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特開2022-98253アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098253
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220624BHJP
   E04B 1/22 20060101ALI20220624BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
E04B1/58 511A
E04B1/22
E04B1/21 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211681
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】朱 盈
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA45
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC02
2E125BA02
2E125BA22
2E125BB05
2E125BB08
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF04
2E125CA04
(57)【要約】
【課題】アンボンドPCaPC構造体において、圧縮破壊を防止することのできる構造を提供することを目的とする。
【解決手段】アンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造は、フーチングの上に立設され、柱脚部に切欠部が設けられたアンボンドPCaPC柱と、アンボンドPCaPC柱の柱脚部に設けられ、前記切欠部と前記フーチングとに接する鋼板とを含み、鋼板によりアンボンドPCaPC柱とフーチングとが接合された構造を有する。鋼板は、L字形の鋼板であってもよく、L字形の鋼板にリブが設けられていてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フーチングの上に立設され、柱脚部に切欠部が設けられたアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱と、
前記アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚部に設けられ、前記切欠部と前記フーチングとに接する鋼板と、
を含み、
前記鋼板により、前記アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱と前記フーチングとが接合されていることを特徴とするアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項2】
前記鋼板がL字形の鋼板である、請求項1に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項3】
前記L字形の鋼板にリブが設けられている、請求項2に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項4】
前記L字形の鋼板は、第1の締結具によって前記フーチングと接合され、第2の締結具によって前記アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱と接合されている、請求項2又は3に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項5】
前記切欠部は、前記第2の締結具が前記アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱面から突出しない深さを有する、請求項4に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項6】
前記第1の締結具及び前記第2の締結具がボルトである、請求項4に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項7】
前記アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱は、柱脚部に配筋される第1の組立鉄筋と、柱脚部以外に配筋される第2の組立鉄筋とを含み、前記第1の組立鉄筋は前記第2の組立鉄筋より内側に配筋されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【請求項8】
