(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098373
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレン水性分散体及びその組成物を充填した液体塗布具。
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20220624BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220624BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220624BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K5/09
C08K5/42
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211891
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永見 秀
(72)【発明者】
【氏名】牧 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J039
【Fターム(参考)】
4J002BD151
4J002EF006
4J002EG006
4J002EV236
4J002GH01
4J002HA07
4J039AD09
4J039BC05
4J039BD02
4J039BE22
4J039BE30
4J039CA06
4J039EA44
4J039GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に高温における長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するPTFE水性分散体及び液体塗布具を提供する。
【解決手段】一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70質量%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して0.5~20質量%含有し、更にC
6~C
14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C
6~C
14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散体とそれを水性組成物として充填した液体塗布具である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70質量%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して0.5~20質量%含有し、更にC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散体。
【請求項2】
pHが8~13であることを特徴とする請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散体。
【請求項3】
25℃、3ヶ月間の静置によるケーキ比率が40%以下であり、その際の再分散比率が95%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散体。
【請求項4】
バインダー樹脂を固形分比で20~95質量%と、請求項1~3の何れか一つに記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散体をポリテトラフルオロエチレン基準の固形分比で5~80質量%とを少なくとも含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填された液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を長期的に安定的に分散させ、取扱いに優れ、PTFE特有の機能である、撥水性、撥油性、電気特性、耐熱性、電気絶縁性、低誘電特性、低摩擦特性、非粘着性、耐候性、難燃性などを付与できるポリテトラフルオロエチレン水性分散体、それを用いたポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(以下、単に「PTFE」という場合がある)は、撥水性、撥油性、電気特性、耐熱性、電気絶縁性、低誘電特性、低摩擦特性、非粘着性、耐候性、難燃性などに優れた材料であり、電子機器、摺動材、自動車、厨房用品などに利用されている。
このような特性を有するポリテトラフルオロエチレンは、マイクロパウダーとして、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加されて製品特性を向上させる目的に用いられている。
【0003】
例えば、ポリテトラフルオロエチレンのマイクロパウダー(PTFE粒子)は、通常、乳化重合法により、水、重合開始剤、含フッ素乳化剤、パラフィンワックスなどの安定剤の存在下で、テトラフルオロエチレン(TFE)モノマーを重合させてPTFE粒子を含有する水性分散体として得た後、濃縮、凝集、乾燥などを経て、製造されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
通常、PTFE粒子を塗料などの液体材料に配合してPTFEが持つ機能を付与するためには、PTFE粒子を液体材料中に分散させる必要がある。しかしながら、PTFE粒子を再び液体材料へ濡らすことは容易ではないため、一般的には、重合させた後に安定剤を加えた水性分散体の形態で、液体材料へ配合されている。
