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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098320
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】フォークリフト用作業支援装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220624BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220624BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
G05D1/02 K
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211798
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安立 結香子
【テーマコード(参考)】
3F333
5C054
5H301
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333DA10
3F333DB10
3F333FD11
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC01
5C054FC03
5C054FC07
5C054FC12
5C054FC14
5C054FC15
5C054FD03
5C054FE12
5C054FE25
5C054HA30
5H301AA01
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】フォークリフトによる荷役作業の作業性を向上すること。
【解決手段】フォークリフト用作業支援装置42は、識別部58と、通知部59と、支援部61と、を備える。識別部58は、選択可能搬送物と、検出搬送物とを識別するように構成されている。通知部59は、選択可能搬送物をオペレータに通知する。支援部61は、フォークリフト20による選択可能搬送物の荷役作業の支援を行う。これにより、画像データに表される搬送物から選択可能搬送物を識別するという操作をフォークリフト用作業支援装置42が行うことにより、オペレータ自らが当該操作を行う必要がなくなる。したがって、オペレータが荷役作業の支援を行う搬送物を識別する際の煩わしさを軽減し、フォークリフト20による荷役の作業性を向上することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフト用作業支援装置であって、
取得部と、識別部と、通知部と、支援部と、を備え、
前記取得部は、フォークリフトに対する搬送物の位置を表すデータを取得し、
前記識別部は、前記データに基づいて選択可能搬送物と、検出搬送物と、を識別し、
前記選択可能搬送物は、前記データに表される前記搬送物のうち、前記フォークリフトのフォークに最も近い搬送物であり、
前記検出搬送物は、前記データに表される前記搬送物のうち、前記選択可能搬送物以外の搬送物であり、
前記通知部は、前記選択可能搬送物をオペレータに通知し、
前記支援部は、前記フォークリフトによる前記選択可能搬送物の荷役作業の支援を行う、フォークリフト用作業支援装置。
【請求項2】
前記データは、カメラの撮影した画像データであり、
前記画像データは、少なくとも1つの前記搬送物を含む、請求項1に記載のフォークリフト用作業支援装置。
【請求項3】
前記画像データを表示する表示部を備え、
前記通知部は、前記表示部を通じて、前記選択可能搬送物と、前記検出搬送物と、を区別可能に表示する、請求項2に記載のフォークリフト用作業支援装置。
【請求項4】
前記オペレータの操作によって前記支援部の動作を開始する開始部を備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のフォークリフト用作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト用作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトの荷役作業の支援を行うために、特許文献1のようなフォークリフト用作業支援装置が知られている。特許文献1に記載のフォークリフト用作業支援装置では、搬送物の1つをオペレータが選択することにより、選択された搬送物に対する荷役作業の支援が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-204353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のフォークリフト用作業支援装置では、オペレータは、選択肢に含まれる搬送物の中から荷役作業の支援を行う搬送物を自ら識別する必要がある。このような識別作業の煩わしさは、フォークリフトによる荷役作業の作業性の低下を招くおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するフォークリフト用作業支援装置は、フォークリフト用作業支援装置であって、取得部と、識別部と、通知部と、支援部と、を備え、前記取得部は、フォークリフトに対する搬送物の位置を表すデータを取得し、前記識別部は、前記データに基づいて選択可能搬送物と、検出搬送物と、を識別し、前記選択可能搬送物は、前記データに表される前記搬送物のうち、前記フォークリフトのフォークに最も近い搬送物であり、前記検出搬送物は、前記データに表される前記搬送物のうち、前記選択可能搬送物以外の搬送物であり、前記通知部は、前記選択可能搬送物をオペレータに通知し、前記支援部は、前記フォークリフトによる前記選択可能搬送物の荷役作業の支援を行う。
