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  • 特開-装飾体の再生方法および加湿器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098505
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】装飾体の再生方法および加湿器
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/06 20060101AFI20220624BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20220624BHJP
   F24F 6/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B44C5/06 G
F24F6/00 Z
F24F6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022043728
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】519106378
【氏名又は名称】京都ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗山 智
(57)【要約】
【課題】 吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶性無機塩の結晶が析出した装飾体の使用方法であって、析出した結晶を集めて再度吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶を析出させて装飾体を形成することにより、最初とは微妙に異なる色彩・形状の結晶が析出して再度楽しむことができると同時に、結果として装飾体を長持ちさせることになる、装飾体の再生方法、および加湿器を提供する。
【解決手段】 吸水性を有する三次元形状の基材の基部に、結晶性無機塩を溶解した水溶液を吸収させて、該基材の末端に前記結晶性無機塩の結晶を析出させた装飾体の再生方法であって、前記装飾体に析出している結晶性無機塩の結晶を除去し。除去された結晶性無機塩の結晶を水に溶解して水溶液とし、装飾体の基部を該水溶液に浸して、再度三次元形状の基材の末端に結晶性無機塩の結晶を析出させる、装飾体の再生方法およびこの方法を応用した加湿器である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する三次元形状の基材の基部に、結晶性無機塩を溶解した水溶液を吸収させて、前記吸水性を有する三次元形状の基材の末端に前記結晶性無機塩の結晶を析出させた装飾体の再生方法であって、
前記装飾体の再生方法は、
前記装飾体に析出している結晶性無機塩の結晶を除去する工程A、
前記除去された結晶性無機塩の結晶を水に溶解して水溶液とする工程B、
前記結晶性無機塩の結晶が除去された装飾体の基部を前記水溶液に浸す工程Cをこの順に含み、
再度前記吸水性を有する三次元形状の基材の末端に結晶性無機塩の結晶を析出させる、装飾体の再生方法。
【請求項2】
前記工程A、工程B、工程Cを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1記載の装飾体の使用方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の装飾体の再生方法を用いる加湿器であって、
前記加湿器は、
結晶性無機塩が析出した装飾体と、
前記装飾体を収納し、水を満たす容器と。
容器の中に入れられた水とからなり、
前記装飾体に析出する結晶性無機塩の結晶からも水分を蒸発させることを特徴とする加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体の再生方法および加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内において、三次元形状を有する吸水性の基材の末端に結晶性無機塩の結晶を析出させて桜やクリスマスツリーに見立てて装飾用として用いる装飾体は知られている。この装飾体は結晶性無機塩の水溶液に三次元形状を有する吸水性の基材の基端部を浸して水を吸い上げ、基材の上部の末端に無機塩の結晶を析出させて装飾体としている(特許文献1ないし3)。結晶が析出するときの温湿度条件により結晶の形状、量などが微妙に異なり、また色素を使用している場合には結晶が着色するが着色度も温湿度条件により異なるため、全く同じ結晶体とはならない。しかし、結晶が析出した後は、結晶が散るまでその形で鑑賞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-329496号公報
【特許文献2】特開平8-2194号公報