この従来のPTFE水性分散体は、粒子が容易にフィブリル化するため、僅かな剪断により粒子同士が凝集する。また、乳化重合時の分散状態を引き継いでいるため、分散安定性が悪く、経時的に容器内でハードケーキを形成するという課題があった。
【0005】
従来、これらの課題を解消するための手段として、例えば、
1) 乳化重合により得られる平均粒径が0.1~0.5μmのPTFE粒子を5質量%以上かつ30質量%未満、特定の構造を持つ非イオン系界面活性剤をPTFEに対して1~12質量%、および平均分子量10万~200万のポリエチレンオキシドをPTFEに対して1~10質量%含有することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液(例えば、特許文献2参照)、
2) 平均粒径が0.1~0.5μmであり、平均分子量が70万~3000万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70質量%含有し、pHが6.0~13.0であるポリテトラフルオロエチレン水性分散液に、γ線を2~100kGy照射することを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法(例えば、特許文献3参照)、
3) 乳化重合により得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子を30~65重量%、特定式(1)および(2)で示される平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種をポリテトラフルオロエチレンに対して2~12重量%、および平均分子量10万~200万のポリエチレンオキシドをポリテトラフルオロエチレンに対して0.01重量%以上かつ1重量%未満を必須成分として含有することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液組成物(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2~4記載のPTFE水性分散体の分散安定性は、何れも乳化重合時の分散状態に由来するため、長期的に沈降し、再分散させるために攪拌する必要があるなどの課題がある。また、塗料などの液体材料への配合においては、最終製品内においてPTFEが分離することになるため、設計上の制約が大きく汎用性に劣るものとなる。
また、沈降を解消するために、機械的分散処理により分散安定性を強化することが考えられるが、上記特許文献2~4記載のPTFE水性分散体は、こすれ等によるフィブリル化を抑制してはいるが、機械的分散処理によるフィブリル化を抑制するには不十分であり、機械的分散処理による分散安定性の強化はできないのが現状である。
更に、一般的に添加剤用途に用いられる低分子量化されたPTFE微粒子の中には、機械的分散処理による分散安定性強化を図ることができるものがあるが、PTFE微粒子を完全に水に濡らすことが困難であるため、残存した気泡が機械的分散処理の際に熱により膨張して装置内の圧力が上昇するなどの不具合が起きることがある。また、残存した気泡が膨張すると、一度濡れたPTFE微粒子表面が乾き、むしろ分散性を悪化させるなどするため、装置が本来有している能力を十分に活かした製造ができず、品質のコントロールも困難となるなどの課題がある。
【0007】
このような問題を解決するために本出願人は、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるPTFEの微粒子を10~70質量%含有し、分散剤をPTFEの微粒子に対して0.5~20質量%含有し、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であることを特徴とするPTFE水性分散体を提案している(特許文献5参照)。しかしながら上記の範囲に数平均分子量を調整するためにγ線などの放射線を照射するためにC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩が多量に生成されてしまう欠点があった。これは上記の特許文献3においても同様である。
【0008】
C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩は、従来、レベリング剤、界面活性剤等として利用されて来た歴史があるが現在は規制により排出が制限されている。この規制に合致させる目的もあり、高分子量PTFEに放射線を照射して、380℃における溶融粘度が1.0×102~7.0×105Pa・sである低分子量PTFEを得る工程を含む、低分子量PTFEの製造方法が開示されている(例えば特許文献6)。この製造方法では実施例にもある通り、粒子径が38~70μmと特許文献5における一次粒子径と比較してはるかに大きく、この製造方法のみではPTFE粒子の粒子径が大きなままであり、良好な分散液は得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-92323号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2006-169448号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2006-63140号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2000-198899号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2019-182956号