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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098642
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】光源装置、プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20220627BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220627BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220627BHJP
   F21V 9/20 20180101ALI20220627BHJP
   F21V 9/35 20180101ALI20220627BHJP
   F21V 7/28 20180101ALI20220627BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20220627BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20220627BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20220627BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20220627BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220627BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 E
F21S2/00 340
F21V9/20
F21V9/35
F21V7/28 250
F21V29/503
F21V29/502 100
F21V29/70
H04N5/74 Z
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212151
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA54
2K203FA62
2K203FB03
2K203GA22
2K203GA23
2K203GA25
2K203GA26
2K203GA27
2K203GA33
2K203GA35
2K203GA40
2K203HA03
2K203HA08
2K203HA14
2K203HA16
2K203HA28
2K203HA53
2K203HA67
2K203HA69
2K203HA79
2K203HA92
2K203HB22
2K203HB25
2K203LA02
2K203LA37
2K203MA04
2K203MA05
2K203MA32
5C058BA35
5C058EA12
5C058EA13
5C058EA51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置全体を大型化することなく、効率と出射する光の均一性が向上された光源装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子10aを含み、第一偏光状態の励起光を出射する励起光源10と、反射光と、蛍光を出射する波長変換部材13と、励起光及び第一偏光状態の反射光を透過し、第二偏光状態の反射光及び蛍光を反射するか、励起光及び第一偏光状態の反射光を反射し、第一偏光状態とは異なる第二偏光状態の反射光及び蛍光を透過するダイクロイックミラー14と、ダイクロイックミラー14から波長変換部材13に向かう光を、波長変換部材13の主面上に集光する集光レンズ15と、ダイクロイックミラー14から出射された第一偏光状態の反射光を反射させる反射部材12と、反射部材12の内側の一部の箇所、又は反射部材12の外側の箇所に形成され、励起光源から出射された励起光をダイクロイックミラーに向けて通過させる光通過領域12bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子を含み、第一偏光状態の励起光を出射する励起光源と、
前記励起光が入射されると、前記励起光と同じ波長の反射光と、前記励起光とは異なる波長の蛍光を出射する波長変換部材と、
前記励起光源と前記波長変換部材との間の前記励起光の光路上に配置され、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を透過する一方、前記第一偏光状態とは異なる第二偏光状態の前記反射光及び前記蛍光を反射するか、又は、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を反射する一方、前記第一偏光状態とは異なる第二偏光状態の前記反射光及び前記蛍光を透過するダイクロイックミラーと、
前記ダイクロイックミラーと前記波長変換部材との間に配置され、前記ダイクロイックミラーから前記波長変換部材に向かう光を、前記波長変換部材の主面上に集光する集光レンズと、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上に配置され、前記ダイクロイックミラーから出射された前記第一偏光状態の前記反射光を反射させる反射部材と、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上の、前記反射部材の内側の一部の箇所、又は前記反射部材の外側の箇所に形成され、前記励起光源から出射された前記励起光を前記ダイクロイックミラーに向けて通過させる光通過領域とを備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記ダイクロイックミラーは、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を反射し、前記蛍光及び前記第二偏光状態の前記反射光を透過することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記ダイクロイックミラーは、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を透過し、前記蛍光及び前記第二偏光状態の前記反射光を反射することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記反射部材は、主面上に反射面が形成された板状の部材であって、
前記光通過領域は、前記反射部材に設けられた透光窓、又は開口であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記反射部材を前記反射面に直交する方向から見たときに、前記反射面の面積の合計値に対する前記光通過領域の面積の合計値の比率が20%~50%であることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記反射部材は、複数の要素ミラーからなり、
