(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098591
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】混合セラミックボールおよび廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20220627BHJP
C12N 11/14 20060101ALI20220627BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20220627BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20220627BHJP
【FI】
C12N1/00 S
C12N11/14 ZAB
C02F11/02
B09B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212060
(22)【出願日】2020-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】512038665
【氏名又は名称】三好 壽幸
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】三好 壽幸
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NA14
4B033NB27
4B033NB62
4B033NB68
4B033NC04
4B033ND20
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4B033NH10
4B065AA15X
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4D004AC05
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4D059AA03
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4D059DB10
4D059EA06
4D059EB06
(57)【要約】
【課題】 廃棄物を再現性よく分解する。
【解決手段】 前記アミノ酸が醸成された培養液に、土壌から採取されたバチルス菌の内の、糸状菌と、放線菌と、酵母菌と更にセルロース分解菌を、それぞれの菌に対応する容器に別個に投入する。前記各菌体が投入された培養液を所定の温度で所定時間、曝気しながら各菌体を培養する。前記培養された各菌の菌床となるそれぞれの菌で異なる硬さを持つ多孔質セラミックボールを投入して各菌体を前記多孔質セラミックボールに担持させる。前記糸状菌と放線菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、酵母菌とセルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを柔らかくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸を主体とする培養液に、土壌から採取されたバチルス菌の中の、糸状菌と、放線菌と、酵母菌と更にセルロース分解菌をそれぞれの菌ごとの容器に投入して、曝気しながら所定温度で所定期間培養するステップ、
前記培養された各菌体の菌床となる各菌体でそれぞれ異なる硬さを持つ多孔質セラミックボールを投入して各菌体を前記多孔質セラミックボールに担持させるステップ
を備えたことを特徴とする廃棄物分解菌の培養方法。
【請求項2】
前記培養温度は、35℃~45℃の範囲内である請求項1に記載の廃棄物分解菌の培養方法。
【請求項3】
前記糸状菌と放線菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、酵母菌とセルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを柔らかくした請求項1又は2のいずれかに記載の廃棄物分解菌の培養方法。
【請求項4】
前記酵母菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、セルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを更に柔らかくした請求項3に記載の廃棄物分解菌の培養方法。
【請求項5】
前記請求項1~4のいずれか1項に記載の各菌を担持した多孔質セラミックボールを用いた廃棄物処理方法において、
前記各菌を担持した多孔質セラミックボールをそれぞれ所定量混合した混合セラミックボールを充填した処理槽に被処理物を所定量だけ投入するステップと、
