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特開2022-98638レゾルバステータ構造及びその固定方法
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  • 特開-レゾルバステータ構造及びその固定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098638
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】レゾルバステータ構造及びその固定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G01D5/20 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212145
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】平 彰介
(72)【発明者】
【氏名】園田 敦司
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077FF34
2F077PP26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】全く同一の穴が複数存在する輪状ステータにおいて、取付固定体を挿入又は螺入するための正しい穴を容易に見つける。
【解決手段】レゾルバステータ構造1及びその固定方法は、複数の輪状ステータ片2Aを転積により積層させ、所定の厚さとした輪状ステータ2を有するレゾルバステータ構造及びその固定方法において、前記輪状ステータ2の周縁2aに前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータ2の取付用としては用いない第1穴13と、前記周縁2aに形成され、前記第1穴13から離間し、かつ、前記第1穴13と同一径の第2穴14と、前記第2穴14の隣接位置に形成された識別体30と、よりなり、前記各穴13,14の穴中心P1,P2は、前記輪状ステータ2の同一半径線11位置に形成されていると共に、前記識別体30が位置する第2穴14に取付固定体を設けることにより、前記輪状ステータ2を相手方へ取付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の輪状ステータ片(2A)を転積により積層させ、所定の厚さとした輪状ステータ(2)を有するレゾルバステータ構造において、
前記輪状ステータ(2)の周縁(2a)に前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータ(2)の取付用としては用いない第1穴(13)と、前記周縁(2a)に形成され、前記第1穴(13)から離間し、かつ、前記第1穴(13)と同一径の第2穴(14)と、前記第2穴(14)の隣接位置に形成された識別体(30)と、よりなり、
前記各穴(13,14)の穴中心(P1,P2)は、前記輪状ステータ(2)の同一半径線(11)位置に形成されていることを特徴とするレゾルバステータ構造。
【請求項2】
前記第1穴(13)と前記第2穴(14)との間には、前記輪状ステータ(2)を他部材に固定するための長孔(12)が形成されていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバステータ構造。
【請求項3】
前記識別体(30)は、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号の何れか1つからなることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバステータ構造。
【請求項4】
複数の輪状ステータ片(2A)を転積により積層させ、所定の厚さとした輪状ステータ(2)を有するレゾルバステータ構造を用い、
前記輪状ステータ(2)の周縁(2a)に前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータ(2)の取付用としては用いない第1穴(13)と、前記周縁(2a)に形成され、前記第1穴(13)から離間し、かつ、前記第1穴(13)と同一径の第2穴(14)と、前記第2穴(14)の隣接位置に形成された識別体(30)と、を有し、
前記各穴(13,14)の穴中心(P1,P2)は、前記輪状ステータ(2)の同一半径線(11)位置に形成され、前記識別体(30)に隣接する前記第2穴(14)に取付固定体を設けることにより、前記輪状ステータ(2)を相手方(32)に固定することを特徴とするレゾルバステータ構造の固定方法。
【請求項5】
前記第1穴(13)と前記第2穴(14)との間には、前記輪状ステータ(2)を他部材に固定するための長孔(12)が形成されていることを特徴とする請求項4記載のレゾルバステータ構造の固定方法。
【請求項6】
前記識別体(30)は、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号の何れか1つからなることを特徴とする請求項4又は5記載のレゾルバステータ構造の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバステータ構造及びその固定方法に関し、特に、レゾルバの輪状ステータに対して、取付には使用しないが、転積による製造工程上あいてしまう第1穴と、前記第1穴と同一直径で、かつ、前記第1穴とは離間した状態の第2穴と、を有し、前記第2穴の隣接位置に識別体を設け、この識別体を頼りに、前記第2穴にボルト等の取付固定体を設けることにより、輪状ステータを相手方に対して正確に取付けることができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穴の大きさの大小のいずれかを用いて、相手部材に取り付ける構成があり、例えば、特許文献1の「綴じ穴の識別構造」がある。この特許文献1の図1に示される構成が、本願の図3に第1従来構成として開示されている。
