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2022-98332貯留用バッグの製造方法および貯留用バッグの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098332
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】貯留用バッグの製造方法および貯留用バッグの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B31B 70/84 20170101AFI20220624BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B31B70/84
B29C65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211816
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】香西 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川上 舟
(72)【発明者】
【氏名】折原 正直
【テーマコード(参考)】
3E075
4F211
【Fターム(参考)】
3E075AA07
3E075BA42
3E075CA01
3E075DA32
3E075DD13
3E075DD34
3E075DD38
3E075DD49
3E075DE03
3E075GA04
4F211AH54
4F211AR06
4F211TA01
4F211TC15
4F211TD11
4F211TN04
4F211TN07
4F211TW15
(57)【要約】
【課題】溶融バリの発生を防止して貯留用バッグを製造する方法および貯留用バッグの製造装置を提供する。
【解決手段】貯留用バッグの製造方法は、バッグ形成工程(S1)と、ポート挿入工程(S2)と、第1加熱工程(S3)と、第1冷却工程(S4)と、第2加熱工程(S5)と、第2冷却工程(S6)とを含む。第1冷却工程(S4)では、第1加熱工程(S3)と第2加熱工程(S5)との間において、少なくとも、ポート部における、第1加熱工程(S3)にて溶着されたシール部に近い側の端部を冷却する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留物を貯留する貯留部を有するバッグ本体と、前記貯留部内の前記貯留物を外部へ吐出するポート部と、を有する貯留用バッグの製造方法であって、
重ねられた樹脂シートの周縁部の一部をシールすることにより、前記樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域および開口部を有する前記バッグ本体を形成するバッグ形成工程と、
前記溶着領域によって画定される前記開口部に前記ポート部を挿入する挿入工程と、
前記開口部の内部に挿入された前記ポート部から離間した位置における前記開口部の前記樹脂シートを、加熱型を用いて溶着する第1加熱工程と、
少なくとも、前記ポート部における、前記第1加熱工程にて溶着された前記樹脂シートに近い側の縁部を冷却する第1冷却工程と、
前記開口部の内部に挿入された前記ポート部の一部である被溶着部、および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを、加熱型を用いて加熱することにより前記被溶着部を前記樹脂シートに溶着する第2加熱工程と、
を含む貯留用バッグの製造方法。
【請求項2】
前記第1冷却工程において、前記被溶着部、および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを冷却することを特徴とする請求項1に記載の貯留用バッグの製造方法。
【請求項3】
前記第1冷却工程において冷却金型を用いて前記被溶着部を冷却し、
前記冷却金型は、前記第1加熱工程において用いられる加熱金型よりも、前記被溶着部との間の隙間が低減されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の貯留用バッグの製造方法。
【請求項4】
前記第1冷却工程では、前記冷却金型を0℃以上40℃以下に保持した状態で冷却を行うことを特徴とする請求項3に記載の貯留用バッグの製造方法。
【請求項5】
前記第2加熱工程の後に、前記被溶着部および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを冷却する第2冷却工程を更に含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の貯留用バッグの製造方法。
【請求項6】
貯留物を貯留する貯留部を有するバッグ本体と、前記バッグ本体に溶着され、前記貯留部内の前記貯留物を外部へ吐出するポート部と、を有する貯留用バッグの製造装置であって、
前記バッグ本体は重ねられた樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域および開口部を有しており、前記開口部の内部に挿入された前記ポート部から離間した位置における前記開口部の前記樹脂シートを溶着することによりシールする第1の加熱型を有する第1加熱部と、
前記開口部の内部に挿入された前記ポート部の一部である被溶着部の外形形状に対応した冷却型を有し、少なくとも、前記ポート部における、前記第1加熱部にて溶着された前記樹脂シートに近い側の縁部を冷却する冷却部と、
前記被溶着部、および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを加熱することにより、前記被溶着部を前記樹脂シートに溶着する第2の加熱型を有する第2加熱部と、