前記光通過領域は、前記要素ミラーの間隙によって形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記励起光源と前記集光レンズとの間の前記励起光の光路上に配置された光拡散部材を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記光拡散部材は、拡散板、又はマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記反射部材と前記光拡散部材とが一体的に構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記反射部材の反射面が、入射する前記第一偏光状態の前記反射光の光軸に対して直交するように配置されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記励起光源及び前記波長変換部材が載置されるヒートシンクと、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上に配置され、前記励起光を前記ダイクロイックミラーに向かうように反射させる折返しミラーとを備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出射される光が入射される光学系とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光源と波長変換部材とを備える光源装置、及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタや照明用の光源としては、励起光を出射する励起光源と、当該励起光の波長が変換されることで蛍光を出射する波長変換部材とを組み合わせて、白色光等のスペクトルがブロードな光を出射するように構成された光源装置が用いられている。
【0003】
そして、このような光源装置の例としては、青色の光を出射する半導体レーザ素子を発光素子とする励起光源と、青色の励起光が入射されることで黄色の蛍光を出射する波長変換部材とを組み合わせて、白色光を出射するように構成された光源装置が知られている(下記特許文献1及び下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-137744号公報
【特許文献2】特開2016-095486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、励起光源と波長変換部材とを備える光源装置のさらなる改良について、鋭意検討を行っていたところ、従来の光源装置には、以下のような課題が存在することを見い出した。以下、図面を参照しながら説明する。
【0006】
図10は、上記特許文献1に記載されている光源装置100の構成を模式的に図示した図面である。図10に示す光源装置100は、励起光源101と、波長変換部材102と、拡散反射板103と、ダイクロイックミラー104と、集光レンズ(105a,105b)と、波長板(106a,106b)とを備える。
【0007】
以下の説明においては、図10に示すように、励起光源101が出射する光L11の光軸方向をY方向、集光レンズ105aの光軸105cの方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする。
【0008】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0009】
光源装置100の励起光源101は、アレイ状に配置された複数の半導体レーザ素子101aと、各半導体レーザ素子101aに対応して配置された複数のコリメートレンズ101bとを備えている。励起光源101は、半導体レーザ素子101aから出射されて、コリメートレンズ101bによってコリメートされた光L11を励起光として出射する。なお、この例では、光源装置100の励起光源101から出射される光L11は、S偏光状態の青色の光である。
【0010】
光源装置100のダイクロイックミラー104は、ガラス板の主面上に図示されない多層膜が形成されており、S偏光状態の青色の光を反射し、P偏光状態の青色の光、及び黄色の光を透過する透過・反射面104aが形成されている。
【0011】
励起光源101から出射された光L11は、波長板106aに入射し、S偏光成分とP偏光成分とを含む光L12に変換されて、波長板106aから出射される。波長板106aから出射された光L12は、ダイクロイックミラー104に入射すると、光L12に含まれるP偏光成分が、ダイクロイックミラー104を透過し、P偏光状態の光L13として+Y方向に進行する。光L12に含まれるS偏光成分は、ダイクロイックミラー104によって反射されて、S偏光状態の光L14として-Z方向に進行する。
【0012】
P偏光状態の光L13は、波長板106bに入射すると、S偏光成分とP偏光成分とを含む光L15に変換されて、波長板106bから出射される。波長板106bから出射された光L15は、集光レンズ105bに入射し、拡散反射板103の反射面103aに集光されて、拡散反射板103の反射面103aによって拡散反射される。
【0013】
拡散反射板103の反射面103aで拡散反射された光L15は、集光レンズ105bに再び入射する。集光レンズ105bに再び入射した光L15は、発散角を縮小するように屈折されて、集光レンズから105bから-Y方向に向かって出射される。集光レンズ105bから出射された光L15は、再び波長板106bに入射して、S偏光状態の光L17に変換されて、波長板106bからダイクロイックミラー104に向かって出射される。
【0014】
波長板106bから出射されたS偏光状態の青色の光L17は、ダイクロイックミラー104によって反射されて、+Z方向に進行する。
【0015】
一方、波長板106aから出射された後、ダイクロイックミラー104によって反射されて-Z方向に進行する光L14は、集光レンズ105aに入射する。集光レンズ105aに入射した光L14は、波長変換部材102の主面102a上に集光されるように屈折されて集光レンズ105aから出射される。
【0016】
集光レンズ105aから出射されて、波長変換部材102の主面102aに入射した光L14は、波長が変換されて、黄色の蛍光である光L16として波長変換部材102から+Z側に出射される。波長変換部材102から出射された光L16は、集光レンズ105aに入射し、発散角を縮小するように屈折されて、集光レンズ105aから+Z方向に出射される。
【0017】
集光レンズ105aから出射された黄色の光L16は、ダイクロイックミラー104に入射し、そのままダイクロイックミラー104を透過して、光L17と同じく+Z方向に出射される。
【0018】
