(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098230
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】バン型車用のキャンピングカー改造キット
(51)【国際特許分類】
B60P 3/345 20060101AFI20220624BHJP
B60R 15/02 20060101ALI20220624BHJP
B60P 3/377 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B60P3/345
B60R15/02
B60P3/377
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211646
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】520504378
【氏名又は名称】森園 あゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】森園 あゆみ
【テーマコード(参考)】
3D024
【Fターム(参考)】
3D024DA01
3D024DA07
(57)【要約】
【課題】バン型車に適応し、特別な技量を要求することなく誰でも簡単にDIY感覚で低コストで設置でき、車両の資産価値を不用意に低下させることなく車両自体に改変を加えずに予め車両に搭載された車両部品等の既設部材を有効活用して荷室スペースを可及的広い居住スペースに改造でき、設置後には車両走行時における住居設備の安定性を確保できるキャンピングカー改造キットを提供する。
【解決手段】後輪ハウジングに係合対応して同ハウジング上で自立可能とする仕切ユニットと、後輪ハウジング上で自立した仕切ユニットと同仕切ユニットに対向する車両ボディ内側壁との間に設けられ、仕切ユニットの自立姿勢を支持可能とするユニット支持体と、を備えてなることとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有するバン型車用のキャンピングカー改造キットであって、
前記左右側後輪ハウジングのうち、少なくとも一方側の後輪ハウジングに係合対応して同ハウジング近傍の車両ボディ床面で自立可能とする仕切ユニットと、
前記車両ボディ床面で自立した前記仕切ユニットと対向する他方側との対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、前記仕切ユニットの自立姿勢を支持可能とするユニット支持体と、を備え、
前記仕切ユニットは、自立状態において、
一方側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記一方側の車両ボディ内側壁から前記荷室スペース内方へ突出して前記他方側の車両ボディ内側壁との間に一定の空間部分を形成し、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、少なくとも、前方側スペース部分を搭乗者が寝食をするための居住スペース部とすると共に前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁との間の前記空間部分を前記居住スペース部を後方側へ開放させる通路スペース部にするように構成したことを特徴とするキャンピングカー改造キット。
【請求項2】
前記仕切ユニットは、
下部を前記一方側の後輪ハウジングに係合可能な係合部にすると共に同係合部を介して前記一方側の後輪ハウジングを上方から覆うように自立可能とし、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、前方側スペース部分の前記居住スペース部と、後方側スペース部分を荷物を載置収納するための荷収納スペース部と、に区画形成すると共に、前記通路スペース部により前記居住スペース部と前記荷収納スペース部とを連絡可能とするように構成したことを特徴とする請求項1に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項3】
前記仕切ユニットは、キャンピング用品や住環境に必要な各種荷を収納設置するための荷収納棚部を複数備え、
複数の前記荷収納棚部は、それぞれ少なくとも前記居住スペース部と前記荷収納スペース部と向けて開放可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項4】
前記仕切ユニットは、分割・組立可能な複数のユニット要素で構成したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項5】
前記仕切ユニットは、
一定量の水を貯溜する上側部分の給水部と、
前記給水部からの給水を受ける中間部分のシンク部と、
前記シンク部からの排水を貯溜する下側部分の排水部と、により構成した水設備を有することを特徴とする請求項4に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項6】
前記水設備の前記シンク部は、前記仕切ユニットの自立状態において対向する前記他方側の車両ボディ内側壁側へ開放するように設けられ、前記通路スペース部で搭乗者が水回り作業を実施できるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項7】
前記ユニット支持体は、自立状態における前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁の対向面の前後側の上端部同士の間で架設可能な棒状の梁体であって、
前記梁体は、前記通路スペース部の前後側開口を開閉可能とする遮蔽体を備えることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項8】
前記仕切ユニットは、前記左右側後輪ハウジングにそれぞれ係合対応して自立状態で対向する一対の左右側仕切ユニットからなり、
前記ユニット支持体は、前記車両ボディ床面で自立する前記左右側仕切ユニットの対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、
一対の前記左右側仕切ユニットは、自立状態において、
それぞれが対応する左右側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記左右側の車両ボディ内側壁部から前記荷室スペース内方へ対向突出して間に前記通路スペース部を形成するように構成したことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項9】
前記左右側仕切ユニットのうち一方の仕切ユニットは、
自立状態における前記荷室スペース内方への突出長さを他方の仕切ユニットよりも長くするように幅広に形成すると共に突出先端部分を最重量部に形成したことを特徴とする請求項8に記載のキャンピングカー改造キット。
【請求項10】
荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有し、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のキャンピングカー改造キットを備えたバン型車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両後部の荷室スペースの左右内側で露出した一対の左右側後輪ハウジングを有するバン型車用のキャンピングカー改造キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高額なキャンピングカーを購入することなく、自家用車を車中泊可能なキャンピングカー仕様に改造するためのキャンピングカー改造具(以下、単に改造具とも言う。)が種々提案されている。
【0003】
かかる改造具は、車外に取り付けて増設延長した車内スペースを居住スペースに改造する「外装タイプ」と、車内に取り付けて改装した車内スペースを居住スペースに改造する「内装タイプ」と、の2種類に大別される。
【0004】
「外装タイプ」としては、例えば、車両とは別体に構成され、キッチンやベットなどの居住設備が予め搭載されたキャビン車両を車両後部で牽引可能に連結して車内スペースを車外後方に増設したもの(例えば、特許文献1参照。)や、車両の屋根に搭載され、車両のスカイライトルーフの窓ガラスを取り外して連通して車内スペースを車外上方に延長したもの(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0005】
また、「内装タイプ」としては、例えば、ボディ床面に立設する骨枠部材と、骨枠部材上に設ける床パネルと、床パネル上に立設する収納部材と、各収納部材と床パネルとを連結固定する連結固定部材と、で構成し、車内スペースを改装したもの(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0006】
「外装タイプ」は、居住設備を改めて設置する手間がなかったり車内スペースを増設して居住スペースを広く確保できたりする点でメリットがあるものの、車両ボディ自体を大改造したり車両全体を徒に大型化させたりして改造コストを高額化させ、さらには車両の操作性や走行性を悪化させるデメリットがあった。
【0007】
これに対し、「内装タイプ」は、車内スペースを活用する構成としているため、車両を大型化するような大改造を伴うことなく、車両の操作性や走行性を可及的安定化させて改造コストを可及的低減化できるメリットがあるが、限られた車内スペースを如何に快適な居住スペースへ改装構築できるかが課題となる。
【0008】
例えば、改造対象とする自家用車が、セダン型車やワゴン型車など後部座席を搭載した車両である場合には、居住スペースを可及的広く確保するべく、後部座席を取り外すための専門的且つ特殊な改造作業が必要となる。
【0009】
このような背景から近年、「内装タイプ」の改造対象とする自家用車として、運転席と助手席以外の車内スペースの大部分を後部座席を排して可及的広い略横長直方体空間状の荷室スペースに形成した「バン型車」に注目が集まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-124710号公報
【特許文献2】特開平7-228185号公報
【特許文献3】特開2012-192918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の「内装タイプ」の改造具は、「バン型車」へ対応したものではなく、同車両の荷室スペースへの設置作業に際しては依然として特別な技能を要求したり改造コストが高額にしたりする可能性があり、また、荷室スペースを有効活用した居住スペースの改装構築ができない虞があった。
【0012】
