(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098431
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】害虫忌避組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 47/16 20060101AFI20220624BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20220624BHJP
A01N 37/46 20060101ALI20220624BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20220624BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20220624BHJP
C07C 35/08 20060101ALI20220624BHJP
C07C 233/47 20060101ALI20220624BHJP
C07C 233/65 20060101ALI20220624BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220624BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20220624BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A01N47/16 A
A01N37/18 Z
A01N37/46
A01N31/06
A01P17/00
C07C35/08
C07C233/47
C07C233/65
C11B9/00 B
C11B9/00 W
C11B9/00 J
C11B9/00 C
C11B9/00 D
C11B9/00 M
C11B9/00 V
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/33
A61K8/44
A61K8/49
A61Q17/00
A61K8/42
A61K8/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174431
(22)【出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020211113
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】三好 一史
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4C083
4H006
4H011
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC172
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC20
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4H006AA03
4H006AB83
4H006BT12
4H006BV22
4H006BV72
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB13
4H011BC05
4H011BC06
4H011BC22
4H011DA13
4H011DB05
4H011DB07
4H011DD07
4H011DE15
4H011DG03
4H059BA01
4H059BA02
4H059BA12
4H059BA14
4H059BA19
4H059BA23
4H059BA30
4H059BA49
4H059BA52
4H059BB15
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA05
4H059EA32
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】モノテルペン系化合物を含有し、かつ光劣化が抑制された害虫忌避組成物を提供する。
【解決手段】(a)モノテルペン系化合物;(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び
(c)有機溶剤;を含有する害虫忌避組成物であって、(d)20℃におけるpHが4.3~9.0であり、(e)本体の少なくとも一部又は全部が、光透過性の容器に収容されてなり、前記(a)成分の含有量が、組成物全量に対して0.01~5w/v%であり、前記(b)成分の含有量が、組成物全量に対して1~30w/v%であることを特徴とする害虫忌避組成物を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モノテルペン系化合物;
(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び
(c)有機溶剤;
を含有する害虫忌避組成物であって、
(d)20℃におけるpHが4.3~9.0であり、
(e)本体の少なくとも一部又は全部が、光透過性の容器に収容されてなり、
前記(a)成分の含有量が、組成物全量に対して0.01~5w/v%であり、
前記(b)成分の含有量が、組成物全量に対して1~30w/v%であることを特徴とする害虫忌避組成物。
【請求項2】
前記(e)容器が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、又はポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避組成物。
【請求項3】
前記(e)容器が着色されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫忌避組成物。
【請求項4】
前記(a)モノテルペン系化合物は、メントール、メントン、リナロール、リモネン、エチルリナロール、チモール、酢酸リナリル、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、テルピネオール、1,8-シネオール、1,4-シネオール、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ラズベリーケトン、ボルネオール、カンファー、オイゲノール、アネトール、ピネン、p-プロペニルアニソール、及びミルセンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の害虫忌避組成物。
【請求項5】
前記容器の光透過性が、波長700nmにおける光透過率5%以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の害虫忌避組成物。
【請求項6】
(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とする(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制剤。
【請求項7】
(a)モノテルペン系化合物を含む組成物に、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を共存させることによる、(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物に関する。より詳細には、本体の一部又は全部が透明の容器に収容されてなる害虫忌避組成物、モノテルペン系化合物の光劣化抑制剤、及び光劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明なプラスチック樹脂ボトルやガラス瓶などの容器に充填された製品は、缶や非透明なプラスチック樹脂ボトルに比べて、内容物の色や残量が外観上視認できるというメリットがある。そのため、飲料、香水や各種内容物を収容するために利用されてきている(特許文献1、2)。
【0003】
ところで、害虫忌避製品は、主に公園や山等の屋外への外出時に使用するものであり、汗等により害虫忌避成分が流れ落ちた際に害虫忌避効果が低下する場合があり、その度に塗り直す必要がある。そのため、外出時にすぐに塗り直せるように害虫忌避製品自体を腰などに掛けて持ち運ぶ機会も多く、太陽光等に由来する光の影響を受けやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-94119号公報
【特許文献2】特開2020-117256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モノテルペン系化合物は香気成分として空気中に揮散しやすい性質を持っており、爽やかな香りを発することを特徴としている。その為、モノテルペン系化合物は、種々の製品に用いられ得るが、光劣化しやすく、本来の爽やかな香りが異臭になって不快な香りに変わる場合がある。さらに、光劣化により、モノテルペン系化合物を含む内容物に懸濁が見られて美観が損なわれる場合がある。
【0006】
本発明は、モノテルペン系化合物を含有するにも関わらず、光劣化が抑制され、良好な品質を維持できる害虫忌避組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イカリジン(1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディート(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することで、モノテルペン系化合物含有害虫忌避組成物の光劣化が抑制され、透明容器に充填しても良好な品質を保ち得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる害虫忌避組成物を提供する。
項1.
