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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098461
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220624BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20220624BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20220624BHJP
   C09K 17/44 20060101ALI20220624BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20220624BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220624BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/10 P
C09K17/14 P
C09K17/44 P
C04B24/00
C04B28/02
C09K103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200659
(22)【出願日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2020211678
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡部 進
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕平
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040AC04
2D040CA01
2D040CA10
2D040CB03
4G112PB14
4G112PC02
4G112PC03
4H026CA01
4H026CB08
(57)【要約】
【課題】軟弱な地盤等に対して好適に地盤改良を行うことができる地盤改良工法を提案する。
【解決手段】本発明の地盤改良工法は、土壌と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体を造成する工法であって、改良材は、セメントミルクと高性能AE減水剤を含む、ことを特徴とするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体を造成する地盤改良工法であって、
前記改良材は、セメントミルクと高性能AE減水剤を含む、地盤改良工法。
【請求項2】
前記改良材は、前記セメントミルクの水セメント比が60%以上100%以下であって、前記セメントミルクの全質量に対する前記高性能AE減水剤の含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下である請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
前記高性能AE減水剤は、PAE化合物を主成分とした高性能AE減水剤である、請求項1又は2に記載の地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌と改良材とを撹拌混合させて地盤を改良する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、所望する強度を具備しない地盤に対して地盤改良が行われている。このような地盤改良に用いられる地盤改良工法として、破砕切削された原位置の土壌の中に改良材としてセメントミルクを混入させ、撹拌翼を回転させてこれらを混合拡散させることによって、地盤改良体(地盤改良杭)を造成する工法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-64759号公報
【特許文献2】特開2015-105522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような地盤改良工法において、セメントミルクの水セメント比は一般に、80%以上120%以下に設定される。しかし、粘性土や泥炭のように軟弱な地盤においては、所望する強度を発現させるためにセメント量を増やしたり(水セメント比が上記の範囲よりも小さくなる)、特殊なセメントを使用したりしなければならない。
【0005】
