる構成により、ポア周辺の樹脂量を小さくして、表層において被研磨物と樹脂との間に研磨くずが噛みこむことを抑制するため、傷の発生を低減させることができる。一方で、ポアの累積体積50%径は、研磨中の樹脂の伸びによる開口ポアの潰れを抑制する観点から、30μm以上であることが好ましい。なお、ポアの累積体積50%径は、前記累積体積84%径と累積体積16%径と同様にX線CTスキャン装置を用いて算出することができる。
【0027】
累積体積50%径を用いてポアを評価することにより、従来の数平均径を用いた評価に比べて、占有体積の大きい大径ポアの影響を考慮することができる。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリウレタン樹脂組成物を硬化した硬化物である。前記ポリウレタン樹脂組成物は、活性水素を含む化合物(以下、「活性水素化合物」ともいう。)と、イソシアネート基を含む化合物(以下、「イソシアネート化合物」ともいう。)と、を含む。すなわち、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、活性水素化合物の第1の構成単位とイソシアネート化合物の第2の構成単位とがウレタン結合して、交互に繰り返した構造を有するポリウレタン樹脂を含む。
【0029】
前記活性水素化合物は、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を分子内に有する有機化合物である。該活性水素基として、具体的には、ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、チオール基等の官能基が挙げられる。前記活性水素化合物は、分子中に該官能基を1種のみ有していてもよいし、複数種有していてもよい。
【0030】
前記活性水素化合物としては、例えば、分子中に複数のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、分子内に複数の第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物等が挙げられる。
【0031】
前記ポリオール化合物としては、例えば、ポリオールモノマー、ポリオールポリマー等が挙げられる。
【0032】
前記ポリオールモノマーとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐脂肪族グリコール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオール等が挙げられる。
【0033】
前記ポリオールモノマーとしては、反応時の強度がより高くなりやすいとともに、製造されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドの剛性がより高くなりやすく、かつ、比較的安価であるという観点から、エチレングリコール又はジエチレングリコールであることが好ましい。
【0034】
前記ポリオールポリマーとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。なお、ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーも挙げられる。
【0035】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等が挙げられる。
【0036】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられる。また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応混合物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0037】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオール等が挙げられる。
【0038】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0039】
前記ポリオール化合物としては、その他に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0040】
前記ポリアミン化合物としては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレン ビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン等が挙げられる。
【0041】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0042】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。また、前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物等が挙げられる。
【0044】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物として、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0045】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0046】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
前記ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとが結合されてなるポリマーであって、末端基としてイソシアネート基を有する。
【0048】
本実施形態に係る研磨パッドの一態様として、前記ポリウレタン樹脂組成物は、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を含むことが好ましい。また、該ポリウレタン樹脂組成物は、さらに、非相溶的に分散した整泡剤を含むことが好ましい。なお、「非相溶的」とは、125℃で融解したMOCAに整泡剤を10質量%添加した際に、該整泡剤が非相溶であることを意味する。
【0049】
このような整泡剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、整泡剤は、泡の安定化及び微細化の観点から、シリコーン系界面活性剤であることが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0050】
前記整泡剤は、反応初期において、ポリウレタン樹脂組成物が低粘度下であるときは、ポリウレタン樹脂組成物の分散を補助すると考えられる。一方、反応後期において、ポリウレタン樹脂組成物が高粘度であるときは、ミクロ相分離が進行し、MOCAを含むハードセグメントの凝集部が生起する。これが泡膜に接すると、非相溶性によりその部分における整泡剤濃度が低下して不安定化する。これにより、発泡反応の進行に伴う気泡内圧の増大も相まって、そこから隣接した気泡と連通しやすくなると考えられる。ただし、ポリウレタン樹脂組成物が十分に高粘度化しているため、気泡同士が合一して粗大化するには至らないと考えられる。したがって、前記ポリウレタン樹脂組成物が前記整泡剤を含むことにより、微細なポアを維持したまま、該ポアが連通した構造が得られると考えられる。
