(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098419
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】発光ユニット及び光源装置
(51)【国際特許分類】
H01J 61/54 20060101AFI20220624BHJP
H01J 61/073 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
H01J61/54 F
H01J61/073 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156748
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】17/129,755
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507005768
【氏名又は名称】エナジェティック・テクノロジー・インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】205 Lowell Street, Wilmington, MA 01887 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 澄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 昭典
(72)【発明者】
【氏名】永田 湧成
(72)【発明者】
【氏名】大場 伸一
(72)【発明者】
【氏名】パートロウ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ ロン
(72)【発明者】
【氏名】ホーン スティーブン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ ローラ
【テーマコード(参考)】
5C015
【Fターム(参考)】
5C015JJ04
(57)【要約】
【課題】放電開始電圧を低減することができる発光ユニット及び光源装置を提供する。
【解決手段】発光ユニットは、発光封体及び電圧印加回路を備える。発光封体は、プラズマを維持するためのレーザ光が入射すると共にプラズマからの光が出射する容器と、第1放電部を含む第1電極と、第2放電部を含む第2電極と、を有する。第1放電部の端部は、第2放電部に近づくにつれて細くなる形状を有し、第2放電部の端面は、第1放電部の延在方向に垂直な平面に沿って延在している。電圧印加回路は、少なくとも第1電極に印加する電圧を調整することにより、第1電極と第2電極との間の電位差を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光封体と、電圧印加回路と、を備え、
前記発光封体は、
放電ガスが封入された容器であって、前記放電ガス中に発生したプラズマを維持するためのレーザ光が前記容器に入射可能となる共に前記プラズマからの光が前記容器から出射可能となるように構成された前記容器と、
前記容器内に配置された棒状の第1放電部を含む第1電極と、
前記第1放電部の延在方向において前記第1放電部と向かい合うように前記容器内に配置された棒状の第2放電部を含む第2電極と、を有し、
前記第1放電部における前記第2放電部側の端部は、前記第2放電部に近づくにつれて細くなる形状を有し、
前記第2放電部における前記第1放電部側の端面は、前記延在方向に垂直な平面に沿って延在しており、
前記電圧印加回路は、少なくとも前記第1電極に印加する電圧を調整することにより、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差を制御するように構成されている、発光ユニット。
【請求項2】
前記電圧印加回路は、前記第1電極と前記第2電極との間に前記プラズマを発生させるためのトリガ電圧として、負の電圧パルスを前記第1電極に印加するように構成されている、請求項1に記載の発光ユニット。
【請求項3】
前記電圧印加回路は、前記負の電圧パルスを前記第1電極に印加するタイミングに合わせて、正の電圧パルスを前記第2電極に印加するように構成されている、請求項2に記載の発光ユニット。
【請求項4】
前記第1放電部の前記端部は、テーパ面を有しており、
前記テーパ面のテーパ角度は、120度以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光ユニット。
【請求項5】
前記テーパ角度は、45度以下である、請求項4に記載の発光ユニット。
【請求項6】
前記容器は、
前記放電ガスを収容すると共に、前記レーザ光である第1光が入射する第1開口、及び、前記プラズマからの光である第2光が出射する第2開口が形成された筐体と、
前記第1開口を気密に封止し、前記第1光を透過させる第1窓部と、
前記第2開口を気密に封止し、前記第2光を透過させる第2窓部と、を含み、
前記筐体は、前記第1光及び前記第2光を遮る遮光性材料により形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の発光ユニット。
【請求項7】
前記筐体は、金属材料により形成されている、請求項6に記載の発光ユニット。
【請求項8】
前記筐体は、絶縁性材料により形成されている、請求項6に記載の発光ユニット。
【請求項9】
前記第1電極は、絶縁部材を介して前記筐体に固定され、前記筐体から電気的に分離されている、請求項7に記載の発光ユニット。
【請求項10】
前記第2電極は、前記筐体に電気的に接続されている、請求項9に記載の発光ユニット。
【請求項11】
前記第1電極は、第1絶縁部材を介して前記筐体に固定され、前記筐体から電気的に分離されており、前記第2電極は、第2絶縁部材を介して前記筐体に固定され、前記筐体から電気的に分離されている、請求項7に記載の発光ユニット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光ユニットと、
前記レーザ光を前記容器に入射させる光導入部と、を備える光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、発光ユニット及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に放電ガスが封入されており、放電ガス中に発生したプラズマがレーザ光の照射により維持され、プラズマからの光が出力光として出力される光源として、レーザ励起光源がある(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10032620号
