(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098436
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】マルチトンネル接合を有するVCSELレーザ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181614
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】202011519982.7
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521488761
【氏名又は名称】浙江睿熙科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Rayseasc Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101, Building 2, No.358 Tongyun Street, Liangzhu Street, Yuhang District, Hangzhou City, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 立
(72)【発明者】
【氏名】李 念宜
(72)【発明者】
【氏名】郭 銘浩
(72)【発明者】
【氏名】林 珊珊
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA57
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC36
5F173AC42
5F173AC46
5F173AC52
5F173AF20
5F173AP54
5F173AP67
5F173AR23
5F173AR52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い光電変換効率を有しながら、遠視野拡がり角の大きさを両立させることができる、マルチトンネル接合を有するVCSELレーザ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】VCSELレーザは、エピタキシャル構造10と、エピタキシャル構造10に電気的に接続される正電極20及び負電極30とを含み、エピタキシャル構造10は、基板11と、基板11の上方に位置する、反射チャンバ100が介在する第1の反射器12及び第2の反射器13と、反射チャンバ100内に形成され、反射チャンバ100内で交互に設けられた複数の活性領域14及び複数のトンネル接合15と、反射チャンバ100内に形成された、それぞれ開口160を有する少なくとも二つの規制層16と、を含む。ここで、少なくとも二つの規制層16の開口160のうちの少なくとも一部の160が異なる孔径を有する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル構造と前記エピタキシャル構造に電気的に接続される正電極及び負電極とを含み、
前記エピタキシャル構造は、
基板と、
前記基板の上方に位置する、反射チャンバが介在する第1の反射器及び第2の反射器と、
前記反射チャンバ内に形成され、前記反射チャンバ内で交互に設けられた複数の活性領域及び複数のトンネル接合と、
前記反射チャンバ内に形成された、それぞれ開口を有する少なくとも二つの規制層と、を含み、前記少なくとも二つの規制層の前記開口のうちの少なくとも一部の開口間が異なる孔径を有する、
ことを特徴とするマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項2】
前記規制層は、前記活性領域ごとに上方にそれぞれ形成され、前記制限層の数は、前記活性領域の数と一致する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項3】
前記規制層は、一部の前記活性領域の上方に選択可能に形成され、前記規制層の数は、前記活性領域の数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項4】
前記開口の孔径範囲は、1um~100umである、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項5】
前記開口の孔径範囲は、3um~50umである、
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項6】
前記開口間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umである、
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項7】
前記開口間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである、
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項8】
前記少なくとも二つの規制層の前記開口間の孔径のサイズは、何れも互いに等しくない、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項9】
前記少なくとも二つの規制層のうち前記第2の反射器に最も近い前記規制層の開口は、最小の孔径を有する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項10】
前記少なくとも二つの規制層は、酸化工程によって形成された酸化規制層を少なくとも一つ含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項11】
前記少なくとも二つの規制層は、イオン注入工程によって形成されたイオン規制層を少なくとも一つ含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項12】