【0006】
これにより、フォークリフト用作業支援装置が、オペレータに代わって当該データから選択可能搬送物と検出搬送物とを識別する。そのため、荷役作業の支援を行う搬送物を識別する作業の煩わしさが軽減される。したがって、フォークリフトによる荷役作業の作業性を向上することができる。
【0007】
上記フォークリフト用作業支援装置では、前記データは、カメラの撮影した画像データであり、前記画像データは、少なくとも1つの前記搬送物を含むもの、であってもよい。
これにより、フォークリフト用作業支援装置は、カメラから取得した画像データに基づいて、選択可能搬送物と検出搬送物とを区別することが可能となる。カメラは、レーダー等の距離センサに比して構成が簡易であり、フォークリフトへの搭載が容易である。したがって、より適用しやすいフォークリフト用作業支援装置を提供することができる。
【0008】
上記フォークリフト用作業支援装置では、前記画像データを表示する表示部を備え、前記通知部は、前記表示部を通じて、前記選択可能搬送物と、前記検出搬送物と、を区別可能に表示する、ものであってもよい。
【0009】
これにより、オペレータは、表示部に表示された画像データを通じて選択可能搬送物と検出搬送物とを区別することができる。したがって、オペレータによる適切な選択可能搬送物か否かの判別を容易にすることができる。
【0010】
上記フォークリフト用作業支援装置では、前記オペレータの操作によって前記支援部の動作を開始する開始部を備える、ものであってもよい。
これにより、オペレータは、開始部を操作することで、任意のタイミングで荷役作業の支援を開始可能となる。したがって、よりオペレータにとって扱いやすい支援装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フォークリフトによる荷役作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フォークリフト用操作支援システムの全体側面図。
図2】運転室周辺の図。
図3】フォークリフト用操作支援装置のハードウェア構成図。
図4】フォークリフト用作業支援装置の動作の一例を表すフローチャート。
図5】表示部での表示方法の一例を示す図。
図6】荷役作業の支援の一例を説明するための図。
図7】荷役作業の支援の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<構成>
以下、フォークリフト用作業支援システムに適用されるフォークリフト用作業支援装置の一実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、フォークリフト用作業支援システム10は、棚11と、複数の荷12と、複数の搬送物13と、フォークリフト20を備える。
搬送物13は、荷12を積載するものである。本実施形態では、搬送物13は、二方向差し平パレットであり、パレット穴14を備える。荷12及び搬送物13は、それぞれ棚11に収容される。
【0015】
本実施形態のフォークリフト20は、リーチ式である。なお、フォークリフト20は、カウンタ式であってもよい。以下の説明において、前後左右とは、フォークリフト20の前後左右である。フォークリフト20の左右方向とは、フォークリフト20の車幅方向である。
【0016】
図1図2及び図3に示すように、フォークリフト20は、車体21と、一対のリーチレグ22と、前輪23aと、後輪23bと、荷役装置24と、運転室28と、ステアリングテーブル29と、操作部30と、駆動機構36と、荷役機構37と、カメラ40と、フォークリフト用作業支援装置42と、を備える。
【0017】
図1に示すように、一対のリーチレグ22は、車体21の前方に向けて延びている。また、各リーチレグ22は、左右方向に離れて設けられている。前輪23aは、各リーチレグ22に1つずつ設けられている。後輪23bは、車体21に設けられている。後輪23bは、操舵輪である。また、後輪23bは、駆動輪である。
【0018】
荷役装置24は、車体21の前方に設けられている。荷役装置24は、マスト25と、リフトブラケット26と、一対のフォーク27と、を備える。マスト25は、リーチレグ22に対して起立している。リフトブラケット26は、マスト25に取り付けられている。フォーク27は、荷12及び搬送物13が積載される荷役具であり、リフトブラケット26に取り付けられている。フォーク27は、先端27aを備える。先端27aは、フォーク27の最前部に位置する。