【特許文献3】特開2016-221792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装飾体に析出している結晶性無機塩は、振動や接触により比較的容易に脱落して、装飾体の見栄えが悪くなる。下に脱落した結晶は再び装飾体に付着させることはできずなすがままになる。また、結晶なので付着性を上げることは難しい。装飾体を長持ちさせる方法が望まれている。また、その一方、同じ装飾体で微妙に異なる色彩・形状の結晶が何回でも鑑賞できるようにならないかとの要望もある。
【0005】
本発明は、吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶性無機塩の結晶が析出した装飾体の再生方法であって、析出した結晶を集めて再度吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶を析出させて装飾体を形成することにより、最初とは微妙に異なる色彩・形状の結晶が析出して再度楽しむことができると同時に、結果として装飾体を長持ちさせることになる、装飾体の再生方法を提供することを目的とする。また、その応用として再生方法を用いる加湿器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、鋭意検討した結果、特定の方法により上記課題を達成できることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、吸水性を有する三次元形状の基材の基部に、結晶性無機塩を溶解した水溶液を吸収させて、前記吸水性を有する三次元形状の基材の末端に前記結晶性無機塩の結晶を析出させた装飾体の再生方法であって、
前記装飾体の再生方法は、
前記装飾体に析出している結晶性無機塩の結晶を除去する工程A、
前記除去された結晶性無機塩の結晶を水に溶解して水溶液とする工程B、
前記結晶性無機塩の結晶が除去された装飾体の基部を前記水溶液に浸す工程Cをこの順に含み、
再度前記吸水性を有する三次元形状の基材の末端に結晶性無機塩の結晶を析出させる、装飾体の再生方法である。
【0008】
また本発明は、前記工程A、工程B、工程Cを複数回繰り返すことを特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、上記の装飾体の再生方法を用いる加湿器であって、
前記加湿器は、
結晶性無機塩が析出した装飾体と、
前記装飾体を収納し、水を満たす容器と。
容器の中に入れられた水とからなり、
前記装飾体に析出する結晶性無機塩の結晶から水分を蒸発させることを特徴とする加湿器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶性無機塩の結晶が析出した装飾体の使用方法であって、析出した結晶を集めて再度吸水性を有する三次元形状の基材の先端に結晶を析出させて装飾体を形成することにより、最初とは微妙に異なる色彩・形状の結晶が析出して再度楽しむことができると同時に、結果として装飾体を長持ちさせることになる、装飾体の再生方法、および除湿器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における一実施態様の装飾体用基材の斜視図である。
図2】本発明における一実施態様の装飾体を示す写真である。
図3】水の蒸発速度を示すグラフである。
図4】本発明における再生7回後の装飾体を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0013】
1.装飾体
まず本発明に適用する装飾体について説明する。
本発明における装飾体は、吸水性を有する三次元形状の基材と、結晶性無機塩を溶解した水溶液と、前記吸水性の基材の基端部が設置可能で前記水溶液を満たすようになされた容器とからなる。上記の三次元形状の紙基材を用いて装飾体を製造する方法は、従来から知られている方法、すなわち結晶性無機塩の水溶液に吸水性を有する三次元形状の基材の基端部を浸して水を吸い上げ、基材の上部の末端に無機塩の結晶を析出させて装飾体を得ることができる。
【0014】
(吸水性を有する三次元形状の基材)
吸水性を有する三次元形状の基材とは、結晶が析出して装飾体となる三次元の形状の骨格を有するものをいう。三次元形状を形成する吸水性の基材(以下、単に吸水性の基材または単に基材という場合がある)の素材は吸水性を有し形状保持性があれば特に限定はないが、紙であるのが汎用性があり好ましい。紙の種類は、水を吸い上げ基材の上部の末端に結晶性無機塩の結晶が析出する紙であれば特に限定はないが、たとえば、濾紙やコースター原紙などの吸収紙素材などを使用するのが好ましい。基材の厚みは、結晶が析出しても三次元形状を維持できる厚さであるのが好ましい。基材の大きさは、水溶液を吸い上げ結晶が十分析出すれば特に限定はなく、目的に合わせて決めればよいが、高さ30cm以内が好ましい。
【0015】