前記少なくとも二つの規制層は、酸化工程によって形成された酸化規制層を少なくとも一つ含むとともに、前記少なくとも二つの規制層は、イオン注入工程によって形成されたイオン規制層を少なくとも一つ含む
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項13】
前記少なくとも二つの規制層は、全て酸化工程によって形成された酸化規制層である、
ことを特徴とする請求項10に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項14】
前記酸化規制層の間のピッチは、0.5*前記VCSELレーザによるレーザ光の波長の整数倍をその間の半導体の屈折率で割った加重合計に等しい、
ことを特徴とする請求項13に記載のマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ。
【請求項15】
エピタキシャル成長工程によって、基板と、前記基板の上方に位置する第1の反射器及び第2の反射器と、前記第1の反射器と前記第2の反射器との間に形成され、交互に設けられた複数の活性領域及び複数のトンネル接合とを含むエピタキシャル構造を形成するステップと、
酸化工程によって前記第1の反射器と前記第2の反射器との間に、それぞれ開口を有する少なくとも二つの酸化規制層を形成するステップであって、前記開口のうちの少なくとも一部の開口間が異なる孔径を有するステップと、を含む、
ことを特徴とするマルチトンネル接合を有するVCSELレーザの製造方法。
【請求項16】
前記酸化規制層は、前記活性領域ごとに上方にそれぞれ形成され、前記酸化制限層の数は、前記活性領域の数と一致する、
ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記酸化規制層は、一部の前記活性領域の上方に選択可能に形成され、前記酸化規制層の数は、前記活性領域の数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記開口の孔径範囲は、1um~100umである、
ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
前記開口の孔径範囲は、3um~50umである、
ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
前記開口間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umである、
ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記開口間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである、
ことを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記少なくとも二つの酸化規制層のうち前記第2の反射器に最も近い前記酸化規制層の開口は、最小の孔径を有する、
ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体の分野に関し、さらに具体的にはマルチトンネル接合を有するVCSELレーザ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser、垂直キャビティ表面放出レーザ)は、半導体レーザであり、基板の垂直方向に共振キャビティを形成し、垂直方向にレーザ光を出射する。VCSELレーザ、特に複数のVCSELユニットを含むVCSELドットマトリクスデバイスは、例えば、コンシューマー電子、工業、医療などの業界で広く使用されている。トンネル接合の数に基づいて、VCSELデバイスは、シングル接合VCSELデバイスとマルチ接合VCSELデバイスに分けられることができ、名前の通り、シングル接合VCSELデバイスは、VCSELデバイスの中のVCSELユニットが一つのトンネル接合を有することを表し、マルチ接合VCSELデバイスは、VCSELデバイスの中のVCSELユニットが複数のトンネル接合を有することを表す。
【0003】
マーケットは、高出力のVCSELドットマトリクスデバイスに対してずっと高い光電変換効率(Power-converted-efficiency:PCE)というニーズがある。シングル接合VCSELデバイスは、自身の抵抗特性のため、高出力を実現しながら高いPCEを達成することは難しい。また、シングル接合の高出力VCSELデバイスを駆動するには大きな電流が必要であり、実際に応用されるところ、アルゴリズムは、電流パルスの立ち上がり時間に対する要求が厳しく、つまり、駆動回路基板の設計に対する要求が厳しく、技術的に実現し難い。
【0004】
マルチ接合VCSELデバイスは、シングル接合VCSELデバイスと比較して、特定の使用条件において、シングル接合VCSELデバイスに備えられる上記の欠陥をある程度緩和することができる。つまり、指定された電力の要求について、比較的小さな電流でマルチ接合VCSELデバイスを駆動することができ、動作電流の低減により、対応するPCEも向上する。
【0005】
しかし、マルチ接合VCSELデバイスの幾何キャビティ長は、シングル接合VCSELデバイスの数倍なので、実際のマルチ接合VCSELデバイスの遠視野拡がり角は、設計の要求を満たすことが難しい。つまり、マルチ接合VCSELデバイスについて、光電変換効率と遠視野拡がり角の両方面の性能を両立させることは困難である。
【0006】
従って、光電変換効率と遠視野拡がり角の大きさを両立可能な新しいVCSELデバイスが求められている。
【発明の概要】
【0007】
本願の利点の一つは、マルチトンネル接合を有するVCSELレーザ及びその製造方法を提供し、ここに、前記VCSELレーザは、高い光電変換効率を有しながら、遠視野拡がり角の大きさを両立させることができる。
【0008】
上記の少なくとも一つの利点を実現するために、本願は、マルチトンネル接合を有するVCSELレーザを提供し、エピタキシャル構造と、前記エピタキシャル構造に電気的に接続される正電極及び負電極とを含み、
ここに、前記エピタキシャル構造は、
基板と、