ところでセメント量が増えると、土壌の許容量を超えて地表面へのリークや地盤の隆起が発生する等の不具合が生じるおそれがある。またセメント量が増えると土壌に対して混ざりにくくなるため、これらを十分に混合拡散させるには、撹拌翼を回転させる力を強くしたり、撹拌翼の外径を小さくしたりしなければならない。すなわち、撹拌翼を強い力で回転させるためにはより大型の設備を導入しなければならず、また撹拌翼の外径が小さくなると造成される地盤改良体も小さくなるため、その分、施工する数を増やさなければならない。
【0006】
また特許文献2には、上記とは別の観点で軟弱な地盤への地盤改良を行うことができる工法として、地盤を掘削しながらセメントミルクを混合して一次改良コラムを形成し、その後、固化した一次改良コラムを破砕しながらセメントミルクを混合して二次改良コラムを形成する地盤改良工法が示されている。しかしこの工法では、通常の2倍のコラムを形成しなければならないため、多大な工数を要することになる。
【0007】
このような従来の問題点に鑑み、本発明では、軟弱な地盤等に対して好適に地盤改良を行うことができる地盤改良工法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、土壌と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体を造成する地盤改良工法であって、前記改良材は、セメントミルクと高性能AE減水剤を含むことを特徴とする。
【0009】
このような地盤改良工法において、前記改良材は、前記セメントミルクの水セメント比が60%以上100%以下であって、前記セメントミルクの全質量に対する前記高性能AE減水剤の含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下であることが好ましい。
【0010】
そして前記高性能AE減水剤は、PAE化合物を主成分とした高性能AE減水剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明者が検討を重ねたところ、改良材としてのセメントミルクに対して、従来はコンクリートの混和剤として使用されている高性能AE減水剤を加えると、粘性土や泥炭のような軟弱な地盤であっても、従来に比して、土壌との混合拡散が十分に行われることを見出した。すなわち本発明の地盤改良工法によれば、従来のように大型の設備を導入する必要はなく、また施工時の工数増大につながることもないため、好適に地盤改良を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高性能AE減水剤の添加量と改良材の流動性との関係について示した図である。
図2】改良材の流動性とブリーディング率の経時性について示した図である。
図3】土壌と改良材とを混合させる条件について示した図である。
図4図3に示す条件での混合物の流動性について示した図である。
図5図3に示す条件での試験体の圧縮強度について示した図である。
図6】泥炭層に地盤改良工法を適用した際の圧縮強度について示した図である。
図7】粘性土層に地盤改良工法を適用した際の圧縮強度について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る地盤改良工法の一実施形態について説明する。なお本発明に係る地盤改良工法は、土壌と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体が造成されるものであればよく、本工法を実施する際に使用する設備(撹拌翼等)に特段制限はない。
【0014】
本発明に係る改良材は、セメントミルクと高性能AE減水剤を含むものである。本明細書において「セメントミルク」とは、セメント又はセメント系固化材と水とを混合させたものである。なおセメント系固化材とは、主成分(通常、50質量%以上)がセメントであって、副成分として各種の有効成分(例えば高炉スラグ微粉末等)を含むものをいう。また「高性能AE減水剤」とは、空気連行性能をもち,AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をもつ化学混和剤のことであって、「JIS A 6204に規定されるコンクリート用化学混和剤」のことをいう。
【0015】
上述したように、本願発明者の検討により、従来はコンクリートの混和剤として使用されている高性能AE減水剤をセメントミルクに加えると、粘性土や泥炭のような軟弱な地盤であっても土壌と混合させやすい現象が認められた。そしてこの点を詳細に把握するべく、以下の調査により確認を行った。
【0016】
まず、セメント系硬化剤の種類、セメントミルクの水セメント比、及び高性能AE減水剤の組み合わせを変えつつ、高性能AE減水剤を添加する量(Cx%)と改良材の流動性との関係について調査を行った。その結果を図1に示す。なお改良材の流動性は、φ50mmの円筒容器に改良材を充填し、それをテーブルの上で逆さにした際の広がりを観察するテーブルフロー試験により確認を行った。また図1における高性能AE減水剤の添加量は、セメントミルクの全質量に対する質量パーセントで示している。