【0019】
フォークリフト20は、搬送物13の荷役を行う。フォークリフト20は、作業場に配置される。フォークリフト20は、作業場において棚11から離れた場所に位置している。この状態から、オペレータは、フォークリフト20を棚11に収容された搬送物13に近づけてパレット穴14にフォーク27を差し込む動作を行わせる。このように、フォークリフト20は、搬送物13の荷取りを行うことができる。
【0020】
図1及び図2に示すように、運転室28は、車体21の後部に設けられている。ステアリングテーブル29は、運転室28よりも前方に位置する。
操作部30は、オペレータがフォークリフト20の走行操作又は荷役操作を行うコントローラである。操作部30は、運転室28の前方に設けられている。操作部30は、ディレクションレバー31と、複数の荷役レバー32と、ブレーキペダル34と、を備える。ディレクションレバー31は、フォークリフト20の走行操作を行うためのレバーである。荷役レバー32は、荷役装置24を動作させるレバーである。ディレクションレバー31及び複数の荷役レバー32は、ステアリングテーブル29に設けられている。ブレーキペダル34は、運転室28の前部の床面に配置されている。
【0021】
図3に示すように、駆動機構36は、フォークリフト20に走行動作を行わせる機構である。駆動機構36は、後輪23bを回転させる駆動源、及びフォークリフト20の操舵を行う操舵機構などを含む。フォークリフト20は、駆動機構36を制御することにより、その場旋回可能に構成されている。図1図6及び図7に示すように、その場旋回時のフォークリフト20の旋回中心Pは、2つの前輪23aの間である。また、フォークリフト20は、駆動機構36を制御することにより、左右方向へ平行移動可能に構成されている。
【0022】
図3に示すように、荷役機構37は、フォークリフト20に荷役動作を行わせる機構である。荷役機構37は、マスト25を動作させる油圧シリンダに作動油を供給する荷役ポンプ、荷役ポンプを駆動させる駆動源、作動油の流通を制御するバルブなどを含む。荷役機構37は、マスト25をリーチレグ22に沿って前後移動させるリーチ動作、マスト25を傾動させるティルト動作、マスト25を昇降させるリフト動作を荷役装置24に行わせることができる。荷役動作とは、リーチ動作、ティルト動作、リフト動作のうち、少なくともいずれか1つを含む動作である。
【0023】
図1に示すように、カメラ40は、RGBカメラである。カメラ40は、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子を備える。カメラ40は、フォーク27の前方を撮影可能に配置されている。具体的には、カメラ40は、リフトブラケット26の前下部であって、一対のフォーク27の間に配置されている。
【0024】
図3に示すように、フォークリフト用作業支援装置42は、開始部35と、表示部41と、制御装置50と、を備える。開始部35は、オペレータの操作によりON/OFF可能に構成されている。開始部35の形態は、レバー、ボタンなど、任意である。図2に示すように、本実施形態では、開始部35は、操作部30に、詳細には、ディレクションレバー31の先端に設けられているボタンである。
【0025】
図2に示すように、表示部41は、カメラ40の撮影した画像データを表示するディスプレイである。表示部41は、オペレータが視認可能な位置に配置されている。具体的には、表示部41は、運転室28の前方に配置されている。
【0026】
図3に示すように、制御装置50は、プロセッサ51と、記憶部52と、を備える。プロセッサ51としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部52は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部52は、処理をプロセッサ51に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部52、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置50は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置50は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ51、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0027】
制御装置50は、画像取得部53と、第1導出部54と、第2導出部55と、抽出部56と、距離導出部57と、識別部58と、通知部59と、判定部60と、支援部61と、を備える。画像取得部53、第1導出部54、第2導出部55、抽出部56、距離導出部57、識別部58、通知部59、判定部60、及び支援部61は、それぞれ制御装置50の機能部である。制御装置50が以下の処理を繰り返し行うことにより、フォークリフト用作業支援装置42はフォークリフト20の荷役作業の支援を行う。