を備えている貯留用バッグの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留物を貯留する貯留用バッグの製造方法および貯留用バッグの製造装置に関し、より詳細には、医療薬液等の貯留物を外部へ吐出するポート部を有する貯留用バッグの製造方法および貯留用バッグの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療薬液等の貯留物を貯留するための貯留用バッグが知られている。例えば、貯留用バッグは、貯留物を貯留するバッグ本体と、バッグ本体に溶着されたポート部とを備え、上記バッグ本体は、例えば樹脂シートによって形成され、上記ポート部は、加熱用の金型を用いて上記バッグ本体に溶着される(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-245490号公報
【特許文献2】実開平1-144037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、金型を用いて2段階の熱プレスを行う溶着方法が記載されている。具体的には、特許文献1記載の溶着方法では、先ず、1段階目の熱プレスによってバッグ本体におけるポート部近傍の樹脂シートを溶着し、当該熱プレスの際、ポート部およびポート部周縁に近接する樹脂シートが予熱される。その後、早急に2段階目の熱プレスを行うことによってポート部をバッグ本体に効率的に溶着させる。
【0005】
ところで、バッグ本体に溶着されるポート部としては、様々な形状のものがある。例えば特許文献2に記載されているような、ポート部におけるバッグ本体と溶着される部分が舟形の形状であるポート部が知られている。例えば舟形の形状のポート部を2段階の熱プレスによりバッグ本体に溶着させる場合、以下のような問題が生じ得る。すなわち、当該ポート部を形成する樹脂の一部が過剰に溶融されることがあり、この場合、溶融した樹脂が金型からの圧力を受けてポート部とバッグ本体との溶着部分から外部に突出するように染み出す(はみ出す)ことがある。以下、上記溶着部分から外部に染み出した樹脂が冷却されて固化した部分を溶融バリと称することがある。
【0006】
上記溶融バリは貯留用バッグの強度および安全性等の性能を低下させることから、貯留用バッグとしては、上記のような溶融バリが発生することを回避することが求められる。
【0007】
本発明の一態様は、上記のような問題点に鑑み、溶融バリの発生を防止して貯留用バッグを製造する方法および貯留用バッグの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様における貯留用バッグの製造方法は、貯留物を貯留する貯留部を有するバッグ本体と、前記貯留部内の前記貯留物を外部へ吐出するポート部と、を有する貯留用バッグの製造方法であって、重ねられた樹脂シートの周縁部の一部をシールすることにより、前記樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域および開口部を有する前記バッグ本体を形成するバッグ形成工程と、前記溶着領域によって画定される前記開口部に前記ポート部を挿入する挿入工程と、前記開口部の内部に挿入された前記ポート部から離間した位置における前記開口部の前記樹脂シートを、加熱型を用いて溶着する第1加熱工程と、少なくとも、前記ポート部における、前記第1加熱工程にて溶着された前記樹脂シートに近い側の縁部を冷却する第1冷却工程と、前記開口部の内部に挿入された前記ポート部の一部である被溶着部、および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを、加熱型を用いて加熱することにより前記被溶着部を前記樹脂シートに溶着する第2加熱工程と、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様における貯留用バッグの製造装置は、貯留物を貯留する貯留部を有するバッグ本体と、前記バッグ本体に溶着され、前記貯留部内の前記貯留物を外部へ吐出するポート部と、を有する貯留用バッグの製造装置であって、前記バッグ本体は重ねられた樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域および開口部を有しており、前記開口部の内部に挿入された前記ポート部から離間した位置における前記開口部の前記樹脂シートを溶着することによりシールする第1の加熱型を有する第1加熱部と、前記開口部の内部に挿入された前記ポート部の一部である被溶着部の外形形状に対応した冷却型を有し、少なくとも、前記ポート部における、前記第1加熱部にて溶着された前記樹脂シートに近い側の縁部を冷却する冷却部と、前記被溶着部、および前記被溶着部の周縁の前記樹脂シートを加熱することにより、前記被溶着部を前記樹脂シートに溶着する第2の加熱型を有する第2加熱部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ポート部における溶融バリの発生し易い部分を冷却した後にポート部における被溶着部を樹脂シートに溶着する。これにより、溶融バリの発生を防止して貯留用バッグを製造する方法および貯留用バッグの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造方法にて製造される貯留用バッグの外観を示す平面図である。
図2図1に示すA-A線矢視断面図である。
図3】本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造装置の構成を示す概略図である。
図4図3に示す製造装置の要部について説明するための概略図である。
図5】本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造方法の一例の概要を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造方法にて製造される貯留用バッグの被溶着部の周辺を示す拡大図である。
図7】第1冷却工程における冷却時間を0秒から5秒に変化させて第1加熱工程から第2冷却工程までの処理を行った複数の試験品のそれぞれについて、経時的な温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本出願における各図面に記載した構成の形状および寸法(長さ、幅等)は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
