(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098153
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】回転角センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
G01D5/245 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211532
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敏之
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA41
2F077JJ01
2F077JJ23
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN18
2F077PP11
2F077VV02
2F077VV31
(57)【要約】
【課題】低コスト、且つ、コンパクトに構成できる、精度良く回転角を検出することが可能な回転角センサを提供する。
【解決手段】回転角センサ1は、回転力が入力される入力部材10と、入力部材10の回転中心Oと同軸心上に設けられ、入力部材10と共に回転する回転部材20と、回転部材20に支持され、回転部材20の周方向に沿って環状に設けられる複数の永久磁石30と、複数の永久磁石30の夫々の外周面31に密着して設けられ、複数の永久磁石30の夫々と共に回転中心を回転軸として回転する磁性体からなる磁性部材40と、永久磁石30及び磁性部材40と共に、回転部材20を収容するハウジング50と、回転部材20の径方向内側においてハウジング50に支持され、永久磁石30の磁界に基づく磁束の磁束密度を検出する磁気検出素子60と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転角を検出する回転角センサであって、
検出対象である前記回転角の基となる回転力が入力される入力部材と、
前記入力部材の回転中心と同軸心上に設けられ、前記入力部材と共に回転する回転部材と、
前記回転部材に支持され、前記回転部材の周方向に沿って環状に設けられる複数の永久磁石と、
複数の前記永久磁石の夫々の外周面に密着して設けられ、複数の前記永久磁石の夫々と共に前記回転中心を回転軸として回転する磁性体からなる磁性部材と、
前記永久磁石及び前記磁性部材と共に、前記回転部材を収容するハウジングと、
前記回転部材の径方向内側において前記ハウジングに支持され、前記永久磁石の磁界に基づく磁束の磁束密度を検出する磁気検出素子と、
を備える回転角センサ。
【請求項2】
前記磁性部材における前記永久磁石に対向する面の面積が、当該磁性部材に密着して設けられる前記永久磁石における前記外周面の面積の10分の1以下である請求項1に記載の回転角センサ。
【請求項3】
前記磁性部材の体積が、当該磁性部材に密着して設けられる前記永久磁石の体積の3分の2以下である請求項1又は2に記載の回転角センサ。
【請求項4】
前記永久磁石における前記外周面の重心の位置に対する当該永久磁石に密着して設けられる前記磁性部材における前記永久磁石に密着した面の重心の位置のずれ量が、前記永久磁石における前記外周面におけるずれ方向に沿う長さの10分の1以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【請求項5】
前記永久磁石における前記外周面の形状と当該永久磁石の前記外周面に密着して設けられる前記磁性部材における前記永久磁石に密着した面の形状とが互いに相似である請求項1から4のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【請求項6】
前記磁性部材は、前記入力部材に固定され、前記入力部材と共に回転する板状部と、当該板状部から前記環状に設けられた前記複数の永久磁石の軸方向に沿って延出する延出部とを有し、前記延出部が前記永久磁石の前記外周面に密着している請求項1から5のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角を検出する回転角センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体の回転角を検出するためにセンサが利用されてきた。この種のセンサには、回転体の周方向に沿って互いに異なる磁極が隣接するように永久磁石を配置し、この永久磁石に起因した磁束密度や磁界の強さを検出した結果に基づき回転体の回転角を検出するものがある。この種のセンサとして、下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には角度センサが記載されている。この角度センサは、固定部材と、固定部材に対して相対回転可能な回転体と、回転体に固定される第1磁石及び第1磁石と対向して回転体に固定されるとともに第1磁石と異なる磁極の第2磁石と、第1磁石と第2磁石との間に発生する磁界中に配置されるように固定部材に固定され、磁束を感知する磁気感知方向に対して垂直な感磁面を有し、磁束密度の磁気感知方向成分に対応した電気信号を出力する磁電変換素子とを備えて構成される。
