(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098228
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220624BHJP
B60C 17/04 20060101ALI20220624BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C17/04 B
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211643
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 達明
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BB01
3D131BB10
3D131BC32
3D131EB11V
3D131EB19X
3D131EB20X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131JA02
3D131JA03
(57)【要約】
【課題】タイヤ周方向に沿った主溝を備えながらもランフラット走行時に生じるバックリングを十分に抑制でき、タイヤ接地面積の低減が抑制されてランフラット耐久性の向上を図ることができるランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド30の接地面331には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第1主溝341が配置されており、第1主溝341は、底面36と、タイヤ幅方向で互いに対向する第1溝壁37および第2溝壁38と、に囲まれて形成されているとともに、第1溝壁37と第2溝壁38との間において、底面36側に形成された溝底部82と、接地面331側への開口81側に形成され、溝底部82よりも溝幅が小さい狭隘部83と、を含み、狭隘部83は、少なくとも第1溝壁37から第2溝壁38側に向かって突出形成され、第1接地面37bを有する第1突出部37Aと、第2溝壁38と、の間に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォール間に配置され、接地面を有するトレッドと、
前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライと、
前記サイドウォールに配置された補強ゴム層と、を備え、
前記トレッドの前記接地面には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第1主溝が配置されており、
前記第1主溝は、底面と、タイヤ幅方向で互いに対向する第1溝壁および第2溝壁と、に囲まれて形成されているとともに、前記第1溝壁と前記第2溝壁との間において、前記底面側に形成された溝底部と、前記接地面側への開口側に形成され、前記溝底部よりも溝幅が小さい狭隘部と、を含み、
前記狭隘部は、少なくとも前記第1溝壁から前記第2溝壁側に向かって突出形成され、第1接地面を有する第1突出部と、前記第2溝壁と、の間に形成されている、ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記狭隘部は、前記第1溝壁から前記第2溝壁側に向かって突出形成され、第1接地面を有する第1突出部と、前記第2溝壁から前記第1突出部に向かって突出形成され、第2接地面を有する第2突出部と、の間に形成されている、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記第1主溝は、前記補強ゴム層のタイヤ径方向外側端からタイヤ幅方向内側へ15mm以上離間して配置されている、請求項1または2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記第1主溝は、前記溝底部の溝幅に対する前記狭隘部の溝幅の比率が、20%以上50%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドの前記接地面には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第2主溝がさらに配置されており、
前記第2主溝は、タイヤ幅方向断面形状が、溝底部から溝開口に至る溝幅が同等に形成されるか、もしくは溝底部から溝開口に向かうにしたがって溝幅が広がるように形成されており、
前記第1主溝のタイヤ幅方向の位置は、前記第2主溝のタイヤ幅方向の位置よりもタイヤ幅方向外側に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】
前記第2主溝は、タイヤ幅方向中央位置からタイヤ幅方向外側へ25mmの位置からタイヤ幅方向内側に配置されている、請求項5に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドウォールに補強ゴム層を配置したサイド補強タイプのランフラットタイヤが知られている(例えば、特許文献1等)。このようなランフラットタイヤは、タイヤの内圧が低下した場合、補強ゴム層によりタイヤが完全に偏平化することが抑制され、ある程度の距離のランフラット走行(タイヤの内圧が低下した状態での走行)が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ランフラットタイヤにおいては、ランフラット走行時に、トレッドのタイヤ幅方向中央部がタイヤラジアル方向内側に凹んで路面から浮き上がるバックリングと呼ばれる現象が生じやすい。このようなバックリングは、接地面に設けられたタイヤ周方向に延在する溝幅の比較的大きな主溝を起点として生じる場合が多い。バックリングが生じると接地面積が低下して接地圧が増大し、ランフラット耐久性の低下を招来するおそれがある。