(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098396
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】セントラル空調の低温プラズマ滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/22 20060101AFI20220624BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20220624BHJP
【FI】
A61L9/22
F24F7/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009888
(22)【出願日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】202011519940.3
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】呂 陽
(72)【発明者】
【氏名】王 貝貝
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD17
4C180KK01
4C180LL06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分解でき、使いやすく、滅菌時間も短く、効率が高く、室内に吹き込む空気の質を効果的に向上し、人の健康を守ることができるセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置を提供する。
【解決手段】混合空気ダクト7と熱気・湿気処理ダクト4との間の区間に低温プラズマ滅菌装置3が設けられ、低温プラズマ滅菌装置3がイオン発生器12と、イオン発生器12のイオン管と、コントローラ11と、制御メインボードとを備え、表示灯、イオン制御スイッチ、コントローラ11およびイオン発生器12が制御メインボードの前面に配置され、イオン発生器12のイオン管が制御メインボードの背面に位置し、微生物センサー2が排気ダクト6に設けられ、微生物センサー2のセンシングプローブが排気ダクト6内に挿入され、コントローラ11は、微生物センサー2およびイオン発生器12に電気的に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セントラル空調システムは、左から右の順に外気ダクト(5)と、還気ダクト(5a)と、混合空気ダクト(7)と、熱気・湿気処理ダクト(4)と、排気ダクト(6)と、給気ダクト(8)と、を含むセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置であって、前記混合空気ダクト(7)と熱気・湿気処理ダクト(4)との間の区間に低温プラズマ滅菌装置(3)が設けられ、前記低温プラズマ滅菌装置(3)がイオン発生器(12)と、イオン発生器(12)のイオン管と、コントローラ(11)と、制御メインボード(1)と、を備え、表示灯(9)、イオン制御スイッチ(10)、コントローラ(11)およびイオン発生器(12)が制御メインボード(1)の前面に配置され、イオン発生器(12)のイオン管が制御メインボード(1)の背面に位置し、微生物センサー(2)が排気ダクト(6)に設けられ、微生物センサー(2)のセンシングプローブが排気ダクト(6)内に挿入し;前記コントローラ(11)は、微生物センサー(2)およびイオン発生器(12)に電気的に接続されることを特徴とする、セントラル空調の低温プラズマ滅菌装置。
【請求項2】
前記コントローラ(11)は、S7-200 PLCコントローラを用いることを特徴とする、請求項1に記載のセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気環境における生物学的汚染制御分野に属するセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の生物学的成分は、吸入曝露を通じて肺機能障害、アレルギー性疾患、感染性疾患などを含む多くの負の面の健康問題を引き起こす可能性がある。セントラル空調システムは、内気と外気を交換するための重要なツールとして、大気中の生物学的成分の拡散伝播経路になり、かつ空調システム内の特殊な環境条件が、微生物の生長と繁殖に良好な温床となり、従来の消毒技術や洗浄技術が実際の条件の制限により、本来の役割を果たしていないため、空調システム内部の汚染問題がさらに室内空気中の微生物濃度がさらに上昇していた。空調システムのバイオエアロゾルは、人々の密集、密閉された空間で伝播するリスクが相対的に大きくなり、突発的な公衆衛生事案およびバイオセーフティが益々重要になっている現在、セントラル空調システムに対しバイオエアロゾルの予防と制御に関する研究が行われ、室内空気中の微生物汚染への制御が特に重要である。
【0003】
新たな環境汚染物質処理技術として、低温プラズマ技術は、国内外で現在ホットな研究の一つとなり、近年、空気浄化の分野でも低温プラズマが応用され始めている。低温プラズマ技術は、滅菌時間と効率が短く、効率が高い利点を有し セントラル空調システム滅菌の予防や制御方法として低温プラズマ滅菌技術を用いると、室内空気質を向上し、室内の体の健康を確保でき、また空調システムの科学的かつ合理的な設計、運転、保守、および管理の開発にとって重要な応用価値がある。
【0004】
