(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098287
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20220624BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20220624BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220624BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20220624BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/64
F25B1/00 361D
F25B1/00 371N
F24F140:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211741
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】野島 利哉
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA49
3L260CB61
3L260CB78
3L260EA07
3L260FB04
3L260FC32
(57)【要約】
【課題】入力電流を検出するカレントトランスを用いないで電流レリース処理を行う。
【解決手段】室外機40は位相制御部21が出力するモーター9aのU相電圧値と、U相電流検出部8が検出したU相電流値と、U相電圧とU相電流との位相差とに基づいてモーター9aの消費電力であるモーター消費電力値を算出し、モーター消費電力値を含む一次側消費電力値が予め定めた電力閾値を超えた時にモーター9aの回転数を低減させる電力制限部30を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続されたコンバータ部と、前記コンバータ部から出力される直流電源で動作するインバータ部と、前記インバータ部を用いて駆動される圧縮機のモーターとを備えた室外機を含む空気調和機であって、
前記室外機は、前記インバータを介して前記モーターの回転数を制御する室外機制御部を備え、
前記室外機制御部は、
前記モーターの電圧と電流とに基づいて前記モーターの消費電力であるモーター消費電力値を算出し、前記コンバータ部が消費する一次側の消費電力の値であり前記モーター消費電力値を含む一次側消費電力値が予め定めた電力閾値を超えた時に前記モーターの回転数を低減させる電力制限手段を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記電力制限手段は、前記室外機制御部で消費する消費電力である制御部消費電力値を予め記憶する固定電力値記憶部を備え、
前記モーター消費電力値と前記制御部消費電力値との合算値を前記一次側消費電力値とすることを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、室外機の入力電流が過電流とならないように、室外機に内蔵された圧縮機の回転数を制限する電流制限処理(以下、電流レリース処理と呼称する)を行う場合の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機は、入力電流があらかじめ定めた閾値を超えて過電流と判断した時、圧縮機の回転数を一時的に低減させて入力電流を閾値以下にする電流レリース処理を実行している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この空気調和機は交流電源が接続されるAC入力端と、電源回路に備えられた整流器の入力側の間の一次側の回路にカレントトランス等の電流検出器を備えており、ここで検出されるAC入力電流値が予め定めた過電流の閾値を超えた場合に圧縮機の回転数を一時的に低減させている。
【0004】
しかしながら、一般的に業務用の空気調和機の一次側は50アンペア以上のAC電流が流れ、これに対応したカレントトランスは非常に高価であるためコストアップを招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-199795号公報(段落番号0029~0032)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上述べた問題点を解決し、入力電流を検出するカレントトランスを用いないで電流レリース処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明に記載の発明は、
交流電源に接続されたコンバータ部と、前記コンバータ部から出力される直流電源で動作するインバータ部と、前記インバータ部を用いて駆動される圧縮機のモーターとを備えた室外機を含む空気調和機であって、
前記室外機は、前記インバータを介して前記モーターの回転数を制御する室外機制御部を備え、
前記室外機制御部は、
前記モーターの電圧と電流とに基づいて前記モーターの消費電力であるモーター消費電力値を算出し、前記コンバータ部が消費する一次側の消費電力の値であり前記モーター消費電力値を含む一次側消費電力値が予め定めた電力閾値を超えた時に前記モーターの回転数を低減させる電力制限手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、圧縮機のモーターの消費電力を用いて電流レリース処理を行うため、入力電流を検出するカレントトランスを用いないで電流レリース処理を行うことができ、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。
【
図2】モーターの駆動パラメータと三相交流電源の線間電流及び線間電圧の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明と直接関係がない冷媒回路等の図示と説明を省略する。