【特許文献2】米国2010/0164380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ励起光源では、高効率化及び高出力化のために、放電ガスが高圧で封入されることがある。しかし、放電ガスの封入圧力が高くなると、パッシェンの法則に従って放電開始電圧が高くなり、放電ガス中にプラズマを発生させることが困難となる。
【0005】
本開示の一側面は、放電開始電圧を低減することができる発光ユニット及び光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る発光ユニットは、発光封体と、電圧印加回路と、を備え、発光封体は、放電ガスが封入された容器であって、放電ガス中に発生したプラズマを維持するためのレーザ光が容器に入射可能となる共にプラズマからの光が容器から出射可能となるように構成された容器と、容器内に配置された棒状の第1放電部を含む第1電極と、第1放電部の延在方向において第1放電部と向かい合うように容器内に配置された棒状の第2放電部を含む第2電極と、を有し、第1放電部における第2放電部側の端部は、第2放電部に近づくにつれて細くなる形状を有し、第2放電部における第1放電部側の端面は、延在方向に垂直な平面に沿って延在しており、電圧印加回路は、少なくとも第1電極に印加する電圧を調整することにより、第1電極と第2電極との間の電位差を制御するように構成されている。
【0007】
この発光ユニットでは、第1放電部における第2放電部側の端部が、第2放電部に近づくにつれて細くなる形状を有し、第2放電部における第1放電部側の端面が、第1放電部の延在方向に垂直な平面に沿って延在している。これにより、第1放電部の端部の近傍における電界強度(電界密度)を高めることができる。そして、電圧印加回路が、第1電極に印加する電圧を調整することにより、第1電極と第2電極との間の電位差を制御する。このように、端部の近傍において電界強度が高められた第1電極に電圧を印加することで、放電を起こり易くすることができ、放電開始電圧を低減することができる。
【0008】
電圧印加回路は、第1電極と第2電極との間にプラズマを発生させるためのトリガ電圧として、負の電圧パルスを第1電極に印加するように構成されていてもよい。この場合、放電を一層起こり易くすることができる。
【0009】
電圧印加回路は、負の電圧パルスを第1電極に印加するタイミングに合わせて、正の電圧パルスを第2電極に印加するように構成されていてもよい。この場合、第1電極のみに負の電圧パルスを印加する場合と比べて、第1電極に印加される負の電圧パルス、及び第2電極に印加される正の電圧パルスの各々のピーク電圧の絶対値を低減することができる。その結果、例えば、負の電圧パルス及び正の電圧パルスを発生させる際に生じるノイズを低減することができる。
【0010】
第1放電部の端部は、テーパ面を有しており、テーパ面のテーパ角度は、120度以下であってもよい。この場合、第1放電部の端部の近傍における電界強度を一層高めることができ、放電を一層起こり易くすることができる。
【0011】
テーパ角度は、45度以下であってもよい。この場合、第1放電部の端部の近傍における電界強度をより一層高めることができ、放電をより一層起こり易くすることができる。
【0012】
容器は、放電ガスを収容すると共に、レーザ光である第1光が入射する第1開口、及び、プラズマからの光である第2光が出射する第2開口が形成された筐体と、第1開口を気密に封止し、第1光を透過させる第1窓部と、第2開口を気密に封止し、第2光を透過させる第2窓部と、を含み、筐体は、第1光及び第2光を遮る遮光性材料により形成されていてもよい。この場合、遮光性材料として強度の高い材料を選択することができることから、放電ガスの封入圧力を高めることができる。その結果、高効率化及び高出力化を図ることができる。
【0013】
筐体は、金属材料により形成されていてもよい。この場合、放電ガスの封入圧力を一層高めることができる。
【0014】
第1電極は、絶縁部材を介して筐体に固定され、筐体から電気的に分離されていてもよい。この場合、第1電極に筐体の電位とは独立した電圧を印加することができる。
【0015】
筐体は、絶縁性材料により形成されていてもよい。この場合、筐体に保持される構成同士を、容易に電気的に分離することができる。
【0016】
第2電極は、筐体に電気的に接続されていてもよい。この場合、筐体との接続により第2電極を接地電位とすることができ、接地電位のための配線を省略することができる。
【0017】
第1電極は、第1絶縁部材を介して筐体に固定され、筐体から電気的に分離されており、第2電極は、第2絶縁部材を介して筐体に固定され、筐体から電気的に分離されていてもよい。この場合、第1電極及び第2電極に個別に電圧を印加することができる。
【0018】
本開示の一側面に係る光源装置は、上記発光ユニットと、レーザ光を容器に入射させる光導入部と、を備える。この光源装置によれば、上述した理由により、放電開始電圧を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一側面によれば、放電開始電圧を低減することができる発光ユニット及び光源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ励起光源の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る発光封体の斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、第1比較例において生じる電界分布の例を示す図である。
図7(b)は、
図6の構成において生じる電界分布の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2比較例において生じる電界分布の例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1変形例において生じる電界分布の例を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、第3比較例の電圧印加方法を説明するための図である。
図11(b)は、第3比較例の電圧印加方法を説明するための図である。
【
図12】
図12(a)は、第3比較例の電圧印加方法を説明するための図である。
図12(b)は、第3比較例の電圧印加方法を説明するための図である。
【
図13】
図13(a)は、実施形態の電圧印加方法を説明するための図である。
