(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098469
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用イメージング方法、トレーニング方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A61B6/03 360B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202834
(22)【出願日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】17/128,430
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521547459
【氏名又は名称】ラドバウド・ナイメーヘン大学
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マチアス・プロコップ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・モー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・トムソン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・ヘミングウェイ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA07
4C093CA34
4C093FD03
4C093FD08
4C093FF09
4C093FF21
4C093FF32
4C093FF36
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータの各セットの強度の測定結果を維持したまま、ノイズを低減させること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、被検体の対象領域に対応し、かつ個別の異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータを取得し、異なる測定期間に対応する複数のフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを複数のセットの医用イメージングデータに適用する。フィルタの適用は、医用イメージングデータのセットごとに、異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、かつ、少なくとも1つの制約または条件を適用することを含む。制約または条件は、医用イメージングデータのセットごとの少なくとも1つの強度の測定結果を維持することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理回路を備え、
前記処理回路は、
被検体の対象領域に対応し、かつ個別の異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータを取得し、
前記異なる測定期間に対応する複数のフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを前記複数のセットの医用イメージングデータに適用し、
前記フィルタの適用は、前記医用イメージングデータのセットごとに、前記異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、かつ、少なくとも1つの制約または条件を適用することを含み、
前記制約または条件は、前記医用イメージングデータのセットごとの少なくとも1つの強度の測定結果を維持することを含む、
医用画像診断装置。
【請求項2】
前記医用イメージングデータのセットは、1以上のスライスを含むCTスキャンデータのセットであり、
前記少なくとも1つの強度の測定結果は、少なくとも前記CTスキャンデータのCT値を含む、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記フィルタを用いたフィルタリング中に使用される前記他の医用イメージングデータのセットから得られる前記少なくとも一部の情報は、勾配情報および/またはエッジ情報を含む、
請求項1または2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記フィルタは、3つの空間次元と1つの時間次元を備えた4次元フィルタ、および/または、異方性フィルタを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記フィルタは、1つ又は複数のトレーニングされたマルチレイヤ・ニューラルネットワークまたはその他のトレーニングされたモデルを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記処理回路は、前記複数のセットの医用イメージングデータを空間的に整合するようにレジストレーション処理を行うようにさらに構成され、
前記フィルタは、空間的に整合された医用イメージングデータのセットに適用される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記複数のセットの医用イメージングデータのうちの少なくとも一部、または随意選択として全てから組み合わせデータを取得するようにさらに構成され、
前記複数のセットの医用イメージングデータのそれぞれへの前記フィルタの適用は、前記組み合わせデータ、および/または、例えば勾配情報など前記組み合わせデータから得られる情報を使用することを含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記組み合わせデータの取得は、前記複数のセットの医用イメージングデータに対して組み合わせ処理を行うことを含み、前記組み合わせ処理は1つ又は複数の重み付けパラメータによって特徴付けられる、
請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記組み合わせ処理の実行は、平均化処理、合計処理、少なくとも1つの更なるフィルタリングステップ、より高い次元表現からより低い次元表現への投影、少なくとも1つのトレーニングされたモデルおよび/または機械学習処理に関連するその他の機能の適用、のうちの少なくとも1つを実行することを含む、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記処理回路は、前記フィルタの適用後に前記組み合わせデータのセットから得たノイズまたはエッジに関する情報を使って、フィルタリング済データセットを調整するように更に構成される、
請求項7から9のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記フィルタを用いたフィルタリング中に使用される前記他の医用イメージングデータのセットから得られる前記少なくとも一部の情報は、随意選択として、前記フィルタのための更なる機能またはマッピングを含む、
請求項1から10のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記フィルタのための更なる機能は、ガイド機能を含む、
請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記更なる機能またはマッピングは、スキャン対象であるボリュームの異方性および/または特徴および/またはエッジのうちの少なくとも1つを代表、または、少なくとも示す、
請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記フィルタは、少なくとも1つのパラメータによって特徴づけられ、
前記少なくとも1つのパラメータおよび/または前記フィルタによって使用される前記情報の少なくとも一部は、機械学習処理の一部として決定される、
請求項1から13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記フィルタの前記適用は反復処理を含み、前記反復処理は、
前記異なる測定期間で取得された前記複数のセットの医用イメージングデータからの前記少なくとも一部の情報に基づいて、前記医用イメージングデータのセットのそれぞれを更新する第1適用と、前記異なる測定期間に対応する更新された他の医用イメージングデータのセットからの少なくとも一部の情報を用いて、前記フィルタを前記更新された医用イメージングデータのセットに適用する第2適用と、を含む、
請求項1から14のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記医用イメージングデータのセットごとの少なくとも1つの保存された強度の測定結果は、平均強度、合計強度、移動ウィンドゥを用いて決定される強度の測定結果、および、1つ又は複数のスケールでの1つ又は複数の強度の測定結果、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から15のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