前記被処理物を前記混合セラミックボールと接触させながら攪拌するとともに、前記処理槽内の雰囲気温度を所定の温度に保つことで、当該被処理物を所定の温度に保つステップ と、
前記処理槽内に所定のアミノ酸を間欠的に所定量ずつ噴霧するステップと
を備える廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記各菌に対応する混合セラミックボールの量が各菌で等量である請求庫5に記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の各菌を担持した多孔質セラミックボールを用いた廃棄物処理装置において、
処理槽と、
前記各菌を担持した多孔質セラミックボールをそれぞれ所定量混合した混合セラミックボールを充填した前記処理槽に被処理物を所定量だけ投入する投入装置と、
前記処理槽内に設けられ、前記被処理物を前記混合セラミックボールと接触させながら攪拌する攪拌翼と、
前記処理槽内の雰囲気温度を所定の温度に保つことで、前記被処理物を所定の温度に保つ温度制御部と、
前記処理槽内に所定のアミノ酸を間欠的に所定量ずつ噴霧する噴霧機構と
を備える廃棄物処理装置。
【請求項8】
アミノ酸を主体とする培養液に、土壌から採取されたバチルス菌を担持する多孔質セラミックボールにおいて、
糸状菌と放線菌を担持する前記多孔質セラミックボールを、分解処理中に微細化しない硬さとし、酵母菌とセルロース分解菌を分解処理中に微細化する硬さに調整した多孔質セラミックボール。
【請求項9】
前記酵母菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、セルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを更に柔らかくした請求項8に記載の多孔質セラミックボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物分解菌の培養方法、及びその菌を用いた廃棄物処理方法、廃棄物処理装置に関し、特に、菌を担持するセラミックボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発酵残渣のような食品の製造過程で生ずる廃棄物、食品廃棄物、農業・畜産業に おける廃棄物などの動植物性残渣を含む下水汚泥などの有機性廃棄物は、通常焼却・埋め 立てなどの方法で処分されている。又、前記有機性廃棄物は、生ゴミ処理機を含む種々の 装置によって処理されている。
【0003】
しかしながら、前記焼却や埋め立てなどの方法は、資源の有効利用が望まれる現状では 望ましい方法ではない。特に、前記焼却の場合は、多大なエネルギーを必要とするので、 問題がある。
【0004】
一方、前記生ゴミ処理機と呼ばれる装置には、乾燥炉、炭化炉を用いて乾燥・炭化させる装置、微生物を用いて発酵させる装置などがある。乾燥炉、炭化炉を用いる場合には、 処理時間は短いが、かなり高温の炉を利用するため、エネルギーを必要とする。一方、微 生物を用いて発酵させる方法は、多大なエネルギーを必要としない。また、処理物を肥料として、再利用できるというメリットがある。このため、種々の微生物を用いて発酵させる方法が開発されている。
【0005】
しかしながら、従来の微生物を用いて発酵させる装置では、有機性廃棄物の分解と同時 に塩化ビニル以外の樹脂、例えば、高温でなければ分解することが出来ないポリ塩化ビフ ェニル(PCB)を分解することが出来ないという問題があった。
【0006】
このような問題を解決する発明として、特開2009-119355号公報(特許文献 1)には、処理物と、複数種の細菌からなる処理細菌群とを攪拌処理して、処理物を分解 処理する、分解処理方法が開示されている。前記分解処理方法では、処理細菌群を適切に 活用することで、PCBを分解することが出来るとしている。
【0007】
又、特開2008-36616号公報(特許文献2)には、多孔質セラミック化合物の無数孔に複合バイオ生物を移植生息させ、廃棄生ゴミを分解させることを特徴とする生ゴ ミの分解処理方法が開示されている。これにより、様々な生ゴミ(廃棄物)を分解させる ことが出来るとしている。
【0008】
更に、本願出願人、発明者は、特許第5490832号公報において、廃棄物処理用の菌培養方法と、当該菌を担持させた多孔質セラミックボールを用いて廃棄物処理をする方法と装置を提案している。これによると、生ごみ等の自然有機物、合成樹脂等の人工有機物の分解はもちろん放射性物質の放射能を効率的に低減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-119355号公報
