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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098530
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】サーモスタット装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20220627BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20220627BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20220627BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
F16K31/68 Q
F16K27/00 C
F16K27/02
F01P7/16 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211952
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】熊代 毅
【テーマコード(参考)】
3H051
3H057
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB04
3H051CC11
3H051CC15
3H051FF02
3H057AA02
3H057BB49
3H057CC13
3H057DD03
3H057EE02
3H057FA02
3H057FA22
3H057FC05
3H057HH03
3H057HH17
(57)【要約】
【課題】ラジエータ側パイプの向きを変更するのが容易で、コストを抑制できるサーモスタット装置を提供する。
【解決手段】ハウジング2がラジエータ側パイプ3bを有する第1ハウジング部材3と、第1ハウジング部材3にバヨネット構造により回転締結される第2ハウジング部材4とを有し、バヨネット構造が、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4のいずれか一方に、周方向に並んで形成された複数の爪部3gと、いずれか他方に形成されて爪部3gが係合する複数の係止部4mとを有し、ラジエータ側パイプ3bが第1ハウジング部材3と前記第2ハウジング部材4の締結時の回転軸Xの一方側から見て、回転軸Xに対して傾斜する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路の途中に配置されて、内側に収容室が形成され、前記収容室内に前記冷却液を還流させる第1管路と第2管路を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記収容室と前記第1管路との間の内周壁に形成される弁座と、
前記収容室に収容され、前記冷却液の温度に依存して、軸方向に移動するサーモエレメントと、
前記サーモエレメントの軸方向の移動に伴って前記弁座に離着座する制御バルブと、
前記制御バルブを前記弁座側に付勢するバネ部材とを備え、
前記ハウジングは、
内側に前記第1管路が形成されるラジエータ側パイプを有して前記弁座が形成される第1ハウジング部材と、前記第1ハウジング部材にバヨネット構造により回転締結されて、前記第2管路が形成される第2ハウジング部材とを有し、
前記バヨネット構造は、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材のいずれか一方に、周方向に並んで形成された複数の爪部と、いずれか他方に形成されて前記爪部が係合する複数の係止部とを有し、
前記ラジエータ側パイプは、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材の締結時の回転軸の一方側から見て、前記回転軸に対して傾斜するサーモスタット装置。
【請求項2】
前記ハウジングの外周面であって、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材のいずれか一方に、目盛りが形成され、いずれか他方に前記目盛りを指す目印が形成されており、
前記目盛りは、前記爪部と前記係止部のいずれか一方に対応して設けられ、
前記目印は、複数の前記爪部のうちの任意の一つが複数の前記係止部のうちのどの係止部に係合したのかを示す請求項1に記載のサーモスタット装置。
【請求項3】
