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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009841
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】状態判定装置及び状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178840
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2019020411の分割
【原出願日】2019-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳史
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP17
4F206JP22
4F206JP24
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】容易に不適切な学習データを排除して精度良く機械学習を行い、その学習結果を用いて様々な産業機械の保守を補助することを可能とする管理装置、制御装置、及びデータ抽出方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、産業機械に係るデータを取得するデータ取得部30と、データ取得部30が取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを抽出するための抽出条件を記憶する抽出条件記憶部52と、抽出条件記憶部52に記憶される抽出条件に従って、データ取得部30が取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出部32と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の射出成形機を管理する管理装置であって、
前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを抽出するための抽出条件を前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて記憶する抽出条件記憶部と、
前記抽出条件記憶部に記憶される抽出条件に従って、前記データ取得部が取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出部と、
を備えた管理装置。
【請求項2】
前記学習データ抽出部が抽出したデータを用いた機械学習に係る処理を実行する機械学習装置をさらに備える、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記機械学習装置は、前記学習データ抽出部が抽出したデータを用いた機械学習を行い、学習モデルを生成する学習部を備える、
請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記学習部は、教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習のうち少なくとも1つの機械学習を行う、
請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記機械学習装置は、
前記学習データ抽出部が抽出したデータを用いた機械学習により生成された学習モデルを記憶する学習データ記憶部と、
前記学習データ抽出部が抽出したデータに基づいて、前記学習モデルを用いた前記射出成形機の状態の推定を行う推定部と、
を備える、
請求項2に記載の管理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に表示装置に警告メッセージを表示する、
請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に表示装置に警告アイコンを表示する、
請求項5に記載の管理装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記射出成形機の動作状態に係る異常度を推定し、
前記状態判定装置は、前記推定部が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合に射出成形機に運転の停止、減速、又は原動機のトルクを制限する指令の少なくとも1つを出力する、
請求項5に記載の管理装置。
【請求項9】
前記データ取得部が取得するデータは、射出成形機の機械状態を表す運転中、停止中、昇温中、昇温完了、金型交換中、金型交換完了、アラーム中、生産完了状態のいずれかを識別する情報、射出成形機の操作状態を表す射出条件、保圧条件、計量条件、型開閉条件、突出し条件、温度条件の変更有無のいずれかを識別する情報、射出成形機の成形工程である型閉工程、型締工程、射出工程、保圧工程、計量工程、型開工程、突出工程、待機工程のいずれかを識別する情報のうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項10】
前記データ取得部が取得するデータは、有線または無線のネットワークによって接続され複数の射出成形機から取得されるデータのうち少なくとも1つである、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項11】
射出成形機を制御する制御装置であって、
前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを抽出するための抽出条件を前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて記憶する抽出条件記憶部と、
