(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098310
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】耐火被覆構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220624BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B1/94 V
E04B1/94 D
E04B1/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211776
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 通成
(72)【発明者】
【氏名】酒井 星志
(72)【発明者】
【氏名】松本 英一郎
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB01
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA01
2E001FA02
2E001FA03
2E001GA23
2E001GA24
2E001GA29
2E001HA32
2E001HB04
2E001HD11
2E001HF03
2E001HF12
2E001JA25
2E001MA01
(57)【要約】
【課題】柱・梁の合成耐火構造の結露対策として好適な耐火被覆構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】壁体12に近接して対向配置される鉄骨柱または鉄骨梁14の外側から壁体12の表面にかけて連続的に設けられる耐火被覆材16を備える耐火被覆構造10であって、耐火被覆材16の外側から内側への水蒸気Wの透過を抑制するために耐火被覆材16の外側に設けられるとともに透湿抵抗が耐火被覆材16の透湿抵抗よりも高い防湿性の防湿フィルム18をさらに備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に近接して対向配置される鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて連続的に設けられる耐火被覆材を備える耐火被覆構造であって、耐火被覆材の外側から内側への水蒸気の透過を抑制するために耐火被覆材の外側に設けられるとともに透湿抵抗が耐火被覆材の透湿抵抗よりも高い防湿性の防湿フィルムをさらに備えることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項2】
防湿フィルムは、防湿対策を要する無機系の耐火被覆材の端部の小口部分と、この無機系の耐火被覆材の端部に近接するとともに防湿対策を要しない部分とに跨って連続的に設けられることを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
防湿フィルムは、ポリエステル系材料またはアルミニウム系材料を主材として含むフィルムまたはシートにより構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の耐火被覆構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の耐火被覆構造を施工する方法であって、
シート状の無機系の耐火被覆材の外側に防湿フィルムを設けることによってシート状の耐火被覆材を製造した後、このシート状の耐火被覆材を鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて取り付けることを特徴とする耐火被覆構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿機能を有する耐火被覆構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の建物において外壁近傍に鉄骨梁や鉄骨柱を設置する際に、鉄骨の耐火被覆を外壁との合成耐火構造とする場合が多い。合成耐火構造を採用する理由は、外壁と鉄骨が近接することにより鉄骨の外壁側の面の耐火被覆の施工性が極めて悪くなるためである。
【0003】
合成耐火構造の外壁面には、通常、結露対策用の断熱材等が設置されていないため、寒冷地や室内が高湿度となるIDC、病院、住宅、ホテル等の建物において当該外壁面に多量の結露が発生し実害に繋がる場合がある。
【0004】
合成耐火構造の結露は、例えば
図6に示すように、暖房等で発生する室内側の水蒸気Wが鉄骨梁1を被覆する耐火被覆材2を透過して合成耐火構造の内部3に浸入し、外気4により冷却された外壁5の内面で露点に達することで発生する。このため、耐火被覆材2で透湿抵抗が確保できれば、この結露は抑制できると考えられる。しかし、現在市販されている耐火被覆材を用いた工法には結露対策に十分な透湿抵抗を保持できるものはない。なお、
図6において、符号6は結露防止用の発泡プラスチック系断熱材である。合成耐火構造においては、外壁5の内面にこうした断熱材を施工することは耐火認定外となりできない。
