(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098569
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】培養上清またはエクソソームを含む基材
(51)【国際特許分類】
A61K 35/35 20150101AFI20220627BHJP
A61L 17/06 20060101ALI20220627BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220627BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220627BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220627BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220627BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220627BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20220627BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220627BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220627BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61K35/35
A61L17/06
A61K9/70 401
A61P43/00 107
A61P17/02
A61K47/34
A61K9/127
A61K9/06
A61L17/12
A61L27/38
A61L27/58
A61L27/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212016
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】501048930
【氏名又は名称】株式会社 バイオミメティクスシンパシーズ
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】種村 秀樹
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA19
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC19
4C076CC26
4C076EE24A
4C076FF32
4C076FF56
4C076FF68
4C081AA12
4C081AC02
4C081BA12
4C081BA16
4C081CA161
4C081CD34
4C081CE02
4C081DA02
4C081DA04
4C081DA12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087CA04
4C087CA05
4C087MA24
4C087MA27
4C087MA32
4C087MA63
4C087NA06
4C087NA10
4C087NA11
4C087NA12
4C087ZA89
4C087ZB22
(57)【要約】
【課題】培養上清またはエクソソームを含有する基材を提供する。
【解決手段】 本発明の基材によれば患者の患部の表面適用することによって、持続的に培養上清或いはエクソソーム成分を投与することができ、それら成分の吸収を促進することができる。また、パップ剤等のかぶれなどの副作用を緩和することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養上清またはエクソソームが保持された生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シート。
【請求項2】
前記糸に培養上清またはエクソソームが含侵された請求項1の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シート。
【請求項3】
培養上清またはエクソソームを含む粘着層を含む外用貼付剤。
【請求項4】
前記粘着層がさらに医薬品を含む請求項1ないし3の何れかに記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
【請求項5】
前記医薬品が高分子化合物である請求項4に記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
【請求項6】
前記培養上清またはエクソソームが、リポソーム、PLGA、リオトロピック液晶、ハイドロゲルのいずれかに包含または結合している請求項1ないし5の何れかに記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
【請求項7】
細孔の設けられた表面に貼付される、請求項1ないし6の何れかに記載の生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞の培養上清を含む基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織、臍帯、歯髄、又は骨髄由来の間葉系幹細胞(MSC)は、プラスチック培養皿への接着,培養による増殖,骨芽細胞,軟骨細胞,及び脂肪細胞などへの分化能を有するといった性質を持つことが知られている。また、MSCは成長因子などの種々のサイトカインやエクソソームを分泌することにより,例えば,細胞増殖促進、血管新生、抗酸化、抗炎症、創傷治癒及び免疫抑制に働くことが知られている。
【0003】
MSCの培養時に産生される培養上清には同様に、種々のサイトカインが含まれ、MSCと同様な様々な効果をもたらすことが知られている。
