IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

特開2022-98372ポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098372
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20220624BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L27/18
C08L33/04
C08L31/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211890
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永見 秀
(72)【発明者】
【氏名】牧 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD151
4J002BE063
4J002BF023
4J002BG032
4J002GJ01
4J002GQ00
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】
含水量が大きくても、保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体の提供。
【解決手段】
少なくとも、一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを5~60質量%と、下記式(I)で表される化合物をポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの質量に対して0.1~15質量%と、非水系溶剤とを含み、更にC~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、8000ppm未満であり、かつ、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法によって測定された平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを5~60質量%と、下記式(I)で表される化合物をポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの質量に対して0.1~15質量%と、非水系溶剤とを含み、更にC~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、8000ppm未満であり、かつ、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法によって測定された平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
【化1】
【請求項2】
前記非水系溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2-ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-ビニルピリジン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ジメチルイミダゾリン、テトラヒドロフラン、ピリジン、フォルムアミド、アセトアニリド、ジオキソラン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、フェノール、N-メチル-2-ピロリドン,N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶剤、またはこれらの溶剤を2種以上含んでいることを特徴とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
【請求項3】
カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、5000ppm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子径で低粘度、含水量が大きくても、保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、耐熱性、電気絶縁性、低誘電特性、低摩擦特性、非粘着性、耐候性などに優れた材料であり、電子機器、摺動材、自動車、厨房用品などに利用されている。このような特性を有するPTFEは、マイクロパウダーとして、各種の樹脂材料(レジスト材料)やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加されて製品特性を向上させる目的に用いられている。
【0003】
このようなポリテトラフルオロエチレンのマイクロパウダーは、通常、乳化重合法により、水、重合開始剤、含フッ素乳化剤、パラフィンワックスなどの安定剤の存在下で、テトラフルオロエチレン(TFE)モノマーを重合させてPTFE微粒子を含有する水性分 散体として得た後、濃縮、凝集、乾燥などを経て、製造されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを樹脂材料などに添加する方法としては、例えば、直接混ぜ込む方法の他に、水や油性溶剤中に分散してポリテトラフルオロエチレン分散体として混合する方法などが知られている。一旦、水や油性溶剤中に分散してから添加することにより、均一に混合させることができる。
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーは、粒子同士の凝集力が強く、特に、非水系の油性溶剤中に微粒子径で低粘度、含水量が大きい場合、保存安定性に優れた形で分散することは難しいという課題があった。
【0005】
更に、非水溶性のエポキシ樹脂、ポリイミド前駆体材料やレジスト材料などに添加する場合には、非水系のPTFE分散体が求められるところ、ポリテトラフルオロエチレンの水系分散体に関する発明等は数多く知られているが(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)、この水系分散体と比べて、非水系のポリテトラフルオロエチレン分散体に関する報告等はほとんどないのが現状である(例えば、特許文献4参照)。
この特許文献4に記載の技術は、PTFE粒子と、少なくとも1つのモノ又はポリオレフィン系不飽和油又は油混合物とからなり、該オレフィン系不飽和油の分子はPTFE(一次)粒子表面上で、ラジカル反応により共有結合/化学結合されており、かつその際にPTFE粒子表面と結合された油分子との間の永久的な電荷分離、及び油又は油混合物中でのPTFE粒子の微細分散が存在する長期安定な油-PTFE分散液であり、その製法は、持続性のペルフルオロ(ペルオキシ)ラジカルを有する変性されたPTFE(エマル
ション)ポリマーが、少なくとも1つのオレフィン系不飽和油と一緒に、混合され、かつ次に変性されたPTFE(エマルション)ポリマーが機械的応力にかけられる方法等により得られるものであり、製法が複雑であり、また、汎用のPTFE粒子を用いるものでなく、本発明とは、技術思想(構成及びその作用効果)が全く相違するものである。
【0006】