【0013】
本実施形態では、3つのポート部を有する、例えば医療薬液等の貯留物を貯留する貯留用バッグを例示して、貯留用バッグの製造方法等について説明する。なお、本発明の一態様における貯留用バッグの製造方法によって製造される貯留用バッグはこれに限定されない。本発明の一態様における貯留用バッグの製造方法は、各種の貯留用バッグに適用可能であり、例えば、1つのポートを有する貯留用バッグ(例えば輸液用バッグ)、または、2つ以上のポートを有する貯留用バッグに適用することができる。
【0014】
以下の説明においては、先ず、図1図5を参照して、貯留用バッグおよび貯留用バッグの製造装置について説明する。その後、本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造方法(以下、単に本製造方法と称することがある)について説明する。
【0015】
(貯留用バッグ)
図1は、本実施形態における貯留用バッグの製造方法にて製造される貯留用バッグ1の外観を示す平面図である。図1に示すように、貯留用バッグ1は、貯留部2を有するバッグ本体12と、3つのポート部3と、を備えている。この貯留用バッグ1は、1回の使用(単回使用)後に廃棄されるような態様にて使用される単回使用製品(いわゆるシングルユースバッグ)であってよく、或いは、複数回使用できる製品であってもよい。
【0016】
ここで、本発明の一実施形態における貯留用バッグの製造方法についての理解を容易にするために、本発明の特徴点について以下に概略的に説明する。
【0017】
本実施形態における貯留用バッグ1は、例えば医療用のバッグとして用いられる。このような貯留用バッグ1は、製品として所望の性能を有することが求められる。具体的には、貯留用バッグ1は、例えば、貯留部2内に貯留される貯留物(典型的には液体)とは異なる異物が当該貯留物に混入することによる当該貯留物の汚染を適切に防止できる性能を有することが求められる。また、医療用のバッグとしては、貯留物を視認できるように、バッグ本体12が透明または半透明な材質にて形成されていることが求められる。その上、貯留用バッグ1は、下記のような性能も求められる。すなわち、貯留用バッグ1におけるバッグ本体12は柔軟な樹脂シートにより構成され、ポート部3は貯留部2の外部に貯留物を吐出するための内部空間を有し、樹脂等の硬質な材料から構成される。貯留用バッグ1は、貯留物の漏れが生じないように、ポート部3が樹脂シートに強固に接着されて、貯留部2内が少なくとも液密に封止されていることを要する。
【0018】
前述のように、例えば金型を用いて2段階の熱プレスを行うことにより、ポート部3を樹脂シートに強固に接着させることができる。しかし、ポート部3の形状によっては、ポート部3における樹脂シートと溶着される部分(以下、被溶着部と称することがある)の一部が、熱の逃げ難い構造となり得る。そのため、被溶着部の一部が他の部分よりも溶融し易くなる。また、被溶着部の一部に隣接する樹脂シートが被溶着部の他の部分に隣接する樹脂シートよりも溶融し易くなる。その結果、溶融した被溶着部の一部或いは溶融した樹脂シートが貯留部2内に染み出して硬化することにより溶融バリを形成することがある。
【0019】
上記溶融バリが発生した貯留用バッグでは、当該貯留用バッグの使用時に外力がかかる等の要因によって、上記溶融バリが樹脂シートを破断させるおそれがある。また、貯留用バッグの使用時にバッグ本体の内圧が上昇した場合、上記溶融バリが脱落して貯留物中に混入するおそれがある。
【0020】
本発明者らは、鋭意検討を行い、2段階の熱プレスを行う方法において、ポート部3に対して適切に冷却を行う工程を追加することによって、ポート部3をバッグ本体12に強固に接着させつつ溶融バリの発生を適切に防止できることを見出した。また、本実施形態における貯留用バッグの製造方法では、貯留用バッグ1を製造するタクトタイム(製造工程の実行時間)の増加を抑制しつつ上記効果を奏し得る。
【0021】
(バッグ本体)
本実施形態の貯留用バッグ1におけるバッグ本体12は、例えば長方形であり、柔軟性を有する樹脂シートから形成される。バッグ本体12は、溶着領域20と、4つのシール部21と、孔部22と、を有している。4つのシール部21における隣り合う2つのシール部21の組み合わせからなる3つの組のそれぞれにおいて、隣り合う2つのシール部21の間に1つのポート部3が挿入されており、当該ポート部3は樹脂シートに溶着されている。本実施形態の貯留用バッグ1では、長方形のバッグ本体12における一方の短辺の周辺に4つのシール部21および3つのポート部3が位置しており、他方の短辺の周辺に孔部22が位置している。溶着領域20は、重ねた2枚の樹脂シートを互いに溶着して形成された帯状の領域であり、シール部21およびポート部3が位置する部分を除いて貯留部2の外周縁を囲うように位置している。孔部22は、例えば貯留用バッグ1をフック等の保持具によって吊り下げて保持するために使用可能な、矩形状の貫通孔である。
【0022】
バッグ本体12における貯留部2には、貯留物として、例えば、医療薬液、輸液剤、細胞培養液、培地、栄養液等の液体が貯留される。貯留部2は、平面視において大きさが同等の長方形の樹脂シートを重ねた後、重ねられた樹脂シートの外周縁を溶着することにより形成される。
【0023】
バッグ本体12を構成する樹脂シートは、例えば複数枚の同種の樹脂フィルムを積層した多層フィルムであってよく、または複数種類の樹脂フィルムを積層した多層フィルムであってもよい。上記樹脂シートは、例えば、3層の樹脂フィルムを積層した多層フィルムである。なお、上記樹脂シートは、単層フィルムであってもよい。
【0024】