基本的に、これまでの「内装タイプ」の改造具は、ボディ床面から上方突出する後部座席やボディ形状に由来する凸部などの車両の既設部材が居住スペースに露出して搭乗者の障害とならないように覆い隠すと共に居住スペースに住居設備を略水平静置状態で設けべく、既設部材の上方位置で基礎床となるフラット床面を形成することが必須となる。
【0013】
例えば、特許文献3に開示の改造具では、車内スペースの既設部材に干渉しないようにボディ床面に骨枠部材を立設し、同骨枠部材上に床パネルを敷設することによりフラット床面を形成すると共に車内スペースの床面を底上げし、既設部材を床パネルの下側に隠すと共に同床パネル上に各種住居設備を配置して居住スペースを構築するように構成している。
【0014】
この点で、一般的なバン型車は荷室スペースの後部左右側で既設部材としての左右側後輪ハウジングをボディ床面から上方突出しているために、床パネルでフラット床面を形成する場合には、床面高さ位置を少なくとも左右側後輪ハウジングの最頂部の高さ位置以上に適合させるように必然的に底上げしなければならない。
【0015】
すなわち、既設部材としての左右側後輪ハウジングを床下に隠すようにして床パネルで床面を底上げした分、ボディ床面と床パネルとの間の空間部分がデッドスペース化して車内スペースが上下方向に縮小されることとなり、結果、構築される居住スペースが手狭となる虞があった。
【0016】
さらには、床パネル上に設けた居住設備が、車両走行時に不用意に転倒して破損しないように、同居住設備を床パネルや車内スペースのボディに固定するための連結固定部材等の特別な固定構造が改めて必要となる。
【0017】
このように、従来の改造具を「バン型車」に適応させると、床パネルの設置作業や同床パネルへの居住設備の固定作業を複雑化且つ困難化させるばかりか荷室スペースを有効活用できず、また、車両所有者が独力で手軽にキャンピングカー仕様へ改造できずに専門業者に設置作業を依頼せざるを得ずコストが増大する虞があった。
【0018】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、バン型車に適応し、特別な技量を要求することなく誰でも簡単にDIY感覚で設置でき、車両の資産価値を不用意に低下させることなく車両自体に改変を加えずに予め車両に搭載された車両部品等の既設部材を有効活用して荷室スペースを可及的広い居住スペースに改造でき、設置後には車両走行時における住居設備の安定性を確保できるキャンピングカー改造キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる車両の荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有するバン型車用のキャンピングカー改造キットは、(1)前記左右側後輪ハウジングのうち、少なくとも一方側の後輪ハウジングに係合対応して同ハウジング近傍の車両ボディ床面で自立可能とする仕切ユニットと、前記車両ボディ床面で自立した前記仕切ユニットと対向する他方側との対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、前記仕切ユニットの自立姿勢を支持可能とするユニット支持体と、を備え、前記仕切ユニットは、自立状態において、一方側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記一方側の車両ボディ内側壁から前記荷室スペース内方へ突出して前記他方側の車両ボディ内側壁との間に一定の空間部分を形成し、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、少なくとも、前方側スペース部分を搭乗者が寝食をするための居住スペース部とすると共に前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁との間の前記空間部分を前記居住スペース部を後方側へ開放させる通路スペース部にするように構成したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかるキャンピングカー改造キットは、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記仕切ユニットは、下部を前記一方側の後輪ハウジングに係合可能な係合部にすると共に同係合部を介して前記一方側の後輪ハウジングを上方から覆うように自立可能とし、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、前方側スペース部分の前記居住スペース部と、後方側スペース部分を荷物を載置収納するための荷収納スペース部と、に区画形成すると共に、前記通路スペース部により前記居住スペース部と前記荷収納スペース部とを連絡可能とするように構成したこと。
(3)前記仕切ユニットは、それぞれキャンピング用品や住環境に必要な各種荷を収納設置するための荷収納棚部を複数備え、複数の前記荷収納棚部は、それぞれ少なくとも前記居住スペース部と前記荷収納スペース部と向けて開放可能に構成したこと。
(4)前記仕切ユニットは、分割・組立可能な複数のユニット要素で構成したこと。
(5)前記仕切ユニットは、一定量の水を貯溜する上側部分の給水部と、前記給水部からの給水を受ける中間部分のシンク部と、前記シンク部からの排水を貯溜する下側部分の排水部と、により構成した水設備を有すること。
(6)前記水設備の前記シンク部は、前記仕切ユニットの自立状態において対向する前記他方側の車両ボディ内側壁側へ開放するように設けられ、前記通路スペース部で搭乗者が水回り作業を実施できるようにしたこと。
(7)前記ユニット支持体は、自立状態における前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁の対向面の前後側の上端部同士の間で架設可能な棒状の梁体であって、前記梁体は、前記通路スペース部の前後側開口を開閉可能とする遮蔽体を備えること。
(8)前記仕切ユニットは、前記左右側後輪ハウジングにそれぞれ係合対応して自立状態で対向する一対の左右側仕切ユニットからなり、前記ユニット支持体は、前記車両ボディ床面で自立する前記左右側仕切ユニットの対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、一対の前記左右側仕切ユニットは、自立状態において、それぞれが対応する左右側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記左右側の車両ボディ内側壁部から前記荷室スペース内方へ対向突出して間に前記通路スペース部を形成するように構成したこと。
(9)前記左右側仕切ユニットのうち一方の仕切ユニットは、自立状態における前記荷室スペース内方への突出長さを他方の仕切ユニットよりも長くするように幅広に形成すると共に突出先端部分を最重量部に形成したこと。
【0021】
また、本発明では、(10)荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有し、前述の(1)~(9)のいずれかのキャンピングカー改造キットを備えたバン型車についても提供する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によれば、車両の荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有するバン型車に用いられ、前記左右側後輪ハウジングのうち、少なくとも一方側の後輪ハウジングに係合対応して同ハウジング近傍の車両ボディ床面で自立可能とする仕切ユニットと、前記車両ボディ床面で自立した前記仕切ユニットと対向する他方側との対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、前記仕切ユニットの自立姿勢を支持可能とするユニット支持体と、を備えて構成したため、車両の荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有するバン型車を誰でも簡単にDIY感覚でキャンピングカー仕様に改造することができる効果がある。
【0023】
特に前記左右側仕切ユニットは、自立状態において、前記仕切ユニットは、自立状態において、一方側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記一方側の車両ボディ内側壁から前記荷室スペース内方へ突出して前記他方側の車両ボディ内側壁との間に一定の空間部分を形成し、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、少なくとも、前方側スペース部分を搭乗者が寝食をするための居住スペース部とすると共に前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁との間の前記空間部分を前記居住スペース部を後方側へ開放させる通路スペース部にするように構成している。
【0024】
すなわち、本発明に係るキャンピングカー改造キットは、バン型車において、それまでキャンピングカー仕様とする際に障害となっていた後輪ハウジングを最大限利用して、同ハウジングに仕切ユニットを配置することにより限られた荷室スペースを搭乗者の快適な車中泊を実現する複数の各種機能的スペース部に整然と区画することができる。
【0025】
また、本発明に係るキャンピングカー改造キットは、設置の際には、作業者に特別な技量を要求することなく、仕切ユニットを持ち運び左右側後輪ハウジングのいずれかに係合すると共に同ハウジングの近傍位置に自立状態で配置し、同仕切ユニットとこれに対向する車両ボディ内側壁との間にユニット支持体を介設するだけの簡単な搭載設置作業で、仕切ユニットにより荷室スペースを中途部で仕切ることができ、簡単に複数の各種機能的スペース部に改装区画することができる。
【0026】
また、本発明に係るキャンピングカー改造キットをバン型車に設置した後は、仕切ユニットとユニット支持体とが共同して荷室スペースにおける車両ボディに係合一体化され、車両の走行に伴う慣性力を受けてもユニットが転倒したり倒壊したりする虞がない。
【0027】
具体的には、仕切ユニットは、後輪ハウジングに係合したボディ床面での自立状態において、ボディ天面に接触する構成としているため、車両に対してボディ天面とボディ床面との間で後輪ハウジングに係合固定される。したがって、車両の走行に伴う進行方向前後側の慣性力が伝達された仕切ユニットは、上下前後部分を後輪ハウジングとボディ天面とボディ床面とに係合して上下前後方向の動きを規制されることとなる。
【0028】
また、仕切ユニットは、ボディ内側壁に押圧接触する構成としているため、間に介在したユニット支持体により同ボディ内側壁に対して圧着固定される。したがって、車両の走行に伴う進行方向左右側の慣性力が伝達された仕切ユニットは、ユニット支持体を介して同慣性力を車両ボディ内側壁へ伝達し左右方向の動きを規制する。