このため、主溝を備えていながらもバックリングが抑制されるランフラットタイヤが望まれた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ周方向に沿った主溝を備えながらもランフラット走行時に生じるバックリングを十分に抑制でき、これによりタイヤ接地面積の低減が抑制されてランフラット耐久性の向上を図ることができるランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のランフラットタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォール間に配置され、接地面を有するトレッドと、前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライと、前記サイドウォールに配置された補強ゴム層と、を備え、前記トレッドの前記接地面には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第1主溝が配置されており、前記第1主溝は、底面と、タイヤ幅方向で互いに対向する第1溝壁および第2溝壁と、に囲まれて形成されているとともに、前記第1溝壁と前記第2溝壁との間において、前記底面側に形成された溝底部と、前記接地面側への開口側に形成され、前記溝底部よりも溝幅が小さい狭隘部と、を含み、前記狭隘部は、少なくとも前記第1溝壁から前記第2溝壁側に向かって突出形成され、第1接地面を有する第1突出部と、前記第2溝壁と、の間に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ周方向に沿った主溝を備えながらもランフラット走行時に生じるバックリングを十分に抑制でき、これによりタイヤ接地面積の低減が抑制されてランフラット耐久性の向上を図ることができるランフラットタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るランフラットタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図2】実施形態に係るランフラットタイヤにおけるトレッドの接地面のタイヤ周方向の一部を平面状に展開して模式的に示す図である。
【
図3】実施形態に係るランフラットタイヤの第1主溝を示すタイヤ幅方向拡大断面図である。
【
図4】
図3のIV方向矢視図であって、実施形態に係るランフラットタイヤの第1主溝を示すトレッドの接地面の一部平面図である。
【
図5】実施形態のランフラットタイヤのランフラット走行時の状態を示す一部断面図である。
【
図6】参考例としての従来のランフラットタイヤのランフラット走行時の状態を示す一部断面図である。
【
図7】実施形態に係るランフラットタイヤの第1主溝の他の例を示すトレッドの接地面の一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るランフラットタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、
図1においては、右半分の断面図を示す。
図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。タイヤ赤道面S1は、すなわちタイヤ幅方向中央位置である。
【0010】
なお、
図1の断面図は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0011】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面下側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面上側である。
なお、
図5、
図6についても同様である。
【0012】
タイヤ1は、例えば乗用車用のランフラットタイヤである。
図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10間に配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0013】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムプロテクタ15と、を有している。
【0014】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に延びるにしたがって先細り形状となっているゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0015】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。
リムプロテクタ15は、リムストリップゴム14を含んでいる。リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14の外表面には、タイヤ周方向に沿った頂部14aが形成されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する。リムプロテクタ15は、タイヤ周方向に環状に連続している。リムプロテクタ15は、外傷からリム(不図示)を保護する機能を有する。
【0016】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21と、補強ゴム層60と、を含んでいる。
サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
補強ゴム層60については後述する。
【0017】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を備えている。
【0018】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。本実施形態のベルト31は、内側のベルト311と外側のベルト312とを備えた2層構造である。内側のベルト311および外側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0019】