上記樹脂シートを構成する上記樹脂フィルムの材質としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系の樹脂、または、エチレンビニルアルコール(EVOH)等が挙げられる。上記樹脂シートは、バッグ本体12のガスバリア性を確保する観点からEVOHのフィルムを含むことが好ましい。また、上記樹脂フィルムの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂等を用いてもよい。
【0025】
樹脂シートの溶着方法としては、例えば、加熱溶着、高周波溶着、超音波溶着等が挙げられる。溶着領域20は、後述するように、シール部21およびポート部3が位置する部分を開口部40として、当該開口部40以外の部分について、重ねた2枚の樹脂シートを互いに溶着することにより形成される。
【0026】
(シール部)
図2は、図1に示すA-A線矢視断面図である。図2に示すように、シール部21は、2枚の樹脂シート21a・21bが溶着されることにより形成されている。2つのシール部21の間にはポート部3の一部である被溶着部31が位置している。被溶着部31と樹脂シート21aとは互いに溶着されており、被溶着部31と樹脂シート21bとは互いに溶着されている。
【0027】
(ポート部)
図1および図2に示すように、ポート部3は、貯留部2内の貯留物を外部へ吐出するための円筒状の内部空間31bを有する部材であって、被溶着部31と、円筒部32とを有している。本実施形態における貯留用バッグ1は、長方形の形状を有するバッグ本体12における1つの辺に3つのポート部3を有している。なお、ポート部3の配置個数および配置箇所は、適宜変更されてよい。
【0028】
ポート部3における被溶着部31は、バッグ本体12の開口部40に挿入された後、樹脂シートに対して溶着される部分である。被溶着部31は、例えば、図2に示す断面視において略菱形(いわゆる舟形)の形状である。被溶着部31は、図2に示す断面視における長手方向(長軸方向)および短手方向(短軸方向)の長さが、円筒部32の直径よりも大きい。
【0029】
被溶着部31は、図2に示す断面視において、シール部21に近い方の端部31aを有している。この端部31aは、被溶着部31と2枚の樹脂シート21a・21bとが溶着される際に溶融バリが生じる可能性の高い部分である。
【0030】
なお、被溶着部31の形状は、特に限定されるものではなく、適宜変更可能であり、例えば円筒、角筒の形状であってもよい。また、被溶着部31の形状は、図2に示す断面視において、シール部21に近い方の端部31aには、溶着熱により溶融して樹脂シートとの密着性を高めるため、薄板状の羽根を有していてもよい。これらの形状の被溶着部31においても、端部31aは溶融バリが生じる可能性の高い部分である。
【0031】
ポート部3の円筒部32は、被溶着部31の内部空間31bに連通する内部空間を有している。ポート部3を用いて、貯留部2内から貯留物を外部へ吐出するとともに、貯留部2内に貯留物を注入することもできる。円筒部32には、チューブなどを接続した際にチューブが外れることを防止するために円筒部32の外周面から突出した突出部が形成されていてもよい。なお、図示しないが、円筒部32には、当該円筒部32を開閉するキャップが取り付けられていてもよく、キャップを取り付けるために円筒部32の外周面にネジ山が形成されていてもよい。
【0032】
ポート部3の材質としては、例えば、LDPE、LLDPE、HDPE等のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポート部3の材質は、バッグ本体12を形成する樹脂シートの融点に近い融点を有する材質であることが好ましく、具体的にはポート部3と樹脂シートとは融点の温度差が20℃以内であることが好ましく、温度差は10℃以内であることがより好ましい。これは、ポート部3と樹脂シートとの溶着を容易にするためである。
【0033】
(貯留用バッグの製造装置)
次に、本製造方法を実施する装置の一例としての製造装置100について、図3および図4を参照して概略的に説明する。図3は、製造装置100の構成を示す概略図である。図4は、図3に示す製造装置100の要部P1について説明するための概略図である。図4では、製造装置100の要部P1について、鉛直方向に沿って見たときの平面図を模式的に示している。
【0034】
図3および図4に示すように、製造装置100は、支持搬送部110、第1加熱部101、第2加熱部102、冷却部103、および制御部150を備えている。一例としての製造装置100では、前工程において製造された、開口部40を有するバッグ本体12にポート部3を挿入して各種の処理を行うことにより、貯留用バッグ1を製造する。開口部40は、溶着領域20によって画定される部分である。製造装置100は、貯留用バッグ1を1袋ごとに製造(バッチ製造)する構成である。なお、本製造方法は、貯留用バッグ1を連続的に製造する装置も適用できることは勿論である。
【0035】
(支持搬送部)
図3では、製造装置100による処理を行う前の時点における、開口部40を有するバッグ本体12の支持搬送部110での支持状態の一例について、破線で囲む領域D1内に模式的に図示している。
【0036】
支持搬送部110では、例えば、開口部40を有するバッグ本体12を支持部130によって吊り下げて支持する。この支持部130は、バッグ本体12における溶着領域20の部分に取り付けられてバッグ本体12を支持するとともに、例えばレールによって構成された搬送路115に移動可能に取り付けられている。支持部130は、例えば、バッグ本体12の両面から溶着領域20を挟むようにしてバッグ本体12を支持してよい。支持部130は、バッグ本体12の2つの長辺の近傍にそれぞれ配置されている。また、支持部130は、例えば、バッグ本体12を吸着して支持する機構を備える構成であってもよい。支持搬送部110は、例えばモータ等の駆動機構(図示省略)を有しており、当該駆動機構を用いて支持部130を搬送路115に沿って移動させる。
【0037】
