(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098550
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】レベル測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01F 23/284 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G01F23/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211983
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA15
2F014AB01
2F014FC01
(57)【要約】
【課題】ミリ波又はマイクロ波を用いて炉内の内容物のレベルを測定可能なレベル測定装置を提供する。
【解決手段】レベル測定装置2は、炉に取り付けられるガイド筒11と、ガイド筒11の上端部11b近傍に配置され、ガイド筒11内にミリ波又はマイクロ波を発射し、炉内の内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定するレーダ12と、レーダ12の下又は下方に配置され、ミリ波又はマイクロ波を透過させる保護部材16と、保護部材16よりも下方のガイド筒11内にパージガスを供給するガス供給口14と、を備える。ガイド筒11の下端部は開放している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内の内容物のレベルを測定する装置であって、
炉に取り付けられるガイド筒と、
前記ガイド筒の上端部近傍に配置され、前記ガイド筒内にミリ波又はマイクロ波を発射し、炉内の内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定するレーダと、
前記レーダの下又は下方に配置され、ミリ波又はマイクロ波を透過させる保護部材と、
前記保護部材よりも下方の前記ガイド筒内にパージガスを供給するガス供給口と、を備え、
前記ガイド筒の下端部が開放するレベル測定装置。
【請求項2】
前記レーダを冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のレベル測定装置。
【請求項3】
前記レーダを前記ガイド筒の上端部に取り付けられるケースに収容することを特徴とする請求項1又は2に記載のレベル測定装置。
【請求項4】
前記レーダを乾燥させるために、前記ケースに乾燥空気の流入側と乾燥空気の流出側とを設けることを特徴とする請求項3に記載のレベル測定装置。
【請求項5】
炉内の内容物のレベルをレベル測定装置によって測定する方法であって、
前記レベル測定装置は、
炉に取り付けられるガイド筒と、
前記ガイド筒の上端部近傍に配置され、前記ガイド筒内にミリ波又はマイクロ波を発射し、炉内の内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定するレーダと、
前記レーダの下又は下方に配置され、ミリ波又はマイクロ波を透過させる保護部材と、
前記保護部材よりも下方の前記ガイド筒内にパージガスを供給するガス供給口と、を備え、
前記ガイド筒の下端部が開放するレベル測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内の内容物のレベルを測定するレベル測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灰溶融炉、廃棄物溶融炉等の炉では、安定操業のために、炉内の内容物のレベル(高さ)が管理されている。例えば、灰溶融炉では、内容物として投入した灰のレベルが管理されていて、廃棄物溶融炉では、内容物として投入した廃棄物のレベルが管理されている。
【0003】
炉内の内容物のレベルを測定する方法として、炉体の重量を測定して間接的に炉内の内容物のレベルを推定する方法が知られている。一方、内容物のレベルを直接的に測定する方法として、炉上部よりワイヤー又はチェーンを下ろす重錘式レベル測定方法(非特許文献1参照)が知られている。重錘式レベル測定方法では、降下中の重錘が内容物に接触すると、ワイヤー又はチェーンの張力が減少する。張力の減少を検出したときのワイヤー又はチェーンの繰り出し長さから内容物のレベルを測定する。
【0004】
内容物のレベルを直接的に測定する他の方法として、近年、マイクロ波を用いて内容物のレベルを測定する試みがなされている(特許文献1参照)。ここでは、マイクロ波を内容物に向かって発射し、内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松山 裕,“レベルのお話 第8回 重錘式レベル計とガイド付マイクロ波式レベル計”,[online],2003年8月,松山技術コンサルタント,[2020年11月19日検索],インターネット<URL:https://www.m-system.co.jp/mstoday1/MSTback/data/2003/08/Level_T.htm>
【特許文献1】特開2004-197980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、炉体の重量を測定して間接的に内容物のレベルを推定する方法においては、誤差が大きく、炉内に付着物があると測定精度が落ちるという課題がある。
