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特開2022-98308アスパラギン酸又はその塩を主成分とする粉粒体経口組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098308
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】アスパラギン酸又はその塩を主成分とする粉粒体経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/175 20160101AFI20220624BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220624BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A23L33/175
A61K31/198
A61K9/14
A61K47/12
A61K47/42
A61P3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211774
(22)【出願日】2020-12-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年12月26日 味の素ナショナルトレーニングセンターにて「アミノバイタル▲R▼ 東京 2020 日本代表選手団 SPECIAL MOMENT (モーメント)」を配布
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】千葉 智子
(72)【発明者】
【氏名】瀧 次郎
(72)【発明者】
【氏名】勝幸 正憲
(72)【発明者】
【氏名】平川 悠平
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD27
4B018ME14
4C076AA29
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC40
4C076DD43T
4C076EE41T
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA72
4C206NA09
4C206ZC21
(57)【要約】
【課題】アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有し、かつ、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が充分に抑制され、好ましい味覚を呈し得る、粉粒体状の経口組成物の提供。
【解決手段】(A)50重量%以上のアスパラギン酸又はその塩、(B)甘味料、並びに、(C)酸味料を含有する、粉粒体経口組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)50重量%以上のアスパラギン酸又はその塩、
(B)甘味料、並びに、
(C)酸味料
を含有する、粉粒体経口組成物。
【請求項2】
前記甘味料が、高甘味度甘味料である、請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
前記酸味料が、有機酸である、請求項1又は2記載の経口組成物。
【請求項4】
前記甘味料の含有量が、0.03~20重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記酸味料の含有量が、0.3~20重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項6】
甘味料及び酸味料を添加することを含む、アスパラギン酸又はその塩を50重量%以上含有する粉粒体経口組成物の呈味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラギン酸又はその塩を主成分とする粉粒体経口組成物に関する。詳細には、本発明は、アスパラギン酸又はその塩を主成分とし、かつアスパラギン酸又はその塩に特有の異味が充分に抑制され、好ましい味覚を呈する粉粒体経口組成物に関する。また、本発明は、アスパラギン酸又はその塩を主成分とする粉粒体経口組成物の呈味改善方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
アスパラギン酸は、エネルギー源として利用され易いアミノ酸の一つであり、従来、栄養剤、サプリメント等の成分として利用されている。アスパラギン酸又はその塩を含有する経口製剤は種々上市されているが、アスパラギン酸又はその塩を主成分とする(例えば、アスパラギン酸又はその塩を50重量%以上含有する)、粉体状又は粒体状の製剤は、これまで提供されていない。
【0003】
一方、イノシトール、フラクトオリゴ糖、環状オリゴ糖及び高甘味度甘味料を配合することを特徴とする、塩化カリウムの不快味(苦味、えぐみ)のマスキング方法が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-143128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アスパラギン酸又はその塩を含有する経口製剤について研究・開発を重ねる過程で、アスパラギン酸又はその塩が主成分として高濃度に配合された粉体状又は粒体状の製剤は、その摂取の際、高濃度のアスパラギン酸又はその塩に起因する特有の異味が、許容できないレベルで強く感じられることを新たに知見した。このような異味は、消費者の日常的・継続的な摂取の妨げになることが考えられる。
【0006】
したがって本発明が解決しようとする課題は、アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有し、かつ、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が充分に抑制され、好ましい味覚を呈し得る、粉粒体状の経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味について鋭意検討し、当該異味は、渋味、えぐみ及び塩味で構成され、甘味料を添加することによって多少抑えられるものであることを見出した。しかし、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味を充分に抑えるためには多量の添加が必要となり、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味を充分に抑え得る多量の甘味料を添加すると、甘味が強くなり過ぎ、かえって好ましい味覚にならないことが判明した。更に、本発明者らは、当該異味は酸味料の添加によって多少抑えられることも見出したが、甘味料と同様に、充分に抑えるには多量の添加が必要となり、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味を充分に抑え得る多量の酸味料を添加すると、酸味が強くなり過ぎて、この場合も好ましい味覚にならないことが分かった。
