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特開2022-98246合成樹脂容器及び合成樹脂容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098246
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】合成樹脂容器及び合成樹脂容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20220624BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220624BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220624BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D1/02 100
B65D1/02 BRQ
C08L67/04
C08K5/103
C08K5/10
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211665
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】316000792
【氏名又は名称】Bioworks株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504011715
【氏名又は名称】株式会社ネイチャーラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】新田 和也
(72)【発明者】
【氏名】大宮 理成
【テーマコード(参考)】
3E033
3E084
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA13
3E033BA30
3E033CA02
3E033CA05
3E033DA03
3E033DB02
3E033DE06
3E033FA02
3E033FA03
3E033GA02
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB01
3E084LD22
4J002CF191
4J002EH046
4J002EH096
4J002FD026
4J002GG01
4J200AA04
4J200BA14
4J200DA17
4J200EA11
4J200EA21
4J200EA23
(57)【要約】
【課題】耐熱性を向上させる処理を行うことなく、高温の環境下においても充填された液体の漏洩を抑制することのできる合成樹脂容器を提供する。
【解決手段】筒状の口部14を有するボトル形状の容器本体10と、口部14の上端に位置する開口部10aを閉鎖するポンプ付きキャップ20と、を備えた合成樹脂容器1であって、ポンプ付きキャップ20は、開口部10aを閉鎖した状態で口部14の内周側に位置し、口部14を内周面側から支持する支持部22a2を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口部を有するボトル形状の容器本体と、前記口部の上端に位置する開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備えた合成樹脂容器であって、
前記閉鎖部材は、前記開口部を閉鎖した状態で前記口部の内周側に位置し、前記口部を内周面側から支持する支持部を有している
合成樹脂容器。
【請求項2】
前記閉鎖部材は、前記口部の外周側に係合する係合体と、前記係合体に係止され、前記容器本体内に収容された液体を吐出させるポンプ機構と、を有し、
前記支持部は、前記ポンプ機構を構成するポンプハウジングに形成されている
請求項1に記載の合成樹脂容器。
【請求項3】
前記閉鎖部材は、前記開口部を閉鎖する閉鎖部と、前記閉鎖部の外周側に設けられ、前記口部の外周側に係合する外周部を有し、
前記支持部は、前記閉鎖部の下面側における前記外周部の径方向内側に設けられている
請求項1に記載の合成樹脂容器。
【請求項4】
前記容器本体及び前記閉鎖部材は、生分解性樹脂からなる
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成樹脂容器。
【請求項5】
前記生分解性樹脂は、ポリ乳酸を含むポリ乳酸樹脂である
請求項4に記載の合成樹脂容器。
【請求項6】
前記ポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が10万以下のポリ乳酸、数平均分子量4000以上40000以下の分岐状ポリ乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステルからなる群より選択される可塑剤を含有し、
前記可塑剤は、1質量パーセント以上5質量パーセント以下の割合で含まれている
請求項5に記載の合成樹脂容器。
【請求項7】
前記ポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が5万以上30万以下のポリL-乳酸を、10質量パーセント以上100質量パーセント以下の割合で含有している
請求項5または6に記載の合成樹脂容器。
【請求項8】
前記閉鎖部材を形成する前記生分解性樹脂は、結晶化度が40パーセント以上である
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の合成樹脂容器。
【請求項9】
