(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098488
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220624BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220624BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20220624BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C23C14/24 B
C23C14/06 Q
G01T1/20 B
G01T1/202
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205995
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】2013841
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルイ・グレネ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・エミュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マリー・ヴェリラック
【テーマコード(参考)】
2G188
4K029
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB04
2G188CC09
2G188CC18
2G188CC22
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD45
4K029AA09
4K029AA11
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4K029BA04
4K029BA41
4K029BA62
4K029BB02
4K029BB07
4K029BB09
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4K029DA08
4K029DB05
4K029DB06
4K029DB07
4K029DB10
4K029DB17
4K029EA01
4K029EA08
4K029JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を基材上に堆積させる方法を提供する。
【解決手段】有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を基材上に堆積させる方法であって、
a)基材10、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のターゲット20を用意する工程と、
b)基材10及びターゲット20を閉空間昇華炉100内に位置付ける工程と、
c)有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を基材10上に、ターゲット20の昇華によって堆積させる工程と、
を含み、ターゲット20と基材10との温度差が、好ましくは、10℃から350℃、更により優先的には50℃から200℃の間に含まれ、堆積された有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層の厚さが、好ましくは、50nmから5000μmの間に含まれる、方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)を基材上に、閉空間昇華によって堆積させる方法であって、
a)基材(10)、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のターゲット(20)を用意する工程と、
b)前記基材(10)及び前記ターゲット(20)を閉空間昇華炉(100)内に位置付ける工程と、
c)有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)を前記基材(10)上に、前記ターゲット(20)の昇華によって堆積させる工程と
を含み、
前記ターゲット(20)と前記基材(10)との温度差が、好ましくは、10℃から350℃の間、更により優先的には50℃から200℃の間に含まれ、
前記堆積された有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)の厚さが、好ましくは、10nmから5000μmの間に含まれる、
方法。
【請求項2】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)が、式ABX3を有し、
Aは、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物であり、
Bは、単一の無機元素、有機分子、又はいくつかの無機元素及び/又は有機分子の混合物であり、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)が、MAPbBr3で作製されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)が、式A2C1+D3+X6を有し、
Aは、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物であり、
C及びDはカチオンであり、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層が、式MA2AgBiBr6を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)が、式A(1)
1-(y2+…+yn)A(2)
y2…A(n)
ynB(1)
1-(z2+…+zm)B(2)
z2…B(m)
zmX(1)
3-(x2+…+xp)X(2)
x2…X(p)
xpを有し、
Aは、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物であり、
Bは、単一の無機元素、有機分子、又はいくつかの無機元素及び/又は有機分子の混合物であり、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層が、式Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ターゲット(20)が、前記堆積された層と同じ式の粒子を含むことを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ターゲット(20)が、異なる性質の二成分粒子の混合物、例えばMABr、BiBr3及びAgBrの混合物を含み、前記混合物が、三成分粒子を更に含むことができ、例えば前記ターゲットが、式AXの粒子、式BX2の粒子、及び任意選択で式ABX3の粒子を含むことを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において付与されるターゲット(20)が、
- 式ABX3の粉末を得るような方法において、式AXの第1の材料と式BX2の第2の材料との共ミリングによって機械合成する工程と、
- 式ABX3の粉末を加圧して、式ABX3の固体のターゲットを得る工程と
によって得られることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)において付与されるターゲット(20)が、
- 式ABX3の材料を、化学的合成、結晶成長、又は任意の他の合成機構によって製造し、次いでミリングして、式ABX3の粉末を得る工程と、
- 式ABX3の粉末を加圧して、式ABX3の固体のターゲットを得る工程と
によって得られることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
工程c)の前に、その過程においてターゲット(20)が50℃~500℃の範囲の温度に加熱され、103Pa超の圧力に供される、追加の工程を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程c)が、1Pa未満、好ましくは0.1Pa未満の圧力Pにおいて実施されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)が、還元雰囲気下で、又は酸化雰囲気下で、実施されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程c)の前に、その過程において前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)と同一の又は異なる性質の中間層(12)が、前記基材(10)上に堆積される工程を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基材(10)が、ターゲット(20)から1~5mmの距離にある、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1又は5から16のいずれか一項に記載の方法によって得られる、基材(10)と有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(1)とを含むスタックであって、前記有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層が、MAPbBr3、Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3又はMA2AgBiBr6で作製されており、1mm~10mmの厚さを有する、スタック。
