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  • 特開-水性インクジェット印刷装置 図1
  • 特開-水性インクジェット印刷装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098425
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】水性インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/10 20060101AFI20220624BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220624BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B65H20/10 B
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160185
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020211074
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520495906
【氏名又は名称】株式会社カナオカホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】金岡 良延
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝行
(72)【発明者】
【氏名】早田 智章
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F103
【Fターム(参考)】
2C056EA09
2C056FB01
2C056HA29
2C056HA47
2C060BC86
3F103AA03
3F103BC02
3F103BC06
(57)【要約】
【課題】 プラスチックフィルムに対する水性インクジェット印刷を可能にする。
【解決手段】被印刷対象のフィルムFが一定の張力を与えられながらインクヘッド部を通過して熱風乾燥経路を走行する水性インクジェット印刷装置の熱風乾燥経路において、フィルムをベルトコンベア30のベルト31上に吸着固定して搬送させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷対象のフィルムが一定の張力を与えられながらインクヘッド部を通過して熱風乾燥経路を走行する水性インクジェット印刷装置の熱風乾燥経路において、フィルムをベルトコンベアのベルト上に吸着固定して搬送させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現したことを特徴とする水性インクジェット印刷装置。
【請求項2】
ベルトコンベアのベルトに穿設した多数の小孔から空気を吸引することにより吸着手段とした請求項1記載の水性インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水性インクジェット印刷装置に関し、特に食品を流通するに際し、それを収容するための包装袋や食品用容器の蓋に使用するプラスチックフィルム製の包装材に最適な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では食品の流通に際しては、その場で調製した食品を包装して販売する対面販売に代わり、予め食品工場で調製した加工食品類、パン類、菓子類などを包装した包装入り食品を、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店舗で販売する方式が主流となりつつある。
【0003】
前記の販売方式においては包装入り食品は小売店舗の店内の陳列棚などに陳列され、客は購入にあたってはそれを手にとって吟味する。従って、包装自体にも客の購買意欲を惹いたり、客の目につきやすくなるようなデザイン上の工夫が要求される。
【0004】
前記の場合、包装材自体は食品を包装することが第一番の目的なので、その機能を損なうような形状の変更は行うことができず、表面に施される図柄および/または文字(以下、「図柄など」と称する。)の役目が非常に重要となる。
【0005】
前記の図柄などを包装袋や食品用容器の蓋に施す手段としては印刷によることが一般的であり、包装袋や食品用容器の蓋に印刷する場合にはこれらの裏側に印刷(裏刷り)する場合と表側に印刷(表刷り)する場合の2種の印刷方法がある。この場合、食品用包装材においては、食品衛生法により印刷インキが食品に接触することが禁止されているので、これらの裏側に印刷する場合にはプラスチックフィルムの印刷層の側に保護用のプラスチックフィルムを積層しなければならなかった。
【0006】