本発明者らは、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味について更に検討を進め、驚くべきことに、甘味料及び酸味料を併用することによって、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味を効果的に抑制でき、しかも甘味や酸味が強くなり過ぎることなく、好ましい味覚になり得ることを見出した。当該知見に基づいて本発明者らは更なる研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1](A)50重量%以上のアスパラギン酸又はその塩、
(B)甘味料、並びに、
(C)酸味料
を含有する、粉粒体経口組成物。
[2]前記甘味料が、高甘味度甘味料である、[1]記載の経口組成物。
[3]前記酸味料が、有機酸である、[1]又は[2]記載の経口組成物。
[4]前記甘味料の含有量が、0.03~20重量%である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の経口組成物。
[5]前記酸味料の含有量が、0.3~20重量%である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の経口組成物。
[6]甘味料及び酸味料を添加することを含む、アスパラギン酸又はその塩を50重量%以上含有する粉粒体経口組成物の呈味改善方法。
[7]前記甘味料が、高甘味度甘味料である、[6]記載の方法。
[8]前記酸味料が、有機酸である、[6]又は[7]記載の方法。
[9]前記甘味料の添加が、甘味料及び酸味料を添加された前記経口組成物における甘味料の含有量が0.03~20重量%となるように行われる、[6]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]前記酸味料の添加が、甘味料及び酸味料を添加された前記経口組成物における酸味料の含有量が0.3~20重量%となるように行われる、[6]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有し、かつ、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が充分に抑制され、好ましい味覚を呈し得る粉粒体経口組成物を提供できる。当該経口組成物は、渋味、えぐみ及び塩味で構成されるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味が抑えられ、すっきり美味しく摂取できる。
また本発明によれば、アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有する粉粒体経口組成物の異味を抑制し、好ましい味覚にする呈味改善方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の経口組成物は、(A)アスパラギン酸又はその塩(本明細書中、単に「成分A」と称する場合がある)、(B)甘味料(本明細書中、単に「成分B」と称する場合がある)、並びに、(C)酸味料(本明細書中、単に「成分C」と称する場合がある)を含有することを、特徴の一つとする。
本発明において「経口組成物」とは、経口摂取又は経口投与に供される組成物をいう。
【0011】
[(A)アスパラギン酸又はその塩]
本発明において、アスパラギン酸(示性式:HOOCCHCH(COOH)NH)は、L-体、D-体、DL-体のいずれも使用可能であるが、好ましくは、L-体、DL-体であり、より好ましくは、L-体である。
【0012】
アスパラギン酸の形態は特に制限されないが、遊離又は塩であることが好ましい。ここで「遊離形態」のアスパラギン酸とは、他のアミノ酸と結合してタンパク質やペプチド等を形成せず、遊離の状態で存在しているアスパラギン酸をいう。
【0013】
アスパラギン酸の塩は、食品又は医薬品上許容され得るものであれば特に制限されないが、例えば、無機酸(例、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等)との塩;有機酸(例、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等)との塩;無機塩基(例、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アンモニア等)との塩;有機塩基(例、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)との塩等が挙げられる。アスパラギン酸の塩は、本発明による呈味改善効果が顕著に発揮され得ることから、好ましくは、無機塩基との塩であり、より好ましくは、ナトリウムとの塩(アスパラギン酸ナトリウム)である。またアスパラギン酸の塩は、水和物(含水塩)であってもよく、かかる水和物としては、例えば1~6水和物等が挙げられる。
【0014】
上記のアスパラギン酸又はその塩は、一種を単独で用いてよく、又は二種以上を併用してもよい。
【0015】
成分A(アスパラギン酸又はその塩)の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法又はこれに準じる方法により製造し得る。成分Aは、例えば、天然に存在する動植物等から抽出し精製したもの、或いは、化学合成法、発酵法、酵素法又は遺伝子組換え法によって得られるもの等のいずれも使用してよい。
【0016】
本発明の経口組成物における成分A(アスパラギン酸又はその塩)の含有量は、本発明の経口組成物に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上である。また、本発明の経口組成物における成分Aの含有量は、本発明による呈味改善効果が顕著に発揮され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは92重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下であり、特に好ましくは88重量%以下である。
本発明において、アミノ酸(アスパラギン酸等)の塩の量は、遊離形態のアミノ酸(アスパラギン酸等)に換算した量を用いる。
【0017】
[(B)甘味料]