【請求項18】
請求項17に規定の通りのスタックの、X線及びガンマ線の検出のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を堆積させる方法の一般分野に関する。
【0002】
本発明は、多数の工業分野、特に、医療、安全、セキュリティー、放射線防護、又は大型科学装置用のX線検出の分野だけでなく、光起電力、ガンマ放射線の検出、電離放射線(アルファ、ベータ、ニュートロン)の分野、或いは電気の、光学の又は光学電気の装置の製造用、特に、発光ダイオード(LED)、光検出器、シンチレーター又はトランジスターの製造用のX線検出の分野における用途も見出している。
【0003】
本発明は、それが、薄い層(典型的に10nmから10μmの間からなる厚さ)から厚い層(典型的に10μm以上、又は更には1mm超の厚さ)の範囲であるきわめて広範囲の厚さにあるペロブスカイト層を堆積させることが可能であるため、特に興味深い。妥当な堆積時間(6時間超)の間の層の良好な品質コントロールが、10nm~5mmの範囲の厚さにおいて可能である。
【背景技術】
【0004】
ABX3タイプの有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト(PVK)材料は、可視又は近赤外線の範囲内の光起電力(PV)、LED、光検出器の分野における用途にとって、又はX線及びガンマ線の検出にとって、特に興味深い。
【0005】
これらのハイブリッド材料は、多数の方法[1]:溶液中成長、スピンコーティング法による堆積、パルスレーザー堆積法(PLD)、順次蒸着法(SVD)、化学浴堆積法(CBD)等によって得ることができる。
【0006】
これらの方法の中で、例えば、CH3NH3Br及びPbBr2前駆体を、超音波下、DMFに溶解させる工程、このようにして得た溶液をろ過する工程、次いでろ液を油浴中に80℃で4時間配置する工程によって、式MAPbBr3のペロブスカイト結晶を合成することが可能である[2]。
【0007】
式ODABCO-NH4Cl3、ODABCO-NH4Br3及びMDABCO-NH4I3の結晶はまた、これらの材料の前駆体を含有する溶液の、数日間にわたる緩やかな蒸着によっても合成されてきた[3]。
【0008】
別の例によれば、式AMX3のハイブリッド有機/無機のペロブスカイトは、閉空間昇華(CSS)によって得ることができる[4]。そうするためには、最初に無機前駆体MX2(式中、Xはハロゲン化物イオンであり、Mは二価金属のカチオンである)の層を基材上に堆積させて、有機材料(例えばCH3NH3
+)の供給源Aを付与することが必要である。前駆体層は、例えば30nm~500nmの厚さを有する。供給源は、例えば1mmの厚さを有する。次いで、前駆体層及び供給源は加熱される。単独で、有機部分は昇華される。ペロブスカイト材料は、有機部分を無機前駆体中に固体拡散することによって得られる。
【0009】
しかしながら、このような方法では、厚いペロブスカイト層を形成することは可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Dunlap-Shohl et al., Synthetic approaches for halide perovskite thin films. Chemical Reviews, 2018. 119(5): p.3193-3295
【非特許文献2】Wang et al., Structural and photophysical properties of methylammonium lead tribromide (MAPbBr3) single crystals. Scientific Reports, 2017. 7(1): p.1-14
【非特許文献3】Ye et al., Metal-free three-dimensional perovskite ferroelectrics. Science, 2018. 361(6398): p.151-155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡単に実行することができ、多様な厚さ(典型的に十数ナノメートル~5mm以上の厚さ)の層を形成することを可能にし、大きい表面積にわたって厚さと表面上との両方で均質であり、妥当な時間(1日未満、好ましくは6時間未満)内で、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を基材上に堆積させる方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのようにするために、本発明は、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を堆積させる方法であって、
a)基材及び有機の又はハイブリッド有機/無機のターゲットを用意する工程と、
b)該基材及び該ターゲットを閉空間昇華炉内に位置付ける工程と、
c)有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を基材上に、ターゲットの昇華によって堆積させる工程と
を含む、方法を提示する。
【0014】
本発明は、完全に有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト材料の層の、単一の工程における閉空間昇華(CSS)による堆積によって、それ自体を先行技術から区別する。ターゲットの材料が、得られることを望まれているペロブスカイトの全ての元素を含むため、必ずしも前駆体層を基材上に形成する必要性がない。
【0015】
このようにして得られたペロブスカイト層は、堆積表面全体にわたり、均一な厚さ及び均質な特性を有する。該方法は、再生可能であり、ペロブスカイト層を、多様な寸法、例えば1cm2~1m2超の表面上に堆積させるのに用いることができる。
【0016】
堆積期間及び温度に応じて、厚さが厚い(典型的に0.1mm以上、例えば0.1mm~3mm、又は更には0.1mm~5mmの)層、厚さが中程度又は適度である(典型的に2μm~0.1mm未満の)層、或いは厚さが薄い(典型的に2μm未満の)層を得ることが可能である。
【0017】
この方法は、適度な温度(典型的に250℃未満)にて実行されなければならない厚い層(典型的に0.1mm以上の厚さのもの)を堆積させるのに、特に興味深い。
【0018】
有利には、有機の又はハイブリッドのペロブスカイト層は、50nmから5000μmの間に含まれる厚さを有する。例えば、PV、LED、IR検出タイプの用途のために、ターゲットとされる厚さは、数十ナノメートル~10数マイクロメートル(典型的に50nm~10000nm)のオーダーのものであることになり、一方で、X線及びガンマ線の検出のために、ターゲットとされる厚さは、数十マイクロメートル~数千マイクロメートル(10μm~5000μm)のオーダーのものであることになる。
【0019】
第1の有利な代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、式ABX3を有する。
【0020】
Aは、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物である。有機化合物は、少なくとも元素の炭素、及び水素、ハロゲン、酸素、硫黄、リン、ケイ素又は窒素の元素のうちの1種又は複数を含有する任意の化合物を意味する。
【0021】
例えば、
Aは、
- 有機分子、例えばCH3NH3
+(メチルアンモニウムMA)、若しくはCH(NH2)2
+(ホルムアミジニウムFA)、若しくはC(NH2)3+(グアニジウムGA)、
- 有機分子の混合物[例えばMA1-xFAx(式中、0<x<1)]、又は
- 有機部分(例えばMA、FA)と無機部分(例えばCs、Rb、K、Li、Na等)との混合物[例えばCs1-xFAx(式中、0<x<1)]
を表し、
Bは、単一の無機元素(例えばPb、Sn、Ge、Si等)、有機分子[例えばN-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)(MDABCO)、又はN-ヒドロキシ-N’-ジアザビシクロ[2.2.2]オクトニウム(ODABC)]、いくつかの無機元素(例えば合金、例えばSn0.5Pb0.5)及び/又は有機分子の混合物を表し、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物(例えばX=Cl-、Br-、I-、F-等)を表す。
この第1の代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、好ましくは、MAPbBr3で作製される。
【0022】
更により優先的には、ペロブスカイト層は、MAPbBr3で作製され、500μmから2mmの間に含まれる厚さを有する。
【0023】
これらの異なる代替的な実施形態によれば、各X部位上に2~5種の元素の混合物[例えばタイプX=ClkBrlI1-k-l(式中、0≦k、l≦1且つ0≦k+l≦1)のもの]を有することも可能である。同じことがA及びB部位についても真である。
【0024】
有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層が、式A(1)
1-(y2+…+yn)A(2)
y2…A(n)
ynB(1)
1-(z2+…+zm)B(2)
z2…B(m)
zmX(1)
3-(x2+…+xp)X(2)
x2…X(p)
xpを有すると記述することで、一般化されてもよい。有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、例えば、式Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3を有する。