以上により、光源装置100は、黄色の光L16及び青色の光L17からなる白色光を出射する。しかしながら、上記構成の光源装置1は、励起光源101と波長変換部材102とは別に、拡散反射板103が必要となり、さらには、集光レンズ(105a,105b)と波長板(106a,106b)をそれぞれ二つは設けなければならず、装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0019】
そこで、上記特許文献2に記載されているような、拡散反射板や波長板を備えず、集光レンズが一つで構成された光源装置の構成が提案されている。
【0020】
図11は、上記特許文献2に記載されている光源装置110の構成を模式的に図示した図面であって、図12は、図11の光源装置110に搭載されるダイクロイックミラー114を、透過・反射面114aに向かって見たときの平面図である。図11に示す光源装置110は、励起光源101と、波長変換部材102と、ダイクロイックミラー114と、集光レンズ105とを備える。なお、光源装置110の励起光源101は、光源装置100が備える励起光源101と同じ構成であって、励起光源101が出射する光L21は、S偏光状態の青色の光である。
【0021】
ダイクロイックミラー114は、図11及び図12に示すように、多層膜による透過・反射面114aが縞状に形成されている。そして、励起光源101は、光L21がダイクロイックミラー114の透過・反射面114aに入射するように、光源位置と光L21の出射方向とが調整されている。
【0022】
励起光源101から出射された光L21は、ダイクロイックミラー114の透過・反射面114aによって反射されて、-Z方向に進行する。-Z方向に進行する光L21は、集光レンズ105に入射して、波長変換部材102の主面102a上に集光されるように屈折されて、集光レンズ105から出射される。
【0023】
集光レンズ105から出射されて波長変換部材102の主面102aに入射した光L21は、波長変換部材102の主面102a、又は波長変換部材102の内部で反射されて、一部がS偏光状態の光L22として、他の一部がP偏光状態の光L23として+Z側に出射される。さらに、光L21の他の一部は、波長変換部材102に含まれる蛍光体に入射し、波長変換されて、黄色の蛍光である光L24として+Z側に出射される。なお、波長変換部材から出射される光には、S偏光成分とP偏光成分とを含む青色の光も出射されるが、説明の便宜のために、本明細書では、S偏光状態の光L22とP偏光状態の光L23とで光の進行については説明する。また、波長変換部材から各光が出射される原理については、「発明を実施するための形態」の説明において、図3を参照しながら詳述される。
【0024】
波長変換部材102から+Z側に出射された光(L22,L23,L24)は、集光レンズ105に入射して、発散角が縮小されるように屈折されて、集光レンズ105から+Z方向に出射される。そして、集光レンズ105から出射されてダイクロイックミラー114に入射したP偏光状態の青色の光L23と黄色の光L24は、ダイクロイックミラー114を透過して+Z方向に出射される。
【0025】
集光レンズ105から出射された青色のS偏光状態の光L22のうちの、ダイクロイックミラー114の透過・反射面114aに入射した光L22は、-Y方向に反射される。一方、ダイクロイックミラー114の透過・反射面114aとは異なる位置に入射した光L22は、光L23及び光L24と同じく、+Z方向に出射される。
【0026】
以上により、光源装置110は、青色の光L23、黄色の光L24、及びダイクロイックミラー114の透過・反射面114aとは異なる位置に入射した青色の光L22からなる白色光を出射する。
【0027】
図10図11と比較してわかるように、図11に示す光源装置110は、図10に示す光源装置100よりも少ない部材で構成することができる。
【0028】
ところが、上述したように、ダイクロイックミラー114の透過・反射面114aが形成されていないところに入射した光L22は、ダイクロイックミラー114を透過し、透過・反射面114aが形成されているところに入射した光L22は、透過・反射面114aによって反射される。このため、光源装置1から出射される光は、光L23と光L24に対して、光L22がさらに含まれる領域と、光L22が含まれない領域が発生し、縞状の色ムラが発生してしまっていた。
【0029】
上述のようにして発生する色ムラは、光源装置110の用途によっては許容できる場合がある。しかしながら、プロジェクタ等の画像を投影する装置においては、僅かな色ムラに起因して、表示する画像に人が視認できる程の色ムラが生じてしまう可能性があり、上述したような色ムラが発生しない光源装置が求められていた。
【0030】
なお、インテグレータ光学系等の、光の均一性を向上させる部材を搭載することも考えられるが、新たな光学系を追加すると、光源装置全体が大型化してしまう。
【0031】
本発明は、上記課題に鑑み、装置全体を大型化することなく、効率と出射する光の均一性が向上された光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の光源装置は、
半導体レーザ素子を含み、第一偏光状態の励起光を出射する励起光源と、
前記励起光が入射されると、前記励起光と同じ波長の反射光と、前記励起光とは異なる波長の蛍光を出射する波長変換部材と、
前記励起光源と前記波長変換部材との間の前記励起光の光路上に配置され、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を透過する一方、前記第一偏光状態とは異なる第二偏光状態の前記反射光及び前記蛍光を反射するか、又は、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を反射する一方、前記第一偏光状態とは異なる第二偏光状態の前記反射光及び前記蛍光を透過するダイクロイックミラーと、
前記ダイクロイックミラーと前記波長変換部材との間に配置され、前記ダイクロイックミラーから前記波長変換部材に向かう光を、前記波長変換部材の主面上に集光する集光レンズと、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上に配置され、前記ダイクロイックミラーから出射された前記第一偏光状態の前記反射光を反射させる反射部材と、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上の、前記反射部材の内側の一部の箇所、又は前記反射部材の外側の箇所に形成され、前記励起光源から出射された前記励起光を前記ダイクロイックミラーに向けて通過させる光通過領域とを備える。
【0033】
上記構成によれば、波長変換部材から出射された光は、ダイクロイックミラーによって、部分的に透過、又は反射されることがない。このため、光源装置の外側に向かって出射される光は、部分的に第一偏光状態と第二偏光状態の反射光が混在することや、部分的に反射光や蛍光が弱まることが無く、光路に応じて生じるような色ムラが発生しない。