開口部40内の所定の位置には、3つのポート部3がそれぞれ挿入される。例えば、支持搬送部110において、開口部40に3つのポート部3が挿入された状態としてもよく、この場合、当該状態を維持できるように、例えば開口部40に挿入された3つのポート部3が樹脂シート21a・21bに仮固定されていてもよい。或いは、第1加熱部101において開口部40に3つのポート部3を挿入するようになっていてもよく、この場合、第1加熱部101は、開口部40に3つのポート部3を挿入するとともに、開口部40の樹脂シートを加熱する。
【0038】
開口部40内の所定の位置に3つのポート部3をそれぞれ挿入するとともに、吊り下げられた状態のバッグ本体12を、第1加熱部101、第2加熱部102、および冷却部103のそれぞれの位置に移動させて各種の処理を行うことによって、貯留用バッグ1が製造される。
【0039】
(第1加熱部)
第1加熱部101は、加熱型を用いて、重ねられた樹脂シートの間に挿入されたポート部3の被溶着部31から離間した位置における開口部40の樹脂シートを加熱することによって、シール部21を形成する。第1加熱部101は、第1加熱金型(第1の加熱型)101a・101bを有している。第1加熱金型101aは、3つのポート部3のそれぞれの形状に対応するように3つの凹部101cが形成されている。第1加熱金型101aに対向する第1加熱金型101bは、第1加熱金型101aと同様の形状である。第1加熱金型101a・101bには、それぞれ、例えば電熱線で構成されたヒータ(図示省略)が内蔵されている。これにより、第1加熱部101による加熱が可能となる。
【0040】
第1加熱金型101a・101bは、シール部21を形成する一方で、被溶着部31と樹脂シート21a・21bとの接触部分が予熱される構造となっていてもよい。例えば、第1加熱金型101a・101bは、第1加熱金型101aと第1加熱金型101bとが樹脂シート21a・21bを介して互いに当接した状態において、第1加熱金型101a・101bと樹脂シート21a・21bとの間に隙間を有するような凹部101cの形状であってもよい。
【0041】
(第2加熱部)
第2加熱部102は、被溶着部31および被溶着部31の周縁の樹脂シート21a・21bを加熱することにより、被溶着部31を樹脂シート21a・21bに溶着する。第2加熱部102は、第2加熱金型(第2の加熱型)102a・102bを有している。第2加熱金型102aは、3つのポート部3のそれぞれの形状に対応するように3つの凹部102cが形成されている。第2加熱金型102aに対向する第2加熱金型102bは、第2加熱金型102aと同様の形状である。第2加熱金型102a・102bには、それぞれ、例えば電熱線で構成されたヒータ(図示省略)が内蔵されている。これにより、第2加熱部102による加熱が可能となる。
【0042】
第2加熱金型102a・102bは、被溶着部31を樹脂シート21a・21bに溶着するように、第2加熱金型102aと第2加熱金型102bとが樹脂シート21a・21bを介して互いに当接した状態において、第2加熱金型102a・102bと樹脂シート21a・21bとが密着するような凹部102cの形状となっている。つまり、第2加熱金型102a・102bは、第1加熱金型101a・101bにおける凹部101cよりも小さい形状の凹部102cを有している。
【0043】
なお、第1加熱部101の第1加熱金型101a・101bおよび第2加熱部102の第2加熱金型102a・102bとしては、公知の構造(形状)の金型を用いてもよく、これらの金型の構造について詳細な説明は省略する。
【0044】
(冷却部)
冷却部103は、少なくとも、ポート部3におけるシール部21に近い側の端部(縁部)31aを冷却する。冷却部103は、被溶着部31の外形形状に対応した形状の冷却型(冷却金型)103a・103bを有している。冷却型103aは、3つのポート部3のそれぞれの形状に対応するように3つの凹部103cが形成されている。冷却型103aに対向する冷却型103bは、冷却型103aと同様の形状である。
【0045】
冷却部103は、冷却型103a・103bのそれぞれの温度を例えば15℃程度の比較的低温に維持できるようになっており、例えば、冷却型103a・103bの内部に冷却水等の冷却媒体の通る流路が形成されている。また、冷却型103a・103bは、冷却型103aと冷却型103bとが樹脂シート21a・21bを介して互いに当接した状態において、第1加熱金型101a・101bよりも、冷却型103a・103bのそれぞれと被溶着部31との間の隙間が低減された形状となっている。つまり、冷却型103a・103bは、冷却型103a・103bのそれぞれと被溶着部31との間の隙間が、第1加熱金型101a・101bのそれぞれと被溶着部31との間の隙間よりも低減されるような形状の凹部103cを有している。
【0046】
冷却型103a・103bは、例えば、互いに対向する面にゴムまたはガラスメッシュが取り付けられていてもよい。これにより、冷却型103a・103bによって被溶着部31および樹脂シート21a・21bの全体に均一に圧力をかけることができる。そのため、ポート部3における端部31aの冷却速度を高くすることができる。
【0047】
(制御部)
制御部150は、製造装置100の各部の動作を統括的に制御する。制御部150による各部の制御について詳細な説明は、本製造方法の説明と合わせて後述する。
【0048】
(貯留用バッグの製造方法)
次に、図5を参照して、本実施形態における貯留用バッグ1の製造方法について説明する。図5に示すように、本実施形態の貯留用バッグ1の製造方法では、バッグ形成工程(S1)と、ポート挿入工程(S2)と、第1加熱工程(S3)と、第1冷却工程(S4)と、第2加熱工程(S5)と、第2冷却工程(S6)とが、この順で行われる。ここでは、バッグ本体12を構成する樹脂シートの材質がポリエチレン(融点127℃)であるとともに厚さが0.15mmであり、ポート部3における被溶着部31を構成する材質がポリエチレン(融点129℃)であるとともに形状が略菱形である例について説明する。
【0049】
(バッグ形成工程)
