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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098223
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】農作業用の運搬装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 73/00 20060101AFI20220624BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20220624BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A01B73/00
B60P3/00 M
B62D53/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211637
(22)【出願日】2020-12-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月21日に杉原敦、東大輔が株式会社ひがし北海道TMRセンターで行った性能試験
(71)【出願人】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 大輔
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 泰博
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA11
2B041AB05
2B041AC17
2B041BA01
(57)【要約】
【課題】荷箱の重心を低くできるようにするとともに、収容物の積載量を多くできるようにした運搬装置を提供する。
【解決手段】収容物を収容する縦長の荷箱2と、当該荷箱2を支持しながら圃場を走行できるようにした左右のタイヤ3とを備えてなる運搬装置1において、前記荷箱2を、前記左右に設けられたタイヤ3の上下方向にオーバーラップする位置に収容物を収容する下方収容部21と、前記左右のタイヤ3の上方で左右方向にタイヤ3とオーバーラップする位置に収容物を収容する上方収容部22とを有するように構成し、当該荷箱2の収容物を後方に押圧する押圧板41を備えた押圧機構4を設けるようにする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を収容する縦長状の荷箱と、
当該荷箱を支持しながら圃場を走行する左右のタイヤと、
を備えた運搬装置において、前記荷箱を、
前記左右に設けられたタイヤの上下方向にオーバーラップする位置に収容物を収容する下方収容部と、
前記左右のタイヤの上方で左右方向にタイヤとオーバーラップするように収容物を収容する上方収容部と、
を有するように構成し、
当該荷箱の収容物を後方に押圧する押圧板を設けるようにしたことを特徴とする運搬装置。
【請求項2】
前記タイヤの上方に面する荷箱の裏面を傾斜させるようにした請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記下方収容部と上方収容部の間の底面に、中心側が下方となるように傾斜させた傾斜部を設けるようにした請求項1に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記押圧板が、荷箱の内壁に接する一枚の板状部材で構成されたものである請求項1に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記下方収容部に位置する押圧板を、鉛直方向の面となるように設け、前記上方収容部に位置する押圧板を上方が前方側に向くように傾斜させた請求項1に記載の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、粗飼料などを収容して運搬できるようにした農作業用の運搬装置に関するものであり、より詳しくは、収容物の積載量を多くするとともに、荷箱の重心を低くして走行安定性を確保できるようにした農作業用の運搬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、圃場で刈り取られた粗飼料は、収穫機によって運搬装置の荷箱に積み込まれ、集草場などに運搬される。そして、その集草場に集められた粗飼料を元に、ロールベーラーなどを用いてロールベールが成形され、あるいは、そのまま家畜に飼料として与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-111036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の運搬装置は、図7に示すように、タイヤ3の真上に縦長状の荷箱61を設けるようにしているため、どうしても荷箱61の重心位置が高くなってしまう。また、この荷箱61に収容される粗飼料に水分が多く含まれている場合は、収容物が非常に重くなるため、荒れた圃場を走行する際に、不安定になってしまうといった問題があった。