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2019-137851号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の課題及び現状等について、これを解消しようとするものであり、微量のC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩が放射線を照射され生じることにより、更に長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加等しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するPTFE水性分散体等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討の結果、一次粒子径を0.03~0.3μmとし、数平均分子量Mnを1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を特定量含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して特定量含有せしめ、更に放射線照射によるC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率を特定値%未満とし、動的光散乱法による平均粒子径を特定値未満とすることによって、上記目的のポリテトラフルオロエチレン水性分散体等が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散体は、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70質量%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して、0.5~20質量%含有し、更に放射線照射によるC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であることを特徴とする。
ポリテトラフルオロエチレン水性分散体のpHは、8~13であることが好ましい。
また、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体は、25℃、3ヶ月間の静置によるケーキ比率が40%以下であり、その際の再分散比率が95%以上であることが好ましい。
本発明のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物は、バインダー樹脂を固形分比で20~95質量%と、上記構成のポリテトラフルオロエチレン水性分散体をポリテトラフルオロエチレン基準の固形分比で5~80質量%とを少なくとも含むことを特徴とする。
本発明の液体塗布具は、上記構成のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微量のC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩が放射線照射により生じることにより、更に長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するポリテトラフルオロエチレン水性分散体、それを用いたポリテトラフルエチレン機能付与水性組成物、液体塗布具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散体を水性組成物に用いた液体塗布具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散体は、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70質量%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して、0.5~20質量%含有し、更に放射線照射によるC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であることを特徴とするものである。
【0016】
〈PTFE微粒子〉
本発明において、PTFE微粒子は、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万となるものを用いる。
本発明において、「一次粒子径」は、SEM観察による一次粒子径であり、「数平均分子量Mn」は、DSC法による数平均分子量をいう。
この一次粒子径、数平均分子量を有するPTFE粒子は、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法などを用いて、上記一次粒子径、数平均分子量を有するPTFE微粒子を得ることができる。また、数平均分子量Mnが高いPTFE粒子をγ線などの放射線を照射して数平均分子量Mnが1万~3万となった上記一次粒子径範囲を満たすPTFE微粒子を使用しても良いものである。更に、このγ線などの放射線を照射によりPTFE微粒子内部及び表面にC6~C14のパーフルオロカルボン酸が生成されるものである。
本発明(後述する実施例等を含む)において、SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察による一次粒子径とは、最小構成単位となるPTFE微粒子の長手方向の距離を示す。このSEM観察は、日立ハイテクノロジーズ社製、S-4700を用いて測定した。
【0017】
また、DSC法(示差走査熱量測定法、Differential scanning calorimetry)による数平均分子量Mnは、昇温速度10℃/minで350℃まで昇温させ、10℃/minで冷却したときの結晶化熱と下記式より算出したものである。
