(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098388
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】磁石内蔵型自律式水中網清掃ロボット
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20220624BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20220624BHJP
A47L 1/03 20060101ALI20220624BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20220624BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A01K61/60 324
B08B1/04
A47L1/03
B25J5/00 A
G05D1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220050
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521034306
【氏名又は名称】藤原 慎平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
【テーマコード(参考)】
2B104
3B116
3C707
5H301
【Fターム(参考)】
2B104CG11
3B116AA46
3B116AB54
3B116BA13
3C707AS15
3C707CS08
3C707FS08
3C707WA16
5H301AA05
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301MM04
5H301MM09
5H301QQ04
(57)【要約】
【課題】操縦者が必要なく、かつプロペラを常に回しておく必要が無い自律式水中網清掃ロボットを開発する。
【解決手段】本発明のロボットは、水中に保持される円型養殖網の表面に沿って自律走行しながら、搭載された清掃用円盤を回転させることによってこの養殖網を清掃する水中網清掃ロボットである。既存のロボットとは違って機体が表と裏に分かれており、両機体のタイヤ及び両横に磁石が埋め込まれていて、表と裏の機体で網を挟み込み、タイヤを回転させることで網表面を清掃しながらの自律走行を可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に保持される円型養殖網の表面に沿って自律走行しながら、搭載された清掃用円盤を回転させるによってこの養殖網を清掃する水中網清掃ロボットであって、
機体が表と裏に分かれており、両機体のタイヤ及び両横に磁石が埋め込まれていて、表と裏の機体で網を挟み込み、タイヤを回転させることで網表面を自走する水中ロボット。
【請求項2】
請求項1の自律走行において、機体に搭載された加速度センサにより機体の向きを、圧力センサにより機体がいる水深を検知することによって、設定した水深の間を往復しながら横に少しずつ移動し、網表面をまんべんなく自律走行する水中ロボット。
【請求項3】
請求項1のタイヤにおいて、内蔵磁石の磁極を交互にして埋め込むことによって、タイヤのスリップを防ぐ水中ロボット。
【請求項4】
請求項1の清掃用円盤において、表裏の機体の両裏に円盤を搭載することで網を両面から清掃する水中ロボット。
【請求項5】
動力を必要とするのは裏表の機体のうち片方のみで、もう片方は搭載された各磁石により、タイヤと円盤の動きが対となる機体に連動する水中ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に保持された円型養殖網を、網の両面から円盤の回転により自動で清掃する水中網清掃ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の網清掃ロボットとして、プロペラによる推力で網に張り付いてタイヤにより走行するロボットが挙げられる(特許文献1)。また、このロボットの清掃では円盤ではなく高圧水ポンプを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-071037
【特許文献1】特開2009-248061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水中網清掃ロボットは自律式ではなく遠隔操作式であったため、船上から操縦者が操作する必要があり、限られた時間内でしか清掃できず、また操縦者の負担にもなり、
遠隔操作用のケーブルが付属するため、ロボットは船からあまり離れることはできず、取り回しが困難である。
【0005】
また、従来のロボットはプロペラへの電力供給が途絶えると網から剥がれてしまうため、常にプロペラを回しておく必要があり、電力の消費が大きい。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題を解決すべく、操縦者が必要なく、かつ電力消費の少ない自律式水中網補修ロボットを開発する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水中に保持される円型養殖網の表面に沿って自律走行しながら、搭載された円盤の回転によってこの円型養殖網を清掃する水中網清掃ロボットであって、
前記のロボットとは違って機体が表と裏に分かれており、両機体のタイヤ及び両横に磁石が埋め込まれていて、表と裏の機体で網を挟み込み、タイヤを回転させることで網表面を清掃しながら走行するロボットである。