【0028】
<作用>
以下、本実施形態の作用について、制御装置50の各機能部53~61と併せて説明する。
【0029】
図3及び図4に示すように、ステップS10において、画像取得部53は、カメラ40の撮影した画像データを取得する。画像データは、少なくとも1つの搬送物13を含む。詳細には、画像データは、少なくとも1つの搬送物13の特徴点を含む。なお、特徴点とは、搬送物13のエッジなど、境目として認識可能な部分である。特徴点は、輝度情報などから検知することができる。
【0030】
次に、ステップS11に進み、第1導出部54は、画像データからカメラ座標系での各特徴点の座標を導出する。カメラ座標系は、カメラ40を原点とする座標系である。以下の説明では、カメラ座標系での座標をカメラ座標と称することがある。カメラ座標の導出方法は、任意に選択できる。例えば、第1導出部54は、画像データに対して深度推定を行うことにより、フォークリフト20に対する各特徴点の距離を推定する。第1導出部54は、推定した各特徴点の距離及び各特徴点の画像データ上の座標に基づき、各特徴点のカメラ座標を導出してもよい。画像データ上の座標とは、例えば、ピクセル座標である。深度推定には、例えば、SfMや深層学習を用いたものが挙げられる。深度推定に用いられる深層学習の方法は任意であるが、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN,Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN,Recurrent Neural Network)、変分オートエンコーダ(VAE,Variational Auto-encoder)、又は敵対的生成ネットワーク(GAN,Generative Adversarial Network)などが挙げられる。
【0031】
また、第1導出部54は、第1時刻t1と第2時刻t2の間のカメラ40の位置及び姿勢の変化から、各特徴点のカメラ座標を導出してもよい。なお、第1時刻t1と第2時刻t2は、それぞれ異なる時刻である。この場合、フォークリフト20は、カメラ40の位置及び姿勢を検出するセンサを備える。第1導出部54は、センサの取得結果から、両時刻t1,t2の間のカメラ40の位置及び姿勢の変化を導出する。また、第1導出部54は、第1時刻t1の画像データ及び第2時刻t2の画像データからそれぞれの特徴点のマッチングを行い、対応する特徴点の画像データ上の座標の変化を導出する。第1導出部54は、上述したカメラ40の位置及び姿勢の変化、及び対応する特徴点の画像データ上の座標の変化に基づいて、三角測量により、各特徴点のカメラ座標を導出する。すなわち、第1導出部54は、第1時刻t1でのカメラ40と第2時刻t2でのカメラ40とを1つのステレオカメラとみなして各特徴点のカメラ座標を導出する。
【0032】
次に、ステップS12に進み、第2導出部55は、実空間上の座標系であるワールド座標系における各特徴点の座標を導出する。以下の説明では、ワールド座標系における座標をワールド座標と称することがある。ワールド座標系は、フォークリフト20が水平面に位置している状態で水平方向のうちフォークリフト20の車幅方向に延びる軸をX軸、水平方向のうちX軸に直交する軸をY軸、鉛直方向に延びる軸をZ軸とする座標系である。図1図6、及び図7には、X軸、Y軸及びZ軸を矢印X,Y,Zで図示している。ワールド座標系の原点は、フォークリフト20に対する相対位置が一定である任意の点を用いることができる。本実施形態では、ワールド座標系の原点として、旋回中心Pを用いる。なお、本実施形態では、フォークリフト20の位置は、ワールド座標系の原点と同じであるとみなす。各特徴点のワールド座標は、各特徴点のカメラ座標を変換することで導出することができる。
【0033】
次に、ステップS13に進み、抽出部56は、例えば、特徴点をクラスタ化することで搬送物13の抽出を行う。抽出部56は、搬送物13の一部を表す点である特徴点のうち同一の搬送物13を表していると想定される特徴点の集合を1つの点群とし、当該点群を搬送物13として抽出する。抽出部56は、ステップS12で導出された特徴点のワールド座標から、所定範囲内に位置する特徴点を1つの点群とみなすクラスタ化を行う。抽出部56は、クラスタ化された点群を1つの搬送物13とみなし、当該搬送物13のワールド座標を抽出する。搬送物13のワールド座標には、クラスタ化された点群のうちの任意の点を用いてもよいし、クラスタ化された点群の重心座標を用いてもよい。なお、ステップS13で行われる特徴点のクラスタ化は、種々の方法で行うことができる。また、抽出部56は、搬送物13として抽出された点群から、各パレット穴14の抽出、クラスタ化を行い、クラスタ化された点群を1つのパレット穴14とみなしてもよい。
【0034】
搬送物13のワールド座標は、フォークリフト20に対する搬送物13の位置を表す。したがって、フォークリフト用作業支援装置42は、取得部を備え、取得部は、フォークリフト20に対する搬送物13の位置を表すデータとしての画像データを取得するものといえる。本実施形態では、取得部は、画像取得部53と、第1導出部54と、第2導出部55と、抽出部56と、を備える。