【特許文献2】特開2008-36616号公報
【特許文献3】特許5490832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許5490832号公報に記載の廃棄物処理方法によると、自然有機物はもとより多くの種類の人工有機物も分解することができる点、及び放射性物質の放射能を低減できる点で、他の技術より優れているといえる。
【0011】
ところが、当該前記特許5490832号公報に記載のバチルス菌には多種の菌種を含み、ここでは多種の菌種を一括して培養し、使用している。このように一括して多種類の菌を扱うと、菌の培養に要する時間が長く(2か月~4か月:段落0034)、また培養途中でアミノ酸を間欠的に供給する必要がある(段落0032)等の欠点がある。
【0012】
更に、上記のように多種の菌種を一括して培養・使用すると、廃棄物分解の再現効率にむらがあり、前記公報に記載の内容はあくまで最も効率の高いときの状態が記載されている。実際に当該公報に記載の内容で廃棄物処理しても、100%の再現率を得られることは稀で、せいぜい30~50%程度の再現率しか得られない。その原因は、バチルス菌に含まれる多種の菌種は、それぞれが被処理物に有効に作用する段階があるが、多種の菌体をI種のセラミックボールに担持させているので、特定の菌を特定の段階で有効に働かせる工夫がなされていない点にある。
【0013】
本発明は、前記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、被処理物を短時間で分解することが出来るとともに、当該被処理物に含まれる放射性物質の放射能の強さを著しく軽減することが可能であるという、前記特許5490832号公報に記載の効果の再現性が確実で、しかも菌の培養期間が短い廃棄物処理用の菌培養方法と、その菌を用いた廃棄物処理方法、廃棄物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る廃棄物の微生物処理用の菌培養方法は以下の手順を備える。
【0015】
まず、前記アミノ酸が醸成された培養液に、土壌から採取されたバチルス菌の内の、糸状菌と、放線菌と、酵母菌と更にセルロース分解菌を、それぞれの菌に対応する容器に別個に投入する。前記各菌体が投入された培養液を所定の温度で所定時間、曝気しながら各菌体を培養する。前記培養された各菌の菌床となるそれぞれの菌で異なる硬さを持つ多孔質セラミックボールを投入して各菌体を前記多孔質セラミックボールに担持させる。
【0016】
前記培養温度は、35度~45度の範囲内である。
【0017】
本願発明では、多孔質セラミックボールの硬さが調整される。前記糸状菌と放線菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、酵母菌とセルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを柔らかくする。更に、前記酵母菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、セルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを更に柔らかくする。
【0018】
前記のように培養された菌を以下のように、廃棄物分解に用いる。
【0019】
前記各菌を担持した多孔質セラミックボールがそれぞれ所定量充填された処理槽に被処理物を投入装置を用いて所定量だけ処理槽に投入する。前記被処理物を前記多孔質セラミックボールと接触させながら攪拌翼で攪拌するとともに、前記処理槽内の制御部より雰囲気温度を所定の温度に保つ制御をすることで、当該被処理物を所定期間、所定の温度に保ち、それと平行して、噴霧機構を用いて前記処理槽内に所定のアミノ酸を間欠的に所定量ずつ噴霧する。
【0020】
前記各菌に対応する多孔質セラミックボールの量は各菌で等量である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の菌培養方法によれば、被処理物に対してまず、糸状菌と放線菌の複合菌が作用して有機物をアミノ酸、アルコール、セルロース、糖質に分解し、次いで、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用して、水、炭酸ガスに分解する。前記酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用する段階で、それらを担持する多孔質セラミックボールは形状をとどめない程度に崩れているので、被処理物に分散し易く効率よくセルロースの分解が進むことになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る廃棄物処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、廃棄物分解菌の培養方法であり、また、廃棄物分解菌を担持した多孔質セラミックボールに被処理物(廃棄物)を接触させることで、当該被処理物を分解する方法と装置でもある。