前記口部は、上下方向にわたって同一の結晶化度を有している
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の合成樹脂容器。
【請求項10】
前記口部は耐熱温度が45℃未満の樹脂からなり、前記閉鎖部材は耐熱温度が45℃以上の樹脂からなる
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の合成樹脂容器。
【請求項11】
前記口部は結晶化度が40パーセント未満の樹脂からなり、前記閉鎖部材は結晶化度が40%以上の樹脂からなる
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の合成樹脂容器。
【請求項12】
筒状の口部を有するボトル形状の容器本体と、前記口部の上端に位置する開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備えた合成樹脂容器の製造方法であって、
射出成型によってプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、
プリフォーム形成工程において形成された前記プリフォームを、ブロー成型によって前記容器本体とする容器本体形成工程と、
前記開口部を閉鎖した状態で前記口部の内周側に位置し、前記口部を内周面側から支持する支持部を有する閉鎖部材を形成する閉鎖部材形成工程と、を含む
合成樹脂容器の製造方法。
【請求項13】
前記プリフォームにおいて前記口部が形成されており、前記容器本体形成工程において、前記口部が金型によって加熱されない
請求項12に記載の合成樹脂容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容するための合成樹脂容器及び合成樹脂容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を収容するための従来の合成樹脂容器としては、特許文献1に開示されているように、射出成型等によって試験管の形状に形成されたプリフォームを、ブロー成型によってボトル形状に形成することによって容器本体を形成し、容器本体の口部の端部に位置する開口部をキャップによって閉鎖するようにしたものが知られている。
【0003】
特許文献1の合成樹脂容器は、口部が、周方向にわたって、キャップを構成するインナーリング、コンタクトリング及びアウターリングと接触することによって、容器本体内の密封状態が保持されるようになっている。
【0004】
特許文献1の合成樹脂容器は、高温(例えば、85℃)の液体を充填することを可能とする耐熱性を向上させるために、容器本体の口部の開口端部側の結晶化度を高くする処理を行うことによって、液体の熱の影響による口部の変形を抑制し、容器本体内の密封状態を保持している。
【0005】
一方、常温(例えば、25℃)の液体が充填される合成樹脂容器は、耐熱性を必要としないため、非結晶状態の合成樹脂材料の容器本体及びキャップを用いることが可能となり、高温の液体が充填される合成樹脂容器と比較して、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-74705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、常温の液体を収容するための合成樹脂容器は、輸送時または保管時に温度環境が高温(例えば、45℃)となると、容器本体の口部が熱の影響を受けて収縮して変形する可能性がある。この場合に、従来の合成樹脂容器では、口部の開口部を閉鎖しているキャップが緩み、充填されている液体が漏洩するおそれがある。
【0008】
本発明の目的とするところは、耐熱性を向上させる処理を行うことなく、高温の環境下においても充填された液体の漏洩を抑制することのできる合成樹脂容器及び合成樹脂容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の合成樹脂容器は、筒状の口部を有するボトル形状の容器本体と、前記口部の上端に位置する開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備えた合成樹脂容器であって、前記閉鎖部材は、前記開口部を閉鎖した状態で前記口部の内周側に位置し、前記口部を内周面側から支持する支持部を有している。
【0010】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記閉鎖部材が、前記口部の外周側に係合する係合体と、前記係合体に係止され、前記容器本体内に収容された液体を吐出させるポンプ機構と、を有し、前記支持部は、前記ポンプ機構を構成するポンプハウジングに形成されている。
【0011】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記閉鎖部材が、前記開口部を閉鎖する閉鎖部と、前記閉鎖部の外周側に設けられ、前記口部の外周側に係合する外周部を有し、前記支持部は、前記閉鎖部の下面側における前記外周部の径方向内側に設けられている。
【0012】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記容器本体及び前記閉鎖部材が、生分解性樹脂からなる。
【0013】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸を含むポリ乳酸樹脂である。