前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とが前記バヨネット構造により回転締結された状態で、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とを貫通するピン部材を備える請求項1または2に記載のサーモスタット装置。
【請求項4】
前記第2ハウジング部材は、前記バネ部材の一端を支持するバネ受け部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載のサーモスタット装置。
【請求項5】
前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材との間をシールするシール部材を備え、前記爪部は、前記シール部材よりも外側に配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載のサーモスタット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車に搭載される内燃機関(以下、エンジンとも言う。)とラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路の途中に配置されて、前記冷却液温度を適正に制御するサーモスタット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモスタット装置は、エンジンの入口側または出口側に配置され、エンジンとラジエータとの間の循環流路内を流れる冷却液の温度変化を感知して膨張・収縮する熱膨張体(ワックス)を内蔵するサーモエレメントを備え、この熱膨張体の膨張・収縮に伴う体積変化により、制御バルブ(弁体)の開閉を行うことで、冷却液を所定の温度に制御するように機能する。
【0003】
すなわち、熱膨張体を内蔵するサーモエレメントと制御バルブ等を含むサーモ動作ユニットは、ハウジング内に収容される。そして、冷却液温度が低い場合には制御バルブは閉じられて、冷却液はラジエータを経由せずに、バイパス通路を介して循環される。また、冷却液温度が高くなった場合は、制御バルブが開くことで冷却液はラジエータを経由して循環される。これにより、エンジン内の冷却水路であるウォータジャケット内を通る冷却液の温度が適正な状態に制御される。
【0004】
図6は、特許文献1に示されたサーモスタット装置を示している。図6に示すように、サーモスタット装置の中には、循環流路の配置の都合上、ラジエータに通じるラジエータ側パイプ11aがサーモエレメント12に対して、所定角度曲げた状態で形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-301262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のサーモスタット装置が配置される自動車等のエンジンルーム内は、そのレイアウトが車種ごとに異なることから、循環流路を形成するホースや管路の配置位置も異なるものとなる。これに伴い、サーモスタット装置のラジエータ側パイプ11aの曲げ方向の最適な向きは、それぞれの車種に応じて異なるものとなる。
【0007】
しかしながら、図6に示すように、ラジエータ側パイプ11aが形成される第1ハウジング部材11を第2ハウジング部材(図示せず)にボルトで固定して、これらの内側にサーモエレメント12、制御バルブ12b、バネ部材14等を収容するサーモスタット装置では、ラジエータ側パイプ11aの最適な曲げ方向の向きを、車種に合わせて変えるのが難しい。
なぜなら、ラジエータ側パイプ11aの向きを変更するには、第1ハウジング部材11を形成するための金型をラジエータ側パイプ11aの向きに合わせて個別に用意する必要があるためである。このために、サーモスタット装置の製造コストが高くなる。
【0008】
この発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ラジエータ側パイプの向きを変更するのが容易で、コストを抑制できるサーモスタット装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決する本発明に係るサーモスタット装置は、エンジンとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路の途中に配置されて、内側に収容室が形成され、前記収容室内に前記冷却液を還流させる第1管路と第2管路を有するハウジングと、前記ハウジングの前記収容室と前記第1管路との間の内周壁に形成される弁座と、前記収容室に収容され、前記冷却液の温度に依存して、軸方向に移動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの軸方向の移動に伴って前記弁座に離着座する制御バルブと、前記制御バルブを前記弁座側に付勢するバネ部材とを備える。