前記基板の上方に位置する、反射チャンバが介在する第1の反射器及び第2の反射器と、
前記反射チャンバ内に形成され、前記反射チャンバ内で交互に設けられた複数の活性領域及び複数のトンネル接合と、
前記反射チャンバ内に形成された、それぞれ開口を有する少なくとも二つの規制層と、を含み、ここに、前記少なくとも二つの規制層の前記開口のうちの少なくとも一部の開口間が異なる孔径を有する。
【0009】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記規制層は、前記活性領域ごとに上方にそれぞれ形成され、前記制限層の数は、前記活性領域の数と一致する。
【0010】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記規制層は、一部の前記活性領域の上方に選択可能に形成され、前記規制層の数は、前記活性領域の数よりも少ない。
【0011】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記開口の孔径範囲は、1um~100umである。
【0012】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記開口の孔径範囲は、3um~50umである。
【0013】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記開口間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umである。
【0014】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記開口間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである。
【0015】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層の前記開口間の孔径のサイズは、何れも互いに等しくない。
【0016】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも一つの規制層のうち前記第2の反射器に最も近い前記規制層の開口は、最小の孔径を有する。
【0017】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層は、酸化工程によって形成された酸化規制層を少なくとも一つ含む。
【0018】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層は、イオン注入工程によって形成されたイオン規制層を少なくとも一つ含む。
【0019】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層は、酸化工程によって形成された酸化規制層を少なくとも一つ含むとともに、前記少なくとも二つの規制層は、イオン注入工程によって形成されたイオン規制層を少なくとも一つ含む。
【0020】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層は、全て酸化工程によって形成された酸化規制層である。
【0021】
本願によるマルチトンネル接合を有するVCSELレーザにおいて、前記酸化規制層の間のピッチは、0.5*前記VCSELレーザによるレーザ光の波長の整数倍をその間の半導体の屈折率で割った加重合計に等しい。
【0022】
本願の他の態様により、
エピタキシャル成長工程によって、基板と、前記基板の上方に位置する第1の反射器及び第2の反射器と、前記第1の反射器と前記第2の反射器との間に形成され、交互に設けられた複数の活性領域及び複数のトンネル接合とを含むエピタキシャル構造を形成するステップと、
酸化工程によって前記第1の反射器と前記第2の反射器との間に、それぞれ開口を有する少なくとも二つの酸化規制層を形成するステップであって、前記開口のうちの少なくとも一部の開口間が異なる孔径を有するステップと、を含む、マルチトンネル接合を有するVCSELレーザの製造方法をさらに提供する。
【0023】
本願による製造方法において、前記酸化規制層は、前記活性領域ごとに上方にそれぞれ形成され、前記酸化制限層の数は、前記活性領域の数と一致する。
【0024】
本願による製造方法において、前記酸化規制層は、一部の前記活性領域の上方に選択可能に形成され、前記酸化規制層の数は、前記活性領域の数よりも少ない。
【0025】
本願による製造方法において、前記開口の孔径範囲は、1um~100umである。
【0026】
本願による製造方法において、前記開口の孔径範囲は、3um~50umである。
【0027】
本願による製造方法において、前記開口間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umである。
【0028】
本願による製造方法において、前記開口間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである。
【0029】
本願による製造方法において、前記少なくとも二つの酸化規制層のうち前記第2の反射器に最も近い前記酸化規制層の開口は、最小の孔径を有する。
【0030】
後述の説明と図面を理解することで、本願の更なる目的と利点が十分に具現化される。
【0031】
本願のこれらとその他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲によって十分に具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本願のこれらおよび/または他の態様および利点は、以下の図面を参照し、本願の実施例に対する詳細な説明から、より明確かつ理解しやすくなる。ここに、
【
図1】従来のシングル接合VCSELユニットの構造模式図を図示する。
【
図2】従来のマルチ接合VCSELユニットの構造模式図を図示する。
【
図3】従来のマルチ接合VCSELユニットの別の構造模式図を図示する。
【
図4A】本願の実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