【0005】
これに対して、タイヤを荷箱の側方にはみ出させるように設けて、左右のタイヤの隙間に荷箱を下げるようにすることも考えられるが、このようにすると、運搬装置の左右幅が大きくなって、小回りが利かなくなるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、荷箱の重心を低くできるようにするとともに、収容物の積載量を多くできるようにした運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、収容物を収容する縦長状の荷箱と、当該荷箱を支持しながら圃場を走行する左右のタイヤとを備えた運搬装置において、前記荷箱を、前記左右に設けられたタイヤの上下方向にオーバーラップする位置に収容物を収容する下方収容部と、前記左右のタイヤの上方で左右方向にタイヤとオーバーラップするように収容物を収容する上方収容部と、を有するように構成し、当該荷箱の収容物を後方に押圧する押圧板を設けるようにしたものである。
【0008】
このように構成すれば、左右のタイヤの隙間に収容物を収容することができるため、荷箱の重心を低くできるとともに、収容物の積載量を多く確保することができるようになる。また、下方収容部と上方収容部の間に段差が生じた場合であっても、押圧板によって収容物を後方に押圧することができるため、排出残しを生ずるようなことがなくなる。
【0009】
また、このような発明において、前記タイヤの上方に面する荷箱の裏面を傾斜させるように構成する。
【0010】
このように構成すれば、タイヤと荷箱のクリアランスを大きく確保することができるようになり、荒れた圃場を走行する場合であっても、タイヤが荷箱に接触するようなことがなくなる。
【0011】
さらに、前記下方収容部と上方収容部の間の底面に、中心側が下方となるように傾斜させた傾斜部を設けるようにする。
【0012】
このように構成すれば、上から収容物を投入する際に、その傾斜に沿って収容物を下方収容部に収容させることができ、ブリッジなどが生じて空洞を生じてしまうようなことがなくなる。
【0013】
また、前記押圧板を、荷箱の内壁に接する一枚の板状部材によって構成する。
【0014】
このように構成すれば、下方収容部と上方収容部の間に段差や傾斜などが存在する場合であっても、確実に押圧板によって収容物を後方に押し込むことができるようになる。
【0015】
また、前記下方収容部に位置する押圧板を、鉛直方向の面となるように設け、前記上方収容部に位置する押圧板を上方が前方側に向くように傾斜させる。
【0016】
このように構成すれば、押圧板で収容物を押圧する際に、収容物を上方に持ち上げて搬送させることができるため、押圧荷重を小さくして収容物を搬送させることができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収容物を収容する縦長状の荷箱と、当該荷箱を支持しながら圃場を走行する左右のタイヤとを備えた運搬装置において、前記荷箱を、前記左右に設けられたタイヤの上下方向にオーバーラップする位置に収容物を収容する下方収容部と、前記左右のタイヤの上方で左右方向にタイヤとオーバーラップするように収容物を収容する上方収容部と、を有するように構成し、当該荷箱の収容物を後方に押圧する押圧板を設けるようにしたので、左右のタイヤの隙間に収容物を収容することができ、荷箱の重心を低くできるとともに、収容物の積載量を多く確保することができるようになる。また、下方収容部と上方収容部の間に段差が生じた場合であっても、押圧板によって収容物を後方に押圧することができるため、排出残しを生ずるようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態を示す運搬装置の外観斜視図
図2】同形態における側面概略図
図3】同形態における平面概略図
図4】同形態における底面概略図
図5】同形態における断面概略図
図6】従来例における運搬装置との重心を比較した図
図7】従来例における運搬装置を示した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