前記フィルタは、フィルタ機能および/またはマッピングを含み、
下記のa)~d)のうちの少なくとも1つに該当する、
a)前記制約または条件は、前記フィルタ機能および/またはマッピングにエンコードされるか、または加えられている、
b)前記フィルタ機能および/またはマッピングは、1つ又は複数のフィルタパラメータによって特徴づけられ、前記フィルタ機能および/またはマッピングの前記1つ又は複数のフィルタパラメータは、例えば、トレーニングデータに対して行われるトレーニング処理から、予め決められ、前記1つ又は複数の予め決められたフィルタパラメータは、前記少なくとも1つの制約または条件をエンコードまたは特徴づける、
c)前記フィルタ機能および/またはマッピングは、1つ又は複数のフィルタパラメータによって特徴づけられ、前記1つ又は複数のフィルタパラメータおよび/またはマッピングは、トレーニングデータに対して行われるトレーニング処理から予め決められ、前記トレーニング処理は、入力イメージングデータにおける強度の測定結果、出力イメージングデータにおける強度の測定結果との違いにペナルティを与えることを備える、
d)前記フィルタ機能および/またはマッピングは、1つ又は複数のフィルタパラメータによって特徴づけられ、前記処理回路は、医用イメージングデータを含む複数のトレーニングデータセットに機械学習処理を適用することによって、1つ又は複数のフィルタパラメータを得るように更に構成される、
請求項1から16のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項18】
下記のa),b),c),d),e)のうちの少なくとも1つに該当する、
a)前記被検体の前記対象領域は、関心対象である解剖学的特徴を備える、
b)前記医用イメージングデータのセットは、少なくとも1つの造影医用イメージングデータセットと、少なくとも1つの非造影医用イメージングデータセットと、を備える、
c)前記医用イメージングデータのセットは、治療前に取得される少なくとも1つのデータセットと、治療後に取得される少なくとも1つのデータセットと、を備える、
d)前記異なる測定期間は、異なる時点、または、異なり且つ重複しない期間を備える、
e)前記フィルタリング済医用イメージングデータセットは、前記フィルタを適用する前の前記データセットと比べて、減少したノイズおよび/または改善されたエッジ定義を有する、
請求項1から17のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項19】
被検体の対象領域に対応し、かつ個別の異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータを取得するステップと、
前記異なる測定期間に対応する複数のフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを前記複数のセットの医用イメージングデータに適用するフィルタステップと、を含み、
前記フィルタの適用は、前記医用イメージングデータのセットごとに、前記異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、かつ、少なくとも1つの制約または条件を適用することを含み、
前記制約または条件は、前記医用イメージングデータのセットごとに少なくとも1つの強度の測定結果を維持することを含む、
医用イメージング方法。
【請求項20】
医用画像をフィルタリングするためのフィルタをトレーニングするように構成される処理回路を備え、
前記フィルタは1つ又は複数のフィルタパラメータによって特徴づけられ、
前記処理回路は、
被検体の領域の複数のセットの医用画像トレーニングデータを取得し、
前記1つ又は複数のフィルタパラメータの値を決め、それによってトレーニングされたフィルタを得るために、前記複数のセットの医用画像トレーニングデータに対して機械学習処理を行い、
前記トレーニングされたフィルタは、被検体の領域の複数のセットの医用イメージングデータをフィルタリングするものであり、
データの各セットは、個別の異なる測定期間に対応し、
前記トレーニングされたフィルタを使って、前記異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットからの少なくとも一部の情報を使用し、少なくとも1つの制約または条件の適用を備え、前記制約または条件は、医用イメージングデータのセットごとに少なくとも1つの強度の測定結果を保存する、
医用画像診断装置。
【請求項21】
被検体の領域の複数のセットの医用画像トレーニングデータを取得するステップと、
1つ又は複数のフィルタパラメータの値を決め、それによってトレーニングされたフィルタを得るために、前記複数のセットの医用画像トレーニングデータに対して機械学習処理のステップと、を含み、
前記トレーニングされたフィルタは、被検体の領域の複数のセットの医用イメージングデータをフィルタリングするものであり、
前記医用イメージングデータの各セットは、個別の異なる測定期間に対応し、
前記トレーニングされたフィルタを使って、前記異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、少なくとも1つの制約または条件の適用を備え、前記制約または条件は、医用イメージングデータセットごとの少なくとも1つの強度の測定結果を維持する、
トレーニング方法。
【請求項22】
被検体の対象領域に対応し、かつ個別の異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータを取得するステップと、
前記異なる測定期間に対応する複数のフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを前記複数のセットの医用イメージングデータに適用するステップと、を含み、
前記フィルタの適用は、前記医用イメージングデータのセットごとに、前記異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、かつ、少なくとも1つの制約または条件を適用することを含み、
前記制約または条件は、前記医用イメージングデータのセットごとの少なくとも1つの強度の測定結果を維持することを備える。
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置、医用イメージング方法、トレーニング方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の複数回のスキャンまたは複数の期間でのスキャニングボリューム(マルチフェーズスキャン)を含む医用イメージング処理は、臨床的利点をもたらすかもしれない。例えば、機能情報などの追加情報は、スキャンを複数回行うことから得られるかもしれない。しかし、そのようなスキャン、具体的には、マルチフェーズCTスキャンのための線量検討は、そのようなマルチフェーズスキャンの広範囲での採用を、現在のところ制限している。
【0003】
サブトラクションスキャニング(subtraction scanning)処理は、線量検討のため、日常的臨床業務に広く採用されていないことが知られている。関連事項は、他のタイプのマルチフェーズスキャン、例えば、肝臓の3相スキャンおよび追跡スキャニング処理などに適用されるかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/180419号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータの各セットの強度の測定結果を維持したまま、ノイズを低減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、被検体の対象領域に対応し、かつ個別の異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータを取得し、異なる測定期間に対応する複数のフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを複数のセットの医用イメージングデータに適用する。フィルタの適用は、医用イメージングデータのセットごとに、異なる測定期間で取得された他の医用イメージングデータのセットから得られる少なくとも一部の情報を使用し、かつ、少なくとも1つの制約または条件を適用することを含む。制約または条件は、医用イメージングデータのセットごとの少なくとも1つの強度の測定結果を維持することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に従った装置の概略図の一例である。
【
図2】
図2は、実施形態に従った画像フィルタリング方法のフローチャートの一例である。
【
図3】
図3は、更なる実施形態に従った画像フィルタリング方法のフローチャートの一例である。
【
図4】
図4は、実施形態に従った、ニューラルネットワークおよびフィルタを用いる画像フィルタリング方法のフローチャートの一例である。