【0017】
図1(a)は一般土壌用のセメント系固化材を使用した場合の調査結果であり、図1(b)は一般軟弱土用のセメント系固化材を使用した場合の調査結果であり、図1(c)は特殊土用のセメント系固化材を使用した場合の調査結果であり、図1(d)は泥炭用のセメント系固化材を使用した場合の調査結果である。また図1(a)~(d)において、実線と丸印は、高性能AE減水剤を添加しなかった場合の調査結果を示し、破線と三角印は、ポリカルボン酸エーテル系化合物を主成分とする高性能AE減水剤(以下、PCEと称し、図面においてもPCEで示す)を添加した場合の調査結果を示し、実線と四角印は、PAE化合物を主成分とする高性能AE減水剤(以下、PAEと称し、図面においてもPAEで示す)を添加した場合の調査結果を示している。またセメントミルクの水セメント比(W/C)は、図1(a)~(d)に数値を直接記載して示す。
【0018】
図1(a)に示した水セメント比が80%の場合の結果から明らかなように、高性能AE減水剤の添加量は少量であっても(例えばセメントミルクの全質量に対して0.1質量%程度であっても)改良材の流動性が向上することが認められた。この傾向は、セメント系固化材の種類にかかわらず同じように認められた。またPCEよりもPAEを添加する方が、改良材の流動性は向上する傾向が認められた。なお、図1(d)に示すように特に泥炭用のセメント系固化材を使用する場合に顕著であるが、高性能AE減水剤を添加する量が増えていくと、改良材の流動性の向上は緩やかになっていく傾向が認められた。例えば図1(d)の水セメント比が70%の場合におけるPAEを添加した場合の調査結果(実線と四角印)においては、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の添加量が0.7質量%を越える範囲での傾きは、0.3質量%を添加した際の傾きよりも緩やかになっている。なお、高性能AE減水剤を添加する量が増えるに従ってコストも増えることになる。従って、改良材の流動性を向上させつつコストを抑制する観点で、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の添加量は、0.1質量%以上0.7質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上0.6質量%以下とすることがより好ましい。また図1(a)~(d)における水セメント比が70%と60%の場合を確認したところ、いずれも改良材の流動性の向上が見られることから、水セメント比は60%以上とすることが好ましい。
【0019】
次に、セメント系固化材は同一(全て泥炭用のセメント系固化材)でセメントミルクの水セメント比、及び高性能AE減水剤の組み合わせを変えて、改良材の流動性とブリーディング率の経時性について確認を行った。その結果を図2に示す。
【0020】
図2(a)、(d)は、水セメント比(W/C)を100%とした場合の調査結果であり、図2(b)、(e)は、水セメント比(W/C)を80%とした場合の調査結果であり、図2(c)、(f)は、水セメント比(W/C)を70%とした場合の調査結果である。また図2に示した実線と丸印は、高性能AE減水剤を添加しなかった場合の調査結果を示し、破線と三角印は、PCEを添加した場合の調査結果を示し、実線と四角印は、PAEを添加した場合の調査結果を示している。なお図2(e)、(f)においては、PCEを添加した場合の調査結果とPAEを添加した場合の調査結果が概ね同一であって、グラフにおいては線が重なった状態となっている。そして図2に示したCxの値は、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の添加量を示していて、例えばCx0.3%は、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の添加量が0.3質量%であることを示す。
【0021】
図2(a)に示すように、高性能AE減水剤は添加する量が少なくても(セメントミルクの全質量に対して0.1質量%程度であっても)改良材の流動性が向上することが認められた。また混ぜ合わせてから時間が経過すると改良材の流動性は低くなっていくが、高性能AE減水剤を添加した場合の低下率と高性能AE減水剤を添加しなかった場合の低下率は概ね同等であった。そして図2(a)~(c)に示すように、PCEよりもPAEを添加する方が、改良材の流動性は向上する傾向が認められた。また、混ぜ合わせてから所定時間が経過した後のPCEとPAEの流動性の低下率は、水セメント比や減水剤の添加量を変えた場合でも、概ね同等であった。