従来、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを分散する場合には、フッ化アルキルなどのフッ素を含有した界面活性剤や分散剤が用いられてきている。これは、PTFE表面が非常に水や油性溶剤などに濡れにくい性質を有し、かつ粒子同士の凝集力が強いため、汎用的なフッ素基を含まない界面活性剤や分散剤では、分散することが非常に困難なためである。
【0007】
一方で、このようなフッ素基を含有した界面活性剤や分散剤は、高温下において熱分解し、フッ化水素を発生する可能性があり、環境面や安全面への悪影響が懸念されているといった課題を有している。
【0008】
これらの課題に対して本出願人は、少なくとも、一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを5~60質量%と、下記式(I)で表される化合物をポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの質量に対して0.1~15質量%と、非水系溶剤とを含み、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、8000ppm未満であり、かつ、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法によって測定された平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を開発し開示している(特許文献5)。
【化1】

しかし、この特許文献5に記載の技術においても、水分量が多くなってくると結局のところ長期保存における再分散性等が不安定になってくる欠点があった(例えば実施例5)。
【0009】
~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩は、従来、レベリング剤、界面活性剤等として利用されて来た歴史があるが現在は規制により排出が制限されている。この規制に合致させる目的もあり、高分子量PTFEに放射線を照射して、380℃における溶融粘度が1.0×102~7.0×105Pa・sである低分子量PTFEを得る工程を含む、低分子量PTFEの製造方法が開示されている(例えば特許文献6)。この製造方法では実施例にもある通り、粒子径が38~70μmと特許文献5における一次粒子径と比較してはるかに大きく、この製造方法のみではPTFE粒子の粒子径が大きなままであり、良好な分散液は得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-92323号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2006-169448号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2009-179802号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特表2011-509321号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2015-199901号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2019-137851号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の課題及び現状等について、これを解消しようとするものであり、フッ素基を含む界面活性剤や分散剤を添加しなくても、微粒子径で低粘度、含水量が大きくても、保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れたポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、下記の第1乃至第5発明により、上記目的のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0013】
すなわち、本第1発明は、少なくとも、一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを5~60質量%と、下記式(I)で表される化合物をポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの質量に対して0.1~15質量%と、非水系溶剤とを含み、更にC~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、8000ppm未満であり、かつ、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法によって測定された平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体である。
【化2】
【0014】
本第2発明は、前記非水系分散体に用いる非水系溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2-ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-ビニルピリジン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ジメチルイミダゾリン、テトラヒドロフラン、ピリジン、フォルムアミド、アセトアニリド、ジオキソラン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、フェノール、N-メチル-2-ピロリドン,N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶剤、またはこれらの溶剤を2種以上含んでいることを特徴とする本第1発明に記載のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体である。
【0015】
本第3発明は、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、5000ppm未満であることを特徴とする本第1発明又は第2発明に記載のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体は、フッ素基を含む界面活性剤や分散剤を添加しなくても、微粒子径で低粘度、含水量が大きくても保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れるものとなる。また、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加した際にも均一に混合させることができるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体は、少なくとも、一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを5~60質量%と、下記式(I)で表される化合物をポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの質量に対して0.1~15質量%と、非水系溶剤とを含み、更にC~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、カールフィッシャー法により測定した分散体全体の水分量が、8000ppm未満であり、かつ、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法によって測定された平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体であることを特徴とするものである。