【0035】
また、抽出部56は、搬送物13のワールド座標を画像データ上の座標に変換する。これにより、抽出部56は、画像データ上の搬送物13の位置を特定する。なお、ワールド座標から画像データ上の座標への変換は、ワールド座標をカメラ座標に変換した後、カメラ座標を画像データ上の座標に変換することにより行われてもよい。
【0036】
次に、ステップS14に進み、距離導出部57は、クラスタ化された点群の座標に基づき、フォークリフト20と画像データに表される各搬送物13との間の距離を導出する。距離としては、マンハッタン距離、ユークリッド距離、及びチェビシェフ距離など、任意の距離を用いることができる。距離導出部57は、搬送物13のワールド座標と原点(旋回中心P)との間の距離を導出することで、搬送物13とフォークリフト20との間の距離を導出することができる。また、第1導出部54が深度推定を行っている場合、クラスタ化された点群の深度から、フォークリフト20と搬送物13との間の距離を導出してもよい。
【0037】
次にステップS15に進み、識別部58は、画像データに基づき選択可能搬送物62と、検出搬送物63と、を識別する。なお、選択可能搬送物62は、画像データに表される搬送物13のうち、フォークリフト20のフォーク27に最も近い搬送物13である。検出搬送物63は、画像データに表される搬送物13のうち、選択可能搬送物62以外の搬送物13である。識別部58は、距離導出部57が導出した各搬送物13とフォークリフト20との間の距離に基づき、各距離を互いに比較する。識別部58は、比較結果に基づき、最も距離が短い搬送物13を選択可能搬送物62であると識別し、選択可能搬送物62以外の搬送物を検出搬送物63と識別する。
【0038】
次にステップS16に進み、通知部59は、選択可能搬送物62をオペレータに通知する。通知方法は、任意であるが、例えば、音や光などによる通知が挙げられる。図3及び図5に示すように、本実施形態では、通知部59は、表示部41を通じて、選択可能搬送物62と、検出搬送物63と、を区別可能に表示する。具体的には、通知部59は、カメラ40で撮影した画像データを表示部41に表示する。このとき、通知部59は、画像データに表される搬送物13の位置に基づき、表示部41に表示された画像データ内で、選択可能搬送物62と検出搬送物63とをそれぞれ異なる閉じた境界線W1,W2で囲う。選択可能搬送物62を囲う境界線W1の線の種類、色、太さなどは、検出搬送物63を囲う境界線W2のものと異なる。これにより、オペレータは、選択可能搬送物62と検出搬送物63とを容易に区別することができる。通知部59は、所定の更新時間の経過後に、表示部41の表示内容を更新する。
【0039】
図3及び図4に示すように、次にステップS17に進み、判定部60は、表示部41への画像データの表示が完了した後、一定の待ち時間の経過時点で開始部35がONかOFFかを判定する。開始部35がONの場合(YESの場合)、ステップS18に進み、開始部35がOFFの場合(NOの場合)、ステップS10に戻る。
【0040】
ステップS18において、支援部61は、フォークリフト20による選択可能搬送物62の荷役作業の支援を行う。したがって、開始部35は、オペレータの操作によって支援部61の動作を開始するものである。
【0041】
例えば、支援部61は、フォークリフト20と選択可能搬送物62とが正対状態となるまでの理想的な走行軌跡を表示部41に表示してもよい。なお、正対状態とは、フォークリフト20と搬送物13とが互いに正面で向かい合っている状態、言い換えれば、フォークリフト20の前後方向とパレット穴14の延びる方向とが一致している状態である。
【0042】
また、支援部61は、自動運転により、選択可能搬送物62が原点(旋回中心P)と所定距離Dとなる位置までフォークリフト20を案内してもよい。なお、所定距離Dは任意に設定可能であるが、旋回中心Pからフォーク27の先端27aまでのXY平面における距離Rより大きいことが好ましい。これにより、フォークリフト20と選択可能搬送物62との位置関係を調整する際、フォークリフト20がその場旋回するためのスペースを確保することができる。
【0043】
また、図6に示すように、支援部61は、駆動機構36を制御することにより、正対状態からの角度ずれ量Δθが所定の許容誤差以内に含まれるように支援を行ってもよい。角度ずれ量Δθは、フォークリフト20の前後方向とパレット穴14の延びる方向とのなす角度である。角度ずれ量Δθは、選択可能搬送物62として抽出された点群から導出することができる。支援部61は、例えば、フォークリフト20をその場旋回させることにより、角度ずれ量Δθが最小となるフォークリフト20の向きを探索することができる。また、本実施形態では、フォークリフト20の前後方向は、Y方向と一致している。そのため、支援部61は、フォークリフト20を旋回させ、選択可能搬送物62のワールド座標系のY座標が最小となるフォークリフト20の向きを探索することで、角度ずれ量Δθを所定の許容誤差以内に含めるようにしてもよい。