【0005】
従来の合成耐火構造の結露対策として、例えば耐火被覆材の表面に現場発泡ウレタンを施工する方法がある。しかし、パラペット部等、厳しい環境では、透湿抵抗が結露対策上十分とは言えないことがある。また、耐火性能を連続させたまま、防湿対策が必要な部分と他の部分とを区切る境界部おさまりが確立されておらず、広範囲に防湿対策が必要となる。
【0006】
また、耐火被覆構造における他の結露防止技術として、例えば特許文献1、2に記載のものが知られている。特許文献1は、鉄骨等の部材表面に結露の発生を防止し、耐水性を向上させることにより耐火性能を維持し、化粧仕上げをすることが可能な結露防止機能を有する耐火被覆構造に関するものである。この耐火被覆構造は、構造物の表面に構造物側から発泡耐火塗料より形成される発泡耐火塗料層と、結露防止塗料より形成される結露防止塗料層とが積層されているものである。また、特許文献2は、鉄骨梁に対する耐火性能を確保しつつ、鉄骨梁周りの断熱性能と気密性能を向上させることができる鉄骨梁の耐火被覆構造に関するものである。この耐火被覆構造は、鉄骨梁の外周のうち外壁や床に対向または当接しない剥出部を覆う熱膨張性の耐火被覆シート層と、耐火被覆シート層の表面を覆う金属膜の気密層と、剥出部と耐火被覆シート層の間に設けられるフェノール樹脂発泡体を主材とする断熱層とを備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-200597号公報
【特許文献2】特開2010-43444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、柱・梁の合成耐火構造において好適な結露対策が求められていた。また、耐火性能を連続させたまま、防湿対策が必要な部分と他の部分とを区切る境界部を収める技術の確立が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、柱・梁の合成耐火構造の結露対策として好適な耐火被覆構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る耐火被覆構造は、壁体に近接して対向配置される鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて連続的に設けられる耐火被覆材を備える耐火被覆構造であって、耐火被覆材の外側から内側への水蒸気の透過を抑制するために耐火被覆材の外側に設けられるとともに透湿抵抗が耐火被覆材の透湿抵抗よりも高い防湿性の防湿フィルムをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造は、上述した発明において、防湿フィルムは、防湿対策を要する無機系の耐火被覆材の端部の小口部分と、この無機系の耐火被覆材の端部に近接するとともに防湿対策を要しない部分とに跨って連続的に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造は、上述した発明において、防湿フィルムは、ポリエステル系材料またはアルミニウム系材料を主材として含むフィルムまたはシートにより構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る耐火被覆構造の施工方法は、上述した耐火被覆構造を施工する方法であって、シート状の無機系の耐火被覆材の外側に防湿フィルムを設けることによってシート状の耐火被覆材を製造した後、このシート状の耐火被覆材を鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る耐火被覆構造によれば、壁体に近接して対向配置される鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて連続的に設けられる耐火被覆材を備える耐火被覆構造であって、耐火被覆材の外側から内側への水蒸気の透過を抑制するために耐火被覆材の外側に設けられるとともに透湿抵抗が耐火被覆材の透湿抵抗よりも高い防湿性の防湿フィルムをさらに備えるので、柱・梁の合成耐火構造における結露の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造によれば、防湿フィルムは、防湿対策を要する無機系の耐火被覆材の端部の小口部分と、この無機系の耐火被覆材の端部に近接するとともに防湿対策を要しない部分とに跨って連続的に設けられるので、耐火性能を連続させたまま、防湿対策が必要な部分と他の部分とを区切ることができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造によれば、防湿フィルムは、ポリエステル系材料またはアルミニウム系材料を主材として含むフィルムまたはシートにより構成されるので、防湿性を確保するとともに施工コストを低減することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る耐火被覆構造の施工方法によれば、上述した耐火被覆構造を施工する方法であって、シート状の無機系の耐火被覆材の外側に防湿フィルムを設けることによってシート状の耐火被覆材を製造した後、このシート状の耐火被覆材を鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて取り付けるので、柱・梁の合成耐火構造において、防湿対策が必要な部分と他の部分との境界での耐火性能を確保する構造を容易に施工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係る耐火被覆構造およびその施工方法の実施の形態を示す断面図であり、(1)は鉄骨梁周辺の境界納まり例、(2)は防湿仕様と一般仕様の境界納まり例である。