また、前記サーモスタット装置の前記ハウジングは、内側に前記第1管路が形成されるラジエータ側パイプを有して前記弁座が形成される第1ハウジング部材と、前記第1ハウジング部材にバヨネット構造により回転締結されて、前記第2管路が形成される第2ハウジング部材とを有する。さらに、前記バヨネット構造は、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材のいずれか一方に、周方向に並んで形成された複数の爪部と、いずれか他方に形成されて前記爪部が係合する複数の係止部とを有する。そして、前記ラジエータ側パイプは、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材の締結時の回転軸の一方側から見て、前記回転軸に対して傾斜する。
【0010】
前記構成によれば、複数の爪部のうちの任意の一つを係合する係止部を変えることで、ラジエータ側パイプの向きを変更できる。すなわち、ラジエータ側パイプの向きを変更するに当たり、係合する爪部と係止部の組み合わせを変更するだけでよく、従来のように、ラジエータ側パイプの向きを変えた第1ハウジング部材を金型から作り直す必要がなく、コストを抑制できる。
【0011】
また、前記サーモスタット装置では、前記ハウジングの外周面であって、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材のいずれか一方に、目盛りが形成され、いずれか他方に前記目盛りを指す目印が形成されており、前記目盛りが、前記爪部と前記係止部のいずれか一方に対応して設けられ、前記目印が、複数の前記爪部のうちの任意の一つが複数の前記係止部のうちのどの係止部に係合したのかを示すとしてもよい。このようにすると、設定したいラジエータ側パイプの向きに応じて、目印を目盛りに合わせればよく、ラジエータ側パイプの向きを容易に設定できる。
【0012】
また、前記サーモスタット装置は、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とが前記バヨネット構造により回転締結された状態で、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とを貫通するピン部材を備えてもよい。このようにすると、ピン部材により第1ハウジング部材と第2ハウジング部材の相対回転を防止できるので、第1ハウジング部材と第2ハウジング部材との締結が意図せず解除されてしまうのを確実に防止できる。
【0013】
また、前記サーモスタット装置の前記第2ハウジング部材が、前記バネ部材の一端を支持するバネ受け部を有してもよい。このようにすると、制御バルブが弁座に着座した状態で、バネ部材によって爪部が係止部に押し付けられる。このようにすると、ピン部材等の周り止め構造を設けなくても、第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とが容易に相対回転して、分解するのを防止できる。
【0014】
また、前記サーモスタット装置は、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材との間をシールするシール部材を備え、前記爪部が、前記シール部材よりも外側に配置されていてもよい。このようにすると、爪部が冷却液に漬からないので、ハウジングを合成樹脂で形成した場合に、耐久性の上で有利である。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るサーモスタット装置によると、ラジエータ側パイプの向きを変更するのが容易で、コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置の中央断面図である。
図2図2は、図1に示すサーモスタット装置の第1ハウジング部材の平面図である。
図3図3は、図1に示すサーモスタット装置の第2ハウジング部材の平面図である。
図4図4は、図1に示すサーモスタット装置の第1ハウジング部材の側面図である。
図5図5は、図1に示すサーモスタット装置の第1ハウジング部材と第2ハウジング部材を分解した状態を示す斜視図である。
