(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098404
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】全固体電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220624BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220624BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220624BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220624BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220624BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220624BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092372
(22)【出願日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179849
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サンウク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】パク、キョンウィ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AM12
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029HJ01
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA15
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA15
5H050FA02
5H050FA15
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】負極バッファー層と正極バッファー層を適用して圧延工程後に発生し得る電極空隙率を最小化し、各層間の界面接着面積を極大化することができる全固体電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による全固体電池は、硫化物系固体電解質層、前記固体電解質層の一面に積層される負極活物質層と、前記負極活物質層の一面に積層される負極バッファー層を含む負極電極、および前記固体電解質層の他面に積層される正極活物質層と、前記正極活物質層の他面に積層される正極バッファー層を含む正極電極を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物系固体電解質層;
前記固体電解質層の一面に積層される負極活物質層と、前記負極活物質層の一面に積層される負極バッファー層を含む負極電極;および
前記固体電解質層の他面に積層される正極活物質層と、前記正極活物質層の他面に積層される正極バッファー層を含む正極電極;
を含む、全固体電池。
【請求項2】
前記負極電極は、
一面に表面粗度(surface roughness)を形成する負極集電体層;
前記負極集電体層の一面に配置され、炭素系導電材とバインダーの混合物からなる負極プライマー層;
前記負極プライマー層の一面に配置され、硫化物系素材、導電材、およびバインダーの混合物からなる負極バッファー層;および
前記負極バッファー層の一面に配置され、硫化物系素材、負極活物質、導電材、およびバインダーの混合物からなって前記固体電解質層と接触される負極活物質層;
を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記負極集電体は、
銅、ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケルからなる群より選択された1種以上を含む、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記負極プライマー層は、
炭素系導電材とバインダーが7:3~9.5:0.5の比率で混合される、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記負極バッファー層は、
全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなる、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記負極バッファー層は、
前記負極プライマー層より軟質性が高いことを特徴とする、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記負極バッファー層は、
前記負極活物質層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有する、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記負極活物質層は、
全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の負極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなる、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記正極電極は、