前記第1の組立鉄筋と前記第2の組立鉄筋とは不連続に配筋され、かつ前記柱脚部の上方で前記第1の組立鉄筋と前記第2の組立鉄筋とが重なる領域を含む、請求項7に記載のアンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート柱の柱脚部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱脚部に軸方向ダンパーを設けることで、充填鋼管コンクリート柱を杭に対して離間可能に設けた耐震建物の構造が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された耐震建物の構造によれば、杭に過大な引抜力が作用することを防止することができ、かつ軸方向ダンパーにより地震エネルギーを有効に吸収することができるとされている。
【0003】
一方、地震時の損傷を出来る限り低減し、地震後の高い機能維持性能を確保できる構造として、アンボンドプレキャストプレストレスコンクリート(以下、「アンボンドPCaPC」ともいう。)構造が知られている。アンボンドPCaPC構造は主にPCa化した梁部材に適用されているが、上記の利点を生かすため柱部材への適用も期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-073469号公報(特許第4120740号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンボンドPCaPC構造は引張鉄筋がないため、鉄筋コンクリート構造に比べて、柱脚部においてかぶりコンクリートが圧縮されることで損傷が起こるおそれがある(以下、このような損傷を「圧壊」又は「圧縮破壊」という)。地震等によってアンボンドPCaPC柱に圧縮破壊が生じると耐震性が低下する原因となるため、強度を維持するためには圧縮破壊した部分の補修が必要となる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明の一実施形態は、アンボンドPCaPC構造体において、圧縮破壊を抑制することのできる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造は、フーチングの上に立設され、柱脚部に切欠部が設けられたアンボンドPCaPC柱と、アンボンドPCaPC柱の柱脚部に設けられ、切欠部とフーチングとに接する鋼板とを含み、鋼板によりアンボンドPCaPC柱とフーチングとが接合された構造を有する。
【0008】
本発明の一実施形態において、鋼板は、L字形の鋼板であってもよく、L字形の鋼板にリブが設けられていてもよい。L字形の鋼板は、アンボンドPCaPC柱とボルトで接合され、フーチングに埋め込まれたボルトによってフーチングと接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、アンボンドPCaPC柱の柱脚部に切欠部を設け、切欠部とフーチングに鋼板を当接させて、アンボンドPCaPC柱とフーチングと接合することで、耐震性を高め、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防ぐことができる。このようなアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造を有する建造物は、耐震性を高めることができ、地震等により大きな振動エネルギーが作用した場合でも、柱体の圧縮破壊を防ぎ、補修作業を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造を示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部における、主配筋、緊張材、第1の鋼板及び第2の鋼板の配置を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造を示し、図3に示すA1-A2間を切断し上面から見たときの平面模式構造を示す図である。
図5】アンボンドPCaPC柱が地震等により回転変位したときに、柱脚部にかかる引張力と圧縮力を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部の構造を示す正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱脚部における、主配筋、緊張材、第1の鋼板及び第2の鋼板の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱102の柱脚部の構造を示す斜視図である。アンボンドPCaPC柱102はフーチング104の上に立設される。フーチング104は鉄筋コンクリート製であり、フーチング104の側面には鉄筋コンクリート製の基礎梁106が接合されている。図1は、基礎梁106がフーチング104の四つの面に接合された態様を示すが、基礎梁106の構成は任意であり図示される構造に限定されるものではない。
【0013】
アンボンドPCaPC柱102は柱脚部に切欠部108を有する。切欠部108はプレキャスト鉄筋コンクリート部材の表面を切り欠いた(又は除去された)領域である。別言すれば、切欠部108は、アンボンドPCaPC柱102のかぶりコンクリートの表層部分が除去された領域と表現することもできる。切欠部108は、アンボンドPCaPC柱102の柱脚部において、全周に亘って設けられていることが好ましい。後述されるように、柱脚部に切欠部108が設けられることで、かぶりコンクリートの破損を防止することができる。