【0034】
また、上記構成の光源装置は、励起光を分離して、波長変換部材に入射させる経路と、偏光状態を変換する経路とをそれぞれ別に構成することを要しない。
【0035】
さらに、ダイクロイックミラーによって蛍光や第二偏光状態の反射光と分離された第一偏光状態の反射光は、反射部材によって反射されて、再び波長変換部材に入射されることになる。すなわち、第一偏光状態の反射光は、一部を励起光として再利用することができる。
【0036】
上記光源装置において、
前記ダイクロイックミラーは、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を反射し、前記蛍光及び前記第二偏光状態の前記反射光を透過するものであっても構わない。
【0037】
また、上記光源装置において、
前記ダイクロイックミラーは、前記励起光及び前記第一偏光状態の前記反射光を透過し、前記蛍光及び前記第二偏光状態の前記反射光を反射するものであっても構わない。
【0038】
また、上記光源装置において、
前記反射部材は、主面上に反射面が形成された板状の部材であって、
前記光通過領域は、前記反射部材に設けられた透光窓、又は開口であっても構わない。
【0039】
さらに、上記光源装置は、
前記反射部材を前記反射面に直交する方向から見たときに、前記反射面の面積の合計値に対する前記光通過領域の面積の合計値の比率が20%~50%であることが好ましい。
【0040】
反射部材を反射面に直交する方向から見たときに、反射領域に対して光通過領域が小さすぎると、光通過領域を通過できる励起光の量が非常に少なくなってしまい、波長変換部材に到達できる光量が低下してしまう。また、反射面の面積に対して光通過領域の面積が大きすぎると、ダイクロイックミラーから出射される第一反射光を反射できる量が少なくなり、光の利用効率が低くなってしまう。したがって、反射部材を反射面に直交する方向から見たときに、反射面の面積の合計値に対する光通過領域の面積の合計値の比率が、上記の範囲内となっていることが好ましい。
【0041】
また、上記光源装置において、
前記反射部材は、複数の要素ミラーからなり、
前記光通過領域は、前記要素ミラーの間隙によって形成されていても構わない。
【0042】
上記光源装置は、
前記励起光源と前記集光レンズとの間の前記励起光の光路上に配置された光拡散部材を備えていても構わない。
【0043】
波長変換部材は、励起光が波長変換部材の主面に対して局所的に入射されると、励起光が入射された部分で集中的に熱が発生して温度が急激に上昇してしまい、蛍光体の変換効率の低下や波長変換部材の破損を生じさせてしまう。
【0044】
そこで、上記構成とすることで、励起光が拡散されて、励起光が波長変換部材の主面に対して局所的に入射されることを緩和することができ、蛍光体の変換効率の低下や波長変換部材の破損を抑制することができる。
【0045】
なお、光拡散部材は、入射した光を拡散させるように出射する機能を有するが、出射する光の発散角が大きすぎると、励起光が反射部材の光通過領域を通過できなくなる場合や、励起光の一部がダイクロイックミラーに入射されなくなる場合がある。このため、光拡散部材は、出射する光の発散角が0.5°~10°となるように構成されていることが好ましく、1°~5°となるように構成されていることがより好ましい。ここで、発散角とは、光強度が最大となるエミッタの中心から光軸と平行に出射される主光線の1/e2の光強度で進行する光線と、主光線とがなす角の2倍の角を指す。
【0046】
また、光拡散部材から出射される光の発散角が、上述の範囲内の場合であっても、光拡散部材と反射部材と光通過領域との距離が離れすぎていると、励起光が拡がりすぎて、励起光の一部が反射部材に当たってしまう。そこで、出射される光の発散角が上述の範囲内となるように光拡散部材が構成され、かつ、光拡散部材と反射部材との離間距離は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
【0047】
上記光源装置において、
前記光拡散部材は、拡散板、又はマイクロレンズアレイであっても構わない。
【0048】
また、上記光源装置は、
前記反射部材と前記光拡散部材とが一体的に構成されていても構わない。
【0049】
反射部材と光拡散部材とが一体的に構成されているとは、例えば、反射部材と、拡散板やマイクロレンズアレイ等とを貼り合わせた構成や、拡散板やマイクロレンズアレイの表面上に直接反射膜が形成されている構成等である。
【0050】
上記光源装置は、
前記反射部材の反射面が、入射する前記第一偏光状態の前記反射光の光軸に対して直交するように配置されていても構わない。
【0051】
上記構成とすることで、ダイクロイックミラーから反射部材に向かって進行して反射部材に入射した光が、より確実にダイクロイックミラーに向かうように反射される。
【0052】
なお、ダイクロイックミラーと反射部材との距離が離れすぎると、集光レンズの光軸と非平行な光が、反射部材に反射された後、ダイクロイックミラーとは異なる方向に進行してしまい、損失となってしまう。このため、ダイクロイックミラーと反射部材との間の、第一偏光状態の反射光における光軸上の離間距離は、200mm以内であることが好ましく、150mm以内であることがより好ましい。
【0053】
上記光源装置は、
前記励起光源及び前記波長変換部材が載置されるヒートシンクと、
前記励起光源と前記ダイクロイックミラーとの間の前記励起光の光路上に配置され、前記励起光を前記ダイクロイックミラーに向かうように反射させる折返しミラーとを備えていても構わない。
【0054】
励起光源や波長変換部材は、多くの場合、動作時の発熱による温度上昇を抑制するために、ヒートシンクによる排熱機構が設けられる。ところが、励起光源と波長変換部材とを備える光源装置において、励起光源と波長変換部材それぞれに、個別にヒートシンクを設けると、ヒートシンクの配置領域の確保と、それぞれの排熱経路の確保等が必要となり装置全体が大型化してしまう。
【0055】
そこで、上記構成とすることで、励起光源と波長変換部材それぞれ個別のヒートシンクを設けて構成する必要がなくなり、排熱経路も共通化することができる。したがって、それぞれ個別のヒートシンクを備える光源装置に比べて、より小型の光源装置を構成することができる。
【0056】
ただし、励起光源と波長変換部材とが、同一面上に載置されて、光出射面が同じ方向に向くように構成される場合、励起光源から出射される励起光は、ダイクロイックミラーによる反射を含めて、少なくとも二回は反射されなければ、波長変換部材には入射されない。したがって、上記構成とすることで、折返しミラーとダイクロイックミラーによって励起光が二回反射されることになるため、励起光源から出射された励起光を、波長変換部材の主面へと導くことができる。
【0057】
なお、半導体レーザ素子や波長変換部材は、ヒートシンクに直接接触するように載置されていてもよく、グリス等を介して載置されていても構わない。