Mn=2.1×1010×ΔHc-5.16
Mn:数平均分子量
ΔHc:DSC結晶化熱(cal/g)
本発明(後述する実施例等含む)において、上記DSC法は、リガク社製Thermo plus EVO2 DSC8231を用いて測定した。
【0018】
このPTFE微粒子の一次粒子径が0.03μm未満のものでは、分散安定性の確保が非常に難しく、容易に凝集・沈降する分散体となり、一方、0.3μm超過では、長期的に沈降しない、分散状態を維持することが困難となる。
また、数平均分子量Mnが1万未満のものでは、γ線などの放射線を照射するコストが膨らむため不経済となり、一方、3万超過では、PTFE微粒子が分散時の剪断でフィブリル化するため、凝集体を形成する原因となる。
【0019】
これらの特性を有するPTFE微粒子の含有量は、PTFE水性分散体の用途などにより変動するものであるが、PTFE水性分散体全量に対して、10~70質量%(以下、「質量%」を「%」という)、好ましくは、25~65%とすることが望ましい。
このPTFE微粒子の含有量が10%未満では、分散処理などの製造コストが膨らむため不経済であり、一方、70%を超えると、粘度が高くなりすぎて製造が困難であり、製造できたとしても使用性に劣るため、好ましくない。
【0020】
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。上記パーフルオロカルボン酸の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。
ここで得られるPTFE微粒子は、C6~C14のパーフルオロカルボン酸の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。最終的にはPTFE分散体における含有量が10ppb以上25ppb以下であれば問題ない。
【0021】
本発明のPTFE水性分散体には、分散性、再分散性の向上の点、PTFEに対する水の濡れ性向上の点から、C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を除く分散剤が含有される。
用いることができる分散剤としては、上記PTFE微粒子を更に均一且つ安定的に分散させることができるものであれば、特に限定されず、各種の分散剤を用いることができる。
好ましくは、最終製品を作製する際の他材料との相互作用による凝集等の悪影響抑制の点から用いる分散剤は、ノニオン系であることが好ましい。
好ましい分散剤としては、アクリル系共重合物、フッ素系共重合物、ポリエステル系共重合物、アセチレン系共重合物、シリコーン系共重合物などが挙げられ、市販品では、ビックケミー社製のdisperbyk-184、185、190、191、192、193、194、198、199、2010、2012、2013、2015、2055、2060、2061、2096、また、BASF社製のDispex UltraFA4425、4431、4437、4480、4600、4601、PA4550、4560、PX4575、4585、COATEX社製のBR3、A122、123K、P30、P90、DIC社製のメガファックF-251、253、281、430、477、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、565、568、569、570、572、574、575、576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、DS-21、ネオス社製のフタージェント251、208M、212M、215M、250、209F、222F、245F、208G、218GL、240G、212P、220P、228P
、FTX-218、DFX-18、710FL、710FM、710FS、730FL、730LM、610FM、683、601AD、601ADH2、602A、650AC、681、AGCセイミケミカル製のサーフロンS-242、243、420、386、611、651、クラレ社製のMowital B16H、B20H、B30T、B30H、B30HH、B45M、B45H、B60T、B60H、B60HH、B75H、BX860、Pioloform BL16、積水化学工業製のエスレックBL-1、BL-1H、BL-2、BL-2H、BL-5、BL-10、BL-S、BX-L、BM-1、BM-2、BM-5、BM-S、BH-3、BH-6、BH-S、BX-1、BX-5、KS-1、KS-3、KS-5、KS-10、ソルーシア社製のBUTVAR B-72、B-74、B-76、B-79、B-90、B-98、日信化学工業社製のオルフィンD-10A、10PG、E1004、E1010、E1020、E1030W、PD-001、002W、004、005、EXP.4001、4200、4123、4300、WE-001、WE-002、WE-003、エボニック社製のTEGO Dispers 740W、741W、750W、755W、757W、760W、761W、765W、日油社製のエスリームAD-3172M、374M、508E、221P、221J、DP-2、DJ-2、マリアリムAKM-0531、AFB-1521、AAB-0851、SC-0505K、SC-1015F、SC-0708A、などを用いることができる。
【0022】
これらの分散剤の含有量は、PTFE微粒子に対して、0.5~20%、好ましくは、
1~10%とすることが望ましい。
この分散剤の含有量が0.5%未満では、分散性、再分散性の向上を発揮することができず、一方、20%を超えると、分散体の粘度が高くなるため製造面や使用面で不利となる。また、PTFE分散体を配合して作製される最終製品において不必要な成分を多く含む形となり、好ましくない。