【0022】
また改良材のブリーディング率は、図2(d)に示すように高性能AE減水剤を添加した場合でもしなかった場合でも上昇する(時間が経過するとセメントが分離しやすくなる)傾向が認められた。そして図2(d)~(f)に示すように、PCEを添加した場合とPAEを添加した場合のブリーディング率の経時性に大きな差は認められず、また水セメント比や減水剤の添加量を変えた場合でも両者に大きな差は認められなかった。
【0023】
なお、図2(d)に示すように、高性能AE減水剤の添加量を増やすとブリーディング率は上昇するが、図2(e)と図2(f)との対比から明らかなように、高性能AE減水剤の添加量を増やすに従って水セメント比を減らしていけば、ブリーディング率は同等に抑えられることが認められた。また、高性能AE減水剤を添加しなかった場合のブリーディング率(図2(d)の実線と丸印を参照)と高性能AE減水剤を添加した場合のブリーディング率(図2(e)、(f)参照)が同等となる場合であっても、高性能AE減水剤を添加した場合の流動性(図2(b)、(c)参照)は、高性能AE減水剤を添加しなかった場合(図2(a)の実線と丸印を参照)に比して向上することが認められ、またその傾向は混ぜ合わせてから時間が経過しても同様であることが確認された。
【0024】
次に、図3に示す条件で土壌と改良材とを混合し、混合物の流動性と圧縮強度について確認を行った。その結果を、図4図5に示す。また図4に示した混合物の流動性に関する調査は、φ100mmの円筒容器内で土壌と改良材を混合させ、所定時間経過した後、それをテーブルの上で逆さにして所定回数振動を加え、テーブル上での広がりを観察するテーブルフロー試験により確認を行った。また圧縮強度は、混合物により形成した試験体の材齢3日、7日、28日(σ3、σ7、σ28)での圧縮強度を測定した。
【0025】
図4(a)、図5の試験例1~試験例3による対比から明らかなように、セメント系固化材添加量が増えるに従い、混合物の流動性は向上していて、圧縮強度(特に材齢7日、28日の圧縮強度)も高くなっている。すなわち、セメント系固化材添加量が増えると、土壌と改良材がより混ざりやすくなり、圧縮強度が高くなる傾向が認められた。
【0026】
また図4(b)における試験例2と試験例4とを対比して明らかなように、土壌と改良材を混合させて2分程度経過するまで間、PCEを添加する場合はPAEを添加する場合に比して、混合物の流動性が低下する現象が認められた。すなわち、PCEを使用する場合は、PAEを使用する場合に比して、土壌と改良材を混合させてから間もない間は両者が混ざりにくい状態にあるといえる。また図5の試験例2と試験例4から明らかなように、PCEを添加するよりもPAEを添加する場合の方が、圧縮強度(特に材齢7日、28日の圧縮強度)が高くなる傾向が認められた。このため、PAEの方が、PCEを使用する場合に比して、土壌と混ぜ合わせてから間もない間でも流動性に優れていて施工性がよく、また時間が経過するにつれてより強い圧縮強度が得られる、といえる。
【0027】
そして図4(b)と図5に示した試験例2と試験例5との対比において明らかなように、高性能AE減水剤の添加量が多くなると、混合物の流動性は向上する一方で圧縮強度に大きな差は認められなかった。具体的には、PAEを使用する場合、セメントミルクの全質量に対する添加量が0.5質量%になる場合(試験例5)の方が、0.3質量%になる場合(試験例2)よりも混合物の流動性は向上しているものの、圧縮強度は同等であった。なお、高性能AE減水剤の添加量が増えるとその分コストも増えることになる。従って、圧縮強度は同等であってもコストが抑制できる点で、高性能AE減水剤のセメントミルクの全質量に対する添加量は、0.5質量%よりも0.3質量%の方が好ましいといえる。
【0028】
また図4(c)と図5に示した試験例2、試験例6、及び試験例9の結果から、混合物の流動性と圧縮強度は概ね同等であることが分かる。すなわち、コスト抑制の観点からPAEの添加量を減らしても(具体的には0.6質量%(試験例6、試験例9)から0.3質量%(試験例2)に減らしても)、水セメント比を増やせば(具体的には水セメント比を60%から80%に増やせば)、混合物の流動性と圧縮強度を維持することができるといえる。
【0029】
そして図4(c)と図5に示した試験例7と試験例8との対比において明らかなように、高性能AE減水剤を少量添加する(セメントミルクの全質量に対して0.1質量%程度添加する)場合は、これを添加しない場合と比較して、混合物の流動性は大きく変わることがないものの、圧縮強度(特に材齢28日の圧縮強度)が高くなっていた。従って、圧縮強度を高める点で、高性能AE減水剤を添加することが好ましいといえる。