図13(b)は、実施形態の電圧印加方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第2変形例に係る発光封体の断面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例の電圧印加方法を説明するための図である。
【
図16】
図16(a)は、実施形態の電圧印加回路を示す図である。
図16(b)は、第2変形例の電圧印加回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[レーザ励起光源の構成]
【0022】
図1~
図5に示されるように、レーザ励起光源(発光ユニット、光源装置)1は、発光封体2と、レーザ光源3と、ミラー4と、光学系5と、ケース(ランプハウス)6と、を備えている。発光封体2、レーザ光源3、ミラー4及び光学系5は、ケース6内に収容されている。発光封体2には、放電ガスG1が封入されている。放電ガスG1は、例えばキセノンガスである。レーザ励起光源1では、放電ガスG1中にプラズマが発生させられる。プラズマを維持するためのレーザ光である第1光L1が発光封体2に入射し、プラズマからの光である第2光L2が発光封体2から出力光として出射する。第1光は、例えば800nm~1100nm程度の波長を有する。第2光L2は、例えば、中赤外域の光であり、2μm~20μm程度の波長を有する。発光封体2の詳細については後述する。
【0023】
レーザ光源3は、例えばレーザダイオードであり、レーザ光である第1光L1を出力する。ミラー4は、レーザ光源3からの第1光L1を光学系5に向けて反射する。光学系5は、一又は複数のレンズを含んで構成されている。光学系5は、ミラー4からの第1光L1を集光しつつ発光封体2へ導光する。レーザ光源3、ミラー4及び光学系5は、第1光L1を第1光軸A1に沿って第1開口11に入射させる光導入部Rを構成している。第1開口11及び第1光軸A1については後述する。
【0024】
ケース6は、本体部61と、蓋部材62と、を有している。本体部61内には、収容空間S1が形成されており、収容空間S1内には、レーザ光源3、ミラー4及び光学系5が配置されている。本体部61には凹部61aが形成されており、凹部61aの開口部が蓋部材62によって塞がれることにより、収容空間S2が形成されている。収容空間S2内には、発光封体2が配置されている。本体部61は、凹部61aを画定する一対の壁部611を有しており、各壁部611には、発光封体2から出射した第2光L2が通る開口611aが形成されている。第2光L2は、開口611aを通って外部に出射される。
【0025】
本体部61は、収容空間S1と凹部61aとの間を仕切る壁部612を有しており、壁部612によって、収容空間S1と収容空間S2とが仕切られている。また、壁部612には、開口612aが形成されている。開口612a内には光学系5の一部が配置されており、第1光L1は開口612aを通って発光封体2に入射する。
【0026】
蓋部材62内には、流路63が形成されている。流路63には、気体G2が流される。気体G2は、例えば、窒素等の不活性ガスである。流路63は、開口63aを介して外部に接続されており、流路63には、外部の気体供給装置(図示省略)から開口63aを介して気体G2が供給される。流路63は、開口63bを介して本体部61の収容空間S2に接続されており、気体G2は、流路63から開口63bを介して収容空間S2に流入する。
【0027】
気体G2は、本体部61の壁部611,612と発光封体2との間、及び/又は、蓋部材62と発光封体2との間を通り、通気口613aから外部に排出される。通気口613aは、収容空間S2に連通するように本体部61の壁部613に形成された貫通孔である。壁部613は、一対の壁部611との境界部にそれぞれ形成された一対のテーパ面613bを有している。一対のテーパ面613bは、通気口613aに近づくほど互いに近づくように傾斜している。各テーパ面613bは、通気口613aに接続されている。テーパ面613bは、気体G2を通気口613aに向けて案内する。本体部61の壁部612には貫通孔612bが形成されており、流路63から収容空間S2に流入した気体G2の一部は、貫通孔612bを通って収容空間S1に流入する。
[発光封体の構成]
【0028】
発光封体2は、筐体10と、第1窓部20と、2つの第2窓部30と、第1電極40と、第2電極50と、を備えている。
【0029】
筐体10は、金属材料により略箱状に形成され、放電ガスG1を収容している。より具体的には、筐体10内には、密閉された内部空間S3が形成されており、内部空間S3が放電ガスG1で満たされている。筐体10を構成する金属材料の例としては、ステンレス鋼が挙げられる。この場合、筐体10は、第1光L1及び第2光L2に対して遮光性を有する。すなわち、筐体10は、第1光L1及び第2光L2を透過させない遮光性材料により形成されている。
【0030】
筐体10には、第1開口11と、2つの第2開口12と、が形成されている。第1開口11には、第1光L1が第1光軸A1に沿って入射する。第1開口11は、例えば、第1光軸A1に平行な方向(以下、Z軸方向ともいう)から見た場合に、円形状に形成されている。この例では、第1光軸A1は、Z軸方向から見た場合に、第1開口11の中心を通っている。第1開口11は、内側部分11aと、中間部分11bと、外側部分11cと、を含んでいる。内側部分11aは、内部空間S3に開口している。外側部分11cは、外部に開口している。中間部分11bは、内側部分11a及び外側部分11cに接続されている。内側部分11a、中間部分11b及び外側部分11cの各々は、例えば円筒形状を有している。中間部分11bの直径(外形)は、内側部分11aの直径(外形)よりも大きく、外側部分11cの直径(外形)は、中間部分11bの直径(外形)よりも大きい。外側部分11cには光学系5の一部が配置されている。
【0031】
各第2開口12からは、第2光L2が第2光軸A2に沿って出射する。各第2開口12は、例えば、第2光軸A2に平行な方向(以下、Y軸方向ともいう)から見た場合に、円形状に形成されている。この例では、第2光軸A2は、Y軸方向から見た場合に、第2開口12の中心を通っている。各第2開口12は、内側部分12aと、中間部分12bと、外側部分12cと、を含んでいる。内側部分12aは、内部空間S3に開口している。外側部分12cは、外部に開口している。中間部分12bは、内側部分12a及び外側部分12cに接続されている。内側部分12a、中間部分12b及び外側部分12cの各々は、例えば円筒形状を有している。中間部分12bの直径(外形)は、内側部分12aの直径(外形)よりも大きく、外側部分12cの直径(外形)は、中間部分12bの直径(外形)よりも大きい。