(a)モノテルペン系化合物;
(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び
(c)有機溶剤;
を含有する害虫忌避組成物であって、
(d)20℃におけるpHが4.3~9.0であり、
(e)本体の少なくとも一部又は全部が、光透過性の容器に収容されてなり、
前記(a)成分の含有量が、組成物全量に対して0.01~5w/v%であり、
前記(b)成分の含有量が、組成物全量に対して1~30w/v%であることを特徴とする害虫忌避組成物。
項2.
前記(e)容器が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、又はポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする項1に記載の害虫忌避組成物。
項3.
前記(e)容器が着色されていることを特徴とする項1又は2に記載の害虫忌避組成物。
項4.
前記(a)モノテルペン系化合物は、メントール、メントン、リナロール、リモネン、エチルリナロール、チモール、酢酸リナリル、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、テルピネオール、1,8-シネオール、1,4-シネオール、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ラズベリーケトン、ボルネオール、カンファー、オイゲノール、アネトール、ピネン、p-プロペニルアニソール、及びミルセンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする項1~3のいずれか1項に記載の害虫忌避組成物。
項5.
前記容器の光透過性が、波長700nmにおける光透過率5%以上であることを特徴とする、項1~4のいずれか1項に記載の害虫忌避組成物。
【0009】
さらに、本発明は、下記に掲げる剤及び方法を提供する。
項6.
(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とする(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制剤。
項7.
(a)モノテルペン系化合物を含む組成物に、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を共存させることによる、(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、モノテルペン系化合物を含有するにもかかわらず、光による劣化が抑制された害虫忌避組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100ml」と同義である。なお、本明細書における範囲を示す表記「~」がある場合は、上限と下限を含有するものとする。
【0012】
[害虫忌避組成物]
本発明の害虫忌避組成物は、
(a)モノテルペン系化合物;
(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び
(c)有機溶剤;
を含有する害虫忌避組成物であって、
(d)20℃におけるpHが4.3~9.0であり、
(e)本体の少なくとも一部又は全部が、光透過性の容器に収容されてなり、
前記(a)成分の含有量が、組成物全量に対して0.01~5w/v%であり、
前記(b)成分の含有量が、組成物全量に対して1~30w/v%であることを特徴とする害虫忌避組成物である。
【0013】
((a)モノテルペン系化合物)
本発明に用いられる(a)モノテルペン系化合物としては、イソプレン単位2個からなる炭素数が10の化合物であり、具体的には、炭素数が10の非芳香族化合物や炭素数が10の芳香族化合物が含まれる。本発明に用いられる(a)モノテルペン系化合物には、これらの誘導体として、炭素数11又は12の化合物も含まれる。本発明に用いられる(a)モノテルペン系化合物としては、メントール、メントン、リナロール、リモネン、エチルリナロール、チモール、酢酸リナリル、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、テルピネオール(α-テルピネオール)、1,8-シネオール、1,4-シネオール、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ラズベリーケトン、ボルネオール、カンファー、オイゲノール、アネトール、ピネン、p-プロペニルアニソール、及びミルセンからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。限定はされないが、これらの中でも、メントール、メントン、リナロール、リモネン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、テルピネオール、1,8-シネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明において、これらのモノテルペン系化合物は、合成して用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0015】