【0029】
すなわち、仕切ユニットをボディ内側に沿って荷室スペースに配置し、ユニット支持体を介して一体的にボディへ圧着係合固定させて車両の走行に伴う各方向への慣性力へ抗した係合固定構造を実現している。
【0030】
換言すれば、車両ボディに同車両ボディと仕切ユニットとを連結固定する特別な固定構造を加えずに、後輪ハウジングにそれぞれ仕切ユニットを係合して同ユニットの自立状態を安定させ、キャンピングカー仕様に改造できるため、車両の資産価値を不用意に低下させることがない。
【0031】
また、車両の後輪ハウジング高さに合わせて床面を底上げすることなく、フラットなボディ床面をそのまま各種機能的スペース部の床面として利用できるため、天井が高くて広い各種機能的スペース部を確保することができる効果がある。
【0032】
また、請求項2に係る発明によれば、前記仕切ユニットは、下部を前記一方側の後輪ハウジングに係合可能な係合部にすると共に同係合部を介して前記一方側の後輪ハウジングを上方から覆うように自立可能とし、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、前方側スペース部分の前記居住スペース部と、後方側スペース部分を荷物を載置収納するための荷収納スペース部と、に区画形成すると共に、前記通路スペース部により前記居住スペース部と前記荷収納スペース部とを連絡可能とするように構成したため、仕切ユニットを後輪ハウジング上で自立させた状態で設置でき、仕切ユニット荷重を後輪ハウジング真下の後輪タイヤで受けて同タイヤを支点に下方支持させることができる。
【0033】
その結果、車両の重心を不用意に偏心させたりシャシ部分に無用な負荷をかけてボディを不用意に歪めたりすることない。また、後輪タイヤに荷重を負荷させながら燃費を徒に悪化させることなく、例えば、山道、坂道、雪道などの悪路であっても走行性を良好に維持することが期待できる。
【0034】
さらに、車両の荷室スペースについて、仕切ユニットの自立位置を基準に荷室スペースを仕切り、車両の進行長手方向前方側から後方側にかけて順次、居住スペース部、通路スペース部、荷収納スペース部の3つの各種機能的スペース部へ区画形成することができ、快適な居住環境のキャンピングカー仕様に改造することができる。
【0035】
また、請求項3に係る発明によれば、前記仕切ユニットは、キャンピング用品や住環境に必要な各種荷を収納設置するための荷収納棚部を複数備え、複数の前記荷収納棚部は、それぞれ少なくとも前記居住スペース部と前記荷収納スペース部と向けて開放可能に構成したため、各種機能的スペース部に開放対応するように搭乗者の任意で例えば家電やバッテリー、食料や水などの各種荷を必要に応じて各荷収納棚部に整理して収納設置でき、各種機能的スペース部をより快適な機能的空間として利用することができる効果がある。
【0036】
また、請求項4に係る発明によれば、前記仕切ユニットは、分割・組立可能な複数のユニット要素で構成したため、各ユニット要素を設置の際に作業者が簡単に持ち運びできる重量に設定できるだけでなく組み上げるだけで仕切ユニットを構成でき、搭載設置作業をより簡単に行うことができる効果がある。
【0037】
また、各ユニット要素を収納棚部に応じて構成した場合には、搭乗者の所望とする機能や用途、大きさなどに応じた収納棚部の選択の幅を広げることができ、ユニット機能のバリエーションを拡張することができる効果がある。
【0038】
さらに、組み立てられた仕切ユニットは複数のユニット要素に分解できるため、汚損や破損等が生じた場合には、ユニット全体を取り換えることなく汚損や破損したユニット要素のみを取り外し交換することができ、メンテナンス性を向上させると共に経済性を良好とすることができる効果がある。
【0039】
また、請求項5に係る発明によれば、前記仕切ユニットは、一定量の水を貯溜する上側部分の給水部と、前記給水部からの給水を受ける中間部分のシンク部と、前記シンク部からの排水を貯溜する下側部分の排水部と、により構成した水設備を有することとしたため、手洗いや料理等、搭乗者が水を必要とする水回り作業を車内で行うことができ、居住環境をより快適なものにすることができる効果がある。
【0040】
また、請求項6に係る発明によれば、前記水設備の前記シンク部は、前記仕切ユニットの自立状態において対向する前記他方側の車両ボディ内側壁側へ開放するように設けたため、通路スペース部で搭乗者が水回り作業を実施できるように同通路スペース部をキッチンスペース部や洗面台スペース部として機能させ、住環境の主要部となる居住スペース部から区画することができる効果がある。
【0041】
また、請求項7に係る発明によれば、前記ユニット支持体は、自立状態における前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁の対向面の前後側の上端部同士の間で架設可能な棒状の梁体であって、前記梁体は、前記通路スペース部の前後側開口を開閉可能とする遮蔽体を備えることとしたため、通路スペース部の前後側開口を遮蔽体で閉塞することにより、通路スペース部を完全遮蔽空間にして着替え等のプライベートスペース部として機能させることができる効果がある。
【0042】
また、請求項8に係る発明によれば、前記仕切ユニットは、前記左右側後輪ハウジングにそれぞれ係合対応して自立状態で対向する一対の左右側仕切ユニットからなり、前記ユニット支持体は、前記車両ボディ床面で自立する前記左右側仕切ユニットの対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、一対の前記左右側仕切ユニットは、自立状態において、それぞれが対応する左右側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記左右側の車両ボディ内側壁部から前記荷室スペース内方へ対向突出して間に前記通路スペース部を形成するように構成したため、車両の左右バランスを可及的平衡状態に保持した走行を実現することができ、さらに各種機能的スペース部をより快適な機能的空間として利用することができる効果がある。
【0043】
また、請求項9に係る発明によれば、前記左右側仕切ユニットのうち一方の仕切ユニットは、自立状態における前記荷室スペース内方への突出長さを他方の仕切ユニットよりも長くするように幅広に形成すると共に突出先端部分を最重量部に形成したため、一方の仕切ユニットの突出先端部分を左右側後輪ハウジングの間の略中心部分、すなわち車両の幅方向略中央部にある車両中心線の近傍位置に配置して、車両の後輪部分における重心を安定させて車両バランスをより平衡状態に保持することができる効果がある。
【0044】
また、請求項10に係る発明によれば、荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有し、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のキャンピングカー改造キットを備えたバン型車としたため、例えば、車両整備工場などの専門業者であっても前述の通り本キットを利用してバン型車を簡単にキャンピングカー仕様に改装することができるため作業負担を軽減すると共に作業時間を削減して改装コストを可及的低くすることができ、キャンピングカー仕様のバン型車を量産することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】実施例1に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【
図2】実施例1に係る仕切ユニットの構成を示す前方側斜視図及び後方側斜視図である。
【
図3】実施例1に係る仕切ユニットの構成を示す通路スペース側からみた組立正面図及び分解正面図である
【
図4】実施例1に係る仕切ユニットと後輪ハウジングとの係合状態を示す部分拡大側面図である。
【
図5】実施例1に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車の荷室スペースを示す模式的平面図である。
【
図6】実施例2に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【
図7】実施例2に係るキャンピングカー改造キットの構成を示す前方側斜視図である。
【
図8】実施例2に係る左側仕切ユニットの構成を示す前方側斜視図及び後方側斜視図である。
【
図9】実施例2に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車の荷室スペースを示す模式的平面図である。
【
図10】実施例2に係るキャンピングカー改造キットの構成を示す縦断面図である。
【
図11】実施例2に係るユニット支持体の構成を示す模式的正面図である。
【
図12】実施例3に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【
図13】実施例4に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の要旨は、車両の荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有するバン型車用のキャンピングカー改造キットであって、前記左右側後輪ハウジングのうち、少なくとも一方側の後輪ハウジングに係合対応して同ハウジング近傍の車両ボディ床面で自立可能とする仕切ユニットと、前記車両ボディ床面で自立した前記仕切ユニットと対向する他方側との対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、前記仕切ユニットの自立姿勢を支持可能とするユニット支持体と、を備え、前記仕切ユニットは、自立状態において、一方側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記一方側の車両ボディ内側壁から前記荷室スペース内方へ突出して前記他方側の車両ボディ内側壁との間に一定の空間部分を形成し、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、少なくとも、前方側スペース部分を搭乗者が寝食をするための居住スペース部とすると共に前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁との間の前記空間部分を前記居住スペース部を後方側へ開放させる通路スペース部にするように構成したことを特徴とするキャンピングカー改造キットを提供することにある。
【0047】
また、前記仕切ユニットは、下部を前記一方側の後輪ハウジングに係合可能な係合部にすると共に同係合部を介して前記一方側の後輪ハウジングを上方から覆うように自立可能とし、前記荷室スペースについて、前記仕切ユニットの自立位置を境に、前方側スペース部分の前記居住スペース部と、後方側スペース部分を荷物を載置収納するための荷収納スペース部と、に区画形成すると共に、前記通路スペース部により前記居住スペース部と前記荷収納スペース部とを連絡可能とするように構成したことに特徴を有する。