【0025】
第2の有利な代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、式A2C1+D3+X6を有し、
Aは、先に定義したような、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物であり、
C及びDは、カチオンである。Cは、例えばAg、Au、Tl、Li、Na、K、Rbの中から選択することができ、且つ/又はDは、例えばAl、Ga、In、Sb、Biの中から選択することができ、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物(例えばX=Cl-、Br-、I-、F-等)である。
【0026】
この第2の代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、好ましくは、式MA2AgBiBr6を有する。
【0027】
第3の代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、2Dペロブスカイトとも一般に呼ばれるRuddlesden-Popperタイプのものであり、例えば式(RNH3)2An-1BnX3n+1(n=1、2、3、4等)を有し、
Rは、脂肪族及び/又は芳香族炭素鎖であり、
Aは、
- 有機分子、例えばCH3NH3
+(メチルアンモニウムMA)、又はCH(NH2)2
+(ホルムアミジニウムFA)、又はC(NH2)3+(グアニジニウムGA)、
- 有機分子の混合物(例えばMA1-xFAx(式中、0<x<1)、又は
- 有機部分(例えばMA、FA)と無機部分(例えばCs、Rb、K、Li、Na等)との混合物[例えばCs1-xFAx(式中、0<x<1)]
であり、
Bは、
単一の無機元素(例えばPb、Sn、Ge、Si等)、有機分子[例えばN-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)(MDABCO)、又はN-ヒドロキシ-N’-ジアザビシクロ[2.2.2]オクトニウム(ODABC)]、いくつかの無機元素(例えば合金、例えばSn0.5Pb0.5)及び/又は有機分子の混合物であり、
Xは、
アニオン、好ましくはハロゲン化物(例えばX=Cl-、Br-、I-、F-等)である。
【0028】
特定の実施形態によれば、ターゲットは、粒子で形成される。
【0029】
この特定の実施形態の代替形態によれば、ターゲットは、式ABX3の粒子を含む。
【0030】
この特定の実施形態の別の代替形態によれば、ターゲットは、異なる性質の二成分粒子の混合物、例えばMABr、BiBr3及びAgBrの混合物を含み、混合物は、三成分粒子を更に含むことが可能であり、例えばターゲットは、式AXの粒子、式BX2の粒子、及び任意選択で式ABX3の粒子を含む。
【0031】
有利な実施形態によれば、ターゲットは、凝集された且つ/又は焼結された粒子で形成された固体のターゲットである。この代替形態は、厚さが薄い、中程度である又は厚いペロブスカイト層を製造することを可能にする。この代替形態は、厚さが厚いペロブスカイト層を形成するのに、特に有利である。
【0032】
別の有利な実施形態によれば、粒子は、粉末の床を形成する。この代替形態は、厚さが薄い又は中程度であるのペロブスカイト層を形成するのに、特に有利である。
【0033】
特定の実施形態によれば、ターゲットは、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイトの膜で形成された固体のターゲットである。このような膜は、例えばガラス基材上に堆積される。このようなターゲットを用いて、厚さが薄い、中程度である及び厚いペロブスカイト層を製造することが可能である。この代替形態は、厚さの薄いペロブスカイト層を形成するのに、特に有利である。ターゲットは、いくつかの連続堆積のために使用することができる。
【0034】
有利には、工程a)において準備されるターゲットは、
- 式ABX3の粉末を得るような方法において、式AXの第1の材料と式BX2の第2の材料とを共ミリングすることによって機械合成する工程と、
- 式ABX3の粉末を加圧して、式ABX3の固体のターゲットを得る工程と
によって得られる。有利な実施形態によれば、固体のターゲットを加圧する工程は、粉末を加熱しながら行ってもよい。
【0035】
有利には、工程c)の前に、該方法は、その過程においてターゲットが50℃~500℃の範囲の温度に加熱されて103Pa超の圧力に供される、追加の工程を含む。この工程中、ターゲットは昇華されない。この高圧は、存在している元素の相互拡散へと導き、そのため、式ABX3の粒子の形成へと導き、且つ/又はターゲットの粒子の凝集へと導く。そのため、ターゲットが、式AXの粒子と式BX2の粒子とで形成されているとき、ターゲット中のABX3相をインサイチュで形成することが可能である。この工程は、中性雰囲気下、例えばアルゴン下又は窒素下で実施される。このような工程は、有利には、工程b)と工程c)との間に、閉空間昇華炉内で実施される。
【0036】
有利には、工程c)中、ターゲットと基材との温度差は、10℃から350℃の間、好ましくは50℃から200℃の間に含まれる。
【0037】
特定の代替的な実施形態によれば、工程c)は、1Pa未満、好ましくは0.1Pa未満の圧力Pにて実施される。
【0038】
別の特定の代替的な実施形態によれば、工程c)は、還元雰囲気下で、又は酸化雰囲気下で、実施される。
【0039】
好ましくは、厚い層を形成するために、基材は、その熱膨張係数が、堆積させる有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層の熱膨張係数に近いもので選ばれることになる。近いとは、それらの熱膨張係数が25%超に変化せず、好ましくはそれらが10%超に変化しないことを意味する。有利には、基材は、例えばガラス、ケイ素又はポリイミドで作製された支持体上に堆積されたTFT(薄膜トランジスター)マトリックスである。
【0040】
有利には、工程c)の前に、該方法は、その過程において有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層と同一の又は異なる性質の中間層が基材上に堆積されて、主層の品質及び/又は最終装置の操作性を改善する、追加の工程を含む。
【0041】
中間層は、
- シード層の役目を果たすことができる、且つ/又は
- 有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層のホモエピタキシー又はヘテロエピタキシーを好ましくすることによって結晶化を助けることができる、且つ/又は
- 基材と、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイトとの間の良好な電気的接触を確実にすることができる、且つ/又は
- 光電性を有することができる、且つ/又は
- 主層と基材との熱膨張係数の差を補うバッファ層の役割を果たすことができる。
【0042】
該方法は、以下の利点のうちの少なくとも1つ又はいくつかを有する:
- 正しい結晶学の相を直接有するターゲットを得ること、
- 厚さが薄い、中程度である又は厚い有機の又はハイブリッドのペロブスカイト層を形成すること、
- 堆積物の全体にわたる厚さにおいて均質な層を形成すること、
- 有機の又はハイブリッドのペロブスカイト層を(数十cm2超の)広い表面積上に形成すること、
- きわめて広い範囲にわたって堆積の速度(典型的に数nm/分~数十μm/分、又は更には最大1000μm/時間)を制御すること、
- 堆積速度が1nm/分から10μm/分の間(0.1nm/分~50μm/分)で正しく制御可能であるため、該方法が、妥当な時間(好ましくは5時間未満、更により優先的には2時間未満)にわたって実施されること、
- 該方法が、適度な基材温度(350℃未満、好ましくは250℃未満、更により優先的には200℃未満)にて実行され、これが、広範囲の基材及び/又は支持体(TFTマトリックス、ケイ素、ガラス、ポリマー等)を使用することを可能にすること、
- 従来の蒸着方法についての材料の有用率が20%~50%である(典型的に真空堆積法では材料のうちの30%が堆積される)のと比べて、CSSによる堆積が、高い有用率(昇華材料のうちの80%超、最大90%、更には最大99%が堆積される)を可能にし、これが、そのため、製造コストを下げること、
- 該方法が再生可能であり、且つ大規模に適用可能であること、
- 得られたペロブスカイト層が良好な純度を有し(CSS堆積物はターゲットよりも純粋であり、不純物は一般に昇華されない)、加えて、ターゲットの融解温度未満に配置されることによって、CSSによる堆積が、蒸着による堆積よりも材料を多く純化させること、
- 材料の、非常に良好な有用率(80%~99%)を有すること。
【0043】
本発明はまた、先に記載されたような方法によって得られた、基材、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を備えたスタックにも関し、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、MAPbBr3(好ましくは500μmから2mmの間に含まれる厚さを有する)、Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3又はMA2AgBiBr6で作製されている。
【0044】
有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、好ましくは、0.1μm以上の厚さを有する。例えば、それは0.1mm超の厚さを有する。