【
図5】
図5は、更なる実施形態に従った、ニューラルネットワークおよびフィルタを用いる画像フィルタリング方法のフローチャートの一例である。
【
図6】
図6は、実施形態に従った、深層学習ネットワーク用いる画像フィルタリング方法の概略の一例である。
【
図7】
図7は、深層学習ネットワークをトレーニングするためのトレーニング方法を示すフローチャートの一例である。
【
図8】
図8は、注意機構を用いる画像フィルタリング方法のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像診断装置、医用イメージング方法、トレーニング方法、およびプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
下で説明する実施形態において、医用イメージングデータセットごとに少なくとも1つの強度の測定結果(measure)を維持することを備える制約または条件が説明される。当該制約/条件の性質および当該強度の測定結果の性質は、医用スキャンのタイプが異なれば、変わるかもしれないことが理解されるだろう。
【0010】
例えば、下記で説明するように、CTスキャンのために、医用イメージングデータセットごとに少なくとも1つの密度の測定結果を維持することを備える制約または条件を使用してよい。CTスキャン実施形態の下記の説明において、適用される条件または制約が少なくとも1つの密度の測定結果を維持することを備えるように、密度という用語は強度という用語の代わりに使用される。例えば、医用イメージングデータは、CTスキャンデータであるとする。1セットの医用イメージングデータは、例えば1以上のスライスを含む。この場合、強度または密度の測定結果は、測定されたCT値である。
【0011】
一般的には、強度という用語は、医用スキャニング処理中に検出された信号の強さ、例えば、特定のエリア/ボリュームに対する信号の大小、に関連するかもしれないことが理解されるだろう。CTスキャンに関連する実施形態において、スキャンされる組織の、放射線密度(または放射線濃度)とも称される密度は、当該組織を通過するX線の減衰に比例する。例えば、密度はハウンズフィールド単位またはその他の好適な単位で測定されてよい。
【0012】
強度(密度)は、ボクセル群にわたって、例えば、当該スキャンデータのローカル領域にわたって、または、当該スキャンデータの領域にわたってグローバルに測定されてよいことが理解されるだろう。また、更なる実施形態において、造影剤が1つの相に使用されるスキャンにとって、当該方法は、実質的に造影情報が相間で伝送されないように作用するかもしれない。スキャンデータのローカル領域は、例えば被検体の身体のうちスキャン対象となる対象領域である。対象領域は、例えば、関心領域を含む。
【0013】
他のタイプのスキャンのために、制約は、測定信号の強度の測定結果、または、スキャンデータそのものから導かれる量に適用されるかもしれない。限定にはならない例として、スキャンデータの強度は、例えば、スキャン中に反射、送信、減衰、または、散乱される信号のレベルに比例するかもしれない。更なる限定にはならない例として、強度はスキャンデータそのものから導かれるかもしれない、例えば、強度の測定結果は取得される画像/ボリュームの領域から決定されるかもしれない、そして、例えば、画像のサブ領域は強度の特定の値を有するかもしれない。あるコンテクストでは、強度は画像データそのもの(例えば、画像の明るさ又は暗さに関連する)のプロパティを参照するかもしれない。
【0014】
実施形態に従った装置10が、
図1に概略的に示される。装置10は、複数の医用イメージングデータセット、本例では複数のコンピュータ断層撮影法(computer tomography:CT)データセット、を取得し、複数のフィルタリング済画像を得るために取得した複数のイメージングデータセットを処理するように構成される。
【0015】
装置10は、本例ではパーソナルコンピュータ(PC)またはワークステーションであるコンピューティング装置12を備える。コンピューティング装置12は、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャナ14、1つ又は複数のディスプレイスクリーン16、および、コンピュータキーボードやマウスやトラックボールなどの1つまたは複数の入力装置18に接続される。他の実施形態では、コンピューティング装置12はCTスキャナ14に接続されていなくてもよい。
【0016】
CTスキャナ14は、患者または他の被検体の少なくとも1つの解剖学的特徴を表現するボリューメトリック医用イメージングデータを得るように構成される任意のCTスキャナでよい。解剖学的特徴は、肩、または、例えば臀部、膝、肘などの別の関節であってよい。更なる実施形態において、ボリューメトリックイメージングデータは、任意の1つまたは複数の解剖学的特徴を表現してよい。例えば、ボリューメトリックイメージングデータは、任意の好適な骨または臓器を表現するものであってよい。
【0017】
代替となる実施形態において、CTスキャナ14を、例えばコーンビームCTスキャナ、磁気共鳴画像診断(magnetic resonance imaging:MRI)スキャナ、X線スキャナ、超音波スキャナ、陽電子放出断層撮影(positron emission tomography:PET)スキャナ、または、単一光子放射コンピュータ断層撮影(single photon emission computed tomography:SPECT)スキャナなどの他の画像診断法でイメージングデータを得るように構成されるスキャナに取り換える、または、そのようなスキャナで補完してもよい。本実施形態において、イメージングデータは、複数の期間に渡って取得される3次元データである。集合的に検討する場合、複数のデータセットを4次元のデータとして考えてもよい。いくつかの実施形態において、3次元イメージングデータは、複数の2次元スキャンを取得することで得られるかもしれない。更なる実施形態において、当該方法を1次元の信号に適用してもよい。
【0018】
本実施形態において、CTスキャナ14によって取得されるボリューメトリックイメージングデータセットはメモリ20に記憶され、その後、コンピューティング装置12に与えられる。代替となる実施形態において、 ボリューメトリックイメージングデータセットは、医用画像保管伝送システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)の一部を形成し得る遠隔のデータ記憶部(図示せず)から供給される。メモリ20または遠隔のデータ記憶部は、メモリ記憶部の任意の好適な形式を備えてよい。
【0019】
コンピューティング装置12は、自動的に、または、半自動でイメージングデータセットを処理するための処理リソースを提供し、中央演算処理装置(central processing unit:CPU)22を備える。
【0020】
コンピューティング装置12は、ボリューメトリック医用イメージングデータセットに、例えば、基準解剖学データセットを用いて空間レジストレーション処理を行うように構成されるレジストレーション回路24と;フィルタを当該医用イメージングデータセットに適用するように構成されるフィルタ回路26と;選択された画像をディスプレイスクリーン16に表示する表示回路28、とを備える。
【0021】
本実施形態において、レジストレーション回路24はレジストレーション処理を行う。任意の既知の好適なレジストレーション方法を使用してよい。限定にはならない例として、レジストレーション処理はイメージングデータのセット内で複数のランドマークを検出することを含む。解剖学的ランドマークは、例えば、骨、臓器、または、他の解剖学的構造上の十分に定義されるポイントなどの、身体構造内の認識可能なポイントであるかもしれない。
【0022】
フィルタ回路26は、それぞれが個別の異なる期間で取得されるイメージングデータセットである、複数のイメージングデータセットを受け取り、複数のフィルタリング済イメージングデータセットを出力するためにフィルタを当該複数のイメージングデータセットに適用するように構成される。
【0023】
本実施形態において、回路24,26,28は、各々、実施形態の方法を実行するために実行可能であるコンピュータが読み出し可能な命令を有するコンピュータプログラムにより、コンピューティング装置12に実装される。しかし、他の実施形態では、種々の回路が、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)として実装されてよい。
【0024】
また、コンピューティング装置12は、ハードドライブと、RAM、ROM、データバス、種々のデバイスドライバを含むオペレーティングシステム、および、グラフィックカードを含むハードウェア装置を含んだPCの他のコンポーネントを有する。その様なコンポーネントは、明瞭化のために、
図1には示されない。
【0025】