【0024】
より詳細には、本発明に係る多孔質セラミックボールは、土壌から採取された土壌菌であるバチルス菌を培養液で、所定の温度で所定の期間、菌種ごとに別々の容器で曝気しながら培養し、当該培養したバチルス菌を含む培養液を多孔質セラミックボールに含浸させることで、当該バチルス菌を菌種毎に前記多孔質セラミックボールに担持させたものである。前記多孔質セラミックボールは、菌種に応じた硬さとなっている。
【0025】
<土壌菌(バチルス菌)>
土壌菌(バチルス菌)は、多種の菌を含み、その分類方法も多様であるが、ここでは好気性の分解菌を扱う。更に、好気性の分解菌の中、酸化吸収好気性分解菌と、有機物発酵菌を用いる。また、前記酸化吸収好気性分解菌は、糸状菌と放線菌であり、有機物発酵菌は、酵母菌とセルロース分解菌である。
【0026】
本発明では前記の4種の菌を以下に説明するように培養し、多孔質セラミックボールに担持させた状態で、生ごみ等の被処理物に添加し、前記各菌の複合菌として機能させる。これによって、まず前記線状菌と放線菌の複合菌が作用して、被処理物をアミノ酸、セルロース、アルコール、糖質に分解する。次いで、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用して、前記アミノ酸、セルロース、アルコール、糖質を水と炭酸ガスに熱を伴って分解する。
【0027】
以上の分解処理が円滑に進行するには、菌床である多孔質セラミックボールの硬さ、処理槽の温度、菌の活性を維持するためのアミノ酸を整える必要がある。
【0028】
<土壌菌の培養>
土壌菌の培養に用いる培養液は、アミノ酸含有液である。アミノ酸の熟成はいかなる方法であってもよいが、例えば、ショ糖と、酢酸とエタノールの中の少なくとも1つに種酵素を混合して、所定期間、所定温度で熟成することによって醸成されるアミノ酸を用いる。
【0029】
前記ショ糖としては通常の砂糖を用いることで足りるが、黒蜜を用いるのがもっともよい。前記酢酸としては、工業用の酢酸でも足りるが、こめ酢(酢酸濃度5%程度)を用いることができる。エタノールも工業用のものを使用できるが、いも焼酎(アルコール濃度40%前後)を用いることができる。種酵素は市販の酵素を用いることができる、ここでは米酢、はちみつ、クエン酸、三温糖、リンゴ果汁、梅抽出液を熟成して生成された酵素を使用した。
【0030】
前記ショ糖として黒蜜、前記酢酸としてこめ酢、エタノールとしていも焼酎を用い、それらと前記の種酵素を1:1:1:2の割合で混合した培養液を室温で熟成させると、2~3週間でアミノ酸が醸成される。但し、アミノ酸を醸成するのに、前記の黒蜜、こめ酢、いも焼酎は必ずしも必要条件ではなく、このうちの1種であってもよいし、他の食品を用いてもよい。
【0031】
このようにアミノ酸を主体とする培養液に、前記各菌(糸状菌。放線菌、酵母菌、セルロース分解菌)を別々(それぞれ別の容器に)に投入し所定期間(1か月程度)所定温度(35℃~45℃)に保った状態で各菌体を培養する。次いで、前記各菌を培養した容器に多孔質セラミックボールを投入し、各菌を含むアミノ酸に多孔質セラミックボールを含浸する。その後、多孔質セラミックボールを乾燥させることによって、各菌を、多孔質セラミックボールに担持させる。
【0032】
<多孔質セラミックボールと菌種>
上記において、各菌種に対応する多孔質セラミックボールの組成と硬さを以下に説明するように調整する必要がある。前記多孔質セラミックボールの形状は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、例えば、球状、円柱状、平板状、パイプ(円筒)状、ハニカム状等、ある程度の体積を持った粒状が採用される。大きさは、例えば、径が2~5mmに調整される。尚、酵母菌とセルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールは処理槽(後述)の内部では粉あるいは粉に近い状態となるが、以下に説明するように、製造上の観点、保管・運搬状の観点から、使用前は、ある程度の体積を持った粒状である必要がある。
【0033】
以下に説明する分解処理において、(1)被処理物と菌体は適度に混ざり合うこと、(2)菌体に適度の空気が供給されていることの2つの要件が必要である。
【0034】