【0004】
特許文献1に記載のセンサを車両に搭載して使用する場合、搭載箇所によっては高温環境に晒され、磁石(永久磁石)のパーミアンス係数が小さいと不可逆減磁が生じる可能性がある。このような減磁が生じた場合には、磁電変換素子の検出に必要な磁束密度を確保することができず、精度良く検出することができなくなる。
【0005】
そこで、パーミアンス係数を大きくすることが考えられるが、このような方法として、永久磁石の磁化方向の厚みを大きくすることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-42709号公報
【特許文献2】特開2017-17955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した方法のように、永久磁石の磁化方向の厚みを大きくすると、永久磁石のサイズが大きくなることから材料費が増大し、また、センサのサイズも大きくなることから、センサを搭載する際の自由度が低下する。
【0008】
そこで、低コスト、且つ、コンパクトに構成できる、精度良く回転角を検出することが可能な回転角センサが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転角センサの特徴構成は、回転角を検出する回転角センサであって、検出対象である前記回転角の基となる回転力が入力される入力部材と、前記入力部材の回転中心と同軸心上に設けられ、前記入力部材と共に回転する回転部材と、前記回転部材に支持され、前記回転部材の周方向に沿って環状に設けられる複数の永久磁石と、複数の前記永久磁石の夫々の外周面に密着して設けられ、複数の前記永久磁石の夫々と共に前記回転中心を回転軸として回転する磁性体からなる磁性部材と、前記永久磁石及び前記磁性部材と共に、前記回転部材を収容するハウジングと、前記回転部材の径方向内側において前記ハウジングに支持され、前記永久磁石の磁界に基づく磁束の磁束密度を検出する磁気検出素子と、を備えている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、回転部材における永久磁石の外周面側に磁性部材を密着して設けることで、永久磁石のサイズを大きくすることなく、パーミアンス係数を増大させることができる。また、磁性部材が永久磁石の外周面とハウジングの内周面との間隙に入り込むような大きさであれば、回転部材のサイズを変更することなく磁性部材を配置することができる。したがって、低コスト、且つ、コンパクトに回転角センサを構成することが可能となる。また、パーミアンス係数が増大することで、磁気検出素子が検出する磁束密度を確保し、精度良く回転角を検出することが可能となる。
【0011】
また、前記磁性部材における前記永久磁石に対向する面の面積が、当該磁性部材に密着して設けられる前記永久磁石における前記外周面の面積の10分の1以下であると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、磁性部材における永久磁石に対向する面の面積に関し、パーミアンス係数の改善効果を、最も効率良く得ることが可能となる。
【0013】
また、前記磁性部材の体積が、当該磁性部材に密着して設けられる前記永久磁石の体積の3分の2以下であると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、磁性部材の体積に関し、パーミアンス係数の改善効果を、最も効率良く得ることが可能となる。
【0015】
また、前記永久磁石における前記外周面の重心の位置に対する当該永久磁石に密着して設けられる前記磁性部材における前記永久磁石に密着した面の重心の位置のずれ量が、前記永久磁石における前記外周面におけるずれ方向に沿う長さの10分の1以下であると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、永久磁石に対する磁性部材の位置に関し、パーミアンス係数の改善効果を、最も効率良く得ることが可能となる。
【0017】
また、前記永久磁石における前記外周面の形状と当該永久磁石の前記外周面に密着して設けられる前記磁性部材における前記永久磁石に密着した面の形状とが互いに相似であると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、永久磁石に対する磁性部材の位置決めを容易に行うことが可能となる。したがって、回転部材に対する永久磁石及び磁性部材の組み付けを簡便に行うことが可能となる。