複数の医用イメージングデータセットをフィルタリングする方法を、実施形態に従って説明する。バックグラウンドを介して、一般的に、エッジアウェア(edge aware)フィルタリングがイメージングデータセットに行われる場合、フィルタリング(平滑化)されるデータセットからエッジが推定される。公知のフィルタであるガウシアンフィルタは、エッジアウェアではなく、全方向において等しく平滑化する。一方、異方性拡散フィルタはエッジアウェアであり、基調強度(underlying intensity)(例えば、CTスキャンデータの密度)における強い勾配を認識し、エッジを保存するために強い勾配の方向を平滑化しない。勾配は、ボクセル間の強度(例えば、密度)レベルの差として理解できる。例えば、第1ボクセルが高い強度を有し、第2ボクセルが低い強度を有する場合、当該2つのボクセル間には、血管境界またはエッジを示す強い強度勾配があるだろう。更なる例として、第1ボクセルが第1の強度を有し、第2ボクセルが類似する第2の強度を有する場合、当該2つのボクセル間にはより小さい勾配があるだろう。
【0026】
異方性拡散フィルタにおいて、エッジは決定された強度勾配ガイドまたはマップを用いて計算または推定される。例えば、造影剤増強法のないスキャンなどの適用において、ある構造は不可視であるかもしれない。そのようなスキャンにおいて、エッジが十分に規定されないため、異方性平滑化の単純な適用では、関係ない組織や構造の混合をもたらすだろう。エッジが十分に規定される場合であっても、例えばサブトラクション処理などのスキャニング処理による追加的ノイズにより、エラーが高まり得る。下記の実施形態に従った方法は、改良されたフィルタリング処理を提供するかもしれない。
【0027】
以下では、フィルタリング方法を、少なくとも一部の情報がスキャニング処理の異なる相で共有される実施形態に従って説明する。この情報は、別々に各フェーズから医用イメージングデータの各セットをフィルタリングするときに使用される。組み合わせデータは、ノイズがより少なくより良いエッジ定義(edge definition)を与える。例えば、造影剤増強法でのスキャンデータは、非造影データにおいて視覚的にはっきりしない境界の定義を与えるかもしれない。一般的に、共有される情報は、平滑化を行うべき場所に関するフィルタリング処理を示す又は知らせる。既知の方法では、現在のスキャンからの情報だけが、例えば、造影前スキャンで使用された場合、造影前スキャンからのエッジ情報が不完全または明確さに劣るため、当該フィルタリング方法は血管境界に対する平滑化に終わるかもしれない。いくつかの実施形態において、当該少なくとも一部の情報は、例えば、ガイド機能などの、フィルタ用の更なる機能またはマッピングを含む、または、更なる機能またはマッピングの中に含まれる。いくつかの実施形態において、当該更なる機能またはマッピングは、スキャン対象であるボリュームの異方性および/または特徴および/またはエッジのうちの少なくとも1つを代表または少なくとも示す。
【0028】
図2は、実施形態に従ったイメージングデータセットをフィルタリングする方法の概略を示すフローチャートである。当該方法ステップのそれぞれは、フィルタリング・パート、フィルタガイド・パート、およびノイズ及び補正・パートの3パートのうちの1つに含まれると考えることができる。
図2の方法において、下で説明するように、フィルタは、二次機能を使う別々なものそれぞれに適用される異方性フィルタであり、本例では、データの組み合わせから導かれる勾配情報に基づくガイドである。
【0029】
図2,3に示すステップは、丸形または四角形(角丸または90度の角)で表現される。円形は処理ステップを表し、四角形は、例えばデータの取得、生成、出力、およびその他の情報を取得するステップなどの、データステップを表す。
【0030】
ステップ42において、当該方法のフィルタリング・パートの一部として、複数の医用イメージングデータセットが取得される。複数のイメージングデータセットの各データセットは、個別の異なる測定期間に対応する。そのため、複数の医用イメージングデータセットをまとめて、マルチフェーズデータと称することがある。医用イメージングデータセットの各セットは、別々の相(フェーズ)に対応する。医用イメージングデータセットは、入力データセットとも称され得る。本実施形態において、それぞれ取得された医用イメージングデータセットはボリューメトリックな空間データを備える。このように、医用イメージングデータは、スキャニング処理中にスキャンされるボリュームの空間表現を提供する。換言すれば、1つの医用イメージングデータセットは1つの時相に対応する。
【0031】
本実施形態において、複数の医用イメージングデータセットは、個別の異なる時間でCTスキャナ14を操作することにより取得される。本実施形態において、各イメージングデータセットはボリューメトリックCTデータセットであるため、入力ボリュームと称し得る。他の実施形態において、イメージングデータの任意の好適なタイプを使用してよい。
【0032】
ステップ44において、医用イメージングデータセットを整合するために、レジストレーション回路24によって取得した医用イメージングデータセットに対するレジストレーション処理が行われ、ステップ46で複数の空間的にレジストレーションされたデータセットを与える。複数の空間的にレジストレーションされたデータセットは、レジストレーション済相とも称することがある。ステップ44で多くの既知の空間整合法が使用できると理解されるだろう。
【0033】
当該医用イメージングデータセットが空間表現ではない異なる表現で取得される(例えば、当該医用イメージングデータセットが、サイノグラム空間で表現される場合)、または、空間表現ではない異なる表現に変換される実施形態において、ステップ44は省略されてもよく、または、当該整合処理が当該他の表現に従ってデータを整合してもよい。
【0034】
フィルタ回路26によって行われる当該方法のステップ48および50は、フィルタガイドステップである。当該方法の一部として、複数の医用イメージングデータセットのそれぞれに適用されるフィルタのためのガイドが生成される。本実施形態において、ガイドは、まず医用イメージングデータセットを組み合わせ、当該ガイドを形成するために組み合わせたデータセットを使うことにより形成される。データを組み合わせるため、または、ガイドを形成するためにその他の方法を行ってよいことが理解されるだろう、また、そのような方法は
図3~7を参照して検討される。ガイドは、説明される実施形態に従って、勾配マップまたはガイドマップと称されることがある。
【0035】
本実施形態において、ステップ48において、フィルタ回路によってレジストレーション済データセットが組み合わされ、ステップ50で組み合わせデータセットを生成する。本実施形態において、レジストレーション済データセットは、重み付け平均化を行って組み合わされるが、レジストレーション済データセットを組み合わせるためのその他の組み合わせ処理を使用してもよいことが理解されるだろう。本実施形態では重み付け平均化により実行されるデータセットの組み合わせは、当初のイメージングデータセットのそれぞれに比較して、ノイズがより少なくより良いエッジ定義を有する組み合わせデータセットを提供する。
【0036】
組み合わせのための重みは、予め決められている。比較的良いエッジ定義を有するイメージングデータセットが、不明確なエッジを有するイメージングデータセットよりも、平均化においてより重く重み付けられるように、重みが選択されるかもしれない。例えば、造影スキャンでは、非造影スキャンに比べてより明確なエッジが期待されるため、造影スキャンに対応するイメージングデータは組み合わせ処理においてより重く重み付けられるかもしれない。本実施形態において、ガイドを得るために、勾配情報は組み合わせデータから取得される。そのためガイドは、単一相からの勾配情報を取得および使用してその他得られるものよりも、スキャン対象のボリュームのより完全な勾配情報を提供する。また、組み合わせデータは、単一相からのデータセットよりもノイズが少ない。いくつかの実施形態において、画像データセットは、例えば最大値投影法(Maximum Intensity Projection)などの投影処理を用いて組み合わせられる。
【0037】
ステップ52で適用されるフィルタは、信号の測定結果または信号の測定値が保持される制約および/または条件がかけられている。本実施形態において、密度の測定結果は、各相に対応するデータセットのために保持される。それゆえ、異なる相からのデータを組み合わせてステップ48で組み合わせデータを生成する一方、この組み合わせデータから抽出した勾配情報をフィルタに使用する(すなわち、組み合わせデータから密度情報をフィルタに使用しない)。フィルタ用に勾配情報だけを抽出することで、各データセットの密度の測定結果が保持されることが保証されるため、異なる相間での密度リーク(density leak)が実質的になくなる。密度リークとは、例えば、異なる相間で密度の強度または密度の測定結果、例えばCT値が伝播することをいう。
【0038】