【0023】
〈C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩〉
本発明のPTFE水性分散体には、更なる分散性、再分散性の向上の点、PTFEに対する水の濡れ性向上の点から、放射線照射の結果、C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩が含有されることとなる。
これらC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩は、特にPTFE表面に対する水の濡れ性向上に効果があり、そこから分散性などの向上に繋がるものである。
C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩のうち、パーフルオロオクタン酸及びその塩、パーフルオロオクタンスルホン酸及びその塩が特に好ましい。
【0024】
本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。本発明のPTFE水性分散体には、C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。下限は、検出限界未満の量であってよいが、5ppbであることも好ましい。
【0025】
本発明のPTFE水性分散体は、保存安定性などの点から、pHが8~13であることが好ましく、更に好ましくは、8.5~11.5が望ましい。
pHが8未満となると、PTFE水性分散体にカビが生えたり、雑菌が繁殖して腐敗したりするため、冷蔵保存するなどの余計なコストを発生させることになる。カビや雑菌が繁殖しない酸性領域に調整することも可能だが、多くの産業設備は、接液部にステンレスを用いているため、接液部にライニング処理が必要になるなど、余計なコストを発生させることになる。一方、pHが13超過となると、生体に対する危険性が大きくなり、PTFE分散体を配合して作製される最終製品の用途が制限される。また、このpHの範囲内であるとC6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の水中での溶存安定性が良好となる。
このPTFE水性分散体におけるpHは、用いる成分、その含有量等により調整され、必要に応じてpH調整剤を用いて調整される。
【0026】
用いることができるpH調整剤としては、アミン類、水酸化ナトリウムなどの金属イオン等を含むものが挙げられる。アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等の1級アミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の3級アミン、テトラメチル、テトラエチル、テトラプロピル、テトラブチル、テトラアミル、テトラヘキシル、ベンジルトリメチルのそれぞれの4級アンモニウムヒドロキシド等の少なくとも1種が挙げられる。
これらのpH調整剤の含有量は、PTFE水性分散体のpHが上記好ましい範囲となる量であれば良く、好適な量を含有せしめることができる。
【0027】
本発明のPTFE水性分散体には、分散媒として水(イオン交換水、蒸溜水、精製水、
純水、超純水、水道水等)を用いるが、更なる保存性を向上せしめる点から、好ましくは、水溶性溶剤や、更に、必要に応じて、防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤から選ばれる少なくとも1種を適宜量含有することができる。
【0028】
本発明のPTFE水性分散体は、上記特性のPTFE微粒子、分散剤などの添加剤を加えて分散機、混練機などを用いて分散・混合し、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満となるように調製される。
本発明において、「泡沫体積」は、液温20℃、絶対圧力0.003MPaの真空下における泡沫体積をいい、PTFE水性分散体の泡沫体積比率は、PTFE水性分散体体積に対して10vol%未満であることが必要であり、好ましくは、5vol%以下であることが望ましい。この泡沫体積比率が10vol%以上であると、分散体内に残存している気泡がPTFE微粒子の分散を阻害したり、PTFE微粒子の再凝集を引き起こしたり、分散機、混錬機などを用いた処理において、発熱時に気泡が膨らみ装置内で圧力が上昇したりすることとなり、好ましくない。少なくとも、分散機や混錬機でPTFE微粒子を分散させる前段から、容器へ充填するまでの工程を通して泡沫体積比率を10vol%未満の状態を保つ必要があり、容器へ充填後の保管状態においても、泡沫体積比率を低水準に保っておくことが好ましい。保管状態の泡沫体積比率は3vol%未満とすることが好ましい。
本発明(後述する実施例等を含む)において、上記泡沫体積比率の算出は、以下により得ることができる。
1atmにおけるPTFE水性分散体の体積をVnとし、液温20℃のPTFE水性分散体を真空容器内で絶対圧力を0.003MPaまで減圧した時の水性分散体と膨張した泡を合わせた体積をVvとすれば、泡沫体積Vbは、Vb=Vv-Vnにより求めることができ、本発明では、液温20℃、絶対圧力0.003MPaの真空下における泡沫体積Vbがポリテトラフルオロエチレン水性分散体体積に対して10vol%未満とするものである〔0.1>(Vv-Vn)/Vn〕である。
【0029】
本発明において、PTFE水性分散体の泡沫体積比率を10vol%未満とする形態としては、例えば、真空脱泡処理、加熱エージング処理等により行うことができる。