【
図4B】本願の実施例によるVCSELレーザの一つの変形実施の構造模式図を図示する。
【
図4C】本願の実施例によるVCSELレーザの別の変形実施の構造模式図を図示する。
【
図5】本願の実施例によるVCSELレーザのパフォーマンス曲線説明図を図示する。
【
図6】本願の実施例によるVCSELレーザの別のパフォーマンス曲線説明図を図示する。
【
図7】本願の別の実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
【
図8】本願の更なる実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
【
図9】本願の更なる実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
【
図10】本願の実施例によるVCSELレーザの製造方法の説明図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の明細書および特許請求の範囲で使用される用語および言葉は、文面の意味に限定されるものではなく、本願を明確かつ一貫して理解できるように、本出願人だけに使用されるものである。したがって、当業者は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義されるように、本願を制限する目的のためではなく、説明の目的だけのために本願の様々な実施形態の以下の説明を提供することは明らかである。
【0034】
「一」という用語は、「少なくとも一」または「一つまたは複数」として理解されるべきであり、すなわち、一実施例では、ある要素の数は一つでもよく、他の実施例では、この要素の数は、複数でもよく、「一」という用語は、数に対する制限として理解されることができない。
【0035】
たとえば、「第1」、「第2」などの序数は、様々な構成部材を記載するために使用されるが、ここではそれらの構成部材を制限しない。この用語は、ある構成部材と別の構成部材を区別するためにのみ使用される。例えば、実用新案の発想の教示を逸脱することなく、第1の構成部材を第2の構成部材と呼ぶことができ、同様に、第2の構成部材も第1の構成部材と呼ぶことができる。ここで使用される用語「および/または」には、1つまたは複数の関連するリストされた項目の任意の組み合わせと全ての組み合わせが含まれる。
【0036】
ここで使用される用語は、様々な実施例を説明する目的だけのために使用され、制限することを意図するものではない。ここで使われているように、コンテキストで例外であるとはっきりと明記されていない限り、単数形は、複数形も含むことを意味する。さらに、「含む」および/または「有する」という用語は、本明細書で使用されるときに、1つまたは複数の他の特徴、数量、ステップ、操作、構成部材、要素、またはそれらの組み合わせの存在または付加を排除することなく、前記特徴、数量、ステップ、操作、構成部材、要素、またはそれらの組み合わせの存在を指定することを理解できる。
【0037】
出願の概要
上述したように、シングル接合VCSELデバイスは、自身の抵抗特性のため、高出力を実現しながら高いPCEを達成することは難しい。
図1は、従来のシングル接合VCSELデバイスにおけるシングル接合VCSELユニットの構造模式図を図示する。
図1に示すように、従来のシングル接合VCSELユニットは、上から下へ順に、負電極1P、基板2P、N-DBR 3P、活性領域4P、酸化規制層5P、P-DBR 6P及び正電極7Pを含み、ここに、動作中に、活性領域4P内に反転分布が存在し、レーザ媒質が与えるゲインが損失を十分に超えている場合、前記正電極7Pと負電極1Pから電流を注入すると、光強度が増加し続け、高エネルギー状態の伝導帯底にある電子が低エネルギー帯に遷移すると、特定波長の光がP-DBR 6PとN-DBR 3Pの間を往復して反射するにつれて増幅過程が繰り返され、レーザ光が形成される。特に、従来のシングル接合VCSELユニットでは、シングルトンネル接合が活性領域に形成されている。
【0038】
図2は、従来のマルチ接合VCSELユニットの構造模式図を図示する。
図2に示すように、
図1で示されているシングル接合VCSELユニットと比べられると、マルチ接合VCSELユニットは、N-DBR 3PとP-DBR 6Pとの間に互いに交互に設けられた複数の活性領域 4P及び複数のトンネル接合8Pを含む。例えば、
図2で示されているマルチ接合VCSELユニットにおいて、該マルチ接合VCSELユニットは、三接合VCSELユニットに実施され、三つの活性領域 4Pと二つのトンネル接合 8Pとを含み、トンネル接合8Pは、二つの活性領域 4Pごとの間に介在される。
【0039】
トンネル接合がトンネル効果に基づいて動作することは、当業者に知られるべきであり、いわゆるトンネル効果とは、キャリアエネルギが低い(ポテンシャル障壁高さより小さい、すなわちE<V)場合に、薄膜材料そのものは厚さが薄い(10nm以下の場合)ため、キャリアは、一定の確率で薄膜材料を通り抜けることができるということを指す。シングル接合VCSELデバイスと比べられると、指定された電力の要求に対して、比較的に小さな電流でマルチ接合VCSELデバイスを駆動することができ、動作電流の低減により、対応するPCEも向上する。具体的には、指定された電力の要求に対して、シングル接合型VCSELデバイスには10Aの電流駆動が必要であれば、二接合VCSELデバイスには約5Aの電流駆動だけが必要であり、三接合VCSELデバイスには3A~4Aの駆動電流だけが必要である。
【0040】
しかし、マルチ接合VCSELデバイスの幾何キャビティ長は、シングル接合VCSELデバイスの数倍なので、実際のマルチ接合VCSELデバイスの遠視野拡がり角は、設計の要求を満たすことが難しくなる。マルチ接合VCSELデバイスの遠視野拡がり角が大き過ぎるという問題を解決するために、
図3に示すように、酸化規制層5Pの数を減らしてみるメーカがある。