【0019】
また、前記磁性部材は、前記入力部材に固定され、前記入力部材と共に回転する板状部と、当該板状部から前記環状に設けられた前記複数の永久磁石の軸方向に沿って延出する延出部とを有し、前記延出部が前記永久磁石の前記外周面に密着していると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、パーミアンス係数の最小部分に絞って、対策することができ、効率良くパーミアンス係数を増大させることができる。また、磁性部材を一つの部品で構成できるので、部品点数を削減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図5】永久磁石と磁性部材との関係を示す図である。
【
図6】磁性部材の面積と磁性部材の中央部におけるパーミアンス係数との関係を示す図である。
【
図7】磁性部材の体積と磁性部材の中央部におけるパーミアンス係数との関係を示す図である。
【
図8】永久磁石に対する磁性部材の位置ずれを示す図である。
【
図9】永久磁石に対する磁性部材の位置ずれ量と磁性部材の中央部におけるパーミアンス係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る回転角センサは、精度良く回転角を検出することができるように構成される。以下、本実施形態の回転角センサ1について説明する。例えば、回転角センサ1は、クラッチ操作やシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエータを用いた車両に搭載されるトランスミッションにおいて、クラッチ操作用のアクチュエータや、シフト操作用のアクチュエータや、シフトセレクト操作用のアクチュエータの回転角を検出するのに利用可能である。係る場合、3つの回転角センサ1が利用される。
【0023】
図1はこのような回転角センサ1の展開図であり、
図2は回転角センサ1の側方断面図である。
図1及び
図2に示されるように、回転角センサ1は、入力部材10、回転部材20、永久磁石30、磁性部材40、ハウジング50、磁気検出素子60を備えている。
【0024】
入力部材10は、検出対象である回転角の基となる回転力が入力される。検出対象である回転角とは、回転角センサ1が検出する回転角である。この回転角は入力部材10を介して回転角センサ1に入力される。本実施形態では、入力部材10は柱状の軸体で構成され、上述した3つのアクチュエータの夫々の回転軸の夫々と、3つの回転角センサ1の夫々の入力部材10とが連結される。これにより、入力部材10に検出対象であるアクチュエータの回転軸から回転力が入力され、入力部材10がアクチュエータの回転軸の回転に応じて回転することが可能となる。
【0025】
回転部材20は、入力部材10の回転中心Oと同軸心上に設けられ、入力部材10と共に回転する。本実施形態では、回転部材20は樹脂を用いて筒状体で形成され、この筒状体の軸心が入力部材10の回転中心O(入力部材10の軸心)と一致して設けられる。回転部材20は、後述する永久磁石30及び磁性部材40を支持するように構成される。具体的には、例えば回転部材20を樹脂成形により構成する際に、永久磁石30及び磁性部材40を内包して一体化するように構成される。上述した入力部材10は、回転部材20に内包するように樹脂成形された磁性部材40にネジ11(
図2参照)を介して締結固定される。これにより、回転部材20は入力部材10の回転に応じて一体回転する。
【0026】
永久磁石30は、回転部材20に支持され、回転部材20の周方向に沿って環状に複数設けられる。回転部材20に支持されるとは、永久磁石30が回転部材20と共に一体回転可能に構成されることを意味する。本実施形態では、永久磁石30は、回転部材20の樹脂成形時に筒状部分21において内包されるように形成されることで、回転部材20に支持される。筒状部分21とは、回転部材20における当該回転部材20の軸心に沿って延出する部分である。
図3には、回転部材20の平面図が示される。また、
図4には、回転部材20を
図3のIV線方向から見た図が示される。
図3に示されるように、筒状部分21は軸方向視が円環状に構成される。永久磁石30は直方体で構成され、回転部材20の周方向に沿って互いに間隔を有する状態で、筒状部分21に複数設けられる。本実施形態では、4つの永久磁石30が設けられる。4つの永久磁石30の夫々は、互いに回転部材20の周方向に沿って隣接し合うもの同士の回転部材20の軸心側を向く面が、互いに異なる極性となるように配置される。
【0027】