【0014】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記ポリ乳酸樹脂が、重量平均分子量が10万以下のポリ乳酸、数平均分子量4000以上40000以下の分岐状ポリ乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステルからなる群より選択される可塑剤を含有し、前記可塑剤は、1質量パーセント以上5質量パーセント以下の割合で含まれている。
【0015】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記ポリ乳酸樹脂が、重量平均分子量が5万以上30万以下のポリL-乳酸を、10質量パーセント以上100質量パーセント以下の割合で含有している。
【0016】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記閉鎖部材を形成する前記生分解性樹脂の結晶化度が40パーセント以上である。
【0017】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記口部が、上下方向にわたって同一の結晶化度を有している。
【0018】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記口部の耐熱温度が45℃未満の樹脂からなり、前記閉鎖部材の耐熱温度が45℃以上の樹脂からなる。
【0019】
また、本発明の合成樹脂容器は、前記口部が、結晶化度が40パーセント未満の樹脂からなり、前記閉鎖部材が、結晶化度が40%以上の樹脂からなる。
【0020】
また、本発明の合成樹脂容器の製造方法は、筒状の口部を有するボトル形状の容器本体と、前記口部の上端に位置する開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備えた合成樹脂容器の製造方法であって、射出成型によってプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、プリフォーム形成工程において形成されたプリフォームを、ブロー成型によって前記容器本体とする容器本体形成工程と、前記開口部を閉鎖した状態で前記口部の内周側に位置し、前記口部の内面を支持する支持部を有する閉鎖部材を、所定以上の結晶化度となるように形成する閉鎖部材形成工程と、を含む。
【0021】
また、本発明の合成樹脂容器の製造方法は、前記プリフォームにおいて前記口部が形成されており、前記容器本体形成工程において、前記口部が金型によって加熱されない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容器本体の口部が収縮して変形が生じる可能性のある高温の環境下においても、閉鎖部材の支持部によって口部が内周面側から支持され、口部の収縮による径方向内側への変形が規制され、閉鎖部材の緩みを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態を示す合成樹脂容器の側面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す合成樹脂容器の要部側面断面図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す合成樹脂容器の要部側面断面図である。
図4】本発明の第3実施形態を示す合成樹脂容器の要部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1及び図2は、本発明の第1実施形態を示すものである。図1は、合成樹脂容器の側面図であり、図2は、合成樹脂容器の要部側面断面図である。
【0025】
本実施形態の合成樹脂容器1は、シャンプー、リンス、ボディソープ等の所謂トイレタリー用品の液体を収容するためのものであり、収容された液体を一定量吐出させることが可能なポンプ機能を有している。
【0026】
この合成樹脂容器1は、図1に示すように、液体が収容される容器本体10と、容器本体10の上端部に設けられた開口部10aを閉鎖するための閉鎖部材としてのポンプ付きキャップ20と、を備えている。
【0027】
ここで、容器本体10及びポンプ付きキャップ20は、それぞれ、微生物によって分解され、最終的に水及び二酸化炭素等を生じる生分解性樹脂によって形成されていてもよい。より詳細に説明すると、容器本体10及びポンプ付きキャップ20は、それぞれ、生分解性樹脂として、ポリ乳酸(PLA)を主な成分として含むポリ乳酸樹脂からなっていてもよい。
【0028】
ポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が5万以上30万以下のポリL-乳酸を含むものである。ポリL-乳酸は、ポリ乳酸樹脂の全体に対して10質量パーセント以上100質量パーセント以下の割合で含まれている。
【0029】
また、ポリ乳酸樹脂には、容器本体10及びポンプ付きキャップ20を成型する加工を容易にするとともに、柔軟性を付加するための可塑剤が添加されている。可塑剤は、重量平均分子量が10万以下のポリ乳酸であってポリL-乳酸以外のポリ乳酸、数平均分子量4000以上40000以下の分岐状ポリ乳酸であってポリL-乳酸以外のポリ乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステルからなる群より選択されるものであり、ポリ乳酸樹脂の全体に対して1質量%以上5質量%以下の割合で添加されている。
【0030】