【0032】
第1光軸A1は、内部空間S3内において第2光軸A2と交わっている。すなわち、第1開口11及び第2開口12は、第1光軸A1と第2光軸A2とが互いに交わるように配置されている。第1光軸A1と第2光軸A2との交点Cは、内部空間S3内に位置している。この例では、第1光軸A1は、第2光軸A2と垂直に交わっているが、第1光軸A1は、直角以外の角度で第2光軸A2と交わっていてもよい。第1光軸A1は、第2光軸A2と平行ではない。第1光軸A1は、第2開口12を通っておらず、第2光軸A2は、第1開口11を通っていない。
【0033】
第1窓部20は、第1開口11を気密に封止している。第1窓部20は、第1窓部材21と、第1枠部材22と、を有している。第1窓部材21は、例えば、第1光L1を透過させる透光性材料により、円形平板状に形成されている。この例では、第1窓部材21は、サファイアにより形成されており、5μm以下の波長の光を透過させる。
【0034】
第1枠部材22は、例えば、コバール金属により枠状に形成されている。第1枠部材22は、全体として略円筒状に形成されている。第1枠部材22は、円筒状の第1部分22aと、第1部分22aと一体的に形成された円筒状の第2部分22bと、を有している。第2部分22bの外形は、第1部分22aの外形よりも大きい。
【0035】
第1窓部材21は、第1部分22a内に配置されている。具体的には、第1部分22aの内面と第2部分22bの内面との間の境界部には、内側に向けて突出した円形リング状の突出部22cが形成されており、第1窓部材21は、突出部22cに接触した状態で、第1部分22a内に配置されている。この状態においては、第1窓部材21の側面21aが、第1部分22aの内面に接触している。
【0036】
第1窓部材21の側面21aは、接合材(第1接合材)23により、全周にわたって、第1部分22aの内面に気密に接合されている。これにより、第1窓部材21と第1枠部材22との間が気密に封止されている。接合材23は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。チタンがドープされた銀ロウとは、例えば銀が70%、銅が28%、Tiが2%という組成で構成されたロウ材であり、例えば東京ブレイズ株式会社のTB-608Tである。
【0037】
第2部分22bの外面には、外側に向けて突出した円形リング状のフランジ部22dが形成されている。第1枠部材22は、フランジ部22dが第1開口11の中間部分11b内に配置された状態で、筐体10に固定されている。この状態においては、第1枠部材22の第1部分22aの一部が第1開口11から突出している。第1窓部材21は、第1光軸A1と第2光軸A2との交点Cと向かい合うように配置されている。この例では、第1窓部材21の光入射面及び光出射面は、Z軸方向と垂直に延在する平坦面である。
【0038】
第1枠部材22は、レーザ溶接により、筐体に気密に固定されている。より具体的には、フランジ部22dと第1開口11の中間部分11bの内面との間の接触部分に外側からレーザを照射して全周にわたって溶接することにより、第1枠部材22が筐体10に気密に接合されている。
図4,5では、溶接箇所が符号Wで示されている。これにより、第1枠部材22と筐体10との間が気密に封止されている。このように、第1窓部材21は、接合材23により第1枠部材22に気密に接合されており、第1枠部材22を介して筐体10に気密に固定されている。第1窓部材21と筐体10との間に第1枠部材22が介在していることで、第1窓部材21と筐体10との間の熱膨張率の差に起因する不具合を抑制することができる。
【0039】
各第2窓部30は、第2開口12を気密に封止している。各第2窓部30は、第2窓部材31と、第2枠部材32と、を有している。第2窓部材31は、例えば、第2光L2を透過させる透光性材料により、円形平板状に形成されている。この例では、第2窓部材31は、ダイヤモンドにより形成されており、20μm以下の波長の光を透過させる。
【0040】
第2枠部材32は、例えば、コバール金属により枠状に形成されている。第2枠部材32は、全体として略円筒状に形成されている。第2枠部材32は、円筒状の第1部分32aと、第1部分32aと一体的に形成された円筒状の第2部分32bと、を有している。第2部分32bの外形は、第1部分32aの外形よりも大きい。
【0041】
第2窓部材31は、第1部分32a内に配置されている。具体的には、第1部分32aは、内部に配置部32cを有しており、第2窓部材31は、配置部32c内に配置されている。この状態においては、第2窓部材31の側面31aにおける交点Cとは反対側の一部が、第1部分32aの内面に接触している。第2枠部材32内の空間は、配置部32cに接続された中間部分32dと、中間部分32dに接続された外側部分32eと、を更に含んでいる。中間部分32dは、外側に向かうにつれて直径(外形)が大きくなる円錐台形状を有している。外側部分32eは、中間部分32dよりも大きな直径(外形)を有する円筒形状に形成されている。
【0042】
第2窓部材31の側面31aは、接合材(第2接合材)33により、全周にわたって、第1部分32aの内面に気密に接合されている。これにより、第2窓部材31と第2枠部材32との間が気密に封止されている。接合材33は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。
【0043】
第2部分32bの外面には、外側に向けて突出した円形リング状のフランジ部32fが形成されている。第2枠部材32は、フランジ部32fが第2開口12の中間部分12b内に配置された状態で、筐体10に固定されている。この状態においては、第2枠部材32の第1部分32aの一部が第2開口12から突出している。第2窓部材31は、第1光軸A1と第2光軸A2との交点Cと向かい合うように配置されている。この例では、第2窓部材31の光入射面及び光出射面は、Y軸方向と垂直に延在する平坦面である。
【0044】
第2枠部材32は、レーザ溶接により、筐体に気密に固定されている。より具体的には、フランジ部32fと第2開口12の中間部分12bの内面との間の接触部分に外側からレーザを照射して全周にわたって溶接することにより、第2枠部材32が筐体10に気密に接合されている。これにより、第2枠部材32と筐体10との間が気密に封止されている。このように、第2窓部材31は、接合材33により第2枠部材32に気密に接合されており、第2枠部材32を介して筐体10に気密に固定されている。第2窓部材31と筐体10との間に第2枠部材32が介在していることで、第2窓部材31と筐体10との間の熱膨張率の差に起因する不具合を抑制することができる。