あるいは、本発明の(a)成分含有物として、これらのモノテルペン系化合物を含む精油を用いることもできる。モノテルペン系化合物を含有する精油は、限定はされないが、例えば、ハッカ油、ラベンダー油、ローズ油、ゼラニウム油、ユーカリ油、レモン油、レモングラス油、イランイラン油、スペアミント油、ローズマリー油、ベルガモット油、シトロネラ油、オレンジ油、ラバンジン油、パチュリ油、シダーウッド油、ジャスミン油、プチグレン油、レモンユーカリ油、グレープフルーツ油、ライム油、ウイキョウ油、パインオイル、カミツレ油、チョウジ油、シナモン油及びテレビン油等の精油が挙げられる。これらの精油は、害虫忌避組成物にそのまま配合しても良い。
【0016】
本発明の害虫忌避組成物において、害虫忌避組成物の全量に対する(a)成分の総含有量は、他の成分とのバランスによって適宜設定される。害虫忌避組成物の全量に対する、(a)成分の総含有量は、0.01w/v%以上が好ましく、0.05w/v%以上がより好ましく、0.1w/v%以上がさらに好ましく、0.2w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する、(a)成分の総含有量は、嗜好性の観点から、5w/v%以下が好ましく、4w/v%以下がより好ましく、3w/v%以下がさらに好ましく、2.5w/v%以下であることが特に好ましい。
【0017】
上記(a)成分が精油として配合される場合には、精油中にモノテルペン系化合物が総含有量として1質量%以上含まれている精油を用いることが好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する、(a)成分を含む精油の含有量は、0.1w/v%以上が好ましく、0.2w/v%以上がより好ましく、0.3w/v%以上がさらに好ましく、0.5w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する、(a)成分を含む精油の含有量は、5w/v%以下が好ましく、4w/v%以下がより好ましく、3w/v%以下がさらに好ましく、2.5w/v%以下であることが特に好ましい。
【0018】
((b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上)
本発明に用いられる(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上としては、不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も本発明の(b)成分に包含される。
【0019】
上記(b)成分は、害虫忌避効果と共に、モノテルペン系化合物の光劣化を抑制する効果を奏する。害虫忌避組成物の全量に対する(b)成分の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、1w/v%以上が好ましく、3w/v%以上がより好ましく、5w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する(b)成分の含有量は、30w/v%以下が好ましく、20w/v%以下がより好ましく、10w/v%以下が特に好ましい。
【0020】
本発明の害虫忌避組成物において、(a)成分に対する(b)成分の配合量の比率は、
(a)成分の総含有量1質量部に対して、(b)成分0.20~3000質量部が好ましく、1.67~200質量部がより好ましく、2.00~50質量部がさらに好ましい。
【0021】
((c)有機溶剤)
本発明に用いられる(c)有機溶剤としては、限定はされないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール系溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール等のグリコールエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、n-パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。限定はされないが、これらのうち、アルコール系溶剤又はグリコールエーテル系溶剤が好ましく用いられる。
【0022】
害虫忌避組成物の全量に対する(c)成分の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、10w/v%以上が好ましく、20w/v%以上がより好ましく、30w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する(c)成分の含有量は、90w/v%以下が好ましく、80w/v%以下がより好ましく、70w/v%以下が特に好ましい。
【0023】
(pH)
本発明の害虫忌避組成物は、成分の安定性、皮膚や粘膜に対する低刺激性の観点から、pH4.3~9.0の液性を備えていればよい。本発明の害虫忌避組成物は、好ましくはpH4.5~9.0であり、より好ましくはpH5.0~9.0(pH5~9)、さらに好ましくはpH5.5~8.0の弱酸性又は中性である。害虫忌避組成物のpHは、20℃において、市販のpHメーター(例えばメトラトレド製、Seven2Go(登録商標)型等)を使用して測定できる。なお、害虫忌避組成物が水を含有しない場合、前記害虫忌避組成物を精製水で20倍希釈して測定した値をpHとする。