容器本体10は、内部が視認可能な透明なポリ乳酸樹脂によって形成される。容器本体10は、図1に示すように、下端部に設けられた底部11と、底部11から上方に延びる角筒状の胴部12と、胴部12の上端から連続して上方に延びる肩部13と、肩部13の上端から上方に延びる円筒状の口部14と、を有するボトル形状に形成されている。
【0031】
口部14は、上端に開口部10aが配置されており、ポンプ付きキャップ20が着脱可能となっている。口部14の外周面には、図2に示すように、ポンプ付きキャップ20の後述するキャップ本体が螺合するネジ山14aが形成されている。
【0032】
ここで、容器本体10は、射出成型によって上述のポリ乳酸樹脂からなる試験管の形状のプリフォームを形成し、プリフォームをブロー成型によってボトル形状に形成することにより製造される。
【0033】
プリフォームを構成するポリ乳酸樹脂は、分子が規則的に配列されて結晶化した結晶部と、結晶化していない非晶部と、が混在している。ここで、合成樹脂は、合成樹脂の全容積に対する結晶部の割合を、結晶化度として表すことができる。ポリ乳酸樹脂は、ガラス転移温度以上で融点未満の温度で加熱処理を行い、結晶化度を高くすることによって、耐熱性を向上させることが可能となるが、本実施形態においてプリフォームを成型する際には加熱処理を行わない。
【0034】
また、プリフォームは、容器本体10における口部14が予め形成されており、プリフォームの口部14以外の部分を金型に配置した状態でブロー成型が行われる。このため、プリフォームの口部14以外の部分については、ブロー成型時に加熱された金型によって加熱されて結晶化度が高くなることにより耐熱性が向上するが、口部14については、金型によって加熱されることはなく、耐熱性が向上することはない。そのため、口部14の耐熱温度は、例えば、45℃未満である。ここで、耐熱温度とは、熱による収縮等の変形が生じる前の上限の温度である。また、口部14の結晶化度は、例えば、40%未満である。容器本体10の口部14以外の部分は、結晶化度が40%以上であることが好ましい。また、口部14は、上下方向にわたって同一の結晶化度を有している。
【0035】
ポンプ付きキャップ20は、図1に示すように、容器本体10の口部14に係合する係合体としてのキャップ本体21と、キャップ本体21に係止され、容器本体10内に収容された液体を吐出させるためのポンプ機構22と、を備えている。
【0036】
キャップ本体21は、図2に示すように、中心軸を上下方向に向けた姿勢で口部14に係合する円筒状に形成されている。キャップ本体21は、上面にポンプ機構22が挿入されるポンプ挿入孔21aが形成され、内周面に口部14のネジ山14aに螺合する雌ネジ21bが形成されている。キャップ本体21は、ポンプ挿入孔21aの外周側に設けられ、容器本体10の口部14に螺合した状態で、ポンプ機構22の後述するポンプハウジングのフランジ部に当接する当接部21cを有している。
【0037】
ポンプ機構22は、図2に示すように、キャップ本体21のポンプ挿入孔21aに挿入されるポンプハウジング22aと、キャップ本体21に対してポンプハウジング22aを固定するための固定部材22bと、ポンプハウジング22aの上部側に接続され、液体を吐出させる際に使用者が押下操作を行う押下操作部22cと、ポンプハウジング22aの下部側に接続され、容器本体10に収容されている液体を吸い上げる吸上げチューブ22dと、を有している。
【0038】
ポンプ機構22は、押下操作部22cを下方に押し下げると、容器本体10に収容された一定量の液体を吸上げチューブ22dによってポンプハウジング22a内に吸い上げるとともに、ポンプハウジング22a内の液体を押下操作部22cに設けられた吐出口22c1から吐出させるようになっている。
【0039】
ポンプハウジング22aは、筒状の部材であり、上部側の外周面に、周方向にわたって外周側に張り出すフランジ部22a1が形成されている。フランジ部22a1は、ポンプハウジング22aを開口部10aから容器本体10内に挿入すると、下面が周方向にわたって口部14の上端部に対向するようになっている。フランジ部22a1と口部14の上端部との間には、リング状のシール部材23が配置され、ポンプハウジング22aの外周側と口部14の上端部との間の隙間が閉鎖される。
【0040】
また、ポンプハウジング22aには、開口部10aから容器本体10内に挿入された状態で口部14の内周側に位置し、口部14を内周面側から支持するための支持部22a2が形成されている。支持部22a2は、フランジ部22a1の下面の内周側において周方向にわたって下方に延出しており、ポンプハウジング22aが開口部10aから容器本体10内に挿入された状態で、口部14の内周面に周方向にわたって当接し、口部14を内周面側から支持する。支持部22a2は、フランジ部22a1の下面から例えば3mm以上下方に延出していることが好ましい。
【0041】
ここで、キャップ本体21及びポンプハウジング22aは、それぞれ、上述のポリ乳酸樹脂の射出成型によって形成される。また、キャップ本体21及びポンプハウジング22aは、加熱処理を施して結晶化度を高くすることにより耐熱性を向上させ、熱による収縮等の変形を抑制している。キャップ本体21及びポンプハウジング22aは、結晶化度が40%以上であることが好ましい。また、キャップ本体21及びポンプハウジング22aの耐熱温度が45℃以上であることが好ましい。
【0042】
以上のように構成された合成樹脂容器1は、液体を収容した容器本体10の口部14の上端部にシール部材23を配置するとともに、ポンプ付きキャップ20のキャップ本体21を口部14の外周部に螺合させる。これにより、合成樹脂容器1は、シール部材23によってポンプハウジング22aの外周側と口部14の内周側との間の隙間が閉鎖され、容器本体10の開口部10aがポンプ付きキャップ20によって閉鎖される。