【0058】
上記光源装置は、
前記ダイクロイックミラーによって反射される光がS偏光であっても構わない。
【0059】
一般的に物質表面における反射率は、P偏光状態の光よりもS偏光状態の光の方が高く、特に、入射角が30°~80°の範囲においては、P偏光状態の光に対する反射率とS偏光状態の光に対する反射率との差が大きくなる。そこで、上記構成とすることで、ダイクロイックミラーによって反射される光がS偏光状態の光となるため、ダイクロイックミラーによって反射される光がP偏光状態の光の場合よりもより多くの光が反射されることとなり、光の利用効率がより高い光源装置を構成することができる。
【0060】
本発明のプロジェクタは、
上記光源装置と、
前記光源装置から出射される光が入射される光学系とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、装置全体を大型化することなく、効率と出射する光の均一性が向上された光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図2A】反射部材を反射面に向かって見たときの平面図である。
図2B】反射部材を反射面に向かって見たときの平面図である。
図3】波長変換部材の一構成例を模式的に示す断面図である。
図4】光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図5A】一体的に構成された拡散板と反射部材の一例を模式的に示す拡大図面である。
図5B】一体的に構成された拡散板と反射部材の一例を模式的に示す拡大図面である。
図6】プロジェクタの構成の一例を模式的に示す図面である。
図7】光源装置の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図8】光源装置の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図9】光源装置の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図10】上記特許文献1に記載されている光源装置の構成を模式的に図示した図面である。
図11】上記特許文献2に記載されている光源装置の構成を模式的に図示した図面である。
図12図11の光源装置に搭載されるダイクロイックミラーを、透過・反射面に向かって見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明の光源装置及びプロジェクタについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の個数は、実際の個数と必ずしも一致していない。
【0064】
[第一実施形態]
図1は、光源装置1の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。図1に示すように、光源装置1は、励起光源10と、拡散板11と、反射部材12と、波長変換部材13と、ダイクロイックミラー14と、集光レンズ15とを備える。
【0065】
以下の説明においては、図1に示すように、励起光源10から出射されてダイクロイックミラー14に到達するまでの励起光L1の光軸方向をY方向、集光レンズ15の光軸15aの方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする。
【0066】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0067】
[構造]
はじめに、光源装置1の構造について説明をした後、各光の進行態様に関する説明を行う。
【0068】
(励起光源10)
励起光源10は、図1に示すように、アレイ状に配列された複数の半導体レーザ素子10aと、それぞれの半導体レーザ素子10aに対応するように配置された複数のコリメートレンズ10bとを有する。なお、半導体レーザ素子10aとコリメートレンズ10bは、X方向にも配列されているが、図面の都合上、隠れていて見えない。また、半導体レーザ素子10aとコリメートレンズ10bは、それぞれ一つずつであっても構わない。
【0069】
第一実施形態の光源装置1が備える励起光源10は、青色の光を出射する半導体レーザ素子10aが、S偏光状態(第一実施形態における第一偏光状態)となるように配置されている。青色以外の光を出射する半導体レーザ素子10aが搭載されていても構わない。また、半導体レーザ素子10aは、偏光状態がP偏光(第一実施形態における第二偏光状態)となるように配置されていても構わない。
【0070】
さらに、図1では、半導体レーザ素子10aとコリメートレンズ10bとが、そのまま配列されて図示されているが、励起光源10は、半導体レーザ素子10aとコリメートレンズ10bとがパッケージングされた、例えば、CANタイプの光源部材を配置して構成されていても構わない。さらに、励起光源10は、複数の半導体レーザ素子10aと、複数のコリメートレンズ10bが結合して構成されたレンズアレイとを備える、マルチダイパッケージタイプ(「MDP」とも称される。)の光源部材で構成されていても構わない。
【0071】
(拡散板11)
拡散板11は、励起光源10から出射された励起光L1が入射するように、励起光源10と波長変換部材13との間の励起光L1の光路上に配置されている。より詳細には、図1の例では、この拡散板11は励起光源10とダイクロイックミラー14の間に配置されている。
【0072】
第一実施形態の光源装置1が備える拡散板11は、入射面(ここではXZ平面)に対してY方向に進行する光が入射されると、出射面から1°~2°程度の発散角を有してY方向に進行する光に変換する光拡散部材である。拡散板11は、例えば、ガラス板の一主面に対してフロスト処理を施されて、凹凸形状が形成されることで作製される。
【0073】
なお、拡散板11は、出射する光の発散角が0.5°~10°となるように構成されていることが好ましく、1°~5°となるように構成されていることがより好ましい。図1においては、説明の便宜のために、拡散板11から出射された励起光L1も平行光として図示されている。
【0074】
第一実施形態では、光拡散部材として拡散板11を備えているが、光拡散部材は、例えば、微小なレンズが多数配列されたマイクロレンズアレイであっても構わない。また、後述される波長変換部材13において、温度上昇による変換効率の低下が問題にならない程度であれば、拡散板11等の光拡散部材が備えられていなくても構わない。
【0075】
(反射部材12)
図2Aは、図1の反射部材12を反射面12aに向かって見たときの図面である。図1に示すように、反射部材12は、ガラス基板12cの+Y側の主面の一部に、金属膜による反射面12aが形成されており、図1及び図2Aに示すように、金属膜が形成されていない部分が光通過領域としての透光窓12bを構成している。なお、反射面12aは、金属膜以外に、例えば、誘電体多層膜等によって形成されていても構わない。