【0024】
(水)
本発明の害虫忌避組成物は、上記(a)~(c)成分に加えて、水を配合することができる。かかる水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
害虫忌避組成物の全量に対する水の含有量は、5w/v%以上が好ましく、10w/v%以上がより好ましく、20w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対する水の含有量は、65w/v%以下が好ましく、55w/v%以下がより好ましく、45w/v%以下が特に好ましい。
【0025】
また、本発明の効果を阻害しない限り、本発明の害虫忌避組成物には、(a)~(c)成分以外に、任意成分が適宜配合されていても良い。一例を挙げると、任意成分は、上記(b)成分以外の他の害虫忌避成分、pH調整剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸等の安定化剤、タルクや珪酸等の無機粉体、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素、感触付与剤、UV吸収抑制剤等が挙げられる。本発明の害虫忌避組成物は、香料を含まない組成物とすることもできる。
【0026】
pH調整剤としては、限定はされないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
他の害虫忌避成分としては、フェノトリン、ジブチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-ジクロロベンゼン、ジ-n-ブチルサクシネート、カプリン酸ジエチルアミド、n-プロピルアセトアニリド等が挙げられる。
【0028】
ノニオン系界面剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEアルキルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(POEアルキルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル(POE高級脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(POEグリセリン脂肪酸エステル)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POEPOPアルキルエーテル)、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEアルキルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(POEアルキルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル(POE高級脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(POEグリセリン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POEPOPアルキルエーテル)を含有することが好ましく、平均付加モル数が20~100のものが好ましく、30~80のものがより好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、を含有することがより好ましく、具体的には、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油等が挙げられ、ブラウノンRCW-20(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-40(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-50(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-60(青木油脂工業株式会社製)、エマレックスHC-60(日本エマルジョン株式会社製)、ニッコールHCO-60(日光ケミカルズ株式会社製)を使用することができる。
【0030】
害虫忌避組成物の全量に対するノニオン系界面剤の含有量は、特に限定されないが、0.1/v%以上が好ましく、0.3w/v%以上がより好ましく、0.5w/v%以上が特に好ましい。害虫忌避組成物の全量に対するノニオン系界面剤の含有量は、10.0w/v%以下が好ましく、8.0w/v%以下がより好ましく、5.0w/v%以下が特に好ましい。
【0031】
(容器)
本発明の害虫忌避組成物は、(e)本体の少なくとも一部又は全部が、透明(光透過性)の容器に収容してなる。