この実施の形態における運搬装置1は、トラクターなどの牽引車に牽引されて使用されるものであって、図1に示すように、収容物を収容する荷箱2と、その荷箱2を支持した状態で圃場を走行できるようにしたタイヤ3と、荷箱2に収容された収容物を後方から排出する排出部5とを設けて構成される。そして、図5に示すように、その荷箱2を、左右のタイヤ3の隙間に入り込むように設けられた下方収容部21と、タイヤ3の上方側に設けられた上方収容部22とを備えて構成し、その下方収容部21や上方収容部22に収容された収容物を後方の排出部5に向けて押圧する押圧機構4とを備えて構成するようにしたものである。そして、このように構成することによって、荷箱2の重心を下方に下げて走行安定性を確保できるようにするとともに、収容物の積載量を多く確保できるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
まず、荷箱2は、図1に示すように、走行方向に沿って縦長状に構成されるものであって、その内側に、図5に示すように、左右のタイヤ3の隙間に入り込むように設けられた下方収容部21と、この左右のタイヤ3の上方に設けられた上方収容部22と、この下方収容部21と上方収容部22との境界部分に設けられた傾斜部23とを設けて構成される。そして、このように構成することによって、側面視において(図2参照)、荷箱2の下方収容部21とタイヤ3を上下方向にオーバーラップさせるとともに、平面視(図3参照)において、荷箱2とタイヤ3と左右方向にオーバーラップさせるようにしている。
【0022】
この荷箱2のうち、下方収容部21は、タイヤ3の上面部から中心に向けて30%から50%の範囲内でオーバーラップさせるように設けられ、その底面部21aに収容物を載せて収容できるように構成されている。また、この下方収容部21の底面部21aの両脇に設けられた側面部21bは、鉛直方向に起立するように設けられており、その内側に、後述する押圧板41をガイドするための板状のレール21cを設けるようにしている。
【0023】
一方、上方収容部22は、各タイヤ3の幅の70%以上(好ましくは90%以上)をオーバーラップさせるように設けられるものであって、これによって収容物の積載量を多く確保できるようにしている。なお、この上方収容部22の片側の側面部22aの上部には、高さを反対側の側面部22aよりも高くした当て板24(図1参照)を設けており、これによって、収容物投入時に、収容物が反対側からこぼれないようにしている。
【0024】
これらの下方収容部21と上方収容部22の境界部分には、中央下方に向けて傾斜させた傾斜部23を設けている。この傾斜部23は、収容物の投入時に、収容物を下方収容部21に収容させ易くしたもので、この傾斜部23に沿って収容物を滑らせ、下方収容部21に収容物を収容させるようにしている。この傾斜部23の角度については、積載量や下方収容部21への収容を考慮して、約10度から30度の範囲内に設定されるがこれに限定されるものではない。
【0025】
一方、この荷箱2を支持するタイヤ3は、図1図4などに示すように、縦長状に構成された荷箱2の後方部分に前後二対設けられるものであって、左右に跨って設けられる車軸31をサスペンション32(図4参照)で支持し、これによって上下に揺動させるようにしている。なお、このようにタイヤ3を上下に揺動させる場合、タイヤ3が上方収容部22の裏板22b(図5参照)に当たってしまう可能性がある。そこで、ここでは、タイヤ3の上方の荷箱2の裏板22bについても傾斜状にしておき、これによって、タイヤ3の上方の揺動距離を確保できるようにしている。また、このタイヤ3は、荷箱2の前後方向にわたって間欠的に設けられたリブ25とリブ25の間に設けられている(図1参照)。このリブ25は、上方収容部22から下方収容部21に下端に向けて傾斜するように側方に突出させて設けられるもので、これによって、荷箱2の強度を確保できるようにするとともに、そのリブ25とリブ25の間にタイヤ3を収容することで、荷箱2の重心を下げられるようにしている。
【0026】
このようにタイヤ3に支持された荷箱2の収容物は、押圧機構4によって後方に押圧される。この押圧機構4は、荷箱2の内壁に接するように設けられる押圧板41と、この押圧板41を後方に向けて押圧するロッド42や図示しない油圧装置などを備えて構成されている。
【0027】
このうち、押圧板41は、下方収容部21や傾斜部23、上方収容部22の内壁に接触するように設けられるもので、後方に収容物を押圧することで、排出部5から収容物を排出させるように構成されている。この押圧板41は、全体を鉛直方向に沿った板で構成することもできるが、このように構成すると、押圧板41を押圧する時に大きな荷重が必要となる。一方、押圧板41を全体的に傾斜させると、下方収容部21のガイドや、上方収容部22との境界部分の傾斜部23に接する部分も傾斜させる必要があるため、押圧板41の形成が難しくなる。そこで、この実施の形態では、下方収容部21と傾斜部23が存在する位置の下方押圧板41aを鉛直状にしておき、上方収容部22が存在する位置の上方押圧板41bを、上方を前方側(トラクター側)に向けて傾斜させるようにしている。
【0028】