【0044】
また、図7に示すように、支援部61は、駆動機構36を制御することにより、フォーク27の搬送物13に対する横ずれ量ΔLを所定の許容誤差以内に減らすよう支援を行ってもよい。横ずれ量ΔLとは、正対状態における一対のフォーク27の幅方向の中心と2つのパレット穴14の中心とのフォーク27の幅方向のずれである。本実施形態では、横ずれ量ΔLは、正対状態における2つのパレット穴14の間同士の中心位置のワールド座標系のX座標に相当する。なお、各パレット穴14のワールド座標は、クラスタ化された各パレット穴14の点群の位置関係から導出することができる。また、各パレット穴14のワールド座標は、搬送物13のワールド座標、及び予め記憶された搬送物13におけるパレット穴14の位置に基づき導出することもできる。支援部61は、フォークリフト20をX方向(左右方向)に平行走行させつつ、2つのパレット穴14の中点のワールド座標のX座標を導出する。支援部61は、当該X座標が所定の閾値以下となったときに平行走行を停止することで、横ずれ量ΔLを所定の許容誤差以内に含めることができる。
【0045】
また、図1に示すように、支援部61は、荷役機構37を制御することにより、フォーク27と選択可能搬送物62のパレット穴14との高さずれ量ΔHが所定の許容誤差以内に含まれるように支援を行ってもよい。なお、高さずれ量ΔHとは、フォーク27の高さ位置とパレット穴14の高さ位置との差である。高さ位置とは、鉛直方向における路面からの距離であり、本実施形態ではワールド座標系におけるZ座標に相当する。フォーク27の高さ位置は、予め記憶されているフォーク27の最低の高さ位置と荷役機構37の動作量から導出することができる。また、フォーク27の少なくとも一部が画像データに含まれる場合には、フォーク27の高さ位置は、画像データからフォーク27のカメラ座標及びフォーク27のワールド座標、すなわち、高さ位置を導出することもできる。高さずれ量ΔHは、抽出部56が抽出したパレット穴14のワールド座標及びフォーク27のワールド座標から導出することができる。
【0046】
また、支援部61は、角度ずれ量Δθ、横ずれ量ΔL及び高さずれ量ΔHがそれぞれ所定の許容誤差の範囲内に含まれるとき、駆動機構36及び荷役機構37を制御することにより、フォーク27のパレット穴14への差し込み及び選択可能搬送物62の荷取りを行ってもよい。なお、上述した支援部61の動作は、例示に過ぎず、これに限らない。
【0047】
<効果>
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)識別部58は、選択可能搬送物62と、検出搬送物63とを識別するように構成されている。これにより、画像データに表される搬送物13から選択可能搬送物62を識別するという操作をフォークリフト用作業支援装置42が行うことにより、オペレータ自らが当該操作を行う必要がなくなる。したがって、荷役作業の支援を行う搬送物13を識別する煩わしさが軽減され、フォークリフト20による荷役作業の作業性を向上することができる。
【0048】
(2)取得部の取得するデータは、カメラ40の撮影した画像データである。これにより、フォークリフト用作業支援装置42を適用するに際し、カメラ40とは別にミリ波レーダー等の距離センサを設けなくてもよい。したがって、より導入しやすいフォークリフト用作業支援装置42を提供することができる。
【0049】
(3)表示部41は、選択可能搬送物62と検出搬送物63とを区別可能に表示している。これにより、表示部41を介して、オペレータが選択可能搬送物62と検出搬送物63とを視覚的に判別することが可能となる。したがって、搬送予定の搬送物13と選択可能搬送物62との一致性を確認することが容易となり、オペレータの作業負担を軽減することができる。
【0050】
(4)フォークリフト用作業支援装置42は、オペレータの操作によって支援部61の動作を開始する開始部35を備える。これにより、オペレータが開始部35を操作することで、オペレータの意思を反映した上で荷役作業の支援を開始することが可能となる。したがって、オペレータにとってより扱いやすいフォークリフト用作業支援装置42を提供することができる。
【0051】
(5)開始部35は、操作部30、より詳細には、ディレクションレバー31の先端に設けられている。これにより、オペレータは、操作部30の操作と並行して開始部35の操作を行うことが可能となる。したがって、フォークリフト用作業支援装置42によって、オペレータは、走行操作等を中断することなく荷役作業の支援を開始することができる。
【0052】
<変形例>
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
○開始部35の位置は、オペレータが操作可能であれば任意である。例えば、開始部35は、いずれかの荷役レバー32に設けられていてもよいし、ブレーキペダル34と同様に運転室28の前部の床面に配置されていてもよい。
【0054】