本発明において用いられる甘味料は、食品又は経口医薬に甘味を付与するために一般に用いられ得るものであれば特に制限されないが、例えば、糖類(例、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、オリゴ糖等)、糖アルコール(例、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等)、高甘味度甘味料(例、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア(レバウディオサイド、ステビオサイド)、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、甘草、ネオテーム、アドバンテーム等)等が挙げられる。中でも、高甘味度甘味料が好ましく、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームがより好ましい。ここで「高甘味度甘味料」とは、ショ糖と比較して高い甘味度(具体的には、ショ糖の10倍以上の甘味度)を有する、天然又は合成の非糖質系甘味料の総称である。甘味料は、一種を単独で用いてよく、又は二種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明において用いられる成分B(甘味料)の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法又はこれに準じる方法により製造し得る。また、市販品を用いてもよい。
【0019】
本発明の経口組成物における成分B(甘味料)の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.03重量%以上であり、より好ましくは0.08重量%以上であり、特に好ましくは0.3重量%以上である。また、本発明の経口組成物における成分Bの含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下であり、特に好ましくは7重量%以下である。
【0020】
本発明において用いられる成分Bが、一態様として、アスパルテームを含む場合、本発明の経口組成物におけるアスパルテームの含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.03重量%以上であり、より好ましくは0.08重量%以上であり、特に好ましくは0.3重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるアスパルテームの含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下であり、特に好ましくは7重量%以下である。
【0021】
本発明において用いられる成分Bが、一態様として、スクラロースを含む場合、本発明の経口組成物におけるスクラロースの含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.03重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上であり、特に好ましくは0.08重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるスクラロースの含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは3重量%以下である。
【0022】
本発明において用いられる成分Bが、一態様として、アセスルファムカリウムを含む場合、本発明の経口組成物におけるアセスルファムカリウムの含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.03重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上であり、特に好ましくは0.08重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるアセスルファムカリウムの含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは3重量%以下である。
【0023】
[(C)酸味料]
本発明において用いられる酸味料は、食品又は経口医薬に酸味を付与するために一般に用いられ得るものであれば特に制限されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、イタコン酸、フィチン酸、フマル酸等の有機酸又はその塩;リン酸等の無機酸又はその塩等が挙げられる。中でも、有機酸又はその塩が好ましく、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、アジピン酸、イタコン酸、フィチン酸、フマル酸がより好ましく、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムが特に好ましい。有機酸及び無機酸は、無水物であってよく、水和物であってもよい。酸味料は、一種を単独で用いてよく、又は二種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明において用いられる成分C(酸味料)の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法又はこれに準じる方法により製造し得る。例えば、本発明において用いられる成分Cは、成分Cを含有する素材(例、かんきつ類の果汁エキス等)から、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって、抽出、精製されたものであってよい。あるいは、成分Cを含有する素材から成分Cを単離せずに、当該素材をそのまま用いてもよい。また、成分C及びそれを含有する素材は市販品を用いてもよい。
【0025】
本発明の経口組成物における成分C(酸味料)の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.3重量%以上であり、より好ましくは0.8重量%以上であり、特に好ましくは2重量%以上である。また、本発明の経口組成物における成分Cの含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下であり、特に好ましくは8.5重量%以下である。
【0026】
本発明において用いられる成分Cが、一態様として、クエン酸を含む場合、本発明の経口組成物におけるクエン酸の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.3重量%以上であり、より好ましくは0.8重量%以上であり、特に好ましくは2重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるクエン酸の含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは12重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、特に好ましくは8.5重量%以下である。
【0027】