【実施例0011】
図1は本発明による空気調和機1の実施例を示すブロック図である。
空気調和機1は室内機50と室外機40を備えている。なお、この空気調和機1は、三相交流電源で動作し、定格電圧(線間電圧の実効値)が400ボルトであり、定格電圧範囲における上限電圧が440ボルト、また、下限電圧が360ボルトである。なお、本実施例では三相交流電源におけるある相の線間電圧をAC線間電圧、また、三相交流電源におけるある相の線間電流をAC線間電流と呼称する。
【0012】
室外機40は、三相交流電源2が接続され内部に平滑コンデンサ3aを備えたコンバータ部3と、コンバータ部3から出力される直流電源の電圧である、平滑コンデンサ3aの両端電圧を検出して直流電圧値として出力する直流電圧検出部5と、直流電圧から制御用の低電圧を生成する制御電源部6と、直流電圧が正極入力端と負極入力端に印加されるインバータ部7と、インバータ部7の出力端の接続されるU相ラインとV相ラインとW相ラインに接続された圧縮機9のモーター9aと、ファンモーター10とファンモーター11と、室外機制御部20を備えている。
なお、モーター9aは埋込磁石同期モーター(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。
【0013】
また、室外機40は、インバータ部7の出力端Uとモーター9aの間のU相ラインに直列に接続され、検出した瞬時のU相電流値を出力するU相電流検出部8と、コンバータ部3の正極出力端とインバータ部7の正極入力端との間に直列に接続され、インバータ部7へ供給される直流電圧を切断/接続するスイッチ4を備えている。
【0014】
そして、室外機制御部20は、ファンモーター10とファンモーター11を駆動するファンモーター駆動部22と、下限電圧検出部23と、位相制御部21と、電力制限部(電力制限手段)30と、これらを制御するマイコン24を備えている。なお、室外機制御部20はモーター9aの相電流とモーター9aの相電圧の位相差によって回転を制御する力率制御(電圧・電流の位相差制御)によりインバータ部7を介してモーター9aの回転を制御している。
【0015】
ファンモーター駆動部22は、コンバータ部3が出力する直流電圧が入力されており、この直流電圧を用いてファンモーター10とファンモーター11を駆動する。ファンモーター駆動部22は、マイコン24から出力される回転指示信号が入力されており、この回転指示信号の指示に従ってファンモーター10とファンモーター11を駆動する。
【0016】
また、下限電圧検出部23は、直流電圧検出部5から出力される直流電圧値が入力され、予め定めた下限電圧閾値よりもこの直流電圧値が小さくなった場合にマイコン24へ運転停止指示信号を出力する。なお、下限電圧閾値はAC入力電圧の実効値である定格電圧範囲の下限値である360ボルトと対応する直流電圧値であり、直流電圧値がこれより小さくなった時、停止指示信号を出力する。この停止指示信号が入力されたマイコン24は、室外機40の運転を停止し、スイッチ4を開にする。
【0017】
なお、下限電圧閾値は、定格電圧範囲の下限値である360ボルトにおけるモーター9aが最大消費電力となった時の直流電圧、つまり、モーター9aが最大負荷となった時の電圧降下も考慮した値である。
【0018】
一方マイコン24は、モーター9aの回転数を指示する回転数指令値を位相制御部21へ出力する。なおマイコン24は、モーター9aの回転を開始させる前に、スイッチ信号によりスイッチ4を閉にしてインバータ部7へ直流電圧を印加する。そしてマイコン24は、室外機40の運転を停止した後、スイッチ信号によりスイッチ4を開にしてインバータ部7へ供給される直流電圧を切断する。なお、マイコン24は室内機50と通信接続されている。
【0019】
一方、電力制限部30は内部に位相差抽出部31を備えている。位相差抽出部31は、位相制御部21が出力するU相電圧値とモーター9aのU相電流値とからU相電圧とU相電流の位相差を求め、この位相差を位相差信号として位相制御部21へ出力する。
位相制御部21は、指示された回転数において、この位相差が所定の位相差となるように各相の相電圧を決定し、この相電圧と対応したインバータ制御信号を生成してインバータ部7へ出力する。
【0020】
電力制限部30は、位相差抽出部31と、電圧実効値算出部32と、電流実効値算出部33と、一次側電力算出部34と、固定電力値記憶部35と、レリース判定部36を備えている。
【0021】
位相差抽出部31は前述したように、入力されたU相電圧値とU相電流値とからU相電圧とU相電流の位相差を求め、この位相差を位相差信号として位相制御部21と一次側電力算出部34へ出力する。
電圧実効値算出部32は、入力されたU相電圧値(瞬時値)を積分して電圧の実効値を算出し、電圧実効値として一次側電力算出部34へ出力する。電流実効値算出部33は、入力されたU相電流値(瞬時値)を積分して電流の実効値を算出し、電流実効値として一次側電力算出部34へ出力する。
【0022】
固定電力値記憶部35は、室外機制御部20で消費される消費電力(211ワット)と、ファンモーター10とファンモーター11が消費する平均の消費電力(750ワット)の合計値である961ワットを、モーター9aの消費電力を含まない室外機の消費電力である制御部消費電力値として予め記憶しており、これを一次側電力算出部34へ出力している。
【0023】
一次側電力算出部34は、入力された電圧実効値と電流実効値とそれぞれの位相差とから以下に示す式1を用いてモーター9aの消費電力を求める。
式1と式2において、Pはモーター9aの消費電力(単位:W)を、V1はモーター9aの実効値の相電圧(単位:V)を、V2はモーター9aの実効値の線間電圧(単位:V)を、Iはモーター9aの実効値の相電流(線間電流と同じ)(単位:A)を、θはモーター9aの相電流(線間電流)と、相電圧又は線間電圧との位相差を示している。
なお、本実施例においては相電圧と相電流を用いて説明している。