【0045】
好ましくは、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、1~10mmの厚さを有する。このような層は、X線又はガンマ線検出の用途にとって、特に興味深い。
【0046】
本発明はまた、先に定義したスタックの、医療分野における(例えばX線検出のための)使用、又は光起電力分野における(例えばペロブスカイト電池における、又はケイ素ヘテロ結合電池及びペロブスカイト電池を含むタンデムモジュールにおける)使用にも関する。
【0047】
特に、有利には、MAPbBr3層は、医療分野において、特にX線撮像用又はガンマ放射線の検出用に使用されることになる。例えば、
- X線マンモグラフィー用のおよそ200μmの厚さのMAPbBr3層、
- X線ラジオグラフィー(手、胸部等)用のおよそ1mmの厚さのMAPbBr3層、
- シンチグラフィー用のおよそ2mmの厚さのMAPbBr3層
が使用されることになる。
【0048】
400nmのCs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3層を、例えば光起電力モジュールを製造するために、特に、広い禁制帯エネルギーギャップ、例えば下部ケイ素ヘテロ結合電池及び上部ペロブスカイト電池を備えたタンデムを有するタンデムモジュールを製造するために、使用することができる。
【0049】
本発明の他の特性及び利点は、以下の記載の補足から明らかになる。
【0050】
この記載の補足が、本発明の主題を例示する目的のためにのみ付与され、いかなる事例においてもこの主題を限定するものとして解釈されてはならないことは、言うまでもない。
【0051】
本発明は、純粋に表示する目的のために付与されて全く限定することのない例示的実施形態の記載を読むことによって、且つ添付の図面を参照することによって、より良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の特定の実施形態による、基材上に堆積された有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を、断面において概略的に示す図である。
【
図2】本発明の特定の実施形態による、支持体、基材、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を備えたスタックを、断面において概略的に示す図である。
【
図3】本発明の特定の実施形態による、支持体、基材、中間層、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層を備えたスタックを、断面において概略的に示す図である。
【
図4】本発明の特定の実施形態によるCSS炉を、概略的に且つ断面において示す図である。
【
図5】本発明の特定の実施形態による、CSS炉のサセプタ及びカバーを、概略的に且つ断面において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図中に表されている異なる部分は必ずしも均一の尺度によって表されておらず、これは、図をより読みやすくするためである。
【0054】
これは決して限定するものではないが、本発明は、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイトに基づく、電子の、光学の又は光電の装置の製造にとって、特に興味深い。例えば、それらは、LED、光起電力電池、検出器(赤外線、X線の放射線、ガンマ放射線等)、(強誘電の、焦電の)センサー、又は(圧電の)アクチュエータであることができる。
【0055】
本発明は、以下の分野において用途を見出している:
- 医療分野におけるX線の放射線の検出、特にマンモグラフィーに集中する用途(およそ18~20keVに集中する放射線の検出、IEC 62220-1-2:2007規格)、従来のX線ラジオグラフィー用の撮像(およそ50keVに集中する放射線の検出、RQA5、IEC 62220-1規格、又は90keVに集中する放射線の検出、RQA9,IEC 62220-1規格)であり、これらの事例の両方において、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層の厚さは、放射線の重要な部分を吸収するように厚い(典型的に0.1mm~2mm、例えば1mm)、
- 厚さ薄い、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層(典型的に100nm~2μm、好ましくは数百ナノメートル)を有する、光起電力、又はUV、可視光若しくは赤外線の光検出器、又はLED、
- 厚さが厚い有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト(典型的に1mm~10mm、好ましくは2~3mm)を有する硬X線又はガンマ放射線の検出。
【0056】
有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層1を製造する方法は、
a)基材10、及び有機の又はハイブリッド有機/無機のターゲット20を用意する工程と、
b)該基材10及び該ターゲット20を閉空間昇華炉内に位置付ける工程と、
c)有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層1を基材10上に、ターゲット20の昇華によって堆積させる工程と
を含む。
【0057】
該方法は、ペロブスカイト(PVK)材料層1を基材10上に形成することを可能にする。層1の厚さは、ターゲットとされる用途に応じて10nm~10mmの範囲であってもよい。形成される層の厚さが何であれ、ペロブスカイト層の組成は均質である。
【0058】
一般に、本発明は、
- A(1)
1-(y2+…+yn)A(2)
y2…A(n)
ynB(1)
1-(z2+…+zm)B(2)
z2…B(m)
zmX(1)
3-(x2+…+xp)X(2)
x2…X(p)
xp(式中、y2とynとは、A(2)とA(n)、z2とzmとのそれぞれの割合、B(2)とB(m)とのそれぞれの割合であり、x2とxpとは、X(2)とX(p)とのそれぞれの割合である)、及び
- A2C1+D3+X6(二重格子を有する材料)
等の混合された組成物を含む、一般化学式ABX3の任意のペロブスカイトに該当する。
【0059】
これらの異なるペロブスカイト材料について、Aは、有機化合物、有機化合物の混合物、又は有機化合物と無機化合物との混合物を表す。有機化合物は、少なくとも元素の炭素、及び水素、ハロゲン、酸素、硫黄、リン、ケイ素又は窒素の元素のうちの1種又は複数 を含有する任意の化合物を意味する。
【0060】
例えば、Aは、
- 有機分子(例えばCH3NH3
+(メチルアンモニウムMA)、又はCH(NH2)2
+(ホルムアミジニウムFA)、又はC(NH2)3+(グアニジニウムGA)、
- 有機分子の混合物[例えばMA1-xFAx(式中、0<x<1)]、又は
- 有機部分(例えばMA、FA)と無機部分(例えばCs、Rb、K、Li、Na等)との混合物[例えばCs1-xFAx(式中、0<x<1)]
を表し、
Xは、アニオン、好ましくはハロゲン化物(例えばCl-、Br-、I-、F-等)である。
【0061】
Bは、有機分子[例えばN-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)(MDABCO)又はN-ヒドロキシ-N’-ジアザビシクロ[2.2.2]オクトニウム(ODABC)]、又は無機元素(例えばPb、Sn、Ge、Hg及びCdの中から選ばれる)、又は有機分子と無機元素、又は無機分子と有機元素との混合物であってもよい。
【0062】
部位のうちの1つの上、部位のうちの2つの上、又は3つの部位A、B及びX上に、2~5種の元素を有することもまた可能である。例えば、X=ClkBrlI1-k-l(式中、0≦k、l≦1且つ0≦k+l≦1)を有する材料を選ぶことが可能である。
【0063】
第2の有利な代替的な実施形態によれば、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層は、式A2C1+D3+X6を有する。
【0064】
本発明はまた、ペロブスカイトに属する全ての他の組成物:
- 組成物A2C1+D3+X6(式中、C及びDはカチオンである)の材料。Cは、例えばAg、Au、Tl、Li、Na、K、Rbの中から選択することができ、且つ/又はDは、例えばAl、Ga、In、Sb、Biの中から選択することができ、且つA及びXは、先のように選ばれ、
- 組成物A2B4+X6の材料、例えばCs2Te4+I6、組成物A3B2
3+X9の材料、例えばCs3Bi2I9、又はA3
1+B2
3+X6
1又は他のタイプの材料(カルコゲニド、Rudorffites等)、
- より一般に、組成物A(1)
1-(y2+…+yn)A(2)
y2…A(n)
ynB(1)
1-(z2+…+zm)B(2)
z2…B(m)
zmX(1)
3-(x2+…+xp)X(2)
x2…X(p)
xpの材料
にも該当する。
【0065】
好ましくは、
- 特に医療用途、例えばマンモグラフィー(エネルギー約18keV)用、及びラジオロジー(エネルギー約50keV)用のMAPbBr3、
- 特にラジオロジー(エネルギー約50keV)用のMA2AgBiBr6、
- 特に光起電力用のCs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3
が選ばれることになる。
【0066】
ターゲット20が式ABX3のものである場合、ターゲット20は、元素の粒子A、B及びXの混合物で形成することができる。
【0067】
他の実施形態によれば、式ABX3のターゲット20は、