このように構成された押圧板41を押圧する押圧機構4は、ロッド42を油圧装置の力によって伸縮させるように構成される。このうち、ロッド42は、大きな荷重が必要となる下方収容部21の部分を押圧するように設けられ、そこからフレームを傾斜させて押圧板41を全面的に押圧できるように構成されている。一方、油圧装置は、トラクターからの油圧によって、前後方向にスライドさせる油圧シリンダーなどで構成される。
【0029】
排出部5は、この押圧板41によって後方に押圧されてきた収容物を集草場などで排出させるようにしたものであって、荷箱2との境界部分の上部に設けられた回動部51を中心に、油圧シリンダー52を用いて上方に回動させ、後方部分を開口させるように構成されている。
【0030】
次に、このように構成された運搬装置1の作用について説明する。
【0031】
まず、収容物を荷箱2に収容する前に、運搬装置1をトラクター(図示せず)の後部中央に設けられた連結部に連結し、また、トラクターの油圧ポンプを接続する。このとき、運搬装置1の押圧板41は、前方に位置させておく。
【0032】
このようにした状態で、収穫機などを用いて収容物を荷箱2に投入していくが、その際、荷箱2の当て板24の存在していない側から収容物を投入していく。
【0033】
すると、その収容物は、上方収容部22から落下していき、上方収容部22と下方収容部21の境界部分の傾斜部23に当たって、中央部分の下方収容部21に収容されていく。そして、順次収容物を投入して上方収容部22まで収容物を収容させていくが、このとき、荷箱2に収容された収容物は、タイヤ3の上面部よりも下側に位置した状態になり、収容物が水分を多く含んでいる場合であっても、重心を低くすることができるようになる。
【0034】
そして、このように収容物を収容した状態で、所定の集草場まで移動し、そこで荷箱2の後部に設けられた排出部5を開け、押圧板41を後方に移動させながら収容物を排出する。
【0035】
この押圧板41を後方に移動させる場合は、下方押圧板41aを用いて荷箱2の下方収容部21の収容物を後方に押圧し、また、傾斜した上方押圧板41bを用いて収容物を後方に押圧する。このとき、傾斜した上方押圧板41bでは、その傾斜に沿って収容物を上方向に持ち上げながら後方に押圧することになるため、ロッド42に掛かる荷重を少なくして、押圧板41を押圧させることができるようになる。
【0036】
そして、このように押圧板41を最後部まで移動させて収容部を排出した後、排出部5を閉じるとともに、押圧板41を最前部の位置まで戻す。
【0037】
このように上記実施の形態によれば、収容物を収容する縦長状の荷箱2と、当該荷箱2を支持しながら圃場を走行する左右のタイヤ3とを備えた運搬装置1において、前記荷箱2を、前記左右に設けられたタイヤ3の上下方向にオーバーラップする位置に収容物を収容する下方収容部21と、前記左右のタイヤ3の上方で左右方向にタイヤ3とオーバーラップするように収容物を収容する上方収容部22とを有するように構成し、当該荷箱2の収容物を後方に押圧する押圧板41を設けるようにしたので、左右のタイヤ3の隙間に収容物を収容することができ、図6に示すように、荷箱2の重心を低くできるとともに、収容物の積載量を多く確保することができるようになる。また、下方収容部21と上方収容部22の間に傾斜部23などのような段差を生じている場合であっても、押圧板41によって収容物を後方に押圧することができるため、排出残しを生ずるようなことがなくなる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0039】
例えば、上記実施の形態では、下方収容部21と上方収容部22の境界部分を傾斜させて収容物を下方収容部21に落とし込むようにしたが、この境界部分を水平状にしてもよく、あるいは、湾曲状にしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、押圧板41の上方部分のみを傾斜させるようにしたが、全体的に傾斜させるようにしてもよく、あるいは、押圧板41を全体的に鉛直状にしてもよい。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、上方収容部22の側面部22aを起立させるようにしたが、この側面部を上方に広がるように傾斜させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1・・・運搬装置
2・・・荷箱
21・・・下方収容部(21a底面部、21b側面部、21cレール)
22・・・上方収容部(22a側面部)
23・・・傾斜部
24・・・当て板
25・・・リブ
3・・・タイヤ
31・・・車軸
32・・・サスペンション
4・・・押圧機構
41・・・押圧板(41a下方押圧板、41b上方押圧板)
42・・・ロッド
5・・・排出部
51・・・回動部
52・・・油圧シリンダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7