磁性部材40は、複数の永久磁石30の夫々の外周面31に密着して設けられ、複数の永久磁石30の夫々と共に回転中心を回転軸として回転する磁性体で構成される。複数の永久磁石30の夫々とは、本実施形態では4つの永久磁石30の夫々である。永久磁石30の夫々の外周面31とは、回転部材20に支持された状態の永久磁石30において、回転部材20の軸心側とは反対側の面である。外周面31に密着して設けられるとは、外周面31と隙間なく設けられるという意味に限定されず、例えば樹脂成形により樹脂が流れ込む程度の隙間を有して設けられることも含まれる。本実施形態では、磁性部材40は、回転部材20の樹脂成形時に永久磁石30と共に回転部材20に内包されるように形成され、回転部材20に支持される。また、上述したように永久磁石30は回転部材20の周方向に沿って環状に配置され、磁性部材40はこの永久磁石30の外周面31に密着して設けられる。これにより、磁性部材40は、回転中心が環状に設けられた永久磁石30の回転軸心と一致し、回転部材20の回転に応じて回転することが可能となる。このような磁性部材40は、磁性体で構成される。
【0028】
本実施形態では、磁性部材40は、板状部41と延出部42とを有する。板状部41は、入力部材10に固定され、入力部材10と共に回転する。板状部41は、回転部材20における軸方向一方側の開口部分に蓋をするように設けられる。板状部41の径方向中央部には、板状部41を厚さ方向に貫通する貫通孔43が形成される。本実施形態では、貫通孔43は平面視が四角形状で形成され、入力部材10の軸方向一方側の端面に形成された平面視が四角形状の凸状体12が当該貫通孔43に挿入された状態で、上述したネジ11により締結固定される。これにより、入力部材10と板状部41(磁性部材40)とが一体回転することが可能となる。
【0029】
図4に示されるように、延出部42は、板状部41から環状に設けられた複数の永久磁石30の軸方向に沿って延出するように構成される。上述したように永久磁石30は、回転部材20の筒状部分21に周方向に沿って互いに離間した状態で複数設けられる。延出部42は、複数の永久磁石30の間隔に応じて、板状部41の外縁部44から径方向外側に延出し、その外端部から軸方向に沿って立設するように形成される。したがって、板状部41と延出部42とは一体で構成される。このように形成された磁性部材40は、
図3に示されるように、延出部42が、平面である永久磁石30の外周面31と曲面である回転部材20の筒状部分21の内周面との間隙に配置されると共に、永久磁石30の外周面31に密着して設けられる。これにより、回転部材20のサイズを変更することなく磁性部材40を配置することができるので、回転部材20の大型化を防止できる。
【0030】
ハウジング50は、永久磁石30及び磁性部材40と共に、回転部材20を収容する。本実施形態では、ハウジング50は樹脂を用いて形成される。また、ハウジング50は、後述する磁気検出素子60と電気的に接続される複数の端子72を有する端子ユニット70が組み付けられた端子ユニット支持部71を、複数の端子72が端子口53に並んだ状態で有底の円柱状空間81に収容する。この時、端子ユニット支持部71は、複数の端子72の夫々の他方側の端子73を介して円柱状空間81において、磁気検出素子60が実装された基板61と電気的に接続される。端子ユニット支持部71は、ハウジング50を樹脂成形により構成する際に、端子ユニット支持部71の一部を内包して一体化するように構成される。
【0031】
基板61は、端子73と半田付けされ、キャップ部材82により覆われる。キャップ部材82は、ハウジング50に固定される。このキャップ部材82を永久磁石30及び磁性部材40を内包した回転部材20で覆い、Oリング83をハウジング50の溝部88に嵌め込んだ状態で筐体Aに組み付けられる。ハウジング50には、1組のカラー89が嵌め込まれ、ネジ91を介して筐体Aに締結固定される。
【0032】
磁気検出素子60は、回転部材20の径方向内側においてハウジング50に支持され、永久磁石30の磁界に基づく磁束の磁束密度を検出する。上述したように磁気検出素子60は基板61に実装され、回転部材20の径方向内側においてハウジング50に固定された端子ユニット支持部71に固定される。したがって、磁気検出素子60はハウジング50に支持される。磁気検出素子60は、所謂ホール素子を備えて構成され、検出した磁束密度に応じた電気信号を出力する。
【0033】
今回、本発明の発明者らにより、次に示す永久磁石30と磁性部材40との関係が見出された。今回は当該関係を見出すのに用いたモデルとして、
図5に示すものが利用された。永久磁石30は縦が10mm、横が10mm、厚さが1.5mmのものを利用し、磁性部材40は、縦がXmm、横がXmm、厚さがTmmとした。永久磁石30の磁化の方向は、永久磁石30における磁性部材40が密着していない側の面(すなわち内周面)32から密着している側の面(すなわち外周面31)に向かうものとした。
図5では、磁化の方向を破線で示している。
【0034】