- 二成分のAX粒子とBX2粒子との混合物で形成することができ、
- AX粒子、BX2粒子、及び任意選択でABX3粒子の混合物で形成することができ、
- ABX3粒子で形成することができ、これは、昇華する材料の正しい組成及び正しい相を直接有することを可能にし、これらの粒子は、例えば、Bridgman又は他の溶液によって、液体プロセスにより形成された小さい単結晶でありうる。
【0068】
2タイプ超の二成分粒子を含む、より複合的な混合物を使用することもまた可能である。
【0069】
これは、例えば混合ペロブスカイト(多重アニオン、多重カチオン)の場合である。例えば、3種の二成分粉末MABr、BiBr3及びAgBrの混合物からMA2AgBiBr6を形成することが可能である。
【0070】
ターゲット20が式A2C1+D3+X6のものである場合、ターゲットは、
- 二成分のAX粒子、C1+X粒子及びD3+X3粒子の混合物からなってもよく、
- AX粒子、C1+X粒子及びD3+X3粒子及びA’2C1+D3+X6粒子の混合物からなってもよく、
- A2C1+D3+X6粒子からなってもよく、これは、昇華する材料の正しい組成及び正しい相を直接有することを可能にする。
【0071】
同様に、A3
1+B2
3+X6
1-の事例では、A3
1+B2
3+X6
1-粉末から直接出発することが可能でありうる。
【0072】
他の、より複合的な組成物、及び/又はより多数の前駆体を利用する組成物がまた想定されうる。
【0073】
特定の実施形態によれば、ターゲット20は、固体ウェハを形成する(換言すれば、粒子は凝集される)。優先的には、ターゲット20は、1~10mm厚さの固体ウェハである。例えば、それは3mmの厚さを有する。
【0074】
特定の実施形態によれば、ターゲット20は、ABX3結晶から製造される。該ターゲットは、より大きい寸法のABX3結晶から好適な寸法に切断されるか、又はより小さいサイズの結晶(典型的にミリメートルの又はセンチメートルのサイズのもの)のアセンブリによるか、のいずれであってもよい。切断する/研磨する追加の工程は、それらが実際に隣接し、平らな舗装材料(ペービング)を形成することを確実にするために、より小さいサイズの結晶のアセンブリにおいて必要でありうる。ターゲットの製造のために使用される結晶は、Bridgman又は他の溶液によって、液体プロセスによって形成されてもよい。結晶は、単結晶又は多結晶(結晶配向のアセンブリ)を意味する。
【0075】
別の特定の実施形態によれば、ターゲット20の粒子は、粉末の床を形成することができる。
【0076】
ターゲット20を形成する粒子の特徴的なサイズ(又は粒径)は、例えば10nm~1000μm、好ましくは20μm~100μmの範囲である。
【0077】
特定の実施形態によれば、ターゲット20は、好ましくは高温に適合性のある基材上に、例えばガラス基材上に堆積された、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト膜で形成される。この膜は、MAPbBr3等のABX3タイプのペロブスカイトで構成されてもよい。
【0078】
該膜は連続性である。該膜は均質である。
【0079】
ターゲット20の膜は、別のターゲット(中間ターゲットと呼ばれる)からのCSS堆積法によって、又は任意の他の堆積方法、例えば溶液中成長によって、又は蒸着法によって、得ることができる。
【0080】
このような膜は、薄い、中程度の又は厚い層を形成するのに役立つことができる。ターゲット20を形成する膜の厚さは、堆積物1への層の厚さ以上である。好ましくは、ターゲット20を形成する膜の厚さは、厳密に堆積物1への層の厚さを超える。
【0081】
例えば、1~10mmの膜、例えば1.1mmの膜を使用して、1mm厚さの有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層1を形成することができる。
【0082】
代替的な実施形態では、ターゲット20の膜厚は、堆積物1への層の厚さよりも少なくとも10倍、更により優先的には少なくとも100倍厚い。この実施形態は、有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイトの薄い層1(典型的に2μm未満の厚さを有する)を形成するのに、特に有利である。有利には、ターゲット20は、いくつかの堆積物に(例えば少なくとも3つの堆積物、優先的には20超の堆積物に)役立ち得る。ターゲットの厚さは、ターゲットとされる堆積物の厚さの和を超えて厚くなければならないことになる。
【0083】
粉末の床、又は凝集粒子の床、或いは膜で形成されたターゲット20の寸法は、例えば1cm2~1m2の範囲であってもよい。
【0084】
ターゲット20の寸法は、実施する堆積物のサイズに相当する。例えば、40x40cm2の堆積物のために、同じ寸法のターゲットが使用される。
【0085】
ターゲット20は、基材10のサイズの舗装材料を形成するように、配列された元素の単体であってもアセンブリであってもよい。例えば、40x40cm2の堆積物のために、40x40cm2の舗装材料を形成するための1セットのターゲットが必要とされることになる。その上に有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層1が堆積される基材10は、ガラス、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で作製されたもの、或いはケイ素で作製されたものでもよい。基材は、TFT検出器のマトリックス、又はCMOS検出器のマトリックスであってもよい。基材の性質は、ターゲットとされる用途、及び該方法中に用いられる温度に依存する。
【0086】
基材10は、それ自体、支持体11上に位置付けられてもよい。例えば、ポリイミド支持体上のTFTマトリックスを使用することができる。
【0087】
有利な実施形態によれば、基材10は、中間層12(若しくは副層)又はいくつかの中間層によって被覆されてもよい。
【0088】
そのため、工程c)の最後に、
- 基材10及びペロブスカイト層1(
図1)、又は
- 支持体11、基材10及びペロブスカイト層1(
図2)、又は
- 基材10、中間層12及びペロブスカイト層1、又は
- 支持体11、基材10、中間層12及びペロブスカイト層1(
図3)
を備えて好ましくはこれらによって構成されるスタックを得ることが可能である。
【0089】
特に、中間層12は、想定される装置用の電極を形成すること、及び/又は堆積させるペロブスカイト層の熱膨張係数(TEC)に近い熱膨張係数を有するバッファ層を付与することを可能にすることができる場合がある。
【0090】
第1の代替的な実施形態によれば、中間層12は、堆積させる有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト層と同じ性質の層であり、すなわち、中間層12は、式ABX3の層である。この層は、工程c)において形成された層の成長を助ける。それは、シード層の役割を果たせるだけでなく、特に結晶化を助ける役割も果たす。基材上でのABX3副層の存在は、主層のホモエピタキシーを可能にする。
【0091】
第2の代替的な実施形態によれば、中間層12は、ABX3:D(式中、Dは、ABX3マトリックス中のドーピング元素を表す)で作製される。Dは、間隙に若しくは置換的に配置された外因性元素、ABX3マトリックス中の空孔、又は任意の他のドーピング機構であってもよい。Dは、例えば、Pb2+に関して置換的に配置されたBi3+又はSn4+であってもよい。このドーピングは、主層のドーピング(それ自体、p、nでドープされた又は内因性の)とは異なるドープされた(p又はn)副層を得ることを可能にする。このドープされた副層の役割は、装置の残部とのより良好な電気的接触を確実にすること、及び/又は主層のホモエピタキシーを促進することである。
【0092】
第3の代替的な実施形態によれば、中間層12は、部分的に又は完全に異なる元素で構成されたペロブスカイトで作製される。例えば、AB(X1-zYz)3副層である。合金(又は元素の置換)が、1つの、いくつかの又は全ての部位A、B及びX上で可能である。CH3NH3PbX3タイプのハイブリッド有機/無機の副層を想定することもまた可能である。副層の目的は、装置の操作性を最適化するために、異なる光電子的性質(禁制帯エネルギーギャップ、電子親和力、イオン化ポテンシャル)を呈することである。
【0093】
第4の代替的な実施形態によれば、中間層12は、完全に異なる性質のものである。それは、結晶質層であっても非晶質層であってもよい。この事例では、想定される副層の役割は、主層と基材との熱膨張係数の差を補うためにバッファ層の役割を果たすことである。この層は、基材、その熱膨張係数及びその応力吸収能に応じて選ばれなければならないことになる。例えばこの副層は、以下でありうる:
- 差次的TECに連結している残留機械応力を解放することを可能にすると考えられる、有機の性質の一部を含むRuddlesden-Popper又はDion Jacobsonタイプの有機の又はハイブリッド有機/無機のペロブスカイト、
- 架橋の又は非架橋のポリマー層、
- ポリマーとペロブスカイトとの混合物、又は有機小分子とペロブスカイトとの混合物、
- 架橋剤ありで又はなしで、イオン力又はファンデルワールス力を介して粒子同士間の粘着を維持するための、ペロブスカイトの薄い多結晶層(10μm未満)[例は、1,6-ジアミノヘキサンジヒドロクロリド(CAS: 6055-52-3)である]、
- 延性材料、タイプZn、Pb、Al、Sn等を含む単層又は多層、
- PVKのものと基材との間に中間TECを有する任意の材料の単層又は多層であって、材料の選択が、堆積された基材/PVKの対に依存する、単層又は多層、