【0024】
一次側電力算出部34は、前述の式1によりモーター9aの消費電力を算出した後、固定電力値記憶部35から入力された制御部消費電力値とモーター9aの消費電力を合算し、合算した結果を一次側電力値としてレリース判定部36へ出力する。レリース判定部36は予め定められた、電力に基いた電流レリース値の閾値である電力レリース閾値(電力閾値)を記憶している。本実施例において電力レリース閾値は35.1KW(キロワット)であり、レリース判定部36は電力レリース値よりも入力された一次側電力値が大きくなった場合、レリース指示の信号をマイコン24へ出力する。
【0025】
レリース指示の信号が入力されたマイコン24は電流レリース処理を行うために現在出力している回転数指令値の値を小さくして位相制御部21へ出力する。マイコン24は室内機50からの要求に従ってモーター9aの回転数を決定して運転しているが、前述のように電力レリース閾値を超えて運転することはない。
【0026】
本実施例では一次側電力値による電力レリース値に基づいて電流レリース処理を行うことが特徴である。インバータ制御において一次側電力値はその値が一定である時、入力AC電圧(AC線間電圧)の変化によって入力電流(AC線間電流)も変化する。そして、室外機40の一次側電力値が最大で、かつ一定である時、定格電圧範囲の下限電圧で最大の入力電流が流れる。当然のことながら定格電圧範囲の下限電圧よりもさらに低い電圧であればさらに入力電流が増加する。しかしながら、定格電圧範囲の下限電圧より低い電圧になれば前述したように下限電圧検出部23から運転停止指示が出力される。こため、定格電圧範囲の下限電圧以下ではインバータ部7やモーター9aの運転は行わないので過電流から部品が保護される。
【0027】
図2は定格電圧範囲における各部の電圧や電流、消費電力などを表にしたものであり、電流、電圧、消費電力は全て実効値である。
図2の(1)は定格電圧時、つまりAC入力電圧が400V時であり、(2)は定格電圧範囲の上限時、つまりAC入力電圧が440V時であり、(3)は定格電圧範囲の下限時、つまりAC入力電圧が360V時である場合を示している。なお、各場合においてモーター9aは最大負荷で動作しており、その消費電力は34.124KWである。
【0028】
また、
図2の縦方向は項目を示している。制御部消費電力は固定電力値記憶部35に記憶されている値である。位相差は位相差抽出部31から出力される値である。相電圧は電圧実効値算出部32から出力される値である。相電流は電流実効値算出部33から出力される値である。モーター消費電力は式1を用いて算出したモーター9aの消費電力である。一次側消費電力は一次側電力算出部34が出力する値である。コンバータの力率はコンバータ部3で電力変換した場合の力率である。AC線間電圧は入力電圧であり、AC線間電流は入力電流である。
【0029】
図2の(1)に示すようにAC線間電圧が400V時、AC線間電流は56Aになる。そして(2)に示すようにAC線間電圧が440V時、AC線間電流は51Aになる。さらに、(3)に示すようにAC線間電圧が360V時、AC線間電流は63Aになる。
つまり、一次側消費電力値を用いて電力値に基いた電流レリース処理を行うことでAC線間電流が63Aを超えることがないようにできるため、結果的に電流レリースを行うことになる。このため、従来機種に存在した高価なカレントトランスを削除でき、コストダウンを図ることができる。
【0030】
以上説明したように、室外機40は位相制御部21が出力するモーター9aのU相電圧値と、U相電流検出部8が検出したU相電流値と、U相電圧とU相電流との位相差とに基づいてモーター9aの消費電力であるモーター消費電力値を算出し、モーター消費電力値を含む一次側消費電力値が予め定めた電力閾値を超えた時にモーター9aの回転数を低減させる電力制限部30を備えている。
このため、一次側の入力電流を検出するカレントトランスを用いないで電流レリース処理を行うことができ、コストダウンを図ることができる。
なお、U相に変えてV相やW相の各電圧や電流を用いてもよい。また、モーター消費電力値を含む一次側消費電力値とは、モーター消費電力値以外に室外機40で消費される何らかの消費電力値が含まれる場合もあることを示している。モーター消費電力値以外に室外機40で消費される消費電力値としては、例えば室外機制御部20で消費される電力や、ファンモーター10や11で消費される電力を示している。
【0031】
また、電力制限部30は固定電力値記憶部35を備え、室外機制御部20で消費される電力値を予め記憶しており、この値を一次側電力算出部34内でモーター9aの消費電力と合算して一次側電力値を算出するため、より正確な電流レリース処理を行うことが出来る。
【0032】
なお、本実施例では相電圧を用いてモーター9aの消費電力を算出しているが、これに限るものでなく、U相電圧の代わりに位相制御部21からU相の線間電圧を位相差抽出部31へ出力する。そして、一次側電力算出部34において、式1の代わりに式2を用いても同様の効果を得ることができる。
当然のことながらU相でなくV相やW相の各電圧や電流を用いても同様の効果を得ることが出来る。
【0033】
また、本実施例では一次側電力算出部34において、制御部消費電力値をモーター9aの消費電力値に加算したものを一次側消費電力値としているが、これに限るものでなく、簡易的にはモーター9aの消費電力値のみを用いて一次側消費電力値としてもよいし、モーター9aの消費電力値に予め定めた係数を乗じて一次側消費電力値としてもよい。
【0034】
また、本実施例では電力制限部30をハードウェアとして説明しているが、これに限るものでなく、ソフトウェアで実現してもよい。
また、本実施例では力率制御(電圧・電流の位相差制御)によりモーター9aの回転を制御する例を示しているが、他の制御方式、例えばベクトル方式の正弦波制御方式であっても、位相差やモーター駆動電圧や電流を簡単に求めることができる。このため、本発明はモーターの制御方式を限定するものではない。