図3に示すマルチ接合VCSELユニットでは、酸化規制層5Pが一つだけ配置されている。しかし、実際のテスト過程では、酸化規制層の数を減らすと、発光効率が低下し、すなわち、光電変換効率が再び非常に低くなることが本願の発明者によって発見され、このようにすると、マルチ接合VCSELレーザに特有される利点がなくなる。分析によると、酸化規制層は、キャリアを制限することを目的とし、酸化規制層の数を必要以上に減らすとキャリアに対する制限が少なすぎるようになり電流閾値が大きくなり、光電変換効率が低下してしまう。つまり、従来の解決案により、依然としてマルチ接合VCSELデバイスの光電変換効率と遠視野拡がり角の両方面の性能パフォーマンスを両立させることができない。
【0041】
そこで、本願の発明者は、規制層(ここでの規制層は、酸化規制層だけではなく、イオン注入工程によって形成されるイオン規制層もさらに含む)の配置形態を変更してみることで、光電変換効率と遠視野拡がり角との両方面の性能を両立させることを図った。
【0042】
本願の発明者は、理論的研究と実験テストにより、規制層の開口の孔径を変更し、および/または、活性領域及びトンネル接合に対する規制層の位置設置を変更することにより、VCSELデバイスの光電変換効率と遠視野拡がり角の両方面の性能を両立させるのを実現できることを発見した。具体的には、理論的には、上述したように、酸化規制層は、キャリアを制限することを目的とし、キャリアに対する制限が少な過ぎると閾値が大きくなり、光電変換効率が低下するが、逆に、制限が多過ぎるとキャリアの分布に影響し、さらに光のモードに影響し、さらに遠視野拡がり角が制御されなくなる。従って、本願の発明者は、規制層の開口の孔径を調整し(さらに明確には、規制層の一部の開口の孔径を等しくなくし)、及び/又は、活性領域及びトンネル接合に対する規制層の位置設置を変更する(即ち、前記規制層の数と設置位置を調整する)ことにより、VCSELデバイスの光電変換効率と遠視野拡がり角との両方面の性能を両立させるのを図る。
【0043】
そこで、本願は、エピタキシャル構造と、前記エピタキシャル構造に電気的に接続される正電極及び負電極とを含み、ここに、前記エピタキシャル構造は、基板と、前記基板の上方に位置する、反射チャンバが介在する第1の反射器及び第2の反射器と、前記反射チャンバ内に形成され、前記反射チャンバ内で交互に設けられた複数の活性領域及び複数のトンネル接合と、前記反射チャンバ内に形成された、それぞれ開口を有する少なくとも二つの規制層と、を含み、ここに、前記少なくとも二つの規制層の前記開口のうちの少なくとも一部の開口間が異なる孔径を有する、マルチトンネル接合を有するVCSELレーザを提案する。
【0044】
模式的なVCSELレーザ
図4Aは、本願の実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
図4Aに示すように、本願の実施例による前記VCSELレーザは、マルチトンネル接合を有する。ここで、トンネル接合は、トンネル効果に基づいて動作し、いわゆるトンネル効果とは、キャリアエネルギが低い(ポテンシャル障壁高さより小さい、すなわちE<V)場合に、薄膜材料そのものは厚さが薄い(10nm以下の場合)ため、キャリアは、一定の確率で薄膜材料を通り抜けることができるということを指す。
【0045】
特に、
図4Aで示されている前記VCSELレーザにおいて、前記VCSELレーザは、一つのVCSELユニットを含むものを例とし、且つ、前記VCSELユニットは、三つのトンネル接合を有する。
【0046】
本願の他の例では、前記VCSELレーザは、さらに多くの数のVCSELユニットを含むことができ、勿論、前記VCSELユニットは、より多くの数またはより少い数のトンネル接合を含むことができ、これについて、本願で限定しないことを理解すべきである。通常、VCSELレーザにおいて、トンネル接合の数は、活性領域の数より一つ多く、例えば、
図4Aで示されている前記VCSELレーザにおいて、前記VCSELユニットは、三つのトンネル接合と二つの活性領域とを有する。
【0047】
図4Aに示されている前記VCSELレーザにおいて、前記VCSELレーザは、エピタキシャル成長工程(例えば、金属有機化合物の化学気相析出)によって生成されたエピタキシャル構造10と、前記エピタキシャル構造10に電気的に接続された正電極 20及び負電極 30とを含み、ここに、前記エピタキシャル構造10は、基板11と、前記基板11の上方に位置する、反射チャンバ100が介在する第1の反射器12及び第2の反射器13と、前記反射チャンバ100内に形成され、前記反射チャンバ100内で交互に設けられた複数の活性領域14及び複数のトンネル接合15と、前記反射チャンバ100内に形成された、それぞれ開口160を有する少なくとも二つの規制層16と、を含み、ここに、前記少なくとも二つの規制層16の前記開口160のうちの少なくとも一部の開口160間が異なる孔径を有する。
【0048】
具体的には、
図4Aに示されている前記VCSELレーザにおいて、前記VCSELレーザは、三つの前記活性領域14と二つの前記トンネル接合15とを含み、ここに、前記二つのトンネル接合15と前記三つの活性領域14は、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13により形成された前記反射チャンバ100内で交互に設けられ、即ち、1層の前記トンネル接合15ごとに二つの前記活性領域14の間に介在される。
【0049】
前記VCSELレーザにおいて、前記活性領域14は、量子井戸 (勿論、本願の他の例では、前記活性領域14は量子ドットを含むことができ)を含み、AlInGaAs(例えば、AlInGaAs、GaAs、AlGaAs及びInGaAs)、InGaAsP(例えば、InGaAsP、GaAs、InGaAs、GaAsP及びGaP)、GaAsSb(例えば、GaAsSb、GaAs及びGaSb)、InGaAsN(例えば、InGaAsN、GaAs、InGaAs、GaAsN及びGaN)またはAlInGaAsP(例えば、AlInGaAsP、AlInGaAs、AlGaAs、InGaAs、InGaAsP、GaAs、InGaAs、GaAsP及びGaP)から作製されることができる。勿論、本願の実施例では、前記活性領域14は、さらに量子井戸層を形成するための他の組成物から作製されてもよい。