まず、バッグ形成工程(S1)では、重ねられた樹脂シートの周縁部の一部を、加熱してシールする。これにより、図3において破線で囲む領域D1内に示したように、重ねられた樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域20、および上記樹脂シートが互いに溶着されていない部分である開口部40を有するバッグ本体12が形成される。溶着領域20で囲まれる領域が貯留部2となる。本製造方法では、このバッグ形成工程(S1)は、製造装置100とは別の装置を用いて行われてよい。
【0050】
なお、バッグ形成工程(S1)の後に、重ねられた樹脂シートの外周部において、余分なサイズの部分が生じた場合には、貯留用バッグ1が所定のサイズになるように、カットしてもよい。バッグ形成工程(S1)の前に、貯留用バッグ1が所定のサイズになるようにカットを行う工程が含まれていてもよい。
【0051】
(挿入工程)
ポート挿入工程(S2)では、開口部40に、ポート部3を挿入する。開口部40に複数のポート部3を挿入する場合には、ポート部3同士を所定の間隔で挿入する。開口部40に挿入されるポート部3の数は特に限定されない。本実施形態では、3つのポート部3を開口部40に挿入する。ポート挿入工程(S2)は、製造装置100とは別の装置を用いて行われてもよく、支持搬送部110によって行われてもよく、第1加熱部101にて行われてもよい。
【0052】
(第1加熱工程)
第1加熱工程(S3)では、開口部40の内部に挿入された各ポート部3から離間した位置における開口部40の樹脂シートを、第1加熱金型101a・101bを用いて加熱して溶着する。ポート部3が複数挿入される場合には、ポート部3とポート部3との間における樹脂シートのシールを行うことになる。
【0053】
具体的には、制御部150は、支持部130を第1加熱部101の位置に搬送するように支持搬送部110を制御する。そして、制御部150は、第1加熱金型101a・101bを型開き状態から型閉じ状態となるように制御し、第1加熱工程(S3)を行ってシール部21を形成する。このとき、第1加熱金型101a・101bはヒータによって予め樹脂シート21a・21bの融点よりも高い温度に加熱されている。本製造方法では、第1加熱金型101a・101bの温度としては、特に限定されないが、例えば、樹脂シート21a・21bの融点をTm1(℃)として、Tm1以上(Tm1+100℃)以下であってよく、(Tm1+10℃)以上(Tm1+60℃)以下であってよい。また、加熱時間は、例えば、0.5~15秒であってよく、1~10秒であってよい。制御部150は、第1加熱金型101a・101bによってシール部21を形成した後、第1加熱金型101a・101bを型閉じ状態から型開き状態となるように制御し、第1加熱工程(S3)を終了する。
【0054】
第1加熱工程(S3)において、ポート部3における被溶着部31は、或る程度の温度に予熱される。このとき、被溶着部31と樹脂シート21a・21bとは、互いに溶着されてもよく、溶着されなくてもよい。つまり、第1加熱工程(S3)において、被溶着部31は、被溶着部31の融点以上の温度に加熱されてもよい。
【0055】
(第1冷却工程)
第1冷却工程(S4)では、開口部40の内部に挿入されたポート部3の一部である被溶着部31、および被溶着部31の近傍に位置する樹脂シート21a・21bを冷却する。図2に示すように、被溶着部31は、開口部40への挿入方向に対して垂直な平面で被溶着部31を切断したときの断面において、2つの先細った端部31aを有している。冷却部103は、2つの端部31aが特に冷却されるように、冷却型103a・103bの形状が定められている。すなわち、冷却型103a・103bによって被溶着部31を挟み込んだときに生じる隙間が、第1加熱金型101a・101bによって被溶着部31を挟み込んだときに生じる隙間よりも小さくなるように、冷却型103a・103bの形状が定められている。第1冷却工程(S4)では、次処理である第2加熱工程(S5)において溶融バリが発生しないように、少なくとも被溶着部31における端部31aを冷却する。
【0056】
具体的には、制御部150は、支持部130を冷却部103の位置に搬送するように支持搬送部110を制御する。そして、制御部150は、冷却型103a・103bを型開き状態から型閉じ状態となるように制御する。第1冷却工程(S4)は、冷却型103a・103bを例えば0℃以上40℃以下、好ましくは10℃以上20℃以下の温度に保持した状態で行われることが好ましい。冷却型103a・103bが所定の温度範囲に制御されていることによれば、安定的に第1冷却工程(S4)を行うことができる。また、冷却型103a・103bの温度を比較的低くすることによれば、第1冷却工程(S4)における処理時間を比較的短くすることができる。
【0057】
ここで、本製造方法では、第1冷却工程(S4)を行った後、すぐに次の第2加熱工程(S5)を行う。第1冷却工程(S4)の直後の時点において、被溶着部31の温度は、ポート部の融点をTm2(℃)として、40℃以上Tm2以下であることが好ましく、45℃以上100℃以下であることがより好ましく、50℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。本製造方法では、第1冷却工程(S4)における冷却時間は、例えば、0.5~15秒であってよく、1~4秒であってよい。制御部150は、冷却型103a・103bによって少なくとも被溶着部31における端部31aを冷却した後、冷却型103a・103bを型閉じ状態から型開き状態となるように制御し、第1冷却工程(S4)を終了する。
【0058】
(第2加熱工程)
第2加熱工程(S5)では、開口部40の内部に挿入されたポート部3の一部である被溶着部31、および被溶着部31の周縁の樹脂シート21a・21bを、第2加熱金型102a・102bを用いて加熱することにより被溶着部31を樹脂シート21a・21bに溶着する。これにより、被溶着部31を樹脂シート21a・21bに確実に溶着することができ、その結果、貯留部2内を少なくとも液密に封止することができる。
【0059】