すなわち、クリアポケット20の綴じ込み側縁21に沿って第1の綴じ穴13’及び第2の綴じ穴14’が形成されている。第2の綴じ穴14’の直径L2は、第1の綴じ穴13’の直径L1よりも大径に設けられている。これらの綴じ穴13’、14’には、帯状部15が設けられており、当該帯状部15の幅Wは、第2の綴じ穴14’の直径L2よりも小さく設けられている。第2の綴じ穴14’の一部は、帯状部15の端縁よりも突き出るようになり、これによって、第2の綴じ穴14’と第1の綴じ穴13’とを区別することができるように構成されている。
【0003】
また、図4で示される第2従来構成は、本出願人が社内製作していたレゾルバステータ構造1の一例である。
前記レゾルバステータ構造1における輪状ステータ2の周縁2aには、この輪状ステータ2の右側から左側に向けて、長孔12、第1穴13、長孔12、第2穴14及び長孔12の順序で、前記輪状ステータ2の同一半径線11上に各々独立した状態で弧状に形成されている。
【0004】
前記輪状ステータ2の内側2cには、図示していないが、所定角度間隔で突出形成された各突出磁極に、ステータ巻線10が巻回されていることにより、前記レゾルバステータ構造1が構成されている。
前記第1穴13の第1直径D1と前記第2穴14の第2直径D2とは、互いに同一直径であると共に、各穴13、14の第1穴中心P1と第2穴中心P2は、前記輪状ステータ2の同縁2aの同一半径線11上に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-277767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来構成は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図3の第1従来構成の場合、必要とする穴の直径を他の穴の直径よりも大として用いているため、例えば、レゾルバの輪状ステータに対して適用とするには、大型(例えば、直径が30cm)のレゾルバには、適用することが可能であるとしても、超小型(例えば、直径が5cm~3cm)のレゾルバに適用することは極めて困難であった。
【0007】
また、図4に開示された小型のレゾルバステータ構造1においては、各穴13,14の形状が同一直径であると共に、互いに、長孔12を挟んだだけの位置構造であるため、輪状ステータ2の転積時に、やむを得ず形成される使用目的のない方の第1穴13内に、間違えて、ボルト等を用いて相手方に固定することがあった。
すなわち、各輪状ステータ片を転積によって積層した積層型輪状ステータとしているため、転積時にやむなく形成される第1穴13が取付用の第2穴14と同一径であるため、この第1穴13を取付用の穴と勘違いして間違った取付を行うことがあり、相手方との間でレゾルバの原点(零点)が意図と異なる地点となることもあった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、レゾルバの輪状ステータに、取付には使用しないが、転積による製造工程上空いてしまう第1穴に対し、前記第1穴と同一直径で、かつ、前記第1穴とは離間した状態の第2穴を有し、前記第2穴に識別体を設け、前記第2穴にボルト等の取付用固定体を設けることにより、輪状ステータを相手方に対して正確に取付けることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるレゾルバステータ構造は、複数の輪状ステータ片を転積により積層させ、所定の厚さの輪状ステータを有するレゾルバステータ構造において、前記輪状ステータの周縁に前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータの取付用としては用いない第1穴と、前記周縁に形成され、前記第1穴から離間し、かつ、前記第1穴と同一径の第2穴と、前記第2穴の隣接位置に形成された識別体と、よりなり、前記各穴の穴中心は、前記輪状ステータの同一半径線位置に形成されている構成であり、また、前記第1穴と前記第2穴との間には、前記輪状ステータを他部材に固定するための長孔が形成されている構成であり、また、前記識別体は、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号の何れか1つからなる構成であり、また、本発明によるレゾルバステータ構造の固定方法は、複数の輪状ステータ片を転積により積層させ、所定の厚さとした輪状ステータを有するレゾルバステータ構造を用い、前記輪状ステータの周縁に前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータの取付用としては用いない第1穴と、前記周縁に形成され、前記第1穴から離間し、かつ、前記第1穴と同一径の第2穴と、前記第2穴の隣接位置に形成された識別体と、を有し、前記各穴の穴中心は、前記輪状ステータの同一半径線位置に形成され、前記識別体に隣接する前記第2穴に取付固定体を設けることにより、前記輪状ステータを相手方に固定する方法であり、また、前記第1穴と前記第2穴との間には、前記輪状ステータを他部材に固定するための長孔が形成されている方法であり、また、前記識別体は、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号の何れか1つからなる方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレゾルバステータ構造及びその固定方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、複数の輪状ステータ片を転積により積層させ、所定の厚さとした輪状ステータを有するレゾルバステータ構造を用い、前記輪状ステータの周縁に前記転積の製造工程上形成されると共に前記輪状ステータの取付用としては用いない第1穴と、前記周縁に形成され、前記第1穴から離間し、かつ、前記第1穴と同一径の第2穴と、前記第2穴の隣接位置に形成された識別体と、を有し、前記各穴の穴中心は、前記輪状ステータの同一半径線位置に形成され、前記識別体に隣接する前記第2穴に取付固定体を設けることにより、前記輪状ステータを相手方に固定することにより、同径の穴が並設されていても、正しい方の穴内にねじを挿入でき、1度の失敗もなく、相手方へのレゾルバの取付けを達成し、ユーザーからの信頼を勝ち取ることができる。