図6図6は、従来のサーモスタット装置を部分的に示した一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置について、図1から図5を参照して説明する。本実施の形態に係るサーモスタット装置1は、エンジンの冷却液の入口側に配置される入口制御型である。
より具体的には、このサーモスタット装置1は、ラジエータを経由した冷えた冷却液をエンジンに循環させる循環流路と、エンジンで温められた冷却液をラジエータを経由させずにエンジンに循環させるバイパス通路の交差部に配置され、エンジンへ冷却液を送り込むウォータポンプに取り付けられている。そして、ラジエータによって冷却された冷却液と、エンジンによって加熱されてバイパス通路を経由する冷却液を混合して、エンジンに供給する冷却液温度を適正に制御する。
【0018】
なお、以下においては説明の便宜上、図1に示したサーモスタット装置1の姿勢において、図面上の上および下を、そのまま単に「上」「下」と表現する。
この実施の形態においては、サーモスタット装置1の外郭を構成するハウジング2は、共に合成樹脂素材により成形された第1ハウジング部材3と、第2ハウジング部材4とにより構成される。
【0019】
前記第1ハウジング部材3は、ラジエータに通じる管路に接続されるラジエータ側パイプ3bを有し、その内側にラジエータを経由した冷えた冷却液をハウジング2内の後述する収容室4aへと導く第1管路3aが形成されている。
【0020】
また、第2ハウジング部材4は、有底筒状で内側に後述のサーモエレメント5aを収容する収容室4aが形成される本体部40と、本体部40の底部から下方へ延びてバイパス通路に通じる管路に接続されるバイパス通路側パイプ4dとを有する。
本体部40の側部には、サーモスタット装置1をウォータポンプに接続するための接続部4eが設けられる。この接続部4eには、ハウジング2内の冷却液をウォータポンプへ供給する第2管路4bの一端が開口する。
さらに、バイパス通路側パイプ4dの内側に、エンジンによって熱せられた冷却液を、ラジエータを経由させずにハウジング2内へと導く第3管路4cが形成されている。
【0021】
ウォータポンプにサーモスタット装置1を接続ための接続部4eは、第2管路4bの開口縁から径方向外側へ張り出すようにフランジ状に設けられ、この接続部4eに、複数の締結ボルトの挿通孔4f(図5参照)が形成されている。そして、接続部4eには、第2管路4bの開口を囲むようにして、環状のガスケット4g(図1参照)が取り付けられている。
【0022】
ハウジング2には、サーモ動作ユニット5が収容される。このサーモ動作ユニット5は、冷却液の温度に依存して膨張・収縮する熱膨張体(ワックス)を内蔵する円筒状のサーモエレメント(感温部)5aと、サーモエレメント5aの軸心に沿って配置されて前記熱膨張体の膨張および収縮によりサーモエレメント5aに出入りするピストン5bとを有する。
前記ピストン5bの上端に位置する先端部は、第1ハウジング部材3内の中央上部に形成されたシャフト支持部3cに嵌め込まれ、ピストン5bのハウジング2に対する上方への移動が規制される。
これにより、サーモエレメント5aが周囲の冷却液によって温められて内部の熱膨張体が膨張すると、サーモエレメント5aが軸方向下方へ移動してピストン5bがサーモエレメント5aから退出し、サーモ動作ユニット5が伸長する。反対に、サーモエレメント5aが周囲の冷却液によって冷やされて内部の熱膨張体が収縮すると、サーモエレメント5aが軸方向上方へ移動してピストン5bがサーモエレメント5aに進入し、サーモ動作ユニット5が収縮する。
このように、円筒状のサーモエレメント5aは、冷却液の温度に依存して、収容室4a内を軸方向に移動するように動作する。
【0023】
また、サーモスタット装置1は、サーモエレメント5aの上部に取り付けられた円板状の制御バルブ(弁体)5cと、この制御バルブ5cを上方へ付勢するバネ部材5dとを備える。
ハウジング2の内周には、環状の弁座3dが形成されており、この弁座3dに制御バルブ5cが離着座する。弁座3dは、第1管路3aと収容室4aとの間に位置する。そして、制御バルブ5cが弁座3dに着座すると、収容室4aを介した第1管路3aと第2管路4bとの連通が遮断され、ラジエータからウォータポンプへ向かう冷却液の流れが阻止される。反対に、制御バルブ5cが弁座3dから離座すると、収容室4aを介した第1管路3aと第2管路4bとの連通が許容され、冷却液がラジエータからウォータポンプへ向けて流れる。