具体的には、制御部150は、支持部130を第2加熱部102の位置に搬送するように支持搬送部110を制御する。そして、制御部150は、第2加熱金型102a・102bを型開き状態から型閉じ状態となるように制御する。このとき、第2加熱金型102a・102bはヒータによって予め被溶着部31および樹脂シート21a・21bの融点よりも高い温度に加熱されている。本製造方法では、第2加熱金型102a・102bの温度としては、特に限定されないが、例えば、樹脂シートの融点をTm1(℃)として、Tm1以上(Tm1+100℃)以下であってよく、(Tm1+10℃)以上(Tm1+100℃)以下であってよい。また、加熱時間は、例えば、0.5~15秒であってよく、1~10秒であってよい。上記範囲とすることにより、被溶着部31の周囲の樹脂シート21a・21bに例えばピンホールが生じたり、被溶着部31の周囲の樹脂シート21a・21bの肉厚が極端に薄くなる部分が生じたりすることが防止される。制御部150は、第2加熱金型102a・102bによって被溶着部31を樹脂シート21a・21bに溶着した後、第2加熱金型102a・102bを型閉じ状態から型開き状態となるように制御し、第2加熱工程(S5)を終了する。
【0060】
(第2冷却工程)
第2加熱工程(S5)の後、第2冷却工程(S6)では、被溶着部31および被溶着部31の周縁の樹脂シート21a・21bを冷却する。具体的には、制御部150は、支持部130を冷却部103の位置に搬送するように支持搬送部110を制御する。そして、制御部150は、冷却型103a・103bを型開き状態から型閉じ状態となるように制御する。第2冷却工程(S6)によって、第2加熱工程(S5)にて溶融状態となった被溶着部31および樹脂シート21a・21bを迅速に固化させて貯留用バッグ1を製造する。これにより、貯留用バッグ1を製造するための製造装置100による処理時間を低減することができる。制御部150は、被溶着部31および樹脂シート21a・21bを冷却した後、冷却型103a・103bを型閉じ状態から型開き状態となるように制御し、第2冷却工程(S6)を終了する。
【0061】
(本製造方法の利点)
図6は、本実施形態の貯留用バッグ1における被溶着部31の周辺を示す拡大図である。図6では、従来の貯留用バッグにおいて発生し得る溶融バリ50を点線にて示している。図6に示すように、本製造方法のように第1冷却工程(S4)を行って製造された貯留用バッグ1では、溶融バリ50(点線にて示す部分)は形成されない。一方で、第1冷却工程(S4)を行うことなく、第1加熱工程(S3)の直後に第2加熱工程(S5)を行うと、溶融バリ50が形成されることがある。
【0062】
以上のように、本実施形態における貯留用バッグ1の製造方法では、第1加熱工程(S3)と第2加熱工程(S5)との間に、第1冷却工程(S4)を行うことにより、第1加熱工程(S3)の実行時に加熱されたポート部3の被溶着部31における端部31aを少なくとも冷却する。第1冷却工程(S4)において被溶着部31を過剰に冷却すると、第2加熱工程(S5)の処理時間が長大化し得るとともに、被溶着部31と樹脂シート21a・21bとの融着が不安定となり得る。そのため、第1冷却工程(S4)において被溶着部31および樹脂シート21a・21bを適度に冷却することが重要である。これにより、第2加熱工程(S5)の際に、被溶着部31の長軸方向に突出した端部(換言すれば第1加熱工程(S3)にて形成されたシール部21に近い側の縁部)が溶融し難くできる。その結果、溶融バリを発生し難くすることができる。したがって、溶融バリ50の発生を防止して、貯留用バッグ1を製造することができる。また、ポート部3と樹脂シート21a・21bとの溶着状態を良好に、貯留用バッグ1を製造することができる。貯留用バッグ1として求められる所望の性能を確保して、貯留用バッグ1を安定的に製造することができる。
【0063】
本製造方法によれば、ポート部3または樹脂シート21a・21bの材質が、加熱時の流動性が高い材質であっても、好適に貯留用バッグ1を製造することができる。また、本製造方法によれば、以下のような効果も奏する。
【0064】
樹脂シート21a・21bが透明または半透明の材質で形成されている場合において、樹脂シート21a・21bが結晶化して白化した(透明度が低下した)部分または気泡が入った部分が生じることがある。上記白化した部分または気泡が入った部分を、説明の便宜上、視認欠陥部と称する。そのような視認欠陥部が生じることは、シール部21およびポート部3の溶着部分について外観検査を行う際に、視認欠陥部が外観検査の妨げとなり得るため好ましくない。また、上記白化した部分は、外力に対する耐久性が低下することがある。
【0065】
本製造方法によれば、第1加熱工程(S3)と第2加熱工程(S5)との間に、第1冷却工程(S4)を行うことにより、上記視認欠陥部が生じる可能性を低減させることもできる。
【0066】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態では、第1加熱工程(S3)および第2加熱工程(S5)における冷却手段として、冷却型を用いる方法について説明したが、本発明の一態様における貯留用バッグ1の製造方法は、これに限定されない。例えば、本発明の他の一態様における貯留用バッグ1の製造方法では、第1冷却工程(S4)および第2冷却工程(S6)において、冷却用の装置を用いて、または、自然冷却によって、少なくとも被溶着部31の端部31aを冷却してもよい。上記冷却用の装置としては、特に限定されないが、例えば、冷風を送風する送風機等が挙げられる。
【0067】
また、第1加熱工程(S3)および第2加熱工程(S5)では金型を用いて加熱を行っているが、これに限定されず、本発明の他の一態様における貯留用バッグ1の製造方法では、例えば、他の接触加熱手段または非接触加熱手段(熱風を送風する機器、輻射加熱する光源、等)を用いて行なわれてもよい。
【0068】
〔変形例〕
(a)一変形例における製造装置100は、バッグ形成工程(S1)およびポート挿入工程(S2)を行うための各種装置を含んでいてもよい。
【0069】