一方、包装材の表側に印刷する場合には前記のような制約はないが、印刷層が露出するので、包装袋や蓋への加工時に印刷してフィルムを巻き取った際にフィルムの裏面に接触したり、流通時や展示時に他の包装材や物品、あるいは人の手指と接触したりすることにより物理的摩擦や溶媒(アルコールや油)により印刷層が不鮮明にならないよう配慮しなくてはならなかった。
【0007】
前記の場合、プラスチックフィルムは紙などと異なり液体を吸収し難い基材なので、印刷に際しては塗膜密着性の高いグラビアインキを使用するグラビア印刷や、フレキソインキを使用するフレキソ印刷が採用されていた(例えば特許文献1)。
【0008】
ところで、印刷に際して製版の必要がなくデジタルデータにより印刷用の画像を生成できるインクジェット印刷はオンデマンド性に優れ、多種の図柄などを随時印刷しなくてはならない食品用包装材に本来は有用な筈であるが採用できなかった。
【0009】
その理由は、インクジェット印刷が可能な水性インクジェットインキは耐摩擦性、アルコール耐性、耐油性、耐水性などの諸物性がなく、簡単にインキが落ちてしまい塗膜密着性が薄弱だからである。この場合、塗膜密着性の高いグラビアインキやフレキソインキは粘度が高すぎるので、ノズルからインキを噴射して付着させるインクジェット印刷においてはノズルから円滑に噴射することが不可能で使用できなかった。
【0010】
図柄などの種類が固定されている固定耐久消費財でなく短期に消費され、しかも内容物に応じて多種多様な図柄などを随時印刷しなくてはならない食品用包装材においては生産効率を向上させるために印刷のスピードアップが不可欠である。
【0011】
しかしながら、新たな図柄などのために版を用意して、その都度製造ラインにセットしなくてはならないグラビア印刷やフレキソ印刷は印刷にとりかかるための工程に時間を要し、スピードアップに限界があった。
【0012】
例えば、グラビア印刷により図柄などを印刷した食品用包装材においては、印刷前に必要な作業(版下入稿+製版)と印刷で計12日を要し、その他後加工(フィルム積層、仕上げ加工)で6日かかり合計18日を要していた。
【0013】
また、前記のようにグラビア印刷は分色と製版手間がかかるので、どうしても最小受注ロットは多目になり、顧客は必要以上の包装材を購入せざるを得ず、廃棄ロスが生じた。
【0014】
一方、インクジェット印刷を袋の裏側に印刷する場合に採用するという選択も容易になし得るが、そのためにはプラスチックフィルムの印刷層の側にプラスチックフィルムを積層する工程を要し、コストと時間を要する問題を生じた。
【0015】
これに関し、本願発明者は下記の発明を創作した。
第一の発明は、食品用包装材を構成すべきプラスチックフィルムの製袋時に表側に位置する面に図柄および/または文字を印刷するにあたり、インクジェットインキを用いて図柄および/または文字をインクジェット印刷した後、上記印刷領域に透明なインクジェットインキをインクジェット印刷により重ね印刷したことを特徴とする発明である。
【0016】
また、第二の発明は、食品用包装材を構成すべきプラスチックフィルムの表側に位置する面に図柄および/または文字を印刷するにあたり、インクジェットインキを用いて図柄および/または文字をインクジェット印刷した後、透明なUVインキを重ね印刷したことを特徴とする発明である。
【0017】
また、第三の発明は、食品用包装材を構成すべきプラスチックフィルムの表側に位置する面に図柄および/または文字を印刷するにあたり、インクジェットインキを用いて図柄および/または文字をインクジェット印刷した後、透明なEBインキを重ね印刷したことを特徴とする発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000- 273379
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本願発明者による前記の発明によれば、包装袋や食品用容器の蓋の表側に位置する面に図柄などを印刷するにあたり、水性インクジェットインキを用いてインクジェット印刷しても、上記印刷領域に透明なインクジェットインキ、あるいは透明なUVインキ、あるいは透明なEBインキが重ね印刷されて、図柄などの印刷層を保護するので、図柄などの印刷層が露出しない。
【0020】
よって、包装袋や蓋への加工時に印刷してフィルムを巻き取った際にフィルムの裏面に接触したり、流通時や展示時に他の包装材や物品、あるいは人の手指と接触したりすることにより摩擦により図柄などの印刷層が削られて不鮮明になったり削り屑が生じることが防止される。
【0021】
一方、オンデマンド性に優れたインクジェット印刷により印刷が完了するので、新たな図柄などのために版を用意して、製造ラインにセットしなくてはならないグラビア印刷やフレキソ印刷のように印刷にとりかかるための工程の時間を要することがなく、スピードアップを図ることが可能となり、内容物に応じて多種多様な図柄などを随時印刷しなくてはならない食品用包装材の生産効率を飛躍的に高めることができる。
【0022】
前記の発明はプラスチックフィルムの印刷において、水性インクジェットインキは耐摩擦性、アルコール耐性、耐油性、耐水性などの諸物性がなく、簡単にインキが落ちてしまい塗膜密着性が薄弱で採用できないという従来の技術常識を打ち破ったものである。