ここで、分解処理の前半では、糸状菌と放線菌の複合菌が作用し、分解処理の後半では、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用する。
【0035】
一方、前記したように前記分解処理の前半の段階では、被処理物と多孔質セラミックボールは適度の大きさを保っており、多孔質セラミックボールの周囲に適度の空気層ができた状態となり、この段階で分解に寄与する菌体(糸状菌と放線菌の複合菌)が被処理物に作用する環境が形成される。
【0036】
被処理物の分解が進むと、水分が生成されるので被処理物はドロドロの状態となる。この状態で多孔質セラミックボールが粒のままでは当該多孔質セラミックボールの周囲を前記ドロドロの被処理物が覆ってしまって、この段階で分解に必要な酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が分解対象物(特にセルロース)に適度に纏わり付かないことになり、分解が進まないことになる。
【0037】
すなわち、分解の後半では、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が適度に被処理物内に分散される状態を形成しようとすると、酵母菌とセルロース分解菌を担持する多孔質セラミックボールは被処理物と同等の大きさになっている必要がある。
【0038】
そこで、酵母菌を担持する多孔質セラミックボールは、糸状菌や放線菌を担持する多孔質セラミックボールより柔らかくなる組成と焼成温度を選択する必要がある。更に、セルロース分解菌は、前記前半の分解で生成されたセルロースに纏わりつく程度に小さい粒子になっている必要があるので、前記酵母菌を担持する多孔質セラミックボールより更に柔らかくなる組成を選択する必要がある。
【0039】
これによって、酵母菌やセルロース分解菌の働きが必要な後半の段階で、それらを担持する多孔質セラミックボールが適度に崩れて、被処理物と同じ程度の粒子になって、被処理物に適度に分散することになる。加えて、糸状菌を担持する多孔質セラミックボールと放線菌を担持する多孔質セラミックボールは、当該処理の後半でも、大きい粒のまま残っているので、攪拌されている被処理物との間に空気を導入し、酵母菌やセルロース分解菌を活性化することになる。
【0040】
以上の状態を形成しようとすると、菌の種類に応じて多孔質セラミックボールの組成と焼成温度を調整する必要がある。
【0041】
多孔質セラミックボールの組成はアルミナを中心とし、そこに所定量の珪石を加える(放線菌用)か、シリカを加える(酵母菌用)か、両方を加える(糸状菌用)。また、珪石とシリカを組成とする(セルロース分解菌用)。焼成温度は硬さが必要な、糸状菌用と放線菌用は1000℃~1400℃以上の還元焼成となり、柔らかさが要求される酵母菌用とセルロース分解菌用は800℃~1000℃の酸化焼成とする。
【0042】
前半の分解で生じるセルロースは分解しにくい物質であり、セルロース分解菌は分解の後半でセルロースに確実に纏わりつく必要がある。そこで当該セルロース分解菌を担持する多孔質セラミックボールはアルミナを含まない組成とし、酵母菌用の多孔質セラミックボールの硬さより更に柔らかくなる組成とする。
【0043】
このように組成と焼成温度を調整した多孔質セラミックボールは当然多孔質であり、菌が棲みやすい状態が形成されている。前記、糸状菌と放線菌に対応する多孔質セラミックボールは、焼成温度は同じ程度の温度であり、硬さも同じ適度であるが、組成が多少異なる。当該組成の相違は経験則的に割り出されたものであって、理論的な説明はできないが、はこの組成で良好な効果を得ている。
以上をまとめると、表1のようになる。尚、表1において、各成分の重量比は厳密な値ではなく、各成分で±10%程度の幅は認められる。
【0044】
【0045】
ここで、前記各菌体を培養した培養液への含浸時において、前記菌体を含む培養液の量は、前記多孔質セラミックボールが漬かりきる程度であれば足りる。また、前記含浸後、所定の温度で加熱して乾燥したり、所定時間放置して自然乾燥したりすることで、前記多孔質セラミックボールにおける培養液が乾燥し、当該培養液で培養されたバチルス菌が前記多孔質セラミックボールの孔内壁面に残存し担持されることになる。
【0046】
ここで、仮に前記酵母菌とセルロース分解菌を担持する多孔質セラミックボールについて、製造の段階から粉状(あるいは粉に近い砂状)にすると以下の不都合が生じる。
【0047】
まず、前記菌を含む培養液に粉状セラミックを浸漬して乾燥させると、粉相互が粘着し、乾燥すると硬いブロック状態となり保管、運搬に不都合であり、更に菌が活性を保ちにくくなる。従って、保管前あるいは、処理槽に投入する前に粒状にまで粉砕する必要があるが、その作業に莫大な労力を要する。また、出発原料が粉状態であるので、気孔がない、あるいは粒状態より機構が少ない状態であり、粉砕状態で保存したとしても、ブロック状態で保存したとしても、菌の活性は保ちにくくなる。