【0014】
切欠部108は、アンボンドPCaPC柱の柱端(下端)から材軸方向に所定の長さで設けられる。例えば、切欠部108は、アンボンドPCaPC柱102の柱端(下端)から材軸方向に200mm~1000mmの長さで設けられる。例えば、切欠部108は、柱端(下端)から500mmの長さで設けられる。また、切欠部108の深さは所定の深さで設けられる。切欠部108は、例えば、アンボンドPCaPC柱102の表面から20mm~1000mmの深さを有するように設けられる。例えば、切欠部108は、50mmの深さを有するように設けられる。
【0015】
切欠部108は、プレキャスト鉄筋コンクリート部材の製造時に形成することができる。すなわち、プレキャスト鉄筋コンクリート部材を形成する型枠の中に切欠部の形状を設けておくことで、その後はコンクリートを打設するだけで切欠部108を形成することができる。プレキャスト鉄筋コンクリート部材は工場で製造されるので、切欠部108を高い精度で形成することができ、建設現場の作業に負担をかけないようにすることができる。
【0016】
アンボンドPCaPC柱102は、鋼板110によりフーチング104と接合される。鋼板110は、アンボンドPCaPC柱102とフーチング104に当接するように設けられ、ボルト等の締結具で取り付けられる。詳細には、鋼板110は、フーチング104の上面及び切欠部108のコンクリート面に当接する平面を有し、フーチング104に対しては第1の締結具112によって、アンボンドPCaPC柱102に対しては第2の締結具114によって取り付けられる。第1の締結具112は鋼板110をフーチング104に接合するだけでなく、後述されるように引張力に抵抗できる耐力を有することが好ましい。一方、第2の締結具114は鋼板110とアンボンドPCaPC柱102とを接合できる耐力を有していればよい。第1の締結具112としてはボルトが用いられる。このボルトは、ネジが切られた先端部分が露出するようにフーチング104に埋め込まれる。また、第2の締結具114としてはボルト及びインサート、アンカーボルト等が用いられる。
【0017】
なお、図示されないが、鋼板110は接着剤によりフーチング104及びアンボンドPCaPC柱102と接合されていてもよい。
【0018】
アンボンドPCaPC柱102の断面形状が角形である場合、鋼板110は各面に対応して設けられることが好ましい。別言すれば、アンボンドPCaPC柱102は、切欠部108が鋼板110で囲まれるように設けられることが好ましい。このように切欠部108の各面に鋼板110が設けられることで、アンボンドPCaPC柱102をフーチング104に安定した状態で接合することができる。切欠部108は、アンボンドPCaPC柱102の各面に連続するように、すなわち全周に亘って設けられていてもよい。また、図示されないが、鋼板110は、切欠部108の隣接する2つ以上の面に亘って連続する形状を有していてもよい。
【0019】
鋼板110は、フーチング104及び切欠部108のコンクリート面に当接し、締結具により固定できる形状を有していればさまざまな形状を有することができる。図1は、鋼板110の一例として、断面形状がL字形である場合を示す。L字形の鋼板110は、底面がフーチング104と接し、直立する背面が切欠部108のコンクリート面と接するように設置される。L字形の鋼板110は、L字に曲げられた鋼板であってもよいし、溶接によりL字形に接合された鋼板であってもよい。
【0020】
以下の説明においては、鋼板110がL字形であるものを中心に説明するが、鋼板110は、断面形状がコの字形やロの字形であっても同様に適用することができる。
【0021】
図1に示すように、L字形の鋼板110は、切欠部108の各面を覆うように幅広の鋼板110が一つずつ設けられていてもよいし、各面に複数のL字形の鋼板110が並べて配置されていてもよい。
【0022】
図2は、アンボンドPCaPC柱102の柱脚部の正面図を示す。図2は、アンボンドPCaPC柱102が、L字形の鋼板110によりフーチング104と接合された構造を示す。L字形の鋼板110は直立する背面が切欠部108のコンクリート面に接し、底面がフーチング104の上面と接するように設置される。L字形の鋼板110は、第1の締結具112としてのボルト113によりフーチング104に固定される。また、L字形の鋼板110は、第2の締結具114としてのボルト115によりアンボンドPCaPC柱102に固定される。図2に示されるように、一つのL字形の鋼板110に対してボルト113が複数箇所に設けられ、ボルト115が複数個用いられる。
【0023】