【化3】
【0018】
本発明に用いるポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーは、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(黒川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーは、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種微粉末の製造方法を用いることができる。また、数平均分子量Mnが高いポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーをγ線などの放射線を照射して数平均分子量Mnが1万~3万となった上記一次粒子径範囲を満たすポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを使用しても良いものである。更に、このγ線などの放射線を照射によりPTFE微粒子内部及び表面にC~C14のパーフルオロカルボン酸が生成されるものである。
【0019】
ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの一次粒子径としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)が1μm未満であることが好ましく、非水系溶剤中でより安定に分散させる上では、望ましくは、0.5μm未満、さらに望ましくは、0.3μm未満とすることにより、さらに均一な分散体となる。
このポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの一次粒子径が1μmを超えるものであると、非水系溶剤中で沈降しやすくなり、安定して分散することが難しくなる。
また、上記平均粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上であることが好ましい。
なお、本発明におけるポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの一次粒子径は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの乳化重合段階において測定される値(レーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値)を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えばFPAR-1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
【0020】
本発明においては、分散体全量に対して、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーが5~60質量%含有されるものであり、好ましくは、10~50質量%含有されることが望ましい。
この含有量が5質量%未満の場合には、非水系溶剤の量が多く、極端に粘度が低下するためにポリテトラフルオロエチレンの微粒子が沈降しやすくなったり、樹脂などの材料と混合した際に非水系溶剤の量が多いことによる不具合、例えば、溶剤の除去に時間を要することになるなど好ましくない状況を生じることがある。一方、60質量%を超えて大きい場合には、ポリテトラフルオロエチレン同士が凝集しやすくなり、微粒子の状態を安定的に、流動性を有する状態で維持することが極端に難しくなるため、好ましくない。
【0021】
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。上記パーフルオロカルボン酸の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。
ここで得られるポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーは、C~C14のパーフルオロカルボン酸の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb未満であることがより好ましく、15ppb未満であることが更に好ましく、10ppb未満であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。最終的にはPTFE分散体における含有量が10ppb以上25ppb未満であれば問題ない。
【0022】
本発明に用いる上記(I)で表される化合物は、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを非水系溶剤中に、微粒子で均一、且つ安定的に分散させることができるものである。その分子構造は、ビニルブチラール/酢酸ビニル/ビニルアルコールから構成される三元重合体であり、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であり、これらの3種の構造の比率(l,m,nの各比率)を変化させることにより、非水系溶剤への溶解性、さらには各種樹脂材料中にポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を添加した際の化学反応性をコントロールすることが可能となる。
【0023】
上記(I)で表される化合物としては、市販品では、積水化学工業社製エスレックBシリーズ、K(KS)シリーズ、SVシリーズ、クラレ社製モビタールシリーズなどを用いることができる。
具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBM-1(水酸基量:34モル%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:4万)、同BH-3(水酸基量:34mol%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:11万)、同BH-6(水酸基量:30mol%、ブチラール化度69±3モル%、分子量:9.2万)、同BX-1(水酸基量:33±3mol%、アセタール化度66モル%、分子量:10万)、同BX-5(水酸基量:33±3mol%、アセタール化度66モル%、分子量:13万)、同BM-2(水酸基量:31mol%、ブチラール化度68±3モル%、分子量:5.2万)、同BM-5(水酸基量:34mol%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:5.3万)、同BL-1(水酸基量:36mol%、ブチラール化度63±3モル%、分子量:1.9万)、同BL-1H(水酸基量:30mol%、ブチラール化度69±3モル%、分子量:2万)、同BL-2(水酸基量:36mol%、ブチラール化度63±3モル%、分子量:2.7)、同BL-2H(水酸基量:29mol%、ブチラール化度70±3モル%、分子量:2.8万)、同BL-10(水酸基量:28mol%、ブチラール化度71±3モル%、分子量:1.5万)、同KS-10(水酸基量:25mol%、アセタール化度65±3モル%、分子量:1.7万)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB145(水酸基量:21~26.5モル%、アセタール化度67.5~75.2モル%)、同B16H(水酸基量:26.2~30.2モル%、アセタール化度66.9~73.1モル%、分子量:1~2万)などが挙げられる。
これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0024】
上記(I)で表される化合物の含有量は、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーに対し、0.1~15質量%が好ましい。この化合物の含有量が0.1質量%より少ないと、分散安定性が悪くなりポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーが沈降しやすくなり、15質量%を越えると粘度が高くなったりして好ましくない。
さらに、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂前駆体材料などの各種樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を添加した際の特性を考慮すれば、0.1~10質量%が望ましく、さらに0.1~5質量%が望ましく、特に0.1~3質量%が最も好ましい。
【0025】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(I)で表される化合物と組み合わせて、他の界面活性剤や分散剤を用いることも可能である。
例えば、フッ素系や非フッ素系に関わらず、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤や分散剤、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤や高分子分散剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく使用することができる。
【0026】
本発明に用いる非水系溶剤は、カールフィッシャー法による水分量が、8000ppm未満〔0≦水分量≦8000ppm〕となるものが好ましい。
本発明(後述する実施例等を含む)においては、カールフィッシャー法による水分量の測定は、JIS K 0068:2001に準拠するものであり、MCU-610(京都電子工業社製)により行った。
用いる非水系溶剤の極性によっては水との相溶性が高いものが考えられるが、8000ppm超過の水分量を有するとポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系溶剤中への分散性を著しく阻害したり、上記(I)で表される化合物の非水系溶剤中への溶解性を阻害するなどし、粘度上昇や粒子同士の凝集を引き起こす要因になる。
本発明においては、非水系溶剤中の水分量を8000ppm未満にすることで、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体とすることができるものである。更に好ましくは、非水系溶剤の水分量を5000ppm未満、より好ましくは、3000ppm未満、特に好ましくは、2500ppm未満とすることが望ましい。
【0027】
さらに、本発明のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体は、カールフィッシャー法による水分量が、8000ppm未満〔0≦水分量≦8000ppm〕であることが好ましい。
非水系溶剤に含まれる水分量のほかに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーや上記(I)で表される化合物などの材料自体に含まれる水分や、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを非水系溶剤中に分散する製造工程における外部からの水分の混入(空気中の水分、装置壁面の結露水など)が考えられるが、最終的にポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体の水分量を8000ppm未満にすることで、より保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を得ることができる。更に好ましくは、非水系分散体の水分量を5000ppm未満、より好ましくは、3000ppm未満、特に好ましくは、2500ppm未満とすることが望ましい。
【0028】
非水系溶剤の水分量、並びに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体の水分量を8000ppm未満とするためには、一般的に用いられている非水系溶
剤の脱水方法を用いることが可能であるが、例えば、モレキュラーシーブスなどを用いることができる。また、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーや上記(I)で表される化合物は、加熱や減圧などによる脱水を行うことで充分に水分量を下げた状態で使用することができる。
さらに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を作製した後に、モレキュラーシーブスや膜分離法などを用いて水分除去することも可能であるが、上記した方法以外であっても、非水系分散体の水分量を下げることができるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0029】
しかし、水分量が8000ppmの上限に近づくと乃至は上限を超えるとポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの油性溶剤系分散体はやや不安定となる。ここで、極めて微量でもC~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩が介在すると、安定性は向上する。これについては、C~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩によって、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダー表面と水分子との間を橋渡しすることによって、水分がやや多量に分散体に入り込んだとしても、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの分散安定性が担保されることとなると推測された。
~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩のうち、パーフルオロオクタン酸及びその塩、パーフルオロオクタンスルホン酸及びその塩が特に好ましい。
【0030】
本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。本発明のPTFE水性分散体には、C~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb未満であることがより好ましく、15ppb未満であることが更に好ましく、10ppb未満であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。
【0031】