また、第2ハウジング部材4における本体部40の底部には、第3管路4cの一端が開口し、この開口を取り囲むようにガイド部4hが起立する。このガイド部4hは、筒状で内側にサーモエレメント5aが軸方向へ移動自在に挿入される。ガイド部4hには、横孔4iが形成されており、バイパス通路からの冷却液が、第3管路4c、横孔4i、収容室4a、及び第2管路4bを通じてウォータポンプへ導出される。
さらに、ガイド部4hの外周に、バネ受け部4lが設けられ、このバネ受け部4lと制御バルブ5cとの間に、バネ部材5dが介装される。本実施の形態において、バネ部材5dは、コイルバネであり、サーモエレメント5aとガイド部4hを取り囲み、制御バルブ5cとバネ受け部4lとの間に圧縮された状態でセットされる。
【0024】
したがって、前記したバネ部材5dは、第1ハウジング部材3に形成された環状の弁座3dに対して、円板状の制御バルブ5cを押し当てるように付勢力を与えている。
また、前記したガイド部4hによって、サーモエレメント5aの下部が摺動自在に支持される。これにより、サーモエレメント5aの下部付近の径方向の振れを効果的に防止し、サーモエレメント5aの軸方向に沿った円滑な移動動作を実現させている。
【0025】
以上のように構成されたサーモスタット装置1によると、バイパス通路側から第3管路4cに供給される冷却液は、主にサーモエレメント5aに向かって供給される。
そこで、バイパス通路側からの冷却液の温度が上昇すると、サーモエレメント5aに内蔵された熱膨張体が膨張して、前記ピストン5bがサーモエレメント5aから退出し、制御バルブ5cがバネ部材5dの付勢力に抗してサーモエレメント5aとともに下方へ移動して、弁座3dから離座(開弁)する。
これにより、第1管路3aからのラジエータを経由した冷却液がハウジング2内へと導入され、第3管路4cから導入された冷却液と混合されて、第2管路4bからウォータポンプを介してエンジン側へ送り込まれる。
【0026】
反対に、バイパス通路側からの冷却液の温度が低下すると、サーモエレメント5aに内蔵された熱膨張体が収縮して、前記ピストン5bがサーモエレメント5a内に進入し、制御バルブ5cがバネ部材5dの付勢力に従ってサーモエレメント5aとともに上方へ移動して、弁座3dに着座(閉弁)する。
これにより、第1管路3aからハウジング2内への冷却液の流入が阻止されて、第3管路4cから導入されたバイパス通路側からの冷却液が第2管路4bからウォータポンプを介してエンジン側へ送り込まれる。
このように、冷却液の温度に応じてサーモ動作ユニット5が動作して制御バルブ5cを開閉することで、エンジンのウォータジャケットを通る冷却液の温度を適正な温度に制御することができる。
【0027】
図2から図5は、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4が分解された状態を示しており、これらの図は、主に両者を着脱可能にするバヨネット機構について示している。図4に示すように、第1ハウジング部材3は、その下端部に位置し、第2ハウジング部材4の本体部40に挿入される筒体3fと、この筒体3fの上端から外方へ張り出す環状の鍔部3eとを有する。そして、図1に示すように、筒体3fの下端部内周に、環状の弁座3dが形成されている。
【0028】
また、第2ハウジング部材4は、本体部40の上端部に位置し、内側に第1ハウジング部材の筒体3f及び鍔部3eが挿入される外筒部40aを有する。外筒部40aの内径は、上側が下側よりも大きく、内径の変わる部分に段差40bが形成されている。この段差40bよりも下側の外筒部40aの内径は、筒体3fの外径と同じか若干大きく、鍔部3eの外径よりも小さい。このため、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とを組み立てた状態で、外筒部40aの段差40bよりも下側まで筒体3fが挿入され、鍔部3eは段差40bよりも上側に位置する。この段差40bと鍔部3eとの間に、シール部材6が配置される。
【0029】
図2に示すように、この実施の形態においては、第1ハウジング部材3の前記鍔部3eの外周に、外側に向かって突出形成される4つの爪部3gが鍔部3eの周方向に等間隔で四つ形成されている。すなわち、前記爪部3gは、鍔部3eの外周に沿って90度間隔で形成されている。
【0030】
一方、第2ハウジング部材4の段差40bよりも上側の外筒部40a内周には、図3および図5に示すように、前記爪部3gが挿入される挿入溝4jと、これに連なる係合溝4kが外筒部40aの周方向に等間隔で四つ形成されている。すなわち、挿入溝4j及び係合溝4kは、外筒部40aの内周に沿って90度間隔で形成されている。そして、図5に示すように、挿入溝4jは、外筒部40aの上端から下方へ軸方向に延び、係合溝4kは、挿入溝4jの下端から外筒部40aの周方向片側へ延びている。
