(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098147
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】スチームトラップ管理システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220624BHJP
F16T 1/48 20060101ALI20220624BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220624BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20220624BHJP
【ＦＩ】
G01M99/00 Z
F16T1/48 C
F16T1/48 D
G05B23/02 R
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2020211525
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード（参考）】
2G024
2G064
3C223
【Ｆターム（参考）】
2G024AD01
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
3C223AA17
3C223BA03
3C223CC02
3C223EB02
3C223FF35
3C223FF52
3C223GG03
(57)【要約】
【課題】スチームトラップの点検作業における作業効率を向上でき、かつ、複数のスチームトラップを正確に管理することが可能なスチームトラップ管理システムを得る。
【解決手段】診断装置１は、複数のスチームトラップ５０の各々の絶対位置を示す絶対位置情報に関連付けて、診断データを記憶する記憶部１５を有する。データ処理装置２は、取得部５２が診断装置１から取得した絶対位置情報及び診断データを、サーバ装置３に送信する通信部４６を有する。サーバ装置３は、複数のスチームトラップ５０の各々に関して、診断データが絶対位置情報に関連付けて記述された管理台帳９１を記憶する記憶部７３と、通信部７２がデータ処理装置２から受信した絶対位置情報及び診断データに基づいて、管理台帳９１を更新する管理台帳更新部８１と、を有する。
【選択図】図１
【解決手段】診断装置１は、複数のスチームトラップ５０の各々の絶対位置を示す絶対位置情報に関連付けて、診断データを記憶する記憶部１５を有する。データ処理装置２は、取得部５２が診断装置１から取得した絶対位置情報及び診断データを、サーバ装置３に送信する通信部４６を有する。サーバ装置３は、複数のスチームトラップ５０の各々に関して、診断データが絶対位置情報に関連付けて記述された管理台帳９１を記憶する記憶部７３と、通信部７２がデータ処理装置２から受信した絶対位置情報及び診断データに基づいて、管理台帳９１を更新する管理台帳更新部８１と、を有する。
【選択図】図１
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に設置された複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、
可搬型の診断装置と、
データ処理装置と、
サーバ装置と、
を備え、
前記診断装置は、
前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、
前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、
前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の絶対位置を示す絶対位置情報に関連付けて、前記診断データを記憶する診断データ記憶部と、
を有し、
前記データ処理装置は、
前記診断データ記憶部に記憶された前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記診断装置から取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記サーバ装置に送信する送信部と、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記複数のスチームトラップの各々に関して、前記診断データが前記絶対位置情報に関連付けて記述された管理情報を記憶する管理情報記憶部と、
前記送信部が送信した前記絶対位置情報及び前記診断データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記絶対位置情報及び前記診断データに基づいて、前記管理情報を更新する管理情報更新部と、
を有する、スチームトラップ管理システム。
可搬型の診断装置と、
データ処理装置と、
サーバ装置と、
を備え、
前記診断装置は、
前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、
前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、
前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の絶対位置を示す絶対位置情報に関連付けて、前記診断データを記憶する診断データ記憶部と、
を有し、
前記データ処理装置は、
前記診断データ記憶部に記憶された前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記診断装置から取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記サーバ装置に送信する送信部と、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記複数のスチームトラップの各々に関して、前記診断データが前記絶対位置情報に関連付けて記述された管理情報を記憶する管理情報記憶部と、
前記送信部が送信した前記絶対位置情報及び前記診断データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記絶対位置情報及び前記診断データに基づいて、前記管理情報を更新する管理情報更新部と、
を有する、スチームトラップ管理システム。
【請求項2】
前記データ処理装置は、前記管理情報を作成する管理情報作成部をさらに有し、
前記管理情報作成部は、位置情報設定部を含み、