本発明に用いられる非水系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2-ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-ビニルピリジン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ジメチルイミダゾリン、テトラヒドロフラン、ピリジン、フォルムアミド、アセトアニリド、ジオキソラン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、フェノール、N-メチル-2-ピロリドン,N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶剤、またはこれらの溶剤を2種以上含んでいるものである。
【0032】
本発明においては、上記非水系溶剤を用いるものであるが、他の非水系溶剤と組み合わせて用いることや他の非水系溶剤を用いることもできるものであり、用いる用途(各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料)などにより好適なものが選択される。
用いる非水系溶剤の含有量は、上記ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダー、上記(I)で表される化合物などの残部となるものである。
【0033】
本発明においては、非水系分散体におけるポリテトラフルオロエチレン粒子の動的光散乱法による平均粒子径(散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径)が、1μm未満であることが望ましい。
一次粒子径が1μm未満のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを用いた場合であっても、通常、一次粒子が凝集し、二次粒子として粒子径が1μm以上のマイクロパウダーとなっている。このポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの二次粒子を1μm未満の粒子径となるように分散することにより、例えば、超音波分散機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
より安定に分散させる上では、望ましくは、0.5μm未満、さらに望ましくは、0.3μm未満とすることにより、さらに均一な分散体となる。
【0034】
このように構成される本発明のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体は、フッ素基を含む界面活性剤や分散剤を添加しなくても、微粒子径で低粘度、含水量が大きくても保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れるものとなる。また、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加した際にも均一に混合させることができるものとなる。
【実施例0035】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1~3及び比較例1及び2〕
下記に示す各方法により各ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系系分散体を調製した。また、実施例5と比較例1における非水系溶剤については、水分の添加を行うことにより調整して用いた。実施例1~3及び比較例1及び2の配合組成は下記表1に示す。
【0037】
(実施例1)
ポリテトラフルオロエチレンパウダーとして、レーザー回折・散乱法による平均粒子径が0.22μmの粉末へ200kGyの放射線を10分間照射したものを使用した。上記式(I)で表される化合物Aとして、エスレックBL-10〔ブチラール(PVB)樹脂、積水化学工業社製、水酸基28モル%、ブチラール化度71±3モル%、分子量1.5万〕を使用した。また、非水系溶剤BとしてN-メチルピロリドン〔NMP〕中に強制的に水分を添加して充分に攪拌したものを使用した。
【0038】
上記材料を用い、下記表1に示す配合にてポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を作製した。作製にあたっては、非水系溶剤中に式式(I)で表される化合物Aを充分に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーを添加して、さらに攪拌混合を行った。
上記の様にして得られたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散を行った。
【0039】
得られた分散体を、5μm以上の粗大粒子を除去するためにフィルター濾過をして、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を得た。
【0040】
(実施例2)
ポリテトラフルオロエチレンパウダーの種類を変動した点及び放射線の照射時間を30分間とした点、式(I)で表される化合物Bとして、エスレックBM-1〔ブチラール(PVB)樹脂、積水化学工業社製、水酸基34モル%、ブチラール化度65±3モル%、分子量4万〕を、非水系溶剤Aとしてメチルエチルケトン〔MEK〕中に強制的に水分を添加して充分に攪拌したものとし、実施例1と同様の方法にて分散体を作製した。
【0041】
(実施例3)
ポリテトラフルオロエチレンパウダーへの放射線の照射時間を20分間としたことを除き、実施例2と同様の方法にて分散体を作製した。
【0042】
(比較例1)
実施例1よりも多くの水分をN-メチルピロリドン中に強制的に添加して充分に攪拌したものを非水系溶剤として使用したことを除き、実施例1と同様の方法にて分散体を作製した。
【0043】
(比較例2)
実施例2よりも多くの水分をメチルエチルケトン中に強制的に添加して充分に攪拌したものを非水系溶剤として使用したことを除き、実施例2と同様の方法にて分散体を作製した。
【0044】
上記実施例1~3及び比較例1及び2より得られたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体について、下記評価方法により、25℃、1ヶ月及び3ヶ月保存後の再分散性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0045】
(再分散性の評価方法)
得られた各ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体を、蓋付きガラス容器(30ml、未満同様)に入れ、25℃、1ヶ月及び3か月保存後の再分散性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:容易に再分散する。
○:再分散する。
△:流動するようになるが、粒状物が見られる。
×:再分散が困難。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~3は分散体の保存安定性、再分散性が高いことが判明した。
本発明の範囲外となる比較例1、比較例2は、3か月保存後の粒子径が大きくなっており、保存後の再分散性も劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの非水系分散体は、各種の樹脂材料(エポキシ樹脂、ポリイミド前駆体材料、レジスト材料など)やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに均一に添加されて製品特性を向上させる目的に用いることが可能であり、電子機器、摺動材、自動車、厨房用品などに利用することができる。