【0030】
上記の検討を踏まえ、実際に撹拌翼等の設備を使用して本発明に係る地盤改良工法を実施し、圧縮強度に関して調査を行った。その結果を図6図7に示す。
【0031】
図6(a)、(b)は、泥炭層に対して地盤改良を行った際の材齢7日、28日(σ7、σ28)での圧縮強度と強度の伸び率を示している。また図6(a)の調査は、改良材に含まれるセメントミルクの水セメント比は80%であり、セメント系固化材として泥炭用を使用し、PAEをセメントミルクの全質量に対して0.3質量%添加した条件で確認を行っている。またセメント系固化材に含まれるセメントの量は、150、300、450kg/mである。そして図6(b)の調査は、改良材に含まれるセメントミルクの水セメント比は100%であり、セメント系固化材として泥炭用を使用し、高性能AE減水剤は添加しない条件で確認を行っている。
【0032】
また図7(a)、(b)は、粘性土層に対して地盤改良を行った際の材齢7日、28日(σ7、σ28)での圧縮強度と強度の伸び率を示している。また図7(a)の調査は、改良材に含まれるセメントミルクの水セメント比は80%であり、セメント系固化材として粘性土用を使用し、PAEをセメントミルクの全質量に対して0.3質量%添加した条件で確認を行っている。またセメント系固化材に含まれるセメントの量は、100、200、300kg/mである。そして図7(b)の調査は、改良材に含まれるセメントミルクの水セメント比は100%であり、セメント系固化材として粘性土用を使用し、高性能AE減水剤は添加しない条件で確認を行っている。
【0033】
上述した図6(a)における条件で泥炭層に対して地盤改良工法を適用したところ、土壌と改良材とが良好に混ぜ合わされている状況が確認された。また造成された地盤改良体を採取して確認したところ、特段問題は認められなかった。また図6(a)に示したように、材齢7日、28日の圧縮強度は、ともにセメントの量が増えるに従って直線状に大きくなっていた。また、材齢7日の圧縮強度に対する材齢28日の圧縮強度の伸び率も安定していた。また図7(a)に示すように、上述した条件での粘性土層に対する地盤改良においても、結果は良好であった。
【0034】
一方、上述した図6(b)における条件で泥炭層に対して地盤改良工法を実施したところ、地盤改良体が不均一に造成されていて、部分的にこれを採取できない場所があった。特にセメント量が150kg/mとなる場合は、地盤改良体の採取を有効に行うことができず、この条件においての圧縮強度は測定できなかった。またセメント量が300、450kg/mの場合の圧縮強度もバラツキが大きく、例えば材齢7日での圧縮強度は、セメント量が300kg/mから450kg/mに増えているにもかかわらず、小さくなっていた。また図7(b)に示すように、上述した条件での粘性土層に対する地盤改良も、造成された地盤改良体は不均一であり、圧縮強度のバラツキも大きかった。
【0035】
以上の調査結果から、セメントミルクと高性能AE減水剤を含む改良材を使用することによって、粘性土や泥炭のような軟弱な地盤であっても、土壌と改良材との混合拡散が十分に行われ、所定の強度となる地盤改良体を造成することができるといえる。ここで改良材におけるセメントミルクの水セメント比は、上記調査範囲、及び図1(a)~(d)に示した調査結果を踏まえると60%以上100%以下とすることが好ましく、またセメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の含有量は、図1に示した調査結果を踏まえると0.1質量%以上0.7質量%以下とすることが好ましいといえる。また図1(a)~(d)に示した調査結果や図4図5に示した調査結果(例えば試験例2と試験例6との対比)を踏まえると、改良材におけるセメントミルクの水セメント比は80%以上100%以下とし、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の含有量は0.1質量%以上0.6質量%以下とすることがより好ましいといえる。また図4に示した調査結果(例えば試験例2と試験例5との対比)や図6図7に示した調査結果を踏まえると、セメントミルクの水セメント比を80%(実使用でのばらつきを踏まえて75%~85%)とし、セメントミルクの全質量に対する高性能AE減水剤の含有量を0.3質量%(実使用でのばらつきを踏まえて0.2質量%~0.4質量%)とすることが特に好ましいといえる。なお、上記の実施例に準じて硬質粘土(地盤強度を示すN値は8≦N≦10程度)でも確認を行ったところ、粘土塊が解きほぐされて改良材との混合拡散が十分に行われ、所定の強度となる地盤改良体を造成することが確認された。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7