本実施形態の2層構造のベルト31は、内側のベルト311が外側のベルト312よりも幅広であり、したがってベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aは、内側のベルト311のタイヤ幅方向外側端で構成される。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。
なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0020】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。
本実施形態においては、キャッププライ32のタイヤ幅方向外側端32Aは、ベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aと概ね同じ位置に配置されている。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0021】
内側のベルト311および外側のベルト312のタイヤ幅方向外側の両端部と、キャッププライ32のタイヤ幅方向外側の両端部との間には、無端状のゴム製パッド35が配置されている。
【0022】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、走行時に路面と接地する接地面331を構成する部材である。
【0023】
図2は、トレッド30の接地面331の一部を平面状に展開して模式的に示す図である。
図2においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Zでタイヤ周方向を示している。
【0024】
図1および
図2に示されるように、接地面331には、複数の溝で構成されるトレッドパターン34が設けられている。トレッドパターン34は、タイヤ周方向に沿って連続して延在する複数の第1主溝341および複数の第2主溝342を有している。
【0025】
本実施形態では、タイヤ幅方向において、
図1および
図2においてS1で示されるタイヤ幅方向中央位置の両側に、2種類の主溝、すなわち第1主溝341と第2主溝342とが1つずつ、計4つの主溝が配置されている。本実施形態では、2つの第2主溝342がタイヤ幅方向中央位置に近接して配置され、それら第2主溝342のタイヤ幅方向外側に離間して2つの第1主溝341がそれぞれ配置されている。
【0026】
本実施形態でいう主溝は、タイヤ周方向に沿って連続して延在するいわゆる縦溝であって、接地面331に形成される溝の中で、最大溝幅が最も大きく、かつ、最も深い溝であり、排水性に大きく寄与する溝である。第1主溝341および第2主溝342のそれぞれは、最大溝幅が例えば5mm以上23mm以下であり、深さが例えば5mm以上11mm以下である。
第1主溝341および第2主溝342についての詳細は後述する。
【0027】
図1に示されるように、カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20およびトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤラジアル方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。カーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0028】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部401と、プライ本体部401からビードコア11で折り返される一対の屈曲部402と、屈曲部402のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部403と、を有する。プライ本体部401、屈曲部402および折り返し部403は、連続している。
【0029】
プライ本体部401は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。折り返し部403は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。ビードコア11およびビードフィラー12以外の部分において、折り返し部403はプライ本体部401に重ね合わされている。屈曲部402は、カーカスプライ40においてタイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0030】
なお、本実施形態のカーカスプライ40は、第1カーカスプライ410および第2カーカスプライ420が重ねられた2層のカーカスプライによって構成されているが、カーカスプライ40は1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0031】
本実施形態のように、ビードフィラー12と、後述する補強ゴム層60との間には、少なくとも2層以上のプライにより構成されるカーカスプライ40が挟まれていることが好ましい。これにより、リム装着部付近で局所的な変形が生じることをより効果的に抑制し、ランフラット耐久性をさらに向上させることができる。
【0032】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部402を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40の折り返し部403の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、上述したサイドウォールゴム21で覆われている。
【0033】
インナーライナー50は、一対のビード10間のタイヤ内面を覆っており、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー50は、トレッド30においてはカーカスプライ40のプライ本体部401の内面を覆い、トレッド30から一対のサイドウォール20にわたる領域では、補強ゴム層60の内面を覆い、一対のサイドウォール20から一対のビード10にわたる領域では、補強ゴム層60およびチェーハー13の内面を覆っている。
インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0034】
サイドウォール20を構成する補強ゴム層60は、カーカスプライ40とインナーライナー50との間に挟まれた状態に配置されている。
【0035】
補強ゴム層60は、タイヤ幅方向断面視(タイヤ子午線断面視)において略三日月形状を有するサイド補強ゴムである。補強ゴム層60は、タイヤ1の全周にわたって環状に設けられている。補強ゴム層60は、タイヤ1の内圧が低下した場合であっても、タイヤ1が完全に偏平化することを妨げる機能を有する。
【0036】
ここで、
図1に示されるように、トレッド30とサイドウォール20との移行領域のカーカスプライ40のタイヤ外表面側においては、サイドウォールゴム21がトレッド30に向かって延び、トレッドゴム33がサイドウォール20に向かって延びており、サイドウォールゴム21の外表面側をトレッドゴム33が覆っている。
【0037】
また、ビード10とサイドウォール20との移行領域のカーカスプライ40のタイヤ外表面側においては、サイドウォールゴム21がビード10に向かって延び、リムストリップゴム14がサイドウォール20に向かって延びており、リムストリップゴム14の外表面側をサイドウォールゴム21が覆っている。
【0038】
また、ビード10のカーカスプライ40のタイヤ内腔側においては、補強ゴム層60のタイヤ径方向内側端60Bをチェーハー13のタイヤ径方向外側端が覆っている。また、補強ゴム層60のタイヤ径方向外側端60Aは、ベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aよりも内側であって、トレッド30のタイヤ幅方向端部付近まで延在している。
インナーライナー50は、さらにこれらのゴム部材のタイヤ内腔側を覆っている。
【0039】
ここで、ビードフィラー12および補強ゴム層60に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー50よりも硬度が高いゴムを用いる。
ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0040】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。また、補強ゴム層60の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.1倍以上1.9倍以下程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。
さらに、リムストリップゴム14の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍以上1.6倍以下程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。
このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを保ち、かつランフラット耐久性を確保することができる。
【0041】
図1に示されるように、第2主溝342のタイヤ幅方向断面形状は、溝底部から溝開口に至る溝幅が溝開口に向かうにしたがって溝幅が広がるよう略台形状に形成されている。すなわち第2主溝342は、主溝として一般的な断面形状を有している。
第2主溝342は、タイヤ幅方向中央位置からタイヤ幅方向外側へ25mmの位置からタイヤ幅方向内側に配置されていることが好ましい。
【0042】
図1に示されるように、第1主溝341のタイヤ幅方向の位置は、第2主溝342のタイヤ幅方向の位置よりもタイヤ幅方向外側に配置されている。第1主溝341は、補強ゴム層60のタイヤ径方向外側端60Aからタイヤ幅方向内側へ15mm以上離間して配置されていることが好ましい。
【0043】
図3は、第1主溝341の詳細を示す断面図である。
図3においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Yでタイヤ径方向を示している。
図4は、
図3のIV方向矢視図である。
図4においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Zでタイヤ周方向を示している。
【0044】
図3に示されるように、第1主溝341は、底面36と、タイヤ幅方向で互いに対向する第1溝壁37および第2溝壁38と、に囲まれて形成されている。第1主溝341は、トレッド30の接地面331側への開口81を有している。第1主溝341は、第1溝壁37と第2溝壁38との間において、底面36側に形成された溝底部82と、開口81側に形成され、溝底部82よりも溝幅が小さい狭隘部83と、を含んでいる。第1主溝341のタイヤ幅方向断面形状は、タイヤ幅方向を左右方向とすると、左右対称の形状を有している。
【0045】
第1溝壁37は、その開口81側に、第2溝壁38側に向かって突出形成された第1突出部37Aを含んでいる。また、第2溝壁38は、その開口81側に、第1溝壁37側に向かって突出形成された第2突出部38Aを含んでいる。
狭隘部83は、第1突出部37Aと第2突出部38Aとの間に形成されている。第1突出部37Aと第2突出部38Aとは、
図3において左右対称の断面形状を有している。第1突出部37Aの第2突出部38Aに対する対向面37aと、第2突出部38Aの第1突出部37Aに対する対向面38aとは平行であって、タイヤ径方向に沿っている。
【0046】
第1突出部37Aは、接地面331に連なり、接地面331と同一面となる第1接地面37bを有している。これと同様に、第2突出部38Aは、接地面331に連なり、接地面331と同一面となる第2接地面38bを有している。
【0047】
