(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098119
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/53 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
F16L37/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211477
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】植松 貴俊
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC03
3J106BC11
3J106BD07
3J106BE40
3J106DA18
(57)【要約】
【課題】調心作用をもたらすための環状弾性部材の大きさに対して調心可能範囲を広くすることが可能となる管継手部材を提供する。
【解決手段】当該管継手における雌型管継手部材2は、内部空間12を有する筒状の外側部材14と、内部空間12内に配置された調心コイル部材16と、内部空間12内において調心コイル部材16の内側に配置された内側部材18と、を備える。調心コイル部材16は、外側部材14の内周面26に係合する大径巻き部48と、内側部材18の外周面52に係合する小径巻き部46とを有し、小径巻き部46が大径巻き部48に対して径方向に変位するように弾性変形可能となっている。対応する雄型管継手部材3を連結するための挿入通路40を有する内側部材18は、調心コイル部材16を弾性変形させながら外側部材14に対して径方向に変位して、雄型管継手部材3に対して調心されるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応管継手部材に着脱可能に連結される管継手部材であって、
前端開口から後方に延びる内部空間を有する管状の外側部材と、
弾性線材をコイル状に巻回した調心コイル部材であって、大径巻き部及び小径巻き部を有し、該内部空間内において該大径巻き部が該外側部材の内周面に係合した状態で配置されて、該小径巻き部が該大径巻き部に対して径方向に変位するように弾性変形可能とされた調心コイル部材と、
外周面、及び対応管継手部材に連結される連結部を有し、該内部空間内において該外周面が該調心コイル部材の該小径巻き部に係合した状態で配置され、該調心コイル部材を弾性変形させながら該外側部材に対して該径方向に変位可能とされた内側部材と、
を備える、管継手部材。
【請求項2】
該調心コイル部材が、該大径巻き部と該小径巻き部とのうちの一方を少なくとも2つ備え、該大径巻き部と該小径巻き部とのうちの他方が該一方の間に形成されている、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項3】
該内側部材の該連結部が、該対応管継手部材を受け入れる挿入通路であり、該挿入通路の前端が前方に向かって拡径した傾斜面とされている、請求項1又は2に記載の管継手部材。
【請求項4】
該外側部材が、該内部空間の該内周面の後方位置で径方向内側に延びて前方に面する密封係合面と、該密封係合面から後方に延びる流体通路とを有し、該内側部材の後端面が該密封係合面に密封係合するようにされた、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項5】
該外側部材が、該内部空間の該内周面の前方位置で該前端開口に向かって径方向内側に延びて後方に面する第1係止面を有し、該内側部材が、該第1係止面よりも後方位置で該第1係止面と対向して前方に面する第2係止面を有しており、
該前端開口よりも大きい外径を有し、該第1係止面と該第2係止面との間に挟持されて該内側部材とともに該径方向に変位する環状部材であって、該調心コイル部材の前端部に係合して該調心コイル部材を該内側部材の該外周面上に保持するようにされた環状部材をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管継手部材と、
該管継手部材の該連結部に連結される対応管継手部材と、
からなる管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手部材と対応管継手部材とからなる管継手に関し、より詳細には管継手部材が調心機能を有する管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