異なる相間での密度リークが減少することにより、画像の密度によってもたらされる医用および機能情報が保持される。造影剤を用いるスキャンでは、造影剤の有無によりもたらされる情報がフィルタリングによって保持される。つまり、フィルタリングにより、セマンティック/構造情報が相間で共有できる。共有されるセマンティック/構造情報の例は、特定のエリアが血管のエッジであることが含まれる。しかし、「絶対的」情報(例えば、少なくとも小さな近隣での、ハウンズフィールド単位(Hounsfield unit:HU)の値そのものなどのパラメータ)は共有されない。
【0039】
異なる相間での密度リークが減少することにより、削減した線量でのマルチフェーズスキャンが行われるかもしれない。より詳しくは、ノイズ減少により削減した線量での使用が可能になるかもしれなく、密度リーケージ(leakage)制約により、更に強力なノイズ減少が可能になるかもしれない。
【0040】
実施形態による方法は、高線量のスキャンに匹敵する画質を保持しつつ、削減した線量でのマルチフェーズスキャンを使用できるようにするかもしれない。密度リーケージ制約により、更に効率的なノイズ減少が可能になるかもしれない。
【0041】
本実施形態において、複数のイメージングデータセットそれぞれの全体的な密度は、フィルタへ適用するときに、組み合わせデータから抽出した勾配情報を使用することのみのおかげで維持される。制約については、例えば、制約をフィルタパラメータにエンコードする、または、追加的制約項をフィルタに追加するなど、異なる方法を用いて実行してもよいことが理解されるだろう。
【0042】
ステップ52にて、異方性拡散フィルタが空間的にレジストレーションされたイメージングデータセットのそれぞれに適用される。ステップ54でイメージングデータセットごとにフィルタリング済データセットが生成されるように、フィルタは各データセットに別々に適用される。異方性拡散フィルタは複数の期間に対応するイメージングデータセットを平滑化するように作用するため、ステップ54のフィルタリング済データセットは平滑相とも称される。
【0043】
異方性拡散フィルタの適用は、反復処理である。具体的には、フィルタは多数の時間ステップに対して適用される。それゆえ、ステップ46,48,50,52は、所定回数または所定条件を満たすまで繰り返される。各反復では、異方性フィルタに使われる組み合わせデータそして勾配情報が更新される。
【0044】
本実施形態において、反復ごとに、異方性フィルタに使われる組み合わせデータそして勾配情報が更新される一方、代替の実施形態においては、反復を通してガイドが一定であってもかまわないことが理解されるだろう。毎回の反復でガイドを更新しないことで処理ステップの数が減少するかもしれないが、更新しないことの欠点は初期ノイズがガイドで維持され、平滑化されないことだろう。
【0045】
ステップ48で生成された組み合わせデータは、フィルタに勾配情報を提供するが、密度情報は提供しない。よって、フィルタリングステップは、完全にはエッジを保存せず、および/または、医療専門家へのプレゼンテーション目的としてはノイズを除去しすぎるかもしれない。そのため、フィルタリング済データセットは、当該フィルタリング済データセットに対して行われる更なるノイズ及び補正処理を介して調整される。
【0046】
ノイズ及び補正処理のステップを
図2のステップ56,58,60,62で示す。フィルタ回路26で行われるこれらのステップは、ステップ46で得た個々のデータセットからのノイズ及びエッジ情報の推定を可能にし、その後のフィルタリング済データセットへの再導入を可能にする。
【0047】
更に詳しく下で説明するように、ノイズ及び補正処理は、ステップ50の組み合わせデータに平滑化処理を実行することを含む。その後、オリジナルの組み合わせデータは、平滑化済組み合わせデータから差し引かれ、ノイズおよびエッジ情報のみの推定を与えるサブトラクション済データセットを与える。
【0048】
更に詳しくは、ステップ56において、異方性拡散フィルタがステップ46からの各データセットに適用され、ステップ58で平滑化された別々のデータセットを与える。全相からの勾配情報がフィルタのために使用されるステップ52とは対照的に、ステップ56では、そのような勾配情報はこのフィルタリング処理に使われない。そのため、ガイドなしに異方性拡散フィルタを適用するステップ56は、平滑化が全方向においてどこでも等しく適用されるため、等方拡散フィルタを適用するステップに相当すると考えられ得る。ガイドなしに平滑化を適用することで、取得した各データセット内のノイズおよびエッジは弱められる。
【0049】
ステップ60において、サブトラクション処理がフィルタ回路26によって、ステップ58からの平滑化済各データセットと、ステップ46からの対応する平滑化されていないデータセットとを用いて行われ、ステップ62でノイズとエッジの推定を得る。いくつかの実施形態において、エッジ及びノイズ情報は、エッジをフルで再び組み合わせられる周波数解析(frequency analysis)のテクスチャを用いて、ノイズに対して別々の重みで、分離される。そのような実施形態において、分離されたノイズ及びエッジデータセットが形成される。
【0050】
ステップ64において、ステップ54からの、平滑相とも称される、個々のフィルタリング済データセットそれぞれが、フィルタ回路26によって、ステップ62で決定したノイズ及びエッジ情報に組み合わせられ、出力イメージングデータセットを与える。このステップでは、ノイズはフィルタリング済データセットに加え戻され、美的効果を与える。医療専門家は、平滑化された画像よりも幾分かノイズをもつ画像を、より快適に視聴および仕事することがわかっている。また、ノイズ及びエッジ情報の追加により、フィルタリング処理の美的性質にも関わらずエッジの平滑化が前ステップで生じるため、エッジが鮮明になるだろう。
【0051】
最終出力ステージで、本実施形態において、出力イメージングデータセットが表示回路28によってレンダリングされ、ディスプレイスクリーン16に表示される。他の実施形態において、出力イメージングデータセットがメモリ20に記憶されてもよく、若しくは、更なるコンピューティング装置に与えられてもよいことが理解されるだろう。
【0052】
図2を参照して説明した実施形態において、フィルタリング済イメージングデータセットに行われる調整(ノイズ及び補正ステップ56,58,60,62)は、フィルタリングステップ52で満たされた同一の密度リーケージ制約をも満たすことが理解されるだろう。具体的には、フィルタステップ52では、フィルタをレジストレーション済空間イメージングデータセットに適用するときに、組み合わせデータからの勾配情報のみを使用する。他の実施において、フィルタステップは密度リーク制約を満たすが、これらの更なる調整ステップ(ノイズ及びエッジステップ)は密度リーケージ制約を満たさないことが理解されるだろう。そのような実施において、ステップ56で適用されたフィルタは、別々の相データではなく組み合わせデータに適用されるため、組み合わせの性質により、密度情報が相間で共有されるかもしれない。
【0053】
フィルタリング済イメージングデータセットへの調整(ノイズ及び補正ステップ)が相間の密度制約を満たす更なる実施形態を、
図3,4,5を参照して説明する。
【0054】
図3は実施形態に従った方法のフローチャートである。フィルタリングステップ142,144,146,152,154,164,166は、
図2の方法を参照して説明したステップ42,44,46,52,54,64,66に実質的に対応する。また、ノイズ及び補正ステップ156,158,160,162は、
図2の方法を参照して説明したステップ56,58,60,62に実質的にそれぞれ対応する。
図2の方法とは対照的に、フィルタガイドステップ48,50がフィルタガイドステップ148,150に置換された。
【0055】
更に詳しくは、ステップ148において、勾配画像が空間的にレジストレーションされたデータセットを使って決定される。勾配画像は、4次元空間から3次元空間への投影により決定され、ステップ150で組み合わせデータを生成する。本実施形態においては、時間最大値投影法(time-maximum intensity projection (時間‐MIP))が使用されるが、4次元から3次元への任意の好適な投影法を使用してよい。時間‐MIP処理は、各相から勾配を決定することと、平均化により当該勾配を組み合わせること、を備える。例えばAveIP投影法など、その他の投影法を使用してよい。
図3の方法において、4次元から3次元への投影を通して導かれる勾配画像からの勾配情報は、ステップ152で異方性拡散フィルタのために使用される。4次元空間から3次元空間への投影は、より高い次元表現からより低い次元表現への投影の一例である。
【0056】
図3が、前に説明したステップ56,58,60,62にそれぞれ対応するノイズ及び補正ステップ156,158,160,162を説明する一方、その他の実施形態において、フィルタリング済イメージングデータセットが、組み合わせデータセットからではなく、平滑化された特定の層のみから取得されたノイズ及びエッジ情報を用いて調整されることが理解されるだろう。例えば、当該方法では、特定の相のためのエッジ及びノイズ情報を与えるために、レジストレーションされたデータセットのフィルタリングされていないバージョンが、フィルタリング済データセットから差し引かれるステップを備えるかもしれない。各相のためのノイズ及びエッジ情報は、その後、対応する相のためのフィルタリング済データセットに加え戻される。ノイズ及びエッジ情報は、パラメータ化された重みと共に加え戻されるかもしれない。