【0048】
また、前記仕切ユニットは、それぞれキャンピング用品や住環境に必要な各種荷を収納設置するための荷収納棚部を複数備え、複数の前記荷収納棚部は、それぞれ少なくとも前記居住スペース部と前記荷収納スペース部と向けて開放可能に構成したことに特徴を有する。
【0049】
また、前記仕切ユニットは、分割・組立可能な複数のユニット要素で構成したことに特徴を有する。
【0050】
また、前記仕切ユニットは、一定量の水を貯溜する上側部分の給水部と、前記給水部からの給水を受ける中間部分のシンク部と、前記シンク部からの排水を貯溜する下側部分の排水部と、により構成した水設備を有することに特徴を有する。
【0051】
また、前記水設備の前記シンク部は、前記仕切ユニットの自立状態において対向する前記他方側の車両ボディ内側壁側へ開放するように設けられ、前記通路スペース部で搭乗者が水回り作業を実施できるようにしたことに特徴を有する。
【0052】
前記ユニット支持体は、自立状態における前記仕切ユニットと前記他方側の車両ボディ内側壁の対向面の前後側の上端部同士の間で架設可能な棒状の梁体であって、前記梁体は、前記通路スペース部の前後側開口を開閉可能とする遮蔽体を備えることに特徴を有する。
【0053】
また、前記仕切ユニットは、前記左右側後輪ハウジングにそれぞれ係合対応して自立状態で対向する一対の左右側仕切ユニットからなり、前記ユニット支持体は、前記車両ボディ床面で自立する前記左右側仕切ユニットの対向面の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けられ、一対の前記左右側仕切ユニットは、自立状態において、それぞれが対応する左右側の車両ボディ内側壁と車両ボディ天面とに接触可能にすると共に前記左右側の車両ボディ内側壁部から前記荷室スペース内方へ対向突出して間に前記通路スペース部を形成するように構成したことに特徴を有する。
【0054】
また、前記左右側仕切ユニットのうち一方の仕切ユニットは、自立状態における前記荷室スペース内方への突出長さを他方の仕切ユニットよりも長くするように幅広に形成すると共に突出先端部分を最重量部に形成したことに特徴を有する。
【0055】
また、本発明では、荷室スペースで露出した左右側後輪ハウジングを有し、前述のキャンピングカー改造キットを備えたバン型車についても提供する。
【0056】
以下、本発明に係るキャンピングカー改造キット(以下、単に本改造キットと称する。)について、[1.車両の基本的構成]、[2.実施例1]、[3.実施例2]、[4.実施例3]、[5.実施例4]、の順に説明する。なお、以下の説明において、特に方向視を定めない限り、車両の進行方向を基準に、車両が前進する側を「前側」、車両が後退する側を「後側」、車両が左折する側を「左側」、車両が右折する側を「右側」とする。
【0057】
[1.車両の基本的構成]
図1(a)及び
図1(b)は、実施例1に係るキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。本改造キットA1が搭載されるバン型車Vは、
図1(a)に示すように、車内スペースにおいて、運転席と助手席以外の大部分を座席を排した荷室スペースSを有する全体横長の略直方体形状の車両である。
【0058】
荷室スペースSは、
図1(b)に示すように、車内スペースにおいて、車両ボディ左右内側壁BL、BRと車両ボディ床面BFと車両ボディ天面BCとにより囲まれた横長の直方形状の積荷用空間である。
【0059】
荷室スペースSの寸法は、バン型車の年式やサイズ規格で異なるが、例えば、前後長さ約3000mm~3600mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約1500mm~2000mmであり、空間容積約4.5m3~11m3である。なお、本実施例の荷室スペースSの寸法は、前後長さ約3540mm・高さ約1635mm・左右幅約1730mmであって、空間容積約10m3である。
【0060】
また、バン型車Vの荷室スペースS内の後部左右側には、左右側後輪ハウジングHL、HRがそれぞれ車両ボディ左右内側壁BL、BRから内方へ突出した状態で荷室スペースSに露出している。
【0061】
左右側後輪ハウジングHL、HRは、
図1(a)に示すように、車両の後輪タイヤの略上半部を外側上方から覆う前後方向断面視略弧状のタイヤ保護筐体であって、荷室スペースSの後部左右側で、車両ボディ床面BFから側面視略弓形状に上方突出すると共に車両ボディ左右内側壁BL、BRの下部から内方へ対向して突出し、車両ボディと一体的に形成している。これら左右側後輪ハウジングHL、HRの形状は、前後方向断面視において、例えば、台形弧状や矩形弧状、円弧状のいずれであってもよい。
【0062】
左右側後輪ハウジングHL、HRはそれぞれ、車両ボディ左右内側壁BL、BRと面平行とすると共に車両ボディ床面BFから立ち上げた側面視弧状のハウス側壁HL1、HR1と、車両ボディ左右内側壁BL、BRとハウス側壁HL1、HR1上端縁との間で略湾曲帯板状に伸延するハウス上壁HL2、HR2と、で構成している。
【0063】
なお、各ハウジングHL、HRの寸法は、例えば、前後長さ(ハウス上壁HL2、HR2の車両ボディ床面BFからの前後突出基端部同士の間の長さ)約820mm~840mm・高さ(車両ボディ床面BFからハウス上壁HL2、HR2の頂部までの長さ)約240mm~250mm・左右幅(それぞれ車両ボディ左右内側壁BL、BRからの内方突出長さ)約200mm~250mmに形成している。
【0064】
本発明に係るキャンピングカー改造キットは、かかる構成のバン型車Vの荷室スペースSに内装搭載され、同荷室スペースSをキャンピングライフに最適な居住環境へ変容してバン型車Vをキャンピングカー仕様に内装改造する。
【0065】
[2.実施例1]
次に、実施例1に係るキャンピングカー改造キットA1について詳説する。
図2(a)及び
図2(b)はそれぞれ仕切ユニットの構成を示す前方側斜視図及び後方側斜視図、
図3(a)及び
図3(b)は通路スペース側からみた仕切ユニットの構成を示す組立正面図及び分解正面図、
図4は仕切ユニットと後輪ハウジングとの係合状態を示す部分拡大側面図、
図5はキャンピングカー改造キットを搭載したバン型車の荷室スペースを示す模式的平面図である。
【0066】
本改造キットA1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、左右側後輪ハウジングHL、HRのうち、少なくとも一方側の右側後輪ハウジングHRに係合対応して同ハウジングHR近傍の車両ボディ床面BFで自立可能とする右側の仕切ユニット10と、車両ボディ床面BFで自立した仕切ユニット10と対向する他方側の車両ボディ左内側壁BLとの上端部同士の間に設けられ、仕切ユニット10の自立姿勢を支持可能とするユニット支持体20と、を備えて構成している。
【0067】
かかる仕切ユニット10は、自立状態において、一方側の車両ボディ右内側壁BRと車両ボディ天面BCとに接触可能にすると共に一方側の車両ボディ右内側壁BRから荷室スペースS内方へ突出して他方側の車両ボディ左内側壁BLとの間に一定の空間部分を形成するように構成している。
【0068】
すなわち、仕切ユニット10は、荷室スペースSについて、同仕切ユニット10の自立位置を境に車両の進行前後方向において、少なくとも、前方側スペース部分を搭乗者が寝食をするための居住スペース部S1とすると共に仕切ユニット10と他方側の車両ボディ左内側壁BLとの間の空間部分を居住スペース部S1を後方側へ開放させる通路スペース部S2にするように構成している。
【0069】
特に本実施例の仕切ユニット10は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、同ユニット10の自立位置を境に、バン型車Vの荷室スペースSを、前方側の居住スペース部S1と、後方側の荷収納スペース部S3と、中間の通路スペース部S2と、の3つの各種機能的スペース部に区画形成する。
【0070】
換言すれば、仕切ユニット10とユニット支持体20とは、「仕切ユニット10の幅(左右方向の長さ)+ユニット支持体20の長手(左右方向の長さ)=荷室スペースSの幅員」となる左右長さ寸法でそれぞれ形成しており、ユニット支持体20の長手が通路スペース部S2の幅員に相応する。
【0071】
居住スペース部S1は、搭乗者が寝食をするためのリビング・寝室スペースとして機能する。居住スペース部S1は、荷室スペースSにおいて、仕切ユニット10自立位置よりも前方側スペース部分であって荷室スペースSの大部分に相当する方形空間部分である。
【0072】
居住スペース部S1の寸法は、前後長さ約2000mm~2200mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約1500mm~2000mmであり、空間容積約3.0m3~6.8m3である。本実施例では、前後長さ約2090mm・高さ約1635mm・左右幅約1730mm、空間容積約6m3としている。
【0073】
本実施例の居住スペース部S1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、車両の進行方向において、運転席と助手席よりも後方側且つ各ハウジングHL、HRよりも前方側に位置した、運転席及び助手席位置とユニット10位置との間の車内スペース部分として形成している。
【0074】
荷収納スペース部S3は、搭乗者が車両後側部のバックドアBDを開閉して荷物を載置収納するためのラゲッジスペースとして機能する。
【0075】
荷収納スペース部S3は、荷室スペースSにおいて、仕切ユニット10の自立位置よりも後方側スペース部分に相当する方形空間部分である。すなわち、荷収納スペース部S3は、左右側後輪ハウジングHL、HRよりも後方側に位置した、仕切ユニット10位置と車両のバックドアBDとの間の車内スペース部分である。
【0076】
荷収納スペース部S3の寸法は、前後長さ約400mm~700mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約1500mm~2000mmであり、空間容積約0.6m3~2.1m3である。本実施例では、前後長さ約570mm・高さ約1635mm・左右幅約1730mm、空間容積約1.6m3としている。
【0077】
通路スペース部S2は、居住スペース部S1と荷収納スペース部S3とを連絡可能とする通路としてだけではなく、後述する遮蔽体23により搭乗者が着替え等を行うためのプライベート空間、水設備43により搭乗者が調理や手洗い等を行う水回り空間、などの多機能スペースとなる。