(b)一変形例における貯留用バッグ1の製造方法では、ポート挿入工程(S2)と第1加熱工程(S3)との間に、冷却部103を用いて、ポート部3が挿入された開口部40の部分を冷却する前冷却工程を含んでいてもよい。これにより、各種の要因によって第1加熱工程(S3)の開始時における被溶着部31等の温度が変動する可能性を低減することができる。そのため、第1加熱工程(S3)から第2冷却工程(S6)までの処理を安定的に行うことができる。
【0070】
(c)一変形例における貯留用バッグ1の製造方法では、第2冷却工程(S6)を含んでいなくてもよい。第2加熱工程(S5)の後、自然冷却されて貯留用バッグ1が製造されてよい。
【0071】
(d)一変形例における貯留用バッグ1の製造方法では、バッグ本体12は複数の開口部40を有していてもよく、例えば、バッグ本体12の下方にも開口部を有し、バッグ本体12の下方にもシール部21とポート部3とを有していてもよい。
【0072】
〔附記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上記説明において開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0073】
以下、本発明の実施例1および実施例2について、表1および表2を参照して説明するが、本発明はこれに限定されない。表1は、実施例1、実施例2、および比較例1における貯留用バッグ1の製造工程の流れを示す表である。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例1)
実施例1として、上記した実施形態にて説明した製造方法と同様に、バッグ形成工程(S1)から第2冷却工程(S6)までを行って、貯留用バッグを製造した。ここで、第1冷却工程(S4)における冷却時間を0秒から5秒に変化させて実験を行った結果を図7に示す。図7は、第1冷却工程(S4)における冷却時間を0秒から5秒に変化させて、第1加熱工程(S3)から第2冷却工程(S6)までの処理を行った複数の試験品のそれぞれについて、経時的な温度変化を示すグラフである。図7のグラフに示す温度は、被溶着部31の端部31aとシール部21との境界部分であって、端部31aの延びる方向の中央部分(以下、温度測定部と称することがある)について測定した。
【0076】
図7に示すように、第1冷却工程(S4)における冷却時間を1秒とすると、第1冷却工程(S4)によってシール部21に近い方のポート部3の端部31a(上記温度測定部)の温度が70℃程度まで低下した。その後、支持搬送部110によって冷却部103から第2加熱部102へと支持部130が搬送され、第2加熱工程(S5)が行われた。第1冷却工程(S4)における冷却時間が2秒、3秒、5秒と長くなるほど、第1冷却工程(S4)によって端部31a(上記温度測定部)の温度が低下することがわかる。
【0077】
実施例1では、第1冷却工程(S4)における冷却時間を1秒~5秒として貯留用バッグを製造した。実施例1の貯留用バッグでは、溶融バリが発生しなかった。なお、図7に示す実験結果から、第1冷却工程(S4)後の温度を鑑みて、本例では、第1冷却工程(S4)における冷却時間は2秒以上であることが好ましいこともわかる。
【0078】
(比較例1)
また、図7に示すように、第1冷却工程(S4)における冷却時間を0秒とした場合、すなわち第1加熱工程(S3)の直後に第2加熱工程(S5)を行った場合、シール部21に近い方のポート部3の端部31a(上記温度測定部)の温度が160℃程度の状態にて、第2加熱工程(S5)が行われることになることがわかる。なお、このように第1加熱工程(S3)の直後に第2加熱工程(S5)を行った場合が、表1に示す上記比較例1に対応する。
【0079】
(実施例2)
実施例2として、下記の点以外は上記した実施形態にて説明した製造方法と同様にバッグ形成工程(S1)から第2冷却工程(S6)までを行って、貯留用バッグを製造した。すなわち、実施例2では、第1冷却工程(S4)において冷却型を用いることなく自然冷却を行った。ここで、図示を省略するが、第1冷却工程(S4)における自然冷却時間を0秒から10秒に変化させて実験を行った。その結果、第1冷却工程(S4)における自然冷却時間が5秒以下では溶融バリが発生した。実施例2では、第1冷却工程(S4)における自然冷却時間を10秒として貯留用バッグを製造した。実施例2の貯留用バッグでは、溶融バリの発生は防止されたが、樹脂シートに白化が発生した。
【0080】
(評価)
実施例1、実施例2、および比較例1の溶融バッグについて、被溶着部31の周辺における溶融バリの発生の有無、並びに、被溶着部31の周辺における樹脂シート21a・21bの白化または波打ちの発生の有無について、目視観察により評価した。
【0081】
また、実施例1、実施例2、および比較例1のそれぞれにおけるタクトタイムを、実施例1を基準として(実施例1のタクトタイムを「中」として)評価した。
【0082】
(評価結果)
表2は、実施例1、実施例2、および比較例1における貯留用バッグの製造工程の評価結果をまとめて示す表である。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、実施例1,2の貯留用バッグには溶融バリが発生しなかった。実施例2の貯留用バッグにはシール部分に白化が生じた。また、実施例2のタクトタイムは実施例1よりも長かった。比較例1では、タクトタイムは比較的短時間であったが、溶融バリが発生した。
【符号の説明】
【0085】
1:貯留用バッグ 2:貯留部 3:ポート部 12 バッグ本体 20:溶着領域 31:被溶着部 31a:端部(前記ポート部における、前記第1加熱工程にて溶着された前記樹脂シートに近い側の縁部) 40:開口部 100:製造装置 101:第1加熱部 101a・101b:第1加熱金型(加熱型) 102:第2加熱部 102a・102b:第2加熱金型(加熱型) 103:冷却部 103a・103b:冷却型(冷却金型)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7