【0057】
異なる方法を用いて平滑化の度合いを適用および制御してよい。限定にはならない第1の例として、拡散処理を行う反復回数を変更する。これは、平滑化が影響する強度、および、平滑化が影響する大きさに効果があるだろう。反復回数が上昇するに従って、平滑化に影響される範囲もまた広がる。限定にはならない第2の例として、平滑化の量を制御するためにパラメータ化された重みを使用する。パラメータ化された重み付けを使用することで、より多く反復(それによって効果サイズが上昇)しつつ、平滑化の強度を上昇させずに、平滑化処理を実行できる。
【0058】
図4,5を参照して更に詳しく説明される更なる実施形態において、フィルタ用のガイドの決定(ステップ48,50)は、AIモデルを用いて行われる。具体的には、トレーニングされたモデル、本実施形態においては、トレーニングされた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)がフィルタによって使われるガイドマップを予測するために使用される(
図2,3を参照して説明された重み付け平均化または投影ではなく)。ガイドマップは拡散フィルタのためのガイドを提供する。CNNは、入力データセットを処理することで、異方性拡散フィルタのためのガイドを予測するかもしれない。いくつかの実施形態において、CNNは、勾配情報の代わりに、または、勾配情報に加えて、情報に基づいてガイドを与えるようにトレーニングされてもよい。例えば、CNNは、エッジを代表または示すその他の特徴を検出するようにトレーニングされてよく、若しくは、例えば解剖学的特徴などのその他の特徴を検出するようにトレーニングされてよい。
【0059】
ガイドマップが、
図2,3を参照して説明した勾配マップと類似する役割を本実施形態で行うことが理解されるだろう。いくつかの実施形態において、ガイドマップは勾配マップに対応する。
【0060】
図3,4の説明ではトレーニング済CNNを使用することを説明する一方、他の実施形態において、機械学習処理を用いてトレーニングされた異なるモデルを使用され得ることが理解されるだろう。
【0061】
図4は、第1実施形態に従った、フィルタと組み合わせてCNNを用いる方法を説明するフローチャートである。
図5は、第2実施形態に従った、フィルタと組み合わせてCNNを用いる方法を説明するフローチャートである。
【0062】
図4の方法において、トレーニングされた畳み込みニューラルネットワークを与える予備ステップが行われる。これは、当該ネットワークをトレーニングする、または、当該ネットワークのためにトレーニングされたパラメータを取得する、ことを備える。当該トレーニング処理に使用されるトレーニングデータは、高品質であり、デノイズされたトレーニングデータである。
【0063】
ステップ302において、初期の4次元イメージングデータ(3つの空間次元および1つの時間次元を備える)が与えられる。当該最初のステップにおいて、これらの4次元データは、N個の相304a、…、304nそれぞれに対して取得した複数の医用イメージングデータセットに相当する。各データセットは、入力ボリュームとも称されることがある。
【0064】
第2ステップ306において、各相のイメージングデータセットがトレーニングされた畳み込みニューラルネットワークに入力される。
図4の実施形態において、ステップ306で、各入力データセットがトレーニングされた畳み込みニューラルネットワークに与えられると、別々のガイドマップを出力する。各データセットに作用する畳み込みニューラルネットワークは、トレーニングネットワークを介して決定された共有の重みとも称される、トレーニングされたパラメータの共通セットを有する。
【0065】
更に詳しくは、第1イメージングデータセット(入力ボリューム1)がステップ304aで取得され、ステップ306aで、共有の重みによって特徴付けられた畳み込みニューラルネットワークへ入力される。その後、畳み込みニューラルネットワークは、第1の予測ガイドマップを出力する。同様に、ステップ304nにおいて、n番目のイメージングデータセットが取得され、ステップ306nで、共有の重みによって特徴付けられた畳み込みニューラルネットワークへ入力され、n番目のガイドマップが出力される。第1および第nイメージングデータセットの処理だけが記載されたが、同様の処理が第2から第(n-1)イメージングデータセットに対して、n個の入力ボリュームからn個の別々のガイドマップを作成されるように行われることが理解されるだろう。
【0066】
ステップ308において、作成されたガイドマップが組み合わされる。本実施形態においては、集合体を介して、シンボルGと称される集約ガイドマップを作成するように、作成されたガイドマップが組み合わされる。ステップ306,308は共に、組み合わせ処理を用いて組み合わせデータが与えられる(本例では、n個の個々のガイドマップが予測および集約され、フィルタのための勾配情報を集約ガイドマップの形式で与える)
図2のフィルタガイドステップ48,50に対応するとみなされる。
【0067】
ガイドは、多数の異なる組み合わせ方法を用いて集約されてもよい。限定にはならない第1の例としては、ガイドマップは最大プーリングを用いるMIP投影アルゴリズムを使って複数のケースにわたって集約されるかもしれない。若しくは、マップを例えば、加重和を用いて加算してもよい。加重和または平均化(重み)のパラメータは予め決められていても、トレーニング処理中に決められてもよい。
【0068】
フィルタに使われる拡散方程式は微分可能であるため、拡散方程式およびCNNを介してバックプロパゲーションがあり得る。ニューラルネットワークは、典型的には、ニューラルネットワークの出力を使ってエラーを計算し、トレーニング可能な重みに至るまで、ネットワークを介して当該エラーの勾配を後段へ渡すバックプロパゲーションと呼ばれる処理を使ってトレーニングされる。その後、重みはエラーが最小化するように勾配を使って調整される。これは、反復性をもつ最適化処理である。
【0069】
本実施形態において、最良のガイドマップがなく、エラーを判断するためにネットワークの出力と最良のガイドマップを比較することができないため、エラーは直接的にネットワークの出力で計算できない。勾配マップを予測するようにニューラルネットワークをトレーニングすることは可能である。
【0070】
限定にはならない例として、次のようにエラーを計算する。人為的ノイズを平滑化済ボリュームに追加して入力ボリュームを得る。平滑なボリュームがどのようであるべきかわかっているため、エラーは当該平滑化済ボリュームで計算される。このエラーのバックプロパゲーションが生じるように、前の計算は全て微分可能でなければならない。拡散処理は元来微分可能であるため、バックプロパゲーションとの使用に都合がよく、ネットワークを効率よくトレーニングできる。
【0071】
ステップ310において、異方性フィルタの単一の時間ステップが、イメージングデータを展開するように各イメージングデータセット(第1から第nイメージングデータセット)に適用され、対応する更新済イメージングデータセットを生成する。所与の反復において、フィルタの各適用では、この反復中に決定した集約ガイドマップを使用する。
【0072】
更に詳しくは、異方性フィルタは次の数学関数(式(1))によって定義される。
【0073】
【0074】
異方性拡散フィルタの時間ステップの適用(各ボリュームに対して同一の集約ガイドを使用)に続いて、この単一の時間ステップの出力(更新された入力ボリューム)は、その後、次の反復のためにCNNへ戻し入力される(ステップ304に戻る)。各反復において、新しい集約ガイドマップが、トレーニングされたCNNの入力ボリュームへの適用からの出力に基づいて決定される。
【0075】
上記処理は、ステップ312で反復が所定回数行われるまで繰り返される。実行される反復回数および異方性拡散フィルタのために適用される時間ステップの数は、パラメータによって定義される。いくつかの実施形態において、当該パラメータは所定のパラメータである。他の実施形態において、当該パラメータは、機械学習法を用いて学習されたパラメータである。いくつかの実施形態において、当該パラメータは、ユーザによって与えられる。
【0076】
図5は、
図3に示す方法に関連するCNNを使った方法を示す。
図5の方法は、
図4の方法と共通する多くのステップを有する(具体的には、ステップ402,404,410,412はステップ302,304,310,312に対応する)。しかし、トレーニングされたCNNが各入力ボリュームに別々に適用され、CNNの出力を組み合わせて、ガイドマップを生成する(ステップ306,308)代わりに、ステップ406でトレーニングされたマルチチャネルCNNが単一のガイドマップを予測する。マルチチャネルCNNによって形成される単一の勾配マップは、フィルタステップ410のための単一の勾配マップを与える。
【0077】