【0048】
<廃棄物処理方法と装置>
以下の記述の前提として、各菌体に対応する多孔質セラミックボールが1:1:1:1(糸状菌用:放線菌用:酵母菌用:セルロース分解菌用)の割合で混合されている(以下混合セラミックボールという)。もっともこの配分は一般的な配分であり、被処理物の性質に応じて変更することは構わない。
【0049】
また以下の分解処理で使用するアミノ酸はいかなる種類のアミノ酸を用いてもよいが、例えば、前記各菌の培養工程で使用したアミノ酸を用いることができる。
【0050】
図1に示す廃棄物処理装置は、特許5490832号に記載した装置と略同じであるので、ここでの詳述は避ける。
【0051】
原料搬入コンベア31で被処理物となる生ごみ等の原料が粉砕装置32に搬入され、ここで適度の大きさ(例えば2~5mm)に粉砕され、更に、コンベア33を介して、処理槽2の投入口22に投入される(投入装置:コンベア31+粉砕装置32+コンベア33)。内部で攪拌翼42が所定の速度で回転するようになっている前記処理槽2には、前記混合セラミックボールが所定量投入されており、前記のように投入される被処理物と前記混合セラミックボールが攪拌翼42の回転とともに混合される。尚、前記混合セラミックボールと被処理物の量は、重量比で、5対1~3対1である。
【0052】
前記処理槽2に対してヒータ51が備えられており、制御装置53と温度計52で内部温度が40℃~60℃に保たれるようになっており、これによって、被処理物の温度も所定の範囲(35℃~45℃)で一定に保たれる。また、分解処理中にタンク6に保持されたアミノ酸がノズル61(噴霧機構:タンク6+ノズル61)から間欠的に噴霧され各菌の活性が維持される。
【0053】
前記攪拌翼42の回転とアミノ酸の噴霧を継続しながら被処理物の分解を継続するのであるが、その初期(分解の前半)の段階では糸状菌と放線菌の複合菌が作用して、被処理物をアミノ酸、セルロース、アルコール、糖質、更に水、炭酸ガスに熱を伴って分解する。
【0054】
この時点で更に分解を進めようとすると、特にセルロースの分解を進めようとすると、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌の作用が必要である。ところが前記の分解に伴って、被処理物は細かくなり、水分も生成されるとことから、処理槽2の内部はドロドロの状態になる。
【0055】
ここで前記酵母菌とセルロース分解菌を担持している多孔質セラミックボールが粒状態を維持していると、その中に棲む酵母菌やセルロース分解菌は、前記ドロドロの被処理物に覆われ、閉塞状態となり、被処理物中に分散しないことになる。
【0056】
しかしながら、前記したように、前記酵母菌とセルロース分解菌を担持している多孔質セラミックボールの硬さを前記、糸状菌や放線菌を担持している多孔質セラミックボールより柔らかくなるように、組成と焼成温度で調整しているので、分解処理の過程で、前記酵母菌とセルロース分解菌を担持している多孔質セラミックボールは崩れて、酵母菌とセルロース分解菌は被処理物に潜り込むことになる。
【0057】
逆にいうと、前記酵母菌とセルロース分解菌を担持している多孔質セラミックボールの硬さは、糸状菌や放線菌の複合菌が働いて、被処理物がアミノ酸、セルロース、アルコール、糖質に分解した時点までに、前記攪拌翼42の回転にともなって崩れるような硬さに調整することになる。
【0058】
糸状菌と放線菌を担持する多孔質セラミックボールは、処理槽2内での分解が進行しても粒状態を維持する硬さに、組成と焼成温度が調整されている。従って、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が活性になるには空気も必要であるが、この時点では、前記硬い糸状菌や放線菌を担持した多孔質セラミックボールが粒状態を保持しているので、攪拌翼42の回転にともなって、空気も被処理物に巻き込むことになる。これによって、酵母菌とセルロース分解菌は活性を維持し、被処理物、特にセルロースが更に分解され、前記アミノ酸、セルロース、アルコール、糖質が熱を伴って、炭酸ガスと水に分解されることになる。
【0059】
上記の分解速度は、被処理物の投入量にもよるが、2時間程度となる。また、1ロットが終了した段階で、あるいは処理途中であても、新たな被処理物を投入することができる。処理槽2内で分解が継続している以上、いつでも新たに被処理物を投入することができるが、分解能が落ちたときは、新たに菌体(前記混合セラミック)を補充する等の処置が必要である。
【0060】