前記位置情報設定部は、前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の設置箇所を示すエリアマップ情報を取得し、各グリッドに最大１つのスチームトラップが含まれるように前記エリアマップ情報を複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドに分割し、各行及び各列に付与した行番号及び列番号を用いて前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報を設定する、請求項１に記載のスチームトラップ管理システム。
前記管理情報作成部は、位置情報設定部を含み、
前記位置情報設定部は、前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の設置箇所を示すエリアマップ情報を取得し、各グリッドに最大１つのスチームトラップが含まれるように前記エリアマップ情報を複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドに分割し、各行及び各列に付与した行番号及び列番号を用いて前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報を設定する、請求項１に記載のスチームトラップ管理システム。
【請求項3】
前記管理情報作成部は、順序設定部をさらに含み、
前記順序設定部は、前記エリアマップ情報における前記複数のスチームトラップの各々の位置座標に基づいて、前記複数のスチームトラップを順に診断するための移動に要する移動距離が最短となるように、前記複数のスチームトラップの診断順序を設定する、請求項２に記載のスチームトラップ管理システム。
前記順序設定部は、前記エリアマップ情報における前記複数のスチームトラップの各々の位置座標に基づいて、前記複数のスチームトラップを順に診断するための移動に要する移動距離が最短となるように、前記複数のスチームトラップの診断順序を設定する、請求項２に記載のスチームトラップ管理システム。
【請求項4】
前記管理情報においては、さらに前記複数のスチームトラップの各々の型式を含む属性情報が前記絶対位置情報に関連付けて記述されており、
前記診断装置は、制御部及び表示部をさらに有し、
前記制御部は、前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報に関連付けて前記属性情報を前記表示部に表示可能である、請求項１～３のいずれか一つに記載のスチームトラップ管理システム。
前記診断装置は、制御部及び表示部をさらに有し、
前記制御部は、前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報に関連付けて前記属性情報を前記表示部に表示可能である、請求項１～３のいずれか一つに記載のスチームトラップ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームトラップの状態を管理するためのスチームトラップ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水（ドレン）が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、一般には、配管系の適所にスチームトラップを設置し、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
【0003】
経年劣化又は作動不良等によってスチームトラップのシール性能が損なわれると、蒸気配管系内の蒸気がスチームトラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招くこととなる。そのため、１年に１回等の定期的に、スチームトラップの状態を点検する作業が行われる。
【0004】
下記特許文献１には、スチームトラップの状態を診断するための計測装置及び診断装置が開示されている。計測装置は可搬型の計測装置であり、診断装置はタブレット端末又はノートパソコン等であり、計測装置と診断装置とは相互に無線通信が可能である。計測装置は、各スチームトラップの表面温度を計測する温度センサと、各スチームトラップの振動強度を計測する振動センサと、温度センサ及び振動センサから出力された計測データを記憶する記憶部と、当該計測データを診断装置に送信する通信部と、表示部とを備えている。診断装置は、計測装置から受信した計測データに基づいて各スチームトラップの状態（正常又は異常）を診断し、その診断の結果を示す診断データを計測装置に送信する。計測装置は、診断装置から受信した診断データに基づいて、各スチームトラップに関する診断の結果を表示部に表示する。
【0005】
また、大型のプラントでは数千から数万個のスチームトラップが設置されることもあるため、そのような膨大な数のスチームトラップの状態を管理するための管理情報として、管理台帳が使用されることがある。
【0006】
下記特許文献２には、管理対象である全スチームトラップの各々に関して、通し番号（トラップＩＤ）等の識別情報と、製造メーカ名及び型式等の属性情報と、使用圧力及び設定温度等の動作情報と、過去の定期点検における診断結果とが記述された管理台帳が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開２０１８－８４４１８号公報
【特許文献2】特許第２９５４１８３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献２に開示された管理台帳ではスチームトラップの絶対位置は管理されていないため、定期点検を行う作業者は、管理台帳から取得できる情報によっては各スチームトラップの絶対位置を特定することができない。従って、作業者は、管理台帳とは別にスチームトラップの設置箇所を示すエリアマップ情報等を参照することによって各スチームトラップの絶対位置を特定する必要があり、その作業が非効率である。
【0009】
また、プラントの稼働状況又は蒸気漏出の発生状況等に応じて、スチームトラップは追加又は撤去されることがある。ここで、スチームトラップの追加又は撤去の情報がエリアマップ情報に正しく反映されていない場合には、スチームトラップの点検漏れ等が発生する可能性があるため、スチームトラップを正確に管理することが困難となる。