前記抽出条件記憶部に記憶される抽出条件に従って、前記データ取得部が取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出部と、
を備えた制御装置。
【請求項12】
前記学習データ抽出部が抽出したデータを用いた機械学習に係る処理を実行する機械学習装置をさらに備える、
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
複数の射出成形機を管理する管理装置における機械学習に係るデータ抽出方法であって、
前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得ステップと、
前記射出成形機から取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて抽出する抽出条件に従って、前記データ取得ステップが取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出ステップと、
を実行するデータ抽出方法。
【請求項14】
射出成形機を制御する制御装置における機械学習に係るデータ抽出方法であって、
前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得ステップと、
前記射出成形機から取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて抽出する抽出条件に従って、前記データ取得ステップが取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出ステップと、
を実行するデータ抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態判定装置及び状態判定方法に関し、特に射出成形機の保守を補助する状態判定装置及び状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機等の産業機械の保守は定期的あるいは異常発生時に行っている。産業機械を保守する際には、産業機械の動作時に記録しておいた該産業機械の動作状態を示す物理量を用いることにより、保守担当者が該産業機械の動作状態の異常有無を判定し、異常が生じた部品の交換などの保守作業を行なう。
【0003】
例えば、産業機械の一種である射出成形機が備える射出シリンダの逆流防止弁の保守作業としては、定期的に射出シリンダからスクリュを抜き出して、逆流防止弁の寸法を直接測定する方法が知られている。しかしながら、この方法では生産を一旦停止して、測定作業を行わなくてはならず、生産性が低下するという問題が有った。
【0004】
この様な問題を解決するための従来技術として、射出シリンダからスクリュを抜き出す等の作業で生産を一旦停止させることなく間接的に射出シリンダの逆流防止弁の摩耗量を検出して異常を診断する方法として、スクリュに加わる回転トルクを検出したり、樹脂がスクリュ後方へ逆流する現象を検出したりすることで、異常を診断する方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、スクリュの回転方法に作用する回転トルクを測定して許容範囲を超えたら異常と判定することが示されている。また、特許文献2,3には、駆動部の負荷や樹脂圧力などを教師あり学習によって異常を診断することが示されている。更に、特許文献4,5には、時系列データを用いて機械学習をする手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-168421号公報
【特許文献2】特開2017-030221号公報
【特許文献3】特開2017-202632号公報
【特許文献4】特開2018-097616号公報
【特許文献5】特開2017-188030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、射出成形機の駆動部を構成する要素の諸元が異なる機械では、該機械より得られる測定値と機械学習時に入力した学習データの数値との乖離が大きく、正しく機械学習による診断ができないという課題がある。また、射出成形機が製造する成形品の原材料である樹脂の種類や、射出成形機の付帯設備である金型、金型温調機、樹脂乾燥機などが機械学習時とは異なる種類であると、正しく機械学習による診断ができないという課題が生じる。
【0008】
このような課題を解決して機械学習の診断精度をあげるには、機械学習の学習モデルを作成する際に、多種多様な学習条件を準備して機械学習させる必要がある。しかしながら、多種多様な射出成形機、樹脂、付帯設備、を揃えて機械学習することは、多くのコストを要する。そのうえ、機械を運転する際には、樹脂やワーク等の原材料も用意する必要があり、学習データを取得するために要する原材料のコストも大きい。また、学習データを取得する作業に、多くの時間を要する。そのため、効率的に学習データを収集できないという課題があった。
【0009】
ここで、射出成形機が製造する成形品の原材料である樹脂を交換したり、射出成形機の付帯設備である金型を交換したり、金型温調機や樹脂乾燥機などの周辺機器や射出成形機の運転を開始したり直後であったり、射出成形機の運転に係る射出条件や保圧条件などの運転条件を変更したり、射出成形機が正常に動作しないアラーム状態においては、射出成形機より取得される時系列データが機械学習に不適切な場合がある。しかしながら、従来技術では、不適切な学習データをも機械学習して学習モデルを導いたり、不適切な学習データを診断するなど、機械の動作状態を正しく診断できない課題があった。
【0010】