図4,5に示す実施形態において、拡散処理のためのガイドマップは、1つ又は複数のCNNによって決定されると説明される。当該処理に使用される他のパラメータはニューラルネットワークまたはその他の機械学習法によって決定されてよいことが理解されるだろう。限定にはならない例を通じて、拡散方程式の係数またはフィルタが必要とする反復回数が決められるかもしれない。その他の学習アルゴリズムおよびその他のモデルが適切であり得ることが更に理解されるだろう。
【0078】
図6は、深層学習ネットワーク用いて画像をフィルタリングする更なる方法の概略を示す。
図2,3,4,5を参照して説明された方法とは対照的に、本方法では異方性拡散フィルタを使用しない。その代わりに、フィルタリング処理が、異なる個別の期間からの複数の入力医用イメージングデータセットに対して行われ、対応する複数のフィルタリング済データセットを出力するように、深層学習ネットワークをトレーニングする。ネットワークをトレーニングするときに損失またはペナルティ項を含めることにより、異なる相間の密度リークを減少する制約は本実施形態で満たされている。損失項は、出力画像と入力画像との間の密度または強度の測定結果における差にペナルティを与える。そのため、密度制約または条件は、ネットワークパラメータにエンコードされているとみなされ得る。
【0079】
図6は、使用する、トレーニングされる深層学習ネットワーク504を示す。深層学習ネットワーク504は、例えば、マルチフェーズ医用イメージングデータ502、本実施形態ではCTスキャンデータで動作する、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network:GAN)である。深層学習ネットワークは、平滑であり、マルチフェーズであり、フィルタリング済のCTスキャンデータ506を生成するようにトレーニングされる。マルチフェーズ医用イメージングデータ502は、マルチフェーズCTスキャンデータともいう。また、フィルタリング済のCTスキャンデータ506は、平滑マルチフェーズCTスキャンデータともいう。
【0080】
図7は、深層学習ネットワーク504をトレーニングするトレーニング方法を示す。深層学習ネットワークをトレーニングするために、トレーニングデータ508が深層学習ネットワーク504に与えられる。トレーニングデータ508は、マルチフェーズ医用イメージングデータ508である。本実施形態において、トレーニングデータはノイズありの模擬データである。いくつかの実施形態において、入力データは、良品質画像を模擬ノイズに組み合わせることにより取得されるかもしれない。GANをトレーニングするために、高解像度の医用イメージングデータがグラウンドトゥルースデータ512として使用される。トレーニングデータ508は、医用イメージングデータを含む複数のトレーニングデータセットの一例である。
【0081】
他の実施形態において、良品質のデータを得る方法は、例えば、本スキャニング処理の目的において適切ではない更なるフィルタリング方法を実行する。例えば、当該更なるフィルタリング方法は、大量のリソースまたは実施形態に従ったフィルタリング方法よりも多いデータを使うかもしれない。
【0082】
ある実施形態において、トレーニング方法は、GANによって適用されるフィルタが密度制約を満たすように、入力画像の合計密度と対応する出力画像の合計密度との差にペナルティを与える。更に詳しくは、ペナルティ機能または損失項または損失機能がトレーニング処理中に適用される。ペナルティ機能または損失項は、例えば、出力相のグローバル強度の差がグラウンドトゥルースデータと比較されるようなものかもしれない。更なる例において、ペナルティ機能または損失項は、複数のローカルスケールで(例えば、平均または合計畳み込み演算を使って)計算されたグラウンドトゥルースデータと比較されるときに、出力相の強度の差にペナルティを与えるかもしれない。
【0083】
更なる実施形態において、合計プーリングカーネルが複数のスケールレベルでの密度を評価するために使用される。異なるスケールレベルでの入力と出力の密度の差は、損失項によりトレーニング中にペナルティを負うだろう。ペナルティまたは損失項で深層学習ネットワークをトレーニングすることにより、各入力画像の密度制約は、相間で密度リーケージが生じないように、当該ネットワークにエンコードされる。
【0084】
深層学習ネットワーク504は、多くのトレーニングされたモデルパラメータによって特徴付けられている。これらのトレーニングされたモデルパラメータの値は、出力データセット(平滑なCT画像)を生成するために、どのように入力ボリュームがフィルタリングされるかを決定する。そのため、モデルパラメータは、深層学習ネットワーク504が入力データに作用するときに、相間で密度リーケージが実質的に生じないようにトレーニングされる。GANが説明されたが、その他の深層学習ネットワークが使用されてよい。例えば、エンコーダ/デコーダまたは残差ネットワークが使用されてよい。
【0085】
図8は、更なる実施形態に従った方法を示す。
図8の実施形態において、情報は注意機構(Attention mechanism)606により相間で共有される。n個の入力医用イメージングデータセット(602a,…,602n)のセットが、残差ネットワーク(604a,…,604n)とも称されるn個のフィルタリングネットワークに入力され、n個のフィルタリング済医用イメージングデータセット(610a,…,610n)のセットが出力される。n個のフィルタリングネットワークのセットはトレーニングされ、共有の重みを使用する。注意機構606は、例えばニューラルネットワークにおいて重要視または注力すべき範囲を示す。注意機構606は、注意マップ606ともいう。
【0086】
前に説明したニューラルネットワークによる方法とは対照的に、
図8の方法は、ニューラルネットワークを入力画像の特定の特徴に集中させる注意機構606を有する。注意機構またはモジュールは、共通の注意マップを決定するために、全ての相からの情報を使う。その後、共通の注意マップは、平滑化の各相への適用を制限するために使われる。注意機構は、全相の内容に応じて、特定のターゲット相の空間的に適用可能なフィルタリングを可能にする。このように、少なくとも他の相からの一部の情報が、特定の相をフィルタリングするときに使用される。
【0087】
図8に示すネットワークの一般的な構成は、残差ネットワークである。これは、入力データを再生する代わりに、ネットワークが入力と出力の差の学習だけを行うように、スキップ層を使うネットワークである。
図8の例では、ネットワークは、入力画像をより平滑にするために、当該入力画像に必要な変化を学習だけするように構成される。ネットワークのこのフィルタリング部分は、個々の相それぞれからのデータへアクセスのみを有する。ネットワークのフィルタリング部分は、トレーニングされる必要があるパラメータの数を減らすために、共有の重みを使用するかもしれない。
【0088】
注意機構は全ての相(602a,…,602n)からデータセットを入力として受け取る。注意機構はまた、残差ネットワーク(604a,…,604n)の出力を入力として受け取るかもしれない。
【0089】
出力残差と掛け合わせられる注意マップ606が作成される。乗算結果が入力データに加えられ、これは当該アルゴリズムの最終出力になるだろう。実質的には、これは、注意マップ606がどこで、どの程度平滑化が生じるかを決定することを意味する。
【0090】
注意マップ606が相間で密度をリークしないようにするため、注意マップ606の値は、
図8の参照番号608によって表されるように、範囲{0,1}に限定される。これは、注意マップがどの程度の残差を入力に適用するかのみを決定できることを意味する。各残差ネットワークは単一の相を見るだけなので、相間で密度はリークされない。
【0091】
上記実施形態において、複数の異なる期間からの医用画像をフィルタリングする方法を説明した。単一相からのフィルタリング済画像を単一相からの入力画像と比較すると、数多くの相違が観測される。例えば、ノイズのレベルはフィルタリング済画像において低減する。記載した方法は、例えばエッジなどの意味のある内容を平滑化しないように意図している。そのため、記載した方法はエッジを平滑化または変更しないが、ノイズの減少によりエッジはより明確になる。
【0092】
処理済画像の改良点は、フィルタリング済画像と、その他の既知の平滑化処理を用いて得た画像とを比較することでも評価されるかもしれない。その他の既知の平滑化処理の出力を参照して、エッジ定義が改良されるかもしれない。
【0093】
上記実施形態において、相間の強度の測定結果を保存する制約または条件が説明される。CTスキャンデータを用いる実施形態において、強度の測定結果は、例えば放射線密度などの密度の測定結果に対応する。密度および/または強度は、ボクセル群にわたって、例えば、当該スキャンデータのローカル領域にわたって、または、当該スキャンデータの領域にわたってグローバルに測定されてよい。また、更なる実施形態において、造影剤が1つの相に使用されるスキャンにとって、当該方法は、実質的に造影情報が相間で伝送されないように作用するかもしれない。保存される強度の測定結果は、平均強度または合計強度であるかもしれない。保存される強度の測定結果は、移動ウィンドゥを用いて、例えば当該スキャンデータ内の複数の異なる位置に連続して適用され、当該スキャンデータ内の異なるボクセル群を選択するウィンドゥを用いて決定されるかもしれない。1つ又は複数のスケールでの1つ又は複数の強度の測定結果が用いられるかもしれない。