本発明において用いられる成分Cが、一態様として、リンゴ酸を含む場合、本発明の経口組成物におけるリンゴ酸の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.3重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上であり、特に好ましくは0.8重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるリンゴ酸の含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは12重量%以下であり、より好ましくは8重量%以下であり、特に好ましくは6重量%以下である。
【0028】
本発明において用いられる成分Cが、一態様として、酒石酸を含む場合、本発明の経口組成物における酒石酸の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.8重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、特に好ましくは2重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物における酒石酸の含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは12重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、特に好ましくは8.5重量%以下である。
【0029】
本発明において用いられる成分Cが、一態様として、アスコルビン酸を含む場合、本発明の経口組成物におけるアスコルビン酸の含有量は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が効果的に抑制され得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは0.8重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、特に好ましくは4重量%以上である。また、この場合、本発明の経口組成物におけるアスコルビン酸の含有量は、本発明の経口組成物がより好ましい味覚を呈し得ることから、本発明の経口組成物に対して、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下であり、特に好ましくは12重量%以下である。
【0030】
本発明の経口組成物における成分A(アスパラギン酸又はその塩)の含有量と成分B(甘味料)の含有量の重量比は、好ましくは(成分A):(成分B)=1:0.0005~0.5であり、より好ましくは(成分A):(成分B)=1:0.0015~0.25であり、特に好ましくは(成分A):(成分B)=1:0.005~0.15である。
【0031】
本発明の経口組成物における成分A(アスパラギン酸又はその塩)の含有量と成分C(酸味料)の含有量の重量比は、好ましくは(成分A):(成分C)=1:0.005~0.5であり、より好ましくは(成分A):(成分C)=1:0.015~0.25であり、特に好ましくは(成分A):(成分C)=1:0.05~0.15である。
【0032】
本発明の経口組成物における成分B(甘味料)の含有量と成分C(酸味料)の含有量の重量比は、好ましくは(成分B):(成分C)=1:0.001~150であり、より好ましくは(成分B):(成分C)=1:0.3~70であり、特に好ましくは(成分B):(成分C)=1:0.8~20である。
【0033】
本発明の経口組成物は、成分A~Cのみからなるものであってよいが、成分A~Cに加えて、成分A~C以外の成分(以下、「その他の成分」とも称する)を含有してもよい。その他の成分は、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限されないが、例えば、成分A以外のアミノ酸又はその塩、ビタミン、香料、着色剤、賦形剤、結合剤、潤滑剤、流動性改善剤、滑沢剤、固結防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の経口組成物が、成分A(アスパラギン酸又はその塩)以外のアミノ酸又はその塩(例、トリプトファン、イソロイシン、ロイシン、システイン、リジン、チロシン、フェニルアラニン、アルギニン、バリン、メチオニン、ヒスチジン又はそれらの塩等)を含有する場合、その含有量は、本発明の経口組成物に対して、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下である。本発明の経口組成物は、成分A以外のアミノ酸を含有しないものであってもよい。成分A以外のアミノ酸には、異味を有するもの(例、トリプトファン、イソロイシン、ロイシン、システイン、リジン、チロシン、フェニルアラニン、アルギニン、バリン、メチオニン、ヒスチジン又はそれらの塩等)もあり、そのようなアミノ酸又はその塩は、上記の含有量であるか、又は含有しないことが、本発明の経口組成物の呈味の観点から好ましい。
【0035】
本発明の経口組成物は、食品又は経口医薬等として提供することができる。本明細書において「食品」とは、経口的に摂取し得るもの(経口医薬を除く)を広く包含する概念であり、調味料、食品添加物等を含む。本発明の経口組成物が経口医薬として提供される場合、その投与対象としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)等が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0036】
本発明の経口組成物は、厚生労働省の規定する保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)として提供することも可能である。また、本発明の経口組成物は、食品補助剤として利用してもよい。ここで「食品補助剤」とは、食品として摂取されるもの以外に栄養を補助する目的で摂取されるものをいい、例えば、栄養補助剤、サプリメント(例、ダイエタリーサプリメント等)等が挙げられる。
【0037】
本発明の経口組成物は、1回摂取量当たりの単位包装形態とすることができる。本明細書において「1回摂取量当たりの単位包装形態」とは、1回摂取量を1単位として、当該1単位又は2単位以上が包装された形態を意味する。当該包装には、食品又は医薬等の包装に通常使用される包材及び包装方法、充填方法(例、分包包装、スティック包装等)が使用できる。
本明細書において「1回摂取量」とは、例えば、本発明の経口組成物が食品である場合は、1回の食事で摂取される組成物の量であり、本発明の経口組成物が経口医薬である場合は、1回に投与される組成物の量である。
【0038】
本発明の経口組成物の1回摂取量は、経口組成物の形態、摂取対象等に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、通常0.2~12gであり、好ましくは0.3~10gであり、より好ましくは0.5~8gである。
【0039】