【0050】
前記VCSELレーザにおいて、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13は、それぞれ屈折率の異なる材料の交互層からなるシステムを含み、このシステムは、分散ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector)を形成する。交互層の材料選択は、必要なレーザの動作波長に依存する。本願の具体的な一例では、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13は、高アルミニウム含有量のAlGaAsと低アルミニウム含有量のAlGaAsとの交互層で形成されることができる。なお、交互層の光学的厚さは、レーザの動作波長の1/4に等しいか、ほぼ等しい。特に、本願の実施例では、前記第1の反射器12は、N型ドープの分散ブラッグ反射器であり、即ち、N-DBRであり、前記第2の反射器13は、P型ドープの分散ブラッグ反射器であり、即ち、P-DBRであり、ここに、前記P型ドープのDBRと前記N型ドープのDBR 03の材料は、InGaAsP/InP、AlGaInAs/AlInAs、AlGaAsSb/AlAsSb、GaAs/AlGaAs、Si/MgO及びSi/Al2O3等を含むが、これらに限られない。
【0051】
前記VCSELレーザにおいて、前記基板11 01は、シリコン基板11、サファイア基板11及びガリウム砒素基板11などを含んでもよいが、これらに限られない。
【0052】
図4Aに示すように、前記複数の活性領域14は、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13との間の前記反射チャンバ100内に介在され、ここに、光子が励起された後で、前記反射チャンバ100内で復反射して増幅を絶えずに往繰り返し、レーザ発振を形成することによって、レーザ光を形成する。前記第1の反射器12と前記第2の反射器13に対する配置と設計によって、レーザ光の出射方向、例えば、第2の反射器13から出射する(即ち、前記VCSELレーザの上面から出射する)か、または、第1の反射器12から出射する(即ち、前記VCSELレーザの底面から出射する)かを選択可能に制御できることが当業者に知られるべきである。本願の実施例では、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13は、レーザ光が前記反射チャンバ100内で発振された後、前記第2の反射器13から出射するように設計されており、つまり、前記VCSELレーザは、正面から光を取り出す半導体レーザである。
【0053】
前記VCSELレーザの電流モードと出光モードを制限するために、本願の実施例による前記VCSELレーザは、前記反射チャンバ100内に形成された、それぞれ開口160を有する、少なくとも二つの規制層16をさらに含み、ここに、前記少なくとも二つの規制層16の前記開口160のうちの少なくとも一部の開口160間が異なる孔径を有する。特に、
図4Aで示されている前記VCSELレーザにおいて、前記少なくとも二つの規制層16は、酸化工程によって一部の前記活性領域14の上方に形成された少なくとも二つの酸化規制層16Aであり、ここに、前記酸化規制層16Aの酸化される度合いによって、前記酸化規制層16Aの前記開口160の孔径のサイズが決まる。
【0054】
より具体的には、
図4Aで示されている前記VCSELレーザにおいて、前記酸化規制層16Aの数は、前記活性領域14の数と等しく、即ち、
図4Aで示されているVCSELレーザにおいて、前記VCSELレーザは、前記活性領域14ごとの上方にそれぞれ形成された三つの酸化規制層16Aを含む。
【0055】
本願の実施例では、前記少なくとも二つの酸化規制層16Aの複数の開口160のうちの少なくとも一部の開口160間が異なる孔径を有し、つまり、本願の実施例では、前記VCSELレーザは、非対称な酸化規制層16A構造を有する点で従来のマルチ接合VCSELユニットと異なる。
【0056】
非対称な酸化層構造の配置により、前記VCSELレーザは、光電変換効率と遠視野拡がり角の両方面での性能の両立が得られることが測定により分かった。具体的には、
図5と
図6に示すように、前記VCSELレーザは、2.7Aの駆動電流の前提で、その遠視野拡がり角が19°で、光パワーが6.5Wに達し、光電変換効率が最大47%に達することができる。
【0057】
より具体的には、本願の実施例では、前記少なくとも二つの酸化規制層16Aの複数の開口160の孔径のサイズは、何れも等しくなくてもよく、例えば、
図4Aで示されている例では、三つの前記開口160は、上から下へその孔径が順次小さくなっている。或いは、
図4Bで示されている例では、三つの前記開口160の孔径のサイズは、上から下へ順次大きくなっている。或いは、
図4Cで示されている例では、三つの前記開口160の孔径のサイズは、上から下へ先に縮小してから大きくなっている。勿論、本願の他の例では、前記複数の酸化規制層16Aの複数の開口160の孔径のサイズは、一部等しくてもよく、これについて、本願では限定しない。
【0058】
より明確に、本願の実施例では、前記開口160の孔径範囲は、1um~100umであり、好ましくは、前記開口160の孔径範囲は、3um~50umである。さらに、本願の実施例では、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umであり、好ましくは、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである。また、本願の実施例では、前記酸化規制層16A間のピッチは、0.5*前記VCSELレーザによるレーザ光の波長の整数倍をその間の半導体の屈折率で割った加重合計に等しく、ここで、その間の半導体は、二つの前記酸化規制層16Aの間の半導体材料を示し、加重合計は、半導体の屈折率に予め設定された重みをかけた値の合計を示す。前記酸化規制層16Aと前記活性領域14との間の距離は、0.25*前記VCSELレーザによるレーザ光の波長の奇数倍を前記基板11の屈折率で割った。例えば、屈折率が3.4のGaAs基板11は、倍数が3である場合、前記酸化規制層16Aと前記活性領域14との間の距離は、0.25*940/3.4*3~200nmである。