【0023】
しかしながら、いままで誰も着手しなかったプラスチックフィルムへの水性インクジェットインキ印刷を実行した本願発明の発明者は新たな問題に直面した。
【0024】
それは、インクヘッド部(印刷部)が非接触式である水性インクジェット印刷では、印刷するインクヘッド部と乾燥経路を走行するフィルムの張力は同じ条件下になるので、乾燥温度と乾燥経路の張力の影響でフィルムの熱伸縮が発生し見当と寸法を制御できなくなるという問題である。
【0025】
そのため、被印刷対象のフィルムが一定の張力を与えられながらインクヘッド部を通過して熱風乾燥経路を走行する水性インクジェット印刷において、熱風乾燥時に熱風によりフィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行ができる張力を与えることが必要となった。
【0026】
図3はそのための方策の一つであり、ここでは、熱風乾燥経路において、回転に伴ってフィルムFが外周の円弧面に接触しながら走行する大径の回転ドラム41を複数個用意し、フィルムを順次次の回転ドラムに送るとともに、フィルムをそれが接触する回転ドラムからの熱および回転ドラムの周側に配された熱風装置43により乾燥させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現している。図中符号42はフィルムを案内するためのガイドローラである。
【0027】
また、図4はそのための他の方策の一つであり、ここでは、熱風乾燥経路において、フィルムFを赤外線ヒータ(図示せず)により水分を乾燥させた後、熱風装置(図示せず)を設けた乾燥炉内の渦巻状の経路に沿って走行させて熱風乾燥させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現している。図中符号52はフィルムを案内するためのガイドローラである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本願発明は前記の方策とは異なる手段により、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現することを目的として創作されたものである。
【0029】
すなわち、本願発明の水性インクジェット印刷装置は、被印刷対象のフィルムが一定の張力を与えられながらインクヘッド部を通過して熱風乾燥経路を走行する水性インクジェット印刷装置の熱風乾燥経路において、フィルムをベルトコンベアのベルト上に吸着固定して搬送させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行を実現したことを特徴とする。
【0030】
また、請求項2記載の発明は前記の水性インクジェット印刷装置において、ベルトコンベアのベルトに穿設した多数の小孔から空気を吸引することにより吸着手段としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本願発明の水性インクジェット印刷装置によれば、熱風乾燥時に熱風によりフィルムがバタつかず蛇行しないように安定した走行ができる張力を与えることが可能となるので、フィルムが熱伸縮せず印刷の見当制御が出来て製品寸法が基準内となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本願発明の水性インクジェット印刷装置の概念図。
図2】同上、要部の平面図。
図3】同上、比較例の要部の側面図。
図4】同上、他の比較例の要部の側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本願発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本願発明の水性インクジェット印刷装置の概念図である。図中符号Fは被印刷対象のフィルムであり、一定の張力を与えられながらインクヘッド部10を通過して熱風乾燥経路20を走行する。インクヘッド部10は非接触式であるので乾燥経路20内の張力と同じ条件になる。乾燥経路20においては乾燥炉内において、ノズルから熱風をインキ面に当てて乾燥させる。
【0034】
図3は本願発明の要旨を示す図である。ここでは、熱風乾燥経路において、フィルムFをベルトコンベア30のベルト31上に吸着固定して搬送させることにより、フィルムがバタつかず蛇行しない様に安定した走行を実現している。なお、ここでは吸着手段としてベルトコンベア30のベルト31に穿設した多数の小孔から空気を吸引する手段を採用している。
【0035】
この場合、ベルトコンベア30のベルト31は水平方向に移動する水平面を持ち、水平面に差しかかったフィルムを順次空気の吸引によりベルト上に吸着固定して水平方向に輸動し、水平面が終わった段階で固定を順次解除する。
【符号の説明】
【0036】
F フィルム
10 インクヘッド部
20 熱風乾燥経路
30 ベルトコンベア
31 ベルト
41 回転ドラム
42 ガイドローラ
43 熱風装置
52 ガイドローラ
図1
図2
図3
図4