【0045】
第1電極40は、Y軸方向及びZ軸方向の双方に垂直なX軸方向(所定方向)に沿って延在している。第1電極40は、第1光軸A1と第2光軸A2との交点Cを挟んで第2電極50と向かい合っている。X軸方向において、交点Cと第1電極40の先端との間の距離は、交点Cと第2電極50の先端との間の距離に等しい。第1電極40は、例えばタングステン等の金属材料により形成されている。第1電極40は、基端側において第1絶縁部材7を介して筐体10に固定され、筐体10から電気的に分離されている。第1電極40は、全体として略棒状に形成されている。第1電極40は、基端側の第1支持部(第1部分)41と、第1支持部41よりも第2電極50の近くの先端側に位置する第1放電部(第2部分)42と、を有している。第1放電部42は、第1支持部41よりも小径で、かつ尖頭形状を有している。第1支持部41と第1放電部42との間の境界部分には、テーパ部42sが形成されている。テーパ部42sは、第1支持部41に近づくにつれて径が大きくなるように傾斜した表面を有している。テーパ部42sは、後述する本体部71の表面71aに対して窪みを形成するような位置関係で配置されている。第1支持部41は、X軸方向における第1電極40の中間部(一部)である。第1支持部41における第1放電部42とは反対側の基端側の端部41aは、端部41a以外の部分と比べて太く形成されている。第1放電部42は、棒状に形成され、筐体10内(すなわち内部空間S3内)に配置されている。
【0046】
第1絶縁部材7は、本体部71と、筒状部72と、を有している。第1絶縁部材7は、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)又はセラミック等の絶縁性材料により形成されている。本体部71は、例えば円柱状に形成され、第1電極40の第1支持部41を保持している。本体部71は、X軸方向に垂直な表面71aを有している。表面71aは、内部空間S3に露出する表面である。表面71aには、X軸方向に沿って本体部71を貫通する挿入孔71bが形成されており、第1支持部41は、挿入孔71b内に配置され、固定されている。筒状部72は、本体部71の表面71aからX軸方向に沿って延在するように円筒状に形成されており、第1放電部42における第1支持部41側(基端側)の一部を囲んでいる。
【0047】
第1支持部41の端部41aは、接合材43により、全周にわたって、挿入孔71bの内面に気密に接合されている。これにより、第1電極40と第1絶縁部材7との間が気密に封止されている。接合材43は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。
【0048】
本体部71の表面71aは粗面化されている。本実施形態においては、凹部73が表面71aに形成されていることにより、表面71aが粗面化されている。凹部73は、X軸方向から見た場合に、第1放電部42を囲むように円形リング状に延在している。凹部73は、第1電極40及び筒状部72の各々から離間するように配置されている。X軸方向に平行な断面における凹部73の形状は、例えば矩形状である。
【0049】
第1絶縁部材7は、接続部材8を介して筐体10に気密に固定されている。第1絶縁部材7の本体部71の外面には、外側に向けて突出した円形リング状のフランジ部74が形成されている。接続部材8は、ステンレス鋼等の金属材料により形成されている。接続部材8は、円筒状の第1部分81と、第1部分81の第1端部81aから径方向の内側に向かって延びる円環平板状の第2部分82と、を有している。第2部分82の先端は、本体部71の外面に接触している。フランジ部74は、第1部分81及び第2部分82に接触している。
【0050】
接続部材8の第2部分82は、接合材83により、全周にわたって、第1絶縁部材7の本体部71の外面に気密に接合されている。これにより、接続部材8と第1絶縁部材7との間が気密に封止されている。接合材83は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。
【0051】
接続部材8は、レーザ溶接により、筐体10に気密に固定されている。より具体的には、筐体10には、第3開口13が形成されている。第1絶縁部材7の筒状部72は、第3開口13内に第3開口13から離間した状態で配置されている。接続部材8は、第1部分81の第2端部81bが第3開口13の開口縁に接触するように配置されている。第1部分81と第3開口13の開口縁との間の接触部分に外側からレーザを照射して全周にわたって溶接することにより、接続部材8が筐体10に気密に接合されている。これにより、接続部材8と筐体10との間が気密に封止されている。このように、第1絶縁部材7は、接続部材8に気密に接合されており、接続部材8を介して筐体10に気密に固定されている。この状態においては、第1電極40が第3開口13を貫通するように延在する。第3開口13は、第1電極40、第1絶縁部材7及び接続部材8によって気密に封止されている。接続部材8は、筐体10の一部を構成しているとみなすこともできる。
【0052】
第2電極50は、X軸方向に沿って延在している。第2電極50の先端は、第1光軸A1と第2光軸A2との交点Cを挟んで第1電極40と向かい合っている。第2電極50は、例えばタングステン等の金属材料により形成されている。第2電極50は、筐体10に電気的に接続されている。第2電極50は、全体として、第1電極40よりも径の太い略棒状に形成されている。第2電極50は、基端側の第2支持部51と、第2支持部51よりも第1電極40の近くの先端側に位置する第2放電部52と、を有している。第2支持部51は、X軸方向における第2電極50の中間部(一部)である。第2放電部52は、棒状に形成され、筐体10内(すなわち内部空間S3内)に配置されている。
【0053】
筐体10には、第4開口14が形成されている。第2電極50の第2支持部51は、第2支持部51の外面が第4開口14の内面に接触するように、第4開口14内に配置されている。第2支持部51は、接合材53により、全周にわたって、第4開口14の内面に気密に接合されている。これにより、第2電極50と筐体10との間が気密に封止されている。接合材53は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。
【0054】