本発明は、低温プラズマ滅菌技術を利用し、滅菌速度が速く、効率が高くかつ環境に優しいという特長により、セントラル空調システムを流れる空気中の感染性を有するウイルスおよび細菌を消毒滅菌することで、室内空気質を向上し、セントラル空調システムでの病原性微生物の伝播を抑制し、室内にいる体の健康と安全衛生を保障する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セントラル空調システムでの病原性微生物の拡散伝播問題、特に一部の高感染性を有するウイルスおよび細菌により、室内空気質が非感染性および交差感染などの要件を満たさない等の問題を解決するため、全体として分解でき、使いやすく、滅菌時間も短く、効率が高く、室内に吹き込む空気の質を効果的に向上し、人の健康を守ることができるセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置を提供する目的をとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。
セントラル空調システムは、左から右の順に外気ダクトと、還気ダクトと、混合空気ダクトと、熱気・湿気処理ダクトと、排気ダクトと、給気ダクトと、を含むセントラル空調の低温プラズマ滅菌装置であって、前記混合空気ダクトと熱気・湿気処理ダクトとの間の区間に低温プラズマ滅菌装置が設けられ、前記低温プラズマ滅菌装置がイオン発生器と、イオン発生器のイオン管、コントローラと、制御メインボードと、を備え、表示灯、イオン制御スイッチ、コントローラおよびイオン発生器が制御メインボードの前面に配置され、イオン発生器のイオン管が制御メインボードの背面に位置し、微生物センサーが排気ダクトに設けられ、微生物センサーのセンシングプローブが排気ダクト内に挿入し;前記コントローラは、微生物センサーおよびイオン発生器に電気的に接続される。
【0007】
前記コントローラは、S7-200 PLCコントローラを用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有利な効果として、セントラル空調の低温プラズマ滅菌装置であって、セントラル空調システムは、左から右の順に外気ダクトと、還気ダクトと、混合空気ダクトと、熱気・湿気処理ダクトと、排気ダクトと、給気ダクトと、を含み、混合空気ダクトと熱気・湿気処理ダクトとの間の区間に低温プラズマ滅菌装置が設けられ、低温プラズマ滅菌装置がイオン発生器と、イオン発生器のイオン管、コントローラと、制御メインボードと、を備える。低温プラズマ滅菌装置は、セントラル空調システムの外気・還気・混合空気ダクトの後、空調システム熱気・湿気処理ダクトの前に取り付けられ、間断なく室内に送り込まれる空気を滅菌する。低温プラズマ滅菌装置は、ベース用固定ボルトのみでセントラル空調システムに取り付けられることができ、既存のシステムを分解・改造する必要がなく、シンプルで使いやすいデザインである。微生物センサーによって空気中の微生物の濃度レベルを検出し、コントローラを介してイオン発生器の電力を調整して、室内環境を常に高品質レベルにさせる。イオン管は、イオン管用固定ボルトでイオン発生器に接続され、取り外しに便利で、イオン管の数および長さもセントラル空調システムの具体的な要件に応じて交換調整することができる。低温プラズマ滅菌装置には、表示灯が装備され、電源が落ちてしまうことやプラグが緩んだりすると、表示灯が使用過程の安全性を確保するため、低温プラズマ滅菌装置のトラブルシューティングが必要であるという注意を喚起する。低温プラズマ滅菌装置全体は、柔軟に取り外すことや便利に使用でき、顕著な滅菌効果があり、室内空気質を効果的に向上し、体の健康を守る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】セントラル空調の低温プラズマ滅菌装置の設置位置を示す模式図である。
【
図2】
図1内の低温プラズマ滅菌装置正面図である。
【
図4】
図1内の低温プラズマ滅菌装置背面図である。
【
図5】SP-200PLCコントローラの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は、本考案の実施例における図面を参照しつつ、本考案の実施例における技術的手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、描写された実施例は、すべての実施例ではなく、本考案の実施例の一部に過ぎない。
【0011】
図1乃至
図4は、セントラル空調システムの低温プラズマ滅菌装置の構造模式図を示す。図内のセントラル空調システムの低温プラズマ滅菌装置では、セントラル空調システムは、左から右の順に外気ダクト5と、還気ダクト5aと、混合空気ダクト7と、熱気・湿気処理ダクト4と、排気ダクト6と、給気ダクト8と、を含む。混合空気ダクト7と熱気・湿気処理ダクト4との間の区間に低温プラズマ滅菌装置3が設けられる。低温プラズマ滅菌装置3は、イオン発生器12と、イオン発生器12のイオン管と、コントローラ11と、制御メインボード1と、を備え、表示灯9、イオン制御スイッチ10、コントローラ11およびイオン発生器12が制御メインボード1の前面に配置され、イオン発生器12のイオン管が制御メインボード1の背面に位置し、微生物センサー2が排気ダクト6に設けられ、微生物センサー2のセンシングプローブが排気ダクト6内に挿入する。コントローラ11は、微生物センサー2およびイオン発生器12に電気的に接続される。コントローラ11は、S7-200 PLCコントローラを用いる。
【0012】
図5は、PLCコントローラの原理図を示している。微生物センサー2、電源制御リレーおよびイオン発生器12は、SP-200コントローラに電気的に接続され、電源制御リレーが商用電源に接続されている電源制御リレーによって電力を供給する。
【0013】