【0043】
液体を収容した合成樹脂容器1は、例えば45℃以上の高温の環境下において輸送されたり、高温の環境となり得る浴室に設置されたりすることが考えられる。容器本体10の口部14は、高温の環境下において収縮して変形する場合があり、径方向の内側に変形すると、口部14に螺合しているキャップ本体21に緩みが生じる可能性がある。
【0044】
しかし、容器本体10の口部14は、ポンプ付きキャップ20のポンプハウジング22aに形成された支持部22a2によって周方向にわたって内周面側から支持されるため、収縮による径方向内側への変形が規制され、キャップ本体21の緩みが抑制されることになる。
【0045】
ここで、本実施形態の有する合成樹脂容器1の支持部22a2の有効性に関する試験について説明する。
【0046】
支持部22a2の有効性に関する試験では、まず、支持部22a2を有する合成樹脂容器1と、支持部22a2を有さない合成樹脂容器と、のそれぞれについて、容器本体に対して同一のトルクでポンプ付きキャップを螺合させることにより、容器本体に対してポンプ付きキャップを取り付ける。次に、ポンプ付きキャップが取り付けられた、支持部22a2を有する合成樹脂容器1と、支持部22a2を有さない合成樹脂容器と、のそれぞれを、4週間にわたって45℃の温度環境下に設置する。
【0047】
この試験では、支持部22a2を有さない合成樹脂容器のポンプ付きキャップを取り外すために必要なトルクが、ポンプ付きキャップの取付時に加えたトルクに対して約90%低下していたのに対して、支持部22a2を有する合成樹脂容器1のポンプ付きキャップ20を取り外すために必要なトルクが、ポンプ付きキャップの取付時に加えたトルクに対して約30%低下していることが示された。つまり、支持部22a2を有する合成樹脂容器1は、支持部22a2を有さない合成樹脂容器に対して、ポンプ付きキャップ20が緩みにくいことが明らかとなった。
【0048】
このように、本実施形態の合成樹脂容器1によれば、筒状の口部14を有するボトル形状の容器本体10と、口部14の上端に位置する開口部10aを閉鎖するポンプ付きキャップ20と、を備えた合成樹脂容器1であって、ポンプ付きキャップ20は、開口部10aを閉鎖した状態で口部14の内周側に位置し、口部14を内周面側から支持する支持部22a2を有している。
【0049】
また、本実施形態の合成樹脂容器1の製造方法によれば、筒状の口部14を有するボトル形状の容器本体10と、口部14の上端に位置する開口部10aを閉鎖するポンプ付きキャップ20と、を備えた合成樹脂容器1の製造方法であって、射出成型によってプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、プリフォーム形成工程において形成されたプリフォームを、ブロー成型によって容器本体10とする容器本体形成工程と、開口部10aを閉鎖した状態で口部14の内周側に位置し、口部14を内周面側から支持する支持部22a2を有するポンプ付きキャップ20を形成する閉鎖部材形成工程と、を含む。
【0050】
これにより、容器本体10の口部14が収縮して変形が生じる可能性のある高温の環境下においても、ポンプ付きキャップ20の支持部22a2によって口部14が内周面側から支持され、口部14の収縮による径方向内側への変形が規制され、キャップ本体21の緩みを抑制することが可能となる。また、口部14の結晶化度を高くする処理を行うことなく、口部14の収縮による径方向内側への変形を規制することができるので、容器本体10の製造工程の低減を図ることが可能となる。
【0051】
また、ポンプ付きキャップ20は、口部14の外周側に係合するキャップ本体21と、キャップ本体21に係止され、容器本体10内に収容された液体を吐出させるポンプ機構22と、を有し、支持部22a2は、ポンプ機構22を構成するポンプハウジング22aに形成されている。
【0052】
これにより、開口部10aから容器本体10内に挿入されるポンプハウジング22aに支持部22a2を形成することで、キャップ本体21に支持部22a2を形成する必要がなく、キャップ本体21の構造を簡素化することが可能となる。
【0053】
また、容器本体10及びポンプ付きキャップ20は、生分解性樹脂からなる。
【0054】
これにより、微生物によって分解され、最終的に二酸化炭素及び水等を生じることになるため、廃棄物を処理するために必要な負担を軽減することが可能となる。
【0055】
また、生分解性樹脂は、ポリ乳酸を含むポリ乳酸樹脂である。
【0056】
これにより、トウモロコシやサトウキビ等の植物を原料として容器本体10及びポンプ付きキャップ20を形成することができるので、大気中の二酸化炭素の増加を抑制することが可能となる。
【0057】
また、ポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が10万以下のポリ乳酸、数平均分子量4000以上40000以下の分岐状ポリ乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステルからなる群より選択される可塑剤を含有し、可塑剤は、1質量パーセント以上5質量パーセント以下の割合で含まれている。
【0058】
これにより、容器本体10及びポンプ付きキャップ20の形成加工が容易となり、部材の柔軟性を付加することによって品質の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、前記ポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が5万以上30万以下のポリL-乳酸を、10質量パーセント以上100質量パーセント以下の割合で含有している。