筐体10には、内部空間S3に放電ガスG1を封入するための封入孔15が形成されている。封入孔15には、封入管16が接続されている。封入管16は、例えば銅等の金属材料により形成されている。封入管16における封入孔15とは反対側の端部16aは、封止されている。封入管16には、封止された端部16aを覆うように保護部材17が取り付けられている。保護部材17は、例えばゴム等の樹脂材料により形成されている。
【0055】
封入管16の外面は、接合材18により、全周にわたって、封入孔15の内面に接合されている。これにより、封入管16と筐体10との間が気密に封止されている。接合材18は、例えば、金属ロウ材であり、より具体的にはチタンがドープされた銀ロウである。放電ガスG1の封入時には、例えば、封入管16を介して放電ガスG1を内部空間S3に導入した後に、封入管16を潰しながら押し切る(切り取る)ことにより、封入管16の端部16aが封止される。その後、封入管16に保護部材17が取り付けられる。このような直接封入手法は、液体窒素を用いたトラップ法と比べて次の点で有利である。すなわち、トラップ法では、発光封体を液体窒素内に配置した際に、窓部材が歪むおそれがある。直接封入手法では、そのような事態を抑制することができる。また、トラップ法では封入圧力にばらつきが生じるおそれがあるが、直接封入手法では、そのようなばらつきを抑制することができる。トラップ法は、ガラスバルブ内に放電ガスを封入する際に用いられることがある。
【0056】
発光封体2では、筐体10、第1窓部20及び第2窓部30によって内部空間S3が画定されている。発光封体2では、第1電極40、第2電極50、第1絶縁部材7、接続部材8及び封入管16によっても、内部空間S3が画定されている。内部空間S3の全体は、放電ガスG1によって満たされている。すなわち、内部空間S3には、放電ガスG1が充填されている。放電ガスG1は、第1窓部材21及び第1枠部材22、並びに第2窓部材31及び第2枠部材32に接触している。放電ガスG1の封入圧力(最大封入圧力)は、例えば5MPa(50気圧)程度である。発光封体2は、15MPa以上の内圧に耐えることができる。発光封体2では、筐体10、第1窓部20及び第2窓部30により、放電ガスG1が封入された容器100が構成されている。容器100は、第1光L1が容器100に入射可能となる共に第2光L2が容器100から出射可能となるように、構成されている。上述したとおり、この例では、第1光L1は第1窓部20を介して容器100に入射し、第2光L2は第2窓部30を介して容器100から外部に出射する。第1電極40の第1放電部42及び第2電極50の第2放電部52は、容器100内に配置されている。
[レーザ励起光源の動作例]
【0057】
レーザ励起光源1は、ケース6内に配置された電圧印加回路VC(
図13(a))を備えている。電圧印加回路(電圧印加部)VCは、第1電極40に印加する電圧を調整することにより、第1電極40と第2電極50との間の電位差を制御するように構成されている。一例として、電圧印加回路VCは、第2電極50を接地電位として、第1電極40に負の電圧パルスを印加する。これにより、第1電極40から第2電極50に向けて電子が放出される。その結果、アーク放電が発生し、第1電極40と第2電極50との間に(交点Cに)プラズマが発生する。このプラズマに、光導入部Rからの第1光L1が、第1窓部材21を介して照射される。これにより、発生したプラズマが維持される。プラズマからの光である第2光L2は、出力光として、第2窓部材31を介して外部に出射される。レーザ励起光源1では、2つの第2窓部材31から、Y軸方向の両側に向けて第2光L2が出射される。なお、電圧印加回路VCは、プラズマを発生させるためのトリガ電圧として、正の電圧パルスを第1電極40に印加してもよい。この場合、第2電極50から第1電極40に向けて電子が放出される。
[第1電極及び第2電極の詳細な構成]
【0058】
図6に示されるように、第1電極40の第1放電部42は、X軸方向において第2電極50の第2放電部52と向かい合っている。第1放電部42における第2放電部52側の端部42aは、第2放電部52に近づくにつれて細くなる先細り形状(尖頭形状)を有している。第1放電部42の端部42aは、第2放電部52に向けて尖っている。端部42aは、端面42bと、テーパ面42cと、円柱面42dと、を有している。端面42bは、第2放電部52側に向けて凸となるように湾曲している。テーパ面42cは、第2放電部52に近づくにつれて先細りとなるようにX軸方向に対して傾斜した円錐台形状の面であり、端面42bに連続している。円柱面42dは、第1放電部42の中心線を囲むようにX軸方向に沿って延在する円柱形状の面であり、テーパ面42cに連続している。
【0059】
テーパ面42cのテーパ角度は、45度以下となっている。この例では、テーパ角度は、30度である。テーパ面42cのテーパ角度とは、X軸方向に垂直な方向から見た場合におけるテーパ面42cの両縁に沿った2つの直線間の角度である。
【0060】
第2放電部52における第1放電部42側の端部52aは、端面52bと、円柱面52cと、を有している。端面52bは、X軸方向において第1放電部42の端面42b及びテーパ面42cと向かい合っている。X軸方向における端面42b,52b間の距離は、例えば0.7mm程度である。端面52bは、X軸方向に垂直な平面に沿って延在している。この例では、端面52bは、X軸方向に垂直な平坦面である。円柱面52cは、第2放電部52の中心線を囲むようにX軸方向に沿って延在する円柱形状の面であり、端面52bに連続している。
【0061】
図7(a)及び
図7(b)を参照しつつ、上述した第1電極40及び第2電極50の形状の利点について説明する。
図7(a)では、電界分布が等電位線により示されている。等電位線間においては、第1電極140に近い等電位線ほど、電位が低い。この点は
図7(b)及び後述する
図8~
図10についても同様である。
図7(a)に示される第1比較例では、第1電極140の第1放電部142の端部142a及び第2電極150の第2放電部152の端部152aの各々が尖っている。第1比較例においては、
図7(a)に示されるように、交点Cを通りX軸方向に垂直な平面に関して対称な電界分布が生じる。
【0062】
これに対し、実施形態の構成では、
図7(b)に示されるような電界分布が生じる。第1比較例の場合と比べて、第1放電部42の端部42aの近傍における電界強度(電界密度)が高められている。これは、第2放電部52の端面52bがX軸方向に垂直な平面に沿って延在しているためである。すなわち、実施形態では、電界分布が第1放電部42の端部42aの近傍において圧縮され、電界密度が高められている。
【0063】
図8は、第2比較例において生じる電界分布の例を示す図である。