【0004】
特許文献1には、標的組織の損傷部を修復するための損傷部治療用組成物として幹細胞由来の培養上清が用いられることが記載されている。特許文献2には、ヒアルロン酸等からなる突起に培養上清を含ませたマイクロニードル剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/118795号
【特許文献2】特開2016-210727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮あるいは表面投与の場合、培養上清やエクソソームは分子量が大きいため、表面組織、皮脂膜や角質層のため培養上清の吸収効率が低く、吸収される前に脱落する割合が多く、また、マイクロニードルのような比較的に硬質なものを使った場合、基材から脱落する、表面組織を傷つけるといった問題があった。このため,間葉系幹細胞の培養上清やエクソソームを効果的に投与できる基材の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)培養上清またはエクソソームを含む柔軟な保持材を含む生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シート。
(2)前記糸に培養上清またはエクソソームが含侵された(1)の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シート。
(3)培養上清またはエクソソームを含む粘着層を含む外用貼付剤。
(4)前記粘着層がさらに医薬品を含む(1)ないし(3)の何れかに記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
(5)前記医薬品が高分子化合物である(4)に記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
(6)前記培養上清またはエクソソームが、リポソーム、PGLA、リオトロピック液晶のいずれかに包含または結合している(1)ないし(5)の何れかに記載の生体内分解吸収性糸または生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
(7)細孔の設けられた表面に貼付される、(1)ないし(6)の何れかに記載の生体内分解吸収性シートまたは外用貼付剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基材によれば患者の患部の表面適用することによって、持続的に培養上清或いはエクソソーム成分を投与することができ、それら成分の吸収を促進することができる。また、パップ剤等のかぶれなどの副作用を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の実施例1のシートを示す図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2の外用貼付剤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、幹細胞由来の培養上清またはエクソソーム成分を柔軟な基材に含ませ、それを患部表面に保持させることで、その成分を持続的に患部に吸収させることができるという知見に基づいて本発明をした。
【0011】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0012】
本発明の基材は、間葉系幹細胞の培養上清またはエクソソームを有効成分として有効量含むものであることが好ましい。有効量とは,目的とする効果を発揮するために必要とされる有効成分の量である。基材とは、例えば、柔軟性を有する吸収性糸、吸収性糸でできたシート、または生体適合性ポリマーに培養上清またはエクソソームが含侵またはスプレー塗布等された基材、あるいは、培養上清またはエクソソームが混合された粘着剤層と支持体層からなる基材などである。
【0013】
吸収性糸に含侵された成分は手術後の縫合等に利用され、血液等の水分により溶け出して縫合部位に到達し、傷の治癒を促進する。また、吸収性の材料でできたシート(例えば、吸収性糸でできたシート)は体内の患部周囲にフィブリン糊などの組織接着剤で付着される、これにより、患部の治癒が促進されるだけでなく、体内での組織間の癒着も防ぐことができる。また、吸収性の糸でできたシートは例えば、絆創膏と傷口の間に配置して治癒を促進することもできる。次に粘着剤層と支持体層とからなるパップ剤は粘着剤層に十分量の有効成分を含有させることが可能となり、十分量の成分の皮下への吸収を可能とすることができる。
【0014】
吸収性糸としては生体内分解吸収性の糸などを用いることができ、例えば、国際公開2012/124562の縫合糸など(例えば、長繊維化及び短繊維化されたグリコール酸、乳酸、パラジオキサノン、カプロラクトン等のホモポリマー又はこれらの共重合体からなる合成高分子、あるいは、コラーゲン、キチン等の天然材料)が利用できる。また、それぞれの糸は、成分の保持の観点からモノフィラメントよりもマルチフィラメントや、特開2017-303に記載されるカバリング糸状の構造をもつものが都合が良い。また、吸収性材料でできたシートとは、これらの生体内分解吸収性の糸を紡いで作ったガーゼ状のシートや、ポリグリコール酸(PGA)、フィブリンシート、生体適合ポリマー(ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ムコ多糖、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの修飾体からなる群から選ばれる少なくとも一つの水溶性高分子からなるシート)、細胞シートなどを利用することができる。培養上清またはエクソソームは、それらの溶液に吸収性糸や、吸収性材料でできたシートを含侵させる、あるいは、スプレー塗布し、それらを乾燥させて作成することができる。また、これらの糸やシートへの適用方法はこれらに限られず、当業者に周知の別法を用いることもできる。