【0076】
後述されるが、波長変換部材13から出射された光(L2,L3,L4)のうちのS偏光状態の反射光L2は、ダイクロイックミラー14によって進行方向が変換されて反射部材12に向かって進行する。反射部材12に設けられている反射面12aは、このS偏光状態の反射光L2を再びダイクロイックミラー14に向かって反射させる目的で設けられている。他方、透光窓12bは、励起光源10から出射された励起光L1を、そのまま透過させてダイクロイックミラー14に導くために設けられている。
【0077】
透光窓12bは、ガラス基板12cの各主面の反射面12aが構成されていない領域に対して、例えば、フッ化マグネシウムによる無反射コーティングが施されて構成される。なお、反射部材12は、励起光L1を後段の光学系に向かうように通過させる構成であれば、透光窓12bの代わりに、開口が形成されていてもよい。
【0078】
図2Bは、図2Aとは異なる構成の反射部材12を反射面12aに向かって見たときの平面図である。第一実施形態における反射部材12は、図2Aに示すように、X方向に並んで進行してくる励起光L1が、同じ一つの透光窓12bを通過するように構成されているが、透光窓12bや開口の形状は任意であって、図2Bに示すように、それぞれの励起光L1に対して透光窓12bや開口が形成されていても構わない。
【0079】
(波長変換部材13)
波長変換部材13は、励起光L1が入射されると、その一部を励起光L1とは異なる波長の蛍光L4に変換する。図3は、波長変換部材13の一構成例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、波長変換部材13は、粒状の蛍光体13cが、バインダ13bによって固着され、板状に成形されて焼結された部材であって、当該部材が基板13d上に載置されている。主面13aは、平坦な面として説明するが、完全な平坦面でなくてもよく、凹凸形状が残っている粗面であってもよい。
【0080】
後述するように、励起光L1は、ダイクロイックミラー14によって集光レンズ15に向かう方向に進行方向が変換された後、集光レンズ15を介して波長変換部材13に導かれる。波長変換部材13の主面13aに入射した励起光L1は、一部が主面13aで反射され、他の一部が蛍光体13c内、又はバインダ13b内に入射する。第一実施形態において、蛍光体13cは、青色の励起光L1を取り込んで、黄色の蛍光L4を出射する材料で構成されている。
【0081】
(ダイクロイックミラー14)
本実施形態において、ダイクロイックミラー14は、励起光源10から出射された励起光L1を反射して、集光レンズ15に向かって進行方向を変換するミラー素子である。さらに、後述されるように、ダイクロイックミラー14は、励起光L1に加えて、波長変換部材13から出射されたS偏光状態の反射光L2を反射する一方、波長変換部材13から出射されたP偏光状態の反射光L3と蛍光L4とを透過する機能を奏する。ダイクロイックミラー14は、例えば、表面に誘電体多層膜が形成されてなる板状の光学素子で構成される。
【0082】
(集光レンズ15)
集光レンズ15は、図1に示すように、ダイクロイックミラー14から出射された励起光L1を、波長変換部材13の主面に向かって集光すると共に、波長変換部材13から出射された光(L2,L3,L4)の発散角を縮小する。詳細は後述される。
【0083】
[各光の進行について]
次に、励起光源10から出射された励起光L1、及びこの励起光L1が波長変換部材13に入射されることで得られた光(L2,L3,L4)のそれぞれの進行態様について詳細に説明する。
【0084】
励起光源10から出射された励起光L1は、拡散板11、及び反射部材12に設けられた透光窓12bを通過した後、ダイクロイックミラー14に入射される。ダイクロイックミラー14は、励起光源10から出射された励起光L1を反射するように構成されているため、励起光L1は、ダイクロイックミラー14で反射された後、集光レンズ15に向かって進行する。
【0085】
集光レンズ15を通過した励起光L1は、波長変換部材13の主面13aに向かって集光された状態で進行し、波長変換部材13内に入射される。
【0086】
図3に示すように、波長変換部材13に入射された励起光L1の一部は、蛍光体13cに取り込まれて励起光L1とは異なる波長の蛍光L4に変換され、蛍光体13cから波長変換部材13の外側、又はバインダ13b内に出射される。また、図3に示すように、波長変換部材13に入射された励起光L1の別の一部は、バインダ13b内に入射され、蛍光体13cの表面や、バインダ13b内に存在する気孔との界面で反射を繰り返し、S偏光成分とP偏光成分とを含む反射光となる。なお、バインダ13b内で反射を繰り返す反射光は、S偏光状態とP偏光状態の光のみならず、S偏光成分とP偏光成分とを有する様々な偏光状態の光を含む。しかし、説明の便宜のために、S偏光成分とP偏光成分とを有する光については、仮想的にS偏光成分とP偏光成分のそれぞれに分離し、バインダ13b内で反射を繰り返す光は、S偏光状態の反射光L2と、P偏光状態の反射光L3の二種類で構成されている光として説明される。
【0087】
これらの光(L2,L3,L4)は、直接、又は蛍光体13cとバインダ13bとの境界で反射したり、蛍光体13cに取り込まれて新たな蛍光L4として出射されたりを繰り返してバインダ13b内を進行しながら主面13aに到達する。そして、主面13aに到達した光(L2,L3,L4)は、図1に示すように、主面13aから波長変換部材13の外側へと出射され、集光レンズ15に向かって進行する。
【0088】
集光レンズ15は、波長変換部材13から出射されて拡散するように進行する光(L2,L3,L4)が入射されると、光(L2,L3,L4)を集光レンズ15の光軸15aに対して傾きが小さくなるように屈折して、ダイクロイックミラー14に向かって出射する。図1では、集光レンズ15によって、光(L2,L3,L4)が平行光に変換されるように図示されているが、光(L2,L3,L4)は、必ずしも平行光に変換されなくても構わない。
【0089】
上述したように、ダイクロイックミラー14は、励起光源10から出射された励起光L1と、波長変換部材13から出射されたS偏光状態の反射光L2とを反射し、波長変換部材13から出射されたP偏光状態の反射光L3と蛍光L4とを透過するように誘電体多層膜が形成されたミラーである。つまり、光(L2,L3,L4)は、ダイクロイックミラー14によってS偏光状態の反射光L2と、P偏光状態の反射光L3及び蛍光L4とに分離される。
【0090】
ダイクロイックミラー14によって分離されて、+Z方向に進行する、すなわち、ダイクロイックミラー14を透過して進行する、P偏光状態の反射光L3と黄色の蛍光L4は、そのまま光源装置1の外側へと出射され、白色光として後段の光学系(不図示)に入射される。この白色光は、例えばプロジェクタ用の照明光として利用される。
【0091】