そのため、容易に不適切な学習データを排除して精度良く機械学習を行い、その学習結果を用いて様々な産業機械の保守を補助することを可能とする状態判定装置及び状態判定方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による状態判定装置では、機械学習に入力する学習データに関して、例えばアラーム中の時系列データであったり、機械の運転を開始した直後や金型を交換した直後の時系列データ、または機械の運転に係る射出条件や保圧条件などの成形条件の設定値を変更した直後の時系列データ等、射出成形機の運転状態や操作状態に変化が生じたり、成形が不安定な状態の時系列データを学習データから除外して機械学習することによって高精度の学習モデルを導き、前記の課題を解決する。
【0012】
そして、本発明の一態様は、複数の射出成形機を管理する管理装置であって、前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを抽出するための抽出条件を前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて記憶する抽出条件記憶部と、前記抽出条件記憶部に記憶される抽出条件に従って、前記データ取得部が取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出部と、を備えた管理装置である。
本発明の他の態様は、射出成形機を制御する制御装置であって、前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを抽出するための抽出条件を前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて記憶する抽出条件記憶部と、前記抽出条件記憶部に記憶される抽出条件に従って、前記データ取得部が取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出部と、を備えた制御装置である。
【0013】
本発明の他の態様は、複数の射出成形機を管理する管理装置における機械学習に係るデータ抽出方法であって、前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得ステップと、前記射出成形機から取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて抽出する抽出条件に従って、前記データ取得ステップが取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出ステップと、を実行するデータ抽出方法である。
本発明の他の態様は、射出成形機を制御する制御装置における機械学習に係るデータ抽出方法であって、前記射出成形機に係る1サイクルの工程で取得された時系列データを1つのデータとして取得するデータ取得ステップと、前記射出成形機から取得したデータから機械学習に係る処理に用いるデータを前記射出成形機の運転状態の変化または操作状態の変化と所定のサイクル数とを関連付けて抽出する抽出条件に従って、前記データ取得ステップが取得したデータの内で、機械学習に係る処理に用いるデータを抽出する学習データ抽出ステップと、を実行するデータ抽出方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、射出成形機の運転状態や操作状態に変化が生じた際に取得されたデータや、成形が不安定な状態で取得されたデータを学習データから除外して機械学習することが可能となり、機械学習の判定精度の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による状態判定装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】第1実施形態による状態判定装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】抽出条件の例を示す図である。
図4】学習データ抽出部による学習用のデータの抽出例を示す図である。
図5】学習データ抽出部による学習用のデータの他の抽出例を示す図である。
図6】学習データ抽出部による学習用のデータの他の抽出例を示す図である。
図7】第2実施形態による状態判定装置の概略的な機能ブロック図である。
図8】異常状態の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は一実施形態による機械学習装置を備えた状態判定装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本実施形態の状態判定装置1は、例えば産業機械を制御する制御装置上に実装することができる。また、本実施形態の状態判定装置1は、産業機械を制御する制御装置と併設されたパソコンや、該制御装置と有線/無線のネットワークを介して接続された管理装置3、エッジコンピュータ、フォグコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータとして実装することができる。本実施形態では、状態判定装置1を、産業機械としての射出成形機を制御する制御装置とネットワークを介して接続されたコンピュータとして実装した場合の例を示す。なお、以下の各実施形態では、産業機械として射出成形機を例に取り説明するが、本発明の状態判定装置1が状態を判定する対象とする産業機械としては、射出成形機、工作機械、ロボット、鉱山機械、木工機械、農業機械、建設機械等を対象とすることができる。
【0017】
本実施形態による状態判定装置1が備えるCPU11は、状態判定装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス20を介して読み出し、該システム・プログラムに従って状態判定装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データ、入力装置71を介して作業者が入力した各種データ等が一時的に格納される。