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、スチームトラップの点検作業における作業効率を向上でき、かつ、複数のスチームトラップを正確に管理することが可能なスチームトラップ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るスチームトラップ管理システムは、エリア内に設置された複数のスチームトラップの各々の状態を管理するスチームトラップ管理システムであって、可搬型の診断装置と、データ処理装置と、サーバ装置と、を備え、前記診断装置は、前記複数のスチームトラップの各々の温度及び振動を測定し、その測定の結果を示す測定データを出力する測定部と、前記測定データに基づいて前記複数のスチームトラップの各々の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する診断部と、前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の絶対位置を示す絶対位置情報に関連付けて、前記診断データを記憶する診断データ記憶部と、を有し、前記データ処理装置は、前記診断データ記憶部に記憶された前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記診断装置から取得する取得部と、前記取得部が取得した前記絶対位置情報及び前記診断データを、前記サーバ装置に送信する送信部と、を有し、前記サーバ装置は、前記複数のスチームトラップの各々に関して、前記診断データが前記絶対位置情報に関連付けて記述された管理情報を記憶する管理情報記憶部と、前記送信部が送信した前記絶対位置情報及び前記診断データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記絶対位置情報及び前記診断データに基づいて、前記管理情報を更新する管理情報更新部と、を有する。
【0012】
この態様によれば、診断装置、データ処理装置、及びサーバ装置の各々において、各スチームトラップの診断データは絶対位置情報に関連付けられている。従って、診断装置は管理情報に基づいて各スチームトラップの絶対位置を特定できるため、作業者は、スチームトラップの設置箇所を示すエリアマップ情報等の参照が不要となる。また、スチームトラップが追加又は撤去され、その情報が管理情報に正しく反映されていない場合であっても、作業者は、管理情報に含まれている絶対位置情報を参照することによって、スチームトラップが追加又は撤去されたと判断することができる。その結果、点検作業における作業効率を向上できるとともに、スチームトラップを正確に管理することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記データ処理装置は、前記管理情報を作成する管理情報作成部をさらに有し、前記管理情報作成部は、位置情報設定部を含み、前記位置情報設定部は、前記エリア内における前記複数のスチームトラップの各々の設置箇所を示すエリアマップ情報を取得し、各グリッドに最大１つのスチームトラップが含まれるように前記エリアマップ情報を複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドに分割し、各行及び各列に付与した行番号及び列番号を用いて前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報を設定する。
【0014】
この態様によれば、管理情報作成部は、エリア内における各スチームトラップの絶対位置情報を、簡易かつ正確に設定することが可能となる。
【0015】
上記態様において、前記管理情報作成部は、順序設定部をさらに含み、前記順序設定部は、前記エリアマップ情報における前記複数のスチームトラップの各々の位置座標に基づいて、前記複数のスチームトラップを順に診断するための移動に要する移動距離が最短となるように、前記複数のスチームトラップの診断順序を設定する。
【0016】
この態様によれば、作業者は、順序設定部によって設定された診断順序に従って複数のスチームトラップを順に診断することにより、移動距離が最短となるため、作業効率を向上することが可能となる。
【0017】
上記態様において、前記管理情報においては、さらに前記複数のスチームトラップの各々の型式を含む属性情報が前記絶対位置情報に関連付けて記述されており、前記診断装置は、制御部及び表示部をさらに有し、前記制御部は、前記複数のスチームトラップの各々の前記絶対位置情報に関連付けて前記属性情報を前記表示部に表示可能である。
【0018】
この態様によれば、診断装置の表示部には、各スチームトラップの絶対位置情報に関連付けて、スチームトラップの型式を含む属性情報が表示される。従って、あるスチームトラップが交換されていて、その交換の情報が管理情報に反映されていなかったとしても、表示部に表示されている型式と実際のスチームトラップの型式とを作業者が比較することによって、スチームトラップが交換されたと判断することができる。そして、その交換の情報が反映されるように管理情報を更新することにより、更新後の管理情報によってスチームトラップを正確に管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スチームトラップの点検作業における作業効率を向上でき、かつ、複数のスチームトラップを正確に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システムの構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】スチームトラップ管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【図3】位置情報設定部及び順序設定部の処理内容を示す図である。
【図4】管理台帳の一例を示す図である。
【図5】管理台帳の一例を示す図である。
【図6】スチームトラップの設置レイアウトの一例を示す図である。
【図7】管理台帳の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0022】
＜システムの構成＞
図１は、本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システム１００の構成を簡略化して示すブロック図である。スチームトラップ管理システム１００は、可搬型の診断装置１と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置２と、クラウドサーバ等のサーバ装置３とを備えている。診断装置１とデータ処理装置２とは、Ｂｌｕｅｔｏｏｔｈ（登録商標）等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。また、データ処理装置２とサーバ装置３とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク４を介して、ＩＰ等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