ここで、本体とは、内容物の収容部を指す。一部又は全部が透明である容器に収容されてなる害虫忌避組成物の製品は、内容物が視認でき、内容物の残量を一見して確認できるため、使用者が買い替え時期を適切に把握することができる。本発明の害虫忌避組成物は、光劣化が抑制されることから、外出時にも安心して利用することができる。ここで、本明細書において「透明」とは、容器に充填された害虫忌避組成物を外部から視認できることを意味する。透明である容器には、容器の一部分においてその外部から内容物を視認できることも含まれる。透明である容器としては、例えば波長700nmにおける光透過率が5%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上の容器を挙げることができる。また、波長700nmにおける光透過率が100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下の容器を挙げることができる。光透過率の測定器としては、例えば、島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV-1800)等が挙げられる。
【0032】
容器の材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、ポリエチレン(PE)製容器、ポリプロピレン(PP)製容器、ガラス製容器等が挙げられ、取り扱いの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、ポリエチレン(PE)製容器、ポリプロピレン(PP)製容器が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器がより好ましい。ここで、例えば、ポリエチレンテレフタレート製容器というときの「製」とは、主にポリエチレンテレフタレート樹脂を含む容器を意味し、必ずしもすべてが同じ樹脂からなるものでなくても良い。
【0033】
容器の厚みは特に限定されないが、0.02~0.2mmが好ましく、0.03~0.15mmがより好ましい。
【0034】
容器は、無色でも着色されていても良く、ラメが入っていても良い。中でも、容器が着色されているものが好ましい。容器が着色されている場合、容器の色は特に限定されないが、緑色、青色、紫色、桃色、赤色、黄色等が挙げられ、緑色、青色又は紫色に着色されているものが好ましい。
【0035】
また、容器の一部又は全部がフィルム等で覆われていてもよい。例えば、内容表示用ラベル・印刷部分は不透明あるいは半透明でそれ以外の部分が透明な容器や、看視窓程度の大きさの透明部分のみを有する不透明容器など、内容物が視認できる透明部分が存在する限りにおいて透明領域については特に限定されない。
【0036】
使用される容器の形状は、適宜選択でき、限定はされないが、円柱、四角柱、多角柱、三角柱あるいは一部に凸部や凹部を有する略円柱状のもの等いずれでも良く、スポイドタイプ、ディスペンサータイプ、スプレータイプ、ボトルタイプ等が挙げられる。限定はされないが、特にアクチュエータ付きポンプタイプ容器又はエアゾールタイプ容器が好ましい。本発明の害虫忌避組成物は、例えば、(a)~(c)成分、及び必要に応じて各任意成分のいずれか又は複数を配合混合し、さらに必要に応じてその他の溶媒や通常使用される基剤等を配合することによって、液状にし、ポンプタイプ容器又はエアゾールタイプ容器に収容されることが特に好ましい。ポンプタイプ容器では、液状の害虫忌避組成物が収容部に収められ、バルブ機能やポンプ機能を併せ持つアクチュエータによって開口を閉止される。エアゾールタイプ容器では、液状の害虫忌避組成物は噴射剤と共に収容部に収められ、バルブ機構を含むアクチュエータによって開口を閉止される。
【0037】
(ポンプタイプ容器におけるアクチュエータ)
アクチュエータは、容器の収容部の開口を閉止すると共に、収容部内に収容される害虫忌避組成物を噴射するための部材である。アクチュエータは、収容される害虫忌避組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された害虫忌避組成物を噴射するための噴口が形成されている。また、噴射部材は、典型的には、使用者に操作されるプッシュダウン部又はトリガー部を有する。
【0038】
本発明の一態様においては、使用者によってプッシュダウン部又はトリガー部を操作されることにより、ステム機構及びバルブ機構が作動し、容器から害虫忌避組成物を取り出して、噴射部材の噴口から噴射することができる。
【0039】
アクチュエータの形状は、特に限定されないが、トリガー部を備えたトリガータイプ、プッシュダウン部を備えたフィンガーポンプタイプ等が挙げられる。これらのアクチュエータの噴口の大きさは、一例をあげると、直径0.05~1.0mmであり、噴口は1つでも複数でも良い。ディップチューブの内径は、一例を挙げると、1~10mmであり、1~5mmが好ましい。1回噴射当たりの噴射量は、例えば0.05~3.0mLであり、0.05~1.5mLが好ましい。蓄圧式ポンプの場合、1秒当たりの噴射量は、例えば0.1~5.0gである。
【0040】
このような態様においては、容器に害虫忌避組成物を充填し、アクチュエータによって容器の開口を閉止することによって、組成物を噴射する製品が製造できる。
【0041】
(エアゾールタイプ容器におけるアクチュエータ)
アクチュエータは、容器の収容部の開口を閉止すると共に、収容部内に充填される害虫忌避組成物を噴射するための部材である。アクチュエータは、収容される害虫忌避組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された害虫忌避組成物を噴射するための噴口が形成されている。また、噴射部材は、典型的には、使用者に操作されるプッシュダウン部又はトリガー部を有する。