工業設備において、2つの配管同士を連結するために管継手が使用される。管継手は雌型管継手部材とそれに対応する雄型管継手部材とからなり、両管継手部材の中心位置を合わせた状態で雌型管継手部材に雄型管継手部材を挿入することにより連結が行われる。しかしながら、両管継手部材が機械装置に固定されていて機械装置の駆動によって自動的に接続が行われる場合には、機械装置の位置ズレや管継手部材の寸法誤差などの影響により、両管継手部材の中心位置が正確に合わず、接続時に管継手部材に大きな負荷が作用したり場合によっては接続ができなくなったりすることがある。同様に、1つの部材に複数の管継手部材が取り付けられている場合にも、管継手部材の寸法誤差や組み立て誤差などにより、相互に連結される幾つかの組の管継手部材同士の中心位置が正確に合わないことがある。このような問題に対応するために、従来から、雌型管継手部材を外側部材とその中に配置される内側部材とからなる構造とし、外側部材と内側部材との間にゴム材料で形成されたOリングを配置して、Oリングの弾性変形により内側部材が外側部材に対して径方向に変位可能としたものが開発されている。これによれば、雌型管継手部材と雄型管継手部材の中心位置が多少ずれていても、雌型管継手部材の内側部材が雄型管継手部材の中心位置に合うように径方向に変位することにより両管継手部材同士の調心が行われて、適切な連結を行うことが可能となる。さらには、より安定した調心作用を持たせるために、ゴム製のOリングに代えて、金属製のコイルバネを環状に湾曲させた金属コイルバネ環を使用したものもある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Oリングや金属コイルバネ環のような環状弾性部材をその外径と内径との間で押し潰すようにして変形させる従来の構造においては、環状部材の変形量を大きくすることが難しく、よって調心可能な範囲が狭くなる。大きな変形量を得るためには外径と内径との間の幅を大きくすればよいが、そうすると管継手部材が大型化してしまう。
【0005】
そこで本発明は、調心作用をもたらすための環状弾性部材の大きさに対して調心可能範囲を広くすることが可能となる管継手部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
対応管継手部材に着脱可能に連結される管継手部材であって、
前端開口から後方に延びる内部空間を有する管状の外側部材と、
弾性線材をコイル状に巻回した調心コイル部材であって、大径巻き部及び小径巻き部を有し、該内部空間内において該大径巻き部が該外側部材の内周面に係合した状態で配置されて、該小径巻き部が該大径巻き部に対して径方向に変位するように弾性変形可能とされた調心コイル部材と、
外周面、及び対応管継手部材に連結される連結部を有し、該内部空間内において該外周面が該調心コイル部材の該小径巻き部に係合した状態で配置され、該調心コイル部材を弾性変形させながら該外側部材に対して該径方向に変位可能とされた内側部材と、
を備える、管継手部材を提供する。
【0007】
当該管継手部材においては、調心作用をもたらす調心コイル部材が、小径巻き部が大径巻き部に対して径方向に変位するように弾性変形可能とされたコイル状の部材とされている。そのため、Oリングなどを使用してそれをその外径と内径との間で径方向に押し潰すようにする従来のものに比べて、径方向でのより大きな変位を容易に得ることが可能となる。これにより、調心コイル部材の径方向でのサイズを大きくすることなく調心可能範囲を広くすることが可能となる。
【0008】
また、該調心コイル部材が、該大径巻き部と該小径巻き部とのうちの一方を少なくとも2つ備え、該大径巻き部と該小径巻き部とのうちの他方が該一方の間に形成されているようにすることができる。
【0009】
調心コイル部材をこのような形状とすることにより、調心コイル部材を外側部材と内側部材との間に安定した姿勢で配置することが可能となる。
【0010】
また、該内側部材の該連結部が、該対応管継手部材を受け入れる挿入通路であり、該挿入通路の前端が前方に向かって拡径した傾斜面とされているようにすることができる。
【0011】
さらに、該外側部材が、該内部空間の該内周面の後方位置で径方向内側に延びて前方に面する密封係合面と、該密封係合面から後方に延びる流体通路とを有し、該内側部材の後端面が該密封係合面に密封係合するようにすることができる。
【0012】
さらに、
該外側部材が、該内部空間の該内周面の前方位置で該前端開口に向かって径方向内側に延びて後方に面する第1係止面を有し、該内側部材が、該第1係止面よりも後方位置で該第1係止面と対向して前方に面する第2係止面を有しており、