【
図2】
図2は、実測値の時間変化を比較した図であり、(1)は水蒸気量、(2)は温度、(3)は湿度である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る鉄骨梁の合成耐火構造の納まり例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る鉄骨柱の合成耐火構造の納まり例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態に係る端部防湿処理例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、従来の合成耐火構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る耐火被覆構造およびその施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
図1(1)に示すように、本発明の実施の形態に係る耐火被覆構造10は、室内Aと室外Bを区画する外壁12(壁体)に近接して配置される鉄骨梁14に適用される。この耐火被覆構造10は、鉄骨梁14の室内側の表面と、この表面から外壁12の内面にかけて連続的に設けられた無機系の耐火被覆材16を備える。耐火被覆材16の外側表面には、防湿フィルム18が設けられる。
【0021】
外壁12は、例えば押出成形セメント板(ECP)などで構成することができる。鉄骨梁14は、ウェブ20と上下フランジ22、24を有するH形鋼からなる。鉄骨梁14の上フランジ22の上面には、床デッキ26が設けられる。床デッキ26と外壁12との間には層間ふさぎ28(層間区画材)が設けられる。この層間ふさぎ28の上側と、耐火被覆構造10の下側の外壁12の内面には、結露防止用の断熱材30が設けられる。断熱材30は、例えば発泡プラスチック系断熱材などで構成することができる。断熱材30は必須ではなく省略してもよい。断熱材30から間隔をあけた室内側の位置には内装材32が設けられる。鉄骨梁14の下フランジ24の下側には、天井下地材34および天井材36が設けられる。
【0022】
耐火被覆材16は、例えば、吹付けロックウールなどの無機系の耐火被覆材を用いて構成することができる。本実施の形態では、無機系の耐火被覆材16がシート状に成形されている場合を想定している。防湿フィルム18は、耐火被覆材16の外側から内側への水蒸気Wの透過を抑制するためのものであり、例えば、ポリエステル系防湿フィルムやシートなどのポリエステル系材料を主材として含むフィルムやシートで構成することができる。このような材料を用いれば、防湿性を確保するとともに施工コストを低減することができる。ただし、防湿フィルム18はこれに限定されるものではなく、透湿抵抗が耐火被覆材16の透湿抵抗よりも高い防湿性のフィルムやシートであればいかなるものでもよい。このようなものとしては、例えば、ポリエステル系材料の他、ゴム系材料、アルミ箔などのアルミニウム系材料、その他フィルム材、発泡ウレタン等のいずれかを主材として含むフィルムやシートが挙げられる。耐火被覆材16の外側表面に防湿フィルム18を設けることで、室内Aの水蒸気Wが外壁12の内面に結露する事態を未然に防ぐことできる。
【0023】
この耐火被覆構造10を施工する場合には、まず、シート状の無機系の耐火被覆材16を準備する。続いて、この耐火被覆材16の外側表面に防湿フィルム18を設け、シート状の耐火被覆材を製造する。その後、このシート状の耐火被覆材を鉄骨梁14の外側から外壁の表面にかけて取り付ける。このようにすれば、耐火被覆構造10を容易に施工することができる。防湿フィルムを耐火被覆材に設ける方法としては、例えば接着剤等を介して貼り付ける方法を用いることができる。
【0024】
上記構成の動作および作用について説明する。
無機系の耐火被覆材16の透湿抵抗は低く室内側の水蒸気Wを透過してしまうが、耐火被覆材16の表面に透湿抵抗の高い防湿フィルム18を設けることで室内側の水蒸気Wの透過を抑制する。耐火被覆構造10によって形成される合成耐火構造の内部38へ浸入する水蒸気Wの量が減ることで、合成耐火構造の内部38の空気の露点温度が低下し、結露の発生が軽減される。
【0025】
したがって、本実施の形態によれば、鉄骨梁14の合成耐火構造の内部38における結露の発生を抑制することができる。また、防湿対策が必要な部分のみ(外壁側のみ等)への施工が可能であることから、他の防湿対策が不要な部分については、防湿フィルム18を有しないシート状の耐火被覆材16で施工可能である。