【0042】
本発明の一態様においては、使用者によってプッシュダウン部又はトリガー部を操作されることにより、ステム機構及びバルブ機構が作動し、収容部と外部とが連通する。これにより、収容部内の害虫忌避組成物及び噴射剤は、容器内と外部との圧力差に従って容器から取り出され、噴射部材の噴口から噴射することができる。
【0043】
アクチュエータの形状は、特に限定されないが、トリガー部を備えたトリガータイプ、プッシュダウン部を備えたプッシュボタンタイプ等が挙げられる。これらのアクチュエータの噴口の大きさは、一例をあげると、直径0.05~1.0mmであり、噴口は1つでも複数でもよい。1秒あたりの噴射量は、例えば、0.1~5gである。
【0044】
(噴射剤)
噴射剤は、エアゾールタイプ製品を製造する際に、害虫忌避組成物と共に容器に加圧充填される内容物である。噴射剤は、アクチュエータが作動されることにより、害虫忌避組成物と共に噴射される。その際、噴射剤は、害虫忌避組成物を噴射する際の推進力を付与すると共に、害虫忌避組成物を微細化する。
【0045】
噴射剤は特に限定されないが、一例をあげると、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)、ノルマルペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル(DME)、及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、HFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、並びに窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、及び圧縮空気等の圧縮ガスが挙げられる。上記の噴射剤は、単独又は混合状態で使用することができ、液化ガス及び圧縮ガスは、併用されてもよい。
【0046】
噴射剤として、液化ガスが使用される場合、液化ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの充填量は、害虫忌避組成物及び噴射剤の合計に対し、20~80容量%である。また、液化ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~0.7MPaとなる量であることが好ましい。
【0047】
噴射剤として圧縮ガスが使用される場合、圧縮ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~1.0MPaとなる量であることが好ましい。
【0048】
(用途)
本発明の害虫忌避組成物は、主に(a)成分に由来する揮発性成分を含む為に、適用した場合に、空間に広がることができ、害虫を近くに寄せ付けない効果を含む虫よけ機能を有する。さらに、(b)成分の存在の為に、皮膚面で吸血源を認知させない効果を含むお肌の虫よけ機能も有する。さらには、場合により、肌に冷感、清涼感又は湿潤性を与えることも可能である。ここで、本明細書でいう害虫としては、限定はされないが、特には、蚊(蚊成虫を含む)、ブユ、サシバエ、イエバエ、マダニ、ナンキンムシ、アブ等の衛生害虫に加え、ユスリカ、チョウバエ等の不快害虫も含まれる。
【0049】
本発明の害虫忌避組成物は、用途等に応じて1日あたり1回から数回に分けて、害虫忌避組成物として公知あるいは慣用されている用法・用量にて使用することができる。すなわち、肌に直接適用又は服の上からの適用が可能である。場合により、マスクの上からの使用も可能な場合もある。持続時間は任意であるが、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上とすることができる。
【0050】
また、本発明の害虫忌避組成物は、大人から子どもまで使用することも可能である。例えば、(b)成分として、イカリジンを選択することで、6か月未満の乳児を含む小児に用いられる為の害虫忌避組成物とすることも可能である。さらに、6か月以上2歳未満の年齢の小児には、1日1回又は2回以上の使用、2歳以上12歳未満の小児に、1日1~3回、又は3回以上の使用が可能である。実質的に1日の回数の厳密な制限がなく使用することができる。
【0051】
本発明によれば、モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物が本体の一部又は全部が透明である容器に充填された害虫忌避製品において、透明な部分が容器に存在しながらも、光による劣化が抑制された害虫忌避製品を提供することができる。このような製品は、公園や山等への外出時に腰などに掛けて持ち運び、太陽光等の影響を受けた場合であっても、光曝露による光劣化の発生が少ないという利点を有しているので、外出時にも安心して利用することができる。また、本発明によれば、製品の内容物を容器の外側から目視できるため、内容物の残量を一見して確認でき、使用者が買い替え時期を適切に把握することができる。さらに、透明容器を用いた美観性にも優れるものであるため、視覚的にもアピールでき、消費者の購買意欲を向上させることのできる優れた容器入り害虫忌避製品を提供することができる。