一面に表面粗度(surface roughness)を形成する正極集電体;
前記正極集電体の一面に配置され、炭素系導電材とバインダーの混合物からなる正極プライマー層;
前記正極プライマー層の一面に配置され、硫化物系素材、導電材、およびバインダーの混合物からなる正極バッファー層;および
前記正極バッファー層の一面に配置され、硫化物系素材、負極活物質、導電材、およびバインダーの混合物からなって前記固体電解質層と接触される正極活物質層;
を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記正極集電体は、
ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロムからなる群より選択された1種以上を含む、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記正極プライマー層は、
炭素系導電材とバインダーが7:3~9.5:0.5の比率で混合される、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項12】
前記正極バッファー層は、
全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなる、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項13】
前記正極バッファー層は、
前記正極プライマー層より軟質性が高いことを特徴とする、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項14】
前記正極バッファー層は、
前記正極活物質層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有する、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項15】
前記正極活物質層は、
全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の正極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなる、請求項9に記載の全固体電池。
【請求項16】
全固体電池の製造方法であって、
負極活物質層と負極バッファー層を含む負極電極を形成する第1段階;
前記負極電極の一面に硫化物系固体電解質層を形成する第2段階;
正極活物質層と正極バッファー層を含む正極電極を形成する第3段階;および
前記固体電解質層の他面に前記正極電極を接合する第4段階;
を含む、全固体電池の製造方法。
【請求項17】
前記第1段階は、
負極集電体の一面に表面処理を通じて表面粗度を形成する段階;
前記負極集電体の一面に湿式コーティングを通じて負極プライマー層を形成する段階;
前記負極プライマー層の一面に湿式コーティングを通じて前記負極プライマー層より軟質性の高い負極バッファー層を形成する段階;
前記負極バッファー層の一面に前記負極バッファー層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有する負極活物質層を形成する段階;および
積層された前記負極集電体、負極プライマー層、負極バッファー層、および負極活物質層を圧延する段階;
を含む、請求項16に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項18】
前記第2段階は、
前記負極活物質層の一面に湿式コーティングを通じて前記固体電解質層を形成する段階である、請求項17に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項19】
前記第3段階は、
正極集電体の一面に表面処理を通じて表面粗度を形成する段階;
前記正極集電体の一面に湿式コーティングを通じて炭素系物質とバインダーの混合物からなる正極プライマー層を形成する段階;
前記正極プライマー層の一面に前記正極プライマー層より軟質性の高い正極バッファー層を形成する段階;
前記正極バッファー層の一面に前記正極バッファー層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有する正極活物質層を形成する段階;および
積層された前記正極集電体、正極プライマー層、正極バッファー層、および正極活物質層を圧延する段階;
を含む、請求項16に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項20】
前記第4段階は、
前記正極電極を上下方向に反転させた後、前記固体電解質と前記正極電極の正極活物質層を接触させる段階;および
前記負極電極、固体電解質層、正極電極を圧延する段階;
を含む、請求項16に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全固体電池およびその製造方法に関するものであって、より詳しくは空隙率を減らすことができる全固体電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に液体電解質を使用するリチウムイオン電池は分離膜によって負極電極と正極電極が区画される構造であるため変形や外部衝撃によって前記分離膜が壊されれば短絡が発生することがあり、これによって、過熱または爆発などの危険につながれることがある。
【0003】
したがって、二次電池分野で安全性を確保することができる固体電解質の開発は非常に重要な課題といえる。
【0004】
前記固体電解質を用いた全固体電池は電池の安全性が増大され、電解液の漏出を防止することができて電池の信頼性が向上すると同時に薄形の電池製作が容易であるという長所がある。
【0005】