【0008】
機体の片方を表機体、もう片方を裏機体とする。表機体のロボットケーシング内部にはマイクロコントローラ、タイヤ駆動用直流モータ、円盤駆動用直流モータ、加速度センサ、圧力センサ、電流センサ、電圧センサ、バッテリーを含めた電気回路基板が搭載されている。裏機体には動力や電子部品は搭載されていない。表機体のタイヤ駆動用モータはタイヤひとつにつき一台ずつ、計4台搭載されている。表機体のロボットケーシングには開閉部があり、バッテリーの充電や設定水深の変更が可能である。また、ロボットケーシング外部にはON/OFF用のスイッチを設ける。
【0009】
前記の自律走行において、機体に搭載された加速度センサにより機体の向きを、圧力センサにより機体がいる水深を検知することによって、設定した2つの水深の間を往復しながら横に少しずつ移動し、網表面をまんべんなく自律走行しながら清掃することができる。2つの設定水深は清掃する網の深さをもとに設定する。機体の前後進により発生する加速度はそこまで大きくないため、加速度センサで出力する値はほぼ重力加速度成分のみと仮定することができ、機体の方向検知にはこの加速度センサのみ使用すれば十分である。
【0010】
前記の円盤において、表裏の機体の両方に円盤を搭載することで網を両面から清掃する。円盤内部には回転用の磁石が内蔵されていて、裏側の円盤に回転力を伝えるため片側は動力不要となる。
【0011】
ロボットの走行中は電流センサによって駆動用モータに流れる電流の大きさを検知し、駆動用モータにかかる負荷を感知する。タイヤに付着物が絡まるもしくは機体が付着物に引っかかり自走不能となる状況は、駆動用モータにかかる負荷により推定することができ、負荷が大きくなると過電流にならないように駆動用モータに流す電流を止め、後に人間が潜水して機体を回収する。
【0012】
電圧センサによりバッテリーが空になる直前を検知し、空になる前に水面付近まで自動的に機体が上って停止することで、機体の回収が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は自律式であるため、投入時と回収時以外では人間の介入は不要であり、操縦者は必要ない。
【0014】
また、本発明は自律式であるが故に遠隔操作用のケーブルは必要なく、ロボットは自由に移動可能である。
【0015】
さらに、本発明は磁力を用いて網に張り付くため、張り付くために必要な電力はゼロであり、何らかの原因でロボットの電源が切れても網に張り付いたままで居られるため紛失防止にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の水中網清掃ロボットの清掃対象網を含めた概略側面図である。
【
図2】同水中網清掃ロボットの片側機体のみの概略裏面図である。
【
図3】同水中網清掃ロボットの裏表両機体の概略斜視図である。
【
図4】同水中網清掃ロボットに搭載する磁石内蔵タイヤの概略図である。
【
図5】同水中網清掃ロボットの両横に位置ずれ防止磁石を取り付けた場合とそうでない場合の概略図である。
【
図6】同水中網清掃ロボットの自律走行経路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図3は、本発明の水中網清掃ロボット本体を示す。
図1および
図3では裏表の両機体が描かれており、この2機で網を挟み込むことで、搭載してある磁石により網に張り付くことができる。
【0018】
機体に搭載してあるタイヤにおいて、ホイール表面にネオジウム磁石を接着し、型に入れてシリコンシーラント材を流し込むことによってタイヤを製作する。内蔵磁石により裏側のタイヤに回転力を伝えるため、機体の片側は動力不要となる。
図4のように磁極を交互に配置することによって、表機体と裏機体のタイヤでのずれを無くし、タイヤのスリップを防ぐ。
【0019】
ネオジウム磁石が前記のタイヤに内蔵されたもののみの場合、網の張力が弱くたわんでしまう状況では、
図5左図のように表機体のタイヤのみが回ろうとして、機体が前に進まない。これは動力が表機体にのみ搭載されていることが原因である。そこで、
図5右図のように機体横に位置ずれ防止磁石(ネオジウム磁石)を搭載することで、表と裏の機体の網側面方向の位置がずれなくなり、前進することができる。
【0020】
ロボットを使用する円型養殖網の深さをあらかじめ調べておき、ロボットケーシングを開いてマイクロコントローラをパソコンにつなぎ、一つ目の設定水深は水面より少し深め、二つ目の設定水深を養殖網の深さより少し浅めに設定する。また、このときにバッテリーの充電も済ませておく。
【0021】
充電が完了したロボットを小型船に乗せて円型養殖網の近くまで運び、表裏の機体を持った人間が入水するか、クレーンで吊るして網の両側から機体を張り付ける。網から剥がす場合は機体の片側をロープで繋いで引っ張る。表裏の両機体は水に浮くよう設計することで回収が容易になり、紛失防止にもなる。
【0022】
投入後はスイッチをONにして、
図6のように設定した2つの水深の間を往復しながら横に少しずつ移動し、網表面をまんべんなく自律走行しながら清掃することが可能である。養殖網が円型であるためロボットが角にぶつかることはなく、バッテリーが空になる前に水面付近に上がって自動停止するため、後からゆっくりと回収することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 水中網清掃ロボット
2 ロボットケーシング
3 磁石内蔵タイヤ
4 位置ずれ防止磁石(ネオジウム磁石)
5 清掃用円盤
6 円盤回転用磁石
7 内蔵磁石(ネオジウム磁石)
8 ホイール
9 シャフト
10 シリコンシーラント
N 養殖網
R 自律走行経路
D1 設定水深▲1▼
D2 設定水深▲2▼