本発明の経口組成物の形態は、粉粒体であり、すなわち本発明の経口組成物は、粉粒体経口組成物である。本発明において「粉粒体」とは、粉体、粒体、又はそれらが組み合わさった形態のいずれかをいう。本発明において「粉体」とは、必要に応じて破砕・粉砕された粉末状ないし微粒状の比較的粒径の小さい粒子の集合体をいい、「粒体」とは、粒状(細粒状、顆粒状)に造粒又は結晶化された比較的粒径の大きい粒子の集合体をいう。
【0040】
本発明の経口組成物は、食品又は医薬分野において自体公知の方法又はこれに準じる方法により製造し得る。具体的には、本発明の経口組成物は、例えば、混合機(例、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、揺動回転型混合機、単軸リボン型混合機、複軸パドル型混合機、回転動型混合機、円錐スクリュー型混合機等)を使用して原料を混合すること等により、粉体状に製造できる。また、本発明の経口組成物は、例えば、造粒機(例、高速攪拌造粒機、押出し造粒機、転動造粒機、流動層造粒機、転動流動層造粒機等)を使用して原料を造粒すること等により、粒体状に製造できる。
【0041】
本発明の経口組成物は、直飲みタイプの製品であってよい。ここで「直飲みタイプ」の製品とは、摂取の際、水に溶かすこと等を必要とせず、そのまま又は飲料(例、水等)とともに嚥下して摂取できる製品をいう。直飲みタイプの製品は、通常、その摂取方法(摂取の際、水に溶かすこと等を必要とせず、そのまま又は飲料とともに嚥下して摂取できること)が、製品の包装等に表示され、かつ/又は、当該摂取方法が記載された記載物が添付された形態で提供される。粉粒体経口組成物は、直飲みすると(すなわち、水等に溶かさずに、粉粒体状のまま又は飲料とともに嚥下して摂取すると)、全量を嚥下しきれず、口中に少量残存して異味を感じやすい傾向があるが、本発明の経口組成物は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が抑えられているため、直飲みタイプの製品とした場合でも、すっきり美味しく摂取できる。
【0042】
本発明の経口組成物は、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が抑制(マスキング)され、好ましい味覚を呈し得る。アスパラギン酸又はその塩に特有の異味は、渋味(舌・頬・唇の内側等の細胞を収縮させることにより感じる触覚)、えぐみ(舌、喉を刺激するような感覚)及び塩味(食塩、海水のようなしょっぱい味覚)で構成されるものであり、その有無や程度は、専門パネルによる官能評価(例えば、後述の実施例に示される官能評価等)によって評価できる。ここで「渋味」は、収斂味も包含する概念である。また、本発明の経口組成物が「好ましい味覚」を呈するとは、本発明の経口組成物において、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が感じられず、すっきり美味しく摂取できることをいう。
【0043】
本発明によれば、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物の呈味改善方法(本明細書中、「本発明の方法」と称する場合がある)も提供される。
本発明の方法は、甘味料及び酸味料を添加することを含むことを、特徴の一つとする。
【0044】
本発明の方法において用いられるアスパラギン酸又はその塩、甘味料、並びに、酸味料は、いずれも本発明の経口組成物に含有されるもの(成分A~C)と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0045】
本発明の方法において、粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩の含有量は、本発明の経口組成物における成分A(アスパラギン酸又はその塩)の含有量と同様の範囲であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
本発明の方法において、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物への甘味料及び酸味料の添加は、甘味料及び酸味料が添加された当該経口組成物における甘味料及び酸味料の含有量が、それぞれ本発明の経口組成物における成分B(甘味料)及び成分C(酸味料)の含有量と同様の範囲となるように行われ得る。また、本発明の方法において、甘味料及び酸味料の添加は、甘味料及び酸味料が添加された当該経口組成物における、アスパラギン酸又はその塩の含有量、甘味料の含有量、並びに、酸味料の含有量の各重量比が、本発明の経口組成物における、成分A~Cの含有量の各重量比(成分Aの含有量と成分Bの含有量との重量比、成分Aの含有量と成分Cの含有量との重量比、成分Bの含有量と成分Cの含有量との重量比)と、同様の範囲となるように行われ得る。
【0047】
本発明の方法において、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物は、本発明の経口組成物と同様の原料を用いて、同様の方法で調製し得る。
【0048】
本発明の方法において、甘味料及び酸味料を添加する時期は特に限定されず、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物の摂取前であれば、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、当該経口組成物の製造中又は完成後(例、経口組成物の摂取直前等)等が挙げられる。
【0049】
本発明の方法によれば、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物における、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味を抑制(マスキング)でき、当該経口組成物は好ましい味覚を呈し得る。
【0050】
本発明の方法において、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物の呈味改善は、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に起因する異味(好ましくは、渋味、えぐみ及び塩味からなる群より選択される少なくとも一つ)の抑制を含むものであってよい。すなわち本発明の方法は、一態様として、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に起因する異味(好ましくは、渋味、えぐみ及び塩味からなる群より選択される少なくとも一つ)の抑制方法であってよい。また、本発明の方法は、一態様として、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物における渋味、えぐみ及び塩味からなる群より選択される少なくとも一つの抑制方法であってよい。
【0051】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0052】