【0026】
また、建築基準法における内装制限がかかる室(表面材を不燃材、準不燃材とする必要がある室)において、表し(天井なし)で耐火被覆材に防湿機能を担保することができる。このため、例えば機械室、倉庫など通常天井が設置されない室用途での適用価値が高いという効果を奏する。
【0027】
なお、上記の実施の形態においては、鉄骨梁がH形鋼である場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、鉄骨梁に用い得る鉄骨材であればいかなるものでもよい。例えば他の断面形状の鋼材で構成されていてもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
(本発明の効果の検証)
次に、本発明の効果を検証するために行った実証実験について説明する。
【0029】
本実験は、実施工に近い条件下で本発明に係る耐火被覆構造を施工し、その施工性と防湿性を確認したものである。具体的には、実際の建物内の柱・梁部分に防湿フィルム付のシート状の耐火被覆材の施工を行った。耐火被覆材には、耐熱ロックウールフェルト製の巻付け耐火被覆材を用いた。この結果、耐火被覆材の端部において隙間のない施工が可能であることを確認した。その後、この実施例の合成耐火構造の外側周囲をビニールシートで覆いビニールシート内を加湿しながら温湿度を測定し、防湿効果を確認した。なお、比較例として、防湿フィルムを有しないシート状の耐火被覆材によって施工した合成耐火構造についても同様にビニールシートで覆ってその防湿効果を確認した。
【0030】
実測結果を
図2に示す。図中、実施例(ビニール内部)および比較例(ビニール内部)は、ビニールシート内の測定値である。この図に示すように、防湿フィルム付のシート状の耐火被覆材を施すことによって合成耐火構造の内部の水蒸気圧が下がり結露の発生を抑制、軽減できることがわかる。
【0031】
(防湿仕様と一般仕様の境界納まり例)
次に、防湿仕様と一般仕様の境界納まり例について説明する。
図1(2)に示すように、この納まりは、鉄骨梁14や外壁12の室内側の表面において、無機系の耐火被覆材16を防湿対策を要する防湿仕様と、防湿対策を要しない一般仕様とに分割して設けたものである。防湿フィルム18は、その境界部分に設けられる。具体的には、防湿フィルム18は、防湿仕様の耐火被覆材16の表面側から端部の小口部分を介して一般仕様の耐火被覆材16の裏面側にかけて断面視で略Z字状に連続的に設けられる。このようにすれば、耐火性能を連続させたまま、防湿対策が必要な部分と他の部分とを区切ることができる。
【0032】
(鉄骨梁の合成耐火構造の納まり例)
次に、鉄骨梁14の合成耐火構造の納まり例について説明する。
図3に示すように、この納まりは、防湿フィルム18を備えたシート状の無機系の耐火被覆材16を鉄骨梁14の上フランジ22の端部から下フランジ24の端部を経由して外壁12の内面に連続的に設けたものである。耐火被覆材16の上側の端部40は外側に折り曲げて配置される。この折り曲がった屈曲部は、絶縁材付きの固定ピン42で上フランジ22に対し溶接等により固定される。また、耐火被覆材16の端部40の周囲は、防湿テープ48でシールされる。具体的には、防湿テープ48は、固定ピン42の頭部と端部40を跨ぐように耐火被覆材16の端部40の近傍から床デッキ26にかけて連続的に張り付けられる。防湿テープ48は、防湿フィルム18と同じ材質で構成することができる。
【0033】
耐火被覆材16の下側の端部44は、外壁12の内面に固定されたL形鋼からなる下地材46の下面および内面に沿うように折り曲げて配置される。この端部44は、下地材14の下側の位置まで延びて、下地材46の内面に対し絶縁材付きの固定ピン42で溶接等により固定される。また、耐火被覆材16の端部44の周囲は、防湿テープ48でシールされる。具体的には、防湿テープ48は、固定ピン42の頭部と端部44を跨ぐように耐火被覆材16の端部44の近傍から外壁12の内面にかけて連続的に張り付けられる。
【0034】
また、耐火被覆材16は、下フランジ24の下面に対し絶縁材付きの固定ピン42で溶接等により固定される。この固定ピン42の頭部は、防湿テープ48などでシールされる。また、層間ふさぎ28の上側の隅部は、防湿テープ48などでシールされる。
【0035】
上記の納まりによれば、防湿テープ48で耐火被覆材16の端部や固定ピン42の周囲に生じる隙間が塞がれるとともに、合成耐火構造の内部における結露の発生を抑制することができる。
【0036】
(鉄骨柱の合成耐火構造の納まり例)
次に、鉄骨柱の合成耐火構造の納まり例について説明する。