微生物センサー2が、空調の排気ダクト内の空気中の微生物が基準を超えていること、すなわち排気ダクト内の空気中の微生物がPLCコントローラの設定値よりも高いことを検出すると、PLCコントローラは、電源制御リレーを介してイオン発生器12に電力を供給すると同時に、第1イオン管13にも電力を供給し、イオンを生成し始めて排気ダクト内の空気中の微生物を殺菌する。殺菌設定時間(10分間)経過後、微生物センサー2が空調排気ダクトの空気中の微生物がまだ基準を超えていることを検出すると、PLCコントローラは、第1イオン管13および第2イオン管13aに同時に電力を供給してイオン発生器12で生成するイオン濃度を増加して排気ダクト内の空気中の微生物を殺菌する。さらに殺菌設定時間(10分鐘)経過後、微生物センサー2が空調排気ダクト内の空気中の微生物がまだ基準を超えていることを検出すると、PLCコントローラは、第1イオン管13、第2イオン管13aおよび第3イオン管13bに同時に電力を供給して、最大のプラズマ濃度で排気ダクト内の空気中の微生物を殺菌する。
【0014】
制御メインボード1上のイオン制御スイッチ10は、バックアップオプションとして、排気ダクト内の空気中の微生物を殺菌するためのプラズマ強度を手動で制御することができる。
【0015】
PLCコントローラは、機械の製造プロセスを制御するためのデジタル演算電子システムのプログラマブルロジックコントローラである。市場で一般的に使用されている最も単純なシーメンスのS7シリーズPLCは、小型、高速、標準化され、ネットワーク通信能力、より強力な機能、およびより高い信頼性を備えている。S7-200PLCコントローラ(モデル6ES7211-0BA23-0XB0、AC/DC/リレー、入力6点出力4点)は、マイクロPLCであり、様々な産業、各種場所での自動検出、モニタリングおよび制御に適し、S7-200PLCの強力な機能により、スタンドアロン操作またはネットワークとしてリンクするかを問わず、複雑な制御機能を実現できる。
【0016】
実際の応用において、異なる滅菌要件に応じてイオン管の数を増やすことや、長さの異なるイオン管に交換できるようになり、また実際のニーズに応じてモデルの異なるPLCコントローラにも交換できる。
【0017】
セントラル空調システム低温プラズマ滅菌装置の設置および動作プロセス:セントラル空調システムの外気ダクト5は、室外の外気口に接続され、還気ダクト5aが室内の還気口に接続され、給気ダクト8が室内の給気口に接続される。低温プラズマ滅菌装置3は、混合空気ダクト7に取付けられた後、熱気・湿気処理ダクト4の前の風道にイオン発生器12のイオン管(13、13a、13b)を挿入するための取り付け穴があらかじめ穿孔され、イオン管(13、13a、13b)の方向がダクトの方向に垂直となって空調システムの風道内に挿入され、低温プラズマ滅菌装置3がベース用固定ボルト15でセントラル空調システムの風道に取り付けられ、室内に入る混合空気を消毒滅菌する。
【0018】
表示灯9は、滅菌装置の動作状態を表示ために用いられ、正常動作時は緑色の表示灯9が点灯し、電源コードが緩んでいて、機体にしっかりと挿入されていない場合、赤色の表示灯が点灯するため、トラブルシューティングの必要がある。微生物センサー2で微生物濃度が基準要求よりも高いことを検出すると、信号をコントローラ11に送信し、コントローラ11がイオン発生器12をオンにさせて、低温プラズマ滅菌装置3が動作を開始し;微生物濃度が正常レベルに下がった後、コントローラが11イオン発生器12をオフにし、低温プラズマ滅菌装置3の運転を停止させる。コントローラ11は、微生物センサー2で検出したデータに基づきイオン発生器12の電力を調整でき、したがって低温プラズマ滅菌装置3の滅菌効率と速度を調整して、空気質が速やかに基準を満たすようにさせる。新型感染症もしくは細菌疫病の流行期には、滅菌効果をさらに高めるため、イオン管の数を増やすことができ、イオン発生器12上に複数のイオン管用固定ボルト16が設けられ、イオン管の数を直接増やし、滅菌効果をさらに高めることができる。なお、イオン制御スイッチ10を通じてイオン発生器12を手動でオン、オフまたは調整することもできる。
【0019】
本発明の具体的応用プロセスでは、装置を空調システム内に取り付け、イオン管方向が風道の方向に垂直である。既存の風道を解体および大幅に改造する必要がなく、前記低温プラズマ滅菌装置のみをボルトでセントラル空調システムのファン部に固結した後、高効率で滅菌でき、かつ二次汚染が発生しない。上記をまとめると、低温プラズマ滅菌装置全体は、柔軟に取り外すことや便利に使用でき、顕著な滅菌効果があり、室内空気質を効果的に向上し、体の健康を守る。
【0020】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎないが、本発明の保護範囲はそのような実施例に限定されるものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも本発明によって開示された技術的範囲において、本発明の技術的手段及びその発明思想に基づいて均等の範囲内での置換や変更を加えるものは、本発明の保護範囲内に網羅されるべきである。
【符号の説明】
【0021】
10 イオン制御スイッチ
1 制御メインボード
11 コントローラ
12 イオン発生器
13 第1イオン管
13a 第2イオン管
13b 第3イオン管
14 発生器用固定ボルト
15 ベース用固定ボルト
16 イオン管用固定ボルト
2 微生物センサー
3 低温プラズマ滅菌装置
4 熱気・湿気処理ダクト
5 外気ダクト
5a 還気ダクト
6 排気ダクト
7 混合空気ダクト
8 給気ダクト
9 表示灯