図8では、図中第1電極140及び第2電極150の上側半分近傍のみが示されているが、下側半分近傍についても同様の電界分布が生じる。この点は
図9及び
図10についても同様である。第2比較例では、第1電極140の第1放電部142の端部142a及び第2電極150の第2放電部152の端部152aの各々が尖っている。端部142aのテーパ面142c及び端部152aのテーパ面152cのテーパ角度は90度である。
【0064】
図9は、第1変形例において生じる電界分布の例を示す図である。第1変形例では、第1放電部42のテーパ面42cのテーパ角度は90度である。第1変形例は、その他の点については上記実施形態と同様に構成されている。
図8及び
図9から、第1変形例では、第2比較例と比べて、第1電極40の端部42a(端面42b)の近傍における電界密度が高められていることが分かる。
【0065】
図10は、実施形態の構成において生じる電界分布の例を示す図である。上述したとおり、実施形態では、第1放電部42のテーパ面42cのテーパ角度は30度である。
図8及び
図10から、実施形態では、第2比較例と比べて、第1電極40の端部42a(端面42b)の近傍における電界密度が高められていることが分かる。また、
図9及び
図10から、実施形態では、第1変形例と比べても、第1電極40の端部42aの近傍における電界密度が高められていることが分かる。
[電圧印加方法の詳細]
【0066】
図11(a)~
図12(b)は、第3比較例の電圧印加方法を説明するための図である。
図11(a)及び
図12(a)では、容器200が簡略化して示されている。第3比較例のレーザ励起光源101は、第1電極240及び第2電極250と、第1電極240及び第2電極250に電圧を印加する電圧印加回路VCを備えている。第1電極240の端部242a及び第2電極250の端部252aの各々は、尖っている。
【0067】
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、第3比較例では、電圧印加回路VCは、第1電極240と第2電極250との間にプラズマを発生させるためのトリガ電圧として、プラス側に向けて立ち上がる正の電圧パルスPPを第1電極240に印加する。これにより、第2電極250から第1電極240に向けて電子が放出され、放電が発生することが期待される。
【0068】
しかしながら、第3比較例では、第1電極240に正の電圧パルスPPを印加することにより、電子を第2電極250から従属的に引きずり出す。そのため、効率が低く、第1電極240と第2電極250との間に意図したとおりに放電が生じない場合がある。この場合、
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、正の電圧パルスである第1パルスP1ではなく、第1パルスP1に続く負の電圧パルスである第2パルスP2により放電が発生することがある。第2パルスP2による放電では、電子は、第1電極240から第2電極250に向けて放出される。第2パルスP2は、第1パルスP1によって放電が発生しなかった場合に、リンギング現象により生じるパルスである。第2パルスP2のピーク電圧の絶対値は、第1パルスP1のピーク電圧の絶対値よりも小さい。したがって、第2パルスP2による放電の効率は、第1パルスP1による放電の効率よりも低い。
【0069】
図13(a)及び
図13(b)は、実施形態の電圧印加方法を説明するための図である。
図13(a)では、容器100が簡略化して示されている。この点は後述する
図15についても同様である。実施形態のレーザ励起光源1は、第1電極40及び第2電極50に電気的に接続された電圧印加回路VCを備えている。電圧印加回路VCは、第1電極40に印加する電圧を調整することにより、第1電極40と第2電極50との間の電位差を制御する。上述したとおり、レーザ励起光源1では、第1放電部42の端部42aが、第2放電部52に近づくにつれて細くなる形状を有し、第2放電部52の端面52bが、X軸方向に垂直な平面に沿って延在している。
【0070】
実施形態では、電圧印加回路VCは、第1電極40と第2電極50との間にプラズマを発生させるためのトリガ電圧として、マイナス側に向けて立ち上がる負の電圧パルスPNを第1電極40に印加する。これにより、第1電極40から第2電極50に向けて電子が放出され、放電が発生する。実施形態の電圧印加方法では、上記第3比較例のようにリンギング現象により生じる第2パルスP2によって放電を発生させる場合と比べて、放電の効率を高めることができる。その結果、放電開始電圧を低減することができる。
[作用及び効果]
【0071】
以上説明したように、レーザ励起光源1では、第1放電部42の端部42aが、第2放電部52に近づくにつれて細くなる形状を有し、第2放電部52の端面52bが、X軸方向(第1放電部42の延在方向)に垂直な平面に沿って延在している。これにより、第1放電部42の端部42aの近傍における電界強度(電界密度)を高めることができる。そして、電圧印加回路VCが、第1電極40に印加する電圧を調整することにより、第1電極40と第2電極50との間の電位差を制御する。このように、端部42aの近傍において電界強度が高められた第1電極40に電圧を印加することで、放電を起こり易くすることができ、放電開始電圧を低減することができる。また、第1電極40と第2電極50との間の間隔を広げることが可能となるため、第1電極40及び第2電極50の位置に要求される精度を緩和することができる。また、熱により第1電極40及び第2電極50の先端が溶けてしまう事態を抑制することができる。
【0072】
電圧印加回路VCが、第1電極40と第2電極50との間にプラズマを発生させるためのトリガ電圧として、負の電圧パルスを第1電極40に印加する。これにより、上述したとおり、放電を一層起こり易くすることができる。
【0073】
第1放電部42の端部42aのテーパ面42cのテーパ角度が、120度以下である。これにより、第1放電部42の端部42aの近傍における電界強度を一層高めることができ、放電を一層起こり易くすることができる。
【0074】
テーパ面42cのテーパ角度が、45度以下である。これにより、第1放電部42の端部42aの近傍における電界強度をより一層高めることができ、放電をより一層起こり易くすることができる。
【0075】
容器100を構成する筐体10が、第1光L1及び第2光L2を透過させない遮光性材料により形成されている。これにより、遮光性材料としては強度の高い材料を選択することができることから、放電ガスG1の封入圧力を高めることができる。その結果、高効率化及び高出力化を図ることができる。
【0076】