吸水性を有する三次元形状の基材の形状としては特に限定はないが、たとえば、花、樹木、動物や建築物などを形成したものが挙げられる。三次元形状を有する基材は、1枚または2ないし4枚の複数の切り取った紙片を組み合わせて、目的の形状の骨格を形成する。たとえば、特願2021-94174,特願2021-192040に記載されるものが使用できる。
【0016】
(結晶性無機塩を溶解した水溶液)
水溶液に用いる結晶性無機塩としては、基材の先端に結晶が析出するものであれば特に限定はなく、たとえば、酢酸ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カルシウム、および硝酸アンモニウムなどを挙げることができる。これらのうち、少なくとも一種類以上を使用することができる。好ましいのは酢酸ナトリウム、リン酸一カリウムである。
水溶液には、さらに結晶性がある塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムなどを必要に応じ添加してもよい。これらの無機塩も本発明における結晶性無機塩に含めるものとする。
【0017】
水溶液中における結晶性無機塩の量は、飽和濃度範囲内で使用されるが、水溶液中の結晶性無機塩の濃度が結晶性無機塩の飽和濃度の30%以上96%以下であるのが好ましい。より好ましくは50%以上90%以下である。30%以上であれば、基材の末端に十分に結晶が析出することができる。96%以下であれば、0℃に近い低温状態でも水溶液中で結晶が析出しにくい。種類の異なる結晶性無機塩を混合する場合は、主たる結晶性無機塩の濃度が上記範囲にあるのが好ましい。
【0018】
結晶性無機塩を溶解した水溶液にはさらに無機酸および/または有機酸を混合して最終の無機塩の結晶量を増やすことができる。
無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、ホウ酸などが挙げられる。有機酸としては、たとえば、蟻酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸などが挙げられる。好ましいのは有機酸である。特に好ましいのは、コハク酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸である。
【0019】
無機酸および/または有機酸(以下、単に酸という場合がある )の量は、好ましくは結晶性無機塩1モルに対して0.001モル以上3.0モル以下である。より好ましくは、0.01モル以上1.0モル以下である。0.001モル以上であれば、結晶性無機塩の結晶が基材の末端に析出することが明確に確認でき、3.0モル以下であれば経済的である。酸はそのまま水溶液中に添加してもよいが、5~20倍程度に希釈して添加してもよい。好ましいのは量が正確に投入できる点で後者である。
【0020】
該水溶液には香料を配合してもよい。香料としては、たとえば、ゲラニオール、シトラール、テルピネオール、l-メントール、リナロール、リモネンなどを使用することができる。これらを水中にエタノールなどの水溶性溶剤や界面活性剤などで乳化分散または可溶化して含ませることができる。
【0021】
(容器)
装飾体キットに用いられる容器は、底に結晶性無機塩を溶解した水溶液を満たす空間が形成されていればよい。従来は、紙片が2枚であり末端に結晶が析出すると倒れる可能性があるため、基材を安定した状態で支承するような、たとえば、基材を差し込むための底の十字状の切込などがある構造の容器が用いられてきた。自立することができる基材の場合には、底に結晶性無機塩を溶解した水溶液を満たす空間が形成されていればよく、従来のような特別の容器は必要ではない。容器の底の形状としては、特に正方形などの矩形状の板に限定されるものではなく、円状、楕円状などであってもよい。
【0022】
容器の材質は結晶性無機塩を溶解した水溶液を安定に保持できれば限定はなく、プラスチック製、ガラス製、ステンレス製などが挙げられる。容器の大きさ、水溶液を満たす空間の深さなどは基材の大きさや水溶液の量などによって決めればよい。
【0023】
上記の紙片には、結晶性無機塩を含ませてもよい。事前に紙片すなわち基材に結晶性無機塩を含浸させておくと、特開2021-28150号公報に記載してあるように、無機塩水溶液の吸収速度が早くなり、結晶が従来よりも著しく早く析出することができる。また、毛細管現象による水溶液の紙中での上昇する高さを向上させることができる。
【0024】
また、紙片には特定の染料を含ませるのが好ましい。紙片に染料を含ませておくと、結晶性無機塩が基材の末端に移動していくときに引きつられて移動して、その結果結晶が染料を含むことができる。そうすれば結晶が染料で染まったかのように見える。異なる色の染料を用いれば異なる色の結晶が得られる。そしてカラフルな結晶を楽しむことができる。
【0025】
このような染料としては水溶性であって、且つ紙片と反応しにくいものがよい。染料が水溶性であれば多かれ少なかれそのような傾向がある。染料としては、カチオン染料なども用いることができるが、スルフォン酸Na基、カルボン酸Na基などを含む酸性染料、直接染料などのアニオン染料が好ましい。特に好ましいのは、反応性が小さい食用色素に用いる染料である。食用色素であれば結晶と共に口に入ったとしても安全であり、実使用上好ましい。