L字形の鋼板110をアンボンドPCaPC柱102に固定するボルト115は、頭部がアンボンドPCaPC柱の柱面から突出しないように取り付けられることが好ましい。別言すれば、切欠部108の深さdは、ボルト115の頭部がアンボンドPCaPC柱102の柱面から突出しない大きさを有していることが好ましい。深さdは、アンボンドPCaPC柱102の柱径、ボルト115の軸径にもよるが、例えば30mm~50mmの大きさを有する。このような構成により、アンボンドPCaPC柱102の意匠性を高めることができる。例えば、アンボンドPCaPC柱102の表面に化粧板を設ける場合でも、ボルト115の頭部が突出しないことにより柱の外観に影響を与えないようにすることができる。
【0024】
L字形の鋼板110は、切欠部108に当接して設けられるとき、上端部分が切欠部108の段差部分と接しないように配置されることが好ましい。別言すれば、L字形の鋼板110の上端部と切欠部108により形成される段差部分との間に間隔hの隙間が設けられることが好ましい。間隔hの大きさは任意であるが、例えば5mm~20mmの大きさで設けられる。間隔hの隙間が設けられることにより、アンボンドPCaPC柱102が回転変位し、仮にL字形の鋼板110がずれた場合でも、L字形の鋼板110の上端部が段差部分に衝突することを防止することができる。それによりアンボンドPCaPC柱102のかぶりコンクリートのひび割れや破損を防止することができる。
【0025】
L字形の鋼板110は、切欠部108のコンクリート面の全面を覆うように設けられてもよい。それにより、アンボンドPCaPC柱102に切欠部108が設けられたことによる強度の低下を補うことができる。また、切欠部108におけるかぶりコンクリートのひび割れや破損を防止することができる。
【0026】
図3は、アンボンドPCaPC柱102の内部構造と、L字形の鋼板110の取り付け構造を示す。また、図4は、図3においてA1-A2間を切断し上面から見たときの平面模式構造を示す。以下の説明では、図3及び図4を適宜参照するものとする。なお、図3において、フーチング104の内部構造は主要な部分のみを示し、鉄筋の配筋については省略されている。
【0027】
アンボンドPCaPC柱102は、組立鉄筋132(第1の組立鉄筋132a、第2の組立鉄筋132b)、せん断補強筋134を含むプレキャスト鉄筋コンクリート構造を含む。アンボンドPCaPC柱102は、柱脚部に切欠部108有するため、通常通りに配筋すると切欠部108においてコンクリートかぶり厚が減少する。そこで、アンボンドPCaPC柱102は、切欠部108の領域において、材軸方向に第1の組立鉄筋132aを配筋し、切欠部108より上の領域において、材軸方向に第2の組立鉄筋132bが配筋される。
【0028】
第1の組立鉄筋132aと第2の組立鉄筋132bとは不連続であり、第1の組立鉄筋132aに対して第2の組立鉄筋132bは外側に配筋される。第1の組立鉄筋132aと第2の組立鉄筋132bとは、切欠部108の境界部分で重なるように配筋される。第1の組立鉄筋132a及び第2の組立鉄筋132bは、アンボンドPCaPC柱102の断面形状に合わせて適宜配筋され、第1の組立鉄筋132a及び第2の組立鉄筋132bに対して補強筋が適宜配筋される。
【0029】
アンボンドPCaPC柱102は、切欠部108が設けられる領域にインサート138が設けられる。インサート138は、第2の締結具114(ボルト115)が取り付けられる位置に対応してプレキャスト鉄筋コンクリート構造体に埋め込まれる。L字形の鋼板110は、切欠部108のコンクリート面及びフーチング104の上面に当接するように設置される。
【0030】
第1の締結具112(ボルト113)は、L字形の鋼板110を締結する部分が露出し、それ以外の部分がフーチング104に埋設されるように設けられる。第1の締結具112(ボルト113)は、フーチング104に埋め込まれた定着板118によって抜け出ないように強固に固定される。このような構造により、第1の締結具112(ボルト113)に、アンボンドPCaPC柱102が回転変位するときに生じる引張力に抵抗できる耐力を持たせることができる。
【0031】
また、L字形の鋼板110は、第2の締結具114として用いられるボルト115とインサート138とにより、アンボンドPCaPC柱102にボルト接合される。なお、図示されないが、インサート138が省略され、第2の締結具114としてアンボンドPCaPC柱102に植設されたボルト(例えば、芯棒打ち込み式アンカーボルト)が用いられてもよい。
【0032】
また、図7に示すように、L字形鋼板110とフーチング104とは、第1の締結具112としてL字形の鋼板110に溶接した鉄筋115を用い、鉄筋115をフーチング104に定着させることで接合されていてもよい。第1の締結具112としてボルト113を用いる場合と同様に、鋼板110に溶接された鉄筋115を用いることによっても、アンボンドPCaPC柱102が回転変位するときに生じる引張力に抵抗できる耐力を持たせることができる。
【0033】