【0051】
前記イソシアネート化合物がウレタンプレポリマーである場合、前記整泡剤の含有量は、前記ウレタンプレポリマーに対して、0.2~5質量%であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記の如く構成されているが、次に、本実施形態に係る研磨パッドの製造方法の一例について説明する。
【0053】
本実施形態に係る研磨パッドは、例えば、プレポリマー法で製造することができる。具体的には、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、発泡剤として水と、整泡剤と、硬化剤として活性水素化合物と、触媒と、を混合して重合させることにより、ポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドを得ることができる。
【0054】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、シリコンウェーハ、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0056】
即ち、本実施形態に係る研磨パッドは、多数のポアが形成されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、下記(1)及び(2)の要件を満たす。
(1)前記ポアへの純水の充填率が80%以上である。
(2)前記ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下である。
【0057】
斯かる研磨パッドは、ポアへの純水の充填率が80%以上であるため、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にすることができる。これにより、研磨中の被研磨物の中央部にも十分にスラリーを供給することができ、研磨速度の低下を抑制することができるため、被研磨物のグローバル平坦性を高めることができると言える。
【0058】
また、斯かる研磨パッドは、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下であるため、ポア径を均一に制御することができる。これにより、被研磨物への局所的な応力のばらつきを抑制して、被研磨物のサイト平坦性を高めることができると言える。
【0059】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によっても限定されるものでもない。本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0061】
(実施例1~6)
プレポリマーと、発泡剤として水と、整泡剤と、硬化剤と、触媒と、を非開放系にて撹拌羽根を用いて混合して、プレポリマーを重合させることにより、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッド(φ25mm×厚1.3mm)を得た。上述の材料は、具体的に以下のものを用いた。なお、攪拌は、空気巻き込みにより粗大ポアが入らないように、非開放系で行った。また、各実施例における整泡剤は、硬化剤に対して非相溶的に分散していた。
プレポリマー:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とトリレンジイソシアネート(TDI)とが結合されてなり、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー
整泡剤:シリコーン整泡剤SZ-1671(東レ・ダウコーニング社製)
硬化剤:4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)
触媒:3級アミン系触媒
【0062】
(比較例1)
硬化剤に対して相溶的に分散した整泡剤を用いたこと以外は、実施例1と同様に研磨パッドを得た。整泡剤は、具体的に以下のものを用いた。
整泡剤:シリコーン整泡剤SF-2937F(東レ・ダウコーニング社製)
【0063】
(比較例2及び5)
整泡剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に研磨パッドを得た。
【0064】
(比較例3)
開放系で攪拌を行ったこと以外は、比較例2と同様に研磨パッドを得た。
【0065】
(比較例4)
開放系で攪拌を行ったこと以外は、比較例1と同様に研磨パッドを得た。
【0066】
各実施例及び比較例の研磨パッドにおけるポアへの純水の充填率、及び、ポアの各累積体積は、上述の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0067】
各実施例及び比較例の研磨パッドを用いて、下記の研磨条件で被研磨物の研磨を行った。
被研磨物:Etched wafer
研磨機:DMS 20B-5P-4D、Speed FAM社製
スラリーの流量:5L/min
スラリータイプ:NP6610を水で希釈したもの(NP6610:水=1:30(体積比))
【0068】
平坦性の評価は、ナノメトロ300TT-A(黒田精工社製)を用いて、GBIR(グローバル・バックサイド・アイデアル・レンジ)比、及び、SFQR(サイト・フロント・リースト・スクウエア)比を測定することにより行った。なお、GBIR比は、グローバル平坦性を示し、周縁部を除いて画定される全ウエハ表面全体に対するものである。一方で、SFQR比は、サイト平坦性を示し、ウエハの或る限られた領域の平坦性に関するもので、作り込まれる半導体部品の領域に概ね相当するものである。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1の結果から分かるように、各実施例の研磨パッドは、ポアへの純水の充填率が80%以上であるため、連通ポアの割合を高くしてスラリーの保持性を良好にすることができる。また、各実施例の研磨パッドは、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μm以下であるため、ポア径を均一に制御することができる。
【0071】
実施例1及び2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす研磨パッドは、被研磨物のグローバル平坦性及びサイト平坦性を高めることができる。
【0072】
一方で、各比較例の研磨パッドは、ポアへの純水の充填率が80%未満であるため、スラリーを良好に保持することができない。また、比較例3及び4の研磨パッドは、ポアの累積体積84%径と累積体積16%径の差が120μmを超えるため、ポア径を均一に制御することができない。
【0073】
比較例1,2及び4の結果から分かるように、本発明の構成要件を満たさない研磨パッドは、被研磨物のグローバル平坦性及びサイト平坦性を高めることができない。