【0060】
これにより、容器本体10及びポンプ付きキャップ20の強度等の品質を保持することが可能となる。
【0061】
また、前記ポンプ付きキャップ20を形成する前記生分解性樹脂は、結晶化度が40パーセント以上である。
【0062】
これにより、ポンプ付きキャップ20の耐熱性を向上させ、支持部22a2の熱による変形を確実に抑制することが可能となり、容器本体10に対するポンプ付きキャップ20の緩みをより確実に抑制することが可能となる。
【0063】
また、口部14は、上下方向にわたって同一の結晶化度を有している。
【0064】
これにより、容器本体10の製造工程が複雑化することを防止することが可能となるので、合成樹脂容器1の生コストの低減を図ることが可能となる。
【0065】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態を示すものであり、合成樹脂容器の要部側面断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して示す。
【0066】
本実施形態の合成樹脂容器1は、容器本体10の開口部10aを閉鎖する閉鎖部材がポンプ機構22を有しないキャップ30である。
【0067】
キャップ30は、開口部10aを閉鎖する閉鎖部31と、閉鎖部31の外周側に設けられた外周部32と、外周部32の径方向内側に設けられた支持部33と、を有している。
【0068】
閉鎖部31は、シール部材23を介在させて容器本体10の口部14の上端に配置することにより開口部10aを閉鎖する。
【0069】
外周部32は、内周面に口部14のネジ山14aに螺合する雌ネジ32aが形成されている。
【0070】
支持部33は、閉鎖部31の下面の径方向の中央部側において下方に突出するように形成されている。支持部33は、閉鎖部31が開口部10aを閉鎖した状態で、口部14の内周側に位置し、口部14の内周面に周方向にわたって当接することにより、口部14を内周面側から支持する。
【0071】
このように、本実施形態の合成樹脂容器1によれば、前記第1実施形態と同様に、容器本体10の口部14が収縮して変形が生じる可能性のある高温の環境下においても、キャップ30の支持部33によって口部14が内周面側から支持され、口部14の収縮による径方向内側への変形が規制され、キャップ30の緩みを抑制することが可能となる。
【0072】
また、キャップ30は、開口部10aを閉鎖する閉鎖部31と、閉鎖部31の外周側に設けられ、口部14の外周側に係合する外周部32を有し、支持部33は、閉鎖部31の下面側における外周部32の径方向内側に設けられている。
【0073】
これにより、閉鎖部31、外周部32及び支持部33を含むキャップ30を一部品として形成することが可能となり、組付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0074】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態を示すものであり、合成樹脂容器の要部側面断面図である。尚、前記第1及び第2実施形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して示す。
【0075】
本実施形態の合成樹脂容器1は、容器本体10の開口部10aを閉鎖する閉鎖部材が、閉鎖部31、外周部32及び支持部33を有するキャップ30のであり、閉鎖部31の径方向の中央部側にポンプ機構を取り付けるためのポンプ用開口部31aが形成されている。
【0076】
ポンプ用開口部31aには、容器本体10内に収容された液体を吐出するためのポンプ機構が取り付けられるようになっている。
【0077】
本実施形態の合成樹脂容器1は、第1実施形態のように、支持部22a2がポンプ機構22側に設けられておらず、支持部33がキャップ30側に設けられている。
【0078】
このように、本実施形態の合成樹脂容器1によれば、第1及び第2実施形態と同様に、容器本体10の口部14が収縮して変形が生じる可能性のある高温の環境下においても、キャップ30の支持部33によって口部14が内周面側から支持され、口部14の収縮による径方向内側への変形が規制され、キャップ30の緩みを抑制することが可能となる。
【0079】
尚、前記第1乃至第3実施形態では、容器本体に収容される液体としてシャンプー、リンス、ボディソープ等の所謂トイレタリー用品を示したが、これに限られるものではない。閉鎖部材に支持部を有するものであれば、収容される液体として飲料を収容する合成樹脂容器に対しても適用することが可能である。
【0080】
また、前記第1乃至第3実施形態では、支持部22a2,33を、容器本体10の口部14の内周面の周方向にわたって当接するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。口部14の収縮による径方向内側への変形が規制することができれば、支持部を、周方向に間隔をおいて配置した複数の支持片から形成してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 合成樹脂容器
10 容器本体
10a 開口部
14 口部
20 ポンプ付きキャップ
21 キャップ本体
22 ポンプ機構
22a ポンプハウジング
22a2 支持部
30 キャップ
33 支持部
図1
図2
図3
図4