- 熱膨張に起因する引張/圧縮応力を補うことが可能な圧縮/引張応力下の材料を有する多層。材料の選択は、基材/堆積されたPVK層の対に依存する。
【0094】
中間層12は、前記の役割/目的のうちの1つ又はいくつかを果たすことができる。例えば、蒸着法によって堆積されたABX3:D層は、電気接触層として役立ち、且つ主層のホモエピタキシーを可能にする、の両方でありうる。
【0095】
副層の性質が工程c)中に堆積された層とは異なるが、適合する格子パラメータを有する場合、それは、それにもかかわらず、ヘテロエピタキシーによって、この層の成長を好ましくしうる。
【0096】
中間層は、工程c)中に堆積された層の厚さを下回る厚さを有する。中間層の厚さは、数ナノメートル~数十ミクロンの範囲であってもよい。典型的には、中間層の厚さは、主堆積物の厚さの0.1%~50%、例えば5%である。
【0097】
副層は、直接堆積技術(インクジェット、スクリーン印刷等)を用いて、又はリトグラフィー及び光リトグラフィー技術を用いることによって、表面全体にわたって又は局所的に、連続して堆積させることができる。
【0098】
中間ペロブスカイト層12は、無機の及びハイブリッド有機/無機のPVKを堆積させるための、CSS(異なるターゲットを有する)によって、真空下蒸着法によって、液体プロセス又は任意の他の方法によって堆積させることができる。非限定的例示として、液体プロセスによる堆積は、溶媒中、スピンコーティング法によって、パルスレーザー堆積法(PLD)によって、又は化学浴堆積法(CBD)によって実施することができる。
【0099】
そうでなければ、中間層12は、薄い層を真空下で堆積させる方法(蒸着法、陰極スパッタリング)によって、又は原子層堆積法(ALD)、電着法、又は溶液中成長等の堆積方法によって堆積させることができる。
【0100】
中間層12はまた、ペロブスカイト主層のために使用された(工程c)のと同じターゲットからも堆積させることができる。次いで、ターゲット20の組成物は、その厚さにおいて多様とする(換言すると、ターゲットは、その部分のそれぞれが特定の組成物に相当する2つの異なる部分から形成される)。ターゲットの上部は、中間層12の構成元素で構成され、ターゲットの下部は、主層10の構成元素で構成される。ターゲットの上部は、その底部(100μm~10mm)よりも薄い(0.1μm~100μm)。この二層ターゲットは、例えば、異なる粉末を、既にコンパクト化したターゲット上にコンパクト化することによって、標におけるイオン注入又は他の方法によって製造することができる。
【0101】
工程c)は、
図4及び
図5中の、例示している非限定的目的について表されているもの等の、従来のCSS装置100を用いて実施される。しかしながら、それは、任意の他のCSS装置であってもよい。
【0102】
CSS炉100は、その周りに加熱系が位置付けられる反応器102を備える。例えば、それは、ランプ104(
図4)又は任意の他の加熱系(例えば抵抗器)を包含することができる。
【0103】
反応器102は、石英、グラファイト、金属から作製されてもよい。
【0104】
反応器102は、
図1にあるように管状であってもよい。
【0105】
炉100はまた、サセプタ106(供給源ブロックとも呼ばれる)及びカバー108(基材ブロックとも呼ばれる)も備える。サセプタ106及びカバー108は、圧力、真空及び高温に耐えることができる熱導電材料で作製される。それらは、好ましくはグラファイトで作製される。
【0106】
基材10及びターゲット20は、サセプタ106とカバー108との間に位置付けられる。
【0107】
好ましくは、基材10は、その温度を、設定された値に維持するカバー108と直接接触している。
【0108】
堆積させるPVKのターゲット20は、サセプタ106上に配列される。
【0109】
基材10は、ターゲット20から短い距離にある。短い距離は、典型的には1mm~20mm、優先的には1mm~7mm、例えば1mm~5mm、又は3mm~5mmの距離を意味する。特定すると、2mmの距離を選ぶことができる。高速堆積を有するのに十分近い距離と、堆積の過程において熱勾配を最大化して維持することができる十分な距離との間の妥協点が選ばれることになる。
【0110】
断熱材料(例えばガラス、石英又はアルミナ)で作製されている1つ又はいくつかのスペーサ112は、基材10がターゲット20から短い距離にあるよう維持するのに役立つ。
【0111】
カバー108は、表されていないサセプタ106(例えばスクリュー又は任意の他の締結系)中の閉鎖系によって、基材上へ加圧されるよう維持することができる。
【0112】
サセプタ106及びカバー108はそれぞれ、それらの温度を測定して制御するための、熱電対114又は任意の他の系(高温計等)を有する。
【0113】
加熱系(ランプ、抵抗器等)は、サセプタ106の温度(Tターゲット)及びカバー108の温度(T基材)を、20℃~600℃とすることができる範囲内に調節することを可能にする。昇温勾配は、例えば、0.1℃/秒~10℃/秒の範囲内に制御可能である。サセプタ106(Tターゲット)及びカバー108(T基材)は、独立して、温度勾配(又は連続した勾配)によって制御することができる。そのため、ターゲットの昇華の動態と、基材上の濃縮物の温度とを調整して、堆積された厚さによる層の形態を適切に制御することが可能である。特に、これらのパラメータは、このようにして基材上に堆積された多結晶層の粒子の寸法に役割を果たすことができる。
【0114】
カバー108用の特定の冷却装置(例えば、液体を冷却するための一体化した配管、放射線に対するサセプタの保護スクリーン、ラジエータ)を加えることが可能である。
【0115】
装置100は、不活性ガス116(例えばアルゴン又はN2)の取り入れ口を有する系に連結される。
【0116】
装置100はまた、酸化ガス(例えばO2)の取り入れ口に、又は還元ガス(例えばH2)の取り入れ口に連結されうる。
【0117】
装置100は、例えば0.00001Pa~1Paの範囲の真空P炉を達成することを可能にするポンプ系に連結しているガス出口122を備える。P炉値は、使用されるCSS炉に依存する。
【0118】
工程c)中、ターゲットは昇華される。昇華による堆積は、サセプタ106及びカバー108を真空下で加熱することによって実施される。
【0119】
工程c)中、基材の温度T基材は、熱勾配を創製するために、ターゲットの温度Tターゲットを下回る。工程c)中、基材は、有利には、制御された温度に維持される。同じことがターゲットについても真である。
【0120】
温度の差Tターゲット-T基材は、10℃~350℃、好ましくは50℃~300℃、更により優先的には100℃~250℃、例えば150℃である。
【0121】
ターゲットとされる温度は、堆積させる材料に依存し、その相図の関数として調整される。例えば、材料MAPbBr3について、Tターゲット=300℃(±100℃)及びT基材=200℃(±100℃)を選ぶことができる。
【0122】
0.2℃/秒から10℃/秒の間に含まれる、例えば1℃/秒の昇温勾配を、例えば利用することができる。
【0123】
第1の代替的な実施形態によれば、堆積(昇華)工程は、低圧(典型的に1Pa未満)において実施される。有利には、工程c)中の圧力は0.001Pa~1Paとする。例えば、P炉=0.01Paを選ぶことができる。
【0124】
工程c)を実施するために、中性ガスのポンプ/パージのサイクルを行って装置100から酸素を排除し、それを低圧に配置することが可能である。
【0125】
他の代替的な実施形態によれば、粒子の成長(発生、核生成、次いで成長)を好ましくするために、工程c)中、酸化雰囲気下又は還元雰囲気下で働くことが興味深い場合がある。
【0126】
酸化雰囲気は、この工程中に、低分圧(好ましくは0.1~10Pa、例えば1Pa)を設定することによって、Ar:O2(1at%<O2<10at%)を得ることができる。
【0127】
還元雰囲気は、この工程中に、低分圧(好ましくは0.1~10Pa、例えば1Pa)を設定することによって、Ar:H2(1at%<H2<10at%)を得ることができる。
【0128】
堆積時間は、ターゲットとされる厚さに依存する。薄い層(50nm~5000nm)を堆積させるために、堆積時間は5分~2時間のオーダーのもの、例えば30分である。厚い層(50μm~5000μm)を堆積させるために、堆積時間は30分~8時間のオーダーのもの、例えば4時間である。
【0129】
工程c)の後、形成されたペロブスカイト層は冷却される。冷却は、自然であっても、勾配によって制御されてもよい。急速冷却系(サセプタ及びカバー中に挿入されたパイプ中の水又は冷却液による)もまた想定することができる。
【0130】
特定の実施形態によれば、該方法は、工程b)と工程c)との間に、追加の高圧工程を含む。
【0131】
高圧は、103Pa超、例えば105Paのオーダーの圧力を意味する。この工程は、粉末の混合物、例えばAX粉末とBX2粉末との混合物を含むターゲット20の使用の事例において、特に有利である。実際に、この高圧工程は、ターゲットの昇華の前に、(反応AX+BX2→ABX3のために)ABX3相をインサイチュで得ることを可能にする。非常に良好な品質の堆積物が、このようにして得られる。この代替形態はまた、粉末の床で形成されたターゲット20の事例において特に興味深く、そのため、それは、粒子を凝集すること及び/又はターゲットをコンパクト化することを可能にする。
【0132】
該方法はまた、工程a)の前に、その過程において式ABX3のターゲット20が製造される工程も含んでもよい。
【0133】
このターゲットの製造は、ターゲットを形成するような方法において、粒子を成形することを要する。
【0134】