【0018】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、状態判定装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、状態判定装置1の動作に係る設定情報が格納される設定領域や、入力装置71から入力されたデータ、ネットワーク7を介して射出成形機2から取得された静的データ(機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等)、射出成形機2の成形動作において検出された物理量(ノズルの温度、ノズルを駆動する原動機の位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等)の時系列データ、射出成形機2の動作状態や操作状態等を示す情報(成形工程である型閉工程、型締工程、射出工程、保圧工程、計量工程、型開工程、突出工程、サイクル開始、サイクル終了を識別する情報、アラームの発生状態を示す情報等)の時系列データ、図示しない外部記憶装置やネットワーク7を介して他のコンピュータ等から読み込まれたデータ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムや各種データは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、各種データを解析するための公知の解析プログラムや後述する機械学習装置100とのやりとりを制御するためのプログラム等を含むシステム・プログラムが予め書き込まれている。
【0019】
状態判定装置1は、インタフェース16を介して有線/無線のネットワーク7と接続されている。ネットワーク7には、少なくとも1つの射出成形機2や、該射出成形機2による製造作業を管理する管理装置3等が接続され、状態判定装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0020】
射出成形機2は、プラスチック等の樹脂で成形された製品を製造する機械であり、材料である樹脂を溶かして金型内に充填(射出)して成形する機械である。射出成形機2は、ノズル、原動機(モータ等)、伝達機構、減速機、可動部等の様々な機材で構成されており、各部の状態がセンサ等で検出され、各部の動作が制御装置により制御される。射出成形機2に用いられる原動機としては、例えば、電動機、油圧シリンダ、油圧モータ、空気モータ等が用いられる。また、射出成形機2に用いられる伝達機構としては、ボールネジ、歯車、プーリ、ベルト等が用いられる。
【0021】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ、後述する機械学習装置100から出力されたデータ等がインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、作業者による操作に基づく指令,データ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0022】
インタフェース21は、状態判定装置1と機械学習装置100とを接続するためのインタフェースである。機械学習装置100は、機械学習装置100全体を統御するプロセッサ101と、システム・プログラム等を記憶したROM102、機械学習に係る各処理における一時的な記憶を行うためのRAM103、及び学習モデル等の記憶に用いられる不揮発性メモリ104を備える。機械学習装置100は、インタフェース21を介して状態判定装置1で取得可能な各種情報(例えば、射出成形機2の機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等の各種データ、ノズルの温度、ノズルを駆動する原動機の位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等の各種物理量の時系列データ、射出成形機2の動作状態や操作状態等を示す情報の時系列データ等)を観測することができる。また、状態判定装置1は、機械学習装置100から出力される処理結果をインタフェース21を介して取得し、取得した結果を記憶したり、表示したり、他の装置に対してネットワーク7等を介して送信する。
【0023】
図2は、第1実施形態による状態判定装置1と機械学習装置100の概略的な機能ブロック図である。本実施形態の状態判定装置1は、機械学習を行う段階において、機械学習装置100が学習を行う場合に必要とされる構成を備える(学習モード)。図2に示した各機能ブロックは、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11、及び機械学習装置100のプロセッサ101が、それぞれのシステム・プログラムを実行し、状態判定装置1及び機械学習装置100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0024】
本実施形態の状態判定装置1は、データ取得部30、学習データ抽出部32、前処理部34を備え、状態判定装置1が備える機械学習装置100は、学習部110を備えている。また、不揮発性メモリ14上には、外部の機械等から取得されたデータが記憶される取得データ記憶部50、取得データから学習用のデータを抽出する条件が記憶される抽出条件記憶部52が設けられており、機械学習装置100の不揮発性メモリ104上には、学習部110による機械学習により構築された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部130が設けられている。
【0025】