図１は、本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システム１００の構成を簡略化して示すブロック図である。スチームトラップ管理システム１００は、可搬型の診断装置１と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置２と、クラウドサーバ等のサーバ装置３とを備えている。診断装置１とデータ処理装置２とは、Ｂｌｕｅｔｏｏｔｈ（登録商標）等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。また、データ処理装置２とサーバ装置３とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク４を介して、ＩＰ等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
【0023】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、配管系内に生じた復水（ドレン）を配管系の外部に排出するために、配管系の適所に複数のスチームトラップ５０（図３参照）が設置されている。スチームトラップ５０は、１年に１回等の定期点検によって、その状態が点検される。定期点検の作業者は、可搬型の診断装置１を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置１によって各スチームトラップ５０を順に点検する。なお、スチームトラップ５０の点検は、定期点検に限らず、不定期な点検であっても良い。以下では、定期点検を例に取り説明する。
【0024】
プラント内へのノートパソコン等の持ち込みが許可されている場合には、作業者は、診断装置１とともにデータ処理装置２を携帯して、各スチームトラップ５０を順に点検することもできる。この場合には、診断装置１は、データ処理装置２及び通信ネットワーク４を介してサーバ装置３に、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５（詳細は後述する）をリアルタイムで送信することができる。
【0025】
一方、プラント内へのノートパソコン等の持ち込みが禁止されている場合には、作業者は、営業車又は現場事務所等の待機場所にデータ処理装置２を保管し、診断装置１のみを携帯して各スチームトラップ５０を順に点検する。この場合には、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５は診断装置１内に保存される。作業者が待機場所に戻った後、診断装置１は、データ処理装置２及び通信ネットワーク４を介してサーバ装置３に、複数のスチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５を一括して送信する。
【0026】
診断装置１は、制御部１１、測定部１２、操作部１３、表示部１４、記憶部１５、及び通信部１６を有している。
【0027】
測定部１２は、温度センサ２１及び振動センサ２２を含む。温度センサ２１は、熱電対、増幅回路、及びＡＤ変換回路等を用いて構成されている。作業者が診断装置１の探針（図略）を測定対象であるスチームトラップ５０に押し当てることにより、温度センサ２１は、スチームトラップ５０の表面温度を測定し、その測定結果を示す温度データを出力する。振動センサ２２は、圧電素子、増幅回路、及びＡＤ変換回路等を用いて構成されている。作業者が上記探針を測定対象であるスチームトラップ５０に押し当てることにより、振動センサ２２は、測定対象であるスチームトラップ５０の振動強度を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。
【0028】
操作部１３は、作業者が各種の情報を入力するための操作スイッチ等によって構成されている。表示部１４は、液晶ディスプレイ又は有機ＥＬディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部１３と表示部１４とが一体として構成されても良い。
【0029】
記憶部１５は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリ等を用いて構成されている。
【0030】
通信部１６は、Ｂｌｕｅｔｏｏｔｈ（登録商標）等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されている。
【0031】
制御部１１は、ＣＰＵ等を用いて構成されている。制御部１１は、当該ＣＰＵが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、診断部３１を有している。診断部３１は、測定部１２から入力された測定データ（温度データ及び振動データ）に基づいて各スチームトラップ５０の状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する。例えば、診断部３１は、測定部１２から入力された温度データと予め設定された所定の温度しきい値とを比較し、また、測定部１２から入力された振動データと予め設定された所定の振動しきい値とを比較する。診断部３１は、これら二つの比較結果の組合せに応じて、各スチームトラップ５０が正常であるか異常（蒸気漏出、ドレン排出不良、又は閉塞）であるかを診断する。制御部１１は、各スチームトラップ５０の診断データを含めて診断結果情報Ｉ５を作成し、そのスチームトラップ５０の絶対位置を示す絶対位置情報Ｉ１に関連付けて診断結果情報Ｉ５を記憶部１５に記憶する。絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５の詳細については後述する。
【0032】
データ処理装置２は、制御部４１、通信部４２、操作部４３、表示部４４、記憶部４５、及び通信部４６を有している。
【0033】
通信部４２は、Ｂｌｕｅｔｏｏｔｈ（登録商標）等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されており、診断装置１の通信部１６と相互に通信可能である。
【0034】
操作部４３は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部４４は、液晶ディスプレイ又は有機ＥＬディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部４３と表示部４４とが一体として構成されても良い。
【0035】
記憶部４５は、ＨＤＤ、ＳＳＤ、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0036】
通信部４６は、ＩＰ等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されている。
【0037】
制御部４１は、ＣＰＵ等を用いて構成されている。制御部４１は、当該ＣＰＵが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、管理台帳作成部５１及び取得部５２を有している。