【0052】
[光劣化抑制剤]
本発明はまた、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とする(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制剤を包含する。
本発明の光劣化抑制剤において、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び(a)モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物とすることやそれらの含有量、については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じる。また、(c)成分及び(d)pHとその他の任意成分とそれらの含有量や収容する容器については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じていても良い。
【0053】
[光劣化抑制方法]
本発明はまた、(a)モノテルペン系化合物を含む組成物に、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を共存させることによる、(a)モノテルペン系化合物の光劣化抑制方法を包含する。
本発明の光劣化抑制方法において、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び(a)モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物とすることやそれらの含有量については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じる。また、(c)成分及び(d)pHとその他の任意成分とそれらの含有量や収容する容器については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じていても良い。
【0054】
[光劣化臭発生抑制剤]
本発明はまた、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とする(a)モノテルペン系化合物の光劣化臭発生抑制剤を包含する。
本発明の光劣化臭抑制剤において、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び(a)モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物とすることやそれらの含有量については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じる。また、(c)成分及び(d)pHとその他の任意成分とそれらの含有量や収容する容器については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じていても良い。
【0055】
[光劣化臭発生抑制方法]
本発明はまた、(a)モノテルペン系化合物を含む組成物に、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上を共存させることによる、(a)モノテルペン系化合物の光劣化臭発生抑制方法を包含する。
本発明の光劣化臭発生抑制方法において、(b)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上;及び(a)モノテルペン系化合物を含有する害虫忌避組成物とすることやそれらの含有量については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じる。また、(c)成分及び(d)pHとその他の任意成分とそれらの含有量や収容する容器については、前記害虫忌避組成物で記載した内容に準じていても良い。
【実施例0056】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表における各成分量の単位は、表中特に断りがない限り、w/v%である。また、表中の略語PMDは、p-メンタン-3,8-ジオール、略語EBAAPは、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、略語POE硬化ヒマシ油は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を表す。
【0057】
[1]効力試験1(光劣化臭抑制効果、光懸濁性抑制効果)
(a)リナロールを0.9g(0.9w/v%)、(b)イカリジン5g(5w/v%)、精製水を35g(35w/v%)、並びに、(c)無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの害虫忌避組成物を調製した。本組成物を青色に着色されている透明なポリエチレンテレフタレート製容器に充填し、プッシュダウン式のアクチュエータを装着して、実施例1の透明容器(青色、波長700nmにおける光透過率19%、全体が透明、容器の厚み0.1mm)入り害虫忌避組成物を製造した。
【0058】