また、前記第1穴と前記第2穴との間には、前記輪状ステータを他部材に固定するための長孔が形成されていることにより、何れかの穴か分らない時でも、すぐに判断でき、固定時間の短縮にも役立つことができる。
また、前記識別体は、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号の何れか1つからなることにより、近時のパワーステアリング又は電子機器の電動化における回転検出器(レゾルバ)の小型化にも大いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバステータ構造の要部を示す平面図である。
図2図1の同一半径線による拡大断面図である。
図3】第1従来構成を示す概略構成図である。
図4】第2従来構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるレゾルバステータ構造及びその固定方法は、レゾルバの輪状ステータに、取付には使用しないが転積による製造工程上であいてしまう第1穴に対し、前記第1穴と同一直径で、かつ、前記第1穴とは離間した状態の第2穴を有し、前記第2穴の隣接位置に識別体を設け、前記第2穴にボルト等の取付固定体を設けることにより、輪状ステータを相手方に対して正確に取付けることができることである。
【実施例0013】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバステータ構造及びその固定方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、レゾルバステータ構造であり、前記レゾルバステータ構造1における輪状ステータ2の右側から左側に向けて、長孔12、第1穴13、長孔12、第2穴14及び長孔12の順序で、前記輪状ステータ2の同一半径線11上の位置に各々独立した状態で弧状に形成されている。
前記第1、第2穴13、14は、前記長孔12を介して互いに離間して形成されている。
【0014】
前記輪状ステータ2の内側2cには、図示していないが、周知のように、所定間隔で突出形成された各突出磁極にステータ巻線10が巻回されていることにより、前記レゾルバステータ構造1が構成されている。
前記第1穴13と前記第2穴14の第1直径D1と第2直径D2は、互いに同一直径であると共に、各穴13、14の第1穴中心P1と第2穴中心P2は、前記輪状ステータ2の周縁2aの同一半径線11上に沿って位置している。
【0015】
前記輪状ステータ2は、輪状ステータ片2Aを所定の厚さとなるように、周知の転積によって構成されており、前記輪状ステータ2の周縁2aに形成された前記第1穴13は、前記転積時の各輪状ステータ片2Aを所定角度回転させて積層させる時に形成される位置決め用の穴であり、転積が終了して形成された輪状ステータ2としては、前記第1穴13は、穴として何か役に立つものではなく、単なる役立たずの穴にすぎないものである。従って、第1穴13は、図2に示されるように、輪状ステータ2を相手方32に取り付ける際の取付用穴としては何ら利用しないものである。
【0016】
前記第2穴14の隣接位置には、マーク、丸印、打ち抜き部、矢印、数字及び記号等の何れか1つからなる識別体(▲印)30が形成されており、前記識別体30の存在によって、前記第2穴14が前記輪状ステータ2を図2に示される相手方32(例えば、モータ、アクチュエータ等の筐体)に取付ける時のネジ又はボルト等を貫通又は螺入させる時の対象として確認することができるように構成されている。
【0017】
従って、例えば、一定速度の速さでベルトコンベア(図示せず)によって送られてくる前記相手方32に対し、前記輪状ステータ2を取付け、前記識別体30が形成された方の前記第2穴14に、図2で示されるネジ又はボルト等の取付固定体31を挿入又は螺入することにより、前記相手方32に対し、前記相手方32の所定位置に前記輪状ステータ2を正確かつ確実に取付けることができる。
【0018】
図2は、図1の前記輪状ステータ2の同一半径線11に沿う拡大断面図であり、複数の輪状ステータ片2Aが積層され、前記長孔12の両側に第1、第2穴13、14が形成されている構成が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるレゾルバステータ構造は、輪状ステータを相手方に取付ける時の第2穴を、その隣接位置に設けた識別体によって簡単に他の穴と識別することができ、従来のように誤って第1穴に取付固定体を挿入又は螺入することもなく、輪状ステータの取付け歩留まりを従来よりも大幅に向上させ、レゾルバの信頼性向上を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0020】
1 レゾルバステータ構造
2 輪状ステータ
2A 輪状ステータ片
2a 周縁
2c 内側
10 ステータ巻線
11 同一半径線
12 長孔
13 第1穴
14 第2穴
30 識別体
31 取付固定体(ネジ、ボルト等)
32 相手方(モータ等)
D1 第1直径
D2 第2直径
P1 第1穴中心
P2 第2穴中心
図1
図2
図3
図4