【0038】
取得部５２は、通信部４２が診断装置１から受信したスチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部４２から取得する。取得部５２は、取得した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、記憶部４５に記憶する。
【0039】
管理台帳作成部５１は、複数のスチームトラップ５０を管理するための管理台帳９１を作成する。管理台帳作成部５１は、過去に管理台帳９１が作成されていない新規のプラントに関しては、後述するエリアマップ情報に基づいて新規に管理台帳９１を作成する。また、管理台帳作成部５１は、過去に管理台帳９１が作成されている既存のプラントに関しては、サーバ装置３によって管理されている既存の管理台帳９１をサーバ装置３から取得し、最新のエリアマップ情報に基づいて当該管理台帳９１を更新することによって、今回の定期点検用の管理台帳９１を作成する。管理台帳作成部５１は、その機能として位置情報設定部６１及び順序設定部６２を含む。位置情報設定部６１及び順序設定部６２の処理内容については後述する。
【0040】
サーバ装置３は、制御部７１、通信部７２、及び記憶部７３を有している。
【0041】
通信部７２は、ＩＰ等の任意の通信方式に対応した通信機器を用いて構成されており、通信ネットワーク４を介してデータ処理装置２の通信部４６と相互に通信可能である。
【0042】
また、サーバ装置３へのアクセス権を有する任意の通信装置（例えばデータ処理装置２と同種の他のデータ処理装置）は、通信ネットワーク４を介してサーバ装置３にアクセス可能である。大規模なプラントでは数千個から数万個のスチームトラップ５０が設置されている場合もあり、この場合には複数の作業者が手分けをして全スチームトラップ５０の点検を行う。これら複数の作業者の各々が、診断装置１及びデータ処理装置２を携帯している。各データ処理装置２が通信ネットワーク４を介してサーバ装置３にアクセスすることにより、各診断装置１による診断結果情報Ｉ５がサーバ装置３に集約され、サーバ装置３によって複数の診断結果情報Ｉ５が統合及び一元管理される。また、各データ処理装置２が通信ネットワーク４を介してサーバ装置３にアクセスすることにより、サーバ装置３が一元管理している複数の診断結果情報Ｉ５及び解析データ９２を、各作業者が各データ処理装置２によって閲覧等することが可能となる。
【0043】
制御部７１は、ＣＰＵ等を用いて構成されている。制御部７１は、当該ＣＰＵが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部８０、管理台帳更新部８１、及び解析部８２を有している。
【0044】
取得部８０は、通信部７２がデータ処理装置２から受信したスチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部７２から取得する。管理台帳更新部８１及び解析部８２の処理内容については後述する。
【0045】
記憶部７３は、ＨＤＤ、ＳＳＤ、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部７３は、管理台帳９１及び解析データ９２を記憶している。
【0046】
図２は、スチームトラップ管理システム１００における処理の流れを示すシーケンス図である。
【0047】
＜定期点検の事前準備＞
作業者は、今回の定期点検を実施する前に、データ処理装置２を用いて管理台帳９１を作成する。管理台帳９１の作成処理は、管理台帳作成部５１によって実行される。管理台帳作成部５１は、その機能として位置情報設定部６１及び順序設定部６２を含む。
作業者は、今回の定期点検を実施する前に、データ処理装置２を用いて管理台帳９１を作成する。管理台帳９１の作成処理は、管理台帳作成部５１によって実行される。管理台帳作成部５１は、その機能として位置情報設定部６１及び順序設定部６２を含む。
【0048】
図３は、位置情報設定部６１及び順序設定部６２の処理内容を示す図である。蒸気配管系を備えたプラント等のエリアＡＲ内において、複数のスチームトラップ５０が配管系の適所に設置されている。図３では説明の簡単化のため、識別情報（ＩＤ）としてトラップナンバーＴ１～Ｔ９が付与された９個のスチームトラップ５０のみを示している。
【0049】
位置情報設定部６１は、エリアＡＲ内における各スチームトラップ５０の設置箇所（絶対位置）を示すエリアマップ情報を、プラントの管理端末等から取得する。当該管理端末が通信ネットワーク４に接続されている場合には、位置情報設定部６１は、当該管理端末から通信ネットワーク４及び通信部４６を介してエリアマップ情報を取得する。
【0050】
位置情報設定部６１は、取得したエリアマップ情報に基づいて、各グリッドＧに最大１つのスチームトラップ５０が含まれるように、エリアマップ情報を複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドＧに分割する。図３の例では、エリアマップ情報は９行×９列の８１個のグリッドＧに分割されている。
【0051】
位置情報設定部６１は、各行及び各列に付与した行番号Ｙ１～Ｙ９及び列番号Ｘ１～Ｘ９を用いて、各スチームトラップ５０の絶対位置情報を設定する。例えば、トラップナンバーＴ１のスチームトラップ５０の絶対位置情報は座標（Ｘ１，Ｙ１）となり、トラップナンバーＴ５のスチームトラップ５０の絶対位置情報は座標（Ｘ６，Ｙ４）となる。
【0052】
これにより、管理台帳作成部５１は、エリアマップ情報における各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１を、簡易かつ正確に設定することが可能となる。
【0053】
順序設定部６２は、エリアマップ情報における各スチームトラップ５０の位置座標に基づき、複数のスチームトラップ５０を順に診断するための移動に要する移動距離が最短となるように、複数のスチームトラップ５０の診断順序を設定する。つまり、順序設定部６２は、指定された一のスチームトラップ５０を起点として全てのスチームトラップ５０を一筆書きで繋ぐ最短経路を探索する。順序設定部６２が使用する最短経路の探索アルゴリズムとしては、ダイクストラ法又はベルマン・フォード法等の任意のアルゴリズムを使用することができる。図３の例では、トラップナンバーＴ１→Ｔ４→Ｔ５→Ｔ７→Ｔ９→Ｔ８→Ｔ６→Ｔ３→Ｔ２の順に、複数のスチームトラップ５０の診断順序が設定されている。
【0054】
これにより、作業者は、順序設定部６２によって設定された診断順序に従って複数のスチームトラップ５０を順に診断することにより、移動距離が最短となるため、作業効率を向上することが可能となる。
【0055】