該前端開口よりも大きい外径を有し、該第1係止面と該第2係止面との間に挟持されて該内側部材とともに該径方向に変位する環状部材であって、該調心コイル部材の前端部に係合して該調心コイル部材を該内側部材の該外周面上に保持するようにされた環状部材をさらに備えるようにすることができる。
【0013】
本発明はさらに、上述のいずれかの管継手部材と、該管継手部材の該連結部に連結される対応管継手部材と、からなる管継手を提供する。
【0014】
以下、本発明に係る管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の連結前の状態を示す断面図である。
【
図2】雌型管継手部材とそれに対応する雄型管継手部材とが、相互に中心位置がずれた状態で連結されようとしている状態を示す図である。
【
図3】雌型管継手部材の内側部材が雄型管継手部材に対して調心された状態を示す図である。
【
図4】雌型管継手部材と雄型管継手部材とが連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る管継手1は、
図1に示すように雌型管継手部材(管継手部材)2と、それに対応する雄型管継手部材(対応管継手部材)3とからなる。雌型管継手部材2は第1装置4に固定され、雄型管継手部材3は第2装置5に固定されている。後述するように、第1装置4と第2装置5とが相互に近づくように移動することにより、雄型管継手部材3が雌型管継手部材2に連結されるようになっている。
【0017】
雌型管継手部材2は、前端開口10から後方に延びる内部空間12を有する管状の外側部材14と、内部空間12内に配置された調心コイル部材16と、内部空間12内において調心コイル部材16の内側に配置された内側部材18とを有する。外側部材14は内部空間12を画定している前方部材20と流体通路22を画定している後方部材24とからなり、前方部材20と後方部材24とは相互に螺合して結合されている。外側部材14はさらに、内部空間12の内周面26の後方位置で流体通路22に向かって径方向内側に延びて前方に面する密封係合面28と、内周面26の前方位置で前端開口10に向かって径方向内側に延びて後方に面する第1係止面30とを有する。密封係合面28にはシールリング32が取り付けられている。内側部材18は、シールリング32を介して密封係合面28と密封係合する後端面34と、外側部材14の第1係止面30との間に環状部材36を挟持している第2係止面38とを有する。内側部材18はさらに、雄型管継手部材3を受け入れる挿入通路(連結部)40を有し、挿入通路40の前端は前方に向かって拡径した傾斜面42となっている。挿入通路40には、雄型管継手部材3と密封係合するためのシールリング44が取り付けられている。
【0018】
調心コイル部材16は、弾性線材を同一方向に連続してコイル状に巻回した部材であり、2つの小径巻き部46とその間に位置する1つの大径巻き部48を有する。小径巻き部46と大径巻き部48は、小径巻き部46から大径巻き部48に向かって徐々に径が大きくなる移行部50により連結されている。調心コイル部材16は、小径巻き部46が大径巻き部48に対して径方向に変位するように弾性変形可能となっている。小径巻き部46は内側部材18の外周面52に係合し、大径巻き部48は外側部材14の内周面26に係合している。この調心コイル部材16の弾性力によって、内側部材18は外側部材14の中心長手軸線Lと内側部材18の中心長手軸線Mとが一致するように、内部空間12の径方向中心に位置決めされる。調心コイル部材16は、その前端部54が環状部材36と係合することにより、内側部材18の外周面52上に保持されている。
【0019】
雌型管継手部材2を組み立てる際には、外側部材14の後方部材24が前方部材20から取り外されている状態で、内側部材18を前方部材20の後方から内部空間12内に環状部材36及び調心コイル部材16とともに挿入する。次に後方部材24を前方部材20に捩じ込んでいき、後方部材24に取り付けられているシールリング32が内側部材18の後端面34との間で適度に潰されて密封係合が形成されるようにする。内側部材18は、前方部材20と後方部材24との間で環状部材36及びシールリング32を介して中心長手軸線Lの方向で挟持されるが、径方向に変位可能な状態となっている。
【0020】
当該実施形態においては、
図1の非連結状態において、外側部材14の中心長手軸線Lと内側部材18の中心長手軸線Mは一致しているが、雄型管継手部材3の中心長手軸線Nは図で見て上方にずれている。この状態で第1装置4と第2装置5とを相互に近づけていくと、
図2に示すように、雄型管継手部材3の先端が内側部材18の傾斜面42に当たる。さらに第1装置4と第2装置5とを相互に近づけていくと、