真空脱泡処理としては、真空脱泡ミキサーなどの真空脱泡装置を用いて行うことができ、例えば、真空チャンバー内にPTFE水性分散体を充填し、撹拌しながら絶対圧力0.020MPaまで減圧し、10分後に大気圧へ戻す処理などにより、目的の泡沫体積比率とすることができる。
また、加熱エージング処理としては、PTFE水性分散体を缶などに密閉して充填し、40~50℃の保温庫で数日間寝かすことで気泡を抜き、泡沫体積比率を下げることができる。
これらの各処理により上記泡沫体積比率に調製することができるものとなる。これらの泡抜き処理は分散機、混錬機などを用いた処理よりも前段で実施することが好ましい。
【0030】
また、本発明におけるPTFE水性分散体におけるPTFE粒子は、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であり、好ましくは、50~250nmであることが望ましい。この平均粒子径が300nm以上であると、経時的に沈降を抑制することが難しく、再分散させることも困難となり、好ましくない。
本発明(後述する実施例等を含む)において、動的光散乱法による平均粒子径の測定は、大塚電子社製、FPAR-1000を用いて測定した値である。
本発明において、上記動的光散乱法による平均粒子径を300nm未満とするためには、例えば、精製水に分散剤とPTFE微粒子を配合し、分散機(WAB社製ダイノミルマルチラボ型、φ0.3mmジルコニアビーズ、充填率65%、周速10m/s)で所望の平均粒子径となるまで処理を続けるなどして、上記平均粒子径に調製することができるものとなる。
【0031】
また、好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、本発明のPTFE水性分散体は、25℃、3ヶ月間の静置によるケーキ比率が40%以下であり、その際の再分散比率が95%以上であることが望ましい。
本発明(後述する実施例等を含む)において、25℃又は50℃、3ヶ月間の静置によるケーキ比率は、円筒のガラス容器にPTFE水性分散体を充填し、25℃又は50℃で3ヶ月静置したときの液高さHlに対するケーキ高さHcの割合をいい、Hcは容器をゆっくり傾け、ケーキ以外の液体分を除去した後測定し、式:Hc/Hl×100(%)により算出した値である。
また、本発明(後述する実施例等を含む)において、再分散比率は、25℃又は50℃、3ヶ月静置後の再分散性をいい、25℃又は50℃、3ヶ月静置後、ヤマト科学社製タッチミキサーMT-31に10秒間垂直に押し付けて振とうさせ、上下反転を1度行う。これを3回繰り返した後、上部よりケーキを採取しないように液体分を採取し、固形分(180℃、10分後の質量/採取した液体分の質量)を測定し、得られた固形分の初期固形分〔(180℃、10分後の質量)/(水性分散体質量)〕に対する比率を百分率で計算した値を再分散比率とする。
上記ケーキ比率を40%以下とし、その際の上記再分散比率を95%以上とするためには、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるPTFE微粒子を10~70%含有し、分散剤をPTFE微粒子に対して、0.5~20%含有するPTFE水性分散体の中間体に、上記脱泡処理を行い、分散機(WAB社製ダイノミルマルチラボ型、φ0.3mmジルコニアビーズ、充填率65%、周速10m/s)で所望の分散状態となるまで処理を続けるなどすることにより、上記ケーキ比率、上記再分散比率のPTFE水性分散体を得ることができる。
【0032】
このように構成される本発明のPTFE水性分散体は、一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して、0.5~20%含有し、更に放射線照射の結果、C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満となることにより、長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するポリテトラフルオロエチレン水性分散体が得られるものとなる。
本発明のPTFE水性分散体は、最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現できるので、インク、塗料(ニス、ペンキ等)、グリース、トナーを改質する改質剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックなどの成形材料の滑り性や耐摩耗性の向上剤、めっき液への添加剤等として好適に使用することができる。また、成形材料の添加剤として、例えば、コピーなどのロール体の非粘着性・摺動特性の向上、自動車等のダッシュボードなどの実装品、家電製品、電気機器のカバー等の成形品の質感を向上させる用途や、軸受、歯車、カム、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品等の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、リチウム電池などの二次電池や燃料電池の電極バインダーの硬度調整剤、電極表面の撥水処理剤等の各用途に好適に使用できるものである。
【0033】
本発明のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物は、バインダー樹脂を固形分比で20~95%と、上記構成のポリテトラフルオロエチレン水性分散体をポリテトラフルオロエチレン基準の固形分比で5~80%とを少なくとも含むことを特徴とするものである。
用いることができるバインダー樹脂としては、インク、塗料(ニス、ペンキ等)、グリース、トナー、リチウム電池などの二次電池や燃料電池の電極バインダーなどへの用途に