【0078】
通路スペース部S2は、荷室スペースSにおいて、自立位置にある仕切ユニット10と車両ボディ左内側壁BLとの間の略縦直方形状の空間部分である。すなわち、通路スペース部S2は、左右側後輪ハウジングHL、HRの間に位置した、居住スペース部S1と荷収納スペース部S3との間の車内スペース部分である。
【0079】
通路スペース部S2の寸法は、前後長さ約800mm~1000mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約500mm~800mmであり、空間容積約0.3m3~1.4m3である。本実施例では、前後長さ約880mm・高さ約1635mm・左右幅約800mm、空間容積約0.8m3としている。
【0080】
ここで、3つの各種機能的スペース部S1~S3の空間容積の大きさの関係を比較すると、容積比で「居住スペース部S1:荷収納スペース部S3:通路スペース部S2=約8:1:2」である。特に居住スペース部S1は、荷室スペースSの約60%を占める空間容積で形成され、可及的広い間取りで確保される。
【0081】
換言すれば、本実施例の本改造キットA1は、車両の荷室スペースSで露出した既設部材としての各ハウジングHL、HR位置を基準に、荷室スペースSを空間容積順に「居住スペース部S1>荷収納スペース部S3>通路スペース部S2」とするように区画するように構成している。
【0082】
仕切ユニット10は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように所定幅員を有し、高さを荷室スペースSの高さと略同じに形成すると共に前後長さを右側後輪ハウジングHRの前後長さと略同じに形成した略縦長翼型形の大直方形箱体であって、互いに所定間隔を隔てて面平行にすると共に鉛直伸延する前後側壁11、12と、車両ボディ右内側壁BRに沿って湾曲伸延する外側壁13と、通路スペース部S2側で鉛直伸延する内側壁14と、前後側壁11、12の上下端部同士の間で水平伸延する上下側壁15、16と、で構成している。
【0083】
仕切ユニット10の素材は、特に限定されることはなく、例えば、プラスチック製や木製であってもよいが、後述する荷収納棚部40の加工性、重心安定性、経済性、剛性等の観点から、例えば、シナベニアなどの木製合板で構成することが好ましい。
【0084】
仕切ユニット10の寸法は、前後長さ約800mm~1000mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約750mm~850mmであり、本実施例では、前後長さ約880mm・高さ約1635mm・左右幅約800mmとしている。また、仕切ユニット10の総重量は約100kg~120kgである。
【0085】
また、仕切ユニット10は、
図1(a)及び
図4に示すように、下部を右側後輪ハウジングHRに係合可能な係合部60にすると共に同係合部60を介して右側後輪ハウジングHRを上方から覆うように自立可能に構成している。
【0086】
すなわち、仕切ユニット10の下部には、右側後輪ハウジングHRの前後長さと略同じ間隔で立設した前後側壁11、12の間で外側壁13と下側壁16とによりなす下方角部の前後方向中央部を方形状に切欠することにより、右側後輪ハウジングHR側に開放すると共に同ハウジングに嵌着対応して係合対応する下方開放凹状の係合部60を形成している。
【0087】
係合部60は、
図2(b)及び
図4に示すように、ハウス上壁HR2の前後端部にそれぞれ前後当接して係合する前後側係合端部61、62と、ハウス上壁HR2頂部に当接対応する係合天面部63と、ハウス側壁HR1に面対向して当接対応する係合側面部64とにより後輪ハウジングHRに嵌着可能とする下方開放の嵌着凹部65を形成して構成している。なお、係合部60における下方開放凹状の嵌着凹部65は、後輪ハウジングHRの外形に沿うように、凹状面をハウジング外面全域に面当接する当接面を有して形成することとしてもよい。
【0088】
前後側壁11、12は、それぞれ車両ボディ右内側壁BRと車両ボディ天面BCと車両ボディ床面BFとに接触させて自立状態を保持可能とする支柱として機能すると共にその下部を右側後輪ハウジングHRの前後端部に係合可能とする前後側係合端部61、62に形成している。
【0089】
具体的には、前後側壁11、12は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、それぞれ所定厚みを有すると共に上下長さを荷室スペースSの上下長さと略同じに形成した略縦翼型形の板部材であって、車両ボディ床面BFに当接対応して略水平伸延する下側縁部11a、12aと、車両ボディ天面BCに当接対応して湾曲伸延する上側縁部11b、12bと、車両ボディ右内側壁BRに当接対応して湾曲伸延する外側縁部11c、12cと、通路スペース部S2側で鉛直伸延する内側縁部11d、12dと、を有して形成している。
【0090】
このような構成の仕切ユニット10を右側後輪ハウジングHRに係合部60を介して設置した場合には、
図4に示すように、仕切ユニット10は、係合部60の方形凹状内側の一定空間に右側後輪ハウジングHRを嵌着させて同ハウジングHLを下方位置に覆い隠した状態で前後側壁11、12により車両ボディ床面BFの左側で自立する。
【0091】
このような仕切ユニット10下部の嵌着凹部65での右側後輪ハウジングHRの嵌着状態において、係合部60における前後側係合端部61、62が右側後輪ハウジングHRの前後端部にそれぞれ対向して係合し、車両の急激な制動力に伴う前後方向への慣性力が働いた際の仕切ユニット10の前後方向への動きが規制される。
【0092】
また、係合部60の係合天面部63と係合側面部64とがそれぞれハウス上壁HR2頂部とハウス側壁HR1とにそれぞれ当接対応して嵌着係合状態を確固なものとし、仕切ユニット10の自立状態を安定化させる。
【0093】
また、仮に、仕切ユニット10が前後側係合端部61、62のうちいずれか一方の係合端部を支点に前後方向に傾いたとしても、同係合端部と対角線上にある前後側壁11、12の上側縁部11b、12bが車両ボディ天面BCに突き当たり当接対応するため、仕切ユニット10の前後方向への動きが規制される。
【0094】
このように係合部60は、本質的には、仕切ユニット10の前後方向への動きを規制できればよく、従ってハウス上壁HR2に上方から嵌着して前後端部にそれぞれ前後係合する前後側係合端部61、62のみで構成することとしてもよい。
【0095】
また、仕切ユニット10下部の係合部60における嵌着凹部65と後輪ハウジングHRとの対向当接面部同士の間には、隙間を埋め用のスペーサーを介在させることもできる。スペーサーは、例えば、可撓性及び耐衝撃性を有するゴム板などの緩衝材で構成してもよい。これにより、係合部60が右側後輪ハウジングHRに密着して仕切ユニット10の自立状態をより安定化させることができる。
【0096】
このように構成した仕切ユニット10は、各種機能的スペース部S1~S3をより快適な居住環境とするべく、
図2(a)~
図3(b)に示すようにキャンピング用品や住環境に必要な各種荷を収納設置するための荷収納棚部40a~40jを複数備えている。複数の荷収納棚部40a~40jは、前後側壁11、12同士の間に形成され、それぞれ居住スペース部S1や荷収納スペース部S3、通路スペース部S2とに開放可能に構成している。
【0097】
荷収納棚部40は、一側を開口させた内部中空の小方形状の箱体であって、所望とする数量や収納用途に応じて仕切ユニット10容積に収まるように寸法等を適宜決定することができる。
【0098】
特に本実施例の仕切ユニット10は、後輪ハウジングHRに係合した車両ボディ床面BFでの自立状態において、居住スペース部S1側の前側壁11と通路スペース部S2側の内側壁14との所定位置で、断面視略コ字状の方形空間として荷収納棚部40a~40jをそれぞれ居住スペース部S1と通路スペース部S2とに開放して複数形成している。
【0099】
具体的には、仕切ユニット10は、居住スペース部S1側に開放し、前側壁11の上下方向に沿って順次区画形成した複数の居住側の荷収納棚部40a~40dと、通路スペース部S2側に開放し、内側壁14の上下方向に沿って順次区画形成した複数の通路側の荷収納棚部40e~40jと、を備えている。
【0100】
居住側の荷収納棚部は、居住スペース部S1側からの方向視(車両の進行方向後側面視)において、最上段部位置の第1荷収納棚部40aと、上側中間段部位置の第2荷収納棚部40bと、下側中間段部左側位置の第3荷収納棚部40cと、最下段部位置の第4荷収納棚部40dと、の4個で構成している。
【0101】
第2荷収納棚部40bは、TVを設置するためのオープンラックに構成しており、居住スペース部S1にいる搭乗者が設置されたTVを視聴可能にしている。
【0102】
また、第2荷収納棚部40b以外の各荷収納棚部40a、40c、40dは、それぞれの棚開口部で一端を枢支した開閉可能な扉体41a、41c、41dを有して開閉式収納棚に構成しており、搭乗者が必要に応じて居住スペース部S1側から各種荷を出し入れ可能にしている。
【0103】
なお、扉体41a、41c、41dは、枢支端と反対側の自由端と各荷収納棚部40a、40c、40dの開口縁部との間に扉体のロック・解除可能な扉ロック体を介設している。扉ロック体は、閉扉状態を保持できれるものであればよく、例えばマグネットやラッチ錠や掛錠で構成することとしてもよい。
【0104】
また、通路側の荷収納棚部は、通路スペース部S2側からの方向視(車両の進行方向左側面視)において、
図3(a)に示すように最上段部位置の第5荷収納棚部40eと、上側中間段部左側位置の第6荷収納棚部40fと、上側中間段部右側位置の第7荷収納棚部40gと、下側中間段部左側位置の第8荷収納棚部40hと、下側中間段部右側位置の第9荷収納棚部40iと、最下段部位置の第10荷収納棚部40jと、の6個で構成している。
【0105】
第5荷収納棚部40eと第6荷収納棚部40fと第10荷収納棚部40jとは、前述の荷収納棚部40a、40c、40dと同様に、それぞれの開口部で一端を枢支した開閉可能な扉体41e、41f、41jを有して開閉式収納棚に構成している。
【0106】
第8荷収納棚部40hは、オープンラックに構成しており、蓄電体42aを設置してTVや照明、携帯電話等の家電に電力を供給するための給電部42に構成している。なお、蓄電体42aは、発電機等であってもよいが、設置や管理等の利便性の観点からポータブル電源を採用することが好ましい。
【0107】
第7荷収納棚部40gとその略直下位置にある第9荷収納棚部40iとは、それぞれ水設備43における給水部44と排水部46とに構成している。
【0108】
すなわち、仕切ユニット10は、
図3(a)に示すように、一定量の水を貯溜する上側部分の給水部44と、給水部44からの給水を受ける中間部分のシンク部45と、シンク部45からの排水を貯溜する下側部分の排水部46と、により構成した水設備43を有する。