管理台帳作成部５１は、順序設定部６２が設定した診断順序の順に複数のスチームトラップ５０に関する情報を並べて、管理台帳９１を作成する（ステップＳ１）。管理台帳作成部５１は、作成した管理台帳９１を記憶部４５に記憶する（ステップＳ２）。
【0056】
図４は、管理台帳９１の一例を示す図である。管理台帳９１には、複数のスチームトラップ５０の各々に関し、絶対位置情報Ｉ１に関連付けられて、識別情報Ｉ２、属性情報Ｉ３、動作情報Ｉ４、及び診断結果情報Ｉ５が記述されている。
【0057】
図４の例では、絶対位置情報Ｉ１は、行番号Ｙ１～Ｙ９及び列番号Ｘ１～Ｘ９を用いて表された座標である。識別情報Ｉ２は、トラップナンバーＴ１～Ｔ９である。属性情報Ｉ３は、スチームトラップ５０の製造メーカ名及び型式名を含む。但し、型式名よりも詳細な品番情報が属性情報Ｉ３にさらに含まれても良い。動作情報Ｉ４は、使用圧力及び設定温度を含む。
【0058】
各スチームトラップ５０に関する識別情報Ｉ２、属性情報Ｉ３、及び動作情報Ｉ４が上記エリアマップ情報に含まれている場合には、管理台帳作成部５１は、これらの情報を当該エリアマップ情報から抽出することが可能である。あるいは、これらの情報が上記エリアマップ情報に含まれていない場合には、作業者によるキーボード入力等に応じて、操作部４３から制御部４１にこれらの情報が入力されても良い。
【0059】
診断結果情報Ｉ５は、点検日及び診断結果を含む。今回の定期点検が実施される前の事前準備の段階では、点検日及び診断結果の項目は空欄となっている。なお、管理台帳９１における複数のスチームトラップ５０の並び順は、診断順序に限らず、トラップナンバーの降順又は昇順等であっても良い。
【0060】
通信部４６は、管理台帳作成部５１が作成した管理台帳９１を、サーバ装置３に送信する（ステップＳ３）。サーバ装置３において、通信部７２は、通信部４６から送信された管理台帳９１を受信する。制御部７１は、通信部７２が受信した管理台帳９１を記憶部７３に記憶する（ステップＳ４）。
【0061】
また、通信部４２は、管理台帳作成部５１が作成した管理台帳９１を、診断装置１に送信する（ステップＳ５）。診断装置１において、通信部１６は、通信部４２から送信された管理台帳９１を受信する。制御部１１は、通信部１６が受信した管理台帳９１を記憶部１５に記憶する（ステップＳ６）。
【0062】
＜点検作業＞
定期点検の作業者は、診断装置１（及び許可されている場合にはデータ処理装置２）を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置１によって各スチームトラップ５０を順に点検する（ステップＳ７）。
定期点検の作業者は、診断装置１（及び許可されている場合にはデータ処理装置２）を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置１によって各スチームトラップ５０を順に点検する（ステップＳ７）。
【0063】
その際、作業者によるスイッチ操作等に応じて操作部１３から制御部１１に要求信号が入力されることにより、制御部１１は、事前準備で記憶部１５に記憶した管理台帳９１を表示部１４に表示する。これにより、作業者は、エリアＡＲ内に設置されている複数のスチームトラップ５０の診断順序と、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１、識別情報Ｉ２、及び属性情報Ｉ３とを認識することができる。なお、作業者がデータ処理装置２を携帯している場合には、管理台帳９１をデータ処理装置２の表示部４４に表示させても良い。通常は表示部１４よりも表示部４４のほうが大きい画面を有するため、管理台帳９１を表示部４４に表示することにより、作業者による視認性が向上する。
【0064】
作業者は、表示された管理台帳９１から認識できる診断順序及び絶対位置に従って、今回の測定対象であるスチームトラップ５０の設置箇所に移動する。また、作業者は、操作部１３のスイッチ操作によって、管理台帳９１に含まれている複数のスチームトラップ５０の中から今回の測定対象である一のスチームトラップ５０を選択する。これにより、スチームトラップ５０の選択情報が、操作部１３から制御部１１に入力される。
【0065】
次に、作業者は、診断装置１の探針（図略）を、測定対象であるスチームトラップ５０に押し当てる。これにより、測定部１２から制御部１１に測定データ（温度データ及び振動データ）が入力される。診断部３１は、測定部１２から入力された測定データに基づいて、測定対象であるスチームトラップ５０の状態を診断する。
【0066】
制御部１１は、診断部３１による診断の結果を示す診断データを、表示部１４に入力する。これにより、測定対象であるスチームトラップ５０に関する診断結果が、表示部１４に表示される。
【0067】
また、制御部１１は、診断データに基づいて診断結果情報Ｉ５（点検日及び診断結果）を作成し、当該診断結果情報Ｉ５を、記憶部１５に記憶されている管理台帳９１のうち上記選択情報によって特定される対応箇所に追記する（ステップＳ８）。診断結果情報Ｉ５が管理台帳９１の対応箇所に追記されることにより、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５が、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１に関連付けられて、記憶部１５に記憶されることとなる。
【0068】
また、制御部１１は、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部１６に入力する。通信部１６は、入力された絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、データ処理装置２に送信する（ステップＳ９）。
【0069】
データ処理装置２の通信部４２は、通信部１６から送信された絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を受信する。
【0070】
取得部５２は、通信部４２が診断装置１から受信した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部４２から取得する。
【0071】
制御部４１は、取得部５２が取得した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５に基づいて、記憶部４５に記憶されている管理台帳９１を更新する（ステップＳ１０）。具体的に、制御部４１は、取得部５２が取得した診断結果情報Ｉ５を、記憶部４５に記憶されている管理台帳９１のうち、取得部５２が取得した絶対位置情報Ｉ１によって特定される対応箇所に追記する。診断結果情報Ｉ５が管理台帳９１の対応箇所に追記されることにより、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５が、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１に関連付けられて、記憶部４５に記憶されることとなる。