より、好適なバインダー樹脂が選択されるものであり、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマーなどの水分散体の少なくとも1種が挙げられる。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等の水分散体が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等の水分散体が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等の水分散体が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂であってもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等の水分散体が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等の水分散体が挙げられる。
【0034】
用いるポリテトラフルオロエチレン水性分散体は、上記構成となる一次粒子径が0.03~0.3μmであり、数平均分子量Mnが1万~3万であるポリテトラフルオロエチレンの微粒子を10~70%含有し、分散剤をポリテトラフルオロエチレンの微粒子に対して0.5~20%含有し、更に放射線照射の結果、C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を10~25ppb含み、泡沫体積比率が10vol%未満であり、動的光散乱法による平均粒子径が300nm未満であるポリテトラフルオロエチレン水性分散体であり、好ましくは、pHが8~13であるもの、及び/又は25℃、3ヶ月間の静置によるケーキ比率が40%以下であり、その際の再分散比率が95%以上であるものが望ましい。
【0035】
本発明のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記C6~C14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、並びに/或いは、C6~C14のパーフルオロスルホン酸及びその塩、上記バインダー樹脂、上記ポリテトラフルオロエチレン水性分散体の他に、例えば、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の各種添加剤を適宜量含んでいてもよい。
上記バインダー樹脂の含有量は、成膜性の点、固着性などの点から、PTFE機能付与水性組成物中の固形分全量に対して、固形分比で20~95%、好ましくは、30~90%であることが望ましい。
また、上記構成のPTFE水性分散体の含有量は、PTFE機能発現の点、固着性などの点から、PTFE機能付与水性組成物全量に対して、固形分比で5~80%、好ましくは、10~60%であることが望ましい。
【0036】
このように構成される本発明のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物は、バインダー樹脂に対しても、分散安定性に優れ、インク、塗料(ニス、ペンキ等)などの最終製品内部でPTFEが分離せず、各用途の所望の最終形態においてPTFEの撥水性、撥油性、電気特性、耐熱性、電気絶縁性、低誘電特性、低摩擦特性、非粘着性、耐候性、難燃性などの各種機能付与を目的に応じて実現でき、経済的にも優れた生産性を有するポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が得られることとなる。
【0037】
本発明の液体塗布具は、上記構成のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填されたことを特徴とするものである。
用いることができる液体塗布具としては、1)上記構成のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填され、前方に備えた塗布部(塗布体)でポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を対象物に塗布できるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を充填する軸筒と、該軸筒の先端部に設けた塗布部材となる塗布部と、上記軸筒と塗布部との間に設けた弁機構とを少なくとも備え、上記塗布部を押圧することにより、軸筒内のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を塗布部に供給せしめる構造となる液体塗布具や、2)先端に所定の塗布部を設け、軸筒となる本体部内方に充填したポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を、前記本体部に取り付けた液体押圧機構によって前方へと押圧し、塗布部へと供給するようにした液体塗布具、3)先端に所定の塗布部を設け、軸筒となる本体部内方に充填したポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を、塗布部と軸筒の間に毛細管力により塗布部への供給する中継部材を設けた液体塗布具などが挙げられる。
【0038】
図1は、上記構成のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填されている塗布具を示すものである。筆記具1は、
図1に示すように、小径の先軸11及び大径の後軸12が一体に形成された軸筒10と、先軸11の前方側に装着された第2の塗布部30とを備えている。後軸12の内部には、