【0059】
より好ましくは、本願の実施例では、前記少なくとも一つの酸化規制層16Aのうち前記第2の反射器13に最も近い前記酸化規制層16Aの開口160は、最小の孔径を有する。
具体的に実施するところ、同じ酸化工程の条件で、異なる孔径を有する酸化規制層16Aは、前記酸化規制層16Aの厚さまたは前記酸化規制層16Aの中のアルミニウムの含有量を制御することによって実現することができる。特に、本願の実施例では、前記酸化規制層16Aのアルミニウムの含有量の範囲は、95%~100%であり、その厚さの範囲は、10nm~50nmである。
【0060】
なお、本願の実施例では、前記酸化規制層16Aが異なる孔径を有するため、前記酸化規制層16A全体の酸化される量は縮減でき、これにより、前記酸化規制層16Aのもたらす全体的な応力も小さくなり、故に、前記VCSELレーザの確実性が向上する。
【0061】
酸化規制層16Aが多すぎることによる確実性欠如の問題をさらに回避するために、本願の他の例では、前記酸化規制層16Aと前記活性領域14及び前記トンネル接合15との間の相対位置関係を変更することができる。
図7は、本願の別の実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示し、ここに、
図7で示されている前記VCSELレーザは、
図4Aないし
図4Cで示されているVCSELレーザの変形実施例である。具体的には、
図7で示されているVCSELレーザにおいて、前記酸化規制層16Aは、一部の前記活性領域14の上方に選択可能に形成され、即ち、前記酸化規制層16Aの数量は、前記活性領域14の数よりも少ない(ここの前記酸化規制層16Aの数は、相変わらず2以上でなければならない)。
【0062】
つまり、本願の他の例では、前記活性領域14ごとに一つの前記酸化規制層16Aを配置せず、このように、前記VCSELレーザの光電変換効率を確保できるだけではなく、同時に、その安定性も確保できる。このような形態は、より多くの接合のトンネル接合15を有するVCSELデバイスにとってより重要である。
【0063】
なお、本実施例では、前記活性領域14ごとに一つの前記酸化規制層16Aを配置しないとき、前記酸化規制層16Aの孔径は、全て等しく配置されてもよい。つまり、前記活性領域14ごとに一つの前記酸化規制層16Aを配置しないとき、前記酸化規制層16Aは、対称構造を有するように配置されてもよく、これについて、本願では限定しない。
【0064】
さらに、本願の実施例では、レーザ光を発生させるように前記エピタキシャル構造10を導通するために、前記VCSELレーザは、前記エピタキシャル構造10に電気的に接続される正電極20及び負電極30をさらに含み、ここに、前記正電極20が前記エピタキシャル構造10の上面に形成され、前記負電極30が前記エピタキシャル構造10の下面に形成される。より明確に、本願の実施例では、前記正電極20は、前記エピタキシャル構造10の前記第2の反射器13の上方に形成され、前記第負電極30は、前記エピタキシャル構造10の前記基板11の下方に形成される。
【0065】
なお、本願の他の例では、前記正電極 20と前記負電極 30は、前記VCSELレーザの他の位置に形成されてもよく、これについて、本願では限定しない。
【0066】
図8は、本願の更なる実施例によるVCSELレーザの構造模式図を図示する。
図4Aないし4B及び
図7で示されているVCSELレーザと比べられると、本願の実施例では、前記VCSELレーザにおける前記規制層16は、イオン注入工程によって形成されたイオン規制層16である。
【0067】
図8に示すように、本願の実施例では、前記イオン規制層16の数は、前記活性領域14の数と等しく、即ち、
図8で示されているVCSELレーザにおいて、前記活性領域14ごとの上方にそれぞれ形成された三つのイオン規制層16Bを含む。それに合わせ、本願の実施例では、前記少なくとも二つのイオン規制層16Bの複数の開口160のうちの少なくとも一部の開口160間が、異なる孔径を有し、つまり、前記VCSELレーザは、非対称なイオン規制層16B構造を有する。
【0068】
より具体的には、本願の実施例では、前記複数のイオン規制層16Bの複数の開口160の孔径のサイズは、何れも等しくなくてもよく、勿論、前記複数のイオン規制層16Bの複数の開口160の孔径のサイズは、一部等しくてもよく、これについて、本願では限定しない。
【0069】
より明確に、本願の実施例では、前記開口160の孔径範囲は、1um~100umであり、好ましくは、前記開口160の孔径範囲は、3um~50umである。さらに、本願の実施例では、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umであり、好ましくは、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである。より好ましくは、前記少なくとも一つのイオン規制層16Bのうち前記第2の反射器13に最も近い前記イオン規制層16Bの開口160は、最小の孔径を有する。
【0070】
具体的に実施するところ、注入されるイオンには水素イオン、酸素イオンなどが含まれるが、これらに限定されず、前記第2反射器13の上面から前記反射チャンバ100内に注入されることができ、前記イオンの注入される深さは、注入時のエネルギー制御に基づくことができる。具体的には、深く注入する場合には、注入されるイオンが第1の反射器12により近づくようにエネルギーを大きくし、浅く注入する場合には、注入されるイオンが第2の反射器13により近づくようにエネルギーを小さくすればよい。それに応じ、イオン注入のエネルギーとイオン注入量とに基づいて、前記イオン規制層16Bの前記開口160のサイズを制御することができる。
【0071】
なお、本願の他の例では、