尚、上記の説明で、放線菌の複合菌が作用して、被処理物をアミノ酸、セルロース、アルコール、糖質に分解する段階(分解の前半)と、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用して、前記アミノ酸、セルロース、アルコール、糖質を水と炭酸ガスに熱を伴って分解する段階(分解の後半)に時間的に分かれているような記載になっているが、現実には、ある程度分解が進行すると、新しい被処理物が投入されるので、処理槽の内部では、前半の段階にある被処理物と後半の段階にある被処理物が混在している。
【0061】
以上本発明では、菌種ごとに培養して多孔質セラミックボールに担持させ、また、当該多孔質セラミックボールは、菌種に応じた硬さになるように、組成と焼成温度を調整しておく。これによって、生ごみ等の天然有機物ばかりでなく、ポリアミド、ポリエチレン等の人工有機物も簡単に分解できることになるとともに、放射性物質の放射能の強さを低減する効果を持ち、その再現性は略100%となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、通常の生ごみや人工有機物の分解が簡単にできるとともに、放射能を帯びた物質の放射能を低減することもでき、その再現性が確実であるので、ゴミ焼却に代わる設備としての利用ができることになる。
【符号の説明】
【0063】
2 処理槽
31 原料搬入コンベア
32 粉砕装置
42 攪拌翼
51 ヒータ
53 制御装置
6 タンク
61 ノズル
【手続補正書】
【提出日】2021-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物とともに攪拌して前記廃棄物を分解する廃棄物分解菌を担持した多孔質セラミックボールにおいて、
土壌から採取された菌の中の、糸状菌と、放線菌と、酵母菌とセルロース分解菌を前記廃棄物分解菌となし、前記糸状菌を担持する多孔質セラミックボールと放線菌を担持する多孔質セラミックボールを、分解処理中に微細化しない硬さとし、前記酵母菌を担持する多孔質セラミックボールとセルロース分解菌を担持する多孔質セラミックボールを分解処理中に微細化する硬さに調整し、前記各菌に対応する多孔質セラミックボールを所定量ずつ混合したことを特徴とする混合セラミックボール。
【請求項2】
前記酵母菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、セルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを更に柔らかくした請求項1に記載の混合セラミックボール。
【請求項3】
処理槽中で廃棄物とともに廃棄物分解菌を担持した多孔質セラミックボールを攪拌して前記廃棄物を分解する廃棄物処理装置において、
前記請求項1または2に記載の各菌に対応する多孔質セラミックボールを所定量ずつ混合した混合セラミックボールと、
前記混合セラミックボールを充填した前記処理槽に被処理物を所定量だけ投入する投入装置と、
前記処理槽内に設けられ、前記被処理物を前記混合セラミックボールと接触させながら攪拌する攪拌翼と、
前記処理槽内の雰囲気温度を所定の温度に保つことで、前記被処理物を所定の温度に保つ温度制御部と、
前記処理槽内に所定のアミノ酸を間欠的に所定量ずつ噴霧する噴霧機構と
を備えたことを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記各菌に対応する多孔質セラミックボールの量が各菌で等量である請求項3に記載の廃棄物処理装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、廃棄物処理に用いる菌を担持したセラミックボールと廃棄物処理装置に関し、特に、複数種の菌に対応する多孔質セラミックボールを混合した混合セラミックボールと、それを用いた廃棄物処理装置に関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、前記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、被処理物を短時間で分解することが出来るとともに、当該被処理物に含まれる放射性物質の放射能の強さを著しく軽減することが可能であるという、前記特許5490832号公報に記載の効果の再現性が確実な、複数種の菌をそれぞれ担持した多孔質セラミックボールを混合した混合セラミックボールと、それを用いた廃棄物処理装置を提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る混合セラミックボールと廃棄物処理装置は、以下の構成を採用する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