ダイクロイックミラー14によって分離されて、反射部材12に向かって進行する、すなわちダイクロイックミラー14によって反射されて進行方向が変換されたS偏光状態の反射光L2は、一部が反射部材12の反射面12aによって反射される。反射部材12に向かって進行するS偏光状態の反射光L2の他の一部は、励起光源10まで戻ったり、拡散板11によって拡散されたりして、到達した各部材によって吸収される。
【0092】
反射部材12の反射面12aによって反射されたS偏光状態の反射光L2は、再びダイクロイックミラー14に向かって進行し、ダイクロイックミラー14によって反射されて、再び波長変換部材13に入射される。この反射光L2は、励起光L1と同じ波長の光であるため、励起光L1が波長変換部材13に入射された場合と同様の理由により、光(L2,L3,L4)が生成される。そして、励起光源10が消灯され、励起光L1とS偏光状態の反射光L2とが完全になくなるまで、上述の過程が繰り返される。
【0093】
上記構成とすることで、波長変換部材13から出射されて光源装置1の外側に出射される反射光(L2,L3)は、波長変換部材13から、光源装置1の外側に出射されるまでの間に、進行する経路によって透過率や反射率等の特性が異なるような光学系を通過しない。このため、光源装置1の外側に向かって出射される光は、部分的に反射光L2が混在することや、部分的に反射光L3や蛍光L4が弱まることが無く、光路に応じて生じるような色ムラが発生しない。
【0094】
光源装置1は、励起光L1を分離して、波長変換部材13に入射させる経路と、偏光状態を変換する経路とをそれぞれ構成することを要しないため、装置全体を大型化させることなく構成することができる。
【0095】
さらに、光源装置1は、S偏光状態の反射光L2が、反射部材12によって一部が再び波長変換部材13に戻されることで、励起光L1として再利用されるため、光の無駄が最小限に抑えられる。
【0096】
図1に示すように、反射部材12の反射面12aは、入射するS偏光状態の反射光L2の光軸、すなわち、Y方向に対して直交するようにXZ平面上に配置されているが、XZ平面に対して傾いて配置されていても構わない。例えば、ダイクロイックミラー14から出射されて進行してくるS偏光状態の反射光L2をダイクロイックミラー14に向かって反射できる構成であれば、反射部材12の反射面12aは、XZ平面に対して傾いていてもよく、さらには、曲面であっても構わない。
【0097】
また、反射部材12の反射面12aで反射されたS偏光状態の反射光L2がダイクロイックミラー14に戻りやすいように、ダイクロイックミラー14と反射部材12との間の、第一偏光状態の反射光における光軸上の離間距離は、200mm以内であることが好ましく、150mm以内であることがより好ましい。
【0098】
反射部材12の透光窓12bは、通過する励起光L1の反射や吸収が問題とならない場合、無反射コーティングが施されていないガラス窓であっても構わない。具体的には、光透光部に相当する部分(第一実施形態では透光窓12b)は、入射する励起光のピーク波長に対して、透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0099】
また、反射部材12は、反射面12aに向かって見たときに、反射面12aの面積の合計値に対する透光窓12bの面積の合計値の比率が30%となるように形成されている。反射面12aの面積の合計値に対する透光窓12bの面積の合計値の比率は、光の利用効率の観点から、20%~50%の範囲であることが好ましく、25%~40%の範囲であることがより好ましい。
【0100】
[第二実施形態]
本発明の光源装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態とは異なる箇所を中心に説明する。
【0101】
図4は、光源装置1の第二実施形態の構成を模式的に示す図面である。図4に示すように、第二実施形態の光源装置1は、励起光源10を構成する半導体レーザ素子10aと、波長変換部材13とが、同一のヒートシンク41の同一面上に載置されている。そして、光源装置1を構成する各部材は、出射窓40aを備えるカバー部材40とヒートシンク41によって形成される空間内に収容されて封止されている。
【0102】
なお、第二実施形態の光源装置1が備える半導体レーザ素子10aと波長変換部材13とは、ヒートシンク41に直接載置されているが、グリス等の排熱効率を向上させる材料を介して載置されていても構わない。
【0103】
以下の説明においては、第一実施形態での説明とは一部異なり、図4に示すように、集光レンズ15の光軸15aの方向をY方向、拡散板11(反射部材12)の反射面12aと直交する方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする。
【0104】
第二実施形態の光源装置1が備える波長変換部材13は、半導体レーザ素子10aが載置されているヒートシンク41の面と同じ面に載置されているため、半導体レーザ素子10aと同じく、+Y方向に光を出射する。
【0105】
また、光源装置1は、励起光源10から出射されて+Y方向に向かっって進行する励起光L1を、-Z方向に向かって進行するように反射する折返しミラー42を備える。折返しミラー42は、+Y側を向くように配置されている波長変換部材13の主面13aに励起光L1を入射させるために、図4に示すように、ダイクロイックミラー14と併せて二回反射させる目的で設けられている。
【0106】
第二実施形態の光源装置1が備える折返しミラー42は、図4に示すように、回動機構42aと、調整ネジ42bと、バネ42cとを備えており、励起光L1が反射部材12の透光窓12bを通過するように、励起光L1の進行方向を微調整するための調整機構が構成されている。励起光L1の進行方向が調整された後は、樹脂等によって調整ネジ42bのカバー部材40の外側に出ている部分が固定されると共に、調整ネジ42bのネジ穴が封止される。なお、図4に示される折返しミラー42の構成は一例であって、励起光L1が進行する経路を調整できる機構であれば、例えば、球関節による角度調整機構等を採用しても構わない。また、調整ネジ42bやバネ42cは、それぞれ複数設けられていても構わない。
【0107】
第二実施形態の光源装置1は、拡散板11と反射部材12が一体的に構成されている。具体的には、図4に示すように、拡散板11の-Z側の主面に反射面12aが形成されて、拡散板11が反射部材12の機能を兼ねるように構成されている。
【0108】
図5A及び図5Bは、一体的に構成された拡散板11と反射部材12の一例を模式的に示す拡大図面である。入射した励起光L1を拡散させるために設けられる凹凸形状は、図5Aに示すように、拡散板11(反射部材12)の-Z側の透光窓12bの領域に設けられていてもよく、図5Bに示すように、拡散板11(反射部材12)の+Z側の主面全体にわたって設けられていても構わない。
【0109】