【0109】
水設備43のシンク部45は、仕切ユニット10の自立状態において、対向する他方側の車両ボディ左内側壁BL側へ開放するように設けられ、通路スペース部S2で搭乗者が水回り作業を実施できるようにしている。
【0110】
換言すれば、仕切ユニット10は、
図2(a)に示すように内側壁14の略上半部の一部を断面視コ字状に内側に凹ませて一定のコ字状空間を形成すると共に、
図3(a)に示すように同空間の奥側面部分、すなわち同コ字状の縦辺に相当する部分に第5荷収納棚部40e~第7荷収納棚部40gをそれぞれ形成している。
【0111】
かかる仕切ユニット10において、水設備43は、第7荷収納棚部40gに給水タンク44aを載置することにより給水部44を、給水部44よりも手前側且つ仕切ユニット10の内側壁14の上下方向略中央に流台45aを設けてシンク部45を、流台45aの直下位置の第9荷収納棚部40iに排水タンク46aを収納することにより排水部46を、それぞれ構成している。
【0112】
第7荷収納棚部40gは、手前側に給水タンク44aを載置するための一定高さの載置段部44bを形成すると共に載置段部44bよりも奥行方向に予備水源としての水ボトルを収納するための奥側収納44cを形成している。
【0113】
給水タンク44aは、10L容量のタンク下部に給水弁を設けたウォータージャグであって、シンク部45の上方位置に給水口を配向させて載置段部44bに設置される。また、水ボトルは、いわゆる2L容量のペットボトルであり、奥側収納44cに横並びで最大で4本収納される。
【0114】
流台45aは、上方開口の有底方形筒状のシンク本体と、シンク本体の底部の所定位置に貫通形成した排水口と、シンク本体の外底部で排水口に連通連設した排水ダクトと、とより構成している。
【0115】
シンク部45は、
図2(a)に示すように流台45aのシンク本体の上方開口縁部を仕切ユニット10の上下方向略中央位置に配置すると共に、
図3(a)に示すように排水ダクトを第9荷収納棚部40iの天面を貫通して垂下するように配置することにより構成している。
【0116】
また、排水部46は、
図3(a)に示すようにシンク部45から垂下する排水ダクトの排水口に連通する排水タンク46aを第9荷収納棚部40i内に収納設置することにより構成している。
【0117】
このようにして仕切ユニット10は、キャンピング用品や住環境に必要な各種荷の種類や大きさに合わせて設計した合計10個の荷収納棚部40a~40jを区画形成している。
【0118】
なお、係合部60は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、仕切ユニット10の居住スペース部S1側からの方向視で第4荷収納棚部40dよりも外側位置且つ第3荷収納棚部40cよりも下方位置、また、仕切ユニット10の通路スペース部S2側からの方向視で第4荷収納棚部40dよりも奥側(後方側)位置且つ第10荷収納棚部40jよりも奥側(右側)位置、さらに第8荷収納棚部40hと第9荷収納棚部40iとの下方位置に配置して形成している。
【0119】
すなわち、仕切ユニット10の係合部60は、下半部に形成される各荷収納棚部と前後側壁11、12とに囲繞されて外側を開放し、各荷収納棚部と前後側壁の側板部を前述の前後側係合端部61、62、係合天面部63、係合側面部64に兼用して嵌着凹部65を形成するように構成している。
【0120】
ここで重要なことは、1つの仕切ユニット10が、その大直方形状の内部に収めるようにして、キャビネット・ラック要素としての小直方形状の複数の各種荷収納棚部40a~40jを奥行・高さ・幅の寸法で、内部空間を無駄なく前後上下左右の各方向に整然と区画形成し、収納設備や水設備、家電設備等の構築して多機能性を担保し、限られた設置スペースを有効活用して可及的広い各種スペース部を確保しつつ車中泊機能を向上していることにある。
【0121】
すなわち、仕切ユニット10は、荷室スペースSを各種機能的スペース部S1~S3へ区画しつつ内部の三次元空間に各種荷収納棚部40a~40jを上下左右前後に余す処なく複数配備することにより、区画形成した居住スペース部S1や荷収納スペース部S3や通路スペース部S2の各機能性を向上させることができる点で、キッチンや棚などの大型居住設備を改めて設置することなく車内スペースにおける居住設備の占有容積を可及的に減容化し、限られた車内スペースを最大限有効活用できるものである。
【0122】
換言すれば、居住側の荷収納棚部40a~40dは、複数の小方形箱体を、前後側壁11、12同士によりなす空間の前半部且つ奥側部(外側部)で上下方向に組み上げて構成し、前側壁11においては各荷収納棚部40a~40dに相応する位置に開口形成して居住スペース部S1側へ開放可能に構成している。
【0123】
また、通路側の荷収納棚部40e~40jは、複数の小方形箱体を、前後側壁11、12同士によりなす略縦直方形空間において居住側の荷収納棚部40a~40d以外の空間部分に複数組み上げて通路スペース部S2側へ開口可能に構成している。
【0124】
また、仕切ユニット10は、
図5に示すように、右側後輪ハウジングHR上での自立状態における荷室スペースS内方への突出長さ(車両の左右方向における幅員)を、その突出先端部分が平面視で車両の幅方向中央で車両の進行方向と平行伸延する車両中心線C(
図5中、破線で示す)近傍位置に配置されるように形成し、同突出先端部分を最重量部に形成している。
【0125】
かかる突出先端部分、すなわち仕切ユニット10の内側壁14部分は、前述のごとく水設備43や給電部42などの大重量物が形成されることにより最重量部に形成している。具体的には、仕切ユニット10は、設置される後輪ハウジング側の基端側半部と通路スペース側の突出先端側半部との重量関係において、突出先端側半部の重量を総重量の約6割~9割を占めるように形成している。突出先端側半部の重量は、例えば70kg~90kgである。これにより、仕切ユニット10の重心を荷室スペースSの内側へ偏心させて、同重心が車両の左右方向の略中央部に位置することとなり、車両の左右バランスを可及的安定化させることができ、車両の走行性を安定化させる。
【0126】
また、仕切ユニット10は、
図3(b)に示すように、分割・組立可能な複数のユニット要素17で構成している。1つのユニット要素17は、人手で持ち運び可能な重量、例えば5kg~50kgで構成している。
【0127】
なお、複数のユニット要素17は、それぞれ各種荷収納棚部40a~40jごとに分割・組立可能に構成したり、前後側壁11、12やその間に形成する各種荷収納棚部40a~40jの縦横板材ごとに構成することにより、分割・組立が容易となる。
【0128】
本実施例の仕切ユニット10は、
図3(b)に示すように、それぞれ前後側壁11、12を構成する前後側板ユニット要素17a、17bと、同前後側壁11、12間に設置される各種荷収納棚部40a~40jのうち、上半部を構成する上側収納棚ユニット要素17cと、下半部を構成する下側収納棚ユニット要素17dと、の4個のユニット要素により段積み組立可能に構成している。なお、本実施例では、仕切ユニット10の胴体内部をなす収納棚ユニット要素群を上下分割して構成しているが、前後左右に分割して構成してもよい。
【0129】
このように4分割された個々のユニット要素の重量は、一例として前後側板ユニット要素17a、17bのそれぞれで約10kg、上側収納棚ユニット要素17cで約26kg、下側収納棚ユニット要素17dで約44kgである。
【0130】
また、各ユニット要素17a~17dは、それぞれ互いに分割・組立可能とする連結手段を有する。連結手段としては、各ユニット要素17a~17d同士を一体的に連結するように、例えば、隣接するユニット要素における互いの接合面に嵌着自在の雌雄嵌着構造を設けたり、締結自在の雌雄螺合構造を設けたりして構成できる。
【0131】
雌雄嵌着構造としては、例えば、隣接するユニット要素17a~17dにおいて、一方のユニット要素の接合面に凸部を形成すると共に、他方のユニット要素の接合面に一方のユニット要素の凸部に嵌合対応する凹部を形成することにより互いに嵌合可能に構築することができる。
【0132】
また、雌雄螺合構造しては、例えば、隣接するユニット要素において、互いの接合面でそれぞれ連通するボルト挿通孔と、同ボルト挿通に螺合するボルトと、により、互いに螺合締結可能に構築することができる。
【0133】
これにより、各ユニット要素17a~17dを下方から上方にかけて順次積み上げて仕切ユニット10を荷室スペースSに内装立設するユニット組立作業や、仕切ユニット10を再び各ユニット要素17a~17dへ上方から下方にかけて順次分解するユニット分解作業が容易となり、作業負担を軽減することができる。
【0134】
このように構成した仕切ユニット10と同ユニット10の内側壁14に対向する車両ボディ左内側壁BLとの間には、
図1(b)及び
図5に示すようにユニット支持体20が介設される。
【0135】
ユニット支持体20は、仕切ユニット10と車両左右方向において同仕切ユニット10が設けられる側と逆側の車両ボディ右内側壁BLとの間に介設可能であって、同仕切ユニット10の自立姿勢を保持しつつ、仕切ユニット10と車両ボディ左内側壁BLとの間に形成される通路スペース部S2の前後開口における動線を不用意に妨げるものでなければ特に限定されることはない。
【0136】
ユニット支持体20が通路スペース部S2の前後側開口における動線に干渉しない位置としては、仕切ユニット10と車両ボディ左内側壁BLとのそれぞれの対向面における上下端部位置が好ましい。かかる対向面の上下端部に、天板や底板を設けてユニット支持体20を構成してもよい。
【0137】
本実施例のユニット支持体20は、
図1(b)及び
図5に示すように、自立状態における仕切ユニット10と他方側の車両ボディ左内側壁BLの対向面の前後側の上端部同士の間で架設可能な棒状の2つの前後側の梁体21、22で構成している。
【0138】
梁体21、22は、それぞれ通路スペース部S2の幅員と略同じ長さに形成した略角棒状であって、長手方向の左右端面を仕切ユニット10(本実施例では前後側壁11、12の内側縁部11d、12dの上部)と他方側の車両ボディ左内側壁BL上部のそれぞれの対向面に対向当接する当接面に形成しており、仕切ユニット10と他方側の車両ボディ左内側壁BLの対向面の前後側の上端部同士の間で水平状に伸延して架設固定される。なお、本実施例の梁体21、22の長さは、約800mmである。
【0139】
これにより、右側後輪ハウジングHRに係合して自立姿勢にある仕切ユニット10と車両ボディ右内側壁BLとの間に各梁体21、22を水平状に架設した場合には、仕切ユニット10の外側壁13がこれに対応する車両ボディ右内側壁BRに圧着し、仕切ユニット10の自立姿勢がより安定化される。
【0140】