【0007】
重錘式レベル測定方法においては、高温の炉内でワイヤーやチェーンにダストが付着し、これが原因でワイヤーやチェーンが切れるという課題がある。
【0008】
マイクロ波を用いて内容物のレベルを測定する方法によれば、上記の課題を解決できる。しかし、この方法においては、炉内のダストがレーダ(ミリ波もしくはマイクロ波を送信するアンテナと、反射波を受信するアンテナを含む)に付着するのを防止するため、レーダをケースに収容し、ケースの下端部にマイクロ波が透過可能なセラミックボードを設けている。炉内のダストがセラミックボードに付着するので、測定が困難になる、という課題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、ミリ波又はマイクロ波を用いて炉内の内容物のレベルを測定可能なレベル測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、炉内の内容物のレベルを測定する装置であって、炉に取り付けられるガイド筒と、前記ガイド筒の上端部近傍に配置され、前記ガイド筒内にミリ波又はマイクロ波を発射し、炉内の内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定するレーダと、前記レーダの下又は下方に配置され、ミリ波又はマイクロ波を透過させる保護部材と、前記保護部材よりも下方の前記ガイド筒内にパージガスを供給するガス供給口と、を備え、前記ガイド筒の下端部が開放するレベル測定装置である。
【0011】
本発明の他の態様は、炉内の内容物のレベルをレベル測定装置によって測定する方法であって、前記レベル測定装置は、炉に取り付けられるガイド筒と、前記ガイド筒の上端部近傍に配置され、前記ガイド筒内にミリ波又はマイクロ波を発射し、炉内の内容物からの反射を利用して内容物のレベルを測定するレーダと、前記レーダの下又は下方に配置され、ミリ波又はマイクロ波を透過させる保護部材と、前記保護部材よりも下方の前記ガイド筒内にパージガスを供給するガス供給口と、を備え、前記ガイド筒の下端部が開放するレベル測定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ミリ波又はマイクロ波を用いて炉内の内容物のレベルを測定可能なレベル測定装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態のレベル測定装置の縦断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態のレベル測定装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のレベル測定装置を詳細に説明する。ただし、本発明のレベル測定装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態のレベル測定装置の縦断面図である。1は炉(1aは炉の鉄皮、1bは炉の耐火物)、2はレベル測定装置である。炉1は、例えば灰溶融炉、廃棄物溶融炉等である。灰溶融炉は、焼却炉で発生した灰を溶融する。廃棄物溶融炉は、廃棄物を燃焼及び溶融する。灰溶融炉、廃棄物溶融炉等の炉1は、炉1内の温度が高く、炉1内のダスト濃度が高い。可視光や赤外線を用いて炉1内の内容物Wのレベルを測定しようとしても、炉1内の微細な霧状のダストによって可視光や赤外線が散乱してしまい、測定が困難になる。このため、光より波長が長い電磁波であるミリ波又はマイクロ波3を用いて炉1内の内容物Wのレベルを測定する。なお、炉1は、灰溶融炉、廃棄物溶融炉に限られることはなく、他の溶融炉でもよい。
【0016】
レベル測定装置2は、ガイド筒11と、レーダ12と、ケース13と、ガス供給口14と、を備える。炉1の上部には、取付け座1cが取り付けられる。ガイド筒11の下端部11aは、取付け座1cの開口1c1に挿入されて、炉1内に連通する。ガイド筒11は、筒状であり、上下方向を向く。ガイド筒11は、中空であり、ガイド筒11の下端部11aは開放する。
【0017】
レーダ12は、ガイド筒11の上端部11b近傍に配置される。レーダ12は、ガイド筒11内にミリ波又はマイクロ波3を発射し、炉1内の内容物Wからの反射を利用して内容物Wのレベルを測定する。
【0018】
ミリ波は、波長が1mm~10mm(周波数が30GHz~300GHz)の電磁波である。マイクロ波は、波長が1cm~10cm(周波数が3GHz~30GHz)の電磁波である。このように、ミリ波又はマイクロ波3の波長は、炉1内のダスト(μmオーダ)に比べて十分に大きく、炉1内のダストによって散乱されにくいという特徴を持つ。
【0019】
なお、ミリ波や周波数が24GHz程度の準ミリ波は、周波数が20GHz以下のマイクロ波に比べて、波長が短く、直進性に優れていて、アンテナを例えば直径50mm程度に小型化できる、という特徴がある。このため、ミリ波や準ミリ波を用いることが望ましい。もちろん、炉1内の内容物Wのレベルを測定できることには変わりがないので、マイクロ波を用いてもよい。
【0020】