第1突出部37Aおよび第2突出部38Aのそれぞれは、トレッドゴム33と異なるゴム材料で構成されている。第1突出部37Aおよび第2突出部38Aのゴム材料は、トレッドゴム33よりも硬度の高いものが好ましい。トレッドゴム33と異なるゴム材料で構成されている第1突出部37Aおよび第2突出部38Aは、トレッドゴム33に一体に接合され、これにより第1主溝341が形成される。
【0048】
図4に示されるように、本実施形態の第1突出部37Aおよび第2突出部38Aは、いずれもタイヤ周方向に連続して無端状に設けられている。
【0049】
図3に示されるように、第1主溝341は、接地面331から底面36までの深さをLとして、深さが80%、すなわち4/5Lの深さ位置の溝底部82の溝幅D、狭隘部83の溝幅dとした場合、溝底部82の溝幅Dに対する狭隘部83の溝幅dの比率が、20%以上50%以下程度が好ましい。
【0050】
図5は、路面H上を走行している車両のタイヤ1の内圧がほぼ大気圧と同等となったランフラット走行時における本実施形態のタイヤ1を示している。
一方、
図6は、参考例として、第1主溝341の位置に一般的な第2主溝342が配置された以外は、本実施形態と同様の構成のタイヤ2がランフラット走行している状況を示している。すなわち参考例のタイヤ2は、4つの主溝の全てが第2主溝342であり、主溝のタイヤ幅方向の位置は、本実施形態のタイヤ1と同じである。
【0051】
図5に示されるように、本実施形態のタイヤ1のランフラット走行時においては、トレッド30がタイヤラジアル方向内側に凹むバックリングが生じる場合がある。バックリングが生じると、トレッド30の接地面331におけるタイヤ幅方向外端部が、タイヤ接地面331Aとなって路面Hに接地する。
【0052】
本実施形態のタイヤ1においては、
図5に示されるように、バックリングが生じた場合、第1主溝341の第1突出部37Aと第2突出部38Aとが互いに近づき、双方の対向面37aおよび38aが当接し、狭隘部83が閉塞する。これにより、第1主溝341の溝幅が狭まることが規制され、これに伴ってトレッド30がタイヤラジアル方向内側に凹むように屈曲する変形が抑制されて、バックリングの度合いが低減する。
【0053】
一方、
図6に示されるランフラット走行時のタイヤ2おいては、タイヤ幅方向外側に配置された第2主溝342を起点としてトレッド30がタイヤラジアル方向内側に凹むバックリングが生じている。この場合、トレッド30の接地面331におけるタイヤ幅方向外端部のタイヤ接地面331Bが路面Hに接地している。
【0054】
図5と
図6とを比較すると、
図6に示されるタイヤ2においては、タイヤ幅方向外側の第2主溝342が、本実施形態の第1主溝341のように第1突出部37Aと第2突出部38Aを有していないため、トレッド30が屈曲しやすくなっており、その第2主溝342からタイヤ接地面331Bまでのトレッド30の接地面331は、路面Hに対し比較的急角度で傾斜している。
これに対し、
図5に示される本実施形態のタイヤ1は、第1主溝341において第1突出部37Aと第2突出部38Aとが当接してトレッド30の屈曲が抑えられるので、トレッド30は全体的にタイヤ内腔側に緩やかに湾曲している。
【0055】
したがって、ランフラット走行時においては、本実施形態のタイヤ1のタイヤ接地面331Aは、タイヤ2のタイヤ接地面331Bよりもタイヤ幅方向長さが長く、接地面積を比較した場合、本実施形態のタイヤ1の方がタイヤ2よりも大きい。このため、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ2と比較して、バックリングが小さく抑えられることによりタイヤ接地面積の低減が抑制される。タイヤ接地面積の低減が抑制されてタイヤ接地面積が増大すると、タイヤ接地圧の低減につながるため、結果としてタイヤ1に対する負担が軽減し、ランフラット耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
特に、本実施形態では、トレッド30の領域において第2主溝342よりもタイヤ幅方向外側に第1主溝341が配置されていることにより、第1主溝341によるバックリング抑制の機能が効果的に発揮され、ランフラット走行時のタイヤ接地面積の低減がより抑制される。
【0057】
以上説明した本実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0058】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置され、接地面331を有するトレッド30と、一対のビード10間に架け渡されたカーカスプライ40と、サイドウォール20に配置された補強ゴム層60と、を備え、トレッド30の接地面331には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第1主溝341が配置されており、第1主溝341は、底面36と、タイヤ幅方向で互いに対向する第1溝壁37および第2溝壁38と、に囲まれて形成されているとともに、第1溝壁37と第2溝壁38との間において、底面36側に形成された溝底部82と、接地面331側への開口81側に形成され、溝底部82よりも溝幅が小さい狭隘部83と、を含み、狭隘部83は、少なくとも第1溝壁37から第2溝壁38側に向かって突出形成され、第1接地面37bを有する第1突出部37Aと、第2溝壁38と、の間に形成されている。
【0059】
これにより、ランフラット走行時にバックリングが生じた場合、第1主溝341において第1突出部37Aが第2溝壁38に当接して第1主溝341が狭まることが規制され、これによりバックリングの度合いが低減する。したがって、第1主溝341および第2主溝342を備えながらもランフラット走行時に生じるバックリングを十分に抑制でき、タイヤ接地面積の低減が抑制されてランフラット耐久性の向上を図ることができる。
また、第1主溝341により排水性が確保されるとともに、第1主溝341がありながらも第1接地面37bが接地することにより接地性が向上し、その結果、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0060】