シミュレーションにより、磁性部材40を設けない場合と、磁性部材40を設けた場合とのいずれの場合においても、磁化の方向における上流側の面(磁性部材40を設けた場合における磁性部材40が密着していない側の面32)における中央部が、パーミアンス係数が最小値となる部位であることがわかった。このため、永久磁石30における中央部に磁性部材40を設けると、面32の中央部におけるパーミアンス係数が増加し好適となる。
【0035】
図6は、最小パーミアンス係数と、磁性部材40の面積(Xmm×Xmm)との関係を示す図である。
図6では、縦軸が最小パーミアンス係数であり、横軸が磁性部材40の面積である。また、磁性部材40の厚さTを変更して、最小パーミアンス係数と磁性部材40の面積との関係をシミュレーションした。今回は、
図6の凡例で示されるように、T=0.5mm、1.5mm、2.5mm、3.5mm、4.5mmとしている。
図6に示されるように、磁性部材40の面積が所定値(本シミュレーションの例では10mm
2)より大きくなると、磁性部材40による最小パーミアンス係数の増加効果が小さくなる。
図6では、永久磁石30の面積が100mm
2であることから、パーミアンス係数が効率良く増加する磁性部材40における永久磁石30に対向する面の面積が、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30における外周面31の面積の10分の1以下であることがわかった。換言すれば、永久磁石30の面積に対する磁性部材40の面積の割合が、10分の1(=0.1)以下であれば、磁性部材40における永久磁石30に対向する面の面積に関し、パーミアンス係数の改善効果を最も効率良く得ることが可能となる。
【0036】
図7は、
図6の結果に基づく、最小パーミアンス係数と磁性部材40の体積との関係を示したものである。
図7では、縦軸が最小パーミアンス係数であり、横軸が磁性部材40の体積である。今回は、
図7の凡例で示されるように、磁性部材40における永久磁石30に密着する面の面積を、1mm
3、9mm
3、25mm
3、49mm
3、81mm
3としている。
図7に示されるように、磁性部材40の体積が所定値(本シミュレーションの例では100mm
3)より大きくなると、磁性部材40による最小パーミアンス係数の増加効果が小さくなる。永久磁石30の体積は150mm
3であることから、パーミアンス係数が効率良く増加する磁性部材40の体積が、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30の体積の3分の2以下であると良いことがわかった。換言すれば、磁性部材40の体積に関し、永久磁石30の体積に対する磁性部材40の体積の割合が、3分の2(≒0.667)以下であれば、パーミアンス係数の改善効果を最も効率良く得ることが可能となる。
【0037】
以上の結果より、磁性部材40の面積は永久磁石30の面積の10分の1程度とし、また、磁性部材40の厚みを永久磁石30の体積の3分の2以下となるようにすると、磁性部材40の配置による最小パーミアンス係数の増加の効果を高めることが可能となる。
【0038】
次に、永久磁石30に対して磁性部材40の位置をずらした場合のパーミアンス係数の影響について説明する。この影響を見出すのに用いたモデルとして、
図8に示すものが利用された。永久磁石30は縦が10mm、横が10mm、厚さが1.5mmのものを利用し、磁性部材40は、面積が10mm
2、厚さが2mmとした。永久磁石30における磁性部材40と密着する側の面(外周面31)の重心の位置30Aに対する当該永久磁石30に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の重心の位置40Aのずれ量をUとした。
【0039】
図9は、最小パーミアンス係数と、位置ずれ量Uとの関係を示す図である。
図9では、縦軸が最小パーミアンス係数であり、横軸が位置ずれ量Uである。
図9に示されるように、永久磁石30における上記重心の位置30Aに対する、磁性部材40における上記重心の位置40Aの位置ずれ量Uが1mmを超えると、磁性部材40による最小パーミアンス係数の増加効果が小さくなる。
図9では、永久磁石30は1辺が10mmの正方形であることから、パーミアンス係数が効率良く増加する永久磁石30における外周面31の重心の位置30Aに対する当該永久磁石30に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の重心の位置40Aのずれ量Uが、永久磁石30における外周面31におけるずれ方向に沿う長さの10分の1以下であると良いことがわかった。換言すれば、永久磁石30に対する磁性部材40の位置に関し、永久磁石30に対する磁性部材40のずれ量Uは、永久磁石30に対する磁性部材40のずれ方向に沿う永久磁石30の長さの10分の1(=0.1)以下であれば、パーミアンス係数の改善効果を最も効率良く得ることが可能となる。
【0040】