レーダ12は、パルス方式又はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって内容物Wのレベル、すなわちレーダ12から内容物Wの表面までの距離を測定する。パルス方式は、パルス状にした送信波を送信し、内容物Wからの反射波が戻ってくるまでの時間を測定する方式である。FMCW方式は、周波数を時間とともに変化させた送信波を送信し、送信波の送信信号と反射波の受信信号を干渉させてIF信号を発生させ、IF信号の周波数を検知する方式である。FMCW方式のレーダ12は、シンセサイザ、TXアンテナ(例えばパッチ平面アンテナ12a、
図2参照)、RXアンテナ(例えばパッチ平面アンテナ12a、
図2参照)、ミキサ、DSP(Digital Signal Processor)を備える。シンセサイザが送信波を生成し、TXアンテナが送信波を送信する。送信波が炉1内の内容物Wにあたり反射すると、RXアンテナが反射波を受信する。ミキサが送信波と反射波を混合し、IF信号を生成する。DSPがIF信号を信号処理し、炉1内の内容物Wまでの距離に変換する。なお、レーダ12は、パルス方式、FMCW方式のいずれでもよい。
【0021】
図2は、
図1のII部詳細図である。ガイド筒11の上端部11bには、ケース13が取り付けられる。ケース13には、レーダ12が収容される。ケース13の底部13cには、開口13c1が形成される。レーダ12は、この開口13c1内に配置されて、ガイド筒11内にミリ波又はマイクロ波3を発射する。
【0022】
ケース13には、冷却装置18の下部が収容される。冷却装置18は、水冷方式又はペルチェ方式の冷却装置である。
図2には、水冷方式の冷却装置18を示す。18aは冷却水の入側であり、18bは冷却水の出側である。レーダ12は、例えば熱伝導ペースト15を介して冷却装置18の下面に接着される。
【0023】
レーダ12の下には、ミリ波又はマイクロ波3を透過させる保護部材16が配置される。保護部材16の材質は、ミリ波又はマイクロ波3を透過させるものであれば、特に限定されるものではなく、例えばガラス、樹脂等である。この実施形態では、保護部材16は、レーダ12の下面に接触するように配置される。保護部材16は、板状であり、ケース13の底部13cの開口13c1に嵌められる。ケース13の内部を密封できるように、ケース13と保護部材16との間には、シール17が設けられる。
【0024】
ケース13には、乾燥空気の流入側13aと乾燥空気の流出側13bとが設けられる。ケース13の内部に収容されたレーダ12を乾燥させるためである。
【0025】
ガイド筒11の上端部11bには、保護部材16よりも下方のガイド筒11内に窒素ガス等のパージガスを供給するガス供給口14が設けられる。ガス供給口14は、ガス供給配管19に接続される。パージガスの流量は、ガイド筒11の下端部11aにおけるパージガスの圧力が炉1内の圧力を略等しくなるように、又は炉1内の圧力よりも僅かに高くなるように調節される。なお、ガイド筒11内に上方から下方に向かうガス流れを形成してもよいし、ガイド筒11内に旋回流を形成してもよい。また、保護部材16の下面にパージガスを吹きかけるようにしてもよい。
【0026】
以上に本実施形態のレベル測定装置2の構成を説明した。本実施形態のレベル測定装置2によれば、以下の効果を奏する。
【0027】
レーダ12の下に保護部材16を設けるので、炉1内で火花のように飛散したダストがレーダ12に付着するのを防止できる。また、ガイド筒11の下端部11aが開放しており、保護部材16よりも下方のガイド筒11内にパージガスを供給するので、ガイド筒11の下端部11aにセラミックボードを設けなくても、炉1内のダストがガイド筒11内に侵入するのを防止することができる。
【0028】
冷却装置18がレーダ12を冷却するので、炉1からのふく射熱によってレーダ12が高熱になるのを防止できる。
【0029】
ガイド筒11の上端部11bに取り付けられるケース13にレーダ12を収容するので、ガイド筒11の上端部11b近傍にレーダ12を容易に配置することができる。
【0030】
ケース13に乾燥空気の流入側13aと乾燥空気の流出側13bを設けるので、ミリ波又はマイクロ波3が水蒸気によって減衰するのを防止でき、内容物Wのレベルを高精度に測定することができる。
(第2の実施形態)
【0031】
図3は、本発明の第2の実施形態のレベル測定装置21の縦断面図である。11はガイド筒、13はケース、12はレーダ、18は冷却装置、16は保護部材、14はガス供給口である。これらの構成は、第1の実施形態のレベル測定装置2と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0032】
第1の実施形態のレベル測定装置2では、レーダ12の下に接触するように保護部材16を配置するのに対し、第2の実施形態のレベル測定装置21では、レーダ12の下方に隙間を空けて保護部材16を配置する。このように、レーダ12と保護部材16との間に隙間gを設けてもよい。ミリ波又はマイクロ波3は、この隙間gを透過可能である。
【0033】
第2の実施形態のレベル測定装置21によれば、第1の実施形態のレベル測定装置2と略同一の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
1…炉
2,21…レベル測定装置
11…ガイド筒
11a…ガイド筒の下端部
12…レーダ
13…ケース
14…ガス供給口
16…保護部材
18…冷却装置
W…内容物