また、負極電極としてリチウム金属を使用することができてエネルギー密度を向上させることができ、これにより、小型二次電池と共に電気自動車用高容量二次電池などへの応用が期待されて次世代電池として脚光を浴びている。
【0006】
従来の技術での前記全固体電池は、複数の層を積層した後、圧延工程を通じて接合する。
【0007】
例えば、従来の技術による全固体電池は、固体電解質を挟んで負極電極と正極電極が対称になるように積層される。
【0008】
この時、前記負極電極と正極電極は、硬質の集電体と軟質の活物質層を含む。
【0009】
このような全固体電池は前記圧延工程によって内部の空隙率を低めることはできるが、素材のスプリングバック現象または充電、放電時活物質の体積変化によって空隙が再形成されるという問題点がある。
【0010】
言い換えれば、各電極の上部は軟質の固体電解質層によって充電、放電時に緩衝役割を果たして空隙率変化を最少化することができるが、各電極の下部は硬質の集電体と素材間の接着であるので、各素材の界面で前記体積変化による空隙率が増加することがある。
【0011】
これにより、従来の技術による全固体電池は空隙率増加によってイオン伝導度および電子伝導度が減少することがあり、長期的には電池の性能に不利に作用することがあるという問題点がある。
【0012】
この背景技術部分に記載された事項は発明の背景に対する理解を増進するために作成されたものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来の技術でない事項を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施形態は、負極バッファー層と正極バッファー層を適用して圧延工程後に発生し得る電極空隙率を最小化し、各層間の界面接着面積を極大化することができる全固体電池およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つまたは多数の実施形態では、硫化物系固体電解質層、前記固体電解質層の一面に積層される負極活物質層と、前記負極活物質層の一面に積層される負極バッファー層を含む負極電極、および前記固体電解質層の他面に積層される正極活物質層と、前記正極活物質層の他面に積層される正極バッファー層を含む正極電極を含む全固体電池を提供することができる。
【0015】
また、前記負極電極は、一面に表面粗度(surface roughness)を形成する負極集電体層、前記負極集電体層の一面に配置され、炭素系導電材とバインダーの混合物からなる負極プライマー層、前記負極プライマー層の一面に配置され、硫化物系素材、導電材、およびバインダーの混合物からなる負極バッファー層、および前記負極バッファー層の一面に配置され、硫化物系素材、負極活物質、導電材、およびバインダーの混合物からなって前記固体電解質層と接触される負極活物質層を含むことができる。
【0016】
また、前記負極集電体は、銅、ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケルからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0017】
また、前記負極プライマー層は、炭素系導電材とバインダーが7:3~9.5:0.5の比率で混合できる。
【0018】
また、前記負極バッファー層は、全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなり得る。
【0019】
また、前記負極バッファー層は、前記負極プライマー層より軟質性が高いことを特徴とすることができる。
【0020】
また、前記負極バッファー層は、前記負極活物質層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有することができる。
【0021】
また、前記負極活物質層は、全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の負極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなり得る。
【0022】
また、前記正極電極は、一面に表面粗度(surface roughness)を形成する正極集電体、前記正極集電体の一面に配置され、炭素系導電材とバインダーの混合物からなる正極プライマー層、前記正極プライマー層の一面に配置され、硫化物系素材、導電材、およびバインダーの混合物からなる正極バッファー層、および前記正極バッファー層の一面に配置され、硫化物系素材、負極活物質、導電材、およびバインダーの混合物からなって前記固体電解質層と接触される正極活物質層を含むことができる。
【0023】
また、前記正極集電体は、ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロムからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0024】
また、前記正極プライマー層は、炭素系導電材とバインダーが7:3~9.5:0.5の比率で混合できる。
【0025】
また、前記正極バッファー層は、全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなり得る。
【0026】
また、前記正極バッファー層は、前記正極プライマー層より軟質性が高いことを特徴とすることができる。
【0027】
また、前記正極バッファー層は、前記正極活物質層と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有することができる。
【0028】