図9に示すように、前記規制層16は、さらにイオン規制層16Bと前記酸化規制層16Aとの組合せでもよく、つまり、前記少なくとも二つの規制層16は、少なくとも一つの酸化工程によって形成された酸化規制層16Aを含み、且つ、前記少なくとも二つの規制層16は、少なくとも一つのイオン注入工程によって形成されたイオン規制層16Bを含む。
【0072】
上記により、本願の実施例による前記VCSELレーザは、説明され、前記規制層16の開口160の孔径を調整することで、及び/または活性領域14とトンネル接合15との間に対する前記規制層16の位置設置を調整することで、VCSELデバイスの光電変換効率と遠視野拡がり角との両方面の性能を両立させるのを図る。
【0073】
模式的な製造方法
図10は、本願の実施例によるVCSELレーザの製造方法の説明図を図示する。
【0074】
図10に示すように、本願の実施例による製造過程は、まず、エピタキシャル成長工程によって、基板11と、前記基板11の上方に位置する第1の反射器12及び第2の反射器13と、前記第1の反射器12と前記第2の反射器13との間に形成され、交互に設けられた複数の活性領域14及び複数のトンネル接合15とを含むエピタキシャル構造10を形成するステップと、その後、酸化工程によって前記第1の反射器12と前記第2の反射器14との間に、それぞれ開口160を有する少なくとも二つの酸化規制層16Aを形成するステップであって、前記開口160のうちの少なくとも一部の開口160間が異なる孔径を有するステップと、を含む。
【0075】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記酸化規制層16Aは、前記活性領域14ごとの上方にそれぞれ形成され、前記酸化規制層16Aの数は、前記活性領域14の数と一致する。
【0076】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記酸化規制層16Aは、一部の前記活性領域14の上方に選択可能に形成され、前記酸化規制層16Aの数は、前記活性領域14の数よりも少ない。
【0077】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記開口160の孔径範囲は、1um~100umである。
【0078】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記開口160の孔径範囲は、3um~50umである。
【0079】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.1um~95umである。
【0080】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記開口160間の孔径の差の範囲は、0.5um~20umである。
【0081】
一例では、上記のVCSELレーザの製造方法において、前記少なくとも二つの酸化規制層16Aのうち前記第2の反射器13に最も近い前記酸化規制層16Aの開口160は、最小の孔径を有する。
【0082】
上記により、本願の実施例による前記VCSELレーザの製造方法は、説明され、上記したようなVCSELレーザを製造できる。
図10でに示されている製造過程は、前記規制層16が酸化規制層16AのVCSELレーザを製造するものを例とすることに注意されたく、前記規制層16がイオン規制層16Bまたは前記規制層16がイオン規制層16Bと酸化規制層16Aとの組合せである場合に、対応する製造過程は、簡単に変化することでわかることができると理解すべき、これについて、説明を省略する。
【0083】
以上、具体的な実施例を結びつけて本願の基本的な原理を説明したが、本願において言及された長所、利点、効果などは、あくまで例示であって限定的なものではなく、これらの長所、利点、効果などは本願の各実施例に必須であるとは考えられないことに留意されたい。また、上記に開示された具体的な詳細は、例示的な役割と理解しやすい役割のためのものだけであって、制限するものではなく、上記の詳細は、本願が上記の具体的な詳細を採用して実現されなければならないことを制限するものではない。
【0084】
本願で関するデバイス、装置、設備、システムのブロック図は、あくまで例示的な例であり、ブロック図のように接続、レイアウト、配置しなければならないことを要求したり示唆したりすることを意図していない。これらのデバイス、装置、設備、システムを、任意の方法で接続、レイアウト、配置することができることは、当業者に認識される。「含む」、「含有」、「有する」などの言葉は、開放的な言葉であり、「含むが、限定されない」を意味し、それと交換して使用することができる。ここで使用される用語「または」と「および」は、用語「および/または」を意味し、コンテキストでそうでないことが明示されていない限り、それと交換して使用することができる。ここで使用される用語「例えば」は、フレーズ「例えば、しかし、これに限定されない」を指し、それと交換して使用することができる。
【0085】
本願の装置、設備および方法では、各部材または各ステップは分解および/または再組み合わせ可能であることにも留意されたい。これらの分解および/または再組み合わせは、本願の等価案とみなすべきである。
【0086】
開示されている態様の上記の説明は、当業者が本願を作成または使用することを可能にするために提供される。これらの態様への様々な補正は、当業者にとって非常に自明なことであり、また本明細書に定義される一般的な原理は、本願の範囲を逸脱することなく他の態様にも適用可能である。したがって、本願は、ここに示されている態様に制限されることを意図するものではなく、ここに開示されている原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲に従うものである。
【0087】
例示と説明の利点のために、上記の説明は、既に与えられている。さらに、この説明は、本願の実施例を本明細書に開示された形態に制限することを意図するものではない。以上、多くの例示的な態様および実施例について検討しているが、そのいくつかの変形、補正、変更、追加、およびサブコンビネーションは当業者に認識される。