まず、廃棄物を分解する複数種の廃棄物分解菌として土壌から採取された菌の中の、糸状菌と、放線菌と、酵母菌とセルロース分解菌が用いられ、それぞれが多孔質セラミックボールに担持される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
ここで、前記糸状菌を担持する多孔質セラミックボールと放線菌を担持する多孔質セラミックボールを、分解処理中に微細化しない硬さとし、前記酵母菌を担持する多孔質セラミックボールとセルロース分解菌を担持する多孔質セラミックボールを分解処理中に微細化する硬さに調整する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記各菌に対応する多孔質セラミックボールを所定量ずつ混合して混合セラミックボールとする。ここで、前記酵母菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さに対して、セルロース分解菌に対応する多孔質セラミックボールの硬さを更に柔らかくするのが好ましい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記廃棄物処理装置の処理槽には、前記各菌に対応する多孔質セラミックボールを所定量ずつ混合した混合セラミックボールが充填された状態としておく。この状態で投入装置より、前記処理槽に被処理物が所定量投入される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
前記処理槽内に設けられた攪拌翼は、前記被処理物を前記混合セラミックボールと接触させながら攪拌する。温度制御部は、前記処理槽内の雰囲気温度を所定の温度に保つことで、前記被処理物を所定の温度に保つ。噴霧機構は前記処理槽内に所定のアミノ酸を間欠的に所定量ずつ噴霧する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
前記混合セラミックボールは、各菌に対応する多孔質セラミックボールが等量ずつ混合されるのが好ましい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の混合セラミックボールとそれを用いる廃棄物処理装置によれば、被処理物に対してまず、糸状菌と放線菌の複合菌が作用して有機物をアミノ酸、アルコール、セルロース、糖質に分解し、次いで、酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用して、水、炭酸ガスに分解する。前記酵母菌とセルロース分解菌の複合菌が作用する段階で、それらを担持する多孔質セラミックボールは形状をとどめない程度に崩れているので、被処理物に分散し易く効率よくセルロースの分解が進むことになる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明は、複数種の廃棄物分解菌をそれぞれ担持した多孔質セラミックボールを混合した混合セラミックボールに被処理物(廃棄物)を接触させることで、当該被処理物を分解する前記混合セラミックボールと装置に関するものである。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
を以下のように補正する。
より詳細には、本発明に係る多孔質セラミックボールは、土壌から採取された土壌菌を培養液で、所定の温度で所定の期間、菌種ごとに別々の容器で曝気しながら培養し、当該培養した土壌菌を含む培養液を多孔質セラミックボールに含浸させることで、当該土壌菌を菌種毎に前記多孔質セラミックボールに担持させたものである。前記多孔質セラミックボールは、菌種に応じた硬さとなっている。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
<土壌菌>
土壌菌は、多種の菌を含み、その分類方法も多様であるが、ここでは好気性の分解菌を扱う。更に、好気性の分解菌の中、酸化吸収好気性分解菌と、有機物発酵菌を用いる。また、前記酸化吸収好気性分解菌は、糸状菌と放線菌であり、有機物発酵菌は、酵母菌とセルロース分解菌である。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
ここで、前記各菌体を培養した培養液への含浸時において、前記菌体を含む培養液の量は、前記多孔質セラミックボールが漬かりきる程度であれば足りる。また、前記含浸後、所定の温度で加熱して乾燥したり、所定時間放置して自然乾燥したりすることで、前記多孔質セラミックボールにおける培養液が乾燥し、当該培養液で培養された土壌菌が前記多孔質セラミックボールの孔内壁面に残存し担持されることになる。