【0026】
紙片に染料を含ませる方法としては、紙片を染料水溶液に浸漬して含浸するか、染料水溶液をスプレーして付与し、その後乾燥すればよい。染料水溶液の染料濃度を変えれば紙片への染料含有量も制御できる。
【0027】
紙片の処理温度は常温ないし50℃が好ましい。乾燥温度も常温乾燥ないし50℃が好ましい。結晶性無機塩の水溶液を作成する場合にも水溶液中における結晶性無機塩の濃度は、0.01質量%以上、5.0質量%以下が好ましい。より好ましくは0.1質量%以上、2.5質量%以下である。
【0028】
装飾体を製造する方法は、室温において基材を容器に設置し、結晶性無機塩を溶解した水溶液を容器に入れればよい。水溶液は毛細管現象で基材に吸収され、基材の先端から結晶が析出し始める。結晶は容器の中の水溶液が全部吸収されてからでも暫くは結晶が析出し続ける。基材の大きさにもよるが、結晶が完全に析出するまでの時間は通常5~10時間である。
上記のようにして、基材の末端に結晶が析出した装飾体を製造することができる。
【0029】
2.再生方法
本発明における装飾体の再生方法は、前記装飾体に析出している結晶性無機塩の結晶を除去する工程A、前記除去された結晶性無機塩の結晶を水に溶解して水溶液とする工程B、前記結晶性無機塩の結晶が除去された装飾体の基部を前記水溶液に浸す工程Cをこの順に含み、再度前記吸水性を有する三次元形状の基材の末端に結晶性無機塩の結晶を析出させる、装飾体の再生方法である。
【0030】
本発明において、再生とは、再度結晶を析出させたときにその結晶量が最初の結晶量の80%以上となるものをいう。好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。最も好ましいのは100%以上である。100%以上というのは最初の結晶量よりも後の結晶量の方が多い場合をいう。
【0031】
再生させる場合においては、水を用いて行う。装飾体を作成するばあいには、無機塩を含侵する水溶液を用いるが、その後の再生をする場合には通常水のみで実施するのが好ましい。常識的には無機塩を入れてやり直さなければいけないのであるが、水だけでできることを見出したものである。
【0032】
工程Aにおける、結晶性無機塩の結晶を除去するとは、装飾体に析出した結晶を機械的に落とす、装飾体の上から水をかけて容器の中に落とす、容器に水を入れて毛細管現象で水を吸い上げ徐々に析出している結晶を溶解しておとすことなどが挙げられるが、特に限定はない。
【0033】
工程Bは工程Aに連動しているが、工程Bにおける結晶性無機塩の結晶を水に溶解して水溶液とするとは、落とした結晶を水に溶解する、装飾体の上から水をかけて容器の中に落としてそのまま水溶液とする、容器に水を入れて毛細管現象で水を吸い上げ徐々に析出している結晶を溶解して容器の中に落として水溶液とすることなどが挙げられるが、いずれの方法でもよい。
【0034】
本発明は、さらに工程A、工程B、工程Cを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1記載の装飾体の使用方法である。
複数回とは、2回以上、好ましくは3回以上、特に好ましくは5回以上である。繰り返し回数が多いほど好ましいが、回数を増やしていくと徐々に結晶の量が減ってくる。
【0035】
最初の装飾体を作製する場合に酸の種類や量を選定することにより、再生回数を制御することができる。この場合好ましいのは有機カルボン酸であり、無機酸を併用してもよいが、好ましいのは有機カルボン酸のみである。有機カルボン酸は装飾体のところで記載したものが挙げられる。有機カルボン酸の量は、好ましくは結晶性無機塩1モルに対して0.001モル以上0.5モル以下である。より好ましくは、0.002モル以上0.1モル以下である。0.001モル以上であれば、結晶性無機塩の結晶が基材の末端に複数回析出することが明確に確認でき、0.5モル以下であれば経済的である。
【0036】
また、再生を重ねていくと、紙の表面に硬い無機塩(結晶ではない)が付着してきて、析出する結晶も硬くなり析出量も減ってくる。その場合には、装飾体から結晶を落とし、水の中に浸漬して硬い結晶や紙の中の無機塩を水に溶解し、乾燥すると、再度結晶が末端に析出するようになる。その場合には、上記の無機塩を水の中に入れて補足することができる。
【0037】
このようにして再生を繰り返し何回も楽しむことができる。結晶析出は、温度や湿度の条件、また空気の対流などにより結晶形、結晶量、色合いなどが微妙に変わり、その変化をも楽しむことができる。
加える水の量によっても結晶や色の出具合が変わってきて、再生の度に異なる風景を楽しむことができる。
さらに異なる色の結晶が析出する基材を組み合わせて、上記の再生を繰り返すと、色合いが徐々に変わり、繰り返すごとに微妙に色が変化していく様子を楽しむことができる。