【0094】
例えば、CTスキャンのコンテクストにおいて、スキャンされる組織の、放射線密度とも称される密度は、当該組織を通過するX線の減衰に比例する。例えば、密度はハウンズフィールド単位またはその他の好適な単位で測定されてよい。他のタイプのスキャンのために、制約は、測定信号の強度の測定結果、または、スキャンデータそのものから導かれる量に適用されるかもしれない。限定にはならない例として、スキャンの検出強度は、例えば、スキャン中に反射、送信、減衰、または、散乱される信号のレベルに比例するかもしれない。更なる限定にはならない例として、制約は取得された画像/ボリュームの領域から導かれる密度/強度の測定結果かもしれない、例えば、画像のサブ領域は密度または強度の特定の値を有するかもしれない。あるコンテクストでは、強度は画像データそのもの(例えば、画像の明るさ又は暗さに関連する)のプロパティを参照するかもしれない。
【0095】
ある実施形態は、医用イメージング方法を提供する。当該方法は、被検体の対象領域の複数のセットの医用イメージングデータ(典型的にはCTデータ)を取得し、データの各セットは、個別の異なる測定期間に対応する;当該複数のセットの医用イメージングデータ(典型的にはCTデータ)を空間的に整合するようにレジストレーション処理を行い;個別の異なる測定期間に対応するフィルタリング済医用イメージングデータセットを生成するために、フィルタを、空間整合された医用イメージングデータ(典型的にはCTデータ)に適用すること、を備える。当該フィルタの当該適用では、医用イメージングデータセットごとに、当該フィルタリングが、異なる期間で取得された他の医用イメージングデータセットからの情報の一部を少なくとも使用するように行われる。
【0096】
当該フィルタの当該適用は、4次元(3つの空間次元と1つの時間次元)フィルタを適用することを含んでよい。当該フィルタは、異方性拡散フィルタを含んでよい。当該フィルタによって使用される当該データセットからの当該情報は、勾配情報を含んでよい。当該方法は、全てのデータセットから組み合わせ情報(随意選択として勾配情報)を取得し;当該組み合わせ情報を用いて、当該フィルタを、各データセットに個別に適用することを備えてよい。当該フィルタの当該適用は、少なくとも1つの制約または条件を適用することを備えてよく、当該制約または条件はデータセットごとに全体的な(例えば、平均または合計)密度または強度の値を保存すること含む。
【0097】
当該方法は、当該複数のデータセットから組み合わせデータセットを得て(随意選択として、更なるフィルタを当該組み合わせデータセットに適用することにより);当該組み合わせデータセット、または、当該組み合わせセットから得た情報(例えば、エッジおよび/またはノイズ情報)を、当該フィルタを当該データセットに適用するときに使用する、ことを備えてよい。
【0098】
当該方法は、当該フィルタの適用後に、当該組み合わせデータセットからの当該情報(例えば、エッジおよび/またはノイズ情報)を用いて、フィルタリング済データセットを調整することを備えてよい。
【0099】
当該被検体の当該対象領域は、関心対象である解剖学的特徴を含むかもしれない。当該医用イメージングデータセットは、少なくとも1つの造影医用イメージングデータセットと、少なくとも1つの非造影医用イメージングデータセットとを備えてよい。当該医用イメージングデータセットは、治療前に取得される少なくとも1つのデータセットと、当該治療後に取得される少なくとも1つのデータセットと、を備えてよい。当該異なる測定期間は、異なる時点、または、異なり且つ重複しない期間を備えてよい。当該フィルタリング済データセットは、当該フィルタを適用する前のデータセットと比べて、減少したノイズおよび/または改善されたエッジ定義を有するかもしれない。
【0100】
ある実施形態は、医用イメージング方法を提供する。当該方法は、複数の時点からボリューメトリックイメージングデータを取得し;当該時点にわたって空間整合のフォームを適用し;4次元情報によって知らされるフィルタリングを、全体的な密度が個々のボリューメトリックイメージングデータごとに保存されるように適用し;複数の独立したボリュームを出力する、ことを備える。当該医用イメージング方法は、空間的またはサイノグラム的空間に適用されてよい。
【0101】
当該フィルタリングは、相間にわたる密度情報の伝達を減少するための明示的な制約をもつニューラルネットワークによって実行されてよい。当該制約は、例えば、(平均または合計演算を使用し得る)グラウンドトゥルースに比較される出力相のグローバル強度間の差、および/または、潜在的に複数のローカルスケールで(例えば、平均または合計畳み込み演算を使って)計算されるグラウンドトゥルースに比較される出力相の強度間の差、であり得る損失項を介してトレーニング中に適用されてよい。当該制約は、構成要素を介して適用されてよい。構成要素は、当該ネットワーク、または、平滑化の各相への適用を制限するために使われる共通注意マップを決定するために全相を使う注意モジュール、を通じて、各相が個別に処理されることを含む。
【0102】
当該ボリュームはボリューメトリック画像空間に再構成されてよく、異方性拡散は全体的な密度を保存するために使われる。当該勾配画像は、当該4次元入力の3次元投影、例えば、時間軸に沿う投影(例えば、MIP,AveIP)または当該時点それぞれの重みづけられた組み合わせであってよい。当該個々の時点の当該エッジおよび潜在的には画像ノイズは、パラメータ化された重みをと共に当該フィルタリング済画像に加え戻されてよい。ニューラルネットワークは、当該異方性拡散処理中に使用される当該重み付け勾配マップを計算するために使用されてよい。ニューラルネットワークは、当該異方性拡散処理中に使用される当該拡散係数値を計算するために使用されてよい。
【0103】
上記実施形態において、ニューラルネットワークが説明された。例えば、深層学習ネットワーク504は、本実施形態におけるマルチレイヤ・ニューラルネットワークの一例である。しかし、他の実施形態において、好適な機械学習処理を用いてトレーニングされた他のフィルタモデルが使用され得ることが理解されるだろう。例えば、分類および/または回帰法に基づいてトレーニングされたフィルタモデルを得るために、好適な機械学習処理を使用してよい。
【0104】
上記実施形態において、相間での密度リークがないように、密度情報を相間で決して共有しないことが意図されている。いくつかの実施形態において、例えば、トレーニングされたフィルタモデルを用いる実施形態において、意図せずに少量の密度リークが生じるかもしれない。しかし、密度リーケージの量は最小限であることが理解されるだろう。具体的には、画像の臨床解釈に影響しない程度に、密度リーケージが低いことが理解されるだろう。実際のところ、臨床評価は、意図しないリーケージが許容可能であるかを判断するために行われる。そのような評価はコンテクストに依存するだろう。いくつかの実施形態において、密度リーケージを表す値が、例えば、フィルタリング済画像を処理することにより、測定される。意図しないリーケージが最低値を下回っているか保証するために、測定値は閾値と比較されるかもしれない。
【0105】
特定の回路が本明細書において説明されているが、代替の実施形態において、これらの回路の内の1つまたは複数の機能を、1つの処理リソースまたは他のコンポーネントによって提供することができ、または、1つの回路によって提供される機能を、2つまたはそれより多くの処理リソースまたは他のコンポーネントを組み合わせることによって提供することができる。1つの回路への言及は、当該回路の機能を提供する複数のコンポーネントを包含し、そのようなコンポーネントがお互いに隔たっているか否かにかかわらない。複数の回路への言及は、それらの回路の機能を提供する1つのコンポーネントを包含する。
【0106】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、異なる測定期間に対応する複数のセットの医用イメージングデータの各セットの強度の測定結果を維持したまま、ノイズを低減させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
10 装置
12 コンピューティング装置
14 CTスキャナ
16 ディスプレイスクリーン
18 入力装置
20 メモリ
22 中央演算処理装置(CPU)
24 レジストレーション回路
26 フィルタ回路
28 表示回路
502 マルチフェーズ医用イメージングデータ、マルチフェーズCTスキャンデータ
504 深層学習ネットワーク
506 フィルタリング済のCTスキャンデータ、平滑マルチフェーズCTスキャンデータ
508 トレーニングデータ、マルチフェーズ医用イメージングデータ
512 グラウンドトゥルースデータ
606 注意機構、注意マップ