データ取得部30は、射出成形機2、及び入力装置71等から入力された各種データを取得する機能手段である。データ取得部30は、例えば、射出成形機2の機種、金型の質量や材質、樹脂の種類等の静的データ、ノズルの温度、ノズルを駆動する原動機の位置、速度、加速度、電流、電圧、トルク、射出成形機2の成形動作に係る金型の温度、樹脂の流量、流速、圧力等の各種物理量の時系列データ、運転中、停止中、昇温中、昇温完了、金型交換中、金型交換完了、アラーム中、生産完了状態等の射出成形機2の機械状態を示す情報、射出成形機2の操作状態を表す射出条件、保圧条件、計量条件、型開閉条件、突出し条件、温度条件の変更有無等を識別する情報、射出成形機2の成形工程である型閉工程、型締工程、射出工程、保圧工程、計量工程、型開工程、突出工程、待機工程、サイクル開始、サイクル終了を識別する情報やアラームの発生状態を示す情報、作業者により入力された射出成形機の保守作業に係る情報等の各種データを取得し、取得データ記憶部50に記憶する。データ取得部30は、時系列データを取得する際に、射出成形機2から取得される信号データや他の時系列データの変化等に基づいて、所定の時間範囲(例えば、1サイクルの成形工程の範囲)で取得された時系列データを1つの時系列データとした上で取得データ記憶部50に記憶する。データ取得部30は、図示しない外部記憶装置や有線/無線のネットワーク7を介して管理装置3や他のコンピュータからデータを取得するようにしても良い。
【0026】
学習データ抽出部32は、学習部110による機械学習の段階において、抽出条件記憶部52に記憶された抽出条件に基づいて、データ取得部30が取得した(そして、取得データ記憶部50に記憶された)取得データの中から機械学習に用いる取得データを抽出する機能手段である。言い換えると、学習データ抽出部32は、抽出条件記憶部52に記憶された抽出条件に基づいて、データ取得部30が取得した取得データの中から機械学習に用いるのに適切ではない取得データを除外する。
【0027】
図3は、抽出条件記憶部52に記憶される抽出条件を例示する図である。抽出条件記憶部52は、例えば条件種別等で整理して管理される少なくとも1つの抽出条件を記憶している。抽出条件記憶部52が記憶する抽出条件は、機械学習に利用する取得データを指定する条件であって良く、また、機械学習に利用しない(除外する)取得データを指定する条件であっても良い。抽出条件記憶部52が記憶する抽出条件は、少なくとも取得データを該取得データに含まれる所定のデータ値に基づいて分類する条件と、該条件により分類された取得データを学習用のデータとして用いるのか用いないのかの指定を含む。
【0028】
図4は、抽出条件記憶部52に記憶される機械状態に係る抽出条件に基づいて、学習データ抽出部32が取得データを抽出する例を説明するための図である。図4に例示される取得データが取得データ記憶部50に記憶されている場合に、学習データ抽出部32がサイクル毎の電流値の波形データを学習用のデータとして抽出する場合を考える。この場合において、抽出条件記憶部52に「アラーム中の取得データは学習用のデータから除く」という抽出条件が設定されていると、学習データ抽出部32は、成形工程のサイクル中にアラームが発生している場合、該サイクルにおいて取得された電流値のデータを学習用のデータとして抽出しないように動作する。具体的には、図4の例の場合には、学習データ抽出部32は、アラームの発生が検出されている(i+2)-cycle,(i+3)-cycleにおいて取得された電流値のデータについては学習用のデータとして抽出せず、(i+1)-cycle以前、及び(i+4)-cycle以降に取得された電流値のデータを学習用のデータとして抽出する。
【0029】
図5は、抽出条件記憶部52に記憶される操作状態に係る抽出条件に基づいて、学習データ抽出部32が取得データを抽出する例を説明するための図である。図5に例示される取得データが取得データ記憶部50に記憶されている場合に、学習データ抽出部32がサイクル毎の電圧値の波形データを学習用のデータとして抽出する場合を考える。この場合において、抽出条件記憶部52に「射出条件変更時から10サイクル分の取得データは学習用のデータから除く」という抽出条件が設定されていると、学習データ抽出部32は、成形工程のサイクル中に射出条件の変更が為されている(射出条件の変更信号がONになっている)場合、該サイクルから10サイクル分の間に取得された電圧値のデータを学習用のデータとして抽出しないように動作する。具体的には、図5の例の場合には、学習データ抽出部32は、射出条件の変更が為されている(i+1)-cycleから10サイクル分((i+10)-cycleまで)において取得された電圧値のデータについては学習用のデータとして抽出せず、(i)-cycle以前、及び(i+11)-cycle以降に取得された電圧値のデータを学習用のデータとして抽出する。
【0030】
図6は、抽出条件記憶部52に記憶される成形工程に係る抽出条件に基づいて、学習データ抽出部32が取得データを抽出する例を説明するための図である。図6に例示される取得データが取得データ記憶部50に記憶されている場合に、学習データ抽出部32がサイクル毎の電流値の波形データを学習用のデータとして抽出する場合を考える。この場合において、抽出条件記憶部52に「射出、保圧工程の取得データのみを学習用のデータとして抽出する」という抽出条件が設定されていると、学習データ抽出部32は、それぞれの成形工程の内の射出工程、保圧工程の間に取得された電流値のデータを学習用のデータとして抽出するように動作する。具体的には、図6の例の場合には、学習データ抽出部32は、各工程の開始信号及び終了信号に基づいて、各成形工程の内の射出工程、保圧工程の期間を特定し、該期間において取得された電流値のデータを学習用のデータとして抽出する。