【0038】
3.加湿器
本発明の加湿器は、結晶性無機塩が析出した装飾体と、前記装飾体を収納し、水を満たす容器と、容器の中に入れられた水とからなり、前記装飾体に析出する結晶性無機塩の結晶からも水分を蒸発させることを特徴とする加湿器である。
【0039】
本発明の加湿器は、装飾体が容器中の水を吸い上げ末端に析出している結晶や基材から水分が蒸発し、その周辺の湿度を上昇させることができる。上記の再生方法を利用することで本発明の加湿器が可能となった。
容器に結晶が析出している装飾体を作製しておけば、水を入れるだけでよい。水を入れると析出している結晶は崩れていくが、さらに結晶が析出して装飾体となる。結晶が湿ったままであると、結晶は崩れることなくそのまま水分が蒸発する。容器中の水がなくなり結晶が乾燥した状態になったときに容器に水を入れると水を吸収すると結晶が崩れていく。このように水を入れる時期を選択することによって結晶体を再生するか、そのままの装飾体でいくかがきまる。装飾体の再生を楽しみながら加湿することができる。
【0040】
電気を使わない簡便な加湿器として、吸水紙を用いた加湿器が知られている。吸水紙に装飾性をもたせたものもあるが、動かず同じ形状を維持している。本発明の加湿器の場合は、結晶が析出したり、消滅したり、繰り返すことができ、しかも水の蒸発速度は変わらないので、動的な装飾体を有する加湿器となる。
【実施例0041】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない
【0042】
(製造例1)(結晶性無機塩の水溶液の製造)
200mLビーカーに、リン酸一カリウム 18.6g、塩化ナトリウム 0.8gと「PEG1000」(ポリエチレングリコール、数平均分子量1000)の10重量%水溶液 0.8g、コハク酸の1重量%水溶液 5g、クエン酸の1重量%水溶液 5g および水 69.8gを入れ室温下スターラーで1時間攪拌して固形物を溶解して無色透明液状の結晶性無機塩の水溶液を得た。
【0043】
(製造例2)(結晶性無機塩と染料を含んだ染料水溶液の製造)
100mlのビーカーに結晶性無機塩であるリン酸一カリウム0.2gと赤色106号(食用色素)の1質量%水溶液1gを水20gに加えて、室温下スターラーで3時間攪拌して赤色透明液状の結晶性無機塩と染料を含んだ染料水溶液を得た。
【0044】
(実施例1)
コースター原紙(厚み0.8mm)を用いて、三次元の形状を形成する吸水性の紙片を樹木状(高さ8cm、幅5.2cm)に切り取った後、枝となるように端部から切り取りして、組み合わせれば木を示す形状となるように作成した。これを3枚作成した。この紙片を上記の染料水溶液に30分間浸して取り出し、室温で30分放置した後、37℃の乾燥機の中に入れ1時間乾燥して、結晶性無機塩を含んだ吸水性の紙片3枚を得た。3枚の紙片を組み合わせて装飾体用基材を作成した。この装飾体用基材を図1に示した。
【0045】
アクリル製の四角形容器(8cm×8cm×高さ4cm)を25℃の室内に準備して、この中に製造例1で製造した水溶液15gを注いだ。この液の中に上記のように形成した基材を直立させて置いた。すぐに根元から液が浸透し始めた。室内の温度は20℃であり、空調設備を稼働して部屋内の空気を循環させた。約6時間後、図2に示すような、樹木の全体はピンク色の無機塩の結晶で覆われた桜のような装飾体が得られた。
図2は、本発明の一実施態様の装飾体を示す写真である。これと同じ装飾体を作製し、結晶を落として結晶の量を測ったところ、結晶量は2.12gであった。
【0046】
別の装飾体を用いて、再生方法と除湿器の評価を行った。
さらに装飾体の入っている四角形容器に水50gを入れた(実施例1)。比較として、上記装飾体として用いた基材と同じ基材3本を用いて同様に三次元形状の装飾体用基材を作製し、四角形容器に入れて水50gを加えた(比較例1)。さらに四角形容器に基材を入れずに水50gのみを入れた(比較例2)。これらを室内に放置して水の蒸発する速度を調べた。この結果を図3に示した。図3は、水の蒸発速度を示すグラフである。
【0047】
装飾体を入れた容器の水の蒸発速度は、基材のみの場合とほぼ同等な水の蒸発速度であり、結晶の析出によっても水の蒸発速度は落ちていないことがわかる。また、水を入れたのみの場合に比較すると格段に水が早く蒸発しており、加湿器としての性能を有することが確認できた。
【0048】
容器から水が蒸発してなくなった後、再度水50gを加える方法で、7回同じ操作を行った。装飾体は水を加える毎に結晶が崩れていき、その後新たに結晶が析出して同様な装飾体を形成した。7回後の装飾体の写真を図4に示した。7回後の結晶を落として結晶量を測定したところ、結晶量は2.13gであった。最初の結晶量の100%が結晶として析出していた。
また、7回目の水の蒸発速度も1回目と変わらないことも確認した。
本発明の再生方法および動的な装飾体を有する加湿器としても有効であることを確認した。
図1
図2
図3
図4