以下の試験例1~6において、評価サンプルの原料には、食品又は医薬の原料、添加物等として市販されている製品を用いた。各原料の製造会社を下表1に示す。尚、賦形剤には、試験例1~6において同一の製品(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)を用いた。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示される原料のうち、L-酒石酸以外は、市販の製品をそのまま使用し、L-酒石酸は、市販の製品を粉砕機(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、製品名「Retsch ZM200」)にて回転速度10000rpmで、1mm径のメッシュを通過させて粉砕したものを使用した。
【0055】
<試験例1>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム及び賦形剤を、下表2に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0056】
(官能評価)
評価サンプルのアスパラギン酸ナトリウム特有の異味について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、各評価サンプルを専門パネルが1gずつ口に含み、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味について下記の評価軸に従って評価した後、飲み込まず吐き出すという方法で行われた。
尚、専門パネルは、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味を構成する味や、その許容できない程度が、パネル間で共通となるよう、評価サンプルの評価の前に予め、L-アスパラギン酸ナトリウムのみを口に含んでよく味わい、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が、渋味(舌・頬・唇の内側等の細胞を収縮させることにより感じる触覚)、えぐみ(舌、喉を刺激するような感覚)及び塩味(食塩、海水のようなしょっぱい味覚)で構成されていること等を確認した。
【0057】
[評価軸]
〇:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が許容できる
△:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が強く感じられるが許容できる
×:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が強く感じられ、許容できない
【0058】
結果を、下表2に示す。表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示されるように、アスパラギン酸ナトリウムを50重量%以上含有する評価サンプルは、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が強く感じられ、許容できないものであった。したがって当該結果から、アスパラギン酸又はその塩を50重量%以上含有する粉粒体経口組成物は、渋味、えぐみ及び塩味で構成されるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味が、許容できないレベルで強く感じられることが確認された。
【0061】
<試験例2>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム、賦形剤及び各種甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)を、下表3~5に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0062】
(官能評価)
評価サンプルの呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、各評価サンプルを専門パネルが1gずつ口に含み、その呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について下記の評価軸に従って評価した後、飲み込まず吐き出すという方法で行われた。
尚、専門パネルは、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味を構成する味や、その許容できない程度が、パネル間で共通となるよう、評価サンプルの評価の前に予め、L-アスパラギン酸ナトリウムのみを口に含んでよく味わい、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が、渋味(舌・頬・唇の内側等の細胞を収縮させることにより感じる触覚)、えぐみ(舌、喉を刺激するような感覚)及び塩味(食塩、海水のようなしょっぱい味覚)で構成されていること等を確認した。
また、評価サンプルが「好ましい味覚」であるとは、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が感じられず、すっきり美味しく摂取できることをいう。
【0063】
[評価軸]
◎:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされ、とても好ましい味覚になる
〇:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされ、好ましい味覚になる
△:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされるものの、好ましい味覚とは言えない
×:アスパラギン酸ナトリウム特有の異味が強く、マスキングできていない
【0064】
結果を、下表3~5に示す。各表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示し、「アセスルファムK」は、アセスルファムカリウムを示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
表3~5に示されるように、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)の含有量が多い評価サンプルはアスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされていたものの、いずれの評価サンプルも甘味が強くなり過ぎる等して、好ましい味覚にならなかった。したがって当該結果から、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を、甘味料単体で充分に抑えるには多量の添加が必要となり、好ましい味覚にすることは困難であることが確認された。
【0069】