粒子は、ミリングによって又は共ミリングによって得ることができる。
【0135】
成形は、固体のターゲットを得るような方法において、粒子を加圧することによって実施することができる。
【0136】
第1の代替的な実施形態によれば、ターゲットを形成する粒子は、式ABX3の材料のミリングによって得られる。ミリング工程は、粒子のサイズを調整することを可能にする。式ABX3の材料は、結晶成長によって、化学的合成又は任意の他の合成方法によって、得ることができる。
【0137】
第2の代替的な実施形態によれば、ターゲットを形成する粒子は、式AXの第1の材料と式BX2の第2の材料とを共ミリングすることによって得られる。
【0138】
第3の代替的な実施形態によれば、ターゲットを形成する粒子は、3種の材料A、B及びXを共ミリングすることによって得ることができる。
【0139】
異なる材料の相対量は、式ABX3のターゲットを形成するような方法において、選ばれることになる。
【0140】
ミリング又は共ミリング工程は、遊星ミル内で実施することができる。
【0141】
好ましくは、ターゲット20を形成する粒子は、機械合成によって得られる。機械合成は、純粋な又は事前に合金化された材料を、その粒子が単相又は多相で得られるまで、高エネルギーミル内で、きわめてエネルギー性の共ミリングを実施することからなる。例えば、AXとBX2との混合物を単相の粒子(ABX3)へと導くことができ、又はABX3+AX+BX2混合物を得ることができる。
【0142】
エネルギー性ミリングは、例えば、
- 粉末の質量と比べて重要なボールの質量(少なくとも2倍大きい、例えば15倍大きい)、並びに/又は
- 用いられるミル、並びにボール及び粉末の質量に依存する高回転速度(典型的に100rpm~700rpm、例えば500rpm)、並びに/又は
- 長いミリング時間(10分から5時間の間、例えば1時間)
によって誘導される。
【0143】
別の実施形態によれば、粒子は、ターゲットを成形する前に共ミリングされない。例えば、粉末が、異なる粒子の混合物、例えばAXとBX2との混合物を含むとき、共ミリング相を除外することが可能である。この事例では、ABX3の形成は、
- 反応AX+BX2→ABX3による高圧工程中の昇華(CSS炉内)前に、ターゲットにおいて、又は
- AXとBX2との別々の昇華後に、反応AX+BX2→ABX3によって基材上で直接、
のいずれかで行うことができる。この場合、AX及びBX2の品質を、堆積物中、最終ABX3の組成を維持するためにそれらの昇華温度に応じて調整することは妥当である。本発明の特定の場合、ターゲットの組成は化学量論ではないが、異なる前駆体の堆積物の堆積条件及び相対速度は、その上で堆積が実施される基材上の化学量論層をもたらす。
【0144】
この代替形態の利点は、ミリング工程を除外し、そのため時間及びコストの節約をもたらすことである。
【0145】
特定の実施形態によれば、式ABX3の粉末は加圧されて、固体ウェハ(又はターゲット)を形成する。換言すると、粒子は凝集される又は焼結される。
【0146】
手動プレスが用いられてもよい。かける圧力は、105Pa.cm-2から108Pa.cm-2の間に含まれる、例えば107Pa.cm-2である。
【0147】
手動プレスの代替形態では、加熱(例えばT=250℃±200℃において)しながら加圧してターゲットのコンパクト性を改善し、ターゲット中のABX3形成を好ましくすることが可能である。
【0148】
加熱しながらの加圧は、特に、微細な粒径を維持しながら良好なコンパクト性を可能にする(より均質なターゲット)放電プラズマ焼結法(SPS)によって実施することができる。
【0149】
別の特定の実施形態によれば、CSS法のために粉末の床を使用することが望まれる場合、加圧工程は必要ない。この場合、粉末(AX/BX2混合物、或いはABX3)の必要量が、サセプタ106上に、又はサセプタ106上に位置付けられた支持体上に、直接配列される。AX/BX2混合物の場合、最終ABX3の組成を堆積物中に維持するために、それらの昇華温度に応じてAXの量とBX2の量とを調整する必要がある場合がある。
【0150】
加圧工程の除外は、時間及びコストの節約を表す。
【0151】
ターゲットを形成するのに使用する粉末の質量は、ターゲットのサイズ及び所望の厚さに依存し、例えば4~5g.cm-3が用いられることになる。
【0152】
粉末の取り扱いは、優先的には、低レベルのO2及びH2Oを有する不活性雰囲気(Ar又はN2)下、グローブボックス内で実施される。
【0153】
他の代替的な実施形態によれば、ターゲットは、数mm~数cmの範囲の側方寸法を有する自己支持型ペロブスカイト結晶から製造することができる。これらの結晶は、単結晶であっても多結晶(互いに混じっているいくつかの単結晶)であってもよい。単独で、又はモザイク形態で並んで一緒に境を接するこれらの結晶は、ターゲットとして作用することができる。結晶は、形成するペロブスカイト層の組成物を有してもよい。ターゲットが、少なくとも2つの境を接する結晶から構成されているところの事例では、それらの組成物は同一であっても異なっていてもよい。
【0154】
実施形態の例示的な且つ非限定的な実施例
MAPbBr3の厚い層を製造する方法
この実施例では、最初に、1.1mmの厚さ及び25cm2の表面を有する10gの式MAPbBr3のABX3ターゲットを製造する。
【0155】
ターゲットを、AX(MABr)の粒子及びBX2(PbBr2)の粒子から製造する。
【0156】
AX粉末及びBX2粉末は市販されている。それらは、99%超(99%~99.999%)の純度を有する。これらの粉末のそれぞれは、白色である。
【0157】
粉末容器の開封及び粉末の取り扱いは、グローブボックス内で、不活性雰囲気(Ar又はN2)下、低レベルのO2及びH2Oで実施する。
【0158】
各粉末の規定質量を化学量論的に引き、その結果、混合物の最終組成物はABX3である。mTがABX3ターゲットのターゲットとする質量であるようにする。引くAX(mAX)及びBX2(mBX)のそれぞれの質量は、したがって、
mAX = mT×(MA+MX)/(MA+MB+3MX)
mBX2 = mT×(MB+2MX)/(MA+MB+3MX)
(式中、MA、MB及びMXは、それぞれ元素A、B及びXのモル質量である)
である。
【0159】
そのため、MAPbBr3の10gターゲットを調製するために、MABr2.338gの質量及びPbBr27.662gの質量をそれぞれ引かなければならないことになる。ターゲットとする堆積温度におけるそれらの飽和蒸気圧は、離れすぎない。
【0160】
任意選択で、ターゲットの組成は、化合物AXと化合物BX2との(異なる蒸発圧力に起因した)異なる昇華速度を補うために、正確な化学量論の組成から逸脱しうる。例えば、(MABr)x(PbBr2)(式中、0<1<x)ターゲットからMAPbBr3を昇華させることが可能である。AXの質量とBX2の質量とを調整して、所望のxを得る。
【0161】
2種の粉末を、ミリングボールの質量mballsがmballs≦mT≦30xmballsであり、好ましくはミリングボールの質量が粉末の総質量mTよりも15倍大きいように、ミリングカップ(ステンレス鋼製、タングステンカーバイド製又は他)内に配置する。カップのサイズの選択は、粉末:カップの量が、例えばボール及び粉末の全てがカップのおよそ1/3を満たすように選ぶよう管理する。カップは、遊星ミル内に配置されるように密閉して封止する。
【0162】
回転速度vRは高く(約300rpm)、ミリング時間はおよそ1時間である。
【0163】
次に、このようにして得た粉末を加圧して、固体ウェハを形成する。手動プレスを用いてもよい。かける圧力の大きさのオーダーは107Pa.cm-2である。使用する粉末の質量はおよそ4.5g.cm-3である。
【0164】
次に、ABX3の厚い層の堆積を、従来のCSS炉内で実施する。
【0165】
炉のArポンプ/パージのサイクルを実施して酸素を排除し、次いで炉を低圧(典型的に圧力0.001Pa<P<1Pa、例えば0.1Pa)に配置する。
【0166】
昇華による堆積を、サセプタ106及びカバー108をTターゲット=300℃(±100℃)及びT基材=200°C(±100℃)で加熱することによって実施し、昇温勾配は、0.2℃/秒から10℃/秒の間に含まれる。昇温勾配は、例えば1℃/秒である。
【0167】
ターゲットと同じ寸法の貫通孔を有する円形のターゲット及びスペーサを使用する。
【0168】
堆積時間は、ターゲットとする厚さに依存する。医療分野でのX線検出の用途のために、ターゲットとする厚さは100μm~2mmである。15分~5時間の堆積時間が、結果的に選ばれることになる。
【0169】
高圧工程を工程c)の前に加える場合、
- 高圧工程: Tターゲット約150℃、T基材約100℃、ArのP炉=105Pa(>103Pa)、期間30分、
- 工程c): Tターゲット約300℃、T基材約200℃、ArのP炉=0.1Pa(<10Pa)、期間30分
のサイクルを実施することができる。
【0170】
マンモグラフィー(直接的堆積)用のX線検出器を製造する方法
マンモグラフィー用に用いる検出器は、典型的には20x24cm2であり、18~20keV(IEC 62220-1-2:2007規格)において放射線を検出するように最適化する。
【0171】
この用途のために、可撓性基材、例えばTFTマトリックスをポリイミド支持体上に堆積させることを想定することが可能である。
【0172】
製造する方法は、
- ポリイミド上にTFTマトリックス(TFTマトリックスのピクセルのピッチは75μm)を付与する工程と、