また、前記正極活物質層は、全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の正極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなり得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施形態による全固体電池およびその製造方法は、負極バッファー層と正極バッファー層を適用して圧延工程後に発生し得る電極空隙率を最小化し、各層間の界面接着面積を極大化することができる効果がある。
【0030】
また、本発明の実施形態による全固体電池およびその製造方法は、充電、放電時に発生し得る負極活物質または正極活物質の体積変化による変形を最少化して結果的に寿命特性を向上させることができる効果がある。
【0031】
その他に本発明の実施形態によって得ることができるか予測される効果については、本発明の実施形態に対する詳細な説明で直接的または暗示的に開示するようにする。即ち、本発明の実施形態によって予測される多様な効果については後述の詳細な説明内で開示されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態による全固体電池の断面構造を大略的に図示化して示した図である。
【
図2】本発明の実施形態による全固体電池の負極電極の断面構造を大略的に図示化して示した図である。
【
図3】本発明の実施形態による全固体電池の正極電極の断面構造を大略的に図示化して示した図である。
【
図4】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図5】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図6】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図7】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図8】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図9】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図10】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【
図11】本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付した図面を参考として本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明はいろいろ異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0034】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な図面符号を適用して説明する。
【0035】
図1は本発明の実施形態による全固体電池の断面構造を大略的に図示化して示した図であり、
図2は本発明の実施形態による全固体電池の負極電極の断面構造を大略的に図示化して示した図であり、
図3は本発明の実施形態による全固体電池の正極電極の断面構造を大略的に図示化して示した図である。
【0036】
図1を参照すれば、本発明の実施形態による全固体電池1は、硫化物系固体電解質層10、負極電極20、および正極電極30を含む。
【0037】
前記固体電解質層10の一面に負極電極20が積層され、他面に正極電極30が積層される。
【0038】
例えば、前記固体電解質層10を基準にして下側に負極電極20が積層でき、上側に正極電極30が積層できる。
【0039】
本発明の実施形態では図面を基準にして左右、前後および上下方向を設定し、上側に向かう部分を上部、上端、上面および上端部と定義し、下側に向かう部分を下部、下端、下面および下端部と定義することにする。
【0040】
前記のような基準方向の定義は相対的な意味であって、本発明の全固体電池1の基準位置などによってその方向が変わり得るので、前記の基準方向が本実施形態の基準方向に必ずしも限定されるのではない。
【0041】
本発明の実施形態で、前記固体電解質層10は、硫化リチウム(Lithium sulfide)系化合物、またはアルジロダイト(argyrodite)系化合物を含む硫化物系素材を適用することができる。
【0042】
これは、前記固体電解質層10に適用される硫化物系素材は、酸化物系素材より軟質的特性に優れて本発明の実施形態による全固体電池1の構造的特性に適する利点がある。
【0043】
このような固体電解質層10は、イオン伝導度が1*10-3S/cm以上である素材を適用するのが有利である。
【0044】
また、前記固体電解質層10は、粒度(粉末を成す粒一つ一つの平均直径)が0.1μm以上10μm以下の範囲で設定できる。
【0045】
このような固体電解質層10は、0.1g/cm3以上1g/cm3以下の範囲で設定される密度で形成できる。
【0046】
前記固体電解質層10は、50μm以上100μm以下の厚さで形成できる。
【0047】
図2を参照すれば、本発明の実施形態で、前記負極電極20は、負極集電体21、負極プライマー層23、負極バッファー層25、および負極活物質層27からなる。
【0048】
前記負極集電体21は、銅、ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケルからなる群より選択された1種以上を含んで形成できる。
【0049】
このような負極集電体21は、上面に表面粗度(surface roughness)を形成する。
【0050】
前記表面粗度は、表面粗さであって表面に生ずる微細な凹凸の程度を意味する。
【0051】
このような表面粗度は、プラズマ表面処理またはコロナ表面処理を通じて形成することができる。
【0052】