<試験例3>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム、賦形剤及び各種酸味料(クエン酸、リンゴ酸、L-酒石酸、L-アスコルビン酸)を、下表6~9に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0070】
(官能評価)
評価サンプルの呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、試験例2と同様に行われた。結果を、下表6~9に示す。各表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示す。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
表6~9に示されるように、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、L-酒石酸、L-アスコルビン酸)の含有量が多い評価サンプルはアスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされていたものの、いずれの評価サンプルも酸味が強くなり過ぎる等して、好ましい味覚にならなかった。したがって当該結果から、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を、酸味料単体で充分に抑えるには多量の添加が必要となり、好ましい味覚にすることは困難であることが確認された。
【0076】
<試験例4>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム、賦形剤、クエン酸及びアスパルテームを、下表10~12に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0077】
(官能評価)
評価サンプルの呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、試験例2と同様に行われた。結果を、下表10~12に示す。各表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示す。
【0078】
【表10】
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
表10~12に示されるように、アスパルテーム及びクエン酸を含有する各評価サンプルは、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされ、好ましい味覚又はとても好ましい味覚になった。したがって当該結果から、甘味料及び酸味料を併用することによって、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を効果的に抑制でき、当該経口組成物は、好ましい味覚になり得ること、すなわちアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を感じることなく、すっきり美味しく摂取できること、が確認された。
【0082】
<試験例5>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム、賦形剤、アスパルテーム及び各種酸味料(リンゴ酸、L-酒石酸、L-アスコルビン酸)を、下表13~18に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0083】
(官能評価)
評価サンプルの呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、試験例2と同様に行われた。結果を、下表13~18に示す。各表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示す。
【0084】
【表13】
【0085】
【表14】
【0086】
【表15】
【0087】
【表16】
【0088】
【表17】
【0089】
【表18】
【0090】
表13~18に示されるように、クエン酸以外の各種酸味料(リンゴ酸、L-酒石酸、L-アスコルビン酸)をアスパルテームと併用した各評価サンプルは、クエン酸を用いた場合(試験例4)と同様に、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされ、好ましい味覚又はとても好ましい味覚になった。したがって当該結果から、甘味料及び酸味料を併用すれば、酸味料の種類に依らず、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を効果的に抑制でき、当該経口組成物は、好ましい味覚になり得ることが確認された。
【0091】
<試験例6>
(評価サンプルの調製)
L-アスパラギン酸ナトリウム、賦形剤、クエン酸及び各種甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース)を、下表19~22に示される割合となるよう、適当な大きさのポリエチレン袋に秤量した後、当該袋をよく振って、粉粒体の評価サンプルを調製した。
【0092】
(官能評価)
評価サンプルの呈味(アスパラギン酸ナトリウム特有の異味、好ましい味覚)について、食品又は医薬の官能評価に2年以上従事した経験のある3名の専門パネルにより、官能評価を実施した。官能評価は、試験例2と同様に行われた。結果を、下表19~22に示す。各表中、「AspNa」は、L-アスパラギン酸ナトリウムを示し、「アセスルファムK」は、アセスルファムカリウムを示す。
【0093】
【表19】
【0094】
【表20】
【0095】
【表21】
【0096】
【表22】
【0097】
表19~22に示されるように、アスパルテーム以外の各種甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース)をクエン酸と併用した各評価サンプルは、アスパルテームを用いた場合(試験例4)と同様に、アスパラギン酸ナトリウム特有の異味がマスキングされ、好ましい味覚又はとても好ましい味覚になった。したがって当該結果から、甘味料及び酸味料を併用すれば、甘味料の種類に依らず、アスパラギン酸又はその塩を含有する粉粒体経口組成物におけるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味を効果的に抑制でき、当該経口組成物は、好ましい味覚になり得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有し、かつ、アスパラギン酸又はその塩に特有の異味が充分に抑制され、好ましい味覚を呈し得る粉粒体経口組成物を提供できる。当該経口組成物は、渋味、えぐみ及び塩味で構成されるアスパラギン酸又はその塩に特有の異味が抑えられ、すっきり美味しく摂取できる。
また本発明によれば、アスパラギン酸又はその塩を主成分として含有する粉粒体経口組成物の異味を抑制し、好ましい味覚にする呈味改善方法も提供される。