図3に示すように内側部材18は雄型管継手部材3に押されて径方向に変位して、内側部材18の中心長手軸線Mが雄型管継手部材3の中心長手軸線Nと一致した状態となる。このとき調心コイル部材16は、その小径巻き部46が大径巻き部48に対して内側部材18とともに径方向に変位するように弾性変形する。また、前端開口10よりも大きな外径を有する環状部材36は内側部材18とともに径方向に変位する。第1装置4と第2装置5とをさらに近づけていくと、雄型管継手部材3が内側部材18の挿入通路40内に挿入され、
図4に示すように雄型管継手部材3と内側部材18とがシールリング44を介して密封係合して、雌型管継手部材2と雄型管継手部材3とが連結した状態となる。
【0021】
第1装置4と第2装置5とを相互に離していくと、雄型管継手部材3が雌型管継手部材2の内側部材18から抜けていく。雄型管継手部材3が内側部材18の挿入通路40から完全に抜け出ると、内側部材18は調心コイル部材16の小径巻き部46が元の位置に戻ろうとする弾性復元力によって
図1の位置に戻る。
【0022】
当該管継手1においては、雌型管継手部材2が調心機能を有しているため、第1装置4及び第2装置5に雌型管継手部材2と雄型管継手部材3とをそれぞれ取り付けた状態で雌型管継手部材2と雄型管継手部材3の中心位置がずれていても、適切に連結を行うことが可能となる。また、調心作用をもたらす調心コイル部材16は、小径巻き部46が大径巻き部48に対して径方向に全体的に変位する構造となっているため、Oリングなどを使用してそれをその外径と内径との間で径方向に押し潰すようにする従来のものに比べて、径方向でのより大きな変位とより安定した弾性復元力を得ることが可能となる。これにより、その大きさに対する調心可能範囲を広くすることが可能となる。また、本発明の調心コイル部材16は、局所的に大きな変形は生じにくいため、動作を繰り返しても塑性変形をすることがなく、連結が解除されたときに内側部材18を元の中心位置により確実に戻すことが可能となる。
【0023】
調心コイル部材16は、内側部材18の大きさや必要な弾性力などに合わせて、例えば
図5に示すような種々の形状とすることができる。第1の変形例にかかる調心コイル部材116は、2つの大径巻き部148と、その間に位置する1つの小径巻き部146を有する。小径巻き部146は長手軸線Aの方向で隣接して巻回されているが、大径巻き部148は離れて巻回されている。第2の変形例にかかる調心コイル部材216は、3つの小径巻き部246とそれら間に位置する2つの大径巻き部248を有する。第3の変形例にかかる調心コイル部材316は、小径巻き部346と大径巻き部348がそれぞれ第2の変形例にかかる調心コイル部材216のものよりも多く巻回されて形成されている。調心コイル部材は、ここに記載した形状に限定されない。例えば、上記実施形態では小径巻き部と大径巻き部との間の移行部はおよそ一回だけ巻回されて形成されているが、複数回の巻回で徐々に径が変化していくようにすることもできる。
【0024】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、調心機能を有する管継手部材を雌型管継手部材としているが、雄型管継手部材とすることもできる。具体的には、挿入通路として形成されている内側部材の連結部を、対応する雌型管継手部材の挿入通路内に挿入して連結される挿入部として構成して雄型管継手部材とすることができる。この場合には、挿入部の前端に前方に向かって縮径する傾斜面を設けるのが望ましい。組み立て性や動作の安定性の観点から環状部材を設けることが望ましいが、環状部材は必ずしも必要ではなく、外側部材の第1係止面と内側部材の第2係止面とが直接当接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 管継手
2 雌型管継手部材(管継手部材)
3 雄型管継手部材(対応管継手部材)
4 第1装置
5 第2装置
10 前端開口
12 内部空間
14 外側部材
16 調心コイル部材
18 内側部材
20 前方部材
22 流体通路
24 後方部材
26 内周面
28 密封係合面
30 第1係止面
32 シールリング
34 後端面
36 環状部材
38 第2係止面
40 挿入通路(連結部)
42 傾斜面
44 シールリング
46 小径巻き部
48 大径巻き部
50 移行部
52 外周面
54 前端部
116 調心コイル部材
146 小径巻き部
148 大径巻き部
216 調心コイル部材
246 小径巻き部
248 大径巻き部
316 調心コイル部材
346 小径巻き部
348 大径巻き部
A 長手軸線
L 中心長手軸線
M 中心長手軸線
N 中心長手軸線