挿入溝4jの横幅は、爪部3gの横幅と同じか若干大きく、係合溝4kの縦幅は、爪部3gの厚みと同じか若干大きい。これにより、爪部3gを挿入溝4jの上端開口から挿入溝4j内へ挿し込み、挿入溝4jの下端部から係合溝4k側へスライドできる。そして、係合溝4kの上側の壁面は、係合溝4kに挿入された爪部3gが上方へ抜けるのを防ぐ係止部4mとなっている。
図3および図5に示したように、本実施の形態では、平面視において、係合溝4kが挿入溝4jから反時計回りの方向へ延びているので、第1ハウジング部材3の各爪部3gを、第2ハウジング部材4の各挿入溝4jに挿入し、第2ハウジング部材4に対して、第1ハウジング部材3を若干反時計回りに若干回転させることにより、前記各爪部3gが係止部4mによって係止される。このように、爪部3gと係止部4mは、バヨネット構造を構成し、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4は、バヨネット構造により結合される。
なお、本実施の形態において、結合時(締結時)の第1ハウジング部材3の第2ハウジング部材4に対する回転方向は、反時計回りであるが、時計回りであってもよいのは勿論である。
【0031】
前述のように、第1ハウジング部材3には、弁座3dが形成されており、第2ハウジング部材4には、制御バルブ5cを弁座3d側へ付勢するバネ部材5dを支えるバネ受け部4lが設けられている。
これにより、第1ハウジング部材3は、バネ部材5dによって弁体5cを介して第2ハウジング部材4に対して上向きに付勢され、その付勢力によって爪部3gが係止部4mに押し付けられる。このように、爪部3gと係止部4mとの当接面には、バネ部材5dによる荷重が作用するが、爪部3g及び係止部4mは、その荷重に耐えうる強度を有する。
【0032】
また、サーモスタット装置1は、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とを周り止めするピン部材7を備える。より詳しくは、第1ハウジング部材3の鍔部3eと、第2ハウジング部材4の外筒部40aには、ピン挿通孔3h,4nがそれぞれ形成されている。これらのピン挿通孔3h,4nは、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とがバヨネット構造にて締結された状態で、同一直線状に並ぶように配置されている。したがって、第2ハウジング部材のピン挿通孔4nから第1ハウジング部材3のピン挿通孔3hに達するようにピン部材7を挿入することで、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4と相対回転が確実に阻止される。
【0033】
また、図2,5に示すように、第1ハウジング部材3のラジエータ側パイプ3bの中心を通る中心線Yは、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とのバヨネット締結時の回転軸Xに対し、傾斜して配置されている。これにより、ユーザーが複数の爪部3gのうちの任意の一つに係合する係止部4mを変更すれば、ラジエータ側パイプの向きが変更される。ここでいう係合とは、互いに係わり合って止まることであり、係止部4mに対して爪部3gが引っ掛かった状態で止まることを意味する。
より詳しくは、本実施の形態では、爪部3gと係止部4mがそれぞれ90度間隔で4ずつ設けられる。4つの爪部及び係止部を識別するため、図2中、一つの任意の爪部から反時計回りに、第1爪部a、第2爪部b、第3爪部c、第4爪部dとし、図3中、一つの任意の係止部から反時計回りに、第1係止部e、第2係止部f、第3係止部g、第4係止部hとする。そして、第1爪部aと第1係止部e、第2爪部bと第2係止部f、第3爪部cと第3係止部g、第4爪部dと第4係止部hを係合した状態でのラジエータ側パイプ3bの位置(向き)を基準位置とする。
すると、第1爪部aと第2係止部f、第2爪部bと第3係止部g、第3爪部cと第4係止部h、第4爪部dと第1係止部eを係合した場合、ラジエータ側パイプ3bの位置が基準位置から回転軸Xを中心に90度回転した位置(90度回転位置)に移動する。同様に、第1爪部aと第3係止部g、第2爪部bと第4係止部h、第3爪部cと第1係止部e、第4爪部dと第2係止部fを係合した場合、ラジエータ側パイプ3bの位置が基準位置から回転軸Xを中心に180度回転した位置(180度回転位置)に移動する。同様に、第1爪部aと第4係止部h、第2爪部bと第1係止部e、第3爪部cと第2係止部f、第4爪部dと第3係止部gを係合した場合、ラジエータ側パイプ3bの位置が基準位置から回転軸Xを中心に270度回転した位置(270度回転位置)に移動する。