さらに、表1に記載のように各成分を配合し、他は実施例1と同様にして、実施例2~9、及び比較例1~6の透明容器入り害虫忌避製品を製造した。なお、上記透明容器入り害虫忌避製品のpHについては、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いて表に示すpHとなるように調整した。
【0059】
[光劣化臭抑制効果試験]
実施例1~9、及び比較例1~6の各害虫忌避製品を太陽光に3日間照射し(平均気温30℃)、照射後の各害虫忌避製品を約0.2mL腕に噴霧し、乾燥後の臭気を評価した。評価は、太陽光照射前の実施例1~9、及び比較例1~6と同処方、同pHの害虫忌避製品を約0.2mL腕に噴霧した際の、乾燥後の臭気を基準とし、光劣化による異臭(光劣化臭)の強弱などを、基準と比較し、3段階(3点:光劣化臭が弱い、2点:光劣化臭がやや弱い、1点:光劣化臭が強い)で分類した。なお、評価を実施するにあたり、パネラー5名全員で討議し、光劣化臭に対してすり合わせを行って、各パネラーが共通認識を持つようにし、いくつかの害虫忌避製品を用いて、光劣化臭についての強度評価の訓練を行い、試験の再現性を確認させた。前述した訓練により各パネラーの強度評価の妥当性を担保した後、評価は、光劣化臭の強弱について臭気の官能評価のパネラー5名が各自で試験を実施し、点数を回答した後に、5名の点数を集計して平均点を求め、以下の基準で評価した。(試験結果は表1に記載する。)なお、試験はすべてブラインドテストである。
(評価基準)
A;2.5点<(平均点)≦3.0点
B;1.5点<(平均点)≦2.5点
C;1.0点≦(平均点)≦1.5点
【0060】
[光懸濁性抑制効果試験]
実施例1~9、及び比較例1~6の各害虫忌避製品を太陽光に3日間照射し(平均気温30℃)、照射後の各害虫忌避製品の外観を5名のパネラーがそれぞれ観察し、光懸濁性を以下の基準で評価し、5名のパネラー全員で協議により決定した。なお、濁度は、JIS K0101に従う一般法(標準系列比濁法)によって評価した。その中で、精製カオリン1mgを水1L中に含む濁りの度合いを1度として表わす(測定範囲は、1度~10度)。この試験結果は、表1に記載する。
(評価基準)
A;(濁度)<1度
B;1度≦(濁度)≦10度
C;10度<(濁度)
【0061】
【0062】
[2]効力試験2(光劣化臭抑制効果、光懸濁性抑制効果)
(a)ハッカ油(メントール55%、メントン20%、リモネン3%、その他成分22%を含有)を3g(3w/v%)、(b)イカリジン5g(5w/v%)、精製水を35g(35w/v%)、並びに、(c)無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの害虫忌避組成物を調製した。本組成物を緑色に着色されている透明なポリエチレンテレフタレート製容器に充填し、プッシュダウン式のアクチュエータを装着して、実施例10の透明容器(緑色、波長700nmにおける光透過率28%、全体が透明、容器の厚み0.05mm)入り害虫忌避製品を製造した。
【0063】
さらに、表2に記載のように各成分を配合し、他は実施例10と同様にして、実施例11~16、及び比較例7~12の透明容器入り害虫忌避製品を製造した。なお、上記透明容器入り害虫忌避製品のpHについて、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いて種々のpHとなるように調整した。そして、上記[1]と同様にして、実施例10~16、及び比較例7~12の透明容器入り害虫忌避製品を用いて、光劣化臭の強度、及び光懸濁性を評価した。試験結果は表2に記載する。
【0064】
【0065】
[3]効力試験3(光劣化臭抑制効果、光懸濁性抑制効果)
(a)ラベンダー油(リナロール40%、酢酸リナリル35%、α-テルピネオール3%、その他成分22%を含有)を1g(1w/v%)、(b)イカリジン5g(5w/v%)、精製水を35g(35w/v%)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1g(1w/v%)、並びに、(c)無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの害虫忌避組成物を調製した。本組成物を紫色に着色されている透明なポリエチレンテレフタレート製容器に充填し、プッシュダウン式のアクチュエータを装着して、実施例17の透明容器(紫色、波長700nmにおける光透過率88%、全体が透明、容器の厚み0.05mm)入り害虫忌避製品を製造した。
【0066】
さらに、表3に記載のように各成分を配合し、他は実施例17と同様にして、実施例18~23、及び比較例13~17の透明容器入り害虫忌避製品を製造した。なお、上記透明容器入り害虫忌避製品のpHについて、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いて種々のpHとなるように調整した。そして、上記[1]と同様にして、実施例17~23、及び比較例13~17の透明容器入り害虫忌避製品を用いて、光劣化臭の強度、及び光懸濁性を評価した。試験結果は表3に記載する。
【0067】
【0068】
効力試験の結果、実施例の組成物では、光劣化臭及び懸濁の発生が抑制されていることがわかった。一方、比較例の組成物では光劣化臭も懸濁の発生も見られた。