【0031】
抽出条件記憶部52には、複数の抽出条件を設定することができる。この場合において、2つ以上の抽出条件の間で学習用のデータとして用いるのか用いないのかの指定が衝突することがあり得る。その時は、学習データ抽出部32は、学習用のデータとして用いない指定を優先するようにしても良いし、抽出条件記憶部52に抽出条件間の優先順位を抽出条件と併せて記憶しておき、学習データ抽出部32は、該優先順位に基づいて、学習用のデータとして用いるのか用いないのかの指定が衝突を解決するようにしても良い。
【0032】
前処理部34は、機械学習装置100による機械学習の段階において、学習データ抽出部32が抽出した学習用のデータに基づいて、機械学習装置100による学習に用いられる学習データを作成する。前処理部34は、学習データ抽出部32から入力されたデータを機械学習装置100において扱われる統一的な形式へと変換(数値化、サンプリング等)した学習データを作成する。例えば、前処理部34は、機械学習装置100が教師なし学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データSを学習データとして作成し、機械学習装置100が教師あり学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データS及びラベルデータLの組を学習データとして作成し、機械学習装置100が強化学習をする場合においては、該学習における所定の形式の状態データS及び判定データDの組を学習データとして作成する。
【0033】
学習部110は、学習データ抽出部32が抽出した学習用のデータに基づいて前処理部34が作成した学習データを用いた機械学習を行う。学習部110は、教師なし学習、教師あり学習、強化学習等の公知の機械学習の手法により、射出成形機2から取得されたデータを用いた機械学習を行うことで学習モデルを生成し、生成した学習モデルを学習モデル記憶部130に記憶する。学習部110が行う教師なし学習の手法としては、例えばautoencoder法、k-means法等が、教師あり学習の手法としては、例えばmultilayer perceptron法、recurrent neural network法、Long Short-Term Memory法、convolutional neural network法等が、強化学習の手法としては、例えばQ学習等が挙げられる。
【0034】
学習部110は、例えば、正常に動作している状態の射出成形機2から取得された取得データを学習データ抽出部32、前処理部34が処理して得られた学習データに基づいた教師なし学習を行い、正常状態で取得されたデータの分布を学習モデルとして生成することができる。このようにして生成された学習モデルを用いて、後述する推定部120は、射出成形機2から取得された取得データを前処理部34が処理して得られた状態データSが、正常状態の動作時に取得された状態データからどれだけ外れているのかを推定し、推定結果としての異常度を算出することができる。
また、学習部110は、例えば、正常に動作している状態の射出成形機から取得された取得データに正常ラベルを、異常が発生した前後に射出成形機2から取得された取得データに異常ラベルを付与し、取得データを学習データ抽出部32、前処理部34が処理して得られた学習データを用いた教師あり学習を行い、正常データと異常データとの判別境界を学習モデルとして生成することができる。このようにして生成された学習モデルを用いて、後述する推定部120は、射出成形機2から取得された取得データを前処理部34が処理して得られた状態データSを学習モデルに入力して、状態データSが正常データに属するのか、異常データに属するのかを推定し、推定結果としてのラベル値(正常/異常)とその信頼度を算出することができる。
【0035】
上記構成を備えた状態判定装置1では、射出成形機2から取得された取得データについて、学習データ抽出部32が取得データに含まれる取得データの中から抽出条件記憶部52に記憶されている抽出条件に従って学習用のデータを抽出する。この抽出条件記憶部52には、作業者がその時の機械学習の目的に合わせて学習用のデータとして適切なデータが抽出されるように抽出条件を設定することができる。このようにして学習データ抽出部32による抽出された学習用のデータは、例えばアラーム中の時系列データであったり、機械の運転を開始した直後や金型を交換した直後の時系列データ、または機械の運転に係る射出条件や保圧条件などの成形条件の設定値を変更した直後の時系列データ等、射出成形機の運転状態や操作状態に変化が生じたり、成形が不安定な状態の時系列データを学習データから除外して、運転状態の判定に必要な所定の工程に属する時系列データのみを機械学習することができるようになる。このようにして生成された学習モデルを用いた射出成形機2の状態判定は、従来の手法により生成された学習モデルを用いた場合と比較して、射出成形機2の動作状態の判定精度が向上することが見込まれる。
【0036】
図7は、第2実施形態による状態判定装置1と機械学習装置100の概略的な機能ブロック図である。本実施形態の状態判定装置1は、機械学習装置100が推定を行う場合に必要とされる構成を備えている(推定モード)。図7に示した各機能ブロックは、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11、及び機械学習装置100のプロセッサ101が、それぞれのシステム・プログラムを実行し、状態判定装置1及び機械学習装置100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0037】