このように、係合する爪部3gと係止部4mの組み合わせを変更することにより、一つの第1ハウジング部材4を利用してラジエータ側パイプ3bの向きを90度単位で変えられる。この場合、爪部3gが形成される鍔部3eと係止部4mが形成される外筒部40aの一方に180度の角度をもってピン挿通孔を二つ形成し、他方に90度の角度をもってピン挿通孔を二つ形成すれば、ラジエータ側パイプ3bが基準位置、90度回転位置、180度回転位置、270度回転位置のいずれにある場合であっても、ピン部材7による周り止めが可能となる。
【0034】
また、図2に示すように、第1ハウジング部材3の鍔部3eの上面であって、第1爪部aと第2爪部bと対応する位置に、それぞれ異なるマーク3i,3jが施され、これらによって目盛りMが構成されている。一方、第2ハウジング部材4の外筒部40a外周であって、第2係止部fに爪部3gを案内する挿入溝4jに対応する位置に、目印4p(図3)が施されている。
これにより、第2爪部bに対応するマーク3jを目印4pに合わせて第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4を締結すれば、ラジエータ側パイプ3bが基準位置に配置され、第1爪部aに対応するマーク3iを目印4pに合わせて第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4を締結すれば、ラジエータ側パイプ3bが90度回転位置に配置される。
このように、第2ハウジング部材4側の目印4pに、第1ハウジング部材3側の丸印で示すマーク3i、または三角印で示すマーク3iを合わせて、バヨネット結合することで、ラジエータ側パイプ3bの向きを、前記した基準位置、または90度回転位置に設定できる。
【0035】
以上に説明したように、本実施の形態に係るサーモスタット装置1は、エンジンとラジエータとの間で冷却液を循環させる循環流路の途中に配置されて、内側に収容室4aが形成され、収容室4a内に冷却液を還流させる第1管路3aと第2管路4bを有するハウジング2と、ハウジング2の収容室4aと第1管路3aとの間の内周壁に形成される弁座3dと、収容室4aに収容されて冷却液の温度に依存して軸方向に移動するサーモエレメント5aと、サーモエレメント5aの軸方向の移動に伴って弁座3dに離着座する制御バルブ5cと、制御バルブ5cを弁座3d側に付勢するバネ部材5dとを備える。
また、ハウジング2は、内側に第1管路3aが形成されるラジエータ側パイプ3bを有して弁座3dが形成される第1ハウジング部材3と、第1ハウジング部材3にバヨネット構造により回転締結されて、第2管路4bが形成される第2ハウジング部材4とを有する。バヨネット構造は、第1ハウジング部材3に、周方向に並んで形成された複数の爪部3gと、第2ハウジング部材4に形成されて爪部3gが係合する複数の係止部4mとを有する。そして、ラジエータ側パイプ3bは、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4の締結時の回転軸Xの一方側から見て、回転軸Xに対して傾斜する。
【0036】
前記構成によれば、複数の爪部3gのうちの任意の一つを係合する係止部4mを変えることで、ラジエータ側パイプ3bの向きを変更できる。すなわち、ラジエータ側パイプ3bの向きを変更するに当たり、係合する爪部3gと係止部4mの組み合わせを変更するだけでよく、従来のように、ラジエータ側パイプ11aの向きを変えた第1ハウジング部材を金型から作り直す必要がなく、コストを抑制できる。
【0037】
さらに、前記構成によれば、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とを締結するのにバヨネット構造を利用している。このため、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とを若干の相対回転により締結できるので、例えば、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とをボルト、溶接、溶着等で締結する場合と比較して、部品数が少なくて済み、大掛かりな装置も不要であるので、容易且つ安価に締結できる。
【0038】
また、本実施の形態のサーモスタット装置1では、ハウジング2の外周面であって、第1ハウジング部材3に目盛りMが形成され、第2ハウジング部材4に目盛りMを指す目印4pが形成されている。そして、目盛りMは、爪部3gに対応して設けられ、目印4pは、複数の爪部3gのうちの任意の一つが複数の係止部4mのうちのどの係止部に係合したのかを示す。