- 原子層堆積法(ALD)によって、又は任意の他の方法によって、例えば蒸着法、陰極スパッタリング、或いは液体プロセスによる堆積によって、電子をブロックできる層(例えばNiOx又はAlOx)を堆積させる(又は重畳する)工程であって、例として、ポリマー、例えばPTAA又はポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン]をスピンコーティング法によって堆積させることが可能である、工程と、或いは
- 分子、例えばスピロ-OMeTAD(CAS: 207739-72-8)を、真空下で蒸着する工程と、
- MABr36gとPbBr2118gとを、鋼ボール600gを備えたミリングカップ内で500rpmにおいて2時間混合し、次いで続けて16個のターゲットを自動プレス中、3x108Paの圧力で加圧することによって、5x6cm2表面積及び0.7mm厚さの16個のMAPbBr3ターゲットを製造する工程と、
- 寸法20x24cm2のグラファイト炉内、16個のターゲットを基材から5mmに位置付ける工程であって、ポリイミド/TFT基材が、その剛性の欠如に起因するたわみを阻止するために、カバー上に直接締結することができる(機械的締結)、工程と、
- 500μm厚さのMAPbBr3層を、CSSによって、300℃(ターゲット)/225℃(基材)、P=0.01Paにおいて1時間30分間という条件で堆積させる工程と、
- 正孔ブロック層(TiO2:Mg、Nb2O5、CdS、C60、60PCBM、SnO2、ZnO等)及び上部電極(例えば金属製、導電透明酸化物製等)を堆積させる(又は重畳する)工程と
を含む。
【0173】
マンモグラフィー(間接的堆積)用のX線検出器を製造する方法
マンモグラフィー用に用いる検出器は、典型的に20x24cm2であり、18~20keV(IEC 62220-1-2:2007規格)において放射線を検出するために最適化する。
【0174】
この用途のために、剛性基材、例えばガラス支持体上に堆積されたTFTマトリックスを想定することが可能である。
【0175】
製造する方法は、
- ガラス基材(又は液状の水及び水蒸気に浸透性を有する任意の他の基材)を用意する工程と、
- 電子をブロックできるフルフィールドメタル電極、例えば100nmのPtを堆積させる工程と、
- MABr36gとPbBr2118gとを、鋼ボール600gを備えたミリングカップ内で500rpmで2時間混合し、次いで16個のターゲットを、3x108Paの圧力を有する自動プレス中で連続的に加圧することによって、5x6cm2表面積及び0.7mm厚さの16個のMAPbBr3ターゲットを製造する工程と、
- 16個のターゲットを、基材から5mmにある寸法20x24cm2のグラファイト炉内に位置付ける工程であって、ガラス基材/Ptを、カバー上に直接締結(機械的締結)させて、その剛性の欠如に起因するたわみを阻止することができる、工程と、
- 500μm厚さのMAPbBr3層を、CSSによって、300℃(ターゲット)/225℃(基材)、P=0.01Paにおいて1時間30分という条件で堆積させる工程と、
- TFTマトリックス(TFTマトリックスのピクセルのピッチは75μm)をガラス上に付与する工程と、
- 機械的に且つ電気的に、ガラス基材/Pt/MAPbBr3500μmを、ガラス上TFTマトリックス上にカップリングさせる工程であって、該カップリングが、導電性接着剤(例: EPOTEK301と320との混合物)、導電性バンプ、(例えばスクリーン印刷によって)局所的に堆積された導電性インク、異方性導電膜(ACF)、又は当業者に既知の任意の他の技術の手段によって達成されることになる、工程と、
- 別法により、ピクセルのマトリックスが、TFTマトリックスとカップリングさせる前にMAPbBr3層上に堆積されうる工程であって、この事例では、TFTマトリックスのピクセルを、MAPbBr3上のマトリックスのピクセルと整列させる、工程と
を含む。
【0176】
X線ラジオグラフィー(手、胸部、関節、骨折等)用の撮像装置を製造する方法
X線ラジオグラフィー用の撮像装置は、寸法42x42cm2のものであり、使用される放射線は、およそ50keV(RQA5、IEC 62220-1規格)に集中させる。
【0177】
該方法は、以下の連続工程を含む:
- その上にTFTマトリックス(ピクセルのピッチ180μm)及び電子ブロック層を堆積させる(又は重畳する)剛性(ガラス)又は可撓性(ポリイミド)支持体を用意する工程と、
- 1mm厚さの7x7cm2の、36個の正方形のターゲット(すなわち、粉末およそ800g: MABr300g、PbBr2515g)を調製する工程であって、粉末を、10倍大きい質量のボールと共に300rpmにおいて1時間、共ミリングする、工程と、
- ターゲット及び支持体/基材スタックをCSS炉内に位置付ける工程であって、スペーサが、基材をターゲットから2mmに維持する、工程と、
- MAPbBr3の0.8mmの活性層を、300℃(ターゲット)/225℃(基材)、P=0.01Paにおいて2時間という条件で堆積させる工程と、
- 正孔ブロック層(TiO2:Mg、Nb2O5、CdS等)及び上部電極(例えば金属製、導電透明酸化物製等)を堆積(又は重畳)する工程。
【0178】
リアルタイムX線撮像[例えば、動脈人工器官のインプラント(心臓の「ステント」)]用の撮像装置を製造する方法
リアルタイムX線撮像用の撮像装置は、低減した寸法(21x21cm2)のものであるが、使用する60keVの放射線は、よりエネルギー性(RQA9、IEC 62220-1規格)である。検出器の構造は(ターゲットとするサイズに適合させるためにターゲット及び炉の寸法を低減することによって)類似しており、MAPbBr3層の厚さは、およそ1.2mmである。そのため、ターゲットの厚さは1.5mmであり、堆積時間はおよそ2時間30分である。
【0179】
無機PVK(特に、広い禁制帯エネルギーギャップを有するSiヘテロ結合/PVKタンデムモジュールの上部)に基づいて光起電力モジュールを製造する方法
材料の、ターゲットとする比較的薄い厚さ(100nmから2μmの間)は、より短い堆積時間及びより低い堆積温度を要する。堆積物はより薄く、それは、粉末の床から得ることができる。更に、基材の(並びに、そのため、炉及びサセプタの全体の)表面積は、典型的に60cmx120cmと、より大きい。例えば(非制限的な例の)Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3を吸収剤材料として考えることが可能である。該方法は、異なる層の堆積を唯一記載し、(例えばP1-P3-P3相互接続によって)標準モジュール化した部分は記載していない。
【0180】
該方法は、以下の通り実施する:
- ITOの層によって末端化した高性能Siヘテロ結合を有するモジュールである基材を用意する、
- 電子輸送層(液体プロセス、ALD又は他によって堆積されたタイプNiO)を堆積させる、
- ターゲットを、500rpmにおいて、3種のCsBr粉末とFAI粉末とPbI2粉末とを共ミリングすることによって製造して、ターゲットとする化学量論における元素を含む粉末を得る、
- 1mm厚さの12x12cm2の50個のターゲットを製造し、該ターゲットはいくつかの堆積物に役立つことができる、
- Cs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3層をCSSによって、Tターゲット約275℃(±50℃)、T基材約200℃(±50℃)、ArのP炉=0.1Pa(<10Pa)、期間15分、400nmのCs0.17FA0.83Pb(Br0.17I0.83)3の昇華で、堆積させる、
- 正孔輸送層[例えばスピロ-OMeTAD(CAS: 207739-72-8)又はPTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン)タイプのもの]を堆積させる、
- ITOで作製した電極、反射防止層及びゲートを堆積させる。
【0181】
医療用途のためのガンマ線(シンチグラフィーの実施例、140keVにおける放射線)を検出するためのシンチレーターを製造する方法
シンチレーターは、放射線を間接的に検出する装置であり、前記放射線を可視光へと変形させ、これを今度は光検出器によって捕捉する。シンチレーターの使用はまた、X線(102~105eV)又はガンマ(>105eV)放射線の検出のためにもなされうる。ガンマ検出用のシンチレーターの実施例はここで付与されることになるが、原則的にX線検出についてと同じである。
【0182】
ガンマ放射線検出器は、数多くの分野において有用であり、医療(トモグラフィー)だけでなく、工業分野(非破壊試験、セキュリティーシステム)、地球物理学分野(石油探索のための土地の性質の分析)、公共の安全の分野(荷物、車両のコントロール)、基礎研究の分野においても有用である。
【0183】
医療用途のためのガンマ放射線を検出するためのシンチレーターを製造する方法(シンチグラフィーの実施例、140keVにおける放射線)を、ここで、より詳細に記載する。撮像装置は40x40cm2である。
【0184】
該方法は、
- TFTマトリックスを、その上に有機の又は非晶質のケイ素光検出器のマトリックスを堆積させる剛性支持体(ガラス)上に付与する工程と、
- 2mm厚さのMAPbBr3層をCSSによって堆積させる工程[2.5mm厚さのマンモグラフィー用のX線検出器(25個のターゲット6x6cm2の舗装材料)と同じ堆積方法を用い、堆積時間は、3時間から4時間の間に含まれる]と、
- アルミニウム保護層を陰極スパッタリングすることによって堆積させる工程と
を含む。
【符号の説明】
【0185】
1 ペロブスカイト層
10 基材
11 支持体
12 中間層
20 ターゲット
100 CSS炉
102 反応器
104 ランプ
106 サセプタ
108 カバー
112 スペーサ
114 熱電対
116 不活性ガス
122 ガス出口
【外国語明細書】