本実施形態の状態判定装置1は、第1実施形態と同様に、データ取得部30、学習データ抽出部32、前処理部34を備え、一方で、状態判定装置1が備える機械学習装置100は、推定部120を備えている。また、不揮発性メモリ14上には、外部の機械等から取得されたデータが記憶される取得データ記憶部50、取得データから学習用のデータを抽出する条件が記憶される抽出条件記憶部52が設けられており、機械学習装置100の不揮発性メモリ104上には、学習部110による機械学習により構築された学習モデルが記憶されている学習モデル記憶部130が設けられている。
【0038】
本実施形態によるデータ取得部30は、第1実施形態におけるデータ取得部30と同様の機能を備える。
本実施形態による学習データ抽出部32は、基本的な動作は第1実施形態における学習データ抽出部32と同じであるが、学習データ抽出部32が抽出したデータは、機械学習装置100による射出成形機2の状態を推定するために用いられる推定用のデータである点で、第1実施形態と異なる。
【0039】
本実施形態による前処理部34は、機械学習装置100による学習モデルを用いた射出成形機2の状態の推定の段階において、学習データ抽出部32が抽出した推定用のデータを、機械学習装置100において扱われる統一的な形式へと変換(数値化、サンプリング等)して、機械学習装置100による推定に用いられる所定の形式の状態データSを作成する。
【0040】
推定部120は、前処理部34が作成した状態データSに基づいて、学習モデル記憶部130に記憶された学習モデルを用いた射出成形機の状態の推定を行う。本実施形態の推定部120では、学習部110により生成された(パラメータが決定された)学習モデルに対して、前処理部34より得られた状態データSを入力することで、射出成形機の状態に係る異常度を推定して算出したり、射出成形機の動作状態の属するクラス(正常/異常等)を推定して算出したりする。推定部120が推定した結果(射出成形機の状態に係る異常度や射出成形機の動作状態の属するクラス等)は、表示装置70に表示出力したり、図示しない有線/無線ネットワークを介してホストコンピュータやクラウドコンピュータ等に送信出力して利用するようにしても良い。また、状態判定装置1は、推定部120により推定された結果が所定の状態になった場合(例えば、推定部120が推定した異常度が予め定めた所定の閾値を超えた場合、推定部120が推定した射出成形機の動作状態の属するクラスが「異常」になった場合等)、例えば図8に例示されるように、表示装置70への警告メッセージやアイコンでの表示出力をするようにしても良いし、射出成形機に対して運転の停止、減速、又は射出成形機を駆動する原動機のトルクを制限する指令等を出力するようにしても良い。
【0041】
上記構成を備えた状態判定装置1は、射出成形機2から取得された取得データについて、学習データ抽出部32が取得データ記憶部50に含まれる取得データの中から抽出条件記憶部52に記憶されている抽出条件に従って推定用のデータを抽出する。この抽出条件記憶部52には、作業者がその時の射出成形機2の状態判定の目的に合わせて推定用のデータとして適切なデータが抽出されるように抽出条件を設定することができる。このようにして学習データ抽出部32による抽出された推定用のデータは、例えばアラーム中の時系列データであったり、機械の運転を開始した直後や金型を交換した直後の時系列データ、または機械の運転に係る射出条件や保圧条件などの成形条件の設定値を変更した直後の時系列データ等、射出成形機の運転状態や操作状態に変化が生じたり、成形が不安定な状態の時系列データを除外したものであり、射出成形機2の動作状態の判定に適切な時系列データのみを状態判定に用いることができ、機械学習による射出成形機2の動作状態の判定精度の向上が見込まれる。
【0042】
上記した第1,2実施形態による状態判定装置1は、ロボットや工作機械等の産業機械に係る状態判定を行う場合に適用することができるが、例えば製造開始時あるいは製造再開時における運転動作の立ち上がり時などにおいて想定の範囲内で不安定な挙動をする産業機械において好適に用いることができる。特に射出成形機は、同じ射出条件で製造を行う場合でも、機械の動作開始時や射出条件を変更した直後等に想定の範囲内で不安定な動作をする場合が多いが、そのまま運転を継続することで安定した正常動作に収束するため、その様な動作状態は異常状態とはみなさずに保守・点検の対象とはしていない。従って、この様な特性を持つ射出成形機に、本発明の状態判定装置1は特に有用である。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
例えば、上記した実施形態では状態判定装置1と機械学習装置100が異なるCPU(プロセッサ)を有する装置として説明しているが、機械学習装置100は状態判定装置1が備えるCPU11と、ROM12に記憶されるシステム・プログラムにより実現するようにしても良い。また、複数の射出成形機2がネットワークを介して相互に接続されている場合、複数の射出成形機の動作状態を1つの状態判定装置1で判定しても良いし、射出成形機が備える制御装置上に状態判定装置1を実装しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 状態判定装置
2 射出成形機
3 管理装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
16,17,18 インタフェース
20 バス
21 インタフェース
30 データ取得部
32 学習データ抽出部
34 前処理部
50 取得データ記憶部
52 抽出条件記憶部
70 表示装置
71 入力装置
100 機械学習装置
101 プロセッサ
102 ROM
103 RAM
104 不揮発性メモリ
110 学習部
120 推定部
130 学習モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8