【0015】
パップ剤の成分としては、例えば、特開2004-196705のものが利用できるが、カオリン、ゼラチン、グリセリンをベースとしてこれにポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの水溶性高分子物質、有効成分、水などを加えて混練し、ペースト状とした膏体を支持体(例えば布やテープ)に塗布したもので、通常保水性を高めるためにグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、尿素や、吸湿性、潮解性の高い塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属などを膏体に配合すると共に、形態保持性を高めるために水溶性高分子物質を多価金属イオン、アルデヒド類、エポキシ化合物などにより一部架橋化することが行なわれている。これらの膏体に液状の培養上清またはエクソソーム、好ましくは、培養上清またはエクソソームの粉体を混錬して作成することができる。また、膏体の成分や混錬方法は、これらに限られず、当業者に周知の別法を用いることもできる。
【0016】
また、本発明に係る吸収糸やシートへの担持する成分や粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲において、さらに、グリセリン以外の多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、及びその他の添加剤を含有させることもできる。
【0017】
多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、D-ソルビトール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。pH調整剤は、薬物の皮膚透過速度や貼付剤の皮膚に対する刺激を調整する作用、及び本発明の貼付剤がパップ剤である場合には架橋速度を調整する作用を有する。このようなpH調整剤としては、例えば、酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、エデト酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;並びに、前記有機酸及び前記無機酸の薬学的に許容される塩が挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、1,2-ペンタンジオール、安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、フェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’-トリクロロカルバニリド、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、クエン酸、エデト酸、アスコルビン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。記その他の添加剤としては、例えば、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、カオリン等の無機充填剤;メントール;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等のアクリル酸エステル共重合体からなる粘着増強剤等が挙げられる。
【0018】
特に培養上清を用いた場合は糖類など細菌微生物等の増殖を増進する虞があるので防腐剤の適用が効果的である。しかしながら、パラペンなどの化学防腐剤、鉱物油、石油系仮面活性剤、合成香料、合成色素などの薬品類を用いた場合の健康被害等の問題もあるため、天然由来の防腐剤(例えば、東洋サイエンス株式会社製Salinatural OLG(商品名))などを用いることもできる。
【0019】
培養上清は,脂肪組織、臍帯、骨髄、歯髄、などの間葉系幹細胞や線維芽細胞の培養時に取得された培養上清そのものでも良いし、精製されたものでも良い。間葉系幹細胞の培養上清は,間葉系幹細胞の培養上清の成分濃縮物であってもよい。さらに,間葉系幹細胞の培養上清は,間葉系幹細胞の培養上清の乾燥による粉体であってもよい。間葉系幹細胞は,ヒト間葉系幹細胞であるものが好ましい。
【0020】
間葉系幹細胞由来培養上清は,上記のとおり公知であるから,公知の方法で得られた間葉系幹細胞の培養上清を用いてもよい。好ましい間葉系幹細胞の培養上清は,無血清培地で間葉系幹細胞を培養した際に得られる培養上清である。培養上清は,例えば,遠心分離により培養上清を固液分離して得られる上澄み成分である培養上清を,凍結乾燥により水分を除去して得られる処理物,エバポレーター等を用いて培養上清を減圧濃縮して得られる処理物,限外ろ過膜等を用いて培養上清を濃縮して得られる処理物,又はフィルターを用いて培養上澄みを固液分離して得られる処理物,もしくは,上述のような処理をする前の培養上清の原液である。また,例えば,本発明の間葉系幹細胞を培養した上澄みを,遠心分離(例えば,1,000×g,10分)した後,硫酸アンモニウム(例えば,65%飽和)で分画し,沈殿物を適切な緩衝液で懸濁した後に透析処理を行い,シリンジフィルター(例えば,0.2μm)で濾過し,無菌的な培養上清を得てもよい。採取した培養上清を,そのまま用いても,また凍結保存しておき使用時に解凍して用いることもできる。また薬剤学的に許容される担体を加えて,取り扱いやすい液量,例えば0.2ml又は0.5ml等となるように滅菌容器に分注してもよい。さらに,感染性病原体リスクの対策として,培養上清をウイルスクリアランスフィルターやγ線照射により処理してもよい。また、エクソソームは、(1)細胞外液を含む液汁を収得する段階;前記液汁を遠心分離して残滓を除去し上層液を収得する段階;及び(3)前記上層液を超遠心分離してエクソソーム様ベジクルを収得する段階;を含んで取得することができる。