【0039】
前記構成によれば、設定したいラジエータ側パイプ3bの向きに応じて、目印4pを目盛りMに合わせればよく、ラジエータ側パイプ3bの向きを容易に設定できる。
なお、本実施の形態では、目盛りMが、三角印のマーク3iと、丸印のマーク3jにより形成される。これにより、第1ハウジング部材3を樹脂製で、射出成型する場合に目盛りMを形成しやすいが、目盛りMを構成するマークは適宜変更できる。例えば、目盛りMは、数字であっても、一本線や二本線で構成されていても、縦線と横線で構成されていてもよい。
さらに、本実施の形態では、爪部3gが4つであるのに対し、これに対応する目盛りMのマークは二つで、目印4pを一方のマークに合わせることで、ラジエータ側パイプ3bの向きが基準位置、90度回転位置の何れかに設定される。しかし、4つの爪部3gに対し、それぞれに対応するマークを形成して目盛りMとしてもよいのは勿論である。また、爪部3g及び係止部4mの数は、4つより多くても少なくてもよい。また、第1ハウジング部材3に係止部4mを形成するとともに第2ハウジング部材4に爪部3gを形成しても、目盛りMを係止部4m側に設けるとともに目印4pを爪部3g側に設けてもよい。
【0040】
また、本実施の形態のサーモスタット装置1は、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とがバヨネット構造により回転締結された状態で、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とを貫通するピン部材7を備える。これにより、ピン部材7により第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4の相対回転を防止できるので、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4との締結が意図せず解除されてしまうのを確実に防止できる。
なお、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4との相対回転を防止するための周り止め構造は、ピン部材7に限られず、適宜変更できる。
【0041】
また、本実施の形態のサーモスタット装置1の第2ハウジング部材4は、バネ部材5dの一端を支持するバネ受け部4lを有する。前述のように、バネ部材5dは、制御バルブ5cを第1ハウジング部材3に形成される弁座3dへ向けて付勢する。これにより、制御バルブ5cが弁座3dに着座した状態で、バネ部材5dによって爪部3gが係止部4mに押し付けられる。これにより、ピン部材7等の周り止め構造を設けなくても、第1ハウジング部材3と第2ハウジング部材4とが容易に相対回転して、分解するのを防止できる。
【0042】
また、本実施の形態のサーモスタット装置1は、前記第1ハウジング部材3と前記第2ハウジング部材4との間をシールするシール部材6を備える。そして、爪部3gがそのシール部材6よりも外側に配置されている。当該構成によれば、爪部3g及び係止部4mが冷却液に浸ることがなく、これらを合成樹脂で形成する場合に耐久性の上で有利である。
【0043】
なお、本実施の形態のサーモスタット装置1は、エンジンの冷却液の入口側に配置される入口制御型であるが、エンジンの冷却液の出口側に配置される出口制御型であってもよく、この場合にも同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施の形態のハウジング2は、合成樹脂製であり、これによりハウジング2を軽量且つ安価にできるとともに、射出成型等で容易に形成できるが、ハウジング2の成形方法、材料は適宜変更できる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 サーモスタット装置
2 ハウジング
3 第1ハウジング部材
3a 第1管路
3b ラジエータ側パイプ
3d 弁座
3e 鍔部
3g 爪部
3h ピン挿通孔
3i,3j マーク
4 第2ハウジング部材
4a 収容室
4b 第2管路
4c 第3管路
4d バイパス通路側パイプ
4h ガイド部
4j 挿入溝
4k 係合溝
4l バネ受け部
4m 係止部
4n ピン挿通孔
4p 目印
5 サーモ動作ユニット
5a サーモエレメント
5b ピストン
5c 制御バルブ(弁体)
5d バネ部材
6 シール部材(Oリング)
7 ピン部材
M 目盛り
図1
図2
図3
図4
図5
図6