【0072】
また、制御部４１は、取得部５２が取得した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部４６に入力する。通信部４６は、入力された絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信ネットワーク４を介してサーバ装置３に送信する（ステップＳ１１）。
【0073】
サーバ装置３の通信部７２は、通信部４６から送信された絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を受信する。
【0074】
取得部８０は、通信部７２がデータ処理装置２から受信した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、通信部７２から取得する。
【0075】
管理台帳更新部８１は、取得部８０が取得した絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５に基づいて、記憶部７３に記憶されている管理台帳９１を更新する（ステップＳ１２）。具体的に、管理台帳更新部８１は、取得部８０が取得した診断結果情報Ｉ５を、記憶部７３に記憶されている管理台帳９１のうち、取得部８０が取得した絶対位置情報Ｉ１によって特定される対応箇所に追記する。診断結果情報Ｉ５が管理台帳９１の対応箇所に追記されることにより、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５が、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１に関連付けられて、記憶部７３に記憶されることとなる。管理台帳更新部８１は、管理台帳９１によって管理されている全てのスチームトラップ５０に関して、上記と同様の処理を実行する。
【0076】
図５は、管理台帳９１の一例を示す図である。管理台帳９１によって管理されている全てのスチームトラップ５０に関して、診断結果情報Ｉ５の追記が完了している。これにより、今回の定期点検に伴う管理台帳９１の更新処理が完了する。定期点検の度に同様の更新処理が実行されることにより、過去に実施された定期点検に関する情報が管理台帳９１に蓄積され、サーバ装置３によって管理されることとなる。
【0077】
解析部８２は、更新処理が完了した管理台帳９１に基づいて種々の解析処理を実行し、その解析処理によって得られた解析データ９２を記憶部７３に記憶する（ステップＳ１３）。例えば、解析部８２は、管理台帳９１によって管理されている全てのスチームトラップ５０の中から、診断結果が異常（蒸気漏出、ドレン排出不良、又は閉塞）であるスチームトラップ５０をリストアップすることにより、不良トラップリストを作成する。また、解析部８２は、管理台帳９１によって管理されているスチームトラップ５０の総数に対する、診断結果が異常であるスチームトラップ５０の総数の割合として、不良率を算出する。また、解析部８２は、蒸気漏出が発生しているスチームトラップ５０に関して各々の蒸気漏出量を合計することにより、総漏出量及びそれによる損失額を算出する。また、解析部８２は、数年分又はそれ以上の長期間の情報が管理台帳９１に蓄積されている場合には、これらの解析結果の時系列の推移を集計し、その集計の結果を時系列データとして表又はグラフの形式で出力する。これにより、プラントの管理者等は、スチームトラップ５０の経年劣化の進行状況等を把握することが可能となる。
【0078】
＜作業者がスチームトラップの変更を発見した場合の処理＞
上記の通り、事前準備において管理台帳作成部５１はエリアマップ情報に基づいて管理台帳９１を作成する。また、プラントの稼働状況又は蒸気漏出の発生状況等に応じて、スチームトラップ５０は変更（追加、撤去、又は交換）されることがある。ここで、前回の定期点検から今回の定期点検までの間にスチームトラップ５０が変更され、その変更の状況がエリアマップ情報に正しく反映されていない場合には、管理台帳作成部５１は正確な管理台帳９１を作成することができない。
上記の通り、事前準備において管理台帳作成部５１はエリアマップ情報に基づいて管理台帳９１を作成する。また、プラントの稼働状況又は蒸気漏出の発生状況等に応じて、スチームトラップ５０は変更（追加、撤去、又は交換）されることがある。ここで、前回の定期点検から今回の定期点検までの間にスチームトラップ５０が変更され、その変更の状況がエリアマップ情報に正しく反映されていない場合には、管理台帳作成部５１は正確な管理台帳９１を作成することができない。
【0079】
図６は、スチームトラップ５０の設置レイアウトの一例を示す図である。仮に、前回の定期点検時には図３の設置レイアウトであった複数のスチームトラップ５０が、今回の定期点検時には図６の設置レイアウトに変更され、その変更が最新のエリアマップ情報に正しく反映されていないものとする。変更内容は、トラップナンバーＴ７のスチームトラップ５０の撤去、トラップナンバーＴ８のスチームトラップ５０からトラップナンバーＴ１１のスチームトラップ５０への交換、及び、トラップナンバーＴ１０のスチームトラップ５０の追加である。
【0080】
定期点検の作業者は、診断装置１を携帯してプラント内を移動することにより、各スチームトラップ５０を順に点検する。診断装置１には、図３に対応するエリアマップ情報に基づいて作成された管理台帳９１が記憶されている。
【0081】
作業者は、管理台帳９１を参照することによって座標（Ｘ８，Ｙ３）で示される位置に到着しても、そこにあるはずのトラップナンバーＴ７のスチームトラップ５０を発見できない。
【0082】
この場合、作業者は、操作部１３によって管理台帳９１の修正を行う。作業者によるスイッチ操作等に応じて操作部１３から制御部１１に修正信号が入力されることにより、制御部１１は、トラップナンバーＴ７のスチームトラップ５０に対応する項目を削除する内容の、管理台帳９１の修正処理を実行する。
【0083】
また、作業者は、管理台帳９１を参照することによって座標（Ｘ８，Ｙ６）で示される位置に到着すると、そこにはトラップナンバーＴ８ではなくトラップナンバーＴ１１のスチームトラップ５０があることを認識する。作業者は、管理台帳９１に示されているスチームトラップ５０の型式と、実際に設置されているスチームトラップ５０の型式とを比較することで、スチームトラップ５０が交換されたと判断することができる。
【0084】