筐体10が金属材料により形成されている。これにより、放電ガスG1の封入圧力を一層高めることができる。
【0077】
第1電極40が、第1絶縁部材7を介して筐体10に固定され、筐体10から電気的に分離されている。これにより、第1電極40に筐体10の電位(接地電位)とは独立した電圧を印加することができる。
【0078】
第2電極50が筐体10に電気的に接続されている。これにより、筐体10との接続により第2電極50を接地電位とすることができ、接地電位のための配線を省略することができる。
[変形例]
【0079】
図14に示される第2変形例の発光封体2では、第2電極50が、第2絶縁部材7Aを介して筐体10に固定され、筐体10から電気的に分離されている。第2絶縁部材7Aは、接続部材8Aを介して筐体10に気密に固定されている。第2絶縁部材7Aは、第1絶縁部材7と同様に構成及び接続されており、接続部材8Aは、接続部材8と同様に構成及び接続されている。第2変形例では、第2電極50が筐体10から電気的に分離されているため、第1電極40及び第2電極50に個別に電圧を印加することができる。
【0080】
例えば、
図15に示されるように、電圧印加回路VCは、負の電圧パルスPNを第1電極40に印加するタイミングに合わせて、正の電圧パルスPPを第2電極50に印加してもよい。第2電極50に印加される正の電圧パルスPPがピークとなるタイミングは、第1電極40に印加される負の電圧パルスPNがピークとなるタイミングに一致していてもよい。すなわち、電圧印加回路VCは、第1電極40に印加される負の電圧パルスPNとは逆の位相を有する正の電圧パルスPPを第2電極50に印加してもよい。この場合、負の電圧パルスPN及び正の電圧パルスPPにより、第1電極40と第2電極50との間に電位差が生じる。
【0081】
図16(b)は、そのような電圧印加方法を実現するための電圧印加回路VCの一例を示している。
図16(a)は、上記実施形態の電圧印加方法を実現するための電圧印加回路VCの一例を示している。
図16(a)の例では、電圧印加回路VCは、一次コイルC1及び二次コイルC2を含むトランスTを備えている。一次コイルC1に印加された電圧が二次コイルC2に昇圧しつつ伝達され、第1電極40に負の電圧パルスPNが印加される。第2電極50は接地されている。一方、
図16(b)の例では、二次コイルC2が中間部において接地され、2つの部分に分割されている。これにより、二次コイルC2は、両方の極性の電圧を出力できるように構成されている。一次コイルC1に印加された電圧が二次コイルC2に昇圧しつつ伝達されることにより、
図16(a)の例における負の電圧パルスPNのピーク電圧の半分のピーク電圧を有する負の電圧パルスPNが第1電極40に印加されると共に、
図16(a)の例における負の電圧パルスPNのピーク電圧の半分のピーク電圧を絶対値で有する正の電圧パルスPPが第2電極50に印加される。
図16(b)の例において第1電極40と第2電極50との間に生じる電位差は、
図16(a)の例において生じる電位差と同一である。
【0082】
図16(b)の例の電圧印加方法では、
図16(a)の例のように第1電極40のみに負の電圧パルスPNを印加する場合と比べて、第1電極40に印加される負の電圧パルスPN及び第2電極50に印加される正の電圧パルスPPの各々のピーク電圧の絶対値を低減することができる。その結果、例えば、負の電圧パルスPN及び正の電圧パルスPPを発生させる際に生じるノイズを低減することができる。
【0083】
本開示は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。本開示において、「A及び/又はB」とは、「A及びBの少なくとも一方」を意味する。第1放電部42の端部42aのテーパ面42cのテーパ角度は、90度以下であってもよいし、30度以下であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、筐体10、第1窓部20及び第2窓部30によって容器100が構成されていたが、容器100は、例えばその全体が石英からなるガラス筐体(ガラスバルブ)であってもよい。この場合、第1光L1及び第2光L2は、ガラス筐体を透過することにより入射又は出射する。第1電極40の第1放電部42及び第2電極50の第2放電部52は、ガラス筐体内に配置される。
【0085】
レーザ励起光源にガラス筐体が用いられる場合、一般的には、一対の電極は互いに同一の形状に形成される。これに対し、上述したレーザ励起光源1では、第1電極40及び第2電極50が互いに異なる形状に形成されている。ガラス筐体内に一対の電極が配置されてなる光源としては、キセノンランプがある。キセノンランプでは、キセノンガス中での放電により生じる熱電子から光が発生する。電子の供給特性が重要であるため、一対の電極は互いに異なる材料により形成される場合がある。例えば、カソードは、トリウム入りタングステンやビスマスにより形成され、アノードは、純タングステンにより形成される。キセノンランプでは、放電が継続的に発生させられるが、レーザ励起光源1では、放電開始時にプラズマが発生しさえすればよく、放電維持時には第1電極40及び第2電極50は機能しない。そのため、耐熱性が高く、かつ物質を放出し難い純金属(例えばタングステン)により第1電極40及び第2電極50が形成されている。
【0086】
上記実施形態では2つの第2開口12が形成されていたが、1つの第2開口12のみが形成されていてもよいし、3つ以上の第2開口12が形成されていてもよい。筐体10を構成する材料は、必ずしも金属材料でなくてもよく、絶縁性材料、例えばセラミック等であってもよい。第1窓部材21及び第2窓部材31の各々は、ダイヤモンド又はサファイアにより形成されていてもよいし、フッ化マグネシウム又は石英により形成されてもよい。第1窓部材21及び/又は第2窓部材31は、コバールガラスにより形成されてもよい。
【0087】
レーザ光源3はレーザ励起光源1内に設けられていなくてもよい。例えば、レーザ励起光源1は、レーザ光源3に代えて、外部に配置された光源からの光をミラー4へ導光する光ファイバを備えていてもよい。この場合、光ファイバ、ミラー4及び光学系5により、第1光L1を第1光軸A1に沿って第1開口11に入射させる光導入部Rが構成される。
【0088】
第1光L1は、第1電極40と比べて第2電極50寄りに入射させられてもよい。すなわち、X軸方向において、交点Cと第1電極40との間の距離は、交点Cと第2電極50との間の距離よりも長くてもよい。この場合、第2電極50の端面52bは平坦面であり、第1電極40の尖った端部42aと比べて溶け難いため、熱的に有利となる。