図1に示すように、インクが貯蔵されるインク貯蔵部15が収容される。先軸11の先端付近には、軸筒10の内部と外部との空気の流通を可能とする空気置換口が設けられている。このインク貯蔵部15には、本発明の水性組成物が繊維多孔体に含浸された状態で収容され、把持部のリブと、尾栓60の尾部64とに挟まれて固定されている。ている。また、第2の塗布部30には、第1の塗布部20が貫通している。第1の塗布部20の先端は芯周囲部材である第2の塗布部30の先端から突出している。第1の塗布部20の後端はインク貯蔵部15の前端に突き刺さるまで延伸している。第1の塗布部20においては、インク貯蔵部15に差し込まれている後端部24から、インク貯蔵部15に貯留されているインクが毛細管力によって筆記先端部にまで誘導される。また、
図1には図示しないが、先軸11には、キャップが装着される。軸筒10は、前述したように、先軸11と後軸12とを有する。先軸11の前方の端部には前部開口13が開口し、後軸12の後方の端部には後部開口14が開口している。なお、後部開口14には尾栓60が圧入されている。また、軸筒10の外形は、横断方向の断面が、全体に丸みを帯びた四角形に形成されている。
【0039】
この液体塗布具は、過剰に筆圧がかかっても第1の塗布部20が可動であり、第2の塗布部30に負荷がかかるため、第1の塗布部20の座屈や潰れによる筆記不良を防ぐことが可能である。
【0040】
本発明の液体塗布具では、上記構成のポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物が充填されているので、簡単に、かつ容易に、各用途の塗布対象物にカスレやムラなく、均一にポリテトラフルオロエチレン機能付与水性組成物を塗布することができるものとなる。
【実施例0041】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1~3及び比較例1及び2:PTFE水性分散体の調製〕
下記表1に示す配合処方(所定の放射線を5~30分間照射したPTFE粒子、分散剤、pH調製剤、水)にて、分散機:ダイノ-ミル マルチラボ型を用いて、分散条件:ジルコニアビーズφ0.01mm、充填率50%、周速10m/sの条件で1時間のバッチ処理の後、ビーズを分離してPTFE水性分散体を回収した。
真空脱泡処理は、真空脱泡装置(ミキスタ工業社製、小型真空脱泡ミキスタ)を用いて、真空チャンバー内に得られた実施例、比較例の各PTFE水性分散体を充填し、撹拌しながら絶対圧力0.020MPaまで減圧し、10分後に大気圧へ戻す処理を行った。
実施例1は、本出願人による特開2019-182956(特許文献5)の実施例3に相当し、比較例1及び2は、夫々、同実施例1及び2に相当する配合処方である。
【0043】
得られた各PTFE水性分散体について、上述の測定方法により、泡沫体積比率、平均粒子径を測定し、下記方法により、pHを測定した。
(pH測定法)
得られた各PTFE水性分散体(25℃)について、pH計(HORIBA社製、F-72)を用いて測定した。
また、得られた各PTFE水性分散体について、25℃又は50℃、3ヶ月経過後の静置ケーキ比率(%)、再分散比率を上述の方法により測定した。
これらの測定、評価結果を下記表1に示す。
【0044】
(PTFE機能付与水性組成物の評価)
更に、得られた実施例1~3及び比較例1及び2の各PTFE水性分散体を固形分基準で50質量%と、バインダー樹脂1(アクリル樹脂、Neocryl XK-190、楠本化成社製、固形分45質量%)、または、バインダー樹脂2(ウレタン樹脂、スーパフレックス150、第一工業製薬社製、固形分30質量%)を固形分基準で各50質量%とをビーカー中で混合し手攪拌して実施例1~3及び比較例1及び2対応の各PTFE機能付与水性組成物1,2を調製した。
得られたPTFE機能付与水性組成物1,2について、下記評価方法により、分散安定性について評価した。これらの評価結果を下記表1に示す。
【0045】
(分散安定性の評価法)
得られた各PTFE機能付与組成物について、40℃、1週間後の分散性について、下記評価基準で目視で官能評価した。
評価基準:
○:良好
△:僅かに凝集・沈降あり
×:完全に凝集または沈降あり
【0046】
(液体塗布具による塗布性の評価)
三菱鉛筆社製の液体塗布具(PC-17K、塗布部:フェルト繊維塗布体、軸材質:PP樹脂、サイズ:軸径φ28.0×全長157.0mm)の容器にPTFE機能付与水性組成物1を充填し、アクリル樹脂板(100×100×5mm)へ塗布して、その塗布性を下記評価基準で官能評価した。この評価結果を下記表1に示す。
評価基準:
○:良好
△:僅かにカスレ・ムラあり
×:完全にカスレやムラあり
【0047】
【0048】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1~3は、本発明の範囲外と
なる比較例1及び2に較べて、特に高温(50℃)での長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するPTFE水性分散体となることが確認された。
また、上記実施例及び比較例のPTFE水性分散体を用いたPTFE機能付与水性組成物、それを充填した液体塗布具は、分散安定性、塗布性に優れることが確認された。
本発明のPTFE水性分散体は、特に高温での長期的な分散安定性に優れ、塗料などの液体材料に添加しても最終製品内部でPTFEが分離せず、所望の最終形態においてPTFEの機能付与を実現でき、経済的にも優れた生産性を有するので、インク、塗料(ニス、ペンキ等)、グリース、トナーを改質する改質剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックなどの成形材料の滑り性や耐摩耗性の向上剤、めっき液への添加剤等として好適に利用することができる。