図4に示すように、この納まりは、外壁12に近接して対向配置された鉄骨柱50に適用される。鉄骨柱50はH形鋼からなる。鉄骨柱50の外側周囲には、外壁12に対向する面を除き、防湿フィルム18を備えたシート状の無機系の耐火被覆材16が設けられる。この耐火被覆材16は、鉄骨柱50から外壁12の内面にかけて連続的に平面視で略U字状の形状に設けられる。耐火被覆材16の端部は外壁12の内面に沿って外側に折り曲げられており、絶縁材付きの固定ピン42で外壁12の内面に固定される。また、耐火被覆材16は、鉄骨柱50の外側のフランジに対し絶縁材付きの固定ピン42で溶接等により固定される。これら固定ピン42の頭部は、防湿テープ48などでシールされる。
【0037】
上記の納まりによれば、防湿テープ48で固定ピン42の周囲に生じる隙間が塞がれるとともに、合成耐火構造の内部における結露の発生を抑制することができる。なお、上記においては、鉄骨柱50がH形鋼からなる場合を例にとり説明したが、鉄骨柱50が角型鋼管などの鋼管柱で構成されていてもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
(端部防湿処理例)
次に、耐火被覆材16の端部の防湿処理の具体例について説明する。
図5のAは、端部を防湿テープ48と発泡ウレタン52で処理する例、
図5のBは、端部を発泡ウレタン52のみで処理する例である。Aは防湿性能が高い高グレード仕様、Bは防湿性能が低い低グレード仕様、Aにおいて発泡ウレタン52を省略した仕様がその中間の中グレード仕様に相当する。なお、各図において、梁1は、鉄骨梁14と床デッキ26が直交方向の場合、梁2は、鉄骨梁14と床デッキ26が平行方向の場合、梁3および柱は、外壁12との取り合い部を示している。
【0039】
図5のAに示すように、防湿フィルム18を外側に備えた耐火被覆材16の各端部を跨ぐように連続的に防湿テープ48を貼り付けた後、その上から発泡ウレタン52を施工する。防湿テープ48は防湿フィルム18と同じ材質で構成することができる。このようにすれば、防湿テープ48が、防湿対策を要する無機系の耐火被覆材16の端部の小口部分と、この無機系の耐火被覆材16の端部に近接するとともに防湿対策を要しない部分とに跨って連続的に設けられるので、防湿対策が必要な部分と他の部分との境界での耐火性能を確保することができる。なお、このAにおいて、発泡ウレタン52を省略すれば防湿性能を中グレード仕様にすることができる。また、
図5のBに示すように、防湿テープ48の施工を省略し、発泡ウレタン52のみで端部を処理すれば、防湿性能を低グレード仕様にすることができる。このように、要求グレードによって防湿性能(高・中・低)の使い分けが可能である。
【0040】
上記の構成によれば、結露対策(防湿)必要部分と他の部分との境界での耐火性能を確保した納まりを実現することができるので、防湿対策を必要な範囲に限定した施工が可能である。
【0041】
以上説明したように、本発明に係る耐火被覆構造によれば、壁体に近接して対向配置される鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて連続的に設けられる耐火被覆材を備える耐火被覆構造であって、耐火被覆材の外側から内側への水蒸気の透過を抑制するために耐火被覆材の外側に設けられるとともに透湿抵抗が耐火被覆材の透湿抵抗よりも高い防湿性の防湿フィルムをさらに備えるので、柱・梁の合成耐火構造における結露の発生を抑制することができる。
【0042】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造によれば、防湿フィルムは、防湿対策を要する無機系の耐火被覆材の端部の小口部分と、この無機系の耐火被覆材の端部に近接するとともに防湿対策を要しない部分とに跨って連続的に設けられるので、耐火性能を連続させたまま、防湿対策が必要な部分と他の部分とを区切ることができる。
【0043】
また、本発明に係る他の耐火被覆構造によれば、防湿フィルムは、ポリエステル系材料またはアルミニウム系材料を主材として含むフィルムまたはシートにより構成されるので、防湿性を確保するとともに施工コストを低減することができる。
【0044】
また、本発明に係る耐火被覆構造の施工方法によれば、上述した耐火被覆構造を施工する方法であって、シート状の無機系の耐火被覆材の外側に防湿フィルムを設けることによってシート状の耐火被覆材を製造した後、このシート状の耐火被覆材を鉄骨柱または鉄骨梁の外側から壁体の表面にかけて取り付けるので、柱・梁の合成耐火構造において、防湿対策が必要な部分と他の部分との境界での耐火性能を確保する構造を容易に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る耐火被覆構造およびその施工方法は、柱・梁の合成耐火構造における耐火被覆に有用であり、特に、合成耐火構造の内部における結露の発生を抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0046】
10 耐火被覆構造
12 外壁(壁体)
14 鉄骨梁
16 耐火被覆材
18 防湿フィルム
20 ウェブ
22 上フランジ
24 下フランジ
26 床デッキ
28 層間ふさぎ
30 断熱材
32 内装材
34 天井下地材
36 天井材
38 内部
40,44 端部
42 固定ピン
46 下地材
48 防湿テープ
50 鉄骨柱
52 発泡ウレタン
A 室内
B 室外