すなわち、仕切ユニット10は、ユニット支持体20により車両の左右方向の外方に押圧されて、圧着対応する車両ボディ右内側壁BRとユニット支持体20との間に固定されることとなる。
【0141】
その結果、車両の走行に伴う進行方向右側の慣性力が仕切ユニット10に伝達された場合、同仕切ユニット10は、外側壁13を車両ボディ右内側壁BRに圧着させて同車両ボディ右内側壁BRで慣性応力に抗して支持される。
【0142】
一方で、車両の走行に伴う進行方向左側の慣性力が仕切ユニット10に伝達された場合には、同仕切ユニット10は、ユニット支持体20を介して反対側の車両ボディ左内側壁BLに慣性応力を伝達しつつ同車両ボディ左内側壁BRで慣性応力に抗して支持される。
【0143】
このように、本改造キットA1は、仕切ユニット10をボディ内側に沿って荷室スペースSに配置し、ユニット支持体20を介して一体的にボディ内側へ圧着係合固定させて車両の走行に伴う各方向への慣性力へ抗した係合固定構造を実現している。
【0144】
また、前後側梁体21、22は、
図5に示すように、それぞれ通路スペース部S2の前後側開口を開閉可能とする遮蔽体23を備えており、架設状態で通路スペース部S2の前後側開口を開閉可能に構成している。
【0145】
遮蔽体23は、遮光性、不透光性、及び可撓性を有したカーテンや、通気性を有した風取り用の網戸であってもよく、少なくとも通路スペース部S2の幅員以上、且つ高さ以上の寸法で形成している。かかる遮蔽体23は、梁体21、22の長手方向に沿って設けたレール24に対して上端部を滑動可能に取り付けられ、左右方向に折畳・展開自在に構成している。
【0146】
なお、本実施例では、
図5に示すように、前側梁体21はカーテンからなる遮蔽体23aを備えて構成し、後側梁体22は前方側に配置される網戸と、後方側に配置されるカーテンとの2つの遮蔽体23b、23cを備えて構成している。
【0147】
これにより、前後側の各遮蔽体23a、23cをそれぞれ折畳方向へ移動させて折畳形態にした場合には、通路スペース部S2の前後側開口が開放されて居住スペース部S1と荷収納スペース部S3との間が連通し、搭乗者が居住スペース部S1と荷収納スペース部S3との間を往来できる。
【0148】
また、前後側の各遮蔽体23a、23cをそれぞれ展開方向へ移動させて展開形態にした場合には、通路スペース部S2の前後側開口が各遮蔽体23a、23cにより閉塞されて、通路スペース部S2が完全遮蔽空間のプライベートスペース部に変容し、搭乗者が着替えや簡易トイレを実施できる。
【0149】
なお、本改造キットA1は、荷室スペースSを形成する車両ボディにボルト等を介して直接的に一体固定化されていてもよい。重要なことは、本改造キットA1が、車両の既存部位としての後輪ハウジングHRに係合対応すべく予めユニット設計された仕切ユニット10とユニット支持体20とを備えていることにある。
【0150】
従って、後輪ハウジングHRに係合部60を介して係合した自立状態における仕切ユニット10を車両ボディ左右内側壁BL、BRや車両ボディ天面BC、車両ボディ床面BFにボルト等で直接的固定することができることは勿論である。
【0151】
このように、本改造キットA1によれば、バン型車Vに適応し、特別な技量を要求することなく誰でも簡単にDIY感覚で荷室スペースSに設置でき、車両の資産価値を不用意に低下させることなく車両自体に改変を加えずに予め車両に搭載された既設部材としての後輪ハウジングHRを有効活用して荷室スペースSを可及的広い居住スペース部S1や通路スペース部S2、荷収納スペース部S3などの機能的スペース部へ区画改造でき、設置後には車両走行時における住居設備の安定性を確保できる。
【0152】
[3.実施例2]
次に、実施例2に係るキャンピングカー改造キットA2について詳説する。
図6は本改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図、
図7は本改造キットの構成を示す前方側斜視図、
図8は左側仕切ユニットの構成を示す前方側斜視図及び後方側斜視図、
図9は本改造キットを搭載したバン型車の荷室スペースを示す模式的平面図、
図10は本改造キットの構成を示す縦断面図、
図11は本実施例に係るユニット支持体の構成を示す模式的正面図である。なお、以下の説明において、実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0153】
本改造キットA2において、仕切ユニットは、
図6(b)、
図7、
図9、及び
図10に示すように、左右側後輪ハウジングHL、HRにそれぞれ係合対応して自立状態で対向する一対の左右側仕切ユニット10、30で構成し、ユニット支持体20は、車両ボディ床面BFで自立する左右側仕切ユニット10、30の対向面(互いの内側壁14、34面)の上下端部同士のうち少なくともいずれか一方の端部同士の間に設けるられるように構成している。
【0154】
すなわち、本改造キットA2は、左右側後輪ハウジングHL、HRにそれぞれ係合対応して同ハウジング近傍の車両ボディ床面BFで自立可能とする一対の左右側仕切ユニット10、30と、自立する一対の左右側仕切ユニット10、30同士の間に設けられ、左右側仕切ユニット10、30の自立姿勢を支持可能とするユニット支持体20と、を備えて構成している。
【0155】
かかる一対の左右側仕切ユニット10、30は、自立状態において、
図6(b)及び
図9に示すように、それぞれが対応する車両ボディ左右内側壁BL、BRと車両ボディ天面BCとに接触可能にすると共に車両ボディ左右内側壁BL、BRから荷室スペースSの内方へ対向突出して、間に通路スペース部S2を形成するように構成している。
【0156】
すなわち、左右側仕切ユニット10、30とユニット支持体20とは、「右側仕切ユニット10の幅(左右方向の長さ)ユニット支持体20の長手(左右方向の長さ)+左側仕切ユニット30の幅(左右方向の長さ)+=荷室スペースSの幅員」となる寸法でそれぞれ形成している。特に、これら各ユニット10、30の幅と同ユニット10、30の対向面同士によりなす通路スペース部S2の幅員の関係は、「左側仕切ユニット30:右側仕切ユニット10:通路スペース部S2=約1:2:1」である。
【0157】
本実施例の通路スペース部S2の寸法は、前後長さ約880mm・高さ約1635mm・左右幅約540mm、空間容積約0.8m3としている。すなわち、本実施例の通路スペース部S2は、一対の左右側仕切ユニット10、30を荷室スペースSの幅方向の左右側に設置する分、実施例1に係る通路スペース部S2よりもやや幅狭に形成される。
【0158】
実施例1の仕切ユニットと同一の右側仕切ユニット10に対向配置される左側仕切ユニット30は、
図7~
図8(b)に示すように、車両ボディ左右内側壁BL、BRの湾曲形状に沿う外側壁33を有した正面視で略縦長翼型形の大直方形箱体に形成している。
【0159】
すなわち、左側仕切ユニット30は、
図7~
図8(b)に示すように、互いに所定間隔を隔てて面平行にすると共に鉛直伸延する前後側壁31、32と、車両ボディ右内側壁BLに沿って湾曲伸延する外側壁33と、通路スペース部S2側で鉛直伸延する内側壁34と、前後側壁31、32の上下端部同士の間で水平伸延する上下側壁35、36と、で構成し、その下部には左側後輪ハウジングHLに係合対応する下方開放凹状の係合部70を形成している。
【0160】
係合部70は、右側仕切ユニット10と同様に、
図8(b)及び
図10に示すように、ハウス上壁HL2の前後端部にそれぞれ前後当接して係合する前後側係合端部71、72と、ハウス上壁HL2頂部に当接対応する係合天面部73と、ハウス側壁HL1に面対向して当接対応する係合側面部74とにより後輪ハウジングHLに嵌着可能とする下方開放の嵌着凹部75を形成して構成している。
【0161】
また、前後側壁31、32は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、それぞれ所定厚みを有すると共に上下長さを荷室スペースSの上下長さと略同じに形成した略縦翼型形の板部材であって、車両ボディ床面BFに当接対応して略水平伸延する下側縁部31a、32aと、車両ボディ天面BCに当接対応して湾曲伸延する上側縁部31b、32bと、車両ボディ左内側壁BLに当接対応して湾曲伸延する外側縁部31c、32cと、通路スペース部S2側で鉛直伸延する内側縁部31d、32dと、を有して形成している。
【0162】
左側仕切ユニット30の寸法は、例えば、前後長さ約800mm~1000mm・高さ約1000mm~1700mm・左右幅約350mm~550mmであり、本実施例では、前後長さ約880mm・高さ約1635mm・左右幅約400mmとしている。左側仕切ユニット30は総重量を約50kg~60kgとなるようにそれぞれ形成している。
【0163】
すなわち、左右側仕切ユニット10、30のうち一方の右側仕切ユニット10は、自立状態における荷室スペースS内方への突出長さを他方の左側仕切ユニット30よりも長くするように幅広に形成し、前述のようにその突出先端部分を最重量部に形成して構成している。
【0164】
換言すれば、左側仕切ユニット30は、前後長さと高さを右側仕切ユニット10と略同じとし、右側仕切ユニット10よりも左右幅を狭くして相対的に小容積とした小型の略縦長翼型形の直方形箱体となるように形成している。
【0165】
具体的には、平面視で車両中心線Cを基準に、
図9に示すように、右側仕切ユニット10は幅員を幅広状にして突出先端となる対向面位置を車両中心線Cの近傍位置に配置するように構成し、同右側仕切ユニット10に対向する他方の左側仕切ユニット30は幅員を幅狭状にして突出先端となる対向面位置を車両中心線Cから遠方位置に配置するように構成し、互いの対向面同士によりなす通路スペース部S2を車両中心線Cから他方の左側仕切ユニット30側に偏心して形成している。
【0166】
なお、右側仕切ユニット10は、左側仕切ユニット30の幅員よりも約1.3倍~2.4倍の幅員を有している。また、本実施例の各ユニット10、30は、右側仕切ユニット10の幅員を左側仕切ユニット30の幅員よりも幅広に形成しているが、その逆であってもよいことは勿論、互いの対向面同士の間に通路スペース部S2を形成できれば同形同大、すなわち同一の幅員を有して車両中心線Cを中心に左右線対称形としてもよい。
【0167】
また、左側仕切ユニット30は、荷収納スペース部S3側に開放し、右側仕切ユニット10に対向する内側壁34で上下方向に沿って順次区画形成した複数の通路側の荷収納棚部50a~50eを備えている。
【0168】
左側仕切ユニット30における複数の通路側の荷収納棚部50a~50eは、居住スペース部S1側からの方向視(車両の進行方向左側面視)において、