アンボンドPCaPC柱102は、フーチング104との間にグラウト116が設けられる。また、アンボンドPCaPC柱102は、PC鋼棒128が挿通される挿通孔136を有する。挿通孔136は、アンボンドPCaPC柱102の材軸方向を貫通するように設けられる。挿通孔136にはPC鋼棒128bが挿通され、フーチング104から延びるPC鋼棒128aと継手130により連結される。アンボンドPCaPC柱102はPC鋼棒128を用いて圧縮応力が印加される。
【0034】
PC鋼棒128aはフーチング104側に設けられる。PC鋼棒128aは、アンボンドPCaPC柱102側のPC鋼棒128bと接続するために、はかま筋120を交差して、上側部分がフーチング104から突き出るように設けられる。フーチング104には定着板124が埋設される。PC鋼棒128aは下側の端部が定着板124に挿通され、ナット126により定着される。定着板124の上側部分にはグリッド筋(定着部補強筋)122が設けられていることが好ましい。グリッド筋122を設けることでフーチング104の強度を高め、PC鋼棒128aに引っ張り応力が作用したときの引張破壊等を防止することができる。
【0035】
フーチング104の上に立設されたアンボンドPCaPC柱102は、アンボンド状態に設けられたPC鋼棒128により圧縮応力が加えられているため、通常の鉄筋コンクリートよりも強度が高く、ひび割れが生じにくい。PC鋼棒128には復元力があるため、アンボンドPCaPC柱102に一時的に過大な荷重が作用しても、その荷重が除かれると復元する。
【0036】
図5(A)に示すように、アンボンドPCaPC柱999は、地震の横揺れにより回転変位すると柱脚部の一方に引張力が作用し他方の側に圧縮力が作用する。図5(A)に模式的に示すように、従来のアンボンドPCaPC柱999は、回転変位により圧縮力が作用する側のかぶりコンクリートが圧縮破壊されやすいという問題を有する。
【0037】
これに対し、本実施形態に係るアンボンドPCaPC柱102は、切欠部108が設けられることにより柱脚部の柱径が実質的に細くなり、柱脚部の断面積が縮小されている。このような構造により、アンボンドPCaPC柱102の回転剛性は下がるが、地震などの水平力がもたらす柱脚モーメントが低減し、すなわちアンボンドPCaPC柱102の外周部コンクリートに生じる圧縮力が、図5(A)に示す構造と比べて減少するので、かぶりコンクリートの圧縮破壊が抑制される。柱脚部の断面積が減少することによりアンボンドPCaPC柱102の回転剛性は下がるが、L字形の鋼板110とボルト113が塑性変形することにより回転変位をもたらすエネルギーを吸収し、アンボンドPCaPC柱102の損傷を少なくすることができる。
【0038】
また、切欠部108は、アンボンドPCaPC柱102の全周に亘って設けられることで、あらゆる方向から作用する回転変位を与える力に対して柱端部の圧縮破壊を防ぐことができる。さらにL字形の鋼板110が切欠部108を覆うように設けられることで、かぶりコンクリートが保護されており、圧縮破壊を抑制することができる。
【0039】
本実施形態に係るアンボンドPCaPC柱102は、柱脚部がL字形の鋼板110がボルト113で接合されていることで長期的な信頼性を高めることができる。仮に、PC鋼棒128が錆びて破断した場合でも、L字形の鋼板110が第1の締結具112としてのボルト113で接合されることで、長期荷重分の引張力を負担し、安全性を確保することができる。
【0040】
なお、L字形の鋼板110は、図2に示すような構造に限定されない。例えば、図6に示すように、L字形の鋼板110にリブ140が設けられていてもよい。このような構造を有することで、L字形の鋼板110の剛性を高めることができる。それにより、アンボンドPCaPC柱102に回転変位を与える力が作用した場合でも、回転変位に対する耐性を高めることができる。
【0041】
このように本実施形態に係るアンボンドPCaPC柱102の柱脚部の構造は、アンボンドPCaPC柱102に回転変位を与えるエネルギーを減衰させることができ、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防ぐことができる。本実施形態に係るアンボンドPCaPC柱102の柱脚部の構造を有する建造物は、耐震性を高めることができ、地震等により大きな振動エネルギーが作用した場合でも、柱体の圧縮破壊を防ぎ、補修作業を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0042】
102・・・アンボンドPCaPC柱、104・・・フーチング、106・・・基礎梁、108・・・切欠部、110・・・鋼板、112・・・第1の締結具、114・・・第2の締結具、115・・・鉄筋、116・・・グラウト、118・・・定着板、120・・・はかま筋、122・・・グリッド筋、124・・・定着板、126・・・ナット、128・・・PC鋼棒、130・・・継手、132・・・組立鉄筋、134・・・せん断補強筋、136・・・挿通孔、138・・・インサート、140・・・リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7