この場合、作業者は、操作部１３によって管理台帳９１の修正を行う。作業者によるスイッチ操作等に応じて操作部１３から制御部１１に修正信号が入力されることにより、制御部１１は、トラップナンバーＴ８のスチームトラップ５０に対応する項目をトラップナンバーＴ１１のスチームトラップ５０に対応する項目に上書きする内容の、管理台帳９１の修正処理を実行する。
【0085】
また、作業者は、トラップナンバーＴ６のスチームトラップ５０からトラップナンバーＴ３のスチームトラップ５０へ移動する途中で、トラップナンバーＴ１０のスチームトラップ５０が追加されていることに気付いた場合には、操作部１３によって管理台帳９１の修正を行う。
【0086】
作業者によるスイッチ操作等に応じて操作部１３から制御部１１に修正信号が入力されることにより、制御部１１は、トラップナンバーＴ６のスチームトラップ５０に対応する行の次の行に、トラップナンバーＴ１０のスチームトラップ５０に対応する項目を追加する内容の、管理台帳９１の修正処理を実行する。
【0087】
診断装置１は、管理台帳９１の修正内容をデータ処理装置２及びサーバ装置３に送信する。データ処理装置２及びサーバ装置３は、受信した修正内容を反映させるように、それぞれが記憶している管理台帳９１を修正する。
【0088】
図７は、管理台帳９１の一例を示す図である。管理台帳９１が修正されることにより、上述したスチームトラップ５０の変更が全て反映されている。
【0089】
このように、診断装置１の表示部１４には、各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１に関連付けて、スチームトラップ５０の型式を含む属性情報Ｉ３が表示される。従って、あるスチームトラップ５０が交換されていて、その交換の情報が管理台帳９１に反映されていなかったとしても、表示部１４に表示されている型式と実際のスチームトラップ５０の型式とを作業者が比較することによって、スチームトラップ５０が交換されたと判断することができる。そして、その交換の情報が反映されるように管理台帳９１を更新することにより、更新後の管理台帳９１によってスチームトラップ５０を正確に管理することが可能となる。
【0090】
＜まとめ＞
本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム１００によれば、サーバ装置３の記憶部７３（管理情報記憶部）は、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５が絶対位置情報Ｉ１に関連付けて記述された管理台帳９１を記憶する。また、診断装置１の記憶部１５（診断データ記憶部）は、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５を絶対位置情報Ｉ１に関連付けて記憶する。また、データ処理装置２の通信部４６（送信部）は、診断装置１から取得した各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、サーバ装置３に送信する。そして、サーバ装置３の管理台帳更新部８１（管理情報更新部）は、データ処理装置２から受信した各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５に基づいて、管理台帳９１を更新する。このように、診断装置１、データ処理装置２、及びサーバ装置３の各々において、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５は絶対位置情報Ｉ１に関連付けられている。従って、診断装置１は管理台帳９１に基づいて各スチームトラップ５０の絶対位置を特定できるため、作業者は、スチームトラップ５０の設置箇所を示すエリアマップ情報等の参照が不要となる。また、スチームトラップ５０が追加又は撤去され、その情報が管理台帳９１に正しく反映されていない場合であっても、作業者は、管理台帳９１に含まれている絶対位置情報Ｉ１を参照することによって、スチームトラップ５０が追加又は撤去されたと判断することができる。その結果、点検作業における作業効率を向上できるとともに、スチームトラップ５０を正確に管理することが可能となる。
本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム１００によれば、サーバ装置３の記憶部７３（管理情報記憶部）は、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５が絶対位置情報Ｉ１に関連付けて記述された管理台帳９１を記憶する。また、診断装置１の記憶部１５（診断データ記憶部）は、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５を絶対位置情報Ｉ１に関連付けて記憶する。また、データ処理装置２の通信部４６（送信部）は、診断装置１から取得した各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５を、サーバ装置３に送信する。そして、サーバ装置３の管理台帳更新部８１（管理情報更新部）は、データ処理装置２から受信した各スチームトラップ５０の絶対位置情報Ｉ１及び診断結果情報Ｉ５に基づいて、管理台帳９１を更新する。このように、診断装置１、データ処理装置２、及びサーバ装置３の各々において、各スチームトラップ５０の診断結果情報Ｉ５は絶対位置情報Ｉ１に関連付けられている。従って、診断装置１は管理台帳９１に基づいて各スチームトラップ５０の絶対位置を特定できるため、作業者は、スチームトラップ５０の設置箇所を示すエリアマップ情報等の参照が不要となる。また、スチームトラップ５０が追加又は撤去され、その情報が管理台帳９１に正しく反映されていない場合であっても、作業者は、管理台帳９１に含まれている絶対位置情報Ｉ１を参照することによって、スチームトラップ５０が追加又は撤去されたと判断することができる。その結果、点検作業における作業効率を向上できるとともに、スチームトラップ５０を正確に管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
１ 診断装置
２ データ処理装置
３ サーバ装置
１１ 制御部
１２ 測定部
１４ 表示部
１５ 記憶部
３１ 診断部
４６ 通信部
５１ 管理台帳作成部
５２ 取得部
６１ 位置情報設定部
６２ 順序設定部
７２ 通信部
７３ 記憶部
８１ 管理情報更新部
９１ 管理台帳
１００ スチームトラップ管理システム
２ データ処理装置
３ サーバ装置
１１ 制御部
１２ 測定部
１４ 表示部
１５ 記憶部
３１ 診断部
４６ 通信部
５１ 管理台帳作成部
５２ 取得部
６１ 位置情報設定部
６２ 順序設定部
７２ 通信部
７３ 記憶部
８１ 管理情報更新部
９１ 管理台帳
１００ スチームトラップ管理システム
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】