前記負極集電体21は、15μm以上20μm以下の厚さで形成できる。
【0053】
そして、前記負極集電体21の上面には負極プライマー層23が形成される。
【0054】
前記負極プライマー層23は、炭素系導電材とバインダーの混合物からなり得る。
【0055】
例えば、前記負極プライマー層23は、導電材とバインダーを7:3~9.5:0.5の比率で混合して形成することができる。
【0056】
前記負極プライマー層23は、1μm以下の厚さで形成できる。
【0057】
前記負極プライマー層23の上面には負極バッファー層25が形成される。
【0058】
前記負極バッファー層25は、硫化物系素材、導電材、およびバインダーを混合して形成することができる。
【0059】
例えば、前記負極バッファー層25は、全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなり得る。
【0060】
前記負極バッファー層25は、前記負極活物質層27と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有することができる。
【0061】
例えば、前記負極バッファー層25は、1mS/cm以上9.99*10-9S/cm以下の範囲で設定されるイオン伝導度を有することができる。
【0062】
また、前記負極バッファー層25は、前記負極プライマー層23より軟質性が高いのが特徴である。
【0063】
前記負極バッファー層25は、20μm以上100μm以下の厚さで形成できる。
【0064】
前記負極バッファー層25の上面には負極活物質層27が形成される。
【0065】
前記負極活物質層27は、硫化物系素材、負極活物質、導電材、およびバインダーの混合物から形成できる。
【0066】
例えば、前記負極活物質層27は、全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の負極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなり得る。
【0067】
前記負極活物質層27は、20μm以上100μm以下の厚さで形成できる。
【0068】
前記負極活物質層27の上面には前記固体電解質層10が配置される。
【0069】
そして、前記固体電解質層10の上面には正極電極30が形成され、前記正極電極30は前記負極電極20と前記固体電解質層10を基準にして対称にされるように形成される。
【0070】
図3を参照すれば、前記正極電極30は前記負極電極20と同一に形成した後、上下方向に反転させて前記固体電解質層の上面に積層するものであるが、構造の説明においては
図3に示された方向を基準にして記載しようとする。
【0071】
よって、前記正極電極30は、最外殻上部に位置した正極集電体31から説明する。
【0072】
本実施形態で、前記正極電極30は、正極集電体31、正極プライマー層33、正極バッファー層35、および正極活物質層37からなる。
【0073】
前記正極集電体31は、ステンレス鋼、チタニウム、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロムからなる群より選択された1種以上を含んで形成できる。
【0074】
このような正極集電体31は、下面に表面粗度を形成する。
【0075】
前記正極集電体31上の表面粗度は、前記負極集電体21上の表面粗度と同一である。
【0076】
前記正極集電体31は、15μm以上20μm以下の厚さで形成できる。
【0077】
そして、前記正極集電体31の下面には正極プライマー層33が形成される。
【0078】
前記正極プライマー層33は、炭素系導電材とバインダーの混合物からなり得る。
【0079】
例えば、前記正極プライマー層33は、導電材とバインダーを7:3~9.5:0.5の比率で混合して形成することができる。
【0080】
前記正極プライマー層33は、1μm以下の厚さで形成できる。
【0081】
前記正極プライマー層33の下面には正極バッファー層35が形成される。
【0082】
前記正極バッファー層35は、硫化物系素材、導電材、およびバインダーを混合して形成することができる。
【0083】
例えば、前記正極バッファー層35は、全体重量の100を基準にして60wt%以上90wt%以下の範囲で設定される硫化物系素材と、9wt%以上30wt%以下の範囲で設定される導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲で設定されるバインダーの混合物からなり得る。
【0084】
前記正極バッファー層35は、前記正極活物質層37と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有することができる。
【0085】
例えば、前記正極バッファー層35は、1mS/cm以上9.99*10-9S/cm以下の範囲で設定されるイオン伝導度を有することができる。
【0086】
また、前記正極バッファー層35は、前記正極プライマー層33より軟質性が高いのが特徴である。
【0087】
前記正極バッファー層35は、1μm以上5μm以下の厚さで形成できる。
【0088】
前記正極バッファー層35の下面には正極活物質層37が形成される。
【0089】
前記正極活物質層37は、硫化物系素材、正極活物質、導電材、およびバインダーの混合物から形成できる。
【0090】
例えば、前記正極活物質層37は、全体重量の100を基準にして8wt%以上30wt%以下の範囲の硫化物系素材と、60wt%以上90wt%以下の範囲の正極活物質と、1wt%以上10wt%以下の範囲の導電材と、1wt%以上10wt%以下の範囲のバインダーの混合物からなり得る。
【0091】
前記正極活物質層37は、20μm以上100μm以下の厚さで形成できる。
【0092】