上記実施形態では、永久磁石30及び磁性部材40は共に平面視が正方形である場合のモデルを用いた。すなわち、永久磁石30における外周面31の形状と当該永久磁石30の外周面31に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の形状とが互いに相似である例を挙げて説明した。これによれば、上述したように、永久磁石30に対する磁性部材40の位置決めを容易に行うことが可能となる。したがって、回転部材20に対する永久磁石30及び磁性部材40の組み付けを簡便に行うことが可能となる。
【0041】
以上より、回転部材20の外径サイズや、永久磁石30の形状や厚さを変えることなく、磁性部材40を永久磁石30の外周面31に密着して設けることができる。したがって、製造コストの増大や、製品サイズの大型化をすることなく回転角センサ1を構成することが可能となる。このため、例えば回転角センサ1を車両に搭載する際に、配置上の自由度が悪化することを防止できる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、回転角センサ1は車両に搭載されるトランスミッションに設けられるアクチュエータの回転角を検出するのに利用可能であるとして説明したが、回転角センサ1は車両に搭載されるトランスミッションに設けられるアクチュエータの回転角の検出以外にも用いることが可能である。
【0043】
上記実施形態では、磁性部材40は永久磁石30の外周面31に密着して設けられるとして説明したが、磁性部材40は永久磁石30の外周面31側に設けられていれば、永久磁石30と離間した状態で設けることも可能である。すなわち、永久磁石30の外周面31側に所定の形状をした磁性部材40を密着して設けると良い。
【0044】
上記実施形態では、磁性部材40における永久磁石30に対向する面の面積が、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30における外周面31の面積の10分の1以下であるとして説明したが、磁性部材40における永久磁石30に対向する面の面積は、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30における外周面31の面積の10分の1より大きく構成することも可能である。
【0045】
上記実施形態では、磁性部材40の体積が、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30の体積の3分の2以下であるとして説明したが、磁性部材40の体積は、当該磁性部材40に密着して設けられる永久磁石30の体積の3分の2より大きく構成することも可能である。
【0046】
上記実施形態では、永久磁石30における外周面31の重心の位置30Aに対する当該永久磁石30に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の重心の位置40Aのずれ量が、永久磁石30における外周面31におけるずれ方向に沿う長さの10分の1以下であるとして説明したが、永久磁石30における外周面31の重心の位置30Aに対する当該永久磁石30に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の重心の位置40Aのずれ量は、永久磁石30における外周面31におけるずれ方向に沿う長さの10分の1より大きく構成することも可能である。
【0047】
上記実施形態では、永久磁石30における外周面31の形状と当該永久磁石30の外周面31に密着して設けられる磁性部材40における永久磁石30に密着した面の形状とが互いに相似であるとして説明したが、磁性部材40の平面視は例えば
図10の(A)に示すような円形であっても良いし、
図10の(B)に示すようなひし形であっても良いし、
図10の(C)に示すような三角形であっても良い。この場合、上述した磁性部材40における永久磁石30に密着した面の面積が、永久磁石30における外周面31の面積の10分の1以下となるように構成すれば、最小パーミアンス係数に対する向上効果は同様である。
【0048】
上記実施形態では、磁性部材40は、入力部材10に固定され、入力部材10と共に回転する板状部41と、当該板状部41から環状に設けられた複数の永久磁石30の軸方向に沿って延出する延出部42とを有し、延出部42が永久磁石30の外周面31に密着しているとして説明したが、磁性部材40は板状部41と延出部42とは、互いに別体で設けることも可能であるし、複数の延出部42同士のみを一体で構成することも可能である。
【0049】
本発明は、回転角を検出する回転角センサに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:回転角センサ
10:入力部材
20:回転部材
30:永久磁石
30A:位置
31:外周面
40:磁性部材
40A:位置
41:板状部
42:延出部
50:ハウジング
60:磁気検出素子
O:回転中心
U:ずれ量