図8(a)に示すように、それぞれ前後側壁31、32同士の間で、最上段部位置の第1荷収納棚部50aと、上側中間段部左側位置の第2荷収納棚部50bと、上側中間段部右側位置の第3荷収納棚部50cと、下側中間段部左側位置の第4荷収納棚部50dと、下側中間段部右側位置の第5荷収納棚部50eと、の5個で構成している。なお、左側仕切ユニット30の最下段部位置には、背面側で左側後輪ハウジングHLと係合する係合部70が形成されている。
【0169】
第1荷収納棚部50aと第3荷収納棚部50cとはそれぞれオープンラックに構成しており、このうち第3荷収納棚部50cは蓄電体を設置して予備電源としての第2給電部52に構成している。
【0170】
また、第1荷収納棚部50aと第3荷収納棚部50c以外の各種荷収納棚部50b、50d、50eは、それぞれの棚開口部で一端を枢支した開閉可能な扉体を有して開閉式収納棚に構成している。なお、左側仕切ユニット30は、右側仕切ユニット10と同様に、複数のユニット要素17により分割・組立可能に構成することができるのは勿論である。
【0171】
なお、係合部70は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、左側仕切ユニット30の通路スペース部S2側からの方向視で第4荷収納棚部50dと第5荷収納棚部50eとの下方位置に形成している。
【0172】
すなわち、左側仕切ユニット30の係合部70は、下半部に形成される各荷収納棚部と前後側壁31、32とに囲繞されて外側を開放し、各荷収納棚部と前後側壁の側板部を前述の前後側係合端部71、72、係合天面部73、係合側面部74に兼用して嵌着凹部75を形成するように構成している。
【0173】
このように、本改造キットA2では、左右合わせて合計15個の各種荷収納棚部40a~50eを備えており、各種機能的スペース部S1~S3の機能性をさらに向上させている。しかも、重量物である各ユニット10、30がそれぞれ左右側後輪ハウジング上に配置されるため、仕切ユニット荷重を後輪ハウジング真下の後輪タイヤで受けて同タイヤを支点に下方支持させることができる。
【0174】
その結果、車両の重心を不用意に偏心させたりシャシ部分に無用な負荷をかけてボディを不用意に歪めたりすることない。また、後輪タイヤに荷重を負荷させながら燃費を徒に悪化させることなく、例えば、山道、坂道、雪道などの悪路であっても走行性を良好に維持することが期待できる。
【0175】
このように構成した右側仕切ユニット10と左側仕切ユニット30との互いの対向面同士の間に介設するユニット支持体20は、
図7~
図9に示すように各ユニット10、30同士を一定間隔に保持して連結する連結部として機能すると共に各ユニット10、30をそれぞれが当接対応する車両ボディ左右内側壁BL、BRへ押圧して車両ボディ内側面に固定する押圧固定部として機能する。
【0176】
すなわち、ユニット支持体20は、それぞれ左右側後輪ハウジングHL、HRに係合して自立姿勢となった左右側仕切ユニット10、30の対向面の上下部同士の間で架設可能な4つの前後側上下梁体21、22で構成している。
【0177】
梁体21、22は、
図10及び
図11に示すように、各ユニット10、30のうち、いずれか一方の仕切ユニット30の対向面の上下側隅部にそれぞれ枢支部25を介して基端部21a、22aを回動可能に枢支され、同枢支部25を中心に先端部21b、22bを通路スペース部S2方向へ向けてそれぞれ上下揺動可能に構成している。
【0178】
なお、本実施例では左側仕切ユニット30の内側壁34の前後上下隅部、すなわち前後側壁31、32の内側縁部31d、32dの上下部にそれぞれ枢支部25を介して上下方向に回動可能に枢支した前後側上下梁体21、22を4つ設けており、枢支部25には蝶番を採用している。
【0179】
これにより、梁体21、22を枢支部25を中心にそれぞれ上下方回動させた場合には、梁体21、22が、先端部21b、22bを上下方に向けた鉛直姿勢から対向する右側仕切ユニット10の上下隅部に向けた水平姿勢へと姿勢変位し、その長手両端面を各ユニット10、30の対向面に面当接させて各ユニット10、30同士の間に水平状に架設することができる。
【0180】
さらに、枢支部25は、水平方向へ回転付勢する弾性体を備えていてもよい。例えば、枢支部25として拡開方向へ付勢されるバネ式蝶番を採用すれば、同バネの弾性復帰力により前後側上梁体21、22が跳ね上がると共に前後側下梁体21、22が跳ね下がって鉛直姿勢から水平姿勢に変位し、梁体21、22の架設作業をワンタッチで行うことができ作業負担をより軽減することができる。
【0181】
また、各梁体21、22の先端部21b、22bには、
図11に示すように、梁体21、22が水平姿勢となって各ユニット10、30同士の間に架設された状態で、他方の仕切ユニット10の対向面に連結係合するロック体26を設けている。なお、ロック体26は、ラッチ錠や掛錠であってもよい。
【0182】
これにより、自立状態の各ユニット10、30とその間で水平状に架設されたユニット支持体20とが一体的に連結し、車両ボディ左右内側壁BL、BRや車両ボディ床面BFや車両ボディ天面BCに圧接一体化した固定形態を安定化することができる。
【0183】
[4.実施例3]
次に、実施例3に係るキャンピングカー改造キットA3について詳説する。
図12は本改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【0184】
本改造キットA3は、
図12(a)に示すように、左右側仕切ユニット10、30における各後輪ハウジングHL、HRに係合対応する係合部60a、70aを、それぞれ各ユニット10、30が自立する位置よりも後方側にずらして構成している。
【0185】
すなわち、各ユニット10、30は、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、全体として側面視略L字状であって、それぞれの下部後方位置側に係合部60a、70aを形成し、同係合部60a、70aを介して係合対応する各後輪ハウジングHL、HRの近傍位置、すなわち各後輪ハウジングHL、HRよりも前方側にユニット本体部10a、30aを配置して自立可能に構成している。
【0186】
係合部60a、70aは、それぞれ各後輪ハウジングHL、HRの外形に沿う一側壁と底側壁を除いた箱状筐体であって、横断面逆L字状且つ縦断面下方開放コ字状の下方開放の嵌着凹部65a、75aを形成している。
【0187】
具体的には、係合部60a、70aは、所定間隔を隔てて直立し、後輪ハウジングHL、HRのハウス上壁HL2、HR2の前後端部に前後側でそれぞれ係合対応する前後係合壁部61a、62a、71a、72aと、前後係合壁部61a、62a、71a、72aの上端部同士の間で板面を上下方向に向けて水平伸延し、後輪ハウジングHL、HRのハウス上壁HL2、HR2の頂部に当接対応する帯板状の天板壁63a、73aと、前後係合壁部61a、62a、71a、72aの縦端部同士の間で板面を左右方向に向けて直立伸延し、後輪ハウジングHL、HRのハウス側壁HL1、HR2に当接対応する帯板状の横側板壁64a、74aと、により下方開口の嵌着凹部65a、75aを形成して構成している。
【0188】
ユニット本体部10a、30aは、それぞれ車両ボディ左右内側壁BL、BRに沿って自立した対向状態で、荷室スペースSを複数の各種機能的スペース部S1~S3へ区画形成する仕切機能の中心部分である。ユニット本体部10a、30aは、それぞれ実施例1及び実施例2の各ユニット10、30のうち下部の係合部60、70を排して構成され、別体の係合部60a、70aの前係壁部61a、71aを後側壁12、32の外側下部で隣接接合して、係合部60a、70aと一体に構成している。
【0189】
これにより、荷室スペースSが各ユニット本体部10a、30aにより仕切られて区画形成された後方側の荷収納スペース部S3の専有容積を可及的拡張することができ、同荷収納スペース部S3を例えば第二居住スペース部のように利用することができる。
【0190】
[5.実施例4]
次に、実施例4に係るキャンピングカー改造キットA4について詳説する。
図13は本改造キットを搭載したバン型車を示す模式的側面図及び模式的平面図である。
【0191】
本改造キットA4は、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、実施例2に係る各ユニット10、30を後方側に延設して構成し、荷室スペースSについて、各ユニット10、30の自立位置を境に、前方側スペース部分を居住スペース部S1に仕切ると共に各ユニット10b、30b間の空間部分を居住スペース部S1を後方側へ開放させる通路スペース部S2に形成している。
【0192】
すなわち、本改造キットA4は、車両に搭載した場合に、荷室スペースSを居住スペース部S1と通路スペース部S2の2つの機能的スペース部へ区画形成するとともに、通路スペース部S2を後方側へ延長させる。
【0193】
各ユニット10、30は、下部の係合部60b、70bで各後輪ハウジングHL、HRに係合対応して同ハウジングHL、HR上で自立可能とした前側ユニット本体部10b、30bと、同ユニット本体部10b、30bの後方側伸延し、各後輪ハウジングHL、HRの後方位置で自立する後方伸延部10c、30cと、を一体にして構成している。
【0194】
後方伸延部10c、30cは、
図13(b)に示すように、それぞれ内外側壁14c、34c、13c、33cを前側ユニット本体部10b、30bの内外側壁14b、34b、13b、33bと略面一とすると共に、後側壁12c、32cをバックドアBDの傾斜内側面に沿うようにバックドアBDと対向させ、前側ユニット本体部10b、30bの後方側に一体連続して形成している。
【0195】
これにより、各ユニット10b、30bに各種荷収納棚部を増設したり水設備43の他にガスコンロ等の調理用加熱器を具備したりすることができ、居住スペース部S1や通路スペース部S2の機能性を向上させることができる。
【0196】
しかも、ユニット支持体20に垂設した遮蔽体23a、23cにより通路スペース部S2の前後側開口を閉塞した場合には、同通路スペース部S2を可及的広いプライベートスペース部に変容させることができる。
【0197】
以上のように、本発明によれば、バン型車に適応し、特別な技量を要求することなく誰でも簡単にDIY感覚で低コストで設置でき、車両の資産価値を不用意に低下させることなく車両自体に改変を加えずに予め車両に搭載された車両部品等の既設部材を有効活用して荷室スペースを可及的広い居住スペースに改造でき、設置後には車両走行時における住居設備の安定性を確保できる。
【符号の説明】
【0198】
A1 キャンピングカー改造キット
10 右側仕切ユニット
20 ユニット支持体
30 左側仕切ユニット
V バン型車
BC 車両ボディ天面
BD バックドア
BL、BR 車両ボディ左右内側壁
HL、HR 左右側後輪ハウジング
S1 居住スペース部
S2 通路スペース部
S3 荷収納スペース部