【0021】
培養上清またはエクソソームは単体で期待に導入する処理がなされてもよいし、DDS(ドラッグデリバリシステム)の手法を利用してもよい。例えば、架橋酸性ゼラチン等のゼラチンハイドロゲル担体を用いた場合、培養上清やエクソソームと、基材の吸収糸や、粘着剤中の高分子と結合し、基材中での保持が強くなる。また、PLGA(Poly-Lactide-co-Glycolide Acid)やリポソームのカプセル剤にそれらの成分を封入した場合、徐放性をもたらせるだけでなく、粘着剤中の他の成分から保護される効果が得られる。さらに、培養上清またはエクソソームをリオトロピック液晶構造内に閉じ込めたコンプレックス構造として導入することで、表面組織への浸透を高めることができる。さらに、培養上清やこれらのDDS製剤は高分子となるため、皮膚表面に微細な細孔を形成したのちにその表皮に本発明のシートや貼付剤を適用することができる。細孔は例えば、皮膚に塗布した皮下浸透しにくい育毛剤等の薬物を真皮層下まで導入する技術である、経皮的エレクトロポレーション法を用いることができる。
【0022】
また、出願人らの研究によれば、特願2019-209394で示したように、培養上清が薬剤の組織への透過性を高めることを明らかにしている。したがって、培養上清と共に薬剤をシートや貼付剤の基材に保持させることによって、薬剤の透過性を上げることができる。この効果は特に分子量300以上の高分子化合物において顕著である。
【0023】
(実施例1)
図1に本発明の培養上清またはエクソソーム含有シート1を示した。
図1でシート1は不織布2からなり、不織布2の表面及び網目に培養上清3が塗布されている。
1.不織布
フェノール10に対し、トリクロロフェノール7の質量割合で混合した溶媒中にて溶解し、これを190℃で3分間加熱した後、30℃まで冷却して測定した時の粘度(ηsp/c)が1.5であるポリグリコール酸チップを、245℃で溶融紡糸し、1.8倍に延伸して12フィラメント、33デニールのポリグリコール酸糸を得た。これを18ゲージの丸編機を用い、45g/m2の目付で編成して筒状の丸編地を得た。かかる丸編地に対し、ウエール方向に軽くニードルパンチを施した後、22×22cmの正方形にカットした。このような構成の不織布を準備した。
2.脂肪由来間葉系幹細胞の上清の調製
脂肪由来幹細胞の上清は、以下のように調製した。
成人ドナーの脂肪組織を採取し、300g×10分の遠沈の後0.075%type Iコラゲナーゼを添加し、37℃で45分処理し、脂肪由来幹細胞を分離した。た。リン酸緩衝液(PBS)70μmを加え、フィルターで濾過した。その後α-modified Eagle medium添加して300g×10分の遠沈の後、PBSを加え70μmのフィルターで濾過した。次いで、840g×10分の遠沈を行い、上澄を廃棄し脂肪由来幹細胞を得た。続いてDMEM培地を用い37℃の5%二酸化炭素の環境下で3-5日培養した。この行程をさらに4回繰り返し、100mm2あたり4×105個の脂肪細胞由来幹細胞を得た。脂肪由来幹細胞はPBSにより洗浄され、さらにDMEM /F12 無血清培地を加えた。脂肪由来幹細胞の細胞外物質の分泌を促すため72時間低酸素環境 (2%O2、5%CO2,93%N2)に保った。その後300g×5分の遠沈ののち0.22μmのシリンジフィルターで濾過し、脂肪由来幹細胞の培養上清を取得した。ASC−CMのタンパク質含量は、ブラッドフォード法、およびピロガロールレッド法により確認された。
3.塗布処理
2で得られた脂肪由来幹細胞培養上清を0.1μg/cm2となるように1の不織布にスプレー塗布し、常温で乾燥させて、培養上清含有シートを得た。
4.評価
本実施例のシートを創傷部位の一部に貼付し、3日後に貼付しない場所と比較して、貼付した場所の治癒が顕著に促進された。
【0024】
(実施例2)外用貼付剤4
図2に本発明の外用貼付剤4を示した。
図4で外用貼付剤4は支持体5と培養上清を含む貼付剤6からなる。
1.粘着剤(粘着剤層6)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
培養上清粉末 0.1g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 0.8g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
カルメロースナトリウム 5g
N-メチル-2-ピロリドン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
※培養上清粉末は、実施例1の培養上清と同様に作成し、-80~-30℃、0~20Pa、6~24時間の真空凍結乾燥処理で得られた。
2.支持体5
不織布(ニット、プラスチックフィルムでもよい)からなる支持体5(透湿度が3,650g/m2・24hr、その大きさが縦50mm、横140mm)を準備した。
3.外用貼付剤4
支持体5の片面に、粘着剤層6の厚さが3,200μmとなるように塗布、エージングして、本発明の外用貼付剤4を得た。必要に応じて表面にフィルム状のライナーを設けてもよい。
4.評価
本発明の外用貼付剤を皮膚の炎症部位の一部に貼付し、培養上清をその他の一部に塗布した部位を、24時間後に比較したところ、本発明の外用貼付剤を貼付した部位の炎症のほうが顕著に改善されていた。、
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の基材によれば患者の患部の表面適用することによって、持続的に培養上清或いはエクソソーム成分を投与することができ、それら成分の吸収を促進することができる。また、パップ剤等のかぶれなどの副作用を緩和することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 シート
2 不織布
3 培養上清またはエクソソーム
4 外用貼付剤
5 支持体
6 粘着剤