前記正極活物質層37の下面には固体電解質層10が配置される構造からなる。
【0093】
前記のように構成される全固体電池の製造方法は次の通りである。
【0094】
図4~
図11は、本発明の実施形態による全固体電池の製造方法を順次に示した図である。
【0095】
本発明の実施形態による全固体電池の製造方法は、負極電極20と正極電極30を別途にそれぞれ製造した後、固体電解質層10の一面と他面にそれぞれ負極電極20と正極電極30を接合する方法からなる。
【0096】
この時、前記負極電極20が前記固体電解質層10の下面に、前記正極電極30が前記固体電解質層10の上面に配置される。
【0097】
よって、前記正極電極30は、各物質を順次に積層した後、上下方向に反転させて前記固体電解質層10の上面に接合することによって、前記負極電極20と前記固体電解質層10を基準にして対称にされるように形成できる。
【0098】
図4を参照すれば、負極集電体21の上面に表面処理を通じて表面粗度を形成する。
【0099】
前記表面処理は、プラズマ表面処理またはコロナ表面処理を含むことができる。
【0100】
前記プラズマ表面処理またはコロナ表面処理は、前記負極集電体21の上面にプラズマまたはコロナを照射して表面の状態を変化させて表面を粗くする工程である。
【0101】
このような表面処理は、表面粗さによる接着面積を増加させるためである。
【0102】
図5を参照すれば、前記負極集電体21の上面に負極プライマー層23を形成する。
【0103】
前記負極プライマー層23は湿式コーティングを通じて形成され、例えば、前記湿式コーティングはグラビアコーティング、スロットダイコーティングを含むことができる。
【0104】
このような負極プライマー層23は、前記負極集電体21の腐食を防止することができる。
【0105】
また、前記負極プライマー層23は炭素系導電材とバインダーの混合物からなり、前記炭素系導電材によって電子伝導性を向上させることができる。
【0106】
図6を参照すれば、前記負極プライマー層23の上面に負極バッファー層25を形成する。
【0107】
前記負極バッファー層25は湿式コーティングを通じて形成され、例えば、前記湿式コーティングはグラビアコーティング、スロットダイコーティングを含むことができる。
【0108】
このような負極バッファー層25は、前記負極プライマー層23より軟質性が高いのが特徴である。
【0109】
前記負極バッファー層25は、イオンおよび電子の移動が可能で容量を向上させることができる。
【0110】
図7を参照すれば、前記負極バッファー層25の上面に負極活物質層27を形成する。
【0111】
前記負極活物質層27は、前記負極バッファー層25と同一のイオン伝導度と電子伝導度を有するのが特徴である。
【0112】
図8を参照すれば、前記のように負極集電体21、負極プライマー層23、負極バッファー層25、および負極活物質層27が積層されれば、圧延工程を行う。
【0113】
この時、前記圧延工程は、0.1MPa以上10MPa以下の範囲で設定される圧力で行う。
【0114】
前記負極電極20は、前記負極バッファー層25の高い軟質性によって前記圧延工程時、前記負極バッファー層25と負極活物質層27との間に物理的凝集力が増大される。
【0115】
図9を参照すれば、前記負極活物質の上面に固体電解質層10を形成する。
【0116】
前記固体電解質層10は湿式コーティングを通じて形成され、例えば、前記湿式コーティングはグラビアコーティング、スロットダイコーティングを含むことができる。
【0117】
前記固体電解質層10を通じてイオンが移動し得る。
【0118】
その次に、
図4~
図8の過程を繰り返しながら正極電極30を形成する。
【0119】
即ち、正極集電体31の上面に正極プライマー層33を形成し、前記正極プライマー層33の上面に正極バッファー層35を形成し、前記正極バッファー層35の上面に正極活物質層37を形成する。
【0120】
図10を参照すれば、前記のように形成された正極電極30を上下方向に反転させた後、前記固体電解質層10の上面に積層させる。
【0121】
言い換えれば、前記正極電極30の正極活物質層37が前記固体電解質層10と接触するように位置させて積層する。
【0122】
図11を参照すれば、積層された前記負極電極20、固体電解質層10、および正極電極30に圧延工程を行う。
【0123】
この時、前記圧延工程は、0.1MPa以上10MPa以下の範囲で設定される圧力で行う。
【0124】
前記全固体電池1は、前記圧延工程によって前記負極活物質、固体電解質層10、および正極活物質の間の結着力を向上させることができる。
【0125】
従って、本発明の実施形態による全固体電池およびその製造方法は、負極バッファー層25と正極バッファー層35を適用して圧延工程後に発生し得る電極空隙率を最小化し、各層間の界面接着面積を極大化することができる。
【0126】
これによって、前記全固体電池およびその製造方法は、電極の上、下部でイオンと電子が均一に移動できて出力が向上し、耐久性を改善することができる。
【0127】
これとともに、本発明の実施形態による全固体電池およびその製造方法は、充電、放電時に発生し得る負極活物質または正極活物質の体積変化による変形を最少化して結果的に寿命特性を向上させることができる効果がある。
【0128】
前記では本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができるのを理解するはずである。
【符号の説明】
【0129】
1:全固体電池
10:固体電解質層
20:負極電極
21:負極集電体
23:負極プライマー層
25:負極バッファー層
27:負極活物質層
30:正極電極
31:正極集電体
33:正極プライマー層
35:正極バッファー層
37:正極活物質層