波長変換部材13から+Y方向に出射された光(L2,L3,L4)は、集光レンズ15によって拡がりが抑制され、ダイクロイックミラー14によってS偏光状態の反射光L2と、P偏光状態の反射光L3及び蛍光L4とに分離される。
【0110】
ダイクロイックミラー14によって反射されたS偏光状態の反射光L2は、拡散板11(反射部材12)に向かって+Z方向に進行し、反射面12aによって反射されて、再び波長変換部材13に入射される。
【0111】
ダイクロイックミラー14を透過したP偏光状態の反射光L3及び蛍光L4は、そのままカバー部材40の出射窓40aから、光源装置1の外側へと出射される。
【0112】
上記構成とすることで、光源装置1は、波長変換部材13と半導体レーザ素子10aを、同一のヒートシンク41によって冷却することができるため、第一実施形態と比べて装置全体をさらに小型化することができる。これにより、都度、反射部材12や集光レンズ15等の配置位置を検討する必要がなくなり、プロジェクタ等の設計が容易となる。
【0113】
なお、図4の例では、拡散板11と反射部材12が一体的に構成されている場合について説明したが、折返しミラー42を備えつつも拡散板11と反射部材12とは第一実施形態と同様に別体に構成されていても構わない。
【0114】
さらに、図4の例では、波長変換部材13と半導体レーザ素子10aとがヒートシンク41の同一面上に載置されている場合について説明した。しかし、波長変換部材13と半導体レーザ素子10aとが同一のヒートシンク41上に載置されていればよく、必ずしも同一面上に載置されていなくても構わない。
【0115】
[プロジェクタ]
本発明の光源装置1は、例えば、プロジェクタに利用できる。以下、プロジェクタの一実施形態につき、光源装置1が搭載される光源部の構成を中心に説明する。
【0116】
図6は、プロジェクタ50の構成の一例を模式的に示す図面である。図6に示すように、プロジェクタ50は、光源装置1と、色分解合成光学系51と、投影光学系52とを備える。
【0117】
光源装置1から出射された白色光Lxは、色分解合成光学系51に入射される。色分解合成光学系51は、図示しないが、光分解光学系と、液晶パネルと、光合成光学系とを含む。光分解光学系が、入射された白色光Lxを、R・G・Bの3色の光に分離して、それぞれの色ごとに設けられた液晶パネルに導かれ、液晶パネルにおいて、画像変調される。画像変調されたR・G・Bそれぞれの光は、光合成光学系で合成されて、画像表示光Lzとして投影光学系52によってスクリーン53に投影される。
【0118】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0119】
〈1〉 図7は、光源装置1の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。図7に示すように、本実施形態の光源装置1は、S偏光状態(本実施形態における第二偏光状態)の反射光L2と、蛍光L4が、ダイクロイックミラー14によって反射されて光源装置1の外側に出射される。本実施形態における励起光源10が備える半導体レーザ素子10aは、P偏光状態(本実施形態における第一偏光状態)の励起光L1を出射するように配置されている。
【0120】
ここでの説明においては、上述の説明とは一部異なり、図7に示すように、励起光源10が出射する励起光L1の光軸方向をZ方向、P偏光状態の反射光L3及び蛍光L4が光源装置1から出射される方向をY方向とし、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする。
【0121】
本実施形態の光源装置1が備える励起光源10に搭載されている半導体レーザ素子10aは、P偏光状態の青色の励起光L1を出射する。そして、図7に示すように、ダイクロイックミラー14は、P偏光状態の励起光L1を透過し、波長変換部材13から出射される光のうちの、P偏光状態の反射光L3を透過し、S偏光状態の反射光L2と黄色の蛍光L4とを反射する。
【0122】
上記構成によれば、光源装置1を構成する部材は、全てZ方向に配列して構成できるため、P偏光状態の反射光L3と蛍光L4とを出射するY方向に関しては、部材を配置するスペースが少なくなる。したがって、光源装置1から出射される光の進行方向に向かって配置される後段の光学部材のためのスペースをより広く確保することができる。
【0123】
〈2〉 図8は、光源装置1の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。図8に示すように、拡散板11と反射部材12は、それぞれの複数の拡散板片11nと要素ミラー12nで構成されていても構わない。反射部材12は、複数の要素ミラー12nで構成される場合は、図8に示すように、それぞれの要素ミラー12nが離間して配置されることで、光通過領域としての間隙12dが形成される。
【0124】
上記構成によれば、配置構成は複雑となるが、拡散板11、反射部材12、折返しミラー42を集約するように構成することができ、光源装置1全体を上述した各実施形態よりも、さらに小型化することができる。
【0125】
〈3〉 図9は、光源装置1の別実施形態の構成を模式的に示す図面である。図9に示すように、反射部材12は、光通過領域にコリメートレンズ10bが組み込まれて、励起光源10に包含されていても構わない。本実施形態は、反射部材12を別途設ける必要がないため、光源装置1の小型化に繋がる。
【0126】
〈4〉 上述した光源装置1及びプロジェクタ50が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0127】
1 : 光源装置
10 : 励起光源
10a : 半導体レーザ素子
10b : コリメートレンズ
11 : 拡散板
11n : 拡散板片
12 : 反射部材
12a : 反射面
12b : 透光窓
12c : ガラス基板
12d : 間隙
12n : 要素ミラー
13 : 波長変換部材
13a : 主面
13b : バインダ
13c : 蛍光体
13d : 基板
14 : ダイクロイックミラー
15 : 集光レンズ
15a : 光軸
40 : カバー部材
40a : 出射窓
41 : ヒートシンク
42 : 折返しミラー
42a : 回動機構
42b : 調整ネジ
42c : バネ
50 : プロジェクタ
51 : 色分解合成光学系
52 : 投影光学系
53 : スクリーン
100 : 光源装置
101 : 励起光源
101a : 半導体レーザ素子
101b : コリメートレンズ
102 : 波長変換素子
102a : 主面
103 : 拡散反射板
103a : 反射面
104 : ダイクロイックミラー
104a : 透過・反射面
105,105a,105b : 集光レンズ
106a,106b : 波長板
110 : 光源装置
114 : ダイクロイックミラー
114a : 透過・反射面
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12