(2)本実施形態に係るタイヤ1において、第1主溝341の狭隘部83は、第1溝壁37から第2溝壁38側に向かって突出形成され、第1接地面37bを有する第1突出部37Aと、第2溝壁38から第1突出部37Aに向かって突出形成され、第2接地面38bを有する第2突出部38Aと、の間に形成されている。
【0061】
これにより、第1主溝341においては、第1突出部37Aと第2突出部38Aとが互いに当接することにより、ランフラット走行時のバックリングが抑制される。バックリングを抑制するように機能する突出部(第1突出部37Aと第2突出部38A)が、第1溝壁37および第2溝壁38の双方に設けられることにより、それら突出部のタイヤ幅方向への突出長さが短くなって剛性が高くなり、その結果、バックリング抑制の機能がより向上する。
また、第2突出部38Aは第2接地面38bを有するため、第1主溝341がありながらも第2接地面38bが接地することにより接地性が向上し、その結果、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0062】
(3)本実施形態に係るタイヤ1において、第1主溝341は、補強ゴム層60のタイヤ径方向外側端60Aからタイヤ幅方向内側へ15mm以上離間して配置されていることが好ましい。
【0063】
第1主溝341がタイヤ幅方向において補強ゴム層60に近過ぎると、補強ゴム層60による補強領域に入ってしまい、第1主溝341が備えるバックリング抑制機能が発揮されにくくなる。このため、補強ゴム層60のタイヤ径方向外側端60Aからタイヤ幅方向内側へ15mm以上離間して配置されることにより、第1主溝341によるバックリング抑制機能が確保される。
【0064】
(4)本実施形態に係るタイヤ1において、第1主溝341は、溝底部82の溝幅に対する狭隘部83の溝幅の比率が、20%以上50%以下であることが好ましい。
【0065】
これにより、ランフラット走行時においてバックリングが生じた際に狭隘部83が閉塞しやすく、上述した第1主溝341によるバックリング抑制機能が発揮されやすい。
【0066】
なお、上記実施形態の第1突出部37Aおよび第2突出部38Aは、いずれもタイヤ周方向に連続して無端状に設けられる態様であったが、
図7に示されるように、タイヤ幅方向で互いに対向する複数の第1突出部37Aおよび第2突出部38Aが、それぞれタイヤ周方向に適宜な間隔をおいて分割した状態に設けられていてもよい。
なお、第1突出部37Aおよび第2突出部38Aは、いずれか一方が分割された構成であってもよい。
【0067】
なお、第1突出部37Aおよび第2突出部38Aのそれぞれは、トレッドゴム33と同じゴム材料で構成されてもよく、その場合には、トレッド30と一体成形される態様であってもよい。
【0068】
(5)本実施形態に係るタイヤ1においては、トレッド30の接地面331には、タイヤ周方向に沿って連続して延在する少なくとも1つの第2主溝342がさらに配置されており、第2主溝342は、タイヤ幅方向断面形状が、溝底部から溝開口に向かうにしたがって溝幅が広がるように形成されており、第1主溝341のタイヤ幅方向の位置は、第2主溝342のタイヤ幅方向の位置よりもタイヤ幅方向外側に配置されている形態を含む。
【0069】
これにより、第1主溝341によるバックリング抑制の機能が効果的に発揮され、ランフラット走行時のタイヤ接地面積の低減がより抑制される。
また、第2主溝342を備えることによって排水性が向上し、耐ハイドロプレーニング性能が向上する。
【0070】
(6)本実施形態に係るタイヤ1において、第2主溝342は、タイヤ幅方向中央位置からタイヤ幅方向外側へ25mmの位置からタイヤ幅方向内側に配置されていることが好ましい。
【0071】
これにより、第2主溝342がタイヤ幅方向中央寄りに配置されるため、ランフラット走行時において第2主溝342がバックリングの起点となりにくくなり、このため、バックリング発生に伴うタイヤ接地面積の低減を抑制することができる。
【0072】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができる。
【0073】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、第2主溝342のタイヤ幅方向断面形状は、溝底部から溝開口に至る溝幅が同等である略矩形状の断面形状を有するものであってよい。
第1主溝341および第2主溝342の数はそれぞれ任意であり限定はされない。しかしながら、バックリングを効果的に抑制できる観点から、第1主溝341が第2主溝342よりもタイヤ幅方向外側に配置される形態が望ましい。換言すると、複数の主溝が配置される場合、第1主溝341はタイヤ幅方向の最も外側に配置されることが望ましい。
【0075】
一般的な断面形状を有する第2主溝342を備えず、少なくとも1つの第1主溝341がトレッド30の接地面331に配置されている形態であってよい。その場合、第1主溝341のタイヤ幅方向の位置は限定されず、タイヤ幅方向中央、あるいはタイヤ幅方向中央近傍でもよいが、バックリングを効果的に抑制できる観点から、接地面331のタイヤ幅方向外側に配置されていることが望ましい。
第2突出部38Aを省略し、第1突出部37Aを第2溝壁38の近傍まで延出させて、ランフラット走行時には第1突出部37Aの先端が第2溝壁38に当接するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 タイヤ(ランフラットタイヤ)
10 ビード
20 サイドウォール
30 トレッド
33 トレッドゴム
36 底面
37 第1溝壁
37A 第1突出部
37b 第1接地面
38 第2溝壁
38A 第2突出部
38b 第2接地面
40 カーカスプライ
60 補強ゴム層
60A 補強ゴム層のタイヤ径方向外側端
81 開口
82 溝底部
83 狭隘部
331 接地面
341 第1主溝
342 第2主溝