○フォークリフト用作業支援装置42は、オペレータの操作によって支援部61の動作を開始する開始部35を備えていなくてもよい。例えば、フォークリフト用作業支援装置42は、選択可能搬送物62との距離が一定距離未満となった場合に、支援部61の動作を開始してもよい。また、フォークリフト用作業支援装置42は、一定時間、選択可能搬送物62が変更されない場合に、支援部61の動作を開始してもよい。
【0055】
○表示部41を通じた通知部59の通知方法は、選択可能搬送物62と検出搬送物63とを区別することができれば任意である。例えば、選択可能搬送物62及び検出搬送物63に対し、それぞれ異なるマークを表示することにより、選択可能搬送物62と検出搬送物63とを区別可能に構成してもよい。
【0056】
○通知部59は、表示部41を通じて、選択可能搬送物62をオペレータに通知しなくてもよい。例えば、通知部59は、選択可能搬送物62にフォークリフト20の照明の光を照射することにより、オペレータに選択可能搬送物62を通知してもよい。表示部41は、設けられていなくてもよい。
【0057】
○フォークリフト用作業支援装置42の取得部が取得するデータは、画像データに限られない。例えば、ToF(Time of Flight)カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、ミリ波レーダー又はステレオカメラが設けられている場合、取得部は、フォークリフト20に対する搬送物13の位置を表すデータとして、ワールド座標系における3次元座標を取得してもよい。ToFカメラ、LIDAR、ミリ波レーダー又はステレオカメラは、ワールド座標系における3次元座標を計測することができる装置である。
【0058】
○制御装置50のステップS10~S18での処理は、あくまで一例であり、これに限られない。すなわち、制御装置50の各機能部53~61は、そのすべてが必須の構成要件とは限らない。例えば、上述のようにLIDAR又はミリ波レーダー等が設けられている場合、フォークリフト用作業支援装置42の取得部は、フォークリフト20に対する搬送物13の距離をワールド座標系における3次元座標から取得することができる。そのため、取得部は、深度推定等を用いて距離を間接的に導出する第1導出部54及びカメラ座標からワールド座標を導出する第2導出部55を備えていなくてもよい。
【0059】
○フォークリフト用作業支援装置42は、搬送物13にARマーカーが設けられている場合、画像データに含まれるARマーカーのカメラ座標から搬送物13のカメラ座標を導出してもよい。このとき、フォークリフト用作業支援装置42は、ARマーカーの座標を搬送物13のカメラ座標とみなしてもよいし、ARマーカーのカメラ座標から各特徴点のカメラ座標を導出してもよい。
【0060】
○フォークリフト用作業支援装置42は、画像データ中の搬送物13の写り方から搬送物13のカメラ座標及び傾きを導出してもよい。カメラ40と搬送物13との間の相対位置と搬送物13の写り方には相関があるため、フォークリフト用作業支援装置42は、この相関を用いて搬送物13のカメラ座標及び傾きを導出するようにしてもよい。
【0061】
○フォークリフト用作業支援装置42の各機能部は、単一のデバイスによって実現される必要はなく、それぞれ異なるデバイスによって実現されてもよい。
○フォークリフト用作業支援装置42を構成するすべての部材がフォークリフト20に設けられている必要はない。例えば、制御装置50は、フォークリフト20と通信可能に構成されたサーバに設けられていてもよい。このとき、フォークリフト20は、サーバと通信するための通信部を備える。通信部は、カメラ40の画像データをサーバに設けられた制御装置50に送信する。サーバに設けられた制御装置50は、ステップS10~S18の処理を行う。荷役作業の支援を行うに際し、支援部61は、駆動機構36及び荷役機構37を制御指令、例えば、フォークリフト20の走行速度や操舵角など、をフォークリフト20の送受信部に送信する。フォークリフト20の通信部は、制御装置50が送信した制御指令を受信する。フォークリフト20は、当該制御指令に基づき、フォークリフト20の制御及び荷役作業の支援を行う。
【0062】
別例として、フォークリフト20が遠隔操作可能に構成されている場合について説明する。フォークリフト20は、遠隔操作用のコントローラを操作することにより、操作部30を操作するときと同様にフォークリフト20を制御することができる。このとき、オペレータは、作業場と異なる操作室からコントローラを用いてフォークリフト20を操作することが可能である。この場合、開始部35をフォークリフト20に設けられた操作部30ではなく、コントローラに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
13…搬送物、20…フォークリフト、35…開始部、41…表示部、42…フォークリフト用作業支援装置、53…画像取得部、54…第1導出部、55…第2導出部、56…抽出部、58…識別部、